JP2009270314A - 斜面安定化工法、及びこれに用いる支圧部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アンカー1の上部にボルト取付用部材3を取付け、ボルト取付用部材3に3本以上の支圧力付与用のボルト4を、上から見てアンカー1を囲む態様で地表面に対して概ね垂直にかつ地上に突出するように取り付ける。支圧板5を各ボルト4を貫通させる態様で地表に配置し、各ボルト4に螺合させたナット17を締め付けて支圧板5に支圧力を発生させる。支圧力付与用のボルト4の径は小さいので、これに螺合させたナット17を締め付ける作業は、大径のアンカーのねじ部に螺合させた大きなナットを大きな力で締め付ける作業と異なり、特に困難ではない。
【選択図】図3
Description
支圧板32は、図12(ロ)に示すように、中心にアンカー挿通用穴33aをあけた底板33の中央部に穴33aを囲む態様で補強用のパイプ34を垂直に溶接固定し、これに補強用のリブ35を溶接固定して補強した構造である。
アンカー31の上部は支圧板32の補強パイプ34を通って地上に突出しており、ナット36をアンカー31の上部のねじ部に螺合させ締め付けることで、支圧板32をアンカー31に対して引張り力を付与するように締着して地盤に対する支圧力を与える(特許文献1参照)。また、通常、アンカー31間に、アンカー引留効果等を期待できるワイヤロープ38が連結される。
自穿孔ロックボルトとして、ロッド径28.5mm、ビット径50mmの自穿孔ロックボルトがひろく用いられているが、この場合、内径50mmのアンカー挿入穴に外径28.5mmのアンカーが挿入され、両者の隙間にグラウトが充填されたアンカー構造となる。
従来、この種の斜面安定化工法が適用される斜面は、岩盤との間の不安定な表層土の厚みtが3.0m以下の地盤であるが、そのような地盤で前記サイズ程度のロックボルトを用いるアンカー構造の場合、アンカー設置間隔は最大2.0mとされている。
斜面安定化工法の施工コストは、斜面の施工領域に設置するアンカー本数が多い程、当然コストが高くなる。したがって、アンカー間隔を広げることができれば、施工領域のアンカー本数が少なく済み、これにより施工能率が向上し、また、施工コストが安くなる。
すなわち、アンカーを大径にした場合、そのアンカー径に見合う大きな引張り力が生じるようにナットを強力な締付け力で締め付ける必要があるが、大きなナットをそのような強力な締め付け力で締め付ける作業は困難であり、斜面での作業性を考慮すると実用的な方法ではない。
アンカーの上部にボルト取付用部材を取付け、このボルト取付用部材に3本以上の支圧力付与用のボルトを、上から見てアンカーを囲む態様で地表面に対して概ね垂直にかつ地上に突出するように取り付け、支圧板を前記3本以上のボルトを貫通させる態様で地表に配置し、各ボルトでボルト取付用部材と支圧板を緊結して支圧板に支圧力を発生させることを特徴とする。
上記において、「(アンカーを)挿入」とは、事前に削孔された穴にアンカーを挿し入れかつ穴内にグラウトを充填する場合、及び、事前に削孔せずにアンカーを貫入する場合のいずれも含む。
アンカーの上部に固定されるボルト取付用部材と、このボルト取付用部材に、上から見てアンカーを囲む態様で地表面に対して概ね垂直にかつ地上に突出するように取り付けられる3本以上のボルトと、前記3本以上のボルトを貫通させる態様で地表に配置される支圧板と、各ボルトに螺合して支圧板を締着するためのナットとからなることを特徴とする。
前記ボルト取付用部材が支圧板と平行で支圧板と概ね同じ大きさの平面形状を有することを特徴とする。
前記ボルト取付用部材は、アンカーとして用いられたロックボルトの頂部に螺合するロックボルト連結用の筒状めねじ部材であるカップリングと、このカップリングに固定された平板部材と、この平板部材に垂直に取り付けられた支圧力付与用のボルトとからなることを特徴とする。事前
例えば支圧力付与用のボルトが3本の場合、強度的にボルトに要求される断面積はアンカー断面積の3分の1であり、ボルト径dはアンカー径Dと比べて充分細い。
したがって、アンカー上部のねじ部に螺合させたナットを締め付けて支圧板を締着する従来方法と比べて、支圧板を締着するためのナットは小さく、かつこれを締め付ける締め付け力も軽いものとなる。
したがって、支圧板を締着する作業が困難になることなしに、アンカー径を大径にすることができる。これにより、斜面安定化の効果を損なわずに、アンカー設置間隔を広くすることが可能となる。
アンカー設置間隔が広くなることで設置アンカー本数が少なく済み、斜面安定化工法の施工能率を向上させることができ、また施工コストを低減することができる。
これらの図に示すように、斜面安定化工法では、斜面に多数のアンカー1を分布させて挿入し、各アンカー1に取り付けた支圧板5をアンカー1に対して引張り力を付与するように締着して地盤に対する支圧力を与える。
前記支圧板5とボルト取付用部材3と3本以上のボルト4により、支圧部材2を構成する。
なお、図4(イ)では、中心部分の上部構造を明瞭に表すために、左右の2本の支圧力付与用のボルト4の間隔を広げて図示している(左右のボルト4の本来の位置は図4(ロ)の位置である)。
8は本来はロックボルト1を連結するために用いるカップリングであり、ロックボルト1に螺合するめねじを内面に形成した筒状部材である。このカップリング8に、当該カップリング8を通す穴をあけた概略三角形のプレート9を溶接固定しさらに補強用のリブ10をカップリング8の外周とプレート9の面とに溶接固定して、ボルト取付用部材3を構成している。
プレート9には3本の支圧力付与用のボルト4をそれぞれ通すボルト挿通穴9aをあけており、このボルト挿通穴9aにボルト4を下から通し、ボルト頭部をプレート9に溶接して、ボルト4をプレート9に固定している。
図示例のようにボルト4をプレート9に溶接固定しておくと、ボルト4に支圧板5を装着する作業が容易になる。しかし、ボルト4を単にボルト挿通穴9aに挿通させる構成としてもよい。この場合は、施工時にボルト4をボルト取付用部材3のボルト挿通穴9aに通す。
各補強リブ14の補強パイプ13下端に接する箇所にワイヤロープ挿通用の切欠き14aを形成している。
支圧板5間を連結するためのワイヤロープ15は、この切欠き14aを通して補強パイプ13の回りを廻らすことで、支圧板5と係合させる。
この実施例では、支圧板5の底板12の形状とボルト取付用部材3のプレート9の形状が、いずれも概略三角形状で同じであり、かつ、両者を対向させている。
支圧板5の底板12のボルト挿通穴12aから上に突き出たボルト4に、ワッシャ16を介在させてナット17が螺合している。図示例のワッシャ16は球面ワッシャであり、ナット17は球面ナットである。球面ワッシャ16及び球面ナット17を用いることで、ボルト4が支圧板5の底板12に対して垂直でない場合でも、ナット17による充分な締め付けをすることができる。なお、図示例の球面ナット17は六角ナット部分17a部分と球面座金部分17bとを分離させたものである。
斜面に多数のアンカー1(破線で示す)を図1のような正三角形配置で設置する。アンカー間隔Pは、詳細は後述するが、従来のアンカー間隔2.0mより広く、例えば3.0mに取る。
アンカーの設置作業は、実施例の自穿孔ロックボルトの場合、例えば削岩機等を用いて、先端のビット23で穴をあけつつ穴に挿入していく。ロックボルトは従来の斜面安定化工法に用いる一般的なものより大径のものを用いる。この場合、アンカー設置箇所を、図3に示した凹所20のように若干掘って打設する。アンカー1を従来のものより大径にしたことで、表層土厚さtが従来より厚い地盤に斜面安定化工法を適用することが可能となる。
次いで、アンカー挿入穴21とアンカー1との間の隙間にグラウト22を充填する。
この実施例では、支圧力付与用のボルト4をボルト取付用部材3に溶接固定しているので、ボルト4も同時にアンカー1の上部に取り付けることになる。
この状態で、ボルト4は地上から突出している。
凹所20に土を埋め戻すか、モルタル等の充填材を充填した後、支圧板5を底板12の3つの穴12aにそれぞれボルト4が貫通するように、ボルト4に取り付ける。
次いで、ボルト4にワッシャ(球面ワッシャ)16を通しナット(球面ナット)17を螺合させる。
次いで、ナット17(六角ナット部分17a)を回し締め付けていくと、ボルト4に張力が発生してこれと一体のボルト取付用部材3に上向きの力が作用し、このボルト取付用部材3を介してアンカー1に上向きの力が作用し引張り力が発生する。このように、ナット17を回して、アンカー1に所定の引張り力が発生するように支圧板5を締着して、支圧板5に支圧力を発生させる。
この場合、3箇所のナット17を均等に締め付けるようにする。
この場合、斜面安定化の効果を損なわないために強度上ボルト4に要求される断面積はアンカー断面積の3分の1であり、ボルト径dはアンカー径Dと比べて充分細い。
例えばアンカー1の外径Dが50mmの場合、ボルト4の外径dは、
(π×d2)/4×3≧(π×502)/4
であるから、
d≧50/√3=28.8mmφ
であり、従来のロックボルト外径と同程度の径のボルトを使用すれば足りる。
仮に、外径50mmのアンカーの頭部にナットを螺合させ締着させるとした場合、ナットを締め付ける作業は、この太いアンカー径に見合う大きな引張り力が生じるようにナットを強力な締付け力で締め付ける作業となって極めて困難であり、作業性を考慮すると実用的な方法ではない。
しかし、上記の通り、3本の支圧力付与用のボルトにそれぞれ螺合させたナットを締め付ける作業は、従来程度であるから、支圧板5を締着する作業が困難になることなしに、アンカー径を大径に(すなわち、この実施例では28.5mmを50mmに)することができ、したがって、斜面安定化の効果を損なうことなく、アンカー設置間隔Pを例えば3.0mなどのように、従来のアンカー設置間隔2.0mより広く取ることが可能となる。
これにより、斜面安定化工法の施工能率を向上させることができ、また施工コストを低減することができる。
この場合、ワイヤロープ15を支圧板5の補強リブ14に設けた切欠き14aに通して、補強パイプ13に掛ける。ワイヤロープ15は例えば、ワイヤロープどうしを連結するターンバックルを回して緊張させ、各支圧板5間相互を適宜の張力で連結する。
以上により、アンカー1による地盤の補強効果と、支圧板5による土塊の押さえ込み効果と、ワイヤロープによる支圧板5・ボルト4を介してのアンカー引留効果等が相乗的に作用して、斜面の安定化が図られる。
したがって、ボルト取付用部材3をアンカー1の頂部に取り付けるためにあけた凹所20に埋め戻した土の圧密度が充分高くなる。これにより、施工後に支圧板5直下の土が圧縮されて、支圧板5の支圧力が低下する恐れはない。
しかし、上記実施例の斜面安定化工法では、支圧板5の底板12に作用する締付け力は3箇所以上に分散するので、必要な締付け力に対応する支圧板の剛性を確保することが容易である。
この実施例の支圧部材2Aは、支圧板5Aの底板12Aを四角形にしている。また、ボルト取付用部材3Aのプレート9Aも支圧板5Aの底板12Aに対応する同じ四角形としている。その他の点は、図4の支圧部材2と概ね同様であり、図4と同じ符号を付して説明を省略する。
この実施例の支圧部材2Bは、支圧板5Bの底板12Bとして厚板を用いて、上部の補強パイプ及び補強リブを省略したものである。支圧板5Bの底板12Bは、三角形の頂点部を面取りした形状の概略三角形であり、三方の面取り部近傍に設けた3つのボルト挿通穴にそれぞれボルト4が挿通している。
また、ボルト取付用部材3Bのプレート9Bも支圧板5Bの底板12Bに対応する同じ概略三角形としている。その他の点は、図4の支圧部材2と概ね同様であり、図4と同じ符号を付して説明を省略する。
この実施例の場合、底板12B上にワイヤロープを掛けるフック等の突起を設けてもよいし、また、支圧力付与用のボルト4に掛けて引き回すこともできる。
図8の支圧板5Cは底板12Cが四角形である。ボルト取付用部材3Cは支圧板5Cの形状に合わせている。
図9の支圧板5Dは底板12Dが円形である。ボルト取付用部材3Dは支圧板5Dの形状に合わせている。
また、図8、図9と同様に支圧板5Eがその底板12Eの上面に補強パイプや補強リブを持たない構造であり、底板12Eを厚板として強度を確保している。
支圧力付与用のボルト4を4本設けると、地面に不陸がある場合に、4本のうちの1箇所において、支圧板5Eの底板12Eと地面との間に隙間が生じ易いが、一方では、ボルト4の本数を増やすことで、ボルト4の断面積の合計が大きくなり、アンカー1を更に太くすることができて有利である。
例えば3本の支圧力付与用のボルトを設ける場合であれば、例えば図11に示したボルト取付用部材3Fのように、上から見て三方に延びるアーム9bを持つ三方アーム部材9Fをカップリング8に溶接固定しすることもできる。三方に延びる各アーム9bの先端近傍にボルト挿通穴9aを設け、このボルト挿通穴9aに支圧力付与用のボルト4を通し、溶接固定している。
また、上記の各実施例は、ボルト取付用部材とアンカーとの結合部分として、いずれもカップリング8を用いているが、これに限らず、種々の構造を採用できる。
また、支圧力付与用のボルトは、頭部付きボルトを図6とは上下逆にして用いてもよい。すなわち、ボルトの頭で支圧板を地表面に締着するように配置し、ボルト取付用部材にナットを固定してナットにボルトを螺合させ、ボルトの頭を回転させることでボルト取付用部材と支圧板を緊結してもよい。
また、実施例のような頭部付きのボルト4に限らず、ボルト取付用部材と支圧板を緊結できれば、どのようなボルトを使用してもよい。
また、支圧力付与用のボルトやナットのボルト取付用部材への固定手段は、ボルト取付用部材にあけたボルト挿通穴に挿通させて溶接固定する場合に限らず、種々設計変更できる。
また、アンカー部材は、実施例のように先端にビットを持つ自穿孔ロックボルトに限らず、ビットを持たず予めあけたアンカー穴に挿入するロックボルトでもよいし、また、ロックボルトに限らず、鉄筋その他、アンカーとしての作用を果たせるものであればよい。
また、上記実施例では支圧板間をワイヤロープで連結しているが、ワイヤロープを使用しない場合も考えられる。
2、2A、2B、2C、2D、2E 支圧部材
3、3A、3B、3C、3D、3E、3F ボルト取付用部材
4 支圧力付与用のボルト
5、5A、5B、5C、5D、5E 支圧板
6 ナット
8 カップリング
9 プレート
9a ボルト挿通穴
10 補強リブ
12、12A、12B、12C、12D、12E 底板
12a ボルト挿通穴
13 補強パイプ
14 補強リブ
14a (ワイヤロープを通す)切欠き
15 ワイヤロープ
16 ワッシャ(球面ワッシャ)
17 ナット(球面ナット)
17a 六角ナット部分
17b 球面座金部分
20 凹所
21 アンカー挿入穴
22 グラウト
23 ビット
P アンカー設置間隔
S 固い地盤
T 表層土厚さ
Claims (5)
- 斜面に多数のアンカーを分布させて挿入し、各アンカーに取り付けた支圧板をアンカーに対して引張り力を付与するように締着して地盤に対する支圧力を与える斜面安定化工法において、
アンカーの上部にボルト取付用部材を取り付け、このボルト取付用部材に3本以上の支圧力付与用のボルトを、上から見てアンカーを囲む態様で地表面に対して概ね垂直にかつ地上に突出するように取り付け、支圧板を前記3本以上のボルトを貫通させる態様で地表に配置し、各ボルトでボルト取付用部材と支圧板を緊結して支圧板に支圧力を発生させることを特徴とする斜面安定化工法。 - アンカーをその頂部が地上に突出しないように設置することを特徴とする請求項1に記載の斜面安定化工法。
- 請求項1又は2記載の斜面安定化工法に用いる支圧部材であって、
アンカーの上部に固定されるボルト取付用部材と、このボルト取付用部材に、上から見てアンカーを囲む態様で地表面に対して概ね垂直にかつ地上に突出するように取り付けられる3本以上のボルトと、前記3本以上のボルトを貫通させる態様で地表に配置される支圧板と、各ボルトに螺合して支圧板を締着するためのナットとからなることを特徴とする斜面安定化工法用の支圧部材。 - 前記ボルト取付用部材が支圧板と平行で支圧板と概ね同じ大きさの平面形状を有することを特徴とする請求項3記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
- 前記ボルト取付用部材は、アンカーとして用いられたロックボルトの頂部に螺合するロックボルト連結用の筒状めねじ部材であるカップリングと、このカップリングに固定された平板部材と、この平板部材に垂直に取り付けられた支圧力付与用のボルトとからなることを特徴とする請求項3又は4に記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
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