JP2009266814A - 有機電界発光素子の製造方法、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
第一の電極の形成工程と、湿式成膜工程を含む有機層の形成工程と、第二の電極の形成工程とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、
該有機層の形成工程が、湿式成膜工程より後に相対湿度が40%以下、又は酸素の体積濃度が20%以下の環境における保存工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
【選択図】なし
Description
また、有機層中に酸素によって酸化する基(例えばヒドロキシル基やアルデヒド基等)を含む場合には、上記保存中にこれらの基が酸化されて不純物となり、素子特性に影響を及ぼす場合があった。
また、湿式成膜法により形成される該有機層が、正孔注入層及び/又は正孔輸送層であることが好ましく(請求項4)、保存工程の温度が、0℃以上、100℃以下であることが好ましい(請求項5)。
しかしながら、本発明は、所定の条件にて保存を行うことにより、上記の現象が起きず、更に素子特性を向上させるものとなる。
これは、特定有機層形成法によって、該有機層表面に吸着した水分や大気中の異物がなくなるためである。つまり、水分や大気中の異物が吸着することによる上記デメリットが生じず、さらに得られる有機電界発光素子の素子特性を向上させることが可能となり、長い寿命の素子が得られる。
特定有機層形成法は、本発明により製造される有機EL素子の、第一の電極及び第二の電極間に形成される有機層のうちの、少なくとも1層(特定有機層)を形成する際に用いられ、湿式成膜法により特定有機層を成膜する湿式成膜工程と、湿式成膜工程より後に、相対湿度が40%以下、又は酸素の体積濃度20%以下の環境における保存工程とを行なう方法である。特定有機層形成法では、上記湿式成膜工程及び保存工程に加えて、適宜他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば以下で説明する前処理工程や乾燥工程、冷却工程等が挙げられる。
特定有機層を形成する前に、形成面(例えば第1の電極等)に付着した不純物を除去する前処理工程を行なうことができる。これにより、イオン化ポテンシャルを調整して、特定有機層への正孔あるいは電子注入性を向上させること等ができる。前処理方法としては、例えば特定有機層を第一の電極上に形成する場合等には、表面をアルコール等を用いて溶剤洗浄をしたり、紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりする方法が好適である。
なお、特定有機層の形成面となる層、すなわち特定有機層と隣接して形成される層の種類は、有機EL素子の構造等に応じて適宜選択され、この層の形成方法は特に制限がない。例えば蒸着法により形成される層であってもよく、また湿式成膜法により形成される層であってもよい。
湿式成膜工程は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に条件を設定して実施することができる。ただし、湿式成膜工程においては、有機層を湿式成膜法により形成する。具体的には、特定有機層の材料及び溶剤を含有する組成物(以下、適宜「塗布用組成物」ということがある。)を、膜状に塗布形成することによって成膜する。
塗布用組成物に用いられる溶剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、例えば、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
なお、これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤以外の溶剤の1種又は2種以上を、上述のエーテル系溶剤及びエステル系溶剤のうち1種又は2種以上と組み合わせて用いてもよい。
湿式成膜工程における成膜方法は、目的とする領域に均一に塗布可能な方法であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はない。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、等が挙げられる。
これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。有機EL素子に用いられる塗布用組成物に特有の液性に合うためである。
湿式成膜工程を行なう環境における成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、乾燥速度の制御を容易とする点で、10℃以上が好ましく、13℃以上がより好ましく、16℃以上がさらに好ましい。また50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
湿式成膜工程を行なう環境における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、また、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。相対湿度が小さすぎると、湿式成膜工程における成膜条件の制御が困難となる可能性がある。また、大きすぎると特定有機層への水分吸着が影響しやすくなる可能性がある。
湿式成膜工程を行なう環境における酸素の体積濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、また、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。酸素の体積濃度が低すぎる環境は制御が難しく、また酸素の体積濃度が高すぎると、特定有機層内部に酸素が拡散することで、素子特性に影響を与える可能性がある。
成膜環境下における微粒子の数(すなわち、パーティクル数)は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、ダークスポット低減の観点から、粒径0.5μm以上のパーティクルが、1m3あたり通常10000個以下、好ましくは5000個以下である。特に好ましくは、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり5000個以下である。下限値に制限はないが、工業的実用性の観点から、通常粒径0.3μm以上のパーティクルが1m3あたり100個は存在することが考え得る。パーティクル数が大きすぎるとダークスポットを生じる可能性があり、また、上記下限値を下回るほど環境制御が困難になる傾向がある。
なお、微粒子のパーティクル数は、光散乱方式により検出され、例えば、ハンドヘルドパーティクルカウンターKR(リオン株式会社製)で検出できる。
湿式成膜工程において形成される特定有機層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、膜の均一性が優れる点で、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。また好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
乾燥工程は本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に変更して実施することができる。但し、乾燥工程とは上記湿式成膜工程により成膜された塗布用組成物中の溶剤を除去する工程をいう。
乾燥工程における乾燥方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り制限されないが、例えば、熱処理、減圧処理、不活性ガス処理、スパッタ処理、等が挙げられる。その中でも、膜中の残存溶剤を低減させやすい点で、熱処理が好ましい。
上記の処理は、単独で行なってもよく、また複数組み合わせて行ってもよい。複数の処理を組み合わせる場合には任意の順で処理を行ってもよいし、全部又は処理の一部を並行して行ってもよい。ただし、乾燥ムラが少なくなる条件で乾燥を行うことが好ましい。
乾燥工程における乾燥温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、熱処理を行なう場合、通常50℃以上、好ましくは80℃以上である。また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。温度が高すぎると他の層に影響を及ぼす可能性があり、また、低すぎると膜中に溶剤が残る可能性がある。
なお、乾燥温度とは、炉内ベーク方式の場合には環境温度、ホットプレート方式の場合にはプレート温度、ヒーターを用いる方式の場合には環境温度をいう。
乾燥工程における乾燥時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは2分以上である。また好ましくは5時間以下、より好ましくは2時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。乾燥時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、また、短すぎると膜が不均質になる傾向がある。
乾燥工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。相対湿度が高すぎると膜中に水分が残存する傾向がある。
乾燥工程における真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、減圧処理を行なう場合には、好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Pa以下、さらに好ましくは5×10−4Pa以下である。また下限値に制限はないが、通常1×10−5Pa以上である。真空度が高すぎると、真空度を高くするために時間を要し、その間の環境制御が困難になる傾向があり、また、低すぎると膜中に溶剤が残存しやすくなる傾向がある。
乾燥工程の後の特定有機層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。また、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm、さらに好ましくは150nm以下である。この下限値を下回ると薄膜に欠陥が発生する可能性があり、また、この上限値を上回ると駆動電圧が高くなり、また膜厚ムラにより発光の輝度ムラを生じる可能性がある。
乾燥工程の後の特定有機層の膜の膜厚精度は、好ましくは500%以下、より好ましくは300%以下、さらに好ましくは200%以下である。また好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上である。膜厚精度が大きすぎると、発光ムラ等、素子特性が不安定になる傾向があり、小さすぎると膜欠陥が発生しやすくなる傾向があり、膜質が均質でなくなる傾向がある。
なお、特定有機層の膜厚精度とは、特定有機層の膜厚の、最大値と最小値との比と定義される。測定は、例えば、接触式膜厚計または干渉式膜厚計などを用いるが、同様の測定が可能であればこれらに限定されない。
尚、上記測定機器を用いる場合、測定は、例えば任意の点6箇所を測定して、その内の最大値と最小値から算出を行う。
特定有機層が、乾燥工程において熱処理を施されたり、その他の工程で加熱されたりした場合、該特定有機層を冷却させる工程(冷却工程)を行なってもよい。冷却工程は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に変更して実施することができる。具体的には、以下に説明する各項目のうち、1つ以上を満たしていることが好ましい。
冷却工程における冷却方式としては、本発明の効果を著しく損なわない限りは限定されないが、例えば、特定有機層の置かれる環境温度を冷却したい温度範囲にする方法、プレート(ホットプレート)上に基材を搭載しそのプレートを介して特定有機層を冷却させる方法等が挙げられる。
冷却工程における冷却温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、乾燥した塗布用組成物の膜(特定有機層)を、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下、また、下限に制限はないが、通常5℃以上に冷却する。冷却温度が高すぎると、他の層の成分が拡散する可能性があり、また低すぎると特定有機層中に結晶が生じる可能性がある。
なお、冷却温度とは環境温度のことである。ホットプレート方式の場合にはプレート温度のことをいう。
冷却工程における冷却速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.1℃/分以上、より好ましくは0.5℃/分以上、さらに好ましくは0.8℃/分以上、特に好ましくは1℃/分以上である。また好ましくは50℃/分以下、より好ましくは30℃/分以下、さらに好ましくは20℃/分以下、特に好ましくは10℃/分以下である。冷却速度が小さすぎると製造コストが高くなる可能性があり、大きすぎると隣接する膜間の線膨張が異なることによって、膜質が低下する可能性がある。
冷却工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.08ppm以上である。また、好ましくは50%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下である。相対湿度が低すぎると、環境を一定に制御することが困難になる傾向があり、また、素子の安定的な製造ができない可能性がある。また、相対湿度が大きすぎると膜表面に水分が物理吸着する可能性がある。
冷却工程における冷却時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下、特に好ましくは30分以下である。また好ましくは30秒以上である。冷却時間が短すぎると膜歪みを生じる傾向がある。
冷却工程における冷却環境は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、例えば、真空環境、不活性ガス環境が挙げられる。
真空環境の場合、真空度は、好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Pa以下である。また下限値は通常ないが、1×10−5Pa以上が好ましい。真空度が高すぎると、真空度を高くするために時間を要し、その間の環境制御が困難となる傾向がある。
また、不活性ガスとしては、窒素ガス、希ガス類、不燃性ガス類等が挙げられる。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
冷却工程の前後で特定有機層の膜厚差は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、冷却工程前の膜厚を100%としたときに、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。膜厚差が大きすぎると、膜歪みによる膜の剥離等の可能性がある。なお、下限は0%であるが、工業的入手性の観点から、通常1%以上である。
本発明でいう保存とは、上記湿式成膜工程で湿式成膜法により成膜し、必要に応じて乾燥工程又は冷却工程を行なった特定有機層を、該特定有機層の上に新たな有機層、若しくは電極を成膜するまで、特定の条件下、すなわち相対湿度が40%以下、または酸素の体積濃度が20%以下の環境下で保持している状態を指し、静置された状態での保存だけではなく、運搬等の輸送状態での保存も含む。また、特定有機層を保存するとは、特定有機層が形成された基板全体を保存することも含む。
保存工程における保存期間は、通常40分以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは8時間以上であり、特に好ましくは24時間以上である。また通常400日以下、好ましくは200日以下、さらに好ましくは100日以下である。下限より短い場合は、本発明の効果が得られ難い傾向があり、上限より長い場合には、パーティクルや水分等が付着する可能性が高くなり、本発明の効果が得られにくい傾向がある。
保存工程において上記特定有機層を保存する時期は、湿式成膜法で特定有機層を形成した後(湿式成膜工程より後)であれば、いずれのタイミングでもよい。上記乾燥工程における乾燥が加熱処理によって行われる場合は冷却工程後が好ましく、乾燥工程が加熱処理以外の方法によって行なわれる場合には乾燥工程後が好ましい。
保存工程における保存温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。また通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。0℃未満であると、実質的な湿度が増加してしまい、素子特性の向上効果が低下する可能性がある。また、100℃を越えると、特定有機層の機能が低下する可能性がある。
保存工程における相対湿度は、通常1ppt以上、好ましくは10ppt以上、また、通常40%以下、好ましくは20%以下である。この上限値を上回ると、特定有機層への水分吸着が影響しやすくなり素子特性が向上しにくくなる可能性がある。また、相対湿度は少ないことが特に好ましい為、前記相対湿度の下限値は理想的には0%である。
保存工程における酸素の体積濃度は、好ましくは1ppt以上、より好ましくは10ppt以上、また、通常20%以下、好ましくは18%以下、さらに好ましくは10%以下である。上記下限値より酸素の体積濃度が低い環境は制御が難しく、また上記上限値より酸素の体積濃度が高いと、特定有機層内部に酸素が拡散することで、素子特性に影響を与える可能性がある。
保存工程における環境は、本発明の効果を著しく損なわない限りは特に制限はないが、例えば、真空環境、不活性ガス環境又は乾燥空気環境であることが好ましい。
また、不活性ガス及び乾燥空気は、それぞれ1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
保存工程における真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はないが、真空環境で保存を行う場合には、好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Pa以下、さらに好ましくは5×10−4Pa以下、また下限値は通常ないが、好ましくは1×10−5Pa以上である。上限値以下とすることにより、安定した環境で膜を保存することができる。
本発明においては、保存工程における水平面(地面と水平な面)と湿式成膜法により成膜された特定有機層表面との成す角(成膜された特定有機層の上面を水平面と平行に下向きにした状態を、該特定有機層と水平面とが成す角が0°とする。)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、後述するパーティクルの付着等を低減させる点で、通常0°以上、好ましくは3°以上、さらに好ましくは5°以上である。また通常90°以下、好ましくは85°以下、さらに好ましくは80°以下である。
保存工程における雰囲気中の微粒子数(パーティクル数)は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、ダークスポット低減の観点から、粒径0.5μm以上のパーティクルが、1m3あたり通常10000個以下、好ましくは5000個以下である。特に好ましくは、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり5000個以下である。工業的実用性の観点から、通常粒径0.3μm以上のパーティクルが1m3あたり100個は存在することが考え得る。パーティクル数が大きすぎるとダークスポットを生じる可能性があり、また、上記範囲を下回るほど環境制御が困難になる傾向がある。
なお、微粒子のパーティクル数は、光散乱方式により検出され、例えば、ハンドヘルドパーティクルカウンターKR(リオン株式会社製)で検出できる。
特定有機層形成法においては、上記各工程の前後、または工程中に、必要に応じて上記以外の工程を有していてもよい。
以下、本発明の有機電界発光素子の製造方法によって得られる有機電界発光素子(以下、「本発明の有機電界発光素子」ともいう。)と、有機電界発光素子の製造方法における上述の特定有機層形成法以外の工程について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、その製造工程に少なくとも上記特定有機層形成法を含む。このような製造方法により製造される有機電界発光素子としては、通常は基板を備え、当該基板上に第1の電極が形成され、その上に1層以上の有機層が形成され、さらにその有機層上に第2の電極が形成された積層型の構成を有するものである。ここで、第1の電極、及び第2の電極は、何れかが陽極であり、他方が陰極である。有機層のうち一層は、通常発光層であり、その他の有機層の例としては、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層などの層が挙げられる。
正孔注入層及び/又は正孔輸送層が特定有機層の場合は、該層の形成方法は前述の特定有機層形成法を用い、またそうでない場合は以下に記すとおり、通常の有機層の形成法にて形成する。
図3は本発明にかかる有機電界発光素子10cの構造例を示す断面の模式図であり、図3において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
基板1は有機電界発光素子10cの支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが好ましい。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化する可能性がある。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
陽極2は発光層5側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られる点や、形成のための時間が短くて済む点から、正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。上記陽極2として一般的に用いられるITO(インジウム・スズ酸化物)は、その表面が10nm程度の表面粗さ(Ra)を有するのに加えて、局所的に突起を有することが多く、短絡欠陥を生じ易いという課題があった。陽極2の上の正孔注入層3を湿式成膜法により形成することは、真空蒸着法で形成する場合と比較して、陽極2表面の凹凸に起因する素子の欠陥の発生を低減するという利点をも有する。また特に、正孔注入層3を上記特定有機層形成法により形成することが好ましい。これにより、有機EL素子の素子特性を良好なものとすることができ、素子の寿命を長いものとすることが可能である。
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法(湿式成膜法)により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。また正孔注入層3を特定有機層形成法により形成する場合には、上記湿式成膜工程後、上述の保存工程を行なう。
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Ar1〜Ar16の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
湿式成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
湿式成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層4を省いた構成であってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
Ara及びArbにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるAraやArbとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
塗布時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。塗布後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
正孔注入層3の上、又は正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。なお、本発明でいう低分子量とは、重量平均分子量が通常6000以下のものをいい、好ましくは5000以下、より好ましくは1500以下である。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(C9H6NO)3などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3における正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層5において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿式成膜法により発光層5を形成する場合は、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。なお、発光層は特定有機層形成法により形成してもよい。また、発光層の形成方法は、湿式成膜法以外の方法であってもよい。
発光層5を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
発光層5と後述の電子注入層8との間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
本実施形態においては、陰極9を形成する工程が、第二の電極の形成工程とされるが、有機EL素子の構成によっては、陰極9を形成する工程が、第一の電極の形成工程とされる場合もある。なお、陰極の形成する工程は、上記陰極9の材料に応じてその方法は適宜選択される。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
上記各層以外に有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに陰極9と発光層5又は電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。また正孔緩和層等を設けてもよい。
正孔緩和層は、発光層5の陰極9側に隣接して形成される層であり、発光層5と正孔緩和層界面への正孔の蓄積を緩和する働きをする層である。また、電子を効率よく発光層の方向へ輸送する役割も有する。
正孔緩和層のイオン化ポテンシャルは通常5.5eV以上、好ましくは5.6eV以上、より好ましくは5.7eV以上、また通常6.7eV以下、好ましくは6.4eV以下、より好ましくは6.0eV以下である。このイオン化ポテンシャルの値が大きすぎても、小さすぎても正孔を発光層5と正孔緩和層の界面に留めてしまう可能性がある。
イオン化ポテンシャル(Ip)はイオン化ポテンシャル測定装置PCR−101(Optel製)により測定することができる。
正孔緩和層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.3nm以上、より好ましくは0.5nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。膜厚が薄すぎると、薄膜に欠陥が発生する可能性があり、厚すぎれば、駆動電圧が高くなる可能性がある。
正孔緩和層は蒸着成膜法によって形成することが好ましい。ここで蒸着成膜法としては、真空蒸着法、レーザー転写法、抵抗加熱法、電子ビーム法、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)が好ましく、中でも真空蒸着法が好ましい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を備えるものである。有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
図1に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作成した。
(ITO基板の作製)
ガラス製の基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤による超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を1分間を行った。
次いで、正孔注入層3を以下のように湿式成膜法によって形成した。正孔注入層3の材料は、下記式(1−2)の繰り返し構造を有するポリマー(重量平均分子質量29400、数平均分子量12600、ガラス転移温度160℃)2重量%と、酸化剤として、下記式(A1)で表される4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.4重量%とを、安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製し、この組成物を前記ITO基板上にスピンコートで成膜した。
スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1500rpm、30秒の2段階で行った。乾燥の条件は230℃のクリーンオーブンにより15分間加熱を行うことで、膜厚30nmの薄膜を形成することが出来た。
正孔注入層3まで形成した素子を真空蒸着装置内に、水平面と正孔注入層3表面の成す角が0°の状態で設置し、真空度1.2×10−5Pa、23℃±1.5℃中で24時間保存した。この際の相対湿度は59ppt(大気圧101325Paでの相対湿度を50%とした時の計算値)、酸素の体積濃度は24ppt(大気圧101325Paでの酸素の体積濃度を21%とした時の計算値)であった。
湿式成膜法により形成し、上記保存工程を経た正孔注入層3を有するITO基板に、下記に示す化合物PPDを、真空蒸着法で正孔注入層3の上に積層して膜厚45nmの発光層5を形成した。
湿式成膜法により形成した正孔注入層3と真空蒸着法により形成した発光層5を有するITO基板に、電子輸送層7として下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体ET−1を膜厚60nmとなるように積層した。
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を、一度、前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして、陽極であるITOストライプと直交する形状の2mm幅のストライプ状シャドーマスクを素子に密着させ、別の真空蒸着装置内に設置して、電子輸送層7と同様の真空蒸着法により、電子注入層8としてフッ化リチウム(LiF)を膜厚0.5nm、次いで陰極9としてアルミニウムを膜厚80.0nmとなるようにそれぞれ積層した。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂を塗布し、中央部に水分ゲッターシートを設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
実施例1の正孔注入層3の湿式成膜後の保存工程において、水平面と正孔注入層3の成す角を0°から75°にし、真空度1.2×10−5Paから大気圧(1.0×105)に変更した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。この際の相対湿度は50%であり、酸素の体積濃度は21%であった。
実施例1の正孔注入層3の湿式成膜後の保存工程を行なうことなく、正孔注入層3形成後、直ちに発光層5を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
実施例1、比較例1、及び比較例2でそれぞれ得られた有機電界発光素子について、下記方法により測定した輝度半減期、及び21mA/cm2一定電流駆動の結果を以下表1に示す。
<輝度半減期>
輝度半減期の測定方法は、作製した有機EL素子に、試験時の電流値が21mA/cm2となる直流一定電流を通電したときの輝度変化をフォトダイオードにより観察することにより行い、輝度値が試験開始時の半分となるまでの時間(輝度半減期)を求めた。通電試験は、室温を空調により23±1.5℃に制御した室内で行なった。
<駆動条件>
駆動の測定方法は、作製した有機EL素子に、21mA/cm2一定電流駆動し、電圧上昇を求めた。
図2に示す構造を有する電界発光素子を以下の方法で作製した。正孔注入層3の形成までは、実施例1と同様にして行った。
正孔注入層3まで形成した素子を窒素置換のグローボックス内に、水平面と正孔注入層3の成す角が75°の状態で設置し、酸素の体積濃度0.4〜0.6ppm、水分濃度0.1ppm以下、温度23±1.5℃中で24時間保存した。
次いで、発光層5を以下のように湿式成膜法によって形成した。発光層の材料は以下に示す材料H−1、H−2及びD−1を50対50対5の割合で混合し、この混合物2.0重量%をキシレンに溶解させた組成物を調整し、この組成物を前記ITO基板上にスピンコートで成膜した。
スピンコート条件として、スピナ回転数500rpm、2秒、そして1500rpm、30秒の2段階で行った。その後、130℃で1時間乾燥を行うことで、膜厚40nmの発光層5を形成した。
得られた発光層5の上に、真空蒸着法により正孔阻止層6として下記に示す化合物HB−1を膜厚5nm、次いで電子輸送層7として下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体ET−1を膜厚30nmとなるようにそれぞれ順次積層した。
次いで、電子注入層8及び陰極9の形成を実施例1と同様にして行い、封止処理を行なった。以上の手順によって、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
実施例2おける正孔注入層3の湿式成膜後の保存工程を、正孔注入層3まで形成した素子を乾燥空気中に、水平面と正孔注入層3表面の成す角が75°の状態で設置し、相対湿度2%以下(乾燥空気の定義から言えば、露点が−30℃以下、−70℃以上の空気)、酸素の体積濃度21%±1%、温度23±1.5℃中で24時間保管した。
実施例2の正孔注入層3の湿式成膜工程後の保存工程を行なわず、直ちに発光層5を成膜したことに変更した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
実施例2、実施例3、及び比較例3でそれぞれ得られた有機電界発光素子について、下記方法により測定した輝度半減期、及び2500nitとなる電圧の結果を以下表1に示す。
<輝度半減期>
輝度半減期の測定方法は、作製した有機EL素子に、試験時直流一定電流を通電したときの輝度が2500nitとなる電圧をかけたときの輝度変化をフォトダイオードにより観察することにより行ない、輝度値が試験開始時の半分となるまでの時間(輝度半減期)を求めた。通電試験は、室温を空調により23±1.5℃に制御した室内で行なった。
駆動電圧の測定方法は、作製した有機EL素子に、最初に直流一定電流を通電したときの輝度が、2500nitとなる電圧を測定した。
正孔注入層3の形成までは、実施例1と同様にして形成した。尚、正孔注入層の形成において、保存工程は行わなかった。
(正孔輸送層の形成(湿式成膜工程))
次いで、正孔輸送層4を以下のように湿式成膜法によって形成した。正孔輸送層の材料は、下記式(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(重量平均分子量:76000、数平均分子量:31700)を調製し、下記の条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることで膜厚20nmの正孔輸送層を成膜した。
溶媒 トルエン
組成物濃度 0.4重量%
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
正孔輸送層4まで形成した素子を窒素置換のグローブボックス内に、水平面と正孔輸送層4との成す角が75°の状態で設置し、保存環境として酸素の体積濃度0.6ppm以下、水分濃度0.1ppm以下、23℃±1.5℃中で42時間保存した。
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す有機化合物(C4)、及び(D1)を用いて下記に示す発光層形成用組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層上にスピンコートして膜厚40nmで発光層を得た。
溶媒 トルエン
組成物濃度 C4:0.80重量%
D1:0.08重量%
<発光層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、130℃、1時間
ここで、発光層5までを成膜した基板を、窒素グローブボックスに連結された真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.4×10-4Pa以下になるまで排気した後、下記有機化合物BAlq(C2)を真空蒸着法によって積層した。蒸着速度を0.7〜0.9Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔阻止層6を形成した。
続いて、下記有機化合物Alq3(C3)を加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着速度は0.7〜1.0Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層を7形成した。
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.34Å/秒、真空度5.3×10-4Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜した。次に、陰極としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1.8〜2.5Å/秒、真空度7.8×10-4Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
表3に示すが如く、本発明の有機電界発光素子は、駆動寿命が長く、また電流効率が高いことが分かる。
実施例3の正孔輸送層4の湿式成膜後の保存工程において、水平面と正孔輸送層4の成す角を0°から75°にし、保存環境を大気圧(1.0×105)に変更した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
実施例3の正孔輸送層4の湿式成膜後の保存工程を行なわず、直ちに発光層5の成膜を行なうことに変更した以外は、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
下記の正孔輸送層4を用い、発光層5に使用する溶媒とその濃度、成膜条件を変更し、正孔阻止層6の代わりに正孔緩和層を用いたこと以外は実施例2と同様である。
正孔輸送層4を以下のように湿式成膜法によって形成した。正孔輸送層4の材料は、下記式(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(重量平均分子量:60000、数平均分子量:27000)を調製し、下記の条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることで膜厚20nmの正孔輸送層4を成膜した。
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
組成物濃度 1.4重量%
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
正孔輸送層4まで形成した素子を窒素置換のグローブボックス内に、水平面と正孔輸送層4の成す角が75°の状態で設置し、保存環境として酸素の体積濃度1.0ppm以下、水分濃度0.1ppm以下、23℃±1.5℃中で70分保存した。
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す有機化合物(H−1)、(H−2)、及び(D−2)を用いて下記に示す有機電界発光素子組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層上にスピンコートして膜厚40nmで発光層を得た。
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
組成物濃度 H−1:2.75重量%
H−2:2.75重量%
D−1:0.28重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 減圧下(0.1MPa)、230℃、1時間
ここで、発光層5までを成膜した基板を、窒素グローブボックスに連結された真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が4.0×10-5Pa以下になるまで排気した後、下記に示す有機化合物(HA−1)を真空蒸着法によって積層し正孔緩和層を得た。蒸着速度を0.8〜0.9Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔緩和層を形成した。
実施例5において作製した有機電界発光素子の特性、及び初期輝度を2000cd/m2として直流駆動試験を行い、輝度が1000cd/m2まで減少するまでの時間(輝度50%減衰寿命)、を下記の表6にまとめる。
正孔輸送層4まで形成した素子を窒素置換のグローブボックス内に、水平面と正孔輸送層4の成す角が75°の状態で設置し、保存環境として酸素の体積濃度1.0ppm以下、水分濃度0.1ppm以下、23℃±1.5℃中で40分保存したこと以外は実施例5と同様である。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
Claims (8)
- 第一の電極の形成工程と、
湿式成膜工程を含む有機層の形成工程と、
第二の電極の形成工程と
を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
該有機層の形成工程が、湿式成膜工程より後に相対湿度が40%以下、又は酸素の体積濃度が20%以下の環境における保存工程を含む
ことを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。 - 前記保存工程が、1時間以上、400日以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。 - 前記保存工程が、真空環境又は不活性ガス環境若しくは乾燥空気環境下で行なわれる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子の製造方法。 - 前記有機層が、正孔注入層及び/又は正孔輸送層である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。 - 前記保存工程の温度が、0℃以上、100℃以下である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造された
ことを特徴とする、有機電界発光素子。 - 請求項6に記載の有機電界発光素子を備えた
ことを特徴とする、有機ELディスプレイ。 - 請求項6に記載の有機電界発光素子を備えた
ことを特徴とする、有機EL照明。
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