JP2009265130A - 光学異方性膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】旋光作用があり、その旋光作用の波長依存性が可視光域において小さい光学異方性膜の提供。
【解決手段】ネマチック相又はスメクチック相を発現し、当該液晶相の波長λにおける複屈折Δn(λ)が、下記数式(1)を満足する液晶化合物の少なくとも1種を含有する光学異方性膜であって、該光学異方性膜中において前記液晶化合物の分子が膜の厚さ方向へ捩れた配向状態に固定されていることを特徴とする光学異方性膜である。
数式(1) Δn(450nm)/Δn(550nm)<1
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ディスプレイ、光通信用デバイス、及び光記録用デバイス等の種々の光技術分野に利用可能な光学異方性膜に関する。
従来、液晶の捩れ配向を利用して製造された光学部材が種々提案されている。例えば、特許文献1には構造単位を所定の割合で含む液晶性ポリエステルが提案され、該液晶性ポリエステルが液晶状態でらせん配向すること、及びそれを固定可能であることが開示されている。また、特許文献2には、液晶性高分子を利用した旋光性光学素子の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、捩れネマチック液晶高分子層および偏光フィルム層を含む旋光機能を有する偏光板が開示されている。しかし、これらの従来技術では、液晶性高分子を原料として用いているため、所望の配向状態にするには時間がかかり、製造性の点で改良が望まれる。
また、特許文献4には、高分子液晶の捩れ配向を利用した旋光子、及び特許文献5には該旋光子と回折格子とを備えた回折格子一体型旋光子が開示されていて、該旋光子の製造に液晶モノマーを利用可能であることが記載されている。しかし、特許文献4及び5では、液晶モノマーの具体的構造については開示されていない。
また、特許文献6には、重合キラル液晶材料を含むパターン化ポリマーフィルムであって、異なる捩れ角を有する少なくとも2つの領域のパターンおよび/または少なくとも1つの捩れ領域および少なくとも1つの非捩れ領域のパターンを有することを特徴とするポリマーフィルムが開示され、該ポリマーフィルムの液晶ディスプレイへの利用が提案されている。
特開平3−17121号公報 特開平4−177216号公報 特開平7−333427号公報 特開2002−40253号公報 特開2002−357715号公報 特表2007−504484号公報
上記の従来例はいずれも、液晶の捩れ配向を固定して形成した膜に、直線偏光を入射し、該膜の作用を利用して、その偏光方向を所定の角度回転させる技術に関する。しかし、上記いずれの特許文献にも、可視光域全域において効果があったことを示す記載はない。例えば、光導波路の用途に利用されるものは、モーガン条件と呼ばれる導波条件を満たすように膜の光学特性や捩れ角度が調節され、その条件にあった波長の直線偏光に対しては、直線偏光性を損なうことなく所望の角度だけ回転させて出射させることができるが、それ以外の波長の直線偏光は楕円偏光となり、また波長によってこの楕円率が異なって出射するため、実用上問題となる透過光の着色や、SN比の低下を招く。また、他の部材と貼り合せて利用する態様では、貼り合せ角度を厳密に調整することが要求されるという問題もある。
本発明は、旋光作用があり、その旋光作用の波長依存性が可視光域において小さく、可視光域の入射光に対してほぼ一定の旋光作用を示す光学異方性膜を提供することを課題とする。
また、本発明は、旋光作用があり、入射光の偏光方向に対するその旋光作用の依存性が小さい、光学異方性膜を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] ネマチック相又はスメクチック相を発現し、当該液晶相の波長λにおける複屈折Δn(λ)が、下記数式(1)を満足する液晶化合物の少なくとも1種を含有する光学異方性膜であって、該光学異方性膜中において前記液晶化合物の分子が膜の厚さ方向へ捩れた配向状態に固定されていることを特徴とする光学異方性膜:
数式(1) Δn(450nm)/Δn(550nm)<1 。
[2] 前記液晶化合物の分子の捩れ角度が、0度を超え180度以下であって、光学異方性膜面に対する液晶化合物の分子の平均傾斜角度が0度〜15度であることを特徴とする[1]の光学異方性膜。
[3]
前記液晶化合物が、下記一般式(I)で表されることを特徴とする[1]又は[2]の光学異方性膜:
Figure 2009265130
式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成し;R1、R2及びR3は各々独立に置換基を表し;mは0〜4の整数であり;L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;Xは第14〜16族の非金属原子を表すが、Xには水素原子又は置換基R4が結合してもよく;R、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは、重合性基を有する。
[4]
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする[3]の光学異方性膜:
Figure 2009265130
式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成し;R1、R2、及びR3、は各々独立に置換基を表し;mは0〜4の整数であり;L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;R5及びR6は各々独立に置換基を表し;R、R1、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つは、重合性基を有する。
[5]
波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、200〜1000nmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学異方性膜。
[6]
前記液晶化合物を少なくとも含有する流体を、インクジェット式の吐出ヘッドから表面に吐出及び乾燥して液晶相を形成した後、露光して形成されたことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの光学異方性膜。
本発明によれば、旋光作用があり、その旋光作用の波長依存性が可視光域において小さい光学異方性膜を提供することができる。本発明の光学異方性膜を利用すれば、可視光域の光に対してほぼ一定の旋光角度で回転させることができる。
また、本発明の光学異方性膜は、入射光の偏光方向によらずほぼ一定の旋光作用を示し、即ち、入射光の偏光方向に対する旋光性の依存性が小さいという特徴がある。従って、本発明の光学異方性膜を他の部材と貼り合せて使用する態様においても、貼り合わせ角度のマージンが広く、本発明の光学異方性膜を利用することは、生産性の改善にも寄与する。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、ネマチック相又はスメクチック相を発現し、当該液晶相の波長λにおける複屈折Δn(λ)が、下記数式(1)を満足する液晶化合物の少なくとも1種を含有する光学異方性膜であって、該光学異方性膜中において前記液晶化合物の分子が膜の厚さ方向へ捩れた配向状態に固定されていることを特徴とする光学異方性膜に関する。
数式(1) Δn(450nm)/Δn(550nm)<1
本発明では、上記数式(1)を満足する液晶化合物を用い、その捩れ配向を固定して光学異方性膜を作製することにより、可視光域において旋光性の波長依存性が小さい光学異方性膜を提供している。また、本発明の光学異方性膜は、その旋光性の、入射光の偏光方向に対する依存性が小さいという特徴もある。従って、入射光の偏光方向によらず、及び入射可視光の波長によらず、ほぼ一定の旋光作用を示すことが可能である。
前記液晶化合物のΔn(450nm)/Δn(550nm)は、効果の観点では、小さいほど好ましいが、一方、Δn(450nm)/Δn(550nm)が小さいと液晶性が低下し、またΔnも小さくなる傾向がある。双方の観点からは、下記数式(2)を満足するのが好ましく、下記数式(3)を満足することがより好ましい。
数式(2) 0.50≦Δn(450nm)/Δn(550nm)≦0.90
数式(3) 0.78≦<Δn(450nm)/Δn(550nm)≦0.88
一方、可視光域の長波側の代表波長650nmと中間波長550nmとのΔnの比Δn(550)/Δn(650)については、特に制限はないが、上記数式(1)を満足する液晶化合物は、通常、Δn(550)/Δn(650)は0.84〜0.99程度になる。
なお、Δn(450)、Δn(550)及びΔn(650)はそれぞれ、450nm、550nm及び650nmにおけるΔnを表す。ただし、それぞれの測定波長は、±10nm程度の誤差が許容されるであろう。
なお、液晶化合物は、同一の液晶相であれば、その複屈折の波長依存性は、温度にほとんど依存しないが、本発明をより明確化するために、相転移する温度の上限温度から20℃低い温度で測定したΔn(450nm)及びΔn(550nm)が、前記数式(1)を満足するものとする。また、その液晶相を示す温度範囲が20℃以下の場合は、液晶相の上限温度から10℃低い温度で測定した値、その液晶相を示す温度範囲が10℃以下の場合は、上限温度から5℃低い温度で測定した値、その液晶相を示す温度範囲が5℃以下の場合は、上限温度から2℃低い温度で測定した値が、上記数式(1)を満足するものとする。
液晶のΔnの測定方法は、例えば「液晶便覧」2.4.13(丸善(株)、2000年)に記載されているようなくさび型の液晶セルを用いる方法を挙げることができる。この方法において、450nm、550nm、650nmの3種類のバンドパスフィルターを用いることで、それぞれの波長のΔnを求める。なお、液晶化合物が重合性基を有する場合には、くさび型の液晶セル中で重合反応が起こることがあり、測定が困難となる場合がある。このような場合は、重合禁止剤を添加して測定することが好ましい。また、液晶を均一に配向させた状態で、後述する測定方法により、それぞれの波長におけるReを求め、膜厚を別途測定することで、Δnを求めることができる(Δn=Re/d(膜厚)の式より)。
前記光学異方性膜中の液晶分子の捩れ角度については、旋光作用を示す限り、制限されない。通常、捩れ角度は10〜180度程度である。捩れ角度が大きな捩れ配向状態を安定的に得るためには、ある程度の膜厚も必要である。一方、膜厚が厚いほど、光学異方性膜のレターデーションは大きくなるので、用途に応じて求められるレターデーションとの関連で、最適な捩れ角度が決定されるであろう。
本発明の光学異方性膜中、液晶化合物の分子の光学異方性膜面に対する平均傾斜角度は0度〜15度であるのが好ましく、0度〜5度がより好ましい。平均傾斜角が、15度を超えると、配向欠陥が発生しやすくなり、種々の用途において、性能(例えば表示性能)を損なう場合がある。また、平均傾斜角が15度を超えると、膜の光学性能の視野角依存性が認識できるほどに大きくなってくるので好ましくない。
なお、本発明において、光学異方性膜面における液晶化合物の分子の平均傾斜角とは、ミューラーマトリックスポラリメータ(アクゾメトリックス社製)を用いて、観察角度を変えてレターデーションと遅相軸を測定し、LCD-View計算ルーチンで算出される上面と下面のチルト角の平均値である。
本発明の光学異方性膜のレターデーションについては、特に制限はなく、用途に応じて、その好ましい範囲も変動する。通常、液晶組成物の捩れ配向を固定して形成された光学異方性膜では、レターデーションは200〜1000nm程度になる。
本発明の光学異方性膜の一実施形態は、可視光域のいずれの波長の直線偏光に対しても、その直線性を損なうことなく、偏光方向を回転させることができる光学異方性膜である。この様な特性の光学異方性膜は、CDやDVDなどのピックアップ光学素子、2次元3次元表示切替型液晶表示装置、セキュリティー等の用途に利用される。この特性を満足するためには、光学異方性膜は、偏光維持能を有する必要があり、そのためには、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、400〜650nmであることが好ましい。
なお、本明細書において、捩れ配向を固定して形成された光学異方性膜のRe(λ)、捩れ角度、及び平均傾斜角は、ミューラーマトリックスポラリメータであるAxoScan(アクゾメトリックス社製)を用いて、各測定波長において試料に入射する光の入射角度を変えながら、ミューラマトリックスを計測しその角度依存性の値を、解析ソフトLDCView(アクゾメトリックス社製)を用いてカーブフィットすることによって求めることができる。
・ 液晶化合物:
前記数式(1)を満足する液晶化合物の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
Figure 2009265130
式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す。)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表す。Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成する。R1、R2及びR3は各々独立に置換基を表す。mは0〜4の整数である。L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表す。Xは第14〜16族の非金属原子を表す(ただし、Xには水素原子又は置換基R4が結合してもよい。)。なお、R、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つには、重合性基を有する。
上記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
Figure 2009265130
式中、A1、A2、Z、R1、R2、R3、m、L1及びL2は、上記一般式(I)におけるものと同様である。R5及びR6は、各々独立に置換基を表す。なお、R、R1、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つには重合性基を有する。
前記一般式(I)又は(II)において、L1及びL2が表す二価の連結基としては、特に限定されるものではないが、好ましくは下記の例が挙げられる。なお、結合位置に関して、前記のZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される5〜6員環との結合位置が下記に例示した連結基の左側にあるものとする。
Figure 2009265130
さらに好ましくは−O−、−COO−、−OCO−である。
前記一般式(I)又は(II)において、Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成する。ZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される5〜6員環としては、特に限定されるものではないが、下記の例が好適に挙げられる。なお、下記の例において、点線はL1又はL2と結合することを表す。
Figure 2009265130
ZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される環は、6員環であることが好ましい。6員環とすることにより、より配向秩序度が高く配向させることが可能となる。また、同様の理由により、芳香環であることも好ましく、より好ましくは芳香環かつ6員環である。
これらの観点及び合成上の観点から、ZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される環は、チオフェン環、ベンゼン環、ピリジン環が好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
一般式(I)又は(II)において、R1は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成してもよい。置換基の例として下記のものが挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)
上記の置換基の中で水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その具体例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
1は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基又はアミノ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、シアノ基又はアルコキシ基である。
1が複数存在し、互いに環を形成する場合、その環は5〜8員環が好ましく、5又は6員環がさらに好ましい。もっとも好ましくは6員環である。
前記一般式(I)又は(II)において、mはR1の置換数を表し、ZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される環の構造によって取り得る数は変化する。mは0が最小であり、Zが二つの炭素原子を表し、かつ、ZとC−C=C−C又はC=C−C=Cとによって形成される環が芳香族性を有しない場合に最大4である。mは好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
前記一般式(I)又は(II)において、R2及びR3は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例が挙げられる。R2及びR3は前記一般式(I)又は(II)で表される化合物における、分子の長手方向となる。
また、前記一般式(I)又は(II)で表される化合物は液晶性を示すことが好ましい。液晶性を発現させるための要素としては、「液晶便覧」(丸善)第3章「分子構造と液晶性」に記載されているように、コアと呼ばれる剛直部と側鎖と呼ばれる柔軟部が必要である。そのため、R2及びR3の置換基として、少なくとも1つの剛直部、つまり環状部分が存在することが好ましい。R2及びR3は、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基である。好ましくは置換基を有するフェニル基、置換基を有するシクロヘキシル基であり、より好ましくは4位に置換基を有するフェニル基、4位に置換基を有するシクロヘキシル基である。さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゾイルオキシ基を4位に有するフェニル基、4位に置換基を有するシクロヘキシル基を4位に有するフェニル基、4位に置換基を有するフェニル基を4位に有するシクロヘキシル基、4位に置換基を有するシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキシル基である。即ち、R2及びR3がそれぞれ、下記式のいずれかで表される基であるのがさらに好ましい。
Figure 2009265130
式中、L11は、単結合もしくは連結基であり、R11は置換基である。L11は、単結合、又は−O−、−COO−もしくは−OCO−であるのが好ましい。また、R11が表す置換基の例は、R1が表す置換基の例と同様である。中でも、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルキルカルボニルオキシ基(シクロアルキルカルボニルオキシ基も含む意味である)、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、及び置換又は無置換の炭素数6〜16のアリールカルボニルオキシ基が好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキルカルボニルオキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基がより好ましい。当該アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシ基中のアルキル部分において、隣接しない炭素原子の一方が酸素原子もしくは硫黄原子に置換されていてもよい。また、当該アルキル部分の末端が、後述する重合性基、例えば(M−1)及び(M−2)、を末端に有する基などが好ましい例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、4位に置換基を有するシクロヘキシル基にはシス体及びトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でもよい。好ましくはトランス−シクロヘキシル基である。
前記一般式(I)又は(II)において、R5及びR6は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは、R5及びR6のうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0〜1.5の電子吸引性の置換基を有していることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R5とR6とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、「ケミカル レビュー」,91巻,165〜195頁(1991年)等の文献に詳しく解説されている。
前記一般式(I)又は(II)において、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表す。好ましくは−O−、−NR−(Rは置換基を表し、例としては上記R1の例が挙げられる)又はS−である。
前記一般式(I)において、Xは第14〜16族の非金属原子を表す。ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよい。Xは=O、=S、=NR4、=C(R5)R6が好ましい。ここでR4、R5、R6は各々独立に置換基を表し、例としては上記R1の例が挙げられる。
5及びR6の好ましい例には、シアノ基(CN)、アシル基(−COR:Rは置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す)、置換もしくは無置換のアルコキシキカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基(C(=O)OR:Rは置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す)、又は置換もしくは無置換のカルバモイル基(C(=O)NR1112:R11及びR12はそれぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい)が含まれる。R、R11及びR12が表す置換もしくは無置換のアルキル基は、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましく、C2〜C8の置換もしくは無置換のアルキル基であるのがより好ましく、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルキル基であるのがさらに好ましい。また、アルキル基中の隣接しない炭素原子の一方が酸素原子もしくは硫黄原子に置換されていてもよい。R、R11及びR12が表す置換もしくは無置換のアリール基の例には、R1の例として挙げたアリール基の具体例が含まれる。前記アルキル基及びアリール基の置換基の例は、R1が表す置換基の例と同様である。後述する重合性基を置換基として有しているのも好ましい。また、R11及びR12が互いに結合して形成される環の例には、ピペラジン環が含まれる。
中でも、R5及びR6のうち、一方がシアノ基であり、及び他方が置換もしくは無置換のアルコキシキカルボニル基であるのが好ましい。
前記一般式(I)又は(II)で表される液晶化合物は重合性基を有する。これにより、所定の配向状態で固定することが可能となり、またその後は、熱などによるレターデーションの変化を防ぐことができる。重合性基は、分子末端に存在することが好ましい。前記一般式(I)又は(II)において、R、R1、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つは、重合性基を有する。重合性基の数は、一分子中、好ましくは1つ〜6つであり、さらに好ましくは1つ〜4つ、よりさらに好ましくは1つ〜3つである。また、R2、R3、R5及びR6のいずれかが重合性基を有するのがより好ましい。
R、R1、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つに置換している重合性基の好ましい例には、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な基が含まれる。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。以下に重合性基の例を示す。
Figure 2009265130
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。
重合性基は、下記の一般式P1、P2、P3又はP4のいずれかで表される基であることが好ましい。
Figure 2009265130
式中、R511、R512、R513、R521、R522、R523、R531、R532、R533、R541、R542、R543、R544及びR545はそれぞれ各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。nは0又は1を表す。
重合性基P1のR511、R512、R513は各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。重合性基P1が置換して成るアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基残基は、アルキレンオキシ基(例えばエチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、ヘキシレンオキシ、ヘプチレンオキシなどのアルキレンオキシ基、またエチレンオキシエトキシなどのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシ基)、アルキレンオキシカルボニルオキシ基(例えばエチレンオキシカルボニルオキシ、プロピレンオキシカルボニルオキシ、ブチレンオキシカルボニルオキシ、ペンチレンオキシカルボニルオキシ、ヘキシレンオキシカルボニルオキシ、ヘプチレンオキシカルボニルオキシなどのアルキレンオキシカルボニルオキシ基、またエチレンオキシエトキシカルボニルオキシなどのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシカルボニルオキシ基)、アルキレンオキシカルボニル基(例えばエチレンオキシカルボニル基、プロピレンオキシカルボニル基、ブチレンオキシカルボニル基、ペンチレンオキシカルボニル基、ヘキシレンオキシカルボニル基、ヘプチレンオキシカルボニル基などのアルキレンオキシカルボニル基、又はエチレンオキシエトキシカルボニル基などのエーテル結合を含む置換アルキレンオキシカルボニル基)を表す。重合性基P1が直接芳香環に結合してもよい。
nは0〜1の整数を表し、nが1であることが好ましく、nが1の時は、重合性基P1は置換又は無置換のビニルエーテル基を表す。R511及びR513は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R511がメチル基でR513が水素原子、又はR511及びR513が共に水素原子の組み合わせが好ましい。
512は水素原子、置換又は無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子、低級アルキル基が好ましく、さらに水素原子が好ましい。従って、重合性基P1としては、一般には重合活性の高い官能基である無置換のビニルオキシ基が好ましく用いられる。
重合性基P2は置換又は無置換のオキシラン基を表す。R521及びR522は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R521及びR522が共に水素原子が好ましい。
523は水素原子、置換又は無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子又はメチル、エチル、n−プロピルなどの低級アルキル基が好ましい。
重合性基P3は置換又は無置換のアクリル基を表す。置換基R531及びR533は、各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R531がメチルでR533が水素原子、又はR531及びR533が共に水素原子の組み合わせが好ましい。
532は水素原子、置換又は無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子が好ましい。従って、重合性基P3としては、一般には無置換のアクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、クロトニルオキシなどの重合活性の高い官能基が好ましく用いられる。
重合性基P4は置換又は無置換のオキセタン基を表す。R542、R543、R544及びR545は各々独立に水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、R542、R543、R544及びR545が共に水素原子が好ましい。
541は水素原子、置換又は無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、2−クロロエチル、3−メトキシエチル、メトキシエトキシエチルが挙げられ、メチル、エチルなどの低級アルキル基が好ましく、さらにメチルが好ましい。)を表し、水素原子又はメチル、エチル、n−プロピルなどの低級アルキル基が好ましい。
以下に、前記一般式(I)又は(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
前記一般式(I)又は(II)で表される化合物の合成は、既知の方法を参照して行うことができる。例えば、例示化合物(2)は、下記スキームに従って合成することができる。
Figure 2009265130
前記スキーム中、化合物(2−1)から化合物(2−3)までの合成は、“Journal of Chemical Crystallography”(1997),27(9),p.515−526.に記載の方法を参照して行うことができる。
さらに、前記スキームに示したように、化合物(2−4)及び化合物(2−5)からはジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)を用いた定法のエステル化にて化合物(2−6)が得られる。化合物(2−3)及び化合物(2−6)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)懸濁溶液に少量の重合禁止剤(Irganox1010、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を添加し、加熱することで化合物(2−7)が得られる。化合物(2−7)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、塩基としてピリジン(Py)を加え、化合物(2−8)から塩化チオニルを用いた定法の酸クロライド合成にて得られる化合物(2−9)を添加することで、例示化合物(2)を得ることができる。
・ キラル剤:
本発明の光学異方性膜は、上記液晶化合物とともに、所望によりキラル剤を含有していてもよい。キラル剤は、液晶化合物を捩れ配向させるために添加されるが、勿論、液晶性化合物が、分子内に不斉炭素を有する等、光学活性を示す化合物である場合は、キラル剤の添加は不要である。また、製造方法によっては、及び捩れ角度によっては、キラル剤の添加は不要である。
キラル剤としては、併用する液晶化合物を相溶するものであれば、特に構造についての制限はない。公知のキラル剤(例えば、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」,第3章4−3項,TN、STN用カイラル剤,199頁,1989年に記載)のいずれも用いることができる。キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が挙げられる。また、キラル剤は、液晶性を有していてもよい。また、特性が変動せず耐久性の高い光学異方性膜を提供するためには、重合性基を有するキラル剤を用いるのが好ましい。具体的には、特開2003−183285号公報に記載の以下のC15、CM45、CB15、CM47、CM21、CN、R/S 811、R/S 4011、CM44及びR/S 2011の化合物;ならびに、特開2007−177241号公報に記載の以下の式(R30)〜(R38)の化合物が好ましく;中でも、式(R33)〜(R35)の化合物が特に好ましい。
Figure 2009265130
Figure 2009265130
Figure 2009265130
なお、上記式(R33)〜(R38)中、
0は、複数生じる場合、互いに独立して重合性基であり、好ましくはアクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、プロペニルエーテル基またはスチレン基であり、
rは0、1、2、3または4であり、
xおよびyは互いに独立して0または1から12の同一もしくは異なる整数であり、
0は複数生じる場合、互いに独立して、1個、2個、3個もしくは4個の基Lにより場合によって置換されている1,4−フェニレン、またはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
uおよびvは互いに独立して0または1であり、
0は複数生じる場合、互いに独立して、−(CO)O−、−O(CO)−、−CH2CH2−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−(CO)O−、−O(CO)−CH=CH−または単結合であり、
R*は、炭素原子数4以上、好ましくは4から12のキラルなアルキルまたはアルコキシ基、例えば2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシであり、
Chはコレステリル、エストラジオール、またはメンチル、もしくはシトロネリル等のテルペノイド基から選択されたキラルな基であり、
Lは、複数生じる場合、互いに独立してH、F、Cl、CNまたは場合によってハロゲン化された炭素原子数1から5のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、および
該ベンゼン環はさらに1個または複数の同一または異なる基Lによって置換されていてもよい。
式(R33)〜(R38)の化合物は、市販されているので(例えば、商品名「LC−756」(ビーエーエスエフ社製))、市販品を用いることもできる。
キラル剤の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。上記例示したキラル剤を用いれば、液晶化合物の量の0.001〜10モル%程度で、所望の捩れ配向を得ることができる。
・ 光学異方性膜の形成方法:
本発明の光学異方性膜は、種々の方法で作製することができる。その一例は、以下の通りである。
まず、高分子フィルムやガラス板等の支持体を用意し、その上に、必要に応じて配向膜を形成し、支持体表面もしくは配向膜表面に、上記数式(1)を満足する液晶化合物(好ましくは一般式(I)又は(II)で表される化合物)、及び所望によりキラル剤等の添加剤を含む液晶組成物を塗布して、塗膜を形成する。この塗膜を所望により加熱して、塗膜中の液晶化合物の分子を捩れ配向させ、その後、固化する温度まで冷却して、又は紫外線の照射などにより重合を進行させて、その捩れ配向を固定し、旋光作用のある光学異方性膜を得る。液晶組成物の塗布は後述の溶媒を含有した液晶組成物の塗布液を公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。また、インクジェット装置を用いて吐出して形成してもよい。これについては後述する。
また、他の製造法の例は、以下の通りである。
一対の基板を、任意の距離だけ離して対向配置させたセルを準備し、そのセルの空間に上記例と同様の組成の液晶組成物を注入する。上下基板の内面(又は所望により基板内面に形成された配向膜の表面)を、互いに角度α(0度<α≦180度)で交差する方向にラビング処理する。セル中の液晶性分子の配向方向は、基板内面のラビング軸の方向によって調整されるので、液晶性分子は、α度程度の捩れ角で捩れ配向する。次に、固化する温度まで冷却して、又は紫外線の照射等により重合を進行させて、その捩れ配向を固定し、セル中に硬化膜を形成する。該硬化膜を基板から剥離して、セル中から取り出すことにより、旋光作用のある光学異方性膜を得ることができる。この方法によれば、キラル剤を添加してなくても、捩れ角度が比較的小さい(例えば90度以下程度)の光学異方性膜を安定的に形成することができる。
前記「固定した」状態とは、光学異方性膜に含まれる液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該光学異方性膜に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。
本発明における配向状態を固定する方法としては、液晶性組成物を一旦、液晶相形成温度まで加熱し、次にその配向状態を維持したまま冷却することにより、その液晶状態における配向形態を損なうことなく固定することで形成できる。また、重合開始剤を添加した液晶組成物を液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定することができる。後者の重合反応により行うことが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。なお、光学異方性膜が最終的に形成された際に、その光学異方性が保持されていれば、液晶化合物はもはや液晶性である必要はない。例えば、低分子の液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合又は架橋し、高分子量化して液晶性を失ってもよい。
また、液晶組成物の液晶温度範囲は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内に存在することが好ましく、10〜150℃の範囲内に存在することがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
本発明の光学異方性膜の作製には、前記数式(1)を満足する液晶化合物の1種のみを使用してもよいし、前記数式(1)を満足する液晶化合物を複数種の混合物を使用してもよい。混合によって融点が下がり液晶温度範囲が広げられる効果が期待できる。
上記数式(1)を満たす液晶化合物で、前記一般式(I)で表される化合物以外の液晶化合物としては、例えば、特開2005−289980号公報等に記載された液晶化合物を用いることができる。また、効果を損なわない範囲で、数式(1)を満足しない液晶化合物を併用してもよい。また、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用;及び低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。
本発明の光学異方性膜の作製に用いられる液晶組成物(塗布液等、液状である場合は、溶媒を除いた固形分)中、前記数式(1)を満足する液晶化合物(好ましくは前記一般式(I)又は(II)で表される液晶化合物)の含有量は、10〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましく、30〜90質量%がさらに好ましく、50〜90質量%がよりさらに好ましい。
・ 他の添加剤:
本発明の光学異方性膜は、前記数式(1)を満足する液晶化合物の他に、所望により任意の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、前記一般式(I)又は(II)表される化合物以外の液晶化合物や、後述する液晶性分子のチルト角制御のための化合物、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
前記光学異方性膜の、下側界面(すなわち光学異方性膜がポリマーフィルム等の基板表面上に形成されている場合は基板側界面)側のチルト角、及び上側界面(すなわち空気界面)側のチルト角は、配向膜や液晶層に添加する空気界面配向剤の選択によって制御できる。また、配向膜のラビング密度と配向膜界面での液晶化合物のチルト角との間には、ラビング密度を高くするとチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとチルト角は大きくなる関係があるので、配向膜のラビング密度を変えることでも、基板側のチルト角の調整をすることができる。以下に空気界面側でチルト角を減少及び増大させる添加剤と配向膜側でチルト角を増大させる添加剤の例を挙げる。
前記光学異方性膜の形成用組成物中に、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の少なくとも一種を含有させることで、空気界面において液晶性化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。そのチルト角の低減の程度は添加量依存性があるので、添加量を調製することで目的とするチルト角を得ることができる。
以下、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
Figure 2009265130
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
Figure 2009265130
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げてものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
Figure 2009265130
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特願2003−331269号明細書(特開2005−099258号公報)に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
前記一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量としては、液晶化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(X1)〜(X3)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記光学異方性膜の形成用組成物中に、例えば、下記AE−1〜4で表されるような、分子中の官能基として−COOHや−SO3H基などの酸性基を有する化合物を含有させることで、空気界面において液晶性化合物の分子のチルト角を増大させることができる。化合物の添加量としては、添加量が多いほどチルト角を大きくできるので、目標とするチルト角によって異なるが、液晶化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
Figure 2009265130
前記光学異方性膜の形成用組成物中に、イオン性の低分子化合物で、特に陽イオン性基が陰イオン性基よりも大きな化合物を少なくとも一種を含有させることで、配向膜界面において液晶性化合物の分子のチルト角を増大させることができる。具体的な化合物例としては、たとえば下記PE−1〜6で表される化合物を挙げることができる。そのチルト角の増大の程度は添加量依存性があるので、添加量を調整することで目的とするチルト角を得ることができる。化合物の添加量としては、液晶化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
Figure 2009265130
また、前記光学異方性膜を形成するにあたり、所望の添加剤を用いることによって、光学異方性膜中に光学特性のムラが生じるのを軽減することができる。この添加剤によって塗布液の表面張力を下げ、塗布安定性を高めることができる。この際の塗布液の表面張力は25〜20dyn/cmであることが好ましく、23〜21dyn/cmであることがより好ましい。添加剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の全質量の0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.02〜0.5質量%であることがさらに好ましい。この添加剤の化合物として特に制限はなく、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。好ましいものとして下記の含フッ素の界面活性剤やシリコン系化合物を用いることができる。この添加剤を用いた結果、液晶表示装置に用いた場合に、表示特性のムラの改善に寄与する。
Figure 2009265130
前記光学異方性膜形成用の液晶組成物中に、ハジキ防止剤を添加して、液晶組成物を塗布する時のハジキを防止してもよい。ハジキ防止剤としては、一般的に、ポリマーを好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、液晶化合物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましいポリマーの具体例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
液晶の配向を阻害しないようにハジキ防止目的で使用されるポリマーの含有量は、液晶化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
前記光学異方性膜形成用の液晶組成物は、硬化性組成物であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応と電子線照射による重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。
重合の反応率は光学異方性膜の機械的強度の保持や未反応物が液晶層等に流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。重合反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する方法も用いることができる。重合反応率の測定は重合反応性の結合基の赤外振動スペクトルの吸収強度を重合前後で比較することによって行うことができる。
液晶組成物は、重合性のモノマーを含有してもよい。液晶化合物とともに使用する重合性モノマーとしては、液晶化合物と相溶性を有し、液晶化合物の傾斜角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。
上記重合性モノマーの含有量は、液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、例えば、配向膜の表面に光学異方性膜を形成した場合に、配向膜と光学異方性膜との間の密着性を高める効果が期待できる。
前記液晶組成物を、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステル及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
光学異方性膜の膜厚については特に制限はない、用途に応じて、求められる捩れ角やレターデーションの点で、好ましい膜厚が決定される。上記した好ましい捩れ角の範囲(10〜180度程度)を達成するためには、通常は、2〜30μm程度である。
・ 配向膜:
上記した様に、前記光学異方性膜の形成には、配向膜を利用してもよい。配向膜は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向膜は、光学異方性膜に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向膜の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、光異性化する化合物を用いてこれに偏光照射若しくは自然光斜め照射する方法、及びマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド及びステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
配向膜の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セル又は光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビルアルコール及びアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビルアルコールポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向膜用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
また、LCDの配向膜として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向膜として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いてラビングを行うことにより実施される。
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiOを代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al、等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
光異性化する化合物を用いてこれに偏光照射若しくは自然光を斜め照射する方法に用いられる化合物としては、アゾ系の液晶性化合物やポリマー、シンナモイル系の化合物が、光に対する感度が高いため好ましい。必要に応じて光増感剤などを添加することによって増感することもできる。いずれも光による異性化や二量化によって膜面に発生する異方性を配向膜として機能させるものであれば好適に使用できる。
・ 支持体:
本発明の光学異方性膜は、支持体上に形成してもよい。透明なポリマーフィルム等の支持体上に形成した後に、支持体とともに他の部材に貼り合せて使用することもできる。また支持体上に形成した後に、光学異方性膜のみを他の部材の表面に転写することも可能である。前記光学異方性膜と支持体との積層体として、表示素子等、透過性が重要な用途では、支持体は光透過性、具体的には光透過率が80%以上、であるのが好ましい。支持体の例は、ポリマーフィルムである。ポリマーの具体例として、セルロースエステル類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸で、炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第00/26705号パンフレットに記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
また、支持体は光学的に等方性であってもよく、異方性を有していてもよく、用途に応じて選択される。支持体として用いるポリマーフィルムの厚さは、通常5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲が好ましく、30〜180μmの範囲がより好ましく、30〜110μmの範囲が特に好ましい。
・ 光学異方性膜のマルチドメイン化
本発明の光学異方性膜の一実施形態は、捩れ角度及び捩れ方向等の捩れ配向状態を決定する少なくとも一つのファクターが互いに異なる、2以上の捩れ配向状態のドメインを有するマルチドメインの光学異方性膜である。
また、本発明の光学異方性膜の他の実施形態は、少なくとも1つの捩れ配向状態のドメインと、少なくとも1つの非捩れ配向状態のドメインとを有するマルチドメインの光学異方性膜である。
また、本発明の光学異方性膜の他の実施形態は、少なくとも1つの捩れ配向状態のドメインを分割して配置するマルチドメインの光学異方性膜である。
これらの実施形態の光学異方性膜は、インクジェット方法、及びパターニング方法等を利用して製造することができる。
パターニング法には、光異性化キラル剤が利用される。光異性化キラル剤については、特開2002−179668号公報、特開2002−179681号公報、特開2002−338668号公報等に記載があり、それらを前記方法に利用することができる。それらの塗布液を利用して、同様にマルチドメインの光学異方性膜を製造することができる。
・ 光学異方性膜の用途と特性:
本発明の光学異方性膜は、液晶ディスプレイ、光通信用デバイス、及び光記録用デバイス等の種々の光技術分野において有用であり、より具体的には、2次元3次元表示切替型液晶表示装置用偏光制御フィルター、偏光板用位相差膜、光演算素子用偏光制御フィルター、CDやDVDなどのピックアップ光学素子に用いられる偏光分離フィルター、セキュリティー用としての偏光状態記録層等として有用である。
用途によっては、本発明の光学異方性膜は、他の光学部材と組み合わせて利用することができる。
具体的には、円偏光を用いた3次元表示装置等の用途では、Re(550)が 120〜155nm程度の位相差板と貼り合せて利用するのが好ましい。
また、上記した通り、CD、DVD等の光ヘッド装置の部材としては、回折格子と組み合わせて利用するのが好ましい。例えば、ポリマーフィルム又はガラス基板等の一方の面を凹凸面として、回折格子として機能させ、他方の面上に本発明の光学異方性膜を形成した部材を、光ヘッド装置の部材として、光源と対物レンズとの間の光路中に配置することができる。この実施形態については、特開2002−357715号公報の記載を参照することができる。
また、上記したマルチドメインの光学異方性膜は、種々の用途において有用であり、例えば、2次元/3次元ディスプレイとして利用される液晶表示装置が有する視差バリア層のための位相差層として有用である。この実施形態では、光学異方性膜は、偏光吸収層やλ/4層 等の部材と組み合わせて用いることができる。この実施形態については、特表2007−504484号公報の記載を参照することができる。
また、本発明の光学異方性膜の特徴的な光学機能は、入射円偏光に対してはその偏光状態を保持するが、直線偏光に対しては、その偏光方向を回転することである。この機能はその他の偏光制御光学部材、たとえばλ/4板、λ/2板、コレステリック液晶などを用いた円偏光反射板、円二色性板、偏光反射板、偏光吸収フィルター等と組み合わせて使用することによって、これまでになかった光学機能の素子を形成できる。たとえば、円偏光を直線偏光に変換するλ/4板では、同じセンスの円偏光でもλ/4板に入射するによって、出射する直線偏光の振動方向が90度異なるが、本発明の90度捩れた光学位相差膜と組み合わせることによって、出射する直線偏光の振動方向が同一になる光学素子を形成できる。この実施形態では、光演算素子や光通信用光学素子に用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
下記化合物(1)100質量部、市販のキラル化合物(ビエーエスエフ社製 LC−756)0.04質量部、下記化合物(2)0.15質量部、及び重合開始剤(イルガキュア819、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)4質量部を、メチルエチルケトン150質量部に溶解して、溶液を調製した。
ガラス板上に、市販のポリイミド配向膜溶液を塗布乾燥、焼成して形成した配向膜にラビング処理を行った。
このラビング処理面に、上記溶液をバー塗布し、塗膜とした。この塗膜を温度110℃まで加熱したところ、膜中で液晶組成物が配向した。その後、温度90℃にて800mJ/cm2の紫外線を窒素雰囲気中で照射して、重合を進行させ、その後冷却することによって、その配向状態を固定し、光学異方性膜1を形成した。形成された光学異方性膜1の厚さは、11μmでああった。
この光学異方性膜1の捩れ角度、レターデーション、平均傾斜角度をアクゾメトリックス社製の偏光解析装置(AxoScan)を用いて求めたところ、それぞれ90度、480nm、及び1.5度であった。
化合物(1)は昇温時119℃〜153℃の間でネマチック液晶相を示す。また、降温観察では153℃〜80℃の範囲でネマチック液晶相を示す。この液晶を平行配向処理をしたクサビセルに注入して、光路中に干渉フィルターを挿入して、縞模様の間隔を測定し各波長におけるΔnを算出した。100℃におけるΔnは450nmにおいて0.038、550nmにおいて0.045、650nmにおいて0.048であり、Δn(450nm)/Δn(550nm)が0.85であった。
Figure 2009265130
Figure 2009265130
作製した膜(光学異方性膜1)を透過軸を平行にした二つの偏光プリズムの間に挟み、スペクトルメータで、各波長での偏光透過率を測定した。450nm、550nm、650nmの波長における偏光透過率は入射光側の偏光軸と光学異方性膜1の光入射側の液晶分子の配向方向との角度Aが0度の場合、それぞれ0.0%、0.0%、0.5%であり、角度Aが15度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、0.8%であり、角度Aが30度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、1.5%であり、角度Aが45度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、1.7%であった。また、偏光プリズムを直交させて角度Aを45度にして同様に偏光透過率を測定したところ、450nm、550nm、650nmの波長において、それぞれ99.9%、100.0%、98.3%であった。
この結果から、光学異方性膜1は、いかなる方位の偏光方向の直線偏光が入射しても、また可視光域のいかなる波長の直線偏光が入射しても、その直線偏光性を損なうことなく、液晶の捩れ角度に対応した角度の旋光効果を与えることが、理解できる。
[実施例2]
実施例1の化合物(1)を下記化合物(3)に代えて、市販のキラル化合物(ビエーエスエフ社製 LC−756)の配合量を0.02質量部にした以外は、実施例1と同様に光学異方性膜2を形成した。ただし、液晶組成物の配向温度は135℃で、紫外線照射温度は110℃である。形成された光学異方性膜1の厚さは、10.5μmでああった。
この光学異方性膜2の捩れ角度、レターデーション、平均傾斜角度をアクゾメトリックス社製の偏光解析装置(AxoScan)を用いて求めたところ、それぞれ45度、485nm、及び1度であった。
化合物(3)は融点が147℃で、昇温過程で163℃までネマチック(Ne)相を示し、降温観察では163℃〜100℃までNe相を示す。上記と同様にして、113℃でΔnの波長分散を測定したところΔn(450nm)/Δn(550nm)=0.86であった。
Figure 2009265130
作製した膜(光学異方性膜2)を透過軸を液晶の捩れ方向と逆方向に45度に交差した二つの偏光プリズムの間に挟み、スペクトルメータで、各波長での偏光透過率を測定した。450nm、550nm、650nmの波長における偏光透過率は入射光側の偏光軸と光学異方性膜2の光入射側の液晶分子の配向方向との角度Aが0度の場合、それぞれ0.0%、0.0%、0.4%であり、角度Aが15度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、0.7%であり、角度Aが30度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、1.4%であり、角度Aが45度の場合、それぞれ0.1%、0.0%、1.6%であった。また、偏光プリズムを液晶の捩れ方向と同方向に45度に交差させて角度Aを45度にして同様に偏光透過率を測定したところ、450nm、550nm、650nmの波長において、それぞれ99.9%、100.0%、98.4%であった。
この結果から、光学異方性膜2は、いかなる方位の偏光方向の直線偏光が入射しても、また可視光域のいかなる波長の直線偏光が入射しても、その直線偏光性を損なうことなく、液晶の捩れ角度に対応した角度の旋光効果を与えることが、理解できる。
[実施例3]
(隔壁用の形成)
下記の化合物をはかり取り、混合し温度40℃で30分間攪拌することによって感光性組成物を得た。
(隔壁用感光性組成物)
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万) 0.3質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 2.5質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン 0.16質量部
・メチルエチルケトン 52質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA) 3.2質量部
・下記構造物1 0.01質量部
Figure 2009265130
ガラス基板を洗浄後、120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上記の感光性組成物を塗布した。引き続き真空乾燥装置で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚11μmの感光層を得た。
次に超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機を用いて、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cm2でストライプ状にパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、感光層の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液にてシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を超高圧洗浄ノズルにて噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2000mJ/cm2にてポスト露光を行って隔壁を得た。ガラス基板表面には、このストライプ状の隔壁により隔てられた微細領域が形成された。
(光学異方性膜の作製)
上記隔壁基板上にポリイミド系配向膜を形成し、配向層をストライプと平行にラビング処理した。つづいて、実施例1で得られた光学異方性膜用溶液を、ピエゾ方式のヘッドを用いて、配向層を形成した基板のストライプ状の凹部に打滴した。打滴はストライプの一本おきにおこない、打滴部分と非打滴部分が交互に形成された。溶媒乾燥後に、110℃で2分間加熱乾燥熟成して均一な液晶相を有する層を形成した。次に90温度に下げ、この層に対して、酸素濃度0.3%以下の窒素雰囲気下において、超高圧水銀ランプを用いてUVを照射(照度200mW/cm2、照射量800mJ/cm2)して配向状態を固定化し、液晶層がある領域とない領域のパターンを有する光学異方性膜3を形成した。
なお形成された光学異方性膜の厚さは11μmであり、上記方法で測定した捩れ角は90度であった。
形成した光学異方性層付き基板に市販の偏光板をその透過軸がストライプと平行に貼り付けた。シャーカステン上に偏光板がシャーカステン方向に、光学異方性膜が観察方向に来るように設置して、もう一枚の偏光板を回転させながら、透過光を観察したところ、ストライプの明暗の位置が交互に入れ替わる状態が観察され、液晶が旋光角90度の旋光性を示していることを確認した。また、明暗時の着色は液晶がある部分とない部分ともに認められず、どの波長領域でも良好な旋光性を示すことが認められた。
[比較例1]
化合物(1)の代わりにΔn(450nm)/Δn(550nm)が1.12の、下記化合物(4)を用い、市販のキラル化合物(ビエーエスエフ社製 LC−756)の配合量を0.07質量部にした以外は、実施例1と同様な手順によって光学異方性膜4を作製した。この光学異方性膜4の厚さは、5.5μmであった。
この光学異方性膜4の捩れ角度、レターデーション、平均チルト角を上記と同様に測定したところ、それぞれ90度、480nm、及び1.5度であった。
Figure 2009265130
作製した光学異方性膜4を透過軸を平行にした二つの偏光プリズムの間に挟みスペクトルメータで、各波長での偏光透過率を測定した。450nm、550nm、650nmの波長における偏光透過率は入射光側の偏光軸と光学異方性膜4の光入射側の液晶分子の配向方向との角度Aが0度の場合、それぞれ9.5%、0.0%、5.1%であり、角度Aが15度の場合、それぞれ23.1%、0.0%、8.1%であり、角度Aが30度の場合、それぞれ49.9%、0.0%、13.6%であり、角度Aが45度の場合、それぞれ65.5%、0.0%、16.3%であった。また、偏光プリズムを直交させて角度Aを45度にして同様に偏光透過率を測定したところ、450nm、550nm、650nmの波長において、それぞれ36.5%、100.0%、83.7%であった。

Claims (6)

  1. ネマチック相又はスメクチック相を発現し、当該液晶相の波長λにおける複屈折Δn(λ)が、下記数式(1)を満足する液晶化合物の少なくとも1種を含有する光学異方性膜であって、該光学異方性膜中において前記液晶化合物の分子が膜の厚さ方向へ捩れた配向状態に固定されていることを特徴とする光学異方性膜:
    数式(1) Δn(450nm)/Δn(550nm)<1 。
  2. 前記液晶化合物の分子の捩れ角度が、0度を超え180度以下であって、光学異方性膜面に対する液晶化合物の分子の平均傾斜角度が0度〜15度であることを特徴とする請求項1に記載の光学異方性膜。
  3. 前記液晶化合物が、下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学異方性膜:
    Figure 2009265130
    式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成し;R1、R2及びR3は各々独立に置換基を表し;mは0〜4の整数であり;L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;Xは第14〜16族の非金属原子を表すが、Xには水素原子又は置換基R4が結合してもよく;R、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは、重合性基を有する。
  4. 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の光学異方性膜:
    Figure 2009265130
    式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;Zは、炭素原子及び第14〜16族の非金属原子からなる群から選択される1つ又は2つの原子を表し、式中記載のC−C=C−C又はC=C−C=Cと共に5又は6員環を形成し;R1、R2、及びR3、は各々独立に置換基を表し;mは0〜4の整数であり;L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;R5及びR6は各々独立に置換基を表し;R、R1、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つは、重合性基を有する。
  5. 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、200〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
  6. 前記液晶化合物を少なくとも含有する流体を、インクジェット式の吐出ヘッドから表面に吐出及び乾燥して液晶相を形成した後、露光して形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
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