JP2009256716A - 溶銑容器内での冷鉄源溶解方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶銑容器内に冷鉄源を装入した後、高炉からの溶銑を受銑して、溶銑に冷鉄源を溶解させる方法において、溶銑への冷鉄源の溶解に伴う溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%が、溶銑の温度降下に伴う溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%以上となるように、溶銑容器内に装入する冷鉄源の装入量及び含有C濃度のいずれか一方又は双方を決定する。
【選択図】図1
Description
この冷鉄源の溶銑への溶解方法としては、例えば、トピードカー内に予め冷鉄源を投入し、溶銑を受銑することにより、転炉での溶銑配合率(HMR)の低下を可能とする方法がある。この方法としては、例えば、特許文献1に、トピードカー内に50〜100トンの溶銑を残し、その中に冷鉄源(屑鉄)を投入する方法がある。また、特許文献2には、溶銑排出後のトピードカー内に冷鉄源を投入して、その冷鉄源によりトピードカーの放熱ロスを低減する方法がある。
(1)溶銑容器内に冷鉄源を装入した後、高炉からの溶銑を受銑して、該溶銑に前記冷鉄源を溶解させる方法において、
前記溶銑への前記冷鉄源の溶解に伴う前記溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%が、前記溶銑の温度降下に伴う該溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%以上となるように、前記溶銑容器内に装入する前記冷鉄源の装入量及び含有C濃度のいずれか一方又は双方を決定することを特徴とする溶銑容器内での冷鉄源溶解方法。
ΔC1=A1−(W1×A1+W2×A2)/(W1+W2)
ΔC2=f(ΔT1)+f(ΔT2)
ここで、A1は溶銑のC濃度(質量%)、A2は冷鉄源の平均C濃度(質量%)、W1は溶銑量(質量)、W2は冷鉄源量(質量)、f(ΔT1)とf(ΔT2)はΔT1とΔT2の関数、ΔT1は冷鉄源1トンあたりの溶銑の温度降下(℃)、ΔT2は高炉から転炉へ搬送する間の溶銑の温度降下(℃)である。
そして、溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%と、溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%を、それぞれ式を用いて求める場合、溶銑容器内に装入する冷鉄源の種類、及びその装入量の決定作業が容易であり、作業性が良好になる。
ここで、図1は冷鉄源の溶銑への装入原単位と冷鉄源の溶銑への溶解前後における溶銑のC濃度の希釈量ΔC1及び溶銑の溶存Cの析出量ΔC2との関係を示す説明図である。
この冷鉄源は、例えば、鉄スクラップ、型銑等であり、そのうちの1種類を溶銑容器内に装入する場合は、その含有C濃度が、また、複数種類を装入する場合は、その平均含有C濃度が、溶銑のC濃度未満となるものを使用する。
高炉から受銑した溶銑は、その製造過程により、炭素飽和状態となっている。このため、冷鉄源を、この炭素飽和状態の溶銑に溶解させた場合、溶銑の温度が低下するため、溶銑の飽和C濃度が減少し、大気へ放出されることになる。
即ち、溶銑への冷鉄源の溶解に伴う溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%(以下、単にΔC1ともいう)が、冷鉄源による溶銑の温度降下に伴う溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%(以下、単にΔC2ともいう)以上となるように、溶銑容器内に装入する冷鉄源の種類(含有C濃度)とその装入量を決定する。
更に、溶銑容器に受銑された溶銑は、高炉から転炉へ搬送される間に、溶銑の温度降下を招くため、この温度降下による溶銑の溶存Cの析出量が、上記した溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%に含まれることが好ましい。
ΔC1=A1−(W1×A1+W2×A2)/(W1+W2) ・・・(1)
ΔC2=f(ΔT1)+f(ΔT2) ・・・(2)
ここで、A1は溶銑のC濃度(質量%)、A2は冷鉄源の平均のC濃度(質量%)、W1は溶銑量(質量)、W2は冷鉄源量(質量)、f(ΔT1)とf(ΔT2)はΔT1とΔT2の関数(例えば、係数が2.54×0.0001)、ΔT1は冷鉄源1トンあたりの溶銑の温度降下(℃)、ΔT2は高炉から転炉へ搬送する間の溶銑の温度降下(℃)である。
溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%の算出に際しては、溶銑の溶存C濃度を4.7質量%とし、含有C濃度が1質量%(細実線)、2質量%(点線)、3質量%(一点鎖線)、及び4質量%(二点鎖線)の各冷鉄源の装入量を、それぞれ溶銑1トンあたり0を超え30kg以下の範囲で変化させた。また、溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%の算出に際しては、(ΔT1+ΔT2)×2.54×0.0001、冷鉄源による溶銑の温度降下を溶銑1トンあたり0.9(℃/kg)、溶銑を高炉から転炉へ搬送する間の溶銑の温度降下を150℃とし、冷鉄源の装入量を、溶銑1トンあたり0を超え30kg以下の範囲で変化させた(太実線)。
これにより、図1に示す結果が得られた。
具体的には、図1において、例えば、冷鉄源を溶銑1トンあたり20kg溶解させようとするならば、前記したΔC1がΔC2以上となる含有C濃度が1質量%と2質量%の冷鉄源を、溶銑容器内に装入すれば、炭素の大気への放出が抑制、更には防止できることが分かる。なお、冷鉄源の装入量とC濃度の決定に際しては、図1を使用することなく、演算手段により、ΔC1とΔC2をそれぞれ算出し、その数値比較を行ってもよい。
このように、冷鉄源が装入され、更に溶銑が受銑された溶銑容器を、転炉へ搬送し、引き続き転炉操業を行って、溶鋼を製造する。
ここでは、溶銑容器内に、炭素量が0.1〜4.5質量%の冷鉄源(ここでは、鉄スクラップを使用)を5〜50トン前置きした後、高炉から、炭素量が4.5〜4.8質量%の溶銑を450〜500トン受銑して、試験を行った。この試験条件と、各試験条件から算出されたΔC1とΔC2と、その試験結果を、表1にそれぞれ示す。
また、溶銑の溶存Cの析出量ΔC2は、表1に示す冷鉄源起因と搬送起因の溶銑温度降下量を使用し、前記した式(2)、具体的には{(冷鉄源起因の溶銑温度降下量)+(搬送起因の溶銑温度降下量)}×2.54×0.0001により求めた。この溶銑温度降下量は、過去の操業実績より求めた値である。また、2.54×0.0001は、溶銑温度の降下に伴う溶存炭素の析出量(飽和炭素の変化量)に基づく値である。
そして、試験結果は、溶銑への冷鉄源の溶解に際し、新たな熱源を使用する必要があったか否かにより判定した。
一方、比較例1〜5は、冷鉄源の炭素量が高く、溶銑のC濃度の希釈量ΔC1が、溶銑の溶存Cの析出量ΔC2未満(ΔC1−ΔC2<0)であり、新たな熱源を使用することなく、溶銑へ冷鉄源を溶解させることができなかった(×)。
以上の結果から、本発明の溶銑容器内での冷鉄源溶解方法を使用することで、新たな熱源を使用することなく、従来よりも多くの冷鉄源を溶銑に溶解させることができ、溶鋼の生産量を経済的に向上できることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%と、溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%を、それぞれ(1)式、(2)式を使用して求めた場合について説明したが、希釈量ΔC1質量%と析出量ΔC2質量%が得られるのであれば、これらの式を使用することに限定されるものではない。例えば、(2)式の溶銑の飽和C濃度は、J.Chipmanの式(C%=1.34+f(Δt)×T1)を使用してもよく、またFe−C系平衡状態図を用いてもよい。なお、f(Δt)は、前記した溶銑温度の降下に伴う溶存炭素の析出量に基づく値、即ち2.54×0.0001であり、T1は、冷鉄源1トンあたりの溶銑温度降下(℃)である。
Claims (3)
- 溶銑容器内に冷鉄源を装入した後、高炉からの溶銑を受銑して、該溶銑に前記冷鉄源を溶解させる方法において、
前記溶銑への前記冷鉄源の溶解に伴う前記溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%が、前記溶銑の温度降下に伴う該溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%以上となるように、前記溶銑容器内に装入する前記冷鉄源の装入量及び含有C濃度のいずれか一方又は双方を決定することを特徴とする溶銑容器内での冷鉄源溶解方法。 - 請求項1記載の溶銑容器内での冷鉄源溶解方法において、前記溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%は、前記冷鉄源による前記溶銑の温度降下と、前記溶銑を前記高炉から転炉へ搬送する間の前記溶銑の温度降下に伴うものであることを特徴とする溶銑容器内での冷鉄源溶解方法。
- 請求項2記載の溶銑容器内での冷鉄源溶解方法において、前記溶銑のC濃度の希釈量ΔC1質量%と、該溶銑の溶存Cの析出量ΔC2質量%は、それぞれ以下の式で求めることを特徴とする溶銑容器内での冷鉄源溶解方法。
ΔC1=A1−(W1×A1+W2×A2)/(W1+W2)
ΔC2=f(ΔT1)+f(ΔT2)
ここで、A1は溶銑のC濃度(質量%)、A2は冷鉄源の平均C濃度(質量%)、W1は溶銑量(質量)、W2は冷鉄源量(質量)、f(ΔT1)とf(ΔT2)はΔT1とΔT2の関数、ΔT1は冷鉄源1トンあたりの溶銑の温度降下(℃)、ΔT2は高炉から転炉へ搬送する間の溶銑の温度降下(℃)である。
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