JP2009281166A - 合成樹脂製ダクトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 自動車用内燃機関の吸気システムや、空調システム・冷却風送風システムなどの一連のダクト系の一部として使用される合成樹脂製の通気ダクトにおいて、ダクトの気柱共鳴が予防できてダクト内の騒音の伝播を低減できるような合成樹脂製ダクトを、効率的かつ低コストに提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂により形成されたダクト壁を有するダクトであって、
ダクト壁の少なくとも一部をレーザー光線被照射部となして、被照射部をレーザー穴あけ加工によって複数の細孔が連設された細孔部とした合成樹脂製ダクトとする。ダクト壁が樹脂発泡体により形成された発泡部に、細孔部を設けることが好ましく、細孔をダクト壁面に対して斜めに開けることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 熱可塑性樹脂により形成されたダクト壁を有するダクトであって、
ダクト壁の少なくとも一部をレーザー光線被照射部となして、被照射部をレーザー穴あけ加工によって複数の細孔が連設された細孔部とした合成樹脂製ダクトとする。ダクト壁が樹脂発泡体により形成された発泡部に、細孔部を設けることが好ましく、細孔をダクト壁面に対して斜めに開けることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、合成樹脂などで形成されたダクトの内部に空気を通流する通気ダクトに関する。特に、ダクト壁の一部に通気性が与えられたダクトに関する。
合成樹脂製の通気ダクトは、特に自動車用内燃機関の吸気システムや、空調システム・冷却風送風システムなどの一連のダクト系の一部として使用されている。このようなダクト系においては、一般にダクト壁が非通気性素材からなるダクトが使用され、そのために、エンジンやファンやモータなどを騒音源とする騒音がダクト内を伝播したり、ダクト系に生ずる気柱共鳴が発生したりするので、かねてから騒音の低減が望まれていた。
ダクト系を伝播する騒音を低減する技術としては、拡径チャンバー部を設けるものや、ヘルムホルツレゾネータなどの共鳴型消音器を設けるものなどが開発・応用されているが、非通気性素材で形成されるダクト壁の一部に通気性を有する部分を設けて、ダクト系の気柱共鳴を予防して、ダクトを伝播する騒音の低減を図る技術、いわゆるポーラスダクトと呼ばれる技術が開発されている。
そのような機能を有するポーラスダクトダクトとして、特許文献1や特許文献2に記載されたような技術が知られている。これらの文献には、非通気性のダクト壁の一部に1つまたは複数の穴を設けて、適度な通気性を有する不織布などの多孔質材を、それらの穴を覆うように取付け、ダクト内部空間と外部空間とが多孔質材を通じて連通するようにしたダクトが記載されている。このようなダクトにおいては、多孔質材の通気度を調整することにより、ダクト系に生ずる気柱共鳴の発生を防止しながら、ダクト系を伝播する騒音の低減を図っている。
そして、特許文献1には、多孔質材を円筒状に成形してダクトに予め設けられた穴を覆い、熱収縮性繊維の熱収縮を利用してダクトに一体に固定する技術が、特許文献2には、ダクト開口部に対して多孔質材を溶着する技術が記載されている。
特開2000−282985号公報
特開2001−323853号公報
しかしながら、これら従来のポーラスダクトにおいては、その消音効果を高めるためにダクト壁面に適度な通気性を持たせることが必要であり、そのために不織布などの多孔質材を使用する必要があったので、多孔質材をダクト本体に取り付けるために特別な構造や製造工程を採用する必要が生じ、製造工程が複雑化するとともに、その製造コストも高いものとなっていた。
また、従来のポーラスダクトにおいては、通気度の調整はもっぱら多孔質材の仕様変更や多孔質材の面積すなわちダクトの孔形状の変更などによって行う必要があるため、多孔質材を作り直したりダクトの金型を変更する必要が生じたりするなど、その開発プロセスを効率的に進めることが難しかったので、その改善が望まれていた。
従って、本発明は、ダクトの気柱共鳴が予防できてダクト内の騒音の伝播を低減できるような合成樹脂製ダクトを、効率的かつ低コストに提供することを目的とする。
発明者は、鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂からなるダクト壁にレーザー穴あけ加工によって複数の細孔を穿設した細孔部を設けると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、熱可塑性樹脂により形成されたダクト壁を有するダクトであって、ダクト壁の少なくとも一部をレーザー光線の被照射部となして、この被照射部を、ダクト壁を貫通する複数の細孔が穿設された細孔部としたことを特徴とする合成樹脂製ダクトである。
ダクト壁に樹脂発泡体により形成された発泡部を設けて、発泡部に細孔部を設けても良い(請求項2)。また、細孔がダクト壁面に対して、斜めに開けられていることが好ましい(請求項3)また、細孔が略円形であり、その直径が0.05〜1.5mmであることが好ましく(請求項4)、あるいは、細孔が扁平形状であり、その幅が0.05〜1.5mmであることが好ましい(請求項5)。
また、本発明は、熱可塑性樹脂によりダクト本体を製造する工程、明滅するレーザー光線を走査することにより、ダクト壁の所定箇所にレーザー穴あけ加工を施して、ダクト壁を貫通する複数の細孔を穿設する工程、を備えることを特徴とする合成樹脂ダクトの製造方法である(請求項6)。
また、本発明の合成樹脂ダクトの製造方法において、細孔を穿設する工程で、対向するダクト壁に対して同時にレーザー穴あけ加工を施しても良く(請求項7)、または、合成樹脂ダクトにあらかじめ設けられた開口部からダクトの内面に向かってレーザー光線を照射してレーザー穴あけ加工を施すようにしても良い(請求項8)。
本発明の合成樹脂製ダクトによれば、レーザー穴あけ加工により細孔部に複数の細孔が穿設されているので、ダクトの気柱共鳴が予防できてダクト内の騒音の伝播を低減できる。また、そのようなダクトを効率的かつ低コストで製造できるという効果が得られる。また、本発明の合成樹脂製ダクトによれば、ダクト壁(細孔部)の通気度の調整を、レーザー穴あけ加工する細孔の大きさや数・間隔を調整することによって行うことができるので、その調整作業が容易であり、開発プロセスを効率的に進めることができる。
さらに、本発明の好ましい様態としてダクト壁の発泡部に細孔部を設けた場合には(請求項2)、発泡体により形成されたダクト壁部分は、レーザー加工による樹脂溶融量が少なく、細孔の加工を、正確かつ迅速に行うことができ、得られるダクトの外観も向上できるという効果が得られる。
また、本発明の好ましい様態として、細孔がダクト壁面に対して斜めに開けられている場合には(請求項3)、細孔部の通気度の調整が行いやすくなり、消音性能を向上させることができる。
また、細孔が略円形でその直径が0.05〜1.5mmであるようにした場合(請求項4)、あるいは、細孔が扁平形状でその幅が0.05〜1.5mmであるようにした場合には(請求項5)、細孔部の細孔部の通気度の調整が行いやすくなり、消音性能を向上させることができる。
また、請求項6の製造方法によれば、ダクト壁面に細孔部が設けられた合成樹脂製ダクトを効率的に製造することができ、更に請求項7の製造方法とした場合には、ダクトの両側のダクト壁面に細孔部が設けられた合成樹脂製ダクトを効率的に製造することができる。また、請求項8の製造方法とした場合には、ダクトの細孔部の外観をさらに向上させることができる。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の合成樹脂製ダクト1の外観を示す斜視図である。図2には、本発明の合成樹脂製ダクト1の断面を示す。本発明の合成樹脂製ダクトは、自動車のエンジンに空気を供給するための吸気システムの吸気ダクトの一部や、エアコンの送風ダクトの一部や、電池などを冷却するための送風ダクトの一部として他のダクトやエアクリーナや送風ユニットなどに接続して使用されるダクト部材である。
本発明の実施形態である吸音ダクト1は、合成樹脂(本実施形態ではポリプロピレン樹脂の発泡体)により形成されたダクト壁を有するダクト本体2にレーザー光線が照射される被照射部を設け、被照射部をレーザー穴あけ加工により複数の細孔を穿設した細孔部3としたダクトである。ダクト本体2は、その内部に空気を通流する中空の部材であり、その両端部には、前後する他のダクト部品などと接続すると共に、空気の流通経路を形成する円筒状ダクト部(口元部)22、22が設けられており、ダクト本体2の中央部には、ダクト壁が略平面状に形成された平坦部23が設けられている。細孔部3は平坦部23に設けられている。
ダクト本体2は、熱可塑性樹脂により形成されたダクトであり、特に本実施形態においては、ダクト本体2全体が、ポリプロピレン樹脂を発泡させた樹脂発泡体によって形成されている。好ましくは、ダクト壁が非通気性となるように、発泡樹脂体は独立気泡構造を有するものとするか、連続気泡構造の発泡体であればスキン層を有するものとするのが良い。
細孔部3には、図3に示すように、円形断面の細孔31、31(本実施形態では直径0.5mm)が、所定の間隔(本実施形態では4mm)で、幅36mm長さ44mmの長方形状をなすように格子状に穿設されている。すなわち、細孔部3全体にわたって、ダクトの周方向やダクトの長さ方向に細孔が分布するように配置されている。細孔31,31はダクト壁を貫通するように設けられており、ダクトの内部空間と外部空間とは、細孔31,31を通じて互いに連通するようになっている。
細孔部が適度な通気度を有するように、細孔31、31の大きさや間隔を調整するが、細孔31が円形断面の場合は、その直径が、0.05〜1.5mm、好ましくは、0.1〜0.7mmの範囲となるようにし、その間隔が0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmの範囲となるようにするのが良い。
細孔31、31は後述するレーザー穴あけ加工によって開けられた穴であり、図2に断面を示すように、ダクトの中央部では、ダクト壁面に対して略垂直に穴あけされているが、ダクト端部に近づくに従って、ダクト壁面に対して斜めに穴あけされている。
ダクト本体2を形成する素材としては、合成樹脂製ダクトが成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、種々のプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド6などのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など)が使用できる。また、レーザー穴あけ加工を効率的に行うために、ダクト本体2の細孔部3とする部分を樹脂発泡体からなる発泡部によって構成しておくことが好ましい。ダクトが効率的に成形でき、発泡部を形成できる樹脂材料としては、いわゆる発泡ブロー成形に使用されるようなポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が例示できる。これら樹脂は、レーザー穴あけ加工がしやすいように、レーザー光線を吸収するための着色(例えばカーボンブラックの混入)をしてダクト本体2に発泡成形する。
本発明の合成樹脂製ダクトの製造方法について説明する。まず、いわゆる発泡ブロー成形によってダクト本体の前駆体を製造し、前駆体の両端部を切除して、口元部22、22として、ダクト本体2を製造する。次に、図4に示すように、ダクト本体2にレーザー穴あけ加工を施す。まず、ダクト本体2を所定の位置姿勢で加工機にクランプなどによって固定する(固定構造は図示せず)。
そして、レーザー光線照射装置5からレーザー光線7を断続的に照射しながら、レーザー光線の光路を2軸のガルバノミラー装置6によって変更して、ダクト本体2の平坦部に設定されたレーザー光線被照射部にレーザー光線7が所定のパターンを走査するように照射する。レーザー光線が照射された部位は、熱可塑性樹脂からなるダクト壁が昇温し、樹脂が溶融し、その一部が蒸発・熱分解・燃焼などして、細孔31、31が穴あけされる。穴あけは1回のレーザー光線の照射によって行っても良いし、複数回の断続的な照射によって穴あけしても良い。細孔31はレーザー光線7の光路に沿って穴あけされるので、図4に示すように、ダクト壁面に略垂直な孔をあけることも、ダクト壁面に対し斜めに孔をあけることもできる。このようにして、明滅するレーザー光線7をダクト壁面に走査して、細孔31、31が所定のパターンでダクト壁に2次元的に分布して穿設された細孔部3が形成される。
照射するレーザー光線としては、Nd:YAGレーザーやCO2レーザー、ルビーレーザーなどが例示できる。
また、必ずしも必要ではないが、レーザー穴あけ加工を行う際に、ダクト本体2の内部に受光体を挿入配置しても良い。この受光体は、ダクト壁を貫通してきたレーザー光線を吸収するためのものであり、本実施形態のように反対側のダクト壁には穴あけしないようする場合には配置するのが好ましい。受光体は、レーザー光線の反射を抑え吸収する表面を有し、レーザー光線の照射によって焼損しにくいものが好ましく使用される。
本発明の作用効果を説明する。本発明の合成樹脂ダクトにおいては、レーザー穴あけ加工によって複数の細孔が穿設された細孔部がダクト壁の一部に設けられているので、多孔質材を用いたポーラスダクトと同様の消音効果を発揮することができる。すなわち、特定の形状となるように広がりを持つ細孔部全体にわたって、ダクト内外の空気の通流を可能とする細孔31、31が分布するように多数設けられているので、細孔部全体が、多孔質材と同様に特定の通気度を有するポーラス部分となって、同様の消音効果を発揮することができる。従って、本発明によれば、多孔質材を用いなくても、いわゆるポーラスダクトと同等の消音機能を持つ合成樹脂製ダクトが提供できる。
また、本発明によれば、レーザー穴あけ加工により細孔を設けたので、多数の細孔を効率的に穴あけすることができ、その生産が効率的に行える。また、ドリルによる穴あけ加工のように、切りくずが出たりバリが残ったりすることがないので、穴あけ加工後の後処理を簡略化することができる。
また、本発明では、多数の細孔を設けた細孔部を、一種の多孔質領域として活用しているので、細孔部3でダクト内外に出入りする空気の通気度の調整が、穴の大きさと密度(間隔)を調整することにより、容易に変更することができ、消音効果の調整が容易に行える。
また、上記実施形態のように、細孔部3を樹脂発泡体により形成されたダクト壁部分(以下発泡部とも言う)に設けた場合には、以下に説明するように、レーザー穴あけ加工の精度・効率が格段に向上する。
レーザー穴あけ加工は、レーザー光線の照射による熱により、レーザー光線の光路上に存在する樹脂を除去して穴あけする加工であるので、中実の(ソリッド状の)ダクト壁に穴あけする場合には、以下のような問題を生ずることがある。まず、光路上のすべての樹脂を溶融・蒸発・熱分解・燃焼などさせて除去することになるので、多量のエネルギーを投入する必要から加工時間が長くなったりする。また、穴の周辺に与える熱影響が比較的大きいため、穴の周辺形状が正確に出なかったり、影響が著しい時にはダクト壁の基本形状が変化したりすることがある。また、溶融した樹脂や、樹脂の燃焼・分解残滓が穴の周辺に残ったり、熱影響部が変色したりするなど、ダクトの外観上の不具合となることもある。
一方、細孔31を加工する部位を発泡樹脂からなる発泡部とすれば、発泡樹脂はその微細構造が膜や糸・柱状の構造からなり、残りの部分は空気であるため、そもそも、光路上に存在する樹脂量が少なく、投入するエネルギー量も少なくてすむので、加工を迅速に行える。そのうえ、レーザー光線の照射により昇温し溶融した樹脂が、その表面張力によって細孔の周辺部分に取り込まれるようになるので、開孔がすばやく行え、蒸発・熱分解・燃焼によって除去すべき樹脂量を減らすことができ、孔の周辺の熱影響部が小さくなるとともに、燃焼残滓も少なくなって、美観に優れ、穴の形状も正確な細孔が得られる。
また、ダクト壁の発泡部に細孔部3を設ければ、細孔31、31が、その内周面で発泡樹脂の気泡構造と互いに連通するようになり、細孔を通過しようとする音波を吸収する作用が生じ、消音効果が向上する。
また、ダクト壁に対して斜めに細孔31、31を設けた場合には、ダクト壁の厚みよりも長い細孔をあけることができるので、細孔の断面(直径など)が同じであっても、細孔を通過する空気の流動抵抗を高くすることができ、細孔部の通気度を抑えたい場合に特に有効であり、通気度の調整が行いやすくなる。また、細孔と発泡樹脂の気泡構造が連通することによる消音効果も、細孔を斜めにあけることで、細孔と気泡構造が連通する部分が多くなって、より効果が高められる。このような斜めの細孔はレーザー穴あけ加工によってあけることができる。
細孔部3全体にわたって、細孔31、31がダクト壁に対して斜めにあけられるようにしても良いが、上記実施形態のように、斜めの細孔と、略垂直にあけられた細孔とが混在するようにしても良い。また、レーザー光線の照射方向に対して、ダクト壁面を斜めに固定するようにすれば、細孔部3全体にわたって、細孔31、31がダクト壁に対して斜めにあけられたダクトを得ることもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその性質を大きく変えない範囲で、以下のような改変を加えて実施することもできる。
上記実施形態では、ダクトに平坦部23があり、平坦部23にレーザー光線を照射して細孔部3を設けた例を示したが、ダクトの形状はこれに限定されず、通常の円断面のダクトや、楕円断面のダクト、長円断面のダクトなど、多様な断面のダクトにおいて、本発明は実施できる。本発明は、レーザー穴あけ加工により細孔を設けるので、ダクトの表面形状や細孔の方向(垂直/斜め)に関わりなく穴あけ加工できる。
図5及び図6には、レーザー穴あけ加工工程の他の実施形態を示す。上述した実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明は省略し、異なる点を中心に説明する。図5は、合成樹脂製ダクトにレーザー穴あけ加工を行う第2の実施形態を示す図である。本実施形態においては、あらかじめ成形されたダクト本体2を加工機に固定した後、以下のようにレーザー穴あけ加工(細孔部の加工)を行う。
レーザー光線照射装置5からレーザー光線7を断続的に照射しながら、レーザー光線の光路を2軸のガルバノミラー装置6によって変更して、ダクト本体2にレーザー光線7が所定のパターンで走査するように照射する。さらに、本実施形態においては、レーザー光線の強度や照射時間を調節して、レーザー光線7が、ガルバノミラー装置6に近い側のダクト壁2aと、それと対向するダクト壁2bの両方に対して照射され、両方のダクト壁に対して細孔が穴あけされるように照射する。このようにすれば、ダクト本体の両面2a,2bに同時に細孔を穴あけ加工することができ、本発明の合成樹脂製ダクトをさらに効率的に製造することができる。
また、ダクト本体へのレーザー光線の照射は、図4や図5に示したように、通常はレーザー光線がダクト外表面からダクトの内表面に向かう方向に照射されるが、それには限定されず、図6に示すように、ダクトに予め設けられた連通管の孔(図示例)や、口元部の開口などを通じて、レーザー光線をダクトの内表面に、ダクト内表面からダクトの外表面に向かう方向で照射して穴あけしても良い。このような実施形態とすれば、ダクトを固定しなおすことなく、レーザー照射機から離れた側のダクト壁2bにも細孔を加工することができ、ダクトの製造工程をさらに効率化することができる。また、図6に示すレーザー光線の方向で穴あけした場合には、ダクトの外表面の側が、細孔が最後に貫通する側となるために、ダクト表面に現れる熱影響部を最小限にすることができ、より美観に優れた細孔部の穴あけを行うことができる。
また、細孔の形状は、上述したような円形断面のものに限定されず、図7に示すような、偏平な長円断面の細孔32,32としても良い。このような長円断面の細孔は、ガルバノミラー装置によりレーザー光線の光路を連続的に変更しながらレーザー光線を照射することによって穴あけすることができる。細孔をこのような偏平断面とすると、細孔の断面積の割には、細孔を通過する気体の流動抵抗が大きくなるので、細孔部の通気度を抑えたい場合に特に有効であり、通気度の調整が行いやすくなる。また、細孔と発泡樹脂の気泡構造が連通することによる消音効果も、細孔を偏平断面とすることで、細孔と気泡構造が連通する部分が多くなって、より効果が高められる。
図7に示すような偏平形状の細孔32、32とする場合には、偏平形状の幅dが0.05〜1.5mm、好ましくは、0.1〜0.7mmの範囲となるようにするのがよい。また、細孔の長辺の方向が、細孔が隣接する方向(図示a方向やb方向)と一致しないように、より好ましくは、25度から45度の角度をなすように、細孔の方向を決定するのが好ましく、そのようにすれば、細孔部の機械的強度の低下を防止できる。
細孔31の孔径や、孔数はダクト1に要求される通気度に応じて定めればよいが、細孔31、31が2次元的に分布するように配置される細孔部3の大きさは、ダクトの長さ方向やダクトの周方向に対し所定の長さや幅をもって設けられることが好ましい。細孔部3は、好ましくはダクトの長さ方向に沿って、10〜300mm、より好ましくは20〜200mmの長さを有し、ダクトの周方向には、ダクト周長の1/12以上、より好ましくは1/6以上の幅を有する大きさにするのが、消音性能上好ましい。
細孔31、31は上記実施形態のように、格子状に配置してもよいが、配置方法はこれに限定されず、三角形や六角形をなす格子状に配置しても良く、細孔間の間隔を細孔部3の中で変化させても良い。
また、上記実施の形態においては、ダクト本体2の全体が樹脂発泡体で構成されるダクトを例に説明したが、本発明においては、必ずしもダクト全体を発泡体で構成する必要はなく、ダクトの一部を樹脂発泡体で構成し、残りの部分を発泡していない樹脂で構成しても良い。そのようなダクトは、個々のダクト部分をそれぞれ分割して製造し、それらを溶着や接着などの手段により一体化することによって製造される。このようにして製造したダクトにおいては、特に樹脂発泡体部分にレーザー穴あけ加工を施すことが好ましい。例えば、図8に示す形態のように、短円筒状の口元部22’,22’を射出成形などの手段によって発泡していない樹脂により成形し、残りの部分を発泡部24として発泡ブロー成形などにより成形して、これら口元部22’、22’と発泡部24とを互いに熱溶着するなどして一体化してダクト本体2となして、発泡部24に細孔31、31を設けた細孔部3、3を設けるようにしても良い。この実施形態に示すように、細孔部3を複数箇所に設けることもでき、その場合は、消音性能をより高めることができる。
また、上記実施形態においては、主にレーザー光線の光路を変更して、穴あけ位置を変更する製造方法について説明したが、所要の姿勢に固定したダクトの側を数値制御移動装置などによって移動させて穴あけ位置を変更しても良いことは明らかである。
また、細孔が穿設された細孔部3を不織布や織布などの繊維集合体で覆って、細孔部の通気度を調整しても良く、細孔部の通気度を抑えたい場合には特に有効である。
以下、本発明の実施例及びその騒音試験結果について説明する。
発泡ポリエチレン樹脂のブロー成形により、ダクト径50mm、ダクト長400mmの図11に示すようなダクト本体2を得た。これを比較例1(孔なし)とした。ダクト本体2に直径d2=5mmの孔をダクト端から100mmの位置に1つ開け、これを比較例2(穴直径5mm×1個)とした(図12)。また、ダクト本体2に直径0.5mmの細孔34を40mm×40mmの領域に分布するように100個、レーザー穴あけ加工により穴あけして細孔部を設け、実施例とした(図13)。なお、細孔部はその中心がダクト端から100mmに位置するように設けた。
発泡ポリエチレン樹脂のブロー成形により、ダクト径50mm、ダクト長400mmの図11に示すようなダクト本体2を得た。これを比較例1(孔なし)とした。ダクト本体2に直径d2=5mmの孔をダクト端から100mmの位置に1つ開け、これを比較例2(穴直径5mm×1個)とした(図12)。また、ダクト本体2に直径0.5mmの細孔34を40mm×40mmの領域に分布するように100個、レーザー穴あけ加工により穴あけして細孔部を設け、実施例とした(図13)。なお、細孔部はその中心がダクト端から100mmに位置するように設けた。
得られたダクトサンプルを用いて騒音試験を行った。なお、騒音試験は、ダクトサンプルを、スピーカーが内蔵された音源チャンバーから伸びるダクトに、各ダクトサンプルを接続した上で、スピーカーからホワイトノイズ騒音を出して、ダクト内を伝播する騒音を測定して行った。騒音の測定は、各ダクトサンプルの両端部の内部に設けたマイクロフォンによって行い、測定された騒音をそれぞれ周波数分析して、各周波数ごとに(スピーカーに近い側の騒音レベル)/(スピーカーから遠い側の騒音レベル)を計算したレベル差(dB)を各ダクトの音響減衰量としてグラフ表示させて、各ダクトの消音性能を評価した。ここで、音響減衰量の数値が高いほど、ダクトの消音効果が高いことを意味し、音響減衰量の数値が小さいほど、ダクトの消音効果がないことを意味する。
図9に各ダクトの音響減衰量の評価結果を示す。今回のダクトサンプルでは、いずれのサンプルとも、400Hz付近と、750Hz付近に、音響減衰量が小さくなる周波数領域が存在し、この周波数域で、ダクト内に気柱共鳴が発生しており、この周波数域の音響減衰量の大小が、ダクト内を伝播する騒音の消音性能の良否に対し支配的となっていることがわかる。しかして、本発明実施例のダクトサンプルにおいては、この周波数領域において、比較例1(孔なし)や比較例2(φ5孔1個)に対し、音響減衰量の落ち込みが少なくなっており、ダクト内を伝播する騒音の低減、特に気柱共鳴の抑制に効果的であることがわかる。
図10は、上記1次気柱共鳴周波数付近(400Hz付近)と、2次気柱共鳴周波数付近(750Hz付近)における、比較例1(孔なし)との音響減衰量の差を、気柱共鳴緩和レベルとして表示したものである。なお、グラフの横軸は、孔の大きさ(と数)に対応している。グラフ右端の孔直径5mmのものが比較例2に対応し、穴直径0.5mmのものが実施例(φ0.5を100個)に対応している。なお、孔径と孔の数は、孔の総断面積が等しくなるように決定しており、図10には、穴直径2.5mmを4個、あるいは、穴直径1.5mmを11個、穴直径1.0mmを25個、穴直径0.7mmを51個、穴直径0.4mmを156個、穴直径0.3mmを278個設けたような、本発明の他の実施例の結果も示している。本グラフによれば、穴直径1.5mmの孔を11個空けた例でも、かなりの気柱共鳴緩和効果が得られることがわかり、特に、孔直径を0.7mm以下にすればかなり高い気柱共鳴緩和効果が得られることがわかる。
なお、図10に放射音悪化レベルとして表示しているのは、図9に示す音響減衰量の測定結果において、周波数40Hzにおける音響減衰量を、比較例1(孔なし)と比較した数値であり、この数値が大きいほど、孔部分からダクト外部に漏れ出る騒音が大きいことを意味している。図10に示すように、孔の総面積は同じであっても、孔が小さく、数が多くなるほど、細孔部分から放射される放射音のレベルが小さくなることがわかる。
本発明によれば、多孔質材を使用したいわゆるポーラスダクトとほぼ同等の消音性能が達成できるような合成樹脂製ダクトが提供でき、その生産効率が高く、低コストで製造することができる。この合成樹脂製ダクトは、吸気ダクトや送風ダクトなど、空気を通流する種々のダクト系の一部として使用することができ、産業上の利用価値が高い。
1 合成樹脂製ダクト
2 ダクト本体
22 口元部
23 平坦部
3 細孔部
31、32 細孔
5 レーザー光線照射装置
6 ガルバノミラー装置
7 レーザー光線
2 ダクト本体
22 口元部
23 平坦部
3 細孔部
31、32 細孔
5 レーザー光線照射装置
6 ガルバノミラー装置
7 レーザー光線
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂により形成されたダクト壁を有するダクトであって、
ダクト壁の少なくとも一部をレーザー光線の被照射部となして、この被照射部を、ダクト壁を貫通する複数の細孔が穿設された細孔部としたことを特徴とする合成樹脂製ダクト。 - ダクト壁が樹脂発泡体により形成された発泡部に、細孔部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製ダクト。
- 細孔がダクト壁面に対して、斜めに開けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製ダクト。
- 細孔が略円形であり、その直径が0.05〜1.5mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製ダクト。
- 細孔が扁平形状であり、その幅が0.05〜1.5mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製ダクト。
- 熱可塑性樹脂によりダクト本体を製造する工程、
明滅するレーザー光線を走査することにより、ダクト壁の所定箇所にレーザー穴あけ加工を施して、ダクト壁を貫通する複数の細孔を穿設する工程、
を備えることを特徴とする合成樹脂ダクトの製造方法。 - 請求項6に記載の合成樹脂ダクトの製造方法であって、
細孔を穿設する工程において、対向するダクト壁に対して同時にレーザー穴あけ加工を施すことを特徴とする合成樹脂ダクトの製造方法。 - 請求項6に記載の合成樹脂ダクトの製造方法であって、
細孔を穿設する工程において、合成樹脂ダクトにあらかじめ設けられた開口部からダクトの内面に向かってレーザー光線を照射してレーザー穴あけ加工を施すことを特徴とする合成樹脂ダクトの製造方法。
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-
2008
- 2008-05-20 JP JP2008131477A patent/JP2009281166A/ja active Pending
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