JP2013001915A - Crを含有する溶鋼の精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Cr鋼において蛍石を使用せずに脱燐を行う際に、鋼中Crの酸化に起因したCr2O3生成によるスラグの高融点化を防止し、流動性を確保した上で脱燐反応を促進させる。
【解決手段】溶鋼の電気炉精錬方法における溶解期において、スクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせてC質量で8.0〜14.0kg/t、スクラップ中Siと合金鉄中Siとを合わせてSi質量で6.0〜10kg/t、およびCaO源を脱珪後塩基度が1.5〜3.0であって、かつ、該CaO源に含まれるCaO量が20kg/t以上であるように添加し、脱燐期にNa2Oを6.0〜12.0kg/t、酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加することによって、Crを1.0〜2.0%含有する溶鋼を精錬する。
【選択図】図2
【解決手段】溶鋼の電気炉精錬方法における溶解期において、スクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせてC質量で8.0〜14.0kg/t、スクラップ中Siと合金鉄中Siとを合わせてSi質量で6.0〜10kg/t、およびCaO源を脱珪後塩基度が1.5〜3.0であって、かつ、該CaO源に含まれるCaO量が20kg/t以上であるように添加し、脱燐期にNa2Oを6.0〜12.0kg/t、酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加することによって、Crを1.0〜2.0%含有する溶鋼を精錬する。
【選択図】図2
Description
本発明は、電気炉におけるCrを含有するCr含有鋼(以下、「Cr鋼」ともいう)の精錬方法に関し、より具体的には、蛍石などのCaF2を含む副原料を実質的に使用せずに、Crを1.0〜2.0質量%含有する溶鋼を脱燐する精錬方法に関する。
CaF2を主要成分とする蛍石は、電気炉製鋼においてスラグを低融点化させる媒溶剤として用いられている。しかし、フッ素(F)を土壌環境基準以上に含有したスラグは再利用が不可能であることから、蛍石を使用しない製鋼法が求められている。
Cr鋼において脱燐を行う場合には、脱燐のための酸素源と鋼中のCrが不可避に反応し、Cr2O3が生成する。Cr2O3は、スラグ流動性の悪化を引き起こし、反応効率の悪化につながる。また、前述のように、蛍石はスラグを低融点化することから、蛍石を使用しない場合には、スラグが高融点化し流動性が悪化する。したがって、Cr鋼において蛍石を使用せずに脱燐を行う際には、スラグの流動性の悪化が顕著であり、脱燐反応が十分に進行しない。
特許文献1には、電気炉において脱燐用フラックスを出湯流により撹拌し、かつ脱炭優先温度での脱燐を行うことによりCr酸化を抑制する脱燐法が開示されている。しかし、この方法は蛍石を含有したフラックスを前提としており、蛍石を使用しない方法に適用できるものではない。
特許文献2には、電気炉においてCaOとカルシウム・フェライトを含むスラグ造滓材を使用し、且つ、スクラップ1トン当たりの使用電力量が300〜400KWHに到達するまでにスクラップ1トン当たり0.15〜0.45m3/分で酸素ガスを吹き込むことによって、スラグに含まれる未溶解のCaO含有量を0.5%以下(本明細書において「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味するものとする)に抑えてP含有量が0.008%以下の低P鋼を製造する製鋼法が開示されている。
しかし、特許文献2により開示された発明には、スクラップ中に不可避に含まれるSiへの対応が考慮されていない。溶鋼中にSiが残存したまま脱燐を実施すると、酸素源がSiと反応し、脱燐反応を阻害するという課題が解消されない。また、特許文献2により開示された発明においては、酸素使用量が5.0〜13.0Nm3/tという高酸素量での条件が規定されているが、この条件では送酸に起因したFeのロスが多くなる上に、スラグ中のCr2O3濃度が10.0%を超過し、スラグの流動性が著しく悪化するという課題がある。
本発明の目的は、Cr鋼において蛍石を使用せずに脱燐を行う際に、鋼中Crの酸化に起因したCr2O3生成によるスラグの高融点化を防止し、流動性を確保した上で脱燐反応を促進させることである。
電気炉において蛍石を使用せずにCr鋼で脱燐を実施するには、脱燐のために必要十分な酸素源の添加を行うこと、および反応効率を上昇させるスラグの流動性を確保することが必要となる。
しかし、上述したように、Cr鋼において蛍石を使用せずに脱燐を実施すると、酸素源の添加に起因してスラグ中のCr2O3濃度が不可避に増加し、スラグの流動性が悪化する。
従来は、この流動性の確保のため、スラグを低融点化させるCaF2を主成分とする蛍石を媒溶剤として使用してきたが、このスラグはFを含有するため、再利用が不可能となる。そこで、本発明者らは、以下に列記するように、(A)Fを含有しない媒溶剤を添加し、スラグを低融点化させること、および(B)スラグの流動性の悪化の要因となるCr2O3濃度を一定量以下に抑制することによって、スラグの流動性を確保して十分な脱燐を行うことを発想した。
(A)媒溶剤による低融点化
媒溶剤にFを含む媒溶剤を添加せず、スラグにFが含まれない状態で脱燐を進行させるには、強い塩基性を示すアルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)の利用が考えられる。
媒溶剤にFを含む媒溶剤を添加せず、スラグにFが含まれない状態で脱燐を進行させるには、強い塩基性を示すアルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)の利用が考えられる。
例えばCaO−SiO2系スラグにNa2Oを加えると、さらに脱燐が促進されることが既に知られている。このことはスラグ融体中Naイオンが塩基性であり、燐の酸化物である燐酸が酸性であることで定性的に理解される。したがって、スラグにNa2Oを含有させれば、溶鋼中燐を酸化するに足る充分な量の酸素の供給により、燐は溶鋼からスラグへ移行することになって、溶鋼の脱燐の改善が図られる。
しかし、Na2O自体は、製鋼温度域では活発に分解反応を生じる。この反応は、酸素を放出することにより酸化源になる一方で、Naの蒸発が生じスラグ中Na分が時間とともに減少することも考えられる。この蒸発したNaは大気中の酸素と反応し、多量の白煙を生じることが知られている。すなわち、脱燐を促進するためにNa2Oを過剰に添加することは、操業上の観点から好ましくない。また、溶鋼中の燐を酸化させるに足る酸化源は、酸素ガス上吹き等の供給によってスラグに酸化鉄を形成すること等により充分に供給する必要がある。
さらには、Na2OはCaO−SiO2系スラグに添加することでスラグを低融点化させることも知られている。スラグが低融点化することで、脱燐反応が促進されることは言うまでもない。
以上より、Na2Oはスラグ中で塩基性を示すこと、CaO−SiO2系スラグを低融点化させることから、CaF2に代わる媒溶剤として有効であるといえる。
また、Na2O源としては、常温で安定であり、工業的にも入手が容易であるNa2CO3を用いることが一般的であるが、そのほかのNa2Oを含んだものを使用してもこの発明は実施可能である。
また、Na2O源としては、常温で安定であり、工業的にも入手が容易であるNa2CO3を用いることが一般的であるが、そのほかのNa2Oを含んだものを使用してもこの発明は実施可能である。
(B)Cr2O3濃度を一定量以下に抑制すること
Crを1.0%以上含む溶鋼を脱燐する際には、送酸に起因したCr2O3の生成が不可避的に生じる。その一方で、Crが2%を超えると、本発明の要件を満たしてもCrロスを十分に抑えることができないため、Cr濃度を1〜2%とする。また、Cr2O3はCaO−SiO2系スラグの液相領域を狭め、流動性を悪化させることが知られている。そのため、脱燐に必要な十分な流動性を確保するためには、なるべく鋼中Crを酸化させないことが重要である。
Crを1.0%以上含む溶鋼を脱燐する際には、送酸に起因したCr2O3の生成が不可避的に生じる。その一方で、Crが2%を超えると、本発明の要件を満たしてもCrロスを十分に抑えることができないため、Cr濃度を1〜2%とする。また、Cr2O3はCaO−SiO2系スラグの液相領域を狭め、流動性を悪化させることが知られている。そのため、脱燐に必要な十分な流動性を確保するためには、なるべく鋼中Crを酸化させないことが重要である。
電気炉製鋼において脱燐精錬を行うにあたり、Cr2O3生成によりスラグの流動性が悪化する要因として、(a)スクラップ溶解期の空気巻き込みによるCr酸化、(b)脱燐のために添加する酸素源によるCr酸化が挙げられる。
前者(a)については、Crよりも酸素と結び付き易いSiを含む合金を添加することと、それに加えて、溶解期に十分なCaOを含む媒溶剤を添加することによって、Cr酸化を抑制することができる。しかし、CaO量が過剰であるとコストアップにつながるのはもちろん、スラグが滓化不良を起こし、流動性の悪化が生じる。また、Siは酸素との反応性が良いために、脱燐工程時に溶鋼中に存在すると脱燐を阻害する。そこで、脱燐工程の前には酸素源の添加により溶鋼中から除去する脱珪が必要である。したがって、Cr酸化抑制にはSi合金の添加が有用であるが、Si合金の添加量が過剰であると、酸化反応熱による過剰な温度上昇、酸素原単位増加、さらには脱燐に必要な塩基度(CaO質量/SiO2質量)低下によるCaO原単位の増加といった不具合が生じる。
本発明者らは、これらの問題に対して、溶解期の加炭量および添加Si量を適切な範囲で設定し、それに見合うように溶解期のCaO量を調整することによって、配合〜脱珪までのCrロスを最小限にすること、さらには前記したNa2O投入と組み合わせて、脱燐工程での脱燐率を向上させることを新たに想到した。
次に、後者(b)については、上述したように脱燐のために酸素源を添加することが必須であることから、脱燐工程で不可避的にCr酸化が生じてしまう。しかしながら、本発明者らが詳細な検討をした結果、この酸素源が一定量以下においては、Cr酸化よりも脱燐が優勢であることを見出した。このことから、酸素源に上限を設けることでCr酸化を抑制しながら脱燐反応を進行させることができる。酸化源としては、電気炉製鋼で一般的に用いられる気体酸素、ならびに固体炭素が容易に考えられる。固体酸素は、鉄の酸化物であるFeOxを用いるのがよいが、使用には常温で安定なFe2O3が用いられるのが一般的である。
また、Cr酸化を抑制することでスラグの流動性が向上するのは言うまでもないが、この流動性の評価をするのは容易ではない。スラグは非常に高粘性であり、粘性の測定が容易ではなく、実炉ではスラグの不均一性もあるからである。そこで、本発明者らは、この流動性の評価に「復燐率」という指標を用いることとする。電気炉製鋼においては、燐酸を含んだスラグを複数回の流滓ないし除滓によって炉外に排出することで脱燐を完了させる。この操作は、後の還元工程により、燐が溶鋼中に戻る「復燐」を防止する意味を持つ。スラグ流動性が不十分であると、この流滓ないし除滓が十分にできず、復燐が顕著となる。そのため、この復燐度合いが流動性の評価に相当する。そこで、本発明者らは、「還元後の燐濃度」から「脱燐後の燐濃度」を差し引いたものを「溶落の燐濃度」で除したものを「復燐率」と定義し、流動性を評価する。
本発明は、溶鋼の電気炉精錬方法における溶解期において、スクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせてC質量で8.0〜14.0kg/t、スクラップ中Siと合金鉄中Siとを合わせてSi質量で6.0〜10kg/t、およびCaO源を脱珪後塩基度が1.5〜3.0であって、かつ、該CaO源に含まれるCaO量が20kg/t以上であるように添加し、脱燐期にNa2Oを6.0〜12.0kg/t、酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加することを特徴とするCrを1.0〜2.0%含有する溶鋼の電気炉脱燐方法である。
具体的には、本発明は、電気炉にスクラップを最初に装入する時点から装入したスクラップの全量が溶解する時点までの期間である溶解期に、スクラップに含まれるCと合わせてC量が8.0〜14.0kg/tとなるように加炭材をスクラップに添加し、スクラップに含まれるSiとを合わせてSi量が6.0〜10kg/tとなるようにSiを含む合金をスクラップに添加するとともに、脱珪後塩基度が1.5〜3.0であって、かつ、含まれるCaO量が20kg/t以上となるようにスクラップにCaO源を添加し、炉内生成スラグの排出を完了するまでの期間である脱燐期に、溶鋼に、Na2Oを6.0〜12.0kg/t添加するとともに、酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加することを特徴とするCrを1.0〜2.0%含有する溶鋼の脱燐方法である。
本発明により、Crを1.0〜2.0%含有する溶鋼を脱燐して精錬する際に、蛍石を使用しなくとも、鋼中Crの酸化に起因したCr2O3生成によるスラグの高融点化を防止し、流動性を確保した上で脱燐反応を促進することができる。
はじめに、本発明者らが実施した本発明の工程の一例を説明する。本発明は、溶解期、脱珪工程及び脱燐工程を経るので、これらを順に説明する。
(i)溶解期
本発明の説明において、「溶解期」とは、「電気炉にスクラップを最初に装入する時点から、装入したスクラップの全量が溶解する時点(溶落時点)までの期間」を意味する。
本発明の説明において、「溶解期」とは、「電気炉にスクラップを最初に装入する時点から、装入したスクラップの全量が溶解する時点(溶落時点)までの期間」を意味する。
本発明で規定する必要要件を特定するために、容量40トンを溶解可能な電弧式電気炉を製鋼炉として使用し、Crを1.0〜2.0%、Cを0.1〜0.5%、Siを0.1〜0.5%含むスクラップを原料として、25トンの装入物(初装)をアーク溶解した。
その後通電を行った後、15トンのスクラップ(追装)を装入し、全量で40トンとした。この追装の際に、脱燐促進目的にコークスや黒鉛粒等の加炭材をスクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせて、C質量で8.0〜14.0kg/t(通常操業レベル)、大気酸化防止目的にSi源をスクラップ中SiとFe−Si合金中Siとを合わせて、Si質量で3.0〜8.5kg/t、およびCaO源であるCaO含有媒溶剤として生石灰をCaO質量で20.0〜45.0kg/t投入した。
このC投入量は、後の脱燐工程において脱燐反応を促進させることを目的に、スクラップ溶解完了時の溶鋼中に0.5%以上含有されていることを目指して投入する。Si投入量は、スクラップ溶解期のCr酸化を防止するために、スクラップ溶解完了時の溶鋼中に0.3%以上含有されていることを目指して投入する。
また、生石灰投入量は、Si酸化に伴い生成されるスラグの塩基度(CaO質量%/SiO2質量%)を、スクラップ溶解完了時の溶融スラグの生成と、後に続く脱燐工程での精錬の両方を考慮して、後の脱珪工程完了時に好適な1.5〜3.0の範囲になるように、Fe−Si合金中およびスクラップ中のSi量を考慮して定める。ただし、CaO量が20kg/tを下回ると、スラグの絶対量が少なく、後のスラグ排出が困難になるため、CaO量の下限を20kg/tとした。
これらを添加し終わり、全量が溶解した時点で溶落とし、溶鋼サンプルを採取した。
これらを添加し終わり、全量が溶解した時点で溶落とし、溶鋼サンプルを採取した。
(ii)脱珪工程
本発明の説明において、「脱珪工程」とは「溶解期後、溶鋼中Si含有濃度が0.05%以下に低減するまでの期間」を意味する。前記の溶解期に続いて、脱燐工程を開始する前に溶鋼中のSiを除去するために、この溶落サンプルのSi値から計算される溶鋼中のSi1%あたり、7.6Nm3/tの気体酸素(Si値が0.5%なら3.8Nm3/t)を吹き込み、脱珪工程を実施した。
本発明の説明において、「脱珪工程」とは「溶解期後、溶鋼中Si含有濃度が0.05%以下に低減するまでの期間」を意味する。前記の溶解期に続いて、脱燐工程を開始する前に溶鋼中のSiを除去するために、この溶落サンプルのSi値から計算される溶鋼中のSi1%あたり、7.6Nm3/tの気体酸素(Si値が0.5%なら3.8Nm3/t)を吹き込み、脱珪工程を実施した。
この送酸が終了次第、溶鋼サンプル採取および溶鋼温度測定を行い、それぞれ、脱珪後サンプルおよび脱珪後温度とした。ここで、脱珪時の酸素量が過剰であると、溶鋼中Crが過剰に酸化されてしまうため、脱珪工程完了の目標管理値として、Si=0.05%になるように酸素を吹込む。
(iii)脱燐工程
本発明の説明において、「脱燐工程」とは、「脱珪工程後、酸素源を添加した後、炉内生成スラグの排出を完了するまでの期間」を意味する。脱珪工程を必要に応じて実施した後、Na2O源であるNa2CO3を溶鋼1トン当たりNa2O質量で3.5〜11.8kg添加し、通電による昇温でスラグの滓化を促しながら酸素ガスまたはFe2O3を添加することで脱燐工程を実施して、Na2O添加量および酸素供給量が及ぼす脱燐効果を調査検討した。Na2O源の化合物組成は特に限定されず、メタ珪酸ソーダなどでもよい。酸素源を気体酸素換算で1.5〜5.5Nm3/t添加した後に、炉を15°傾動させた。また、このときに溶鋼サンプルを採取し、脱燐後サンプルとした。スラグが炉外に流れ出なくなったことを目視で確認してから、炉を水平(傾きは0°)に戻した。
本発明の説明において、「脱燐工程」とは、「脱珪工程後、酸素源を添加した後、炉内生成スラグの排出を完了するまでの期間」を意味する。脱珪工程を必要に応じて実施した後、Na2O源であるNa2CO3を溶鋼1トン当たりNa2O質量で3.5〜11.8kg添加し、通電による昇温でスラグの滓化を促しながら酸素ガスまたはFe2O3を添加することで脱燐工程を実施して、Na2O添加量および酸素供給量が及ぼす脱燐効果を調査検討した。Na2O源の化合物組成は特に限定されず、メタ珪酸ソーダなどでもよい。酸素源を気体酸素換算で1.5〜5.5Nm3/t添加した後に、炉を15°傾動させた。また、このときに溶鋼サンプルを採取し、脱燐後サンプルとした。スラグが炉外に流れ出なくなったことを目視で確認してから、炉を水平(傾きは0°)に戻した。
その後、脱燐時に添加した酸素源を気体酸素に換算し、気体酸素1Nm3/tあたり、Si分で2.0kgのFe−Si合金を添加し、還元工程とした。還元剤を投入した後、出鋼した。
次に、本発明における数値限定の理由を説明する。
(a)溶解期のSi量:6.0〜10.0kg/t、CaO源に含まれるCaO量:20kg/t以上
Cを0.1〜0.5%、Siを0.1〜0.5%含むスクラップであって、Crを1.5〜2.0%含むもの約40トンを電気炉に装入し、加炭剤とスクラップ中に含有されているCとを合わせたC質量で、8.6〜13.2kg/tになるように加炭剤を投入した。
(a)溶解期のSi量:6.0〜10.0kg/t、CaO源に含まれるCaO量:20kg/t以上
Cを0.1〜0.5%、Siを0.1〜0.5%含むスクラップであって、Crを1.5〜2.0%含むもの約40トンを電気炉に装入し、加炭剤とスクラップ中に含有されているCとを合わせたC質量で、8.6〜13.2kg/tになるように加炭剤を投入した。
加炭剤の投入と前後して、合金鉄とスクラップ中に含有されているSiとを合わせたSi質量が3.6〜8.5kg/tの範囲で電気炉内へ投入し、溶解期に投入するSi質量が溶解期における溶鋼のCrロスに及ぼす影響を調査した。なお、この合金鉄投入時には、脱珪期終了後のスラグ塩基度が1.5〜3.0になるように、生石灰をCaO質量で20.0〜44.4kg/t投入した。
表1には、装入量、配合Cr濃度、石灰量、溶解期C量、溶解期Si量、溶落Si量、溶落塩基度、溶落Cr濃度、Crロス濃度、脱珪後Si濃度、脱珪後塩基度、溶解期Crロス率、及びCrロス評価をまとめて示す。
図1は、溶解期Si量と溶解期Crロス率との関係を示すグラフである。
図1にグラフで示すように、溶解期に投入する溶解期Si質量を6.0kg/t以上にすると、溶解期Crロス率を安定して10%以下に低減できることが判明した。
図1にグラフで示すように、溶解期に投入する溶解期Si質量を6.0kg/t以上にすると、溶解期Crロス率を安定して10%以下に低減できることが判明した。
Siは、Crよりも先行して酸化されるために、溶解期の投入Si量が増加すると、空気巻き込みに起因したCrの酸化を抑制できる。その一方で、溶解期Si量が増加すると溶落時のSi濃度も増加することから、脱珪時の酸素量が増加し、酸化熱により溶鋼温度の上昇が過剰になるとともに、生成スラグの塩基度調整に必要なCaO量が増加し、スラグ量が増加してしまう。
したがって、溶解期のCrロス濃度を低減するために、溶解期に投入するSi質量を6.0kg/t以上とする一方、そのSi投入量は10.0kg/t以下とすることが実際上適切である。
また、上記したようにSi投入に合わせて、脱珪期終了後のスラグ塩基度が1.5〜3.0になるように、生石灰を投入するが、その投入量はCaO量が20kg/tを下回ると、スラグの絶対量が少なく、後のスラグ排出が困難になるため、CaO量の下限として20kg/tは必要である。
(b)脱燐期Na2O量:6.0〜12.0kg/t、脱燐期酸素源:気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t
スクラップ条件や加炭材投入条件を前記した表1に係る調査条件と同一にした他、その調査結果である、溶解期に投入するSi質量を6.0〜10.0kg/tとし、それに合わせて脱珪期終了後のスラグ塩基度が1.5〜3.0になるように、20kg/t以上の生石灰を投入して、脱燐期におけるNa2O投入量と酸素供給量とが溶鋼の脱燐率に及ぼす影響を調査した。
スクラップ条件や加炭材投入条件を前記した表1に係る調査条件と同一にした他、その調査結果である、溶解期に投入するSi質量を6.0〜10.0kg/tとし、それに合わせて脱珪期終了後のスラグ塩基度が1.5〜3.0になるように、20kg/t以上の生石灰を投入して、脱燐期におけるNa2O投入量と酸素供給量とが溶鋼の脱燐率に及ぼす影響を調査した。
この調査では、脱珪期の終了後、脱燐期を開始する際に、電気炉内へNa2CO3をNa2O質量で3.5〜11.8kg/t投入し、通電による温度上昇でスラグの溶融滓化を促進しつつ、酸素源として気体酸素又は鉄鉱石を供給して脱燐期を開始した。
その酸素供給量を、気体酸素の量に換算して3.0〜3.5Nm3/tの範囲で統一して、Na2O供給量と脱燐率との関係を調査した結果を、表2および図2に示す。表2には、脱燐期の条件及び脱燐能(配合Cr濃度、Na2O量、酸素源、酸素源種類、脱珪後燐濃度、脱燐後燐濃度、脱燐率及び脱燐性評価)を示し、図2には、脱燐期Na2O量と脱燐率との関係をグラフで示す。
表2および図2に示した結果から、この調査条件では脱燐期におけるNa2O供給量である脱燐期Na2O量を6kg/t以上にすると、脱燐率が40%以上と顕著に向上することが判明した。
Na2Oは、CaO−SiO2系スラグを低融点化させるために、投入量が多ければ流動性が向上する。しかしながら、多量に添加すると、Naの蒸発に起因した白煙が発生するため、操業上の観点から、上限を設ける必要がある。今回の調査範囲である12.0kg/tでも集塵により対応できる程度であり、操業上問題なかったが、脱燐率向上効果を勘案して10kg/t以下とすることが好ましいといえる。
次に、Na2O投入量と酸素源供給量以外の条件を表2に係る調査条件と同一にし、Na2O投入量を6.6〜7.5kg/tに統一し、脱燐期における酸素供給量を1.5〜5.5Nm3/tの範囲で変化させて、その酸素供給量が溶鋼の脱燐率および復燐率に及ぼす影響を調べた。
条件及び結果を表3及び図3に示す。表3には、脱燐期の条件及び復燐率(配合Cr濃度、Na2O量、酸素源、酸素源種類、脱珪後燐濃度、脱燐後燐濃度、還元後燐濃度、脱燐率、復燐率、脱燐性評価及び流動性評価)を示し、図3には、脱燐期の酸素量と復燐率との関係をグラフで示す。
表3に示すように、この条件下では、酸素供給量が3.0Nm3/t以上になると脱燐率40%以上が得られることが判明した。しかし、表3および図3に示したように、酸素供給量が4.5Nm3/tを超えると、還元期後の復燐率が15%以上に悪化してしまうことも判明した。
したがって、本発明の目的、すなわち、Cr鋼において蛍石を使用せずに脱燐を行う際に鋼中Crの酸化に起因したCr2O3生成によるスラグの高融点化を防止し、流動性を確保した上で脱燐反応を促進させることに照らし、脱燐処理終了後の溶鋼中燐濃度すなわち還元期後の溶鋼中燐濃度を効率的に低減するには、Na2O投入量を6.6〜7.5kg/tに統一した条件下において、脱燐期における酸素供給量を3.0〜4.5Nm3/tの範囲で調整することが適切であるといえる。
なお、上記の脱燐期における酸素供給量は、Na2O投入量を6.6〜7.5kg/tに統一した条件下におけるものであるが、先に酸素供給量を3.0〜3.5Nm3/tの範囲で統一してNa2O供給量を6kg/t以上にすると、脱燐率が40%以上と顕著に向上することを説明した。それぞれの調査上の統一条件であるNa2O投入量を6.6〜7.5kg/tと、酸素供給量を3.0〜3.5Nm3/tとは、両方とも脱燐促進に係る量的条件の下限側にあって、それらの上限をそれぞれ12.0kg/t、4.5Nm3/tに増加しても、脱燐反応促進上の問題は考えられない。したがって、所定の溶解期、脱珪期を経てきた電気炉内の溶鋼およびスラグに対し、溶解期における適切なNa2Oおよび酸素の供給条件は、それぞれ6.0〜12.0kg/tおよび3.0〜4.5Nm3/tの範囲である。
電気炉にCrを1.0〜2.0%を含む40トンのスクラップを原料として溶解した。溶解期において、スクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせてC質量で8.6〜13.2kg/tのCを添加し、スクラップ中SiとFe−Si合金中Siとを合わせて、Si質量で6.0〜10kg/t、およびCaO源であるCaO含有媒溶剤として生石灰をCaO質量で20.0〜44.4kg/t投入した。
溶落において溶鋼サンプルを採取し、溶解完了時の溶鋼中にCが0.5%以上含有されていること、およびSiが0.3%以上含有されていることを確認した。また、溶落時のSi濃度から計算されるSi1%あたり、7.6Nm3/tの気体酸素を吹き込み、脱珪工程を実施した。
その後、Na2O源であるNa2CO3を溶鋼1トン当たりNa2O質量で6.0〜10.0kg添加し、通電による昇温でスラグの滓化を促しながら酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加した後に、炉を15°傾動させた。また、このときに溶鋼サンプルを採取し、脱燐後サンプルとした。スラグが炉外に流れ出なくなったことを目視で確認してから、炉を水平(傾きは0°)に戻した。
その後、脱燐時に添加した酸素源を気体酸素に換算し、気体酸素1Nm3/t当り、Si分で2.0kgのFe−Si合金を添加し、還元工程とした。還元剤を投入した後、出鋼した。出鋼時の溶鋼サンプルを採取し、還元後サンプルとした。
その結果、CaF2を用いずに、溶解期のCrロスが10%以下であって、溶鋼の脱燐率が40%以上、かつ、溶鋼の復燐率が15%未満である効率的な脱燐処理が行えていることが確認できた。
Claims (1)
- 溶鋼の電気炉精錬方法における溶解期において、スクラップ中Cと加炭材中Cとを合わせてC質量で8.0〜14.0kg/t、スクラップ中Siと合金鉄中Siとを合わせてSi質量で6.0〜10kg/t、およびCaO源を脱珪後塩基度が1.5〜3.0であって、かつ、該CaO源に含まれるCaO量が20kg/t以上であるように添加し、
脱燐期にNa2Oを6.0〜12.0kg/t、酸素源を気体酸素換算で3.0〜4.5Nm3/t添加すること
を特徴とするCrを1.0〜2.0質量%含有する溶鋼の電気炉脱燐方法。
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