JP2009281208A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油の消費速度の異常を判定することができる内燃機関を提供すること。
【解決手段】炭素を含まない非炭素燃料である水素を燃料として用いるエンジン1において、炭素を含むエンジンオイルが燃焼室15で燃焼した際に発生する二酸化炭素の濃度を検出するCO2濃度センサ50を設け、ECU60に、CO2濃度センサ50での検出結果より二酸化炭素の濃度を取得するCO2濃度取得部と、CO2濃度取得部で取得した二酸化炭素の濃度が所定値より大きい場合に異常判定を行う異常判定部と、を設ける。これにより、CO2濃度取得部で取得した二酸化炭素の濃度に基づいて、エンジンオイルの消費状態を判定することができる。この結果、エンジンオイルの消費速度の異常を判定することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】炭素を含まない非炭素燃料である水素を燃料として用いるエンジン1において、炭素を含むエンジンオイルが燃焼室15で燃焼した際に発生する二酸化炭素の濃度を検出するCO2濃度センサ50を設け、ECU60に、CO2濃度センサ50での検出結果より二酸化炭素の濃度を取得するCO2濃度取得部と、CO2濃度取得部で取得した二酸化炭素の濃度が所定値より大きい場合に異常判定を行う異常判定部と、を設ける。これにより、CO2濃度取得部で取得した二酸化炭素の濃度に基づいて、エンジンオイルの消費状態を判定することができる。この結果、エンジンオイルの消費速度の異常を判定することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内燃機関に関するものである。特に、この発明は、運転時の燃料として非炭素燃料が用いられる内燃機関に関するものである。
従来の内燃機関は、燃焼室で燃料を燃焼させた際の圧力により運転可能に設けられている。また、内燃機関の一形態として、燃焼後の排気ガスが流れる通路である排気通路と燃焼室に吸入されるガスが流れる通路である吸気通路とが接続されることにより循環経路が形成された内燃機関が知られている。このような内燃機関では、例えば燃料である水素と、水素を酸化させる酸素とを燃焼室で燃焼させ、作動ガスを燃焼室及び循環経路に循環させる。これにより、燃焼後の排気ガスを排出することなく、内燃機関を運転させることができる。
しかし、このような内燃機関では、燃焼の燃焼時には作動ガスも燃焼室に吸入された状態で燃焼するため、燃料の性状のみでなく、作動ガスの特性も内燃機関の運転性能に影響を及ぼす。このため、従来の内燃機関は、運転性能の向上を図ることができる作動ガスを用いているものがある。例えば、特許文献1に記載の水素エンジンでは、作動ガスに、比熱比の高いガスであるアルゴンを用いている。このため、燃焼室で燃料を燃焼させた際に、アルゴンの熱膨張も利用してピストンを作動させることができるため、内燃機関の運転時の熱効率を高くすることができる。これにより、運転性能を向上させることができる。
ここで、このような内燃機関では、クランクシャフト等の回転軸の軸受部分や、ピストンとシリンダとの間等の摺動部に潤滑油が供給されるが、この潤滑油は、ピストンに設けられたピストンリングとシリンダとの隙間を通過して、クランクシャフト側から燃焼室に入り込む場合がある。この場合、燃焼室で燃料が燃焼した際に、燃焼室に入り込んだ潤滑油も燃焼するが、このように潤滑油が燃焼した場合、内燃機関のオイルパン等に貯留された潤滑油の貯留量は減少する。即ち、潤滑油は、燃焼室で燃焼することにより消費されるが、ピストンリングとシリンダとの隙間が基準値よりも大幅に大きい場合には、燃焼室に入り込む潤滑油の量が増加し、この隙間が適切な場合と比較して、潤滑油の消費速度が速くなる場合がある。換言すると、潤滑油の消費速度が異常な場合には、摺動部の隙間等の数値が適切ではないため、運転性能に影響が生じる場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、潤滑油の消費速度の異常を判定することができる内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る内燃機関は、燃焼室に炭素を含まない燃料である非炭素燃料を供給する燃料供給手段と、前記燃焼室に連通すると共に前記燃焼室で前記非炭素燃料が燃焼した後の排気ガスが流れる排気通路と、前記排気通路に設けられており、且つ、炭素を含む潤滑油が前記燃焼室で燃焼した際に発生すると共に前記排気通路を流れる炭素化合物の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段と、前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度を取得する炭素化合物濃度取得手段と、前記炭素化合物濃度取得手段で取得した前記炭素化合物の濃度が所定値より大きい場合に異常判定を行う異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、炭素化合物濃度検出手段で検出した排気通路を流れる炭素化合物の濃度を炭素化合物濃度取得手段で取得し、取得した炭素化合物の濃度が所定値より大きい場合に、異常判定手段で異常判定を行う。詳しくは、潤滑油には炭素が含まれているため、潤滑油が燃焼した場合には炭素化合物が発生する。また、潤滑油が燃焼室で燃焼した場合、燃焼時に発生した炭素化合物は排気ガスと共に排気通路に流れるため、排気通路に流れている炭素化合物の濃度を検出し、検出した炭素化合物の濃度より、潤滑油の消費状態を推定できる。つまり、炭素化合物の濃度が大きい場合には、炭素化合物は大量に発生していると判定することができ、潤滑油は大量に燃焼していると判定することができる。従って、この場合、潤滑油は燃焼により急速に消費されていると判定することができる。この結果、潤滑油の消費速度の異常を判定することができる。
また、この発明に係る内燃機関は、上記発明において、さらに、前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度の累積値を取得する累積濃度取得手段と、前記累積濃度取得手段で取得した前記炭素化合物の濃度の累積値が所定値より大きい場合に、前記潤滑油の貯留量は下限値未満であると判定する潤滑油貯留量判定手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、累積濃度取得手段で取得した炭素化合物の濃度の累積値が所定値より大きい場合には、潤滑油の貯留量は下限値未満であると潤滑油貯留量判定手段で判定をする。つまり、排気ガスに炭素化合物が含まれているということは、潤滑油が燃焼しているということであるため、炭素化合物の濃度の累積値は、潤滑油の燃焼により内燃機関内の潤滑油の貯留量が低下する量とほぼ比例する。このため、炭素化合物の濃度の累積値を取得することにより、潤滑油の貯留量を推定することができ、累積値が所定値より大きくなった場合には、潤滑油の貯留量は、内燃機関の運転に必要な量の下限値未満であると判定することができる。即ち、炭素化合物の濃度の累積値を取得することにより、潤滑油の貯留量が、内燃機関の運転に必要な量以上確保されているか否かを判定することができる。この結果、潤滑油の貯留量が内燃機関の運転に必要な量未満の状態で運転し続けることを抑制することができる。
また、この発明に係る内燃機関は、燃焼室に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、前記酸化剤と反応することにより燃焼すると共に炭素を含まない燃料である非炭素燃料を前記燃焼室に供給する非炭素燃料供給手段と、両端が前記燃焼室に連通すると共に一端からは前記燃焼室で前記非炭素燃料が燃焼した後の排気ガスが前記燃焼室から流入し、他端からは前記燃焼室が吸気するガスが前記燃焼室に対して流出可能に設けられており、さらに、前記燃焼室との間で循環するガスである作動ガスが流通可能な経路である循環経路と、前記循環経路に設けられており、且つ、炭素を含む潤滑油が前記燃焼室で燃焼した際に発生すると共に前記循環経路を流れる炭素化合物の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段と、前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度の累積値を取得する累積濃度取得手段と、前記累積濃度取得手段で取得した前記累積値の変化の度合いが所定の変化の度合いより大きい場合に異常判定を行う異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、炭素化合物濃度検出手段で検出した循環経路を流れる炭素化合物の濃度の累積値を累積濃度取得手段で取得し、取得した累積値の変化の度合いが所定の変化の度合いより大きい場合に、異常判定手段で異常判定を行う。即ち、潤滑油が燃焼室で燃焼した場合、燃焼時に発生した炭素化合物は排気ガスと共に循環経路に流れ、さらに炭素化合物は作動ガスと共に循環経路と燃焼室とを循環するため、循環経路に流れている炭素化合物の濃度を検出し、検出した濃度の累積値の変化の度合いにより、潤滑油の消費状態を推定できる。つまり、潤滑油が燃焼する場合は、潤滑油は徐々に燃焼するため、炭素化合物の濃度の累積値は徐々に増加する。これに対し、潤滑油の燃焼量が多い場合には、炭素化合物が大量に発生するため、循環経路を流れる炭素化合物の濃度の累積値は、急激に増加する。このため、炭素化合物の濃度の累積値が大きく変化している場合には、炭素化合物は大量に発生していると判定することができる。従って、この判定を介して、潤滑油は大量に燃焼していると判定することができ、潤滑油は急速に消費されていると判定されていることができる。この結果、潤滑油の消費速度の異常を判定することができる。
また、この発明に係る内燃機関は、上記発明において、さらに前記累積濃度取得手段で取得した前記累積値が所定値より大きい場合に、前記潤滑油の貯留量は下限値未満であると判定する潤滑油貯留量判定手段を備えることを特徴とする。
この発明では、累積濃度取得手段で取得した炭素化合物の濃度の累積値が所定値より大きい場合には、潤滑油の貯留量は下限値未満であると潤滑油貯留量判定手段で判定をする。この結果、潤滑油の貯留量が内燃機関の運転に必要な量未満の状態で運転し続けることを抑制することができる。
また、この発明に係る内燃機関は、上記発明において、前記作動ガスは、空気よりも比熱比が高いガスが用いられることを特徴とする。
この発明では、循環経路と燃焼室とを循環する作動ガスとして空気よりも比熱比が高いガスが用いられるので、燃焼室で非炭素燃料と酸化剤とを反応させて燃焼させる際に、燃焼時に発生するエネルギを効率良く利用することができる。この結果、熱効率の向上を図ることができる。
また、この発明に係る内燃機関は、上記発明において、さらに、前記循環経路には、前記非炭素燃料が燃焼した際に生成される生成物質を除去する生成物質除去手段が設けられていることを特徴とする。
この発明では、循環経路に生成物質除去手段が設けられているので、非炭素燃料が燃焼した際に生成された生成物質が作動ガスと共に循環経路と燃焼室とを循環することを抑制でき、循環する生成物質が増加し続けることを抑制できる。この結果、より確実に循環経路を設けて作動ガスを循環させる形態、即ち、閉じられた経路で内燃機関を運転させることができる。
本発明に係る内燃機関は、潤滑油の消費速度の異常を判定することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、実施例1に係るエンジンの概略図である。同図に示す実施例1に係る内燃機関であるエンジン1は、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12を有しており、シリンダブロック12におけるシリンダヘッド11側の反対側には、クランクケース13が位置している。このうち、シリンダブロック12の内部には、往復運動可能に設けられたピストン20が内設されるシリンダ14が形成されており、エンジン1の運転時におけるピストン20の下死点方向には、クランク軸であるクランクシャフト22が設けられている。このクランクシャフト22は、クランクケース13内に設けられており、ピストン20の往復運動の方向と直交する方向に回転軸を有し、当該回転軸を中心に回転可能に形成されている。また、クランクケース13の下部には、エンジン1の各回転部分や摺動部分を潤滑する潤滑油であるエンジンオイル(図示省略)を貯留するオイルパン(図示省略)が設けられている。
シリンダ14に内設されるピストン20と回転可能に設けられたクランクシャフト22とは、コネクティングロッド21によって接続されている。これにより、クランクシャフト22はピストン20の往復運動に伴って回転運動が可能になっている。また、シリンダヘッド11におけるピストン20に対向している面とシリンダ14の壁面、及びピストン20におけるシリンダヘッド11に対向している面である頂面は、燃焼室15を形成している。また、ピストン20には、外周面、即ち、シリンダ14に対向している面に、当該外周面に沿ったリング状の形状で形成されたピストンリング23が複数本設けられている。このピストンリング23は、シリンダ14に対して付勢力を付与できるように設けられている。
また、シリンダヘッド11には、燃焼室15に供給された燃料に点火可能な点火手段である点火プラグ38と、吸気バルブ35及び排気バルブ36が設けられている。また、燃焼室15には吸気通路31と排気通路32とが接続されており、吸気バルブ35は、吸気通路31側に設けられており、排気バルブ36は、排気通路32側に設けられている。
シリンダヘッド11に設けられる吸気バルブ35及び排気バルブ36は、吸気バルブ35や排気バルブ36における燃焼室15側の反対側に設けられると共にクランクシャフト22の回転に連動して回転するカムシャフト(図示省略)に設けられたカム(図示省略)によって往復運動が可能になっている。
このうち、吸気バルブ35は、往復運動をすることにより、吸気通路31と燃焼室15とを連通または遮断するように設けられており、排気バルブ36は、往復運動をすることにより、排気通路32と燃焼室15とを連通または遮断するように設けられている。なお、これらの吸気バルブ35や排気バルブ36は、カム以外により往復運動が可能に設けられていてもよく、例えば、ソレノイドを用いた、いわゆる電磁駆動弁として構成され、電気的な作用により往復運動が可能に設けられていてもよい。吸気バルブ35や排気バルブ36は、吸気通路31や排気通路32と燃焼室15とを連通または遮断するように設けられていればよく、その作動手段は問わない。
また、シリンダヘッド11には、燃焼室15に炭素を含まない燃料である非炭素燃料として用いられる水素(H2)を燃焼室15に供給する燃料供給手段である水素供給部40が設けられている。この水素供給部40には、水素を貯留する水素タンク(図示省略)が接続されており、水素供給部40は、水素タンク内の水素を燃焼室15に噴射可能に設けられている。
また、点火プラグ38は、吸気バルブ35と排気バルブ36との間に設けられており、さらに、高電圧をかけた際に放電する点火部39を有し、この点火部39が燃焼室15内に位置するように設けられている。また、排気通路32には、排気通路32を流れる炭素化合物である二酸化炭素(CO2)の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段であるCO2濃度センサ50が設けられている。
また、これらの水素供給部40やCO2濃度センサ50は、当該エンジン1を搭載する車両(図示省略)の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)60に接続されており、ECU60によって制御可能に設けられている。
図2は、図1に示すエンジンの要部構成図である。ECU60には、処理部61、記憶部68及び入出力部69が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU60に接続されている水素供給部40やCO2濃度センサ50は、入出力部69に接続されており、入出力部69は、これらの水素供給部40等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部68には、本実施例1に係るエンジン1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部68は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部61は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、運転中のエンジン1の回転数や負荷などのエンジン1の運転状態を取得する運転状態取得手段である運転状態取得部62と、エンジンオイルの消費異常を検出する条件が成立したか否かを判定する検出条件成立判定手段である検出条件成立判定部63と、CO2濃度センサ50での検出結果より排気通路32を流れる排気ガス中の二酸化炭素の濃度を取得する炭素化合物濃度取得手段であるCO2濃度取得部64と、CO2濃度取得部64で取得した二酸化炭素の濃度が所定値より大きい場合に異常判定を行う異常判定手段である異常判定部65と、CO2濃度センサ50での検出結果より二酸化炭素の濃度の累積値を取得する累積濃度取得手段である累積濃度取得部66と、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値が所定値より大きい場合に、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であると判定する潤滑油貯留量判定手段であるオイル貯留量判定部67と、を有している。
ECU60によって制御される水素供給部40などの制御は、例えば、車両の運転席に設けられるアクセルペダル(図示省略)の操作量であるアクセル開度等に基づいて、処理部61が前記コンピュータプログラムを当該処理部61に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御する。その際に処理部61は、適宜記憶部68へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このように水素供給部40などを制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU60とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例1に係るエンジン1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。エンジン1の運転中は、ピストン20がシリンダ14内で往復運動を繰り返すことにより、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を1つのサイクルとしてこのサイクルを繰り返す。ピストン20の往復運動は、コネクティングロッド21によってクランクシャフト22に伝達され、コネクティングロッド21とクランクシャフト22との作用により往復運動が回転運動に変換され、クランクシャフト22が回転する。また、エンジン1の運転時には、クランクシャフト22の回転位置やアクセル開度等の運転状態に応じて、水素供給部40から水素を噴射する。また、エンジン1の運転時は、クランクシャフト22の回転に応じて吸気バルブ35や排気バルブ36は往復運動をし、吸気通路31や排気通路32と燃焼室15、或いは吸気通路31や排気通路32と燃焼室15との連通と遮断とを繰り返す。
エンジン1の運転時には、このように吸気バルブ35や排気バルブ36が往復運動して吸気通路31や排気通路32と燃焼室15との連通と遮断とを繰り返すことにより、吸排気を行ない、上記の4つの行程を繰り返す。各行程の概略は、吸気行程では、吸気バルブ35を開弁し、排気バルブ36を閉弁する。これにより、ピストン20が上死点側から下死点方向に移動することにより、燃焼室15には、吸気通路31から空気が流入する。また、吸気行程では、このように吸気バルブ35を開弁し、吸気通路31から燃焼室15に空気が流入した状態で燃焼室15に水素供給部40から水素を噴射する。これにより、燃焼室15に吸気された空気と水素とは混合され、混合気になる。
圧縮行程では、吸気バルブ35も排気バルブ36も閉弁し、この状態でピストン20が上死点方向に移動する。ピストン20が上死点方向に移動すると、燃焼室15内の混合気は圧縮されるので、この圧縮により圧力が上昇する。
燃焼行程では、点火プラグ38に高電圧の電流を印加し、点火プラグ38の点火部39にアーク放電を発生させることにより、圧縮した混合気が点火する。これにより、圧縮した混合気中の水素が燃焼するので、燃焼時の圧力によりピストン20が下死点方向に移動する。さらに、ピストン20の移動に伴って、コネクティングロッド21を介してピストン20に接続されたクランクシャフト22が回動する。
また、排気行程では、吸気バルブ35は閉弁し、排気バルブ36は開弁した状態でピストン20が上死点方向に移動することにより、水素の燃焼後の排気ガスが、燃焼室15から排気通路32の方向に流れ、燃焼室15から排気される。ここで、水素が燃焼した場合、水素と空気中の酸素とが化学反応をして、水(H2O)を生成する。このため、水素が燃焼した際における排気ガスの成分は、主に燃焼による生成物質である水分になっており、排気通路32には、水分である水蒸気が排出される。
また、エンジン1の運転時は、クランクシャフト22の軸受(図示省略)などの各回転部分や摺動部分にはエンジンオイルが供給されるが、エンジンオイルは、ピストン20とシリンダ14との摺動部分、つまり、ピストン20の側面とシリンダ14の壁面とにも供給される。詳しくは、エンジンオイルは、ピストン20に設けられるピストンリング23とシリンダ14の壁面との間に供給され、ピストン20がシリンダ14内で往復運動をする際に、ピストンリング23とシリンダ14との摺動部分の潤滑を行なう。
ピストンリング23とシリンダ14との間には、このようにエンジンオイルが供給されるが、エンジンオイルはピストンリング23とシリンダ14との隙間を通過して、クランクシャフト22側から燃焼室15側に入り込む場合がある。このように、エンジンオイルが燃焼室15側に入り込んだ場合、このエンジンオイルは、燃焼室15で水素が燃焼した際に、水素の燃焼に伴って燃焼する。エンジンオイルは炭素を含有しているため、燃焼室15でエンジンオイルが燃焼した場合には、二酸化炭素が発生する。エンジンオイルが燃焼することにより発生した二酸化炭素は、排気行程で排気ガスが排気通路32に排気される際に、これらの排気ガスと共に燃焼室15から排気通路32に排出される。排気通路32に排出された排気ガスや二酸化炭素は、消音装置(図示省略)等を通過後、大気に放出される。
また、このように排気通路32には排気ガスや二酸化炭素が流れるが、この排気通路32には、CO2濃度センサ50が設けられている。CO2濃度センサ50は、排気通路32を流れる二酸化炭素の濃度を検出可能に設けられており、二酸化炭素の濃度を継続的に検出可能に設けられている。CO2濃度センサ50での検出結果は、ECU60の処理部61が有するCO2濃度取得部64に伝達され、CO2濃度取得部64は、CO2濃度センサ50で検出した二酸化炭素の濃度を取得する。
CO2濃度取得部64で取得した二酸化炭素の濃度は、ECU60の処理部61が有する異常判定部65に伝達される。異常判定部65は、CO2濃度取得部64で取得した二酸化炭素の濃度が所定値より大きい場合には、排気通路32には多量の二酸化炭素が流れており、燃焼室15で多量のエンジンオイルが燃焼していると判定する。即ち、異常判定部65は、この場合にはエンジンオイルの消費量が通常の運転時におけるエンジンオイルの消費量よりも多くなっており、ピストンリング23とシリンダ14との隙間が基準値よりも大幅に大きくなっているなど、エンジン1に異常が発生していると判断して異常判定を行う。
また、CO2濃度センサ50での検出した二酸化炭素の濃度は、ECU60の処理部61が有する累積濃度取得部66にも伝達され、累積濃度取得部66は、CO2濃度センサ50での検出した二酸化炭素の濃度の累積値を取得する。累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値は、ECU60の処理部61が有するオイル貯留量判定部67に伝達される。オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値が所定値より大きい場合には、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であると判定する。つまり、エンジンオイルが燃焼し続けた場合、排気通路32に二酸化炭素が流れ続けると同時にエンジン1内におけるエンジンオイルの貯留量は減少し続けるため、オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値が所定値より大きい場合には、エンジンオイルの貯留量は、エンジン1を問題なく運転させるのに必要な量未満、即ち下限値未満であると判定する。
図3は、実施例1に係るエンジンの処理手順を示すフロー図である。次に、実施例1に係るエンジン1の制御方法、即ち、当該エンジン1で使用するエンジンオイルの消費異常を検出する場合における処理手順について説明する。なお、以下の処理は、エンジン1の運転中に各部を制御する際に、所定の期間ごとに呼び出されて実行する。実施例1に係るエンジン1で、エンジンオイルの消費異常を検出する場合における処理手順では、まず、エンジン1の運転状態を取得する(ステップST101)。このエンジン1の運転状態の取得は、ECU60の処理部61が有する運転状態取得部62で取得する。運転状態取得部62は、エンジン1の運転状態として、エンジン回転数、エンジン負荷、及び水温条件を取得する。このうち、エンジン回転数は、クランクシャフト22の近傍に設けられ、クランクシャフト22の角速度を検出可能なクランク角センサ(図示省略)での検出結果より取得する。また、エンジン負荷は、アクセル開度を検出可能なアクセル開度センサ(図示省略)や、エンジン1の吸入空気量を検出可能なエアフロメータ(図示省略)の検出結果に基づいて推算することにより取得する。また、水温は、エンジン1を冷却する冷却水の経路に設けられ、冷却水の温度を検出可能な水温センサ(図示省略)での検出結果より取得する。
次に、検出条件が成立したか否かを判定する(ステップST102)。この判定は、ECU60の処理部61が有する検出条件成立判定部63で行う。検出条件成立判定部63で検出条件が成立したか否か、つまり、エンジンオイルの消費異常を検出する条件が成立したか否かを判定する際には、検出条件成立判定部63は、運転状態取得部62で取得したエンジン回転数とエンジン負荷とが安定しているか否か、及び運転状態取得部62で取得した水温が設定範囲内であるか否かを判定する。この判定により、エンジン回転数とエンジン負荷とのうち少なくともいずれかが安定していない、または、水温が設定範囲外であると判定された場合には、エンジンオイルの消費異常を検出する条件が成立していないものと判定し、この処理手順から抜け出る。
なお、エンジン回転数やエンジン負荷が安定している状態とは、所定時間当たりの変化量が所定の範囲内である状態をいう。これらの所定時間及び変化量の所定の範囲は、エンジン回転数及びエンジン負荷ごとに予め設定され、ECU60の記憶部68に記憶されている。同様に、水温の設定範囲も予め設定されてECU60の記憶部68に記憶されている。
検出条件成立判定部63での判定(ステップST102)により、検出条件は成立していると判定した場合には、次に、排気ガス中の二酸化炭素の濃度を取得する(ステップST103)。この取得は、ECU60の処理部61が有するCO2濃度取得部64で行う。排気通路32を流れる排気ガス中の二酸化炭素の濃度は、排気通路32に設けられたCO2濃度センサ50で検出し、この検出結果がCO2濃度取得部64に伝達される。CO2濃度取得部64は、CO2濃度センサ50から伝達された検出結果より、排気通路32を流れる排気ガス中の二酸化炭素の濃度を取得する。
次に、検出CO2濃度>正常CO2濃度であるか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、ECU60の処理部61が有する異常判定部65で行う。異常判定部65は、CO2濃度取得部64で取得した二酸化炭素の濃度を検出CO2濃度とし、エンジンオイルの消費速度の異常判定を行う際に用いる二酸化炭素の濃度の所定値を正常CO2濃度とした場合に、検出CO2濃度は正常CO2濃度より大きいか否かを判定する。
ここで、正常CO2濃度について説明する。図4は、エンジン回転数とエンジン負荷とに対する正常CO2濃度の関係を示す説明図である。同図における横軸はエンジン回転数を示しており、縦軸はエンジン負荷を示している。この図4では、正常CO2濃度は等濃度線で示しており、図の右方向に向かうに従って、或いは、図の上方に向かうに従って濃度が高くなっている。異常判定部65での判定に用いる正常CO2濃度は、エンジン回転数とエンジン負荷とにより定められており、一例を挙げると、図4に示すようにエンジン回転数とエンジン負荷とのうちの一方が一定で他方のみが高くなった場合には、正常CO2濃度は高くなり、一方が高くなり、他方が低くなった場合には、正常CO2濃度の変化は少なくなる。また、エンジン回転数とエンジン負荷との双方が高くなった場合には、正常CO2濃度は大幅に高くなる。正常CO2濃度は、予めこのように設定され、マップの状態でECU60の記憶部68に記憶されている。
異常判定部65は、運転状態取得部62で取得したエンジン回転数とエンジン負荷とを用いて、記憶部68に記憶された正常CO2濃度のマップを参照することにより、取得したエンジン回転数及びエンジン負荷の場合における正常CO2濃度を取得する。異常判定部65はさらに、この取得した正常CO2濃度と、CO2濃度取得部64で取得した検出CO2濃度とを比較し、検出CO2濃度>正常CO2濃度であるか否かを判定する。
異常判定部65での判定(ステップST104)により、検出CO2濃度は正常CO2濃度より大きいと判定された場合、即ち、検出CO2濃度>正常CO2濃度であると判定された場合には、オイル消費異常判定をする(ステップST105)。この判定は異常判定部65で行い、異常判定部65は、検出CO2濃度が正常CO2濃度より大きい場合には、エンジンオイルの消費速度は異常であるとの判定である異常判定を行う。このように、異常判定部65で異常判定を行った場合には、ECU60の記憶部68に設けられるエンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグを、異常判定を行ったことを示す状態にする。
これに対し、異常判定部65での判定(ステップST104)により、検出CO2濃度は正常CO2濃度より大きくはないと判定された場合、即ち、検出CO2濃度≦正常CO2濃度であると判定された場合には、オイル消費正常判定をする(ステップST106)。この判定は異常判定部65で行い、異常判定部65は、検出CO2濃度が正常CO2濃度以下の場合には、エンジンオイルの消費速度は正常であるとの判定である正常判定を行う。このように、異常判定部65で正常判定を行った場合には、記憶部68に設けられるエンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグを、正常判定を行ったことを示す状態にする。
異常判定部65でオイル消費異常判定(ステップST105)をする、または、オイル消費正常判定(ステップST106)をした後は、次に、累積CO2濃度>累積上限CO2濃度であるか否かを判定する(ステップST107)。この判定は、ECU60の処理部61が有するオイル貯留量判定部67で行う。ここで、エンジン1の運転中は、ECU60の処理部61が有する累積濃度取得部66は、CO2濃度センサ50で検出した二酸化炭素の濃度の累積値を取得する。オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値を累積CO2濃度とし、この累積値の上限値を累積上限CO2濃度とした場合に、累積CO2濃度は累積上限CO2濃度より大きいか否かを判定する。
なお、この累積上限CO2濃度は、エンジンオイルが燃焼し続けることにより二酸化炭素を排出し続け、エンジン1内のエンジンオイルの貯留量が低下し続けた場合に、貯留量が下限値に到達する際における二酸化炭素の濃度の累積値になっている。即ち、二酸化炭素の濃度の累積値が累積上限CO2濃度に到達した場合には、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であると判定することができる。このように、エンジンオイルの貯留量の判定に用いられる累積上限CO2濃度は、予めECU60の記憶部68に記憶されている。オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した累積CO2濃度と、記憶部68に記憶された累積上限CO2濃度とを比較し、累積CO2濃度>累積上限CO2濃度であるか否かを判定する。
オイル貯留量判定部67での判定(ステップST107)により、累積CO2濃度は累積上限CO2濃度より大きいと判定された場合、即ち、累積CO2濃度>累積上限CO2濃度であると判定された場合には、貯留量下限値未満判定をする(ステップST108)。この判定はオイル貯留量判定部67で行い、オイル貯留量判定部67は、累積CO2濃度が累積上限CO2濃度より大きい場合には、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であるとの判定を行う。このように、オイル貯留量判定部67で貯留量は下限値未満であるとの判定を行った場合には、ECU60の記憶部68に設けられるエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグを、貯留量は下限値未満であることを示す状態にする。
これに対し、オイル貯留量判定部67での判定(ステップST107)により、累積CO2濃度は累積上限CO2濃度より大きくはないと判定された場合、即ち、累積CO2濃度≦累積上限CO2濃度であると判定された場合には、貯留量下限値以上判定をする(ステップST109)。この判定はオイル貯留量判定部67で行い、オイル貯留量判定部67は、累積CO2濃度が累積上限CO2濃度以下の場合には、エンジンオイルの貯留量は下限値以上であるとの判定を行う。このように、オイル貯留量判定部67で貯留量は下限値以上であるとの判定を行った場合には、記憶部68に設けられるエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグを、貯留量は下限値以上であることを示す状態にする。
これらのように、エンジンオイルの消費速度が異常であるか否かの判定(ステップST104〜ST106)、及びエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かの判定(ステップST107〜ST109)を行った後は、この処理手順から抜け出る。これらの判定により、エンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグや、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグは、エンジン1や車両の制御を行う際における他の制御で参照され、このフラグの状態に基づいて、例えば運転者への警告などの制御に用いられる。
以上のエンジン1は、CO2濃度センサ50で検出した排気通路32を流れる二酸化炭素の濃度をCO2濃度取得部64で取得し、この取得した二酸化炭素の濃度である検出CO2濃度が、ECU60の記憶部68に記憶された所定値である正常CO2濃度より大きい場合には、異常判定部65で、エンジンオイルの消費量が通常の運転時におけるエンジンオイルの消費量よりも多く、エンジン1に異常が発生しているとの判定である異常判定を行う。詳しくは、エンジンオイルには炭素が含まれているため、エンジンオイルが燃焼した場合には二酸化炭素が発生する。また、エンジンオイルが燃焼室15で燃焼した場合、燃焼時に発生した二酸化炭素は排気ガスと共に排気通路32に流れるため、排気通路32に流れている二酸化炭素の濃度を検出し、検出した二酸化炭素の濃度を判定対象として用いることにより、エンジンオイルの消費状態を推定できる。
つまり、例えば二酸化炭素の濃度が大きい場合には、二酸化炭素は大量に発生していると判定することができ、エンジンオイルは大量に燃焼していると判定することができる。この場合、エンジンオイルは燃焼により急速に消費されていると判定されていることができる。従って、二酸化炭素の濃度に基づいた判定を介して、エンジンオイルの消費状態を判定することができる。この結果、エンジンオイルの消費速度の異常を判定することができる。
また、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値である累積CO2濃度が、ECU60の記憶部68に記憶された所定値である累積上限CO2濃度より大きい場合には、エンジンオイルの貯留量は、エンジン1を問題なく運転させるのに必要な量の下限値未満であるとオイル貯留量判定部67で判定をしている。つまり、排気ガスに二酸化炭素が含まれているということは、エンジンオイルが燃焼しているということであるため、二酸化炭素の濃度の累積値は、エンジンオイルの燃焼によりエンジン1内のエンジンオイルの貯留量が低下する量とほぼ比例する。このため、二酸化炭素の濃度の累積値である累積CO2濃度を取得することにより、エンジンオイルの貯留量を推定することができ、累積CO2濃度が所定値である累積上限CO2濃度より大きくなった場合には、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であると判定することができる。即ち、累積CO2濃度を取得することにより、エンジンオイルの貯留量が、エンジン1の運転に必要な量以上確保されているか否かを判定することができる。この結果、エンジンオイルの貯留量がエンジン1の運転に必要な量未満の状態でエンジン1を運転し続けることを抑制することができる。
また、このようにエンジンオイルの消費速度の異常を判定することにより、エンジン1の各潤滑部分に供給するエンジンオイルの供給量の低下を抑制することができるため、潤滑性能を確保することができる。この結果、エンジンオイルの供給量の低下に起因するフリクションの増加を抑制することができ、燃費の向上を図ることができる。また、エンジン1の潤滑性能を確保することにより、より確実に潤滑部分の摩耗を抑制することができる。この結果、耐久性の向上を図ることができる。
実施例2に係るエンジン80は、実施例1に係るエンジン1と略同様の構成であるが、吸気通路31と排気通路32との代わりに、燃焼室15との間で作動ガスが循環可能な経路である循環経路85が設けられている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図5は、実施例2に係るエンジンの概略図である。実施例2に係るエンジン80は、実施例1に係るエンジン1と同様にシリンダヘッド11及びシリンダブロック12を有しており、シリンダブロック12の内部には、往復運動可能に設けられたピストン20が内設されるシリンダ14が形成されている。このピストン20は、コネクティングロッド21によってクランクシャフト22と接続されている。シリンダヘッド11におけるピストン20に対向している面とシリンダ14の壁面、及びピストン20におけるシリンダヘッド11に対向している面である頂面は、燃焼室15を形成している。また、シリンダヘッド11には、燃焼室15に供給された燃料に点火可能な点火手段である点火プラグ38と、吸気バルブ35及び排気バルブ36が設けられている。
また、ピストン20には、外周面、即ち、シリンダ14に対向している面に、当該外周面に沿ったリング状の形状で形成されたピストンリング23が複数本設けられている。また、シリンダヘッド11には、燃焼室15に非炭素燃料として用いられる水素を燃焼室15に供給する燃料供給手段である水素供給部40が設けられており、水素供給部40は、水素を燃焼室15に噴射可能に設けられている。
また、実施例2に係るエンジン80では、実施例1に係るエンジン1において燃焼室15に接続される吸気通路31及び排気通路32に代わり、燃焼室15には循環経路85が接続されている。この循環経路85は、両端が燃焼室15に連通した経路になっている。この循環経路85は、空気よりも比熱比が高く、且つ、燃焼室15との間で循環するガスである作動ガスとして用いられるアルゴンが流通可能な経路として設けられている。吸気バルブ35及び排気バルブ36は、この循環経路85の端部に設けられており、共に循環経路85と燃焼室15との開閉を行うバルブとして設けられている。このうち、吸気バルブ35は、循環経路85の両端のうちの一端側に配設されており、排気バルブ36は、循環経路85の両端のうちの他端側に配設されている。
また、二酸化炭素の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段であるCO2濃度センサ50は、実施例2に係るエンジン80では循環経路85に設けられており、このCO2濃度センサ50は、循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度を検出可能に設けられている。
また、このように燃焼室15に連通した循環経路85には、燃焼室15に酸化剤である酸素(O2)を供給する酸化剤供給手段である酸素供給部90が設けられている。この酸素供給部90には、酸素を貯留する酸素タンク(図示省略)が接続されており、酸素供給部90は、酸素タンク内の酸素を循環経路85に噴射することを介して燃焼室15に酸素を供給可能に設けられている。
また、循環経路85には、循環経路85を流れる水分を凝縮して凝縮水にする凝縮器100が設けられている。このように循環経路85を流れる水分は、水素が燃焼した際に生成される生成物質となっており、凝縮器100は、生成物質である水分を除去する生成物質除去手段となっている。この凝縮器100には、内部に冷却水(図示省略)が流れる冷却水路102が通っており、冷却水路102にはラジエタ101が接続されている。このラジエタ101と冷却水路102とは、閉じられた経路になっており、冷却水路102にはウォータポンプ103が設けられている。このウォータポンプ103を作動させることにより、冷却水路102とラジエタ101とは、冷却水が循環可能に設けられている。また、凝縮器100には排水バルブ104が設けられており、凝縮器100で凝縮した凝縮水は、排水バルブ104を開くことにより、凝縮器100の外に排水することができる。
また、これらの水素供給部40、酸素供給部90、CO2濃度センサ50は、ECU110に接続されており、ECU110によって制御可能に設けられている。
図6は、図5に示すエンジンの要部構成図である。実施例2に係るエンジン80が有するECU110は、実施例1に係るエンジン1と同様に処理部61、記憶部68及び入出力部69が設けられており、ECU110に接続されている水素供給部40、酸素供給部90、CO2濃度センサ50は、入出力部69に接続されている。
また、処理部61は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、運転状態取得部62と、検出条件成立判定部63と、異常判定部115と、累積濃度取得部66と、オイル貯留量判定部67と、を有している。このうち異常判定部115は、実施例1に係るエンジン1が有する異常判定部65とは異なり、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の累積値の変化の度合いが所定の変化の度合いより大きい場合に異常判定を行う。
この実施例2に係るエンジン80は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。エンジン80の運転中は、実施例1に係るエンジン1と同様に、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を1つのサイクルとしてこのサイクルを繰り返す。
このうち、吸気行程は、実施例1に係るエンジン1の吸気行程とは異なり、吸気バルブ35を開弁し、排気バルブ36を閉弁した状態で、さらに酸素供給部90から酸素を噴射する。これにより、ピストン20が上死点側から下死点方向に移動することにより、燃焼室15は、循環経路85を流れるアルゴンと、循環経路85に噴射された酸素とを循環経路85における吸気バルブ35側から吸気する。即ち、循環経路85における吸気バルブ35側の端部からは、燃焼室15が吸気するガスが燃焼室15に対して流出する。また、この吸気行程では、実施例1に係るエンジン1の吸気行程と同様に燃焼室15に水素供給部40から水素を噴射するため、燃焼室15では、水素供給部40が噴射した水素と循環経路85から吸気した酸素とが混合する。
圧縮行程では、吸気バルブ35と排気バルブ36とが閉弁した状態でピストン20が上死点方向に移動することにより、燃焼室15内のガスである水素と酸素とアルゴンとの混合気は圧縮され、圧力が上昇する。
燃焼行程では、点火プラグ38の点火部39にアーク放電を発生させることにより、圧縮した混合気中の水素と酸素とが点火する。これにより、水素と酸素とが反応して燃焼し、急激に圧力と温度とが上昇するため、燃焼時の圧力によりピストン20が下死点方向に移動し、この移動に伴ってクランクシャフト22が回動する。また、このように水素が燃焼した場合、燃焼時に上昇した熱はアルゴンに伝達され、アルゴンの温度も上昇するが、アルゴンは空気よりも比熱比が高くなっている。このため、アルゴンの温度が上昇した場合、アルゴンは大きく膨張しようとし、ピストン20に対して圧力を付与する。これによりピストン20は、水素の燃焼時の圧力のみでなく、アルゴンが膨張する際の圧力によっても下死点方向に移動し、クランクシャフト22は、このピストン20の移動に伴って回動する。
また、排気行程では、吸気バルブ35は閉弁し、排気バルブ36は開弁した状態でピストン20が上死点方向に移動することにより、水素の燃焼後の排気ガスが、燃焼室15から、循環経路85における排気バルブ36側の端部から循環経路85に排気される。つまり、循環経路85には、燃焼室15で水素が燃焼した後の排気ガスが燃焼室15から流入する。その際に、循環経路85には、水素の燃焼後の排気ガスと共に燃焼室15内のアルゴンも流入する。また、水素が燃焼した場合、水素と酸素とが化学反応をして水を生成するため、水素の燃焼後の排気ガスの成分は、主に燃焼による生成物質である水分になっており、循環経路85には、水分である水蒸気が排出される。
循環経路85を流れる排気ガス等は、循環経路85における排気バルブ36側の端部側から吸気バルブ35側の端部方向に流れる。その際に、このガスは、循環経路85に設けられる凝縮器100に流入する。この凝縮器100には、冷却水が流れる冷却水路102が通っており、凝縮器100に流入したガスは、凝縮器100に配設される冷却水路102を流れる冷却水との間で熱交換を行う。ここで、この冷却水は、冷却水路102とラジエタ101とを循環しており、ラジエタ101を通過する際に放熱することにより、温度が低下する。このため、凝縮器100に配設された冷却水路102に冷却水が流入する場合には、この冷却水は温度が低下した状態で流れる。従って、凝縮器100に流入したガスが、凝縮器100に配設される冷却水路102を流れる冷却水との間で熱交換を行う場合には、ガスの熱は冷却水に伝達され、ガスの温度が低下する。このため、このガスに含まれる排気ガスの主成分である水蒸気は、温度が低下することにより凝縮して液体の水になり、循環経路85を流れるガスから除去される。凝縮器100で凝縮された水は、ECU110による制御により排水バルブ104を開いた際に、凝縮器100から排水される。
凝縮器100により温度が低下すると共に水分が除去されたガスは、凝縮器100から流出して循環経路85を流れ、循環経路85における吸気バルブ35側の端部の方向に流れて、吸気行程時に燃焼室15に吸気される。このように、燃焼室15から排気されたガスは、循環経路85を通って再び燃焼室15に吸気されるが、このガスが循環経路85を流れる際には、ガスに含まれる排気ガスの主成分である水蒸気は凝縮器100で除去される。一方、循環経路85を流れるガスのうちアルゴンは、燃焼室15から排気された後、循環経路85を通って再び燃焼室15に吸気される。従ってアルゴンは、燃焼室15と循環経路85との間で循環する。
また、エンジン80の運転時は、ピストンリング23とシリンダ14との間に供給されるエンジンオイルが、これらの隙間を通過して燃焼室15側に入り込む場合があり、燃焼室15側に入り込んだエンジンオイルは、燃焼室15で水素が燃焼した際に、水素の燃焼に伴って燃焼する場合がある。このように、エンジンオイルが燃焼した場合、二酸化炭素が発生し、発生した二酸化炭素は、排気行程で排気ガスやアルゴンが循環経路85に排気される際に、これらの排気ガスと共に燃焼室15から循環経路85に排出される。
このように、循環経路85には二酸化炭素が流れるが、この循環経路85には、実施例1に係るエンジン1が有する排気通路32と同様にCO2濃度センサ50が設けられている。また、ECU110の処理部61には、累積濃度取得部66が設けられており、累積濃度取得部66はCO2濃度センサ50での検出結果より、二酸化炭素の濃度の累積値を取得するが、ここで、実施例2に係るエンジン80は、燃焼室15から排出されたガスは、凝縮器100で凝縮されることにより除去された水分以外は、循環経路85と燃焼室15とを循環する。このため、エンジンオイルが燃焼した場合に発生する二酸化炭素も循環経路85と燃焼室15とを循環するが、二酸化炭素が発生し続けた場合、この二酸化炭素は低減する機会が無いため、循環経路85と燃焼室15とを循環する二酸化炭素は、増加し続ける。このため、CO2濃度センサ50で検出する二酸化炭素の濃度は、エンジンオイルが燃焼することにより発生した濃度の累積値となる。
従って、累積濃度取得部66で取得する二酸化炭素の濃度の累積値は、CO2濃度センサ50で検出することによる二酸化炭素の濃度の検出値を累積濃度取得部66によって累積した値ではなく、CO2濃度センサ50による検出結果そのものが、二酸化炭素の濃度の累積値になる。このように、累積濃度取得部66は、CO2濃度センサ50での検出結果を取得することにより、二酸化炭素の濃度の累積値を取得する。
また、異常判定部115は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値に基づいて、エンジンオイルの消費量が通常の運転時におけるエンジンオイルの消費量よりも多い否かを判定する、即ち、異常判定部115はエンジン80に異常が発生しているか否かの判定である異常判定を行う。
また、オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値が所定値より大きい場合には、エンジン80内におけるエンジンオイルの貯留量が低減し、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であると判定する。
図7は、実施例2に係るエンジンの処理手順を示すフロー図である。次に、実施例2に係るエンジン80の制御方法、即ち、当該エンジン80で使用するエンジンオイルの消費異常を検出する場合における処理手順について説明する。なお、以下の処理は、エンジン80の運転中に各部を制御する際に、所定の期間ごとに呼び出されて実行する。実施例2に係るエンジン80で、エンジンオイルの消費異常を検出する場合における処理手順では、まず、ECU110の処理部61が有する運転状態取得部62で、エンジン80の運転状態を取得する(ステップST201)。
次に、エンジンオイルの消費異常を検出する条件が成立したか否かを、ECU110の処理部61が有する検出条件成立判定部63で判定する(ステップST202)。この判定により、エンジンオイルの消費異常を検出する条件が成立していないと判定した場合には、この処理手順から抜け出る。
検出条件成立判定部63での判定(ステップST202)により、検出条件は成立していると判定した場合には、次に、排気ガス中の二酸化炭素の濃度の累積値を取得する(ステップST203)。この取得は、ECU110の処理部61が有する累積濃度取得部66で行う。循環経路85にはCO2濃度センサ50が設けられており、CO2濃度センサ50は循環経路85を流れる排気ガス中の二酸化炭素の濃度を検出可能に設けられているが、循環経路85を流れる二酸化炭素は、循環経路85と燃焼室15とを循環するため、CO2濃度センサ50で検出する二酸化炭素の濃度は、エンジンオイルが燃焼することにより発生した濃度の累積値となっている。このため、累積濃度取得部66は、CO2濃度センサ50で検出した二酸化炭素の濃度を取得することにより、循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度の累積値を取得する。
次に、累積CO2濃度変化度>正常変化度であるか否かを判定する(ステップST204)。この判定は、ECU110の処理部61が有する異常判定部115で行う。異常判定部115は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値の変化の度合いを累積CO2濃度変化度とし、エンジンオイルの消費速度の異常判定を行う際に用いる所定の変化の度合いを正常変化度とした場合に、累積CO2濃度変化度は正常変化度より大きいか否かを判定する。
ここで、累積CO2濃度変化度及び正常変化度について説明する。図8は、循環経路を流れるCO2濃度の変化についての説明図である。同図における横軸は時間の経過を示しており、縦軸は循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度を示している。循環経路85を流れるガスは、凝縮器100で凝縮する水蒸気以外は循環経路85と燃焼室15とを循環するため、エンジンオイルが燃焼室15で燃焼することにより二酸化炭素が発生した場合、その後二酸化炭素が発生しない場合でも、循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度は一定濃度121になる。
また、エンジンオイルが燃焼室15で燃焼し続けた場合には、循環経路85を流れる二酸化炭素は時間の経過と共に増加するが、燃焼室15に入り込むエンジンオイルの量が許容範囲内の場合には、二酸化炭素は少しずつ発生する。このため、許容範囲内で燃焼室15にエンジンオイルが入り込んでいる場合における二酸化炭素の濃度の変化の度合い、即ち、正常濃度122の変化度は、時間の経過に伴って少しずつ大きくなる。
これに対し、ピストンリング23とシリンダ14との隙間が基準値よりも大きくなることなどに起因して、燃焼室15に多量のエンジンオイルが入り込む状態になった場合には、循環経路85を流れる二酸化炭素は大幅に増加し、二酸化炭素の濃度は異常に増加する。このため、燃焼室15に多量のエンジンオイルが入り込み、多量のエンジンオイルを燃焼により消費する場合における二酸化炭素の濃度の変化の度合い、即ち、異常濃度123の変化度は、正常濃度122の変化度と比較して大きくなる。このため、異常判定部115は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値の変化度である累積CO2濃度変化度が、エンジンオイルの消費量が正常範囲内の場合における二酸化炭素の濃度の累積値の変化度である正常変化度よりも大きいか否かを判定することにより、エンジンオイルの消費量が異常であるか否かを判定する。
換言すると、異常判定部115は、図8で正常濃度122の変化度と異常濃度123の変化度とを比較する場合のように、累積CO2濃度変化度の傾きと正常変化度の傾きとを比較し、累積CO2濃度変化度の傾きは正常変化度の傾きより大きいか否かを判定する。このように、累積CO2濃度変化度によってエンジンオイルの消費速度の異常判定を行う際に用いられる正常変化度は、予めECU110の記憶部68に記憶されている。
異常判定部115での判定(ステップST204)により、累積CO2濃度変化度は正常変化度より大きいと判定された場合、つまり、累積CO2濃度変化度>正常変化度であると判定された場合には、オイル消費異常判定をする(ステップST205)。即ち、異常判定部115で、エンジンオイルの消費速度は異常であるとの判定である異常判定を行い、ECU110の記憶部68に設けられるエンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグを、異常判定を行ったことを示す状態にする。
これに対し、異常判定部115での判定(ステップST204)により、累積CO2濃度変化度は正常変化度より大きくはないと判定された場合、つまり、累積CO2濃度変化度≦正常変化度であると判定された場合には、オイル消費正常判定をする(ステップST206)。即ち、異常判定部115で、エンジンオイルの消費速度は正常であるとの判定である正常判定を行い、ECU110の記憶部68に設けられるエンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグを、正常判定を行ったことを示す状態にする。
異常判定部115でオイル消費異常判定(ステップST205)をする、または、オイル消費正常判定(ステップST206)をした後は、次に、累積CO2濃度>累積上限CO2濃度であるか否かを、ECU110の処理部61が有するオイル貯留量判定部67で判定する(ステップST207)。オイル貯留量判定部67は、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値である累積CO2濃度が、予めECU110の記憶部68に記憶されている累積上限CO2濃度より大きいか否かを判定する。
オイル貯留量判定部67での判定(ステップST207)により、累積CO2濃度は累積上限CO2濃度より大きいと判定された場合、つまり、累積CO2濃度>累積上限CO2濃度であると判定された場合には、貯留量下限値未満判定をする(ステップST208)。即ち、オイル貯留量判定部67で、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であるとの判定を行い、ECU110の記憶部68に設けられるエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグを、貯留量は下限値未満であることを示す状態にする。
これに対し、オイル貯留量判定部67での判定(ステップST207)により、累積CO2濃度は累積上限CO2濃度より大きくはないと判定された場合、つまり、累積CO2濃度≦累積上限CO2濃度であると判定された場合には、貯留量下限値以上判定をする(ステップST209)。即ち、オイル貯留量判定部67で、エンジンオイルの貯留量は下限値以上であるとの判定を行い、ECU110の記憶部68に設けられるエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグを、貯留量は下限値以上であることを示す状態にする。
これらのように、エンジンオイルの消費速度が異常であるか否かの判定(ステップST204〜ST206)、及びエンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かの判定(ステップST207〜ST209)を行った後は、この処理手順から抜け出る。これらの判定により、エンジンオイルの消費速度が異常であるか否かを示すフラグや、エンジンオイルの貯留量は下限値未満であるか否かを示すフラグは、エンジン80や車両の制御を行う際における他の制御で参照され、このフラグの状態に基づいて制御する。
以上のエンジン80は、CO2濃度センサ50で検出した循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度の累積値を累積濃度取得部66で取得し、取得した累積値の変化の度合いである累積CO2濃度変化度が、ECU110の記憶部68に記憶された所定の変化の度合いである正常変化度より大きい場合には、異常判定部115で、エンジンオイルの消費量が通常の運転時におけるエンジンオイルの消費量よりも多く、エンジン80に異常が発生しているとの判定である異常判定を行う。即ち、エンジンオイルが燃焼室15で燃焼した場合、燃焼時に発生した二酸化炭素は排気ガスと共に循環経路85に流れ、さらに二酸化炭素は作動ガスであるアルゴンと共に循環経路85と燃焼室15とを循環する。このため、循環経路85に流れている二酸化炭素の濃度を検出し、検出した濃度の累積値の変化の度合いを判定対象として用いることにより、エンジンオイルの消費状態を推定できる。
つまり、例えば燃焼室15に入り込むエンジンオイルの量が少ない場合は、エンジンオイルは徐々に燃焼するため、二酸化炭素の濃度の累積値は徐々に増加する。これに対し、燃焼室15に入り込むエンジンオイルの量が多く、エンジンオイルの燃焼量が多い場合には、二酸化炭素が大量に発生するため、循環経路85を流れる二酸化炭素の濃度の累積値は、急激に増加する。このため、二酸化炭素の濃度の累積値が大きく変化している場合には、二酸化炭素は大量に発生していると判定することができる。従って、この二酸化炭素の濃度の累積値の変化度に基づいた判定を介して、エンジンオイルは大量に燃焼していると判定することができ、エンジンオイルは急速に消費されていると判定されていることができる。この結果、エンジンオイルの消費速度の異常を判定することができる。
また、循環経路85内の二酸化炭素の濃度の累積値を取得し、二酸化炭素が大量に発生しているか否かを判定することにより、循環経路85を流れるガス中の二酸化炭素の濃度を早期に検出することができる。これにより、循環経路85と燃焼室15とを循環する二酸化炭素の量が増加することに起因して熱効率が低下することを抑制できる。つまり、二酸化炭素は空気よりも比熱比が低いので、循環する二酸化炭素の濃度が高くなった場合には、循環するガス全体の比熱比が低下するが、循環経路85を流れるガス中の二酸化炭素の濃度を検出することにより、二酸化炭素の濃度が高くなった場合でも、この濃度の増加を早期に検出することができる。この結果、比熱比の低下に起因して熱効率が低下し、燃費が低下することを抑制できる。
また、ECU110の処理部61にオイル貯留量判定部67を設け、累積濃度取得部66で取得した二酸化炭素の濃度の累積値である累積CO2濃度が、ECU110の記憶部68に記憶された所定値である累積上限CO2濃度より大きい場合には、エンジンオイルの貯留量は、エンジン80を問題なく運転させるのに必要な量の下限値未満であるとオイル貯留量判定部67で判定をしている。この結果、エンジンオイルの貯留量がエンジン80の運転に必要な量未満の状態でエンジン80を運転し続けることを抑制することができる。
また、循環経路85と燃焼室15とを循環する作動ガスとして、空気よりも比熱比が高いガスであるアルゴンが用いられているので、燃焼室15で水素と酸素とを反応させて燃焼させる際に、燃焼時に発生するエネルギを効率良く利用することができる。つまり、アルゴンは空気よりも比熱比が高いため、温度が上昇した際に空気よりも膨張し易くなっている。このため、作動ガスとして空気よりも比熱比が高いガスであるアルゴンを用いることにより、燃焼室15での水素の燃焼時に燃焼室15のアルゴンの温度が上昇した場合、燃焼室15に空気が吸気された場合と比較してアルゴンは大きな圧力を発生するので、ピストン20に大きな圧力を付与することができる。従って、燃焼室15に水素や酸素と共にアルゴンを吸気させた場合は、水素や酸素と共に空気を吸気させた場合と比較して、同じ運転条件の場合でもピストン20に大きな圧力を付与することができ、より大きな出力を得ることができる。この結果、熱効率の向上を図ることができる。
また、循環経路85に凝縮器100が設けられているので、水素が燃焼した際に生成された生成物質である水分がアルゴンと共に循環経路85と燃焼室15とを循環することを抑制でき、循環する水分が増加し続けることを抑制できる。この結果、より確実に循環経路85を設けてアルゴンを循環させる形態、即ち、閉じられた経路でエンジンを運転させることができる。
なお、上述した説明では、燃焼室に入り込むエンジンオイルは、ピストンリング23とシリンダ14との隙間から入り込むものとして説明しているが、エンジンオイルは、例えばシリンダヘッド11に設けられるカムシャフト側から入り込む場合もある。この場合でも、燃焼室15にエンジンオイルが入り込んだ場合には、燃焼行程でエンジンオイルは燃焼するので、この燃焼時に発生した二酸化炭素の濃度に基づいて、エンジンオイルの消費状態を推定できる。即ち、エンジンに本発明を適用することにより、燃焼室15にエンジンオイルが入り込むことに起因するエンジンオイルの消費速度の異常を判定することができる。
また、上述した説明では、炭素を含むエンジンオイルが燃焼室15で燃焼した際に発生する炭素化合物として二酸化炭素を挙げて説明しており、二酸化炭素の濃度に基づいてエンジンオイルの消費状態を判定しているが、炭素を含むエンジンオイルが燃焼した際に発生する炭素化合物としては、二酸化炭素以外の場合もあり、例えば、一酸化炭素が発生する場合もある。エンジンオイルが燃焼した際に発生する炭素化合物は、エンジンオイルの成分や燃料の性状等により異なるため、炭素化合物濃度検出手段や炭素化合物濃度取得手段等、エンジンオイルの消費速度の異常の判定を行う際に用いる構成部分は、エンジンオイルの燃焼時に発生する炭素化合物に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、上述したエンジン1、80では、非炭素燃料として水素を用いているが、非炭素燃料は水素以外を用いてもよい。非炭素燃料は、常温、或いはエンジン1、80の使用環境時に気体になっており、酸化剤として用いられる酸素と反応することにより燃焼し、且つ、炭素が含まれていないガスであれば、水素以外のガスを用いてもよい。
また、実施例2に係るエンジン80では、作動ガスとしてアルゴンを用いているが、作動ガスはアルゴン以外を用いてもよい。作動ガスは、空気よりも比熱比が高いガスであればよく、例えばアルゴン以外の希ガスを用いるなど、アルゴン以外のガスを用いてもよい。
また、実施例2に係るエンジン80では、生成物質除去手段として、水分を凝縮することにより除去する凝縮器100が用いられているが、生成物質除去手段は、凝縮器100以外のものであってもよい。生成物質除去手段は、非炭素燃料が燃焼した際に生成される生成物質を除去することができるものであれば、その構成は問わない。
また、実施例1に係るエンジン1は、水素は燃焼室15に噴射可能に設けられており、実施例2に係るエンジン80では、水素は燃焼室15に噴射可能に設けられており、酸素は循環経路85に噴射可能に設けられているが、これらの噴射位置は実施例1、2に示した位置以外の位置でもよい。
さらに、実施例1、2に係るエンジン1、80は、燃焼室15で水素を燃焼させる際に、点火プラグ38で着火することにより水素を燃焼させているが、本発明を適用するエンジンは、燃料を自着火させるエンジンであってもよい。例えば、燃焼室15に空気のみを吸気した状態、または、アルゴンと酸素を吸気した状態で圧縮し、この圧縮によって温度を上昇させた状態で燃焼室15に燃料である水素を供給することにより自着火させるエンジンに本発明を適用してもよい。
以上のように、本発明に係るエンジンは、燃料に非炭素燃料を用いるエンジンに有用であり、特に、潤滑油として炭素を含む潤滑油を用いる場合に適している。
1、80 エンジン
11 シリンダヘッド
12 シリンダブロック
14 シリンダ
15 燃焼室
20 ピストン
23 ピストンリング
31 吸気通路
32 排気通路
38 点火プラグ
40 水素供給部
50 CO2濃度センサ
60、110 ECU
61 処理部
62 運転状態取得部
63 検出条件成立判定部
64 CO2濃度取得部
65、115 異常判定部
66 累積濃度取得部
67 オイル貯留量判定部
68 記憶部
69 入出力部
85 循環経路
90 酸素供給部
100 凝縮器
11 シリンダヘッド
12 シリンダブロック
14 シリンダ
15 燃焼室
20 ピストン
23 ピストンリング
31 吸気通路
32 排気通路
38 点火プラグ
40 水素供給部
50 CO2濃度センサ
60、110 ECU
61 処理部
62 運転状態取得部
63 検出条件成立判定部
64 CO2濃度取得部
65、115 異常判定部
66 累積濃度取得部
67 オイル貯留量判定部
68 記憶部
69 入出力部
85 循環経路
90 酸素供給部
100 凝縮器
Claims (6)
- 燃焼室に炭素を含まない燃料である非炭素燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃焼室に連通すると共に前記燃焼室で前記非炭素燃料が燃焼した後の排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられており、且つ、炭素を含む潤滑油が前記燃焼室で燃焼した際に発生すると共に前記排気通路を流れる炭素化合物の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段と、
前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度を取得する炭素化合物濃度取得手段と、
前記炭素化合物濃度取得手段で取得した前記炭素化合物の濃度が所定値より大きい場合に異常判定を行う異常判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関。 - さらに、前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度の累積値を取得する累積濃度取得手段と、
前記累積濃度取得手段で取得した前記炭素化合物の濃度の累積値が所定値より大きい場合に、前記潤滑油の貯留量は下限値未満であると判定する潤滑油貯留量判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。 - 燃焼室に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、
前記酸化剤と反応することにより燃焼すると共に炭素を含まない燃料である非炭素燃料を前記燃焼室に供給する非炭素燃料供給手段と、
両端が前記燃焼室に連通すると共に一端からは前記燃焼室で前記非炭素燃料が燃焼した後の排気ガスが前記燃焼室から流入し、他端からは前記燃焼室が吸気するガスが前記燃焼室に対して流出可能に設けられており、さらに、前記燃焼室との間で循環するガスである作動ガスが流通可能な経路である循環経路と、
前記循環経路に設けられており、且つ、炭素を含む潤滑油が前記燃焼室で燃焼した際に発生すると共に前記循環経路を流れる炭素化合物の濃度を検出可能な炭素化合物濃度検出手段と、
前記炭素化合物濃度検出手段での検出結果より前記炭素化合物の濃度の累積値を取得する累積濃度取得手段と、
前記累積濃度取得手段で取得した前記累積値の変化の度合いが所定の変化の度合いより大きい場合に異常判定を行う異常判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関。 - さらに、前記累積濃度取得手段で取得した前記累積値が所定値より大きい場合に、前記潤滑油の貯留量は下限値未満であると判定する潤滑油貯留量判定手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
- 前記作動ガスは、空気よりも比熱比が高いガスが用いられることを特徴とする請求項3または4に記載の内燃機関。
- さらに、前記循環経路には、前記非炭素燃料が燃焼した際に生成される生成物質を除去する生成物質除去手段が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の内燃機関。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008132548A JP2009281208A (ja) | 2008-05-20 | 2008-05-20 | 内燃機関 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008132548A Pending JP2009281208A (ja) | 2008-05-20 | 2008-05-20 | 内燃機関 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2009281208A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011096057A1 (ja) * | 2010-02-03 | 2011-08-11 | トヨタ自動車株式会社 | 作動ガス循環型エンジン |
JP2011163280A (ja) * | 2010-02-12 | 2011-08-25 | Honda Motor Co Ltd | 汎用型エンジンの空燃比制御装置 |
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-
2008
- 2008-05-20 JP JP2008132548A patent/JP2009281208A/ja active Pending
Cited By (6)
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