JP7305992B2 - 導電体の保存方法 - Google Patents
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この課題を解決する手段として、導電膜でレジスト層の表面を被覆する技術が有効であることが知られている。
特許文献1には、導電膜の保存方法として、導電膜が接触する雰囲気中に存在する酸素のモル数を制限することによって、導電性高分子の酸化に起因する導電性の低下を抑制する方法が記載されている。
本発明は、保存中における導電性の低下抑制に優れた、導電体の保存方法を提供することを目的とする。
[1] 基材と、前記基材上に設けられた、導電性高分子を含む導電膜とを有する導電体を、温度1℃~35℃、相対湿度0.001%~30%の雰囲気中で保存する、導電体の保存方法。
[2] 保存中の、前記雰囲気の温度の変動幅が10℃以下である、[1]の保存方法。
[3] 前記基材が、レジスト層を片面上に有する基板であり、前記レジスト層の表面上に前記導電膜が存在する、[1]又は[2]の保存方法。
[4] 前記導電体を密閉容器に収容し、前記密閉容器内の気体の温度及び相対湿度を、前記雰囲気の温度及び相対湿度に制御して保存した後、前記密閉容器内の温度を、該密閉容器外の環境の温度±5℃に調整した状態で、前記導電体を前記密閉容器外に取り出す工程を含む、[1]~[3]のいずれかの保存方法。
本明細書において「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
本実施形態の導電膜の表面抵抗値は、1×1011Ω/□以下であり、1×109Ω/□以下が好ましく、1×107Ω/□以下がより好ましい。
導電膜は、さらに塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び公知の任意成分から選ばれる1種以上を含んでもよい。
導電膜は、導電性高分子及び溶剤(B)、さらに必要に応じた塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)、任意成分を含む導電性組成物を、基材の表面上に塗布して塗膜を形成し、塗膜中の溶剤を除去して形成される。
基材は特に限定されない。例えば、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコン樹脂、合成紙等の各種高分子化合物の成型品又はフィルム;紙、ガラス(石英ガラス等)、金属(鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼等)からなる基板;シリコーンウエハ;及びこれらの表面に各種塗料や感光性樹脂、レジスト等がコーティングされた積層体;などを例示することができる。
レジスト層は、荷電粒子線に感度を有するものが好ましい。具体的には、荷電粒子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、酸分解性基を有する構成単位を含む重合体とを含有するポジ型の化学増幅型レジスト層、又は、荷電粒子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、現像液に可溶性の重合体と、架橋剤とを含有するネガ型の化学増幅型レジスト層、荷電粒子線の照射により分解や極性変換を生じる非化学増幅型レジストが好ましい。
レジスト層の表面上に存在する導電膜は、レジスト層に対して荷電粒子線を照射する際にレジスト層の帯電防止膜となる。レジスト層の全面が導電膜で被覆されていることが好ましい。
導電膜の膜厚は特に限定されない。例えば、レジスト層の表面上に存在する導電膜の場合、膜厚は30nm以下が好ましく、5~30nmがより好ましい。
導電性高分子は公知のものを使用できる。例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチオフェンビニレン、ポリテルロフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリアセチレンなどが挙げられる。
これら中でも、導電性に優れる観点から、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが好ましい。
酸性基はスルホン酸基又はカルボキシ基が好ましい。一分子中に2種の酸性基を有してもよい。酸性基の一部または全部が塩を形成していてもよい。
導電性ポリマー(A)として、特開昭61-197633号公報、特開昭63-39916号公報、特開平1-301714号公報、特開平5-504153号公報、特開平5-503953号公報、特開平4-32848号公報、特開平4-328181号公報、特開平6-145386号公報、特開平6-56987号公報、特開平5-226238号公報、特開平5-178989号公報、特開平6-293828号公報、特開平7-118524号公報、特開平6-32845号公報、特開平6-87949号公報、特開平6-256516号公報、特開平7-41756号公報、特開平7-48436号公報、特開平4-268331号公報、特開2014-65898号公報等に示された導電性ポリマーが、溶解性の観点から好ましい。
ただし、一般式(1)のR1、R2のうちの少なくとも1つ、一般式(2)のR3~R6のうちの少なくとも1つ、一般式(3)のR7~R10のうちの少なくとも1つ、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。
酸性基は、スルホン酸基(スルホ基)又はカルボン酸基(カルボキシ基)である。
導電性ポリマー(A)においてカルボン酸基は、酸の状態(-COOH)で存在してもよく、イオンの状態(-COO-)で存在してもよい。カルボン酸基には、カルボン酸基を有する置換基(-R17COOH)も含まれる。
前記R17は炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアリーレン基、又は炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキレン基を表す。
アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
脂肪族アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn-ブチルアンモニウム、テトラsec-ブチルアンモニウム、テトラt-ブチルアンモニウムなどが挙げられる。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウム、α-ピコリニウム、β-ピコリニウム、γ-ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
また、導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、前記一般式(5)で表される単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、導電性ポリマー(A)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値を指す。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
例えば、前述のいずれかのモノマーユニットを有する重合性単量体(原料モノマー)を化学酸化法、電解酸化法などの各種合成法により重合する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば特開平7-196791号公報、特開平7-324132号公報に記載の合成法などを適用することができる。
また、導電性組成物の総質量に対して、導電性高分子の含有量は0.1~5質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましく、0.2~4質量%がさらに好ましい。導電性高分子の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される塗膜の導電性のバランスにより優れる。
本発明は、特に、導電膜が導電性ポリマー(A)を含む場合に好適である。例えば、導電性高分子の総質量に対して、導電性ポリマー(A)の含有量が50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
溶剤(B)としては、導電性高分子と、任意に配合される成分(後述の塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)など)を溶解することができる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
本実施形態において塩基性化合物(C)は必須ではないが、導電性高分子が、酸性基を有する導電性ポリマー(A)である場合、塩基性化合物(C)を添加することにより導電性ポリマー(A)の安定性がより向上する。
第4級アンモニウム塩(c-1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数1以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(c-2):1つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物(ただし、第4級アンモニウム塩(c-1)及び塩基性化合物(c-3)を除く。)。
塩基性化合物(c-3):同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する塩基性化合物。
第4級アンモニウム化合物(c-1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(c-1)としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
塩基性化合物(c-3)としては、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
これらの中でも、導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成しやすい点から、第4級アンモニウム塩(c-1)及び塩基性化合物(c-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
導電性組成物は、界面活性剤(D)を含んでいてもよい。
導電性組成物が界面活性剤(D)を含んでいれば、導電性組成物を基材やレジスト層の表面に塗布する際の塗布性が向上する。
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
導電性組成物は、必要に応じて、導電性高分子、溶剤(B)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば高分子化合物(導電性高分子、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を除く)、添加剤などが挙げられる。
添加剤としては、例えば顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤などが挙げられる。
本実施形態では、導電体を、温度(T)が40℃以下、相対湿度(RH)が50%以下の雰囲気中で保存する。
保存される導電体において、導電膜の少なくとも一部は、雰囲気の気体と接触する位置に設けられている。導電膜の露出面積が大きいほど、保存中における導電性の低下が生じやすいため、本発明を適用することによる効果がより大きい。例えば、基材上の最上層(最外層)が導電膜であることがより好ましい。
密閉容器の材質及び形状は特に限定されない。持ち運び可能な密閉容器が好ましい。
容器内の気体の種類は特に限定されない。空気、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が例示できる。容器内の気体は2種以上の混合ガスでもよい。酸化力の点でアルゴンガス、窒素ガス、又は空気とそれらの混合ガスが好ましい。
保存中の温度(T)の最大値は35℃以下であり、30℃以下がさらに好ましい。
保存中の温度(T)の最小値は1℃以上であり、3℃以上が好ましい。
導電体の保存終了後に、前記雰囲気から導電体を取り出す際、取り出す前の前記雰囲気の温度(T)と、取り出した後の環境の温度との差が±5℃以内であることが、結露を発生させない点から好ましい。
具体的には、導電体を密閉容器に収容し、密閉容器内の気体の温度及び相対湿度を、前記雰囲気の温度(T)及び相対湿度(RH)に制御して保存した場合、必要に応じて、密閉容器内の温度を、密閉容器外の環境の温度±5℃に調整した状態で、導電体を密閉容器外に取り出す工程を設けることが好ましい。
ガラス基板上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基板表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約30nmの導電膜を形成して導電体を得た。
ハイレスタUX-MCP-HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、導電膜の表面抵抗値[Ω/□]を測定した。
2-アミノアニソール-4-スルホン酸100mmolに、ピリジン100mmolと水100mLを添加して、モノマー溶液を得た。
得られたモノマー溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液(酸化剤溶液)を10℃で滴下した。滴下終了後、25℃で15時間さらに攪拌した後、35℃まで昇温してさらに2時間撹拌して、反応生成物が沈殿した反応液を得た(重合工程)。
得られた反応液を遠心濾過器にて濾過し、沈殿物(反応生成物)を回収して、1Lのメタノールで反応生成物を洗浄した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A1)を得た(精製工程)。
導電性ポリマー(A1)の2質量部と、溶剤(B)として水の94質量部及びイソプロピルアルコール(IPA)の4質量部とを混合して導電性組成物(1)を得た。
導電性組成物(1)を用い、前記導電性の評価方法により導電体を製造し、保存開始直前の導電膜の表面抵抗値を測定した後、ポリエチレン製の密閉容器に収容し、表1に示す保存条件(保存中の雰囲気の温度(T)及び相対湿度(RH))で保存した。
温度(T)における相対湿度が表1に示す値となるように、水分含量を調整した窒素ガス(1気圧)で密閉容器内の気体を置換した。
各例において、導電体4個を別個の密閉容器にそれぞれ収容し、同じ条件で保存し、保存開始から1週間後、4週間後、及び8週間後に取り出して表面抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
Claims (4)
- 基材と、前記基材上に設けられた、導電性高分子を含む導電膜とを有する導電体の保存方法であって、
前記基材が、レジスト層を片面上に有する基板であり、前記レジスト層の表面上に前記導電膜が存在し、
前記導電体を、温度1℃~35℃、相対湿度0.001%~30%の雰囲気中で保存する、導電体の保存方法。 - 保存中の、前記雰囲気の温度の変動幅が10℃以下である、請求項1に記載の保存方法。
- 前記導電体を密閉容器に収容し、前記密閉容器内の気体の温度及び相対湿度を、前記雰囲気の温度及び相対湿度に制御して保存した後、前記密閉容器内の温度を、該密閉容器外の環境の温度±5℃に調整した状態で、前記導電体を前記密閉容器外に取り出す工程を含む、請求項1又は2に記載の保存方法。
- 前記導電性高分子が、下記一般式(4)で表されるモノマーユニットを全単位に対して20~100mol%含有する導電性ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の保存方法。
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