JP2009258126A - 原子炉の炉心の反応を調節するためのクラスター、クラスターの吸収ロッド、及び吸収ロッドを摩耗に対して保護するための方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明による加圧水型の原子炉を調節するためのクラスターは、中性子吸収ロッド2の束と、放射状の形状であるスパイダー3と、を備え、中性子吸収ロッド2が、それらの上端プラグ6を介してスパイダー3に取り付けられる。好ましくは、スパイダー3は、冶金的な健全性がチェック済みのチタン合金片から切り出すことによって構成される。好ましくは、切り出しは、機械的、化学的、又は電気的な機械加工、又はウォータージェット切断によって行なわれる。
【選択図】図1
Description
原子炉の運転中には、原子炉の炉心の反応を制御するために、炉心の特定の組立体の中において、制御クラスターの垂直位置が変更されて、制御クラスターを下降させてそれらを挿入するか、あるいは、制御クラスターを上昇させて引き抜くかして、可変長の吸収ロッドが炉心組立体に挿入されるようにしている。原子炉の炉心における異なる部分には一般に、異なるタイプの制御クラスターが使用されて、炉心の反応度を制御すると共に、原子炉運転中の炉心内における出力分布を制御している。高い吸収性のクラスター、つまり黒色クラスターと、吸収性の低い灰色クラスターとが特に使用される。
一般に、黒色クラスターの場合には、ロッド組立体は、高い中性子吸収能力をもったロッドから構成される。これらの吸収ロッドは、炭化硼素B4Cなどの吸収材ペレットを包被しているクラッディング管と、吸収材ペレットを包被していない中性子吸収材料の管と、さらに、炭化硼素B4Cのペレットを包被している吸収材料の管とから構成される。特に、制御クラスターにおけるロッドの吸収材の管には、ハフニウム管を使用すると良いと示唆されている。従って、原子炉の反応度を調節するクラスターを全体的に又は部分的に構成する吸収ロッドは、B4Cなどの吸収材ペレットを含んでいるハフニウム管から構成される。いくつかの状況においては、吸収ロッドの一部分だけ、例えば底部分だけを、ハフニウムから作るべきであると示唆されている。
ハフニウムは、他の吸収材料に勝る利点を有していて、一次流体に対して優れた互換性を有していると共に、照射の下でもほとんど膨張を示さず、また、加圧水型原子炉の運転温度において、良好なクリープ抵抗を有している。従って、ハフニウムはシースを用いずに使用することができる。
しかしながら、ハフニウムが溶接できるのは、同一の族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)の合金や、ハフニウムと連続固体溶融を形成する合金だけである。
仮に、ハフニウムを上端プラグに用いるならば、制御クラスターの機械的強度は最適であるとは言えないが、というのは、ハフニウムは、運転中にクラスターが受ける応力に対して充分に良好な機械的特性を有してはいないからである。さらに、上端プラグは、炉心の上方に保持されるので、極めて低い中性子線束だけにしか被爆されないのだとすれば、吸収ロッドの上部部分にハフニウムのプラグを用いることは、中性子吸収の観点からもあまり正当であるとは言えない。最後に、ハフニウムを上端プラグに用いるとすれば、これに伴なってクラスターの質量は増大し、このことは操作上の強い制約になる。ジルコニウム合金を上端プラグに使用することは、吸収性を劣化させることもなく、質量の要件に両立するだろう。しかしながら、これらの合金の機械的特性は不適当である。逆に、チタン合金の特性は、求められる性能について、完全に互換性がある。
・ハフニウム管を有する吸収ロッドの上端プラグは、TA6V又はTA3V2.5のチタン合金から作られている。
・底端プラグを溶接されたクラッディングを酸化雰囲気中にて移動させることによって、ロッドの摩耗に対する保護が提供されている。
・チタン合金の特性が確実に維持される条件下において、静止炉の酸化雰囲気で処理することによって、チタン合金から作られている上端プラグについて、摩耗に対する保護が得られている。
・上端プラグと底端プラグとのうちの少なくともひとつは、摩擦溶接、抵抗溶接、又は、TIG溶接のうちの少なくともひとつによって溶接されている。
・クラッディング及び底端プラグの製造に用いられているハフニウムは、300ppmを越える酸素を含有している。
また、本発明は、加圧水型の原子炉を調節するためのクラスターの吸収ロッドであって、ハフニウム管と、ハフニウム管の上端に溶接されたチタン合金の上端プラグと、ハフニウム管の下端に溶接された塊状のハフニウムから作られた底端プラグと、を備えているような、吸収ロッドに関する。
最後に、本発明は、加圧水型の原子炉を調節するためのクラスターであって、ロッドの束と、吸収ロッドがそれらの上端プラグを介して取り付けられる、放射状の形状であるスパイダーと称される支持体と、を備えた上記クラスターにおいて、スパイダーがチタンベース合金から作られているような、クラスターに関する。
好ましくは、クラスターにおける吸収ロッドの少なくともいくつかは、ハフニウム管と、ハフニウム管の上端に溶接されたチタン合金の上端プラグとを備えている。
ハフニウムの管ないし中空棒は、公知の工程によって用意されるもので、ニードルで孔の空いたビレットを延伸させ、変形可能なマンドレルで熱間延伸させ、最終工程でマンドレルを取り外し、破損直前まで冷間引き抜きを行なう。この熱間形成工程の利点は、冷間作業に比べて、はるかに高い酸素含有量をもった金属を使用することが可能になることである。一般に、300ppmを越える酸素含有量のハフニウムは、もはや冷間圧延することができないと考えられている。この工程によれば、従来の準備方法において電子衝撃による最初の融合の後に得られるような、300ppmを越え、さらに700ppmさえ越える酸素含有量のビレットを使用することが可能になる。酸素を濃縮することによって、金属の機械的特性を高めることが可能になって、このため、表面及び製造の欠陥(傷や非直線化など)に対する繊細さを低下させることができる。
ジルコニウムやハフニウムの端部プラグは、適当な直径の中実棒を機械加工することによって得られる。このデザインによれば、中性子、機械的、及び重量についての要求条件を満足することが可能になる。
しかしながら、クラスターが長手方向に軌道上を動くことは、クラスターのガイド(連続ガイド及びガイドカード)と燃料組立体(先端摩耗)とに摩耗を生じさせそうである。
実際に、これらの材料(チタン、ジルコニウム、及びハフニウム)は、充分に摩耗に耐えるものではないことが知られている。これらの材料を摩耗に対して保護するためのひとつの公知の方法は、酸化雰囲気中にて、高温酸化処理を行なうことである。そうした処理によれば、摩耗に対して保護を提供する酸素拡散層が創られて、酸化層の形成は、酸化雰囲気中の酸化平衡圧力が極めて低いために、妨げられにくい。耐摩耗を確保するために必要とされる酸化拡散の深さは、20μm程度である。従って、この処理における最小目標深さは35〜50μmである。
さらに、溶接された管の底端プラグを処理して、底端プラグの弾頭形状をもった領域について、摩耗に対する保護の連続性を確保する。しかしながら、完成したロッド(上端プラグを溶接されたロッド)を処理することは望ましくない。実際に、ある種のロッドでは、封入された部品、B4Cペレットの列、及び支持装置が加熱の妨げになり、封入する部品や支持装置の選択を制約することになる(処理温度にて共融を生じさせるおそれのある材料は排除しなければならない。)。これに加えて、ハフニウムとチタンとの接合部の加熱状態の変化を制御するのは困難であり、チタンを過熱させるおそれがあり、機械的特性の維持に害を与えるだろう。
ロッドの上端プラグは、合金の特性が確実に維持される条件下における、酸化雰囲気中の静止炉での処理によって、摩耗に対して保護されている。静止炉での処置は、550〜850℃の温度にて、2〜12時間の時間長さにわたって実行される。例えば、処置は730℃で4時間、実行される。
最後に、本発明は、スパイダーがチタンベースの合金で作られているような、制御クラスターに関する。この構成によれば、これらの合金のより良い機械的特性とそれらの低密度から利益を得ることが可能になる。従って、スパイダーの部分の質量を吸収ロッドに割り当てることができるために、クラスターのデザインがより容易になる。
クラスターの吸収ロッドを支持するスパイダーは、従来技術による制御クラスターの吸収ロッドのための支持スパイダーと、同一の形状及び寸法に構成することができる。しかしながら、いくつかの状況においては、チタン合金の上端プラグの形状及びサイズに応じて、吸収ロッドが取り付けられるスパイダーの部品の形状及び寸法を変更することができる。
スパイダーは、冶金的な健全性がチェック済みのチタン合金片から切り出すことで、構成することができる。従って、欠陥のリスクが減少すると共に、スパイダーの構成要素間における溶接又は鑞付けされる接合部の数を減少させることができる。切り出しは、機械的、化学的、又は電気的な機械加工、又はウォータージェット切断によって行なうことができる。
最後に、材料の冶金学的な健全性と、チタンベースの合金からスパイダーを製造することは簡易であることのために、製造コストと運転異常を低下させることができると共に、制御クラスターの製造の生産性を高めることが可能になる。
チタンベースの合金から作られたスパイダーは、ハフニウム管のロッドを含むか否かにかかわらず、あらゆる制御クラスターに使用することができる。
本発明による制御クラスターの機械的強度について、運転中の原子炉内の条件を再現するような条件下において、試験を実行した。
また、酸化を用いた耐摩耗処理の有効性を確認するために、吸収ロッドの異なる部品に対して、摩耗試験を実行した。
実行した試験は、吸収ロッドの端部プラグ特に上端プラグと、吸収ロッドのハフニウム管と、上端プラグを制御クラスターのスパイダーに連結する部品とについて、摩耗に対する耐久性を検査すべくデザインされた。耐久試験を実行したところ、本発明による制御クラスターは、原子炉内において、今日の技術水準において想定される原子炉の運転寿命において、早期破壊を生じさせることなく運用できることが示された。
本発明について理解できるように、本発明による制御クラスター及び吸収ロッドについて、添付図面を参照しつつ例示的に説明する。
制御クラスター1は、吸収ロッド2の束と、束の形態のロッド2を支持及び保持し、ロッドが互いに平行をなして燃料組立体のガイド管の配置と同一の横方向配置にするような、スパイダー3とを備えている。
スパイダー3は、炉心内において垂直方向に動かすべく、制御クラスターが吸収ロッドに結合されるように、内溝を備えた円筒形のハブ3aと、ハブ3aと一体片をなして、それぞれに吸収ロッド2が上端プラグによって取り付けられる、アーム3bとを備えている。
制御クラスター1において、ロッド2の少なくともいくつかは、ハフニウム管から構成された管状本体を備えている。
灰色クラスターの場合には、いくつかのロッド2だけがハフニウム管から構成されていて、その他のロッドの管は、鋼その他の非吸収性材料から作られて、原子炉内の運転要件を満たすようになっている。
図2は、例えば1300MWeの出力で運転される加圧水型原子炉において使用できる、本発明による黒色クラスターの吸収ロッドを示している。
図2に示したロッド2は、高い吸収性である炭化硼素B4Cのペレット5の積み重ねを包被した、ハフニウム管4を備えていて、その上端はチタン合金のプラグ6によって封止され、その下端は弾頭形状をもつハフニウム又はジルコニウム合金のプラグ7によって封止されている。底端プラグを溶接された管には、酸素拡散11が施されていて、摩耗に対する保護を提供している。上端プラグは、酸素拡散12によって保護しても良いが、しなくても良い。
炭化硼素B4Cのペレット5の積み重ねは、バネ又はその他の固定装置8によってハフニウム管4の内部に保持されて、ペレット列の底端は、支柱7aを介して底端プラグ7に対して支えられている。ハフニウムロッド2の底端プラグ7は、溶接ビード7bを介して、ハフニウム管4の底端と一体的になっていて、溶接は例えば、レーザービームや電子ビーム溶接、TIG溶接、摩擦溶接、又は抵抗溶接によって実行される。得られる溶接は、完全に健全であり、完全に強いものである。
本発明においては、ロッド2の上端プラグ6は、例えばTi−6Al−4V(TA6V)合金又はTA3V2.5合金などのチタン又はチタン合金から作られていて、溶接9を介して、管4の上端に堅固かつ水漏れしないように固定される。試験によれば、チタン合金プラグ6とハフニウム管4との溶接は、例えばレーザービームや電子ビーム溶接、TIG溶接、摩擦溶接、又は抵抗溶接によって行なえることが示された。得られる溶接は、完全に健全であり、完全に強いものである。TIG溶接又は摩擦溶接の事例においては、ハフニウム/チタン又はハフニウム/ジルコニウムの試験片における破断領域は、溶接領域外であった。破断は、固体材料の極限強度に一致する荷重において生じた。
図3に示すように、吸収ロッドの上端プラグ6は、断面が小さくなった部分3cを有していて、ロッドに必要な可撓性を与えている。
さらに、チタン合金のプラグ6とハフニウム管4の上端との間の溶接9(図2参照)は、上端プラグ6の結合溶接9において追加的な腐食が観察されることがなく、原子炉環境内における機械的、熱的、及び化学的な応力に耐えられることが確認された。
さらに、制御クラスターを原子炉の炉心内において使用するときには、プラグ6は炉心の上面より上方に位置し、原子炉の炉心内で得られるような激しい中性子線束に暴露されることがない領域に位置する。従って、チタン合金の上端プラグは、照射の下での膨張を生じたり、機械的特性を損失したりするような条件には曝されない。その結果、高い等級の機械的特性を有する上端プラグは、原子炉の炉心内における長期の運転にわたって、その特性を維持する。
本発明は、ハフニウム管から構成された吸収ロッドを含むような、軽水冷却原子炉のための、あらゆる制御クラスターに適用することができる。
Claims (11)
- 加圧水型の原子炉を調節するためのクラスターであって、
中性子吸収ロッド(2)の束と、
放射状の形状であるスパイダー(3)と、を備え、
中性子吸収ロッド(2)が、それらの上端プラグ(6)を介してスパイダー(3)に取り付けられる、クラスター。 - スパイダーは、冶金的な健全性がチェック済みのチタン合金片から切り出すことによって構成される、請求項1のクラスター。
- 切り出しは、機械的、化学的、又は電気的な機械加工、又はウォータージェット切断によって行なわれる、請求項1のクラスター。
- 中性子吸収ロッド(2)は、それぞれ、金属クラッディング(4)を備え、その上端は、上端プラグ(6)によって封止され、その下端は、底端プラグ(7)によって封止される、請求項1〜3の何れか1項に記載のクラスター。
- 少なくともいくつかの中性子吸収ロッドについて、
クラッディング(4)は、無溶接のハフニウム管であり、
上端プラグ(6)は、チタンベースの合金から作られ、ハフニウムのクラッディング(4)の上端の部分に溶接され、
底端プラグ(7)は、塊状のハフニウムから作られ、ハフニウムのクラッディング(4)の下端に溶接される、請求項4に記載のクラスター。 - 前記少なくともいくつかの中性子吸収ロッドについて、チタン合金から作られた上端プラグ(6)の摩耗に対する保護が、チタン合金の特性が確実に維持される条件下において、静止炉の酸化雰囲気内での処理によって得られる、請求項5に記載の調節クラスター。
- 静止炉での処理は、550〜850℃の温度で2〜12時間の時間長さにわたって実行される、請求項6に記載のクラスター。
- 中性子吸収ロッド(2)のクラッディング(4)の酸化処理は、高温で且つ酸化雰囲気で実行される、請求項5〜7の何れか1項に記載のクラスター。
- クラッディング(4)の酸化処理は、底端プラグ(7)を溶接したクラッディングの上に実行される、請求項8に記載のクラスター。
- クラッディング(4)の酸化処理は、1300〜1700℃の温度で、且つ、50〜250mm/minの移動速度で実行される、請求項9に記載のクラスター。
- 更に、不活性なロッドを備える、請求項1〜10の何れか1項に記載のクラスター。
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