JP2009269980A - 樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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尚文 上野
Hideo Aoki
秀夫 青木
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Abstract

【課題】塩素系樹脂、特に塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、溶融成形時の加工性に優れた樹脂組成物と、成形外観及び耐衝撃性に優れたその成形品を提供する。
【解決手段】アクリルゴム(A1)50〜99.9質量部の存在下で、単量体混合物(a2)0.1〜50質量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)(但し、(A1)と(a2)の合計が100質量部)であって、単量体混合物(a2)が、イソブチルメタクリレート1〜99質量%を含有することを特徴とするグラフト共重合体(A)、塩素系樹脂(B)及び鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)を含有する樹脂組成物、及びその成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩素系樹脂、特に塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、溶融成形時の加工性に優れた樹脂組成物と、成形外観及び耐衝撃性に優れたその成形品に関する。
塩化ビニル樹脂は溶融温度と熱分解温度が近いため、成形加工可能な温度領域が限られている。このため、塩化ビニル樹脂の溶融成形に際しては、成形加工時の熱分解を抑制するために、種々の安定剤を配合することが行なわれている。塩化ビニル樹脂の熱分解を抑制するために配合する安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、錫系安定剤が挙げられる。
一方、塩化ビニル樹脂から得られる成形品は、耐衝撃性に劣ることが知られており、これを改良するために多くの方法が提案されている。例えば、ブタジエンゴムにビニル単量体をグラフト重合したMBS樹脂を配合する方法が提案されている。また、耐候性が必要とされる用途では、アクリルゴムにビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体を配合する方法が提案されている。
塩化ビニル樹脂の溶融成形時の加工性を改良し、且つ、耐衝撃性を改良する方法としては、特定の比粘度を有する成分を含むコアシェル重合体と、特定の酸又はアニオン系界面活性剤を配合する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1で提案されている方法は、塩化ビニル樹脂の溶融を促進させて、溶融成形時の加工性を改良する。
しかしながら、特許文献1で提案されている方法でも、溶融成形時の加工性と熱分解の抑制効果は十分ではなく、熱分解の抑制には多くの安定剤の配合が必要であり、溶融成形時の後期滑性を維持するには、多くの滑剤を配合することが必要であった。
特開2002−363372号公報
本発明の目的は、塩素系樹脂、特に塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、溶融成形時の加工性に優れた樹脂組成物と、成形外観及び耐衝撃性に優れたその成形品を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、アクリルゴムの存在下で、イソブチルメタクリレートを含有する単量体混合物をグラフト重合して得られるグラフト共重合体を用いることで、塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、溶融成形時の加工性を向上させ、成形品の成形外観及び耐衝撃性を向上させることが可能であることを見出した。
即ち、本発明の樹脂組成物は、アクリルゴム(A1)50〜99.9質量部の存在下で、単量体混合物(a2)0.1〜50質量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)(但し、(A1)と(a2)の合計が100質量部)であって、単量体混合物(a2)が、イソブチルメタクリレート1〜99質量%を含有することを特徴とするグラフト共重合体(A)、塩素系樹脂(B)及び鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)を含有する。
本発明の成形品は、上記の樹脂組成物を成形して得られる。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形時の加工性に優れ、塩素系樹脂、特に塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、成形外観及び耐衝撃性に優れた成形品を与えることができる。
本発明の成形品は、耐候性を損なうことなく、成形外観及び耐衝撃性に優れる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアクリルゴム(A1)は、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする単量体混合物(a1)を重合して得られる。
単量体混合物(a1)は、単官能単量体90〜99.99質量%と、多官能単量体0.01〜10質量%を含有することが好ましく、単官能単量体95〜99.95質量%と、多官能単量体0.05〜5質量%を含有することがより好ましい(但し、単官能単量体と多官能単量体の合計は100質量%)。
単量体混合物(a1)中の、単官能単量体の含有率が90質量%以上であれば、アクリルゴム(A1)が過剰に硬くなることがなく、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。単量体混合物(a1)中の、単官能単量体の含有率が99.99質量%以下であれば、アクリルゴム(A1)が弾性を示し、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。
単官能単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のアルキアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
尚、本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
単官能単量体は、アルキル(メタ)アクリレートの他に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;メタクリ基変性シリコーン等の各種ビニル単量体を含んでいてもよい。
多官能単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋剤;アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のグラフト交叉剤が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体混合物(a1)は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
また、アクリルゴム(A1)としては、シリコーンゴムとアクリルゴムからなる、シリコーン/アクリル複合ゴムを用いてもよい。
アクリルゴム(A1)は、単量体混合物(a1)を乳化重合して得られる。単量体混合物(a1)の乳化重合には、公知の方法を用いることができる。例えば、単量体混合物(a1)、乳化剤、重合開始剤及び水を混合して乳化液を調製し、これを重合すればよい。
乳化剤としては、例えば、アルケニルコハク酸ジカリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン鎖を含有する硫酸系塩、ポリオキシエチレン鎖を含有するスルフォン酸系塩が挙げられる。
乳化剤の添加方法としては、例えば、単量体混合物(a1)に予め混合する方法;単量体混合物(a1)の重合途中に、多段階に分けて添加する方法;単量体混合物(a1)とは別の滴下ラインを設けて、単量体混合物(a1)と乳化剤を同時に滴下する方法が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;前記過硫酸塩と還元剤の組合せからなるレドックス系開始剤;前記有機過酸化物と還元剤の組合せからなるレドックス系開始剤が挙げられる。
乳化液を調製する際には、ホモミキサー、インラインミキサー、ホモジナイザー等の機械的な強制乳化装置を用いてもよい。特に、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の疎水性の高い単量体を用いるときは、機械的に強制乳化することが好ましい。
アクリルゴム(A1)の粒子径及び粒子径分布を所定の範囲とするには、以下の方法が挙げられる。
(1)単量体混合物(a1)を仕込んで乳化重合する方法。
(2)単量体混合物(a1)を滴下して乳化重合する方法。
(3)単量体混合物(a1)の一部を仕込み、乳化重合でシード粒子を製造した後、シード粒子ラテックスの存在下で、単量体混合物(a1)の残りを滴下して重合する方法。
(4)単量体混合物(a1)の一部を仕込み、乳化重合でシード粒子を製造した後、シード粒子ラテックスの存在下で、単量体混合物(a1)の残りを仕込んで重合する方法。
アクリルゴム(A1)の質量平均粒子径は、100〜900nmであることが好ましく、120〜700nmであることがより好ましい。
アクリルゴム(A1)の質量平均粒子径が100nm以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。アクリルゴム(A1)の質量平均粒子径が900nm以下であれば、得られる成形品の引張り強度等の機械的特性が損なわれることがない。
アクリルゴム(A1)の質量平均粒子径は、光散乱法、キャピラリー式粒度分布計を用いて測定することができる。尚、本発明の質量平均粒子径は、質量を基準として、その粒子径分布における積算値の50%の値を示す。
本発明の単量体混合物(a2)は、イソブチルメタクリレート1〜99質量%と、他の単量体1〜99質量%を含有するものであり、さらには、イソブチルメタクリレート10〜80質量%と、他の単量体20〜90質量%を含有することが好ましい((a2)の全体は100質量%)。
単量体混合物(a2)中のイソブチルメタクリレートの含有率が1質量%以上であれば、塩素系樹脂(B)の溶融を促進し、且つ、グラフト共重合体(A)と塩素系樹脂(B)との相溶性が良好となり、得られる樹脂組成物の溶融成形時の加工性を向上させることができる。単量体混合物(a2)中のイソブチルメタクリレートの含有率が99質量%以下であれば、グラフト共重合体(A)粉体の取扱い性が良好であり、耐ブロッキング性も良好である。
単量体混合物(a2)が含有する、他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート;メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、メチルメタクリレートが好ましい。
また、単量体混合物(a2)は、必要に応じて、多官能単量体、連鎖移動剤を含有してもよい。
多官能単量体としては、アクリルゴム(A1)の重合に用いる多官能単量体と同様のものを用いることができる。
連鎖移動剤としては、アクリルゴム(A1)の重合に用いる連鎖移動剤と同様のものを用いることができる。
本発明のグラフト共重合体(A)は、アクリルゴム(A1)50〜99.9質量部の存在下で、単量体混合物(a2)0.1〜50質量部をグラフト重合して得られるものであり、さらには、アクリルゴム(A1)70〜90質量部の存在下で、単量体混合物(a2)10〜30質量部をグラフト重合して得られることが好ましい(但し、(A1)と(a2)の合計が100質量部)。
グラフト共重合体(A)の重合に用いるアクリルゴム(A1)の量が50質量部以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。グラフト共重合体(A)の重合に用いるアクリルゴム(A1)の量が99.9質量部以下であれば、得られるグラフト共重合体(A)の、塩素系樹脂(B)への分散性が向上する。
本発明のグラフト共重合体(A)は、アクリルゴム(A1)ラテックスの存在下で、単量体混合物(a2)をグラフト重合して得られるものであり、アクリルゴム(A1)への単量体混合物(a2)のグラフト重合は、乳化重合で行なう。乳化重合には公知の方法を用いることができる。例えば、アクリルゴム(A1)ラテックスの存在下で、単量体混合物(a2)を滴下して重合すればよい。
単量体混合物(a2)のグラフト重合に用いる乳化剤としては、アクリルゴム(A1)の重合に用いる乳化剤と同様のものを用いることができる。
乳化剤の添加方法としては、例えば、単量体混合物(a2)に予め混合する方法;単量体混合物(a2)の添加前に添加する方法;単量体混合物(a2)の重合中に多段階に分けて添加する方法が挙げられる。
単量体混合物(a2)のグラフト重合に用いる重合開始剤としては、アクリルゴム(A1)の重合に用いる重合開始剤と同様のものを用いることができる。
本発明のグラフト共重合体(A)は、質量平均粒子径が110〜1000nmであることが好ましい。
グラフト共重合体(A)の質量平均粒子径が110〜1000nmの範囲であれば、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。
本発明のグラフト共重合体(A)の粒子径分布(dw/dn)は、1.0〜1.3であることが好ましい。グラフト共重合体(A)の粒子径分布が1.0〜1.3であれば、溶融成形時の押出し機による負荷を効率的に塩素系樹脂(B)に伝えることができ、溶融成形時の加工性に優れる。
尚、アクリルゴム(A1)の存在下で、単量体混合物(a2)をグラフト重合した場合、単量体混合物(a2)がアクリルゴム(A1)にグラフトせず、単量体混合物(a2)のみが単独に重合したフリーポリマーが存在する。このように本発明のグラフト共重合体(A)は、グラフト共重合体とフリーポリマーとの混合物となるが、本発明においてはこれらを含めて、グラフト共重合体という。
本発明のグラフト共重合体(A)は、乳化重合によって得られたグラフト共重合体(A)ラテックスを、噴霧乾燥することによって、粉体として回収することができる。
また、グラフト共重合体(A)ラテックスを、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等の金属塩や、硫酸、塩酸等の酸を溶解した熱水中に投入し、グラフト共重合体(A)を凝析させ、これを分離、洗浄、乾燥することによって、粉体として回収することもできる。
さらに、グラフト共重合体(A)ラテックスを凍結凝固する方法によっても、粉体として回収することができる。
グラフト共重合体(A)を粉体として回収する際には、目的に応じて乳化剤、アクリル重合体のラテックス等を添加することができる。
乳化剤としては、アクリルゴム(A1)の重合に用いる乳化剤と同様のものを用いることができる。粉体として回収する際に乳化剤を添加することで、グラフト共重合体(A)ラテックスの安定性を向上させることができる。また、特開2002−363372号公報に提案されているように、得られる樹脂組成物の溶融成形時の加工性を向上させることができる。
アクリル重合体としては、単量体混合物(a2)を重合して得られるものを用いることができる。粉体として回収する際にアクリル重合体を添加することで、グラフト共重合体(A)粉体の耐ブロッキング性を向上させることができる。また、得られる樹脂組成物の溶融成形時の加工性を向上させることができる。
塩素系樹脂(B)は、含塩素系樹脂であれば特に制限はなく、例えば、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の鉛系安定剤(C1)としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、珪酸鉛が挙げられる。
鉛系安定剤(C1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の錫系安定剤(C2)としては、例えば、アルキル基、エステル基と脂肪酸塩、マレイン酸塩、含硫化物とから誘導される有機錫系安定剤が挙げられる。
錫系安定剤(C2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)、塩素系樹脂(B)及び鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)を含有する。
本発明の樹脂組成物は、塩素系樹脂(B)100質量部、グラフト共重合体(A)0.01〜30質量部((B)100質量部に対して)、鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)1〜7質量部((B)100質量部に対して)を含有することが好ましい。
樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、0.1〜20質量部((B)100質量部に対して)がより好ましく、0.5〜15質量部((B)100質量部に対して)がさらに好ましい。
樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量が、0.01質量部以上((B)100質量部に対して)であれば、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量が、30質量部以下((B)100質量部に対して)であれば、得られる成形品の引張り強度等の機械的特性が損なわれることがない。
樹脂組成物中の、鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)の含有量が、1質量部以上((B)100質量部に対して)であれば、溶融成形時の熱分解の抑制が十分であり、塩化ビニル樹脂(B)の分解によるヤケが発生しない。樹脂組成物中の、鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)の含有量が、7質量部以下((B)100質量部に対して)であれば、熱分解の抑制効果に対して添加量が過剰にならない。
本発明の樹脂組成物は、その特性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて、その他の安定剤、充填剤、耐衝撃性向上剤、加工助剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、耐熱性向上剤、離型剤、結晶核剤、流動性改良剤、着色剤、帯電防止剤、導電性付与剤、防曇剤、発泡剤、抗菌剤等の各種添加剤を添加することができる。
その他の安定剤としては、例えば、マグネシウム等の金属とラウリン酸等の脂肪酸とから誘導される金属石鹸系安定剤;バリウム等の金属と、分岐脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪環族酸、芳香族酸等の通常二種以上の有機酸とから誘導される金属塩系安定剤;これら安定剤を有機溶剤に溶解し、亜燐酸エステル等の安定化助剤を配合してなる金属塩液状安定剤;エポキシ樹脂等のエポキシ化合物;燐がアルキル基等で置換され、且つヒドロキノン等の芳香族化合物を有する有機亜燐酸エステル;BHT等のヒンダードフェノール、ベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン等の光安定剤;カーボンブラック等の紫外線遮蔽剤;トリメチロールプロパン等の多価アルコール;β−アミノクロトン酸エステル等の含窒素化合物;ジアルキルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物;アセト酢酸エステル等のケト化合物;有機珪素化合物;硼酸エステルが挙げられる。
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化チタン、クレー、タルク、マイカ、シリカ、ガラスビーズ等の無機質系充填剤;カーボンブラック、グラファイト等の炭素系充填剤;木粉等の天然有機物;シリコーン等の有機系充填剤;ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維;炭素繊維;ポリアミド等の有機繊維が挙げられる。
耐衝撃性向上剤としては、例えば、MBS、ABS、AES、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
加工助剤としては、例えば、(メタ)アクリレート系共重合体が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の芳香族多塩基酸のアルキルエステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート等の脂肪酸多塩基酸のアルキルエステル;トリクレジルフォスフェート等の燐酸エステル;アジピン酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール等の多価アルコールとからなる分子量600〜8,000程度の重縮合体の末端を、一価アルコール又は一価カルボン酸で封止したポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィンが挙げられる。
滑剤としては、例えば、流動パラフィン等の純炭化水素、ハロゲン化炭化水素;
高級脂肪酸等の脂肪酸;脂肪酸アミド;グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル;脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス);金属石鹸:脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール等のアルコール類;脂肪酸と多価アルコールとの部分エステルが挙げられる。
難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、ハロゲン化合物が挙げられる。
耐熱性向上剤としては、例えば、(メタ)アクリレート系共重合体、イミド系共重合体、スチレン−アクリロニトリル系共重合体が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)、塩素系樹脂(B)、鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)、及び必要に応じて各種添加剤を配合して、混練することにより得られる。配合及び混練の際には、少量の溶剤を用いてもよい。
混練方法としては、例えば、押出し機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダーを用いる方法が挙げられる。
混練の操作は、回分的又は連続的に行なってもよい。グラフト共重合体(A)と塩素系樹脂(B)の混合の順番は特に限定されない。
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物を成形して得られる。
成形方法としては、例えば、押出し成形、射出成形、真空成型、ブロー成型、ロール成形、プレス成形が挙げられる。
本発明の成形品は、建材、パイプ、自動車材料、玩具、文房具等の雑貨、OA機器、家電機器等の広い分野に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
各実施例、比較例での諸物性の測定は次の方法による。
(1)ラテックスの固形分濃度
ラテックスを180℃で30分間乾燥して求めた。
(2)質量平均粒子径、粒子径分布(dw/dn)
ラテックスを蒸留水で希釈したものを試料として、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布計を用いて測定した。測定条件は、MATEC社が推奨する標準条件で行なった。
即ち、専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジ及びキャリア液を用い、液性:ほぼ中性、流速:1.4ml/分、圧力:約4000psi(2600KPa)、温度:35℃を保った状態で、ラテックスを濃度約3%に希釈した試料0.1mlを測定に用いた。
標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを20〜800nmの範囲で合計12点用いた。
粒子径分布(dw/dn)は、粒子径測定で得られる質量平均粒子径(dw)及び数平均粒子径(dn)を用いて算出した。
(3)溶融位置測定
ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に、コニカル二軸押出しユニット(2D20−C)を取り付け、先端に外径20mm、厚さ1.5mmのダイを取付けた。樹脂配合物を、所定の温度条件で、フィーダー回転数:80rpm、押出しユニットのスクリュー回転数:50rpm又は54rpmで30分間押出した。
その後、フィーダー及び押出しユニットのスクリューを停止し、直ちに押出しユニットを分解し、スクリューに接している側の樹脂配合物の顔料が均一分散した位置を、出口側から数えたスクリューのピッチ数で評価した。
数値が大きいほど、樹脂配合物の溶融位置はフィーダー側に近く、溶融が速いことを示す。
(4)押出しトルク測定
上記(3)の溶融位置測定において、樹脂配合物の押出し開始から20〜30分に検出された押出しトルクの平均値により評価した。
(5)表面平滑性
上記(3)の溶融位置測定において、サイジングダイを取付けてパイプ成形物を引取り、パイプ成形品内面の平滑性を目視で評価した。
○:良好
△:若干不良
×:不良
(6)アイゾット衝撃強度
得られたシートをASTM D256の方法に準拠した大きさに切断し、23℃でアイゾット衝撃強度を測定した。
(製造例1) グラフト共重合体(A−1)凝固粉体の製造
(グラフト共重合体(A−1)ラテックスの調製)
攪拌翼、冷却管、熱電対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに、下記の単量体混合物(a1−1)を仕込み、窒素気流下で2時間攪拌後、内温を70℃に昇温させた。
単量体混合物(a1−1):
n−ブチルアクリレート 4.95部
アリルメタクリレート 0.025部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.025部
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.2部
脱イオン水 107.5部
次いで、下記の開始剤水溶液を添加し、重合を開始した。内温を70℃で90分間保持して、重合を完了した。
開始剤水溶液:
過硫酸カリウム 0.01部
脱イオン水 2.5部
この重合により、アクリルシード粒子(イ)ラテックスを得た。得られたアクリルシード粒子(イ)ラテックスの固形分は4.3%、アクリルシード粒子(イ)の質量平均粒子径は92nm、粒子径分布(dw/dn)は1.16であった。
得られたアクリルシード粒子(イ)ラテックスに、下記の還元剤水溶液を添加した。
還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0003部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.0009部
ロンガリット 0.03部
脱イオン水 2.5部
次いで、下記の単量体混合物(a1−2)を2時間かけて滴下し、内温を70℃で90分間保持して、重合を完了した。
単量体混合物(a1−2):
n−ブチルアクリレート 69.3部
アリルメタクリレート 0.35部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.35部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.35部
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.6部
脱イオン水 35部
この重合により、アクリルゴム(A1−1)ラテックスを得た。得られたアクリルゴム(A1−1)ラテックスの固形分は33.5%、アクリルゴム(A1−1)の質量平均粒子径は166nm、粒子径分布は1.11であった。
得られたアクリルゴム(A1−1)ラテックスに、下記の乳化剤混合物を添加した。
乳化剤混合物:
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.1部
ロンガリット 0.03部
脱イオン水 2.5部
次いで、下記の単量体混合物(a2)を1時間かけて滴下し、内温を70℃で90分間保持して、重合を完了した。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 20部
イソブチルメタクリレート 5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
この重合反応により、グラフト共重合体(A−1)ラテックスを得た。得られたグラフト共重合体(A−1)ラテックスの固形分は39.8%、グラフト共重合体(A−1)の質量平均粒子径は171nm、粒子径分布は1.12であった。
(グラフト共重合体(A−1)凝固粉体の調製)
得られたグラフト共重合体(A−1)ラテックスを、酢酸カルシウム5部を含む熱水200部中に滴下した。
グラフト共重合体(A−1)ラテックスを凝析させた後、濾過、洗浄し、65℃で16時間乾燥して、グラフト共重合体(A−1)凝固粉体を得た。
(製造例2) グラフト共重合体(A−1)SD粉体の製造
製造例1と同様にして、グラフト共重合体(A−1)ラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体(A−1)ラテックスを、噴霧乾燥装置(L−8:大河原製作所製)を用いて噴霧乾燥して、グラフト共重合体(A−1)SD粉体を得た。尚、噴霧乾燥装置の運転条件は、熱風入口温度:155℃、熱風出口温度:約70℃とした。
(製造例3) グラフト共重合体(A−2)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例2と同様にして、グラフト共重合体(A−2)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−2)ラテックスの固形分は39.9%、グラフト共重合体(A−2)の質量平均粒子径は170nm、粒子径分布は1.13であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 20部
イソブチルメタクリレート 5部
n−オクチルメルカプタン 0.025部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例4) グラフト共重合体(A−3)SD粉体の製造
単量体混合物(a1−2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例2と同様にして、グラフト共重合体(A−3)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−3)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−3)の質量平均粒子径は173nm、粒子径分布は1.11であった。
単量体混合物(a1−2):
2−エチルヘキシルアクリレート 69.3部
アリルメタクリレート 0.35部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.35部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.35部
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.6部
脱イオン水 35部
(製造例5) グラフト共重合体(A−4)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例4と同様にして、グラフト共重合体(A−4)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−4)ラテックスの固形分は39.9%、グラフト共重合体(A−4)の質量平均粒子径は170nm、粒子径分布は1.14であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 20部
イソブチルメタクリレート 5部
n−オクチルメルカプタン 0.025部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例6) グラフト共重合体(A−5)SD粉体の製造
攪拌翼、冷却管、熱電対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに、下記の単量体混合物(a1−1)を仕込み、窒素気流下で2時間攪拌後、内温を70℃に昇温させた。
単量体混合物(a1−1):
n−ブチルアクリレート 4.95部
アリルメタクリレート 0.025部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.025部
脱イオン水 107.5部
次いで、下記の開始剤水溶液を添加し、重合を開始した。内温を70℃で90分間保持して、重合を完了した。その後、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム0.2部を添加した。
開始剤水溶液:
過硫酸カリウム 0.01部
脱イオン水 2.5部
この重合により、アクリルシード粒子(ロ)ラテックスを得た。得られたアクリルシード粒子(ロ)ラテックスの固形分は4.3%、アクリルシード粒子(ロ)の質量平均粒子径は330nm、粒子径分布は1.07であった。
アクリルシード粒子(イ)ラテックスの代わりに、アクリルシード粒子(ロ)ラテックスを用いたこと以外は、製造例2と同様にして、グラフト共重合体(A−5)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−5)ラテックスの固形分は39.6%、グラフト共重合体(A−5)の質量平均粒子径は680nm、粒子径分布は1.06であった。
(製造例7) グラフト共重合体(A−6)SD粉体の製造
単量体混合物(a1−2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例6と同様にして、グラフト共重合体(A−6)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−6)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−6)の質量平均粒子径は693nm、粒子径分布は1.05であった。
単量体混合物(a1−2):
2−エチルヘキシルアクリレート 69.3部
アリルメタクリレート 0.35部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.35部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.35部
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.6部
脱イオン水 35部
(製造例8) グラフト共重合体(A−7)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例2と同様にして、グラフト共重合体(A−7)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−7)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−7)の質量平均粒子径は172nm、粒子径分布は1.12であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 25部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例9) グラフト共重合体(A−8)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例2と同様にして、グラフト共重合体(A−8)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−8)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−8)の質量平均粒子径は172nm、粒子径分布は1.12であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 20部
n−ブチルメタクリレート 5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例10) グラフト共重合体(A−9)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例4と同様にして、グラフト共重合体(A−9)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−9)ラテックスの固形分は39.8%、グラフト共重合体(A−9)の質量平均粒子径は175nm、粒子径分布は1.13であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 25部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例11) グラフト共重合体(A−10)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例4と同様にして、グラフト共重合体(A−10)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−10)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−10)の質量平均粒子径は173nm、粒子径分布は1.12であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 20部
n−ブチルメタクリレート 5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例12) グラフト共重合体(A−11)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例6と同様にして、グラフト共重合体(A−11)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−11)ラテックスの固形分は39.7%、グラフト共重合体(A−11)の質量平均粒子径は635nm、粒子径分布は1.10であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 25部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
(製造例13) グラフト共重合体(A−12)SD粉体の製造
単量体混合物(a2)の組成を下記のように変更したこと以外は、製造例7と同様にして、グラフト共重合体(A−12)SD粉体を得た。
グラフト共重合体(A−12)ラテックスの固形分は39.8%、グラフト共重合体(A−12)の質量平均粒子径は628nm、粒子径分布は1.09であった。
単量体混合物(a2):
メチルメタクリレート 25部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.25部
グラフト共重合体(A−1)〜(A−12)粉体の製造に用いた、アクリルシード粒子、単量体混合物(a1−2)、単量体混合物(a2)、ラテックスからの粉体の回収方法を、表1に示す。
Figure 2009269980
(実施例1〜7、比較例1〜6)
得られたグラフト共重合体(A−1)〜(A−12)粉体、塩素系樹脂(B)、鉛系安定剤(C1)及び各種添加剤を下記の比率Xで配合した。
グラフト共重合体粉体 4.0部
塩化ビニル樹脂(TK1000:信越化学(株)製) 100部
二塩基性亜リン酸鉛(DLP:堺化学(株)製) 2.5部
塩基性ステアリン酸鉛(DSL:堺化学(株)製) 0.7部
ステアリン酸鉛(SL1000:堺化学(株)製) 0.5部
ステアリン酸カルシウム(SAK−SC−P:品川加工(株)製)0.9部
ポリエチレンワックス
(HI−WAX220MP:三井化学(株)製) 0.1部
炭酸カルシウム(CCR:白石カルシウム(株)製) 5部
加工助剤(メタブレンP−551:三菱レイヨン(株)製 1部
顔料(DA EP4820 ブラウン:大日精化(株)製) 1部
得られた樹脂組成物を、ラボプラストミルの温度条件を「C1:160℃、C2:180℃、C3:200℃、D:210℃」として、ラボプラストミルの押出しユニットのスクリュー回転数:50rpmで諸物性の評価を行なった。評価結果を表2に示す。
また、樹脂組成物を、200℃に加熱した6インチロールで5分間混練した後、200℃に加熱したプレス成形機を用い、5MPaで4分間加圧した後、さらに冷却プレスにて5MPaで5分間加圧してシートを作製した。このシートをアイゾット衝撃強度の測定に用いた。
(実施例8〜10)
グラフト共重合体(A−1)SD粉体、(A−3)SD粉体、又は(A−5)SD粉体を用い、上記の比率Xで配合した樹脂組成物を用いて、ラボプラストミルの押出しユニットのスクリュー回転数:54rpmで諸物性の評価を行なった。評価結果を表2に示す。
Figure 2009269980
表2で明らかなように、実施例1〜7の樹脂組成物は、押出しユニット内での溶融が速く、且つ、溶融混練された樹脂組成物を低トルクで押出すことができ、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
これに対して、グラフト共重合体(A−7)SD粉体、(A−9)SD粉体、(A−11)SD粉体、又は(A−12)SD粉体(単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含まず、メチルメタクリレートのみ)を配合した比較例1、3、5、6の樹脂組成物は、押出しユニット内での溶融が遅く、溶融混練された樹脂組成物の押出しには高いトルクが必要であり、溶融成形時の加工性が劣る結果であった。
また、グラフト共重合体(A−8)SD粉体、又は(A−10)SD粉体(単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含まず、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート)を配合した比較例2、4の樹脂組成物も、押出しユニット内での溶融が遅く、溶融混練された樹脂組成物の押出しには高いトルクが必要であり、溶融成形時の加工性が劣る結果であった。
実施例8〜10は、実施例2、4、6と同じ樹脂組成物を用い、押出しユニットのスクリュー回転数を54rpmとして、溶融位置(ピッチ)を比較例1、3、5と同程度とした。
実施例8は、溶融位置が比較例1と同程度であっても、溶融混練された樹脂組成物を低トルクで押出すことができ、比較例1に対して溶融成形時の加工性に優れることを確認した。即ち、単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含む(A−1)SD粉体は、同じアクリルゴム(A1)を用い、単量体混合物(a2)がメチルメタクリレートのみの(A−7)SD粉体に対して、スクリュー回転数を変えた場合であっても、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
実施例9、10も同様に、比較例3、5に対して溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
即ち、単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含む(A−3)SD粉体、(A−5)SD粉体は、同じアクリルゴム(A1)を用い、単量体混合物(a2)がメチルメタクリレートのみの(A−9)SD粉体、(A−11)SD粉体に対して、スクリュー回転数を変えた場合であっても、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
樹脂組成物を低トルクで押出すことができれば、溶融混練の過程で樹脂組成物にかかる剪断力が低くなる。これによって、樹脂の剪断発熱を抑制することができ、安定剤の配合量を低減することができる。
また、樹脂組成物を低トルクで押出すことができることから、溶融成形時の後期滑性が不足することがなく、滑剤の配合量を低減することができる。
実施例1〜10で得られた成形品は、表面平滑性が良好であった。また、実施例1〜7の樹脂組成物を成形して得られた成形品は、高い耐衝撃性を示した。
また、評価結果を記載していないが、本発明のグラフト共重合体(A)は、ゴム成分としてアクリルゴムを用いているため、ブタジエンゴムを用いたグラフト共重合体に比較して、耐候性が良好である。これを配合して得られる成形品も、同様に、耐候性が良好である。
(実施例11〜17、比較例7〜12)
得られたグラフト共重合体(A−1)〜(A−12)粉体、塩素系樹脂(B)、錫系安定剤(C2)及び各種添加剤を下記の比率Yで配合した。
グラフト共重合体粉体 10部
塩化ビニル樹脂(TK700:信越化学(株)製) 100部
ジブチル錫マレート(TVS8813:日東化成(株)製) 3.5部
ステアリルアルコール(カルコール8098:花王(株)製) 0.8部
加工助剤(メタブレンP−700:三菱レイヨン(株)製 0.4部
顔料(DA EP4820 ブラウン:大日精化(株)製) 1部
得られた樹脂組成物を、ラボプラストミルの温度条件を「C1:150℃、C2:165℃、C3:180℃、D:190℃」として、ラボプラストミルの押出しユニットのスクリュー回転数:50rpmで諸物性の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
また、樹脂組成物を、190℃に加熱した6インチロールで5分間混練した後、190℃に加熱したプレス成形機を用い、5MPaで4分間加圧した後、さらに冷却プレスにて5MPaで5分間加圧してシートを作製した。このシートをアイゾット衝撃強度の測定に用いた。
(実施例18〜20)
グラフト共重合体(A−1)SD粉体、(A−3)SD粉体、又は(A−5)SD粉体を用い、上記の比率Yで配合した樹脂組成物を用いて、ラボプラストミルの押出しユニットのスクリュー回転数:54rpmで諸物性の評価を行なった。評価結果を表3に示す。
Figure 2009269980
表3で明らかなように、実施例11〜17の樹脂組成物は、押出しユニット内での溶融が速く、且つ、溶融混練された樹脂組成物を低トルクで押出すことができ、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
これに対して、グラフト共重合体(A−7)SD粉体、(A−9)SD粉体、(A−11)SD粉体、又は(A−12)SD粉体(単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含まず、メチルメタクリレートのみ)を配合した比較例7、9、11、12の樹脂組成物は、押出しユニット内での溶融が遅く、溶融混練された樹脂組成物の押出しには高いトルクが必要であり、溶融成形時の加工性が劣る結果であった。
また、グラフト共重合体(A−8)SD粉体、又は(A−10)SD粉体(単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含まず、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート)を配合した比較例8、10の樹脂組成物も、押出しユニット内での溶融が遅く、溶融混練された樹脂組成物の押出しには高いトルクが必要であり、溶融成形時の加工性が劣る結果であった。
実施例18〜20は、実施例12、14、16と同じ樹脂組成物を用い、押出しユニットのスクリュー回転数を54rpmとして、溶融位置(ピッチ)を比較例7、9、11と同程度とした。
実施例18は、溶融位置が比較例7と同程度であっても、溶融混練された樹脂組成物を低トルクで押出すことができ、比較例7に対して溶融成形時の加工性に優れることを確認した。即ち、単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含む(A−1)SD粉体は、同じアクリルゴム(A1)を用い、単量体混合物(a2)がメチルメタクリレートのみの(A−7)SD粉体に対して、スクリュー回転数を変えた場合であっても、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
実施例19、20も同様に、比較例9、11に対して溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
即ち、単量体混合物(a2)がイソブチルメタクリレートを含む(A−3)SD粉体、(A−5)SD粉体は、同じアクリルゴム(A1)を用い、単量体混合物(a2)がメチルメタクリレートのみの(A−9)SD粉体、(A−11)SD粉体に対して、スクリュー回転数を変えた場合であっても、溶融成形時の加工性に優れることを確認した。
樹脂組成物を低トルクで押出すことができれば、溶融混練の過程で樹脂組成物にかかる剪断力が低くなる。これによって、樹脂の剪断発熱を抑制することができ、安定剤の配合量を低減することができる。
また、樹脂組成物を低トルクで押出すことができることから、溶融成形時の後期滑性が不足することがなく、滑剤の配合量を低減することができる。
実施例11〜20で得られた成形品は、表面平滑性が良好であった。また、実施例11〜17の樹脂組成物を成形して得られた成形品は、高い耐衝撃性を示した。
また、評価結果を記載していないが、本発明のグラフト共重合体(A)は、ゴム成分としてアクリルゴムを用いているため、ブタジエンゴムを用いたグラフト共重合体に比較して、耐候性が良好である。これを配合して得られる成形品も、同様に、耐候性が良好である。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形時の加工性に優れ、塩素系樹脂、特に塩化ビニル樹脂の耐候性を損なうことなく、成形外観及び耐衝撃性に優れた成形品を与えることができる。
本発明の成形品は、耐候性を損なうことなく、成形外観及び耐衝撃性に優れることから、建材、パイプ、自動車材料、玩具、文房具等の雑貨、OA機器、家電機器等の広い分野に用いることができる。

Claims (2)

  1. アクリルゴム(A1)50〜99.9質量部の存在下で、単量体混合物(a2)0.1〜50質量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)(但し、(A1)と(a2)の合計が100質量部)であって、単量体混合物(a2)が、イソブチルメタクリレート1〜99質量%を含有することを特徴とするグラフト共重合体(A)、
    塩素系樹脂(B)及び鉛系安定剤(C1)若しくは錫系安定剤(C2)を含有する樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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