JP2009255453A - 熱可塑性樹脂の押出成形製造方法および該製造方法にて成形されるフィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂の押出成形製造方法および該製造方法にて成形されるフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂を押出成形するに際し、成形品の表面にダイライン、リップマーク等の発生を抑え得る押出成形品の製造方法を提供することである。
【解決手段】
押出機の先端に接続するダイとして、ダイのリップ部先端が円弧状のコーナー部を有し、該コーナー部に存在するカケの最大径が15μm未満であり、コーナー部の半径Rが30〜100μmであるダイを用いることにより、成形品の表面にダイラインとリップマークの発生を抑制でき、表面状態の良好な成形物を得ることができる。
【選択図】図6

Description

本発明は、熱可塑性樹脂の押出成形品の製造方法に関する。詳しくは、熱可塑性樹脂を押出成形するに際し、表面にダイライン、リップマーク等のない表面状態が良好な成形物を生産性良く製造し得る、熱可塑性樹脂の押出成形品の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂を押出成形する際には、成形物表面にダイラインといわれる、すじ状の模様が押出方向と平行に発生する問題点と、リップマークといわれるV字の模様が発生する問題点があった。成形物にダイラインあるいはリップマークが発生すると、成形物の表面状態が損なわれるばかりでなく、破断強度等の機械的特性が低下する原因となる。
例えば、成形物がフィルムまたはシートである場合、表面に印刷等を施す際にダイラインやリップマーク等の凹凸の欠陥部にはインク等が付着し難いことがあり、印刷適性が低下する。また、巻物状に巻き取った場合、ダイラインの凹凸部が重なると、巻き径が一定にならず、巻物を巻き戻した時、フィルムの平滑性が低下する原因となる。
ダイラインの発生を抑える方法として、例えば、ダイリップの出口部分に単独加熱できるヒーターを設けて、ダイリップより出てくる押出成形物(パイプ)の表面を溶融化し、表面に現れるスジやリップマークを消去する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、該方法には、該円弧状コーナー部の平滑性に関する記述がないため、該方法を適用した場合、ダイライン発生を完全に防止することができない。
また、別法として、押出機に装着するダイのリップ部先端が円弧状のコーナー部を有し、該円弧状コーナー部の半径Rが30μm以下であり、且つ、その寸法誤差が±20%以下とする方法が開示されている(特許文献2参照)。ただし、該方法には、該円弧状コーナー部の平滑性に関する記述がなく、デシコンではリップ先端の小さな凹凸を確認することができない。そのため、該方法を適用した場合、ダイライン発生を完全に防止することができない。
特公昭57−55051 特開平6−335949
本発明の課題は、上記問題を解決し、熱可塑性樹脂を押出成形するに際し、成形品の表面にダイライン、リップマーク等の発生を抑え得る押出成形品の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、押出成形に用いる押出機に装着されるダイのリップ部先端部の形状および平滑性を制御することにより、ダイラインおよびリップマークの発生を抑制できることを見出し、本発明に到った。
すなわち、本発明は、
[1]溶融状態の熱可塑性樹脂を、押出機の先端に装着されるダイを通過させて成形する熱可塑性樹脂押出成形品の製造方法であって、該ダイのリップ部先端が円弧状のコーナー部を有するものであり、該コーナー部に存在するカケの最大径が15μm未満であり、該コーナー部の半径Rが30〜100μmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂押出成形品の製造方法、
[2][1]に記載の製造方法により成形されてなることを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルム、および
[3] 熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする、[2]記載の熱可塑性樹脂フィルム
に関する。
本発明の製造方法では、押出機の先端に接続するダイとして、ダイのリップ部先端が円弧状のコーナー部を有し、該コーナー部に存在するカケの最大径が15μm未満であり、コーナー部の半径Rが30〜100μmであるダイを用いることにより、成形品の表面にダイラインとリップマークの発生を抑制でき、表面状態の良好な成形物を得ることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂押出成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を押出機中にて加熱加圧して溶融流動状態とし、押出機の先端に装着されるダイを通して、連続的に押出すことにより所定の断面形状を有する長尺成形物を成形する押出成形法において、ダイの形状および表面平滑性を制御することにより、成形品の表面において特にリップマークおよびダイラインの発生を抑制することを可能とすることができる製造方法である。
本発明に使用されるダイとしては、例えば、次のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。パイプおよびチューブの押出成形用のダイとしては、例えば、ストレートダイ、オフセットダイ、クロスヘッドダイ等が挙げられる。また、シートおよびフィルムの押出成形用のダイとしては、フラットダイ、サーキュラーダイ等が挙げられる。フラットダイとしては、Tダイ、マニホールドダイ、フィッシュテイルダイ、コートハンガーダイ、スクリューダイ等が例示される。その他、インフレーションフィルム押出成形用のインフレーションダイが挙げられる。
上記ダイの材質としては、ステンレス(SUS)製等の金属材料であっても、また、全体がセラミックスで構成されたものであってもよい。さらに、ダイの素材と樹脂との反応防止の為に、ダイ本体にクロム、ニッケル、チタン、銅、亜鉛等のメッキあるいは、タングステンカーバイド等の溶射皮膜を施したものでもよい。
本発明の製造方法における、ダイのリップ先端部は、円弧状のコーナー部を有していることが、フィルム表面の平滑性の点から、好ましい。また、コーナー部を円弧状とすることは、後述のように、リップ先端部の表面を平滑に仕上げるうえでも好ましい。
本発明の製造方法においては、ダイのリップ先端のコーナー部が平滑に仕上げられているほど、コーナー部の研磨過程において生成されるカケ(凹凸)の最大径が小さいほど、ダイラインの発生を抑制することができる。
本発明の製造方法における、ダイのリップ先端のコーナー部に存在するカケの最大値は、15μm未満が好ましく、10μm以下がより好ましい。カケの最大値が15μmより大きいと、得られた成形品においてダイラインの発生を抑制できない傾向がある。
なお、ダイリップ先端のコーナー部に存在するカケ(凹凸)の最大値は、以下のように、測定した値である。すなわち、図5に示すように、ダイリップ部先端のコーナー部を、デジタルマイクロスコープ[キーエンス製、形式:VHX−100F;レンズ(キーエンス製、形式:VH-Z100)]を用いて、測定倍率:200倍にて、図4に示すa方向(ランド部4と底面部6に対して、45°の角度の方向)、b方向(ランド部面4に垂直な方向)およびc方向(底面部6に垂直な方向)の3方向から、ダイの幅方向に移動させながら、連続して写真撮影を行う。コーナー部に存在するカケは、得られた拡大写真中の黒点部として表れ、各黒点部の最大径をデジタルマイクロスコープ[キーエンス製、形式:VHX−100F;レンズ(キーエンス製、形式:VH−Z100)]の計測機能を用いて測定し、それらのうちの最大値をカケの最大径とした。
ダイリップ先端のカケの最大径を小さくするためには、ダイ先端部の製作に当たって、デジタルマイクロスコープ等を使用して表面状態を確認しながら、ダイ各部をダイヤモンド砥石等で研削・研磨していくが、その際、ダイリップ先端のコーナー部の半径Rを大きくすることも有効である。
本発明の製造方法においては、ダイのリップ先端のコーナー部の半径Rが小さいほど、リップマークの発生を抑制することができる。
本発明の製造方法における、ダイのリップ先端のコーナー部の半径Rは、リップ先端部の平滑性と加工性の双方を勘案すると、30〜100μmが好ましく、60〜90μmがより好ましい。コーナー部の半径Rが30μm以上であれば、リップ先端部を平滑に加工しやすく、好ましい。Rが100μm以下であれば、リップマークの発生を抑制することができ、好ましい。
なお、コーナー部の半径Rの測定方法としては、デシコン等を用いて、ダイの幅方向でのランダムな位置にて5箇所以上を測定した値である。ダイ本体にメッキが施されている場合には、メッキ施工後のコーナー部半径Rである。
ダイ構造とリップマークおよびダイラインの発生メカニズムに関して、T−ダイを例に挙げて、説明する。
なお、 図1は、本発明に用いる代表的T−ダイの断面図を、図2は、該T−ダイ先端部の拡大断面図を示している。
押出機のシリンダー内にて溶融状態とされた樹脂は、樹脂流入口1からダイに導入され、マニホールド部2、次いで、プリランド部3を経由してランド部4に至り、円弧状に仕上げられたコーナー部5から押し出される。
従来、コーナー部5から押し出された樹脂は、減圧され膨張して、その表面の一部がコーナー部5近傍のダイ底面6に接触し、粘着、剥離が繰り返される。
この際、ダイ底面6には、押出された樹脂の分解物等である「目脂」が付着し、目脂8が成長する過程で、押出された樹脂と接触すると(図3参照)、得られた成形品にはリップマークが発生する。そこで、目脂8と押出された樹脂との接触を抑制するには、コーナー部の半径Rが小さい程、好ましい。
他方、押出された樹脂は、コーナー部5とその近傍に存在するカケ(凹凸)の影響を受けて、ダイラインが発生するため、コーナー部が平滑である程、好ましい。
本発明の製造方法にて用いられる押出機としては、特に制限はなく、通常の熱可塑性樹脂の押出成形に用いられる単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機等が用いられる。
溶融押出時の樹脂温度は特に限定はしないが、熱可塑性ポリマーの融点以上で、かつ可能な限り低温度に設定した方が、樹脂の熱分解を防止する上でも、また、本発明の効果を顕著にする上でも好ましい。溶融樹脂の滞留時間は、特に制約はないが、3分以上、30分未満であるのが好ましい。
本発明の製造方法においては、押出機とダイとの間に、ゴミ・異物を除去するためにフィルターを取り付けても良い。溶融押出時のフィルター入口でのポリマー圧力は、安定的な溶融押出のためには、10〜350kg/cm2が好ましく、50〜250kg/cm2がより好ましい。
本発明の製造方法においては、ダイより押し出された溶融状物は、水冷式冷却ロール、空気冷却等の公知の方法により冷却され、所定の形状に賦形される。 すなわち、パイプ、棒、被覆電線、フィルム、シート、繊維等の各種のプラスチック製品が、成形される。なかでも、フィルムにおいては、ダイラインおよびリップマークが重大な欠陥となることから、フィルムの製造において適用することが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ハロゲン化ポリエチレン等のポリオレフィン類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の芳香族ポリエーテル類、ポリイミド等が挙げられる。
本発明の製造方法は、上記熱可塑性ポリマーの内、特に、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂の押出成形において、印刷適性の点から、好ましく適用される。
本発明の製造方法を適用するに際し、上記熱可塑性樹脂に対して公知の添加剤、例えば、安定剤、粘度調整剤、充填剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等を含有させても良い。
本発明におけるアクリル樹脂としては特に限定されないが、より具体的には、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物を重合することにより得られるメタクリル系共重合体であることが、透明性の点から、好ましい。
メタクリル系共重合樹脂を生成する単量体混合物に用いられる、アルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられるが、なかでも、メタクリル酸メチルが耐候性の点から、好ましい。
アクリル樹脂を生成する単量体混合物において、必要に応じて用いられる、メタクリル酸アルキルエステルに対して共重合可能な他のビニル系単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する単官能の化合物であり、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルのような炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。
本発明におけるアクリル樹脂には、耐衝撃性等を改善する目的で、アクリル系ゴム粒子あるいは、該ゴム粒子含有グラフト共重合体を含有しても良い。
本発明におけるアクリル樹脂の重合方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。
乳化重合や懸濁重合においては、通常の重合開始剤が使用することができる。重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、更にアゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤も使用される。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体などの還元剤と組み合わせた、通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
前記重合に使用される界面活性剤にも特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば、使用することができる。界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物などの非イオン性界面活性剤などが示される。これらの界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。更に必要に応じて、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
アクリル樹脂の重合においては、好適なフィルムへの成形性を示す還元粘度を得るために、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類および組成に応じて、適宜決定すればよい。
上記重合法により得られるアクリル樹脂の重合体ラテックスから、通常の凝固と洗浄により、またはスプレー、凍結などによる処理により、樹脂組成物が分離、回収される。
本発明におけるアクリル樹脂フィルムは、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。
なかでも、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させるうえで好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが例示される。2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示される。また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤として具体的には、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが例示される。 これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本発明にて得られるアクリル系樹脂フィルムは、透明性および印刷適性の点から、自動車内装の用途に好適である。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例中、含有量ないし使用量を表す「%」および「部」は、特記のない限り、「重量%」および「重量部」である。
また、略号は、以下の化合物を示す。
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:ターシャリドデシルメルカプタン
AlMA:メタクリル酸アリル
OSA:ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム
PBT:ポリブチルテレフタレート
PA:ポリアミド
PC:ポリカーボネート
本発明における評価方法は、以下のとおりである。
(1)カケ(凹凸)の最大値
図5に示すように、ダイリップ部先端のコーナー部を、デジタルマイクロスコープ[キーエンス製、形式:VHX−100F;レンズ(キーエンス製、形式:VH−Z100)]を用いて、測定倍率200倍にて、図4に示すa方向(ランド部4と底面部6に対して、45°の角度の方向)、b方向(ランド部面4に垂直な方向)およびc方向(底面部6に垂直な方向)の3方向から、ダイの幅方向に移動させながら、連続して写真撮影を行う。コーナー部に存在するカケは、得られた拡大写真中の黒点部として表れ、各黒点部の最大径をデジタルマイクロスコープ[キーエンス製、形式:VHX−100F;レンズ(キーエンス製、形式:VH−Z100)]の計測機能を用いて測定し、それらのうちの最大値をカケの最大径とした。
(2)リップ先端のコーナー部の半径R
コーナー部の半径Rは、デシコンを用いて、ダイの幅方向でのランダムな位置にて5箇所以上を測定した。具体的には、デシコンによりリップ先端の型を取り、その型を輪切りにし、その断面をデジタルマイクロスコープ[キーエンス製、形式:VHX−100F;レンズ(キーエンス製、形式:VH−Z100)]を用いて観察し、コーナー部の半径Rは、その計測機能を用いて測定した。
(3)ダイラインの有無
125μm厚みのフィルムを連続して1000m製造して、フィルムの0m、500m、1000m地点にて、レーザ顕微鏡[キーエンス製、形式:VK−9500、解析ソフト:線粗さ(1994JIS対応)]を用いて、二次元表面粗度Ryを測定して、ダイライン評価を行なった。
○:ダイライン無し(Ry<0.2μm)。
×:ダイライン有り(Ry≧0.2μm)。
(4)リップマークの有無
125μm厚みのフィルムを連続して1000m製造して、肉眼によるリップマーク評価を行なった。
○:0.5mmφ以上のリップマーク無し。
×:0.5mmφ以上のリップマーク有り。
(製造例1)アクリル樹脂粉末物(G−1)の製造
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
イオン交換水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム(OSA) 0.6部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄 0.00025部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、BA10%およびMMA90%からなる混合物100部に対してAlMA1部およびCHP0.2部からなる単量体混合物(a−1)30部を、10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに、0.5時間重合を継続し、重合転化率は99.5%であった。
その後、内温を80℃にし、BA10%およびMMA90%からなる混合物100部に対してtDM0.1部からなる単量体混合物(a−2)70部を、10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに、1時間重合を継続し、アクリル樹脂組成物ラテックスを得た。重合転化率は98.0%であった。
得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析、凝固し、水洗、乾燥してアクリル樹脂粉末(G−1)を得た。
[ブレンド・ペレット工程]
得られたアクリル樹脂粉末(G−1)100部に対して、紫外線吸収剤としてチヌビンP(チバスペシャリルケミカル社製)12部を添加し、スーパーミキサーを用いて均一混合した後、ベント付き40mmφ単軸押出機(L/D=28)を用いて、シリンダ設定温度235℃にて溶融混練を行い、ペレット(P−1)を得た。
(製造例2)
[ブレンド・ペレット工程]
樹脂種を、ポリブチルテレフタレート樹脂ペレット(PBT、ウィンテックポリマー(株)製、商品名;ジュラネックス700FP)に変更し、120℃にて4時間乾燥した後、シリンダ設定温度を270℃に変更した以外は、製造例1と同様の操作により、ペレット(P−2)を得た。
(製造例3)
[ブレンド・ペレット工程]
樹脂種を、ポリアミド樹脂ペレット(PA6、東レ(株)製、商品名;アミランCM1041−LO)に変更し、100℃にて4時間乾燥した後、シリンダ設定温度を240℃に変更した以外は、製造例1と同様の操作により、ペレット(P−3)を得た。
(製造例4)
[ブレンド・ペレット工程]
樹脂種を、ポリカーボネート樹脂ペレット(PC、帝人化成(株)製、商品名;パンライト L−1225L)に変更し、120℃にて4時間乾燥した後、シリンダ設定温度を270℃に変更した以外は、製造例1と同様の操作により、ペレット(P−4)を得た。
(製造例5)
[ブレンド・ペレット工程]
樹脂種を、ポリアクリル樹脂ペレット(住友化学(株)製、商品名;スミペックスEX)に変更し、90℃にて4時間乾燥した後、シリンダ設定温度を235℃に変更した以外は、製造例1と同様の操作により、ペレット(P−5)を得た。
(実施例1)
ペレット(P−1)を80℃で4時間乾燥した後、下記のダイを装着した押出機を用い、下記条件にてフィルムの押出成形を実施して、幅350mm×厚さ125μmのアクリルフィルムを成形した。
<押出成形機>
単軸押出機、シリンダー口径;40mm、スクリュー形状;フルフライト、スクリュー径;40mm、L/D=23、圧縮比;3.0
<ダイ>
ダイ形式;T−ダイ、幅;350mm、コートハンガー式、
材質:SCM440、リップ先端のランド部(図1の4面)から底面(図1の6面)にかけては、タングステンカーバイドの溶射皮膜であり、その他のダイス内流路面は硬質クロムメッキを施工したもの。
リップ部先端のコーナー部のRサイズ;30〜60μm
リップ部先端のコーナー部でのカケの最大径;10μm
リップ開度;0.6mm(生フィルム生産時に、銅板をリップ先端に差込み測定)、
<成形条件>
押出機のシリンダ設定温度:235℃、スクリュー回転数:30rpm、
キャスティングロール温度;95℃
ダイリップ・コーナー部でのカケの最大径、半径Rおよび、得られたポリアクリルフィルムにおけるダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(実施例2)
ダイリップ部先端のコーナー部の半径Rを60〜90μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、アクリルフィルムを得た。
得られたアクリルフィルムにおけるダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(実施例3)
樹脂種を、ペレット(P−2)を120℃で4時間乾燥したものに変更し、押出機のシリンダ設定温度を270℃、キャスティングロール温度を120℃に変更した以外は、実施例2と同様の操作により、ポリブチルテレフタレートフィルムを成形した。
得られたフィルムにおけるダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(実施例4 )
樹脂種を、ペレット(P−3)を100℃で4時間乾燥したものに変更し、押出機のシリンダ設定温度を240℃、キャスティングロール温度を100℃に変更した以外は、実施例2と同様の操作により、ポリアミドフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示す。
(実施例5)
樹脂種を、ペレット(P−4)を120℃で4時間乾燥したものに変更し、押出機のシリンダ設定温度を270℃に、キャスティングロール温度を120℃に変更した以外、実施例2と同様の操作により、ポリカーボネートフィルムを成形した。
得られたフィルムにおけるダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(実施例6)
樹脂種を、ペレット(P−5)を90℃で4時間乾燥したものに変更し、押出機のシリンダ設定温度を235℃に、キャスティングロール温度を90℃に変更した以外は、実施例2と同様の操作により、アクリルフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例1)
ダイリップ先端のコーナー部でのカケの最大径が20μmであるものに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、アクリルフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例2)
ダイリップ部先端のコーナー部の半径Rを120〜150μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、アクリルフィルムを得た。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例3)
ダイリップ部先端のコーナー部の半径Rを10〜20μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリアクリルフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例4)
ダイリップ先端のコーナー部でのカケの最大径が20μmであるものに変更した以外は、実施例3と同様の操作により、ポリブチルテレフタレートフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例5)
ダイリップ部先端のコーナー部の半径Rを120〜150μmに変更した以外は、実施例3と同様の操作により、ポリブチルテレフタレートフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例6)
ダイリップ先端のコーナー部でのカケの最大径が20μmであるものに変更した以外は、実施例5と同様の操作により、ポリカーボネートフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
(比較例7)
ダイリップ先端のコーナー部でのカケの最大径が20μmであるものに変更した以外は、実施例6と同様の操作により、アクリルフィルムを成形した。
得られたフィルムのダイラインおよびリップマークの有無を、表1に示した。
Figure 2009255453
本発明に用いるダイの代表例であるT−ダイの断面図である。 上記T−ダイのリップ先端部の拡大図である。 ダイのリップ先端部から押出された樹脂と目脂の状態を示したものである。 マイクロスコープで上記T−ダイの先端部の観察方向を示したものである。 上記T−ダイの先端部のカケ(凹凸)有無を確認するためマイクロハイスコープの使用方法を示したものである。 実施例1で用いたダイ(リッブ先端部のコーナー部の半径R=30〜60μmで、カケの最大径が10μm)の、図5におけるb方向から、デジタルマイクロスコープを用いて撮影した倍率200倍の写真(写真1)である。写真中に表示された楕円内部の黒色点が「カケ」を示している。 実施例2等で用いたダイ(リッブ先端部のコーナー部の半径R=60〜90μmで、カケの最大径が10μm)の、図5におけるb方向から、デジタルマイクロスコープを用いて撮影した倍率200倍の写真(写真2)である。写真中に表示された楕円内部の黒色点が「カケ」を示している。 比較例1等で用いたダイ(リッブ先端部のコーナー部の半径R=30〜60μmで、カケの最大径が20μm)の、図5におけるb方向から、デジタルマイクロスコープを用いて撮影した倍率200倍の写真(写真3)である。写真中に表示された楕円内部の黒色点が「カケ」を示している。 比較例3で用いたダイ(リッブ先端部のコーナー部の半径R=10〜20μmで、カケの最大径が20μm)の、図5におけるb方向から、デジタルマイクロスコープを用いて撮影した倍率200倍の写真(写真4)である。写真中に表示された楕円内部の黒色点が「カケ」を示している。
符号の説明
1 樹脂流入口
2 マニホールド部
3 プリランド部
4 ランド部
5 コーナー部
6 底面部
7 マイクロハイスコープ
8 目脂
MD フィルムの長さ方向
TD フィルムの幅方向

Claims (3)

  1. 溶融状態の熱可塑性樹脂を、押出機の先端に装着されるダイを通過させて成形する熱可塑性樹脂押出成形品の製造方法であって、該ダイのリップ部先端が円弧状のコーナー部を有するものであり、該コーナー部に存在するカケの最大径が15μm以下であり、該コーナー部の半径Rが30〜100μmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂押出成形品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法により成形されてなることを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする、請求項2記載の熱可塑性樹脂フィルム。
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