本発明に係る半導体装置の製造方法は、その好ましい一実施の形態において、上層の配線層を形成する前に、下層の配線部以外の上面に、配線材の拡散を抑制するバリア膜を形成しておく。この上に絶縁膜を成膜、加工して配線溝もしくは配線孔を形成し、全表面にバリア膜を成膜後異方性エッチングによってエッチバックしてから、配線材を成膜する。その後、上層の配線材の余剰部分をCMPで除去し、上層配線上部を覆うバリア膜を成膜するものであり、以下に図1乃至図11を参照して説明する。図1乃至図9は、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図である。また、図10は、本実施の形態における配線構造断面の模式図であり、図11は、本実施の形態における配線構造断面の拡大断面図である。
図1(a)において、側面がバリア膜3で覆われたCu等の配線材1と、上面をバリア膜9で覆われた絶縁膜2と、それらの上部を覆うバリア膜4とで構成される下層配線部が用意される。図16に示す目ずれがない場合の従来例及び図18に示す目ずれがある場合の従来例と同様に、この部分は下記に説明される工程によって形成される上層と同様の構造である。
この上に絶縁膜5を成膜し(図1(b))、さらにバリア膜10を成膜する(図1(c))。次に、リソグラフィーによるパターニングの後、異方性エッチングによってバリア膜10の一部を除去し(図1(d))、さらに絶縁膜5の一部を除去する(図1(e))。次いで、バリア膜4の一部を除去することで配線溝もしくは配線孔を形成する(図1(f))。この全表面にバリア膜6を成膜後(図1(g))、異方性エッチングによってエッチバックすることにより、配線溝もしくは配線孔の側面以外、すなわち配線溝もしくは配線孔の底面と最表面に存在するバリア膜6を除去する(図1(h))。この後、全面にCuを成膜し(図1(i))、CMPによって配線溝もしくは配線孔以外の余剰なCuを除去後(図1(j))、絶縁物であるバリア膜8を成膜することにより、側面がバリア膜6で、上面が絶縁膜であるバリア膜8で覆われ、下面がバリア膜を介さない接合部とバリア膜9で覆われた部分とで構成されるCu配線構造が形成される(図1(k))。
なお、下層の配線材1の上層の絶縁膜5に対する拡散が問題とならない場合、例えば、下層の配線材1がWなどの比較的拡散しにくい高融点金属であるプラグ部分などの場合には、下層の配線材1の上層への拡散を防止するバリア膜4は必ずしも必要でない。この場合に、バリア膜4が無くとも上層の配線材7の下層への拡散はバリア膜9によって防止されることは図から明らかである。
ここで、上記の下層配線を覆うバリア膜4のエッチングを、配線側部を被覆するバリア膜6のエッチバック後に行ってもよい。その方法について、図2を参照して説明する。図2(a)〜(e)において、図1(a)〜(e)と同様の工程を経た後、まず、バリア膜6を成膜し(図2(f))、エッチバックしてから(図2(g))、バリア膜4をエッチングする(図2(h))。この後、図1(i)〜(k)と同様の工程によって、図1(k)とほぼ同様の構造を得ることができる(図2(k))。この場合、上層の配線材7側面の下方が一部バリア膜6ではなくバリア膜4によって被覆される。
この方法では、バリア膜6のエッチバック前にバリア膜4をエッチングする手法に比べ、上層の配線材7の成膜直前まで下層の配線材1を露出させずにすむため、下層の配線材1表面の汚染や酸化などの影響を受け難く、各プロセス間における許容時間などの自由度が大きい。しかし、バリア膜4のエッチング時には最表層のバリア膜10もエッチング条件にさらされるため、バリア膜10とバリア膜4のエッチングにおける選択比と膜厚に関する考慮が必要である。
なお、バリア膜4のエッチングにおいてバリア膜10がエッチングされる厚さが無視できない場合には、バリア膜10はCuの拡散を防止するに必要な膜厚に加えて、バリア膜4のエッチング時に消失する厚さを見込んで成膜する必要がある。一方で、上述のバリア膜6のエッチバック前にバリア膜4をエッチングする手法においては、バリア膜10および絶縁膜5、もしくはその両者をエッチングするために用いたマスク(図示せず)を最表層に残存させたままバリア膜4をエッチングすることができ、バリア膜10の必要部分の損傷を抑えて接続部を形成しやすいというメリットがある。
また、エッチバックする対象であるバリア膜に関して、エッチバック時の異方性が成膜時の被覆性よりも高い場合には、上層の配線下面をカバーするバリア膜と下層の側面をカバーするバリア膜を同一として工程を単純化することができる。この方法について、図3を参照して説明する。図3(a)において、配線材1と絶縁膜2と、および両者の間と絶縁膜2の上部を覆うバリア膜3、さらにそれらの上部を覆うバリア膜4とで構成される下層配線部が用意される。図1及び図2と同様に、この部分は下記に説明される工程によって形成される上層と同様の構造である。
この上に絶縁膜5を成膜し(図3(b))、リソグラフィーによるパターニングの後、異方性エッチングによって絶縁膜5の一部を除去し(図3(c))、次いでバリア膜4の一部を除去することで配線溝もしくは配線孔を形成する(図3(d))。この後、全表面にバリア膜6を成膜し(図3(e))、異方性エッチングによってエッチバックすることにより、配線溝もしくは配線孔の側面以外、すなわち配線溝もしくは配線孔の底面と最表面に存在するバリア膜6を除去する(図3(f))。
ここで、バリア膜6の成膜時における被覆性がエッチバック時の異方性より高い場合には、エッチバック時に最表層のバリア膜6が消失してしまうため、既に説明した図1と同様にバリア膜6の成膜前に、更に上層に形成される配線層の下面をカバーすべきバリア膜をあらかじめ成膜しておく必要がある。しかし、バリア膜6に関して、成膜における(最表層の膜厚)/(接続部底面の膜厚)の比が、エッチバック時の(最表層のエッチング速度)/(接続部底面のエッチング膜厚)という条件が満たされれば、エッチバックによって接続部底面のバリア膜6を除去しつつ、絶縁膜5の上面にバリア膜6を残存させることが可能である(図3では、最表層にバリア膜6が残存している場合を示している)。
このような構造が達成された後は、全面にCuを成膜し(図3(g))、CMPによって配線溝もしくは配線孔以外の余剰なCuを除去後(図3(h))、絶縁物であるバリア膜8を成膜することで、上面が絶縁膜であるバリア膜8で、側面がバリア膜6で覆われ、かつ下面がバリア膜を介さない接合部とバリア膜3で覆われた部分とで構成されるCu配線構造が形成される(図3(i))。
以上の記載は、下層の配線層上に埋め込みと研磨によって単層の上層配線を形成する、いわゆるシングルダマシン(Single Damascene)と呼ばれる手法に適用した場合について説明したが、上層の配線層および下層と接続する配線孔層を形成した後、両者に配線材を埋め込んで研磨を行う、デュアルダマシン(DualDamascene)法に関して本発明を適用することもできる。以下に図面を参照して詳細に説明する。
図4は、図1と同様の手法をデュアルダマシンに適用したものである。図4(a)において、側面がバリア膜3で覆われたCu等の配線材1と、上面をバリア膜9で覆われた絶縁膜2と、それらの上部を覆うバリア膜4とで構成される下層配線部が用意される。その上に、上層配線と下層配線を接続する接続孔層となる部分の絶縁膜5を成膜し(図4(b))、さらに上層の配線底部を被覆することになるバリア膜11を成膜する(図4(c))。その上に上層配線層となる絶縁膜12を成膜した後(図4(d))、バリア膜10を成膜する(図4(e))。
次に、リソグラフィーによるパターニングと異方性エッチングによって、バリア膜10と絶縁膜12、およびバリア膜11と絶縁膜5の一部を除去して上層配線溝と上層−下層間を接続する接続孔を形成し(図4(f))、さらに下層Cu配線上面を覆うバリア膜4の接続孔露出部分を除去する(図4(g))。この全表面にバリア膜6を成膜後(図4(h))、異方性エッチングによってエッチバックすることにより、配線溝と配線孔の側面以外、すなわち配線溝と配線孔の底面とおよび最表面に存在するバリア膜6を除去する(図4(i))。
この後、全面にCu等の配線材7を成膜し(図4(j))、CMPによって配線溝もしくは配線孔以外の余剰なCuを除去後(図4(k))、絶縁物であるバリア膜8を成膜することで、接続部にバリア膜を介さず、かつ周囲をすべてバリア膜で覆われたCu配線構造が形成される(図4(l))。ここで、リソグラフィーにおけるパターニングの位置ずれによって、接続孔の底面が下層の配線材1の外側に形成された場合でも、接続孔底面はバリア膜9によって保護されるため、Cuに関するバリア性が保証される。
また、図5は、図2と同様の手法をデュアルダマシンに適用したものである。図4の場合と同じく、図4(a)〜(f)と同様の工程の後(図5(a)〜(f))、まずバリア膜6を成膜し(図5(g))、エッチバックしてから(図5(h))、バリア膜4をエッチングする(図5(i))。この後、図4(j)〜(l)と同様の工程によって、図4(l)とほぼ同様の構造を得ることができる(図5(l))。
この方法によれば、図1に対する図2の関係と同様に、上層の配線材7側面の下方が一部バリア膜6ではなくバリア膜4によって被覆される。また、バリア膜6のエッチバック前にバリア膜4をエッチングする手法に比べ、上層の配線材7の成膜直前まで下層の配線材1を露出させずにすむため、下層の配線材1表面の汚染や酸化などの影響を受け難く、各プロセス間における許容時間などの自由度を大きくすることができる。しかし、バリア膜4のエッチング時には最表層のバリア膜10に加えて、バリア膜11もエッチング条件にさらされるため、バリア膜10およびバリア膜11と、バリア膜4とのエッチングにおける選択比と膜厚に関する考慮が必要である。バリア膜4のエッチングにおいてバリア膜10およびバリア膜11がエッチングされる厚さが無視できない場合には、バリア膜10およびバリア膜11はCuの拡散を防止するに必要な膜厚に加えて、バリア膜4のエッチング時に消失する厚さを見込んで成膜する必要がある。
ここで、本実施の形態においては、上層が形成される、すなわちバリア膜4もしくはバリア膜8が成膜される前に、絶縁膜2もしくは絶縁膜12の配線部分以外の上面にバリア膜9もしくはバリア膜10が存在することと、Cu成膜前に配線部分の底面にバリア膜11が、配線溝および接続孔側面にバリア膜6が存在することが重要であり、配線溝と接続孔の形成の加工における工程手順は必ずしも特定する必要はない。例えば、図4(e)から図4(g)に至るまでのリソグラフィーとエッチングにおいても、配線溝の形成と接続孔の形成の順序は必ずしも特定する必要はなく、またバリア膜10の上層にレジストやレジスト以外の他の膜を積層してパターン形成に用いることも可能である。
例えば、図6は、図4に示される工程において、位置ずれ時に上層の配線材7下面のバリア性を保証するバリア膜に引き続き、エッチングのマスクもしくはCMP前のCuとの密着層となる部分を連続的に成膜し、上層形成前にCMPで除去する場合の例を示したものである。図4(a)〜(e)と同様の工程の後(図6(a)〜(e))、ダミー膜13を全面に成膜し(図6(f))、リソグラフィーによるパターニングと異方性エッチングによって、ダミー膜13とバリア膜10と絶縁膜12、およびバリア膜11と絶縁膜5の一部を除去して上層配線溝と上層−下層間を接続する接続孔を形成し、さらに下層Cu配線上面を覆うバリア膜4の接続孔露出部分を除去する(図6(g))。
この全表面にバリア膜6を成膜後(図6(h))、異方性エッチングによってエッチバックすることにより、配線溝と配線孔の側面以外、すなわち配線溝と配線孔の底面とおよび最表面に存在するバリア膜6を除去する(図6(i))。この後は全面にCu等の配線材7を成膜し(図6(j))、CMPによって配線溝もしくは配線孔以外の余剰なCuを除去後(図6(k))、さらにCMPを行うことによって残存するダミー膜13を除去する(図6(l))。その上に絶縁物であるバリア膜8を成膜することで、図4(l)と同様の構造が形成される(図6(m))。
また、図7、図8は、ダミー膜13とバリア膜10をマスクとして、図6(e)〜(g)における配線溝と接続孔を形成する過程として、配線溝と接続孔のリソグラフィー順序を変えた場合の例を示したものである。図7は、接続孔の露光を先に行った場合の一例である。図6(e)の構造が用意された後(図7(a))、レジスト14を塗布し(図7(b))、露光、現像によって配線溝のパターンをレジスト14に形成する(図7(c))。その後、異方性エッチングによってダミー膜13に配線溝パターンを形成し(図7(d))、レジスト13を剥離、除去する(図7(e))。
同様にして、レジスト15を塗布(図7(f))、露光、現像によって接続孔のパターンをレジスト15に形成する(図7(g))。その後、異方性エッチングによってバリア膜10、絶縁膜12、バリア膜11、絶縁膜5の一部を除去して接続孔を形成するとともにレジスト15を除去する(図7(h))。さらに、あらかじめ配線溝パターンが転写されたダミー膜13をマスクとして、バリア膜10および絶縁膜12に異方性エッチングを施すことで、図6(g)の構造を得る(図7(i)、(j))。
一方、図8は、配線溝の露光を先に行った場合の一例である。上記と同様に、図6(e)の構造が用意された後(図8(a))、レジスト14を塗布し(図8(b))、露光、現像によって接続孔のパターンをレジスト14に形成する(図8(c))。その後、異方性エッチングによってダミー膜13に配線溝パターンを形成し(図8(d))、レジスト13を剥離、除去する(図8(e))。同様にして、レジスト15を塗布(図8(f))、露光、現像によって配線溝のパターンをレジスト15に形成した後(図8(g))、既に接続孔パターンが転写されたバリア膜10をマスクとして、バリア膜10、絶縁膜12、バリア膜11、絶縁膜5に異方性エッチングを施し、接続孔を形成するとともにレジスト15を除去する(図8(h)、(i))。さらにあらかじめ配線溝パターンが転写されたダミー膜13をマスクとして、バリア膜10および絶縁膜12に異方性エッチングを施すことで、図6(g)の構造を得る(図8(j))。
このような構成を取った場合、リソグラフィー中に最表面に現れるのは、バリア膜10およびダミー膜13のみであり、絶縁膜12、絶縁膜5は表面に現れない。したがって、例えば絶縁膜12、絶縁膜5がレジストに近い有機物を含有するような組成である場合でも、絶縁膜12、絶縁膜5を損傷すること無くレジストの剥離等の作業を行うことができる。また、ダミー膜13が、配線溝形成後のバリア膜4のエッチング等において、Cu成膜前に消失してしまう場合には、図6(k)〜(l)に至るCMPによるダミー膜13の除去が必要ないのは明らかである。
なお、マスクとなるダミー膜13を複数層使用することで、必ずしもバリア膜を直接マスクに使用しなくても、上記のように絶縁膜12や絶縁膜5をリソグラフィー時に表面に露出せずに同様の加工を実現できることは明らかである。また、必ずしもバリア膜上にダミー膜13を成膜する構成を取る必要も無く、ダミー膜13上にバリア膜10を形成してもよい。この場合、上層形成前に最表面にバリア膜を残存させるため、バリア膜10およびダミー膜13はCMPによって除去しない。
当然ながら、絶縁膜12や絶縁膜5がリソグラフィーにおいて損傷されにくい場合には上記のような構成を取る必要はなく、例えば、図9に示すような、リソグラフィーとエッチングを順次行うことで配線溝と接続孔を形成することができる。図9(a)において図6(e)の構造が用意された後、レジスト14を塗布し(図9(b))、露光、現像によって配線溝のパターンをレジスト14に形成する(図9(c))。その後、異方性エッチングによってバリア膜10と絶縁膜12の一部を除去して配線溝パターンを形成し、レジスト14を剥離、除去する(図9(d))。同様にして、レジスト15を塗布後、露光、現像によって接続孔のパターンをレジスト15に形成した後(図9(e))、バリア膜11、絶縁膜5、バリア膜4に異方性エッチングを施し、接続孔を形成するとともにレジスト15を除去することで、図6(g)の構造を得る(図9(f))。図示しないが、配線溝と接続孔の加工順序が逆の場合でも同様の加工ができることは明らかである。
ここで、上述したように、配線溝もしくは接続孔の側面を覆うバリア膜は、下層との接続部底面をエッチバックによって除去するため、導体である必要はなく絶縁体でも良いが、遅延をできるだけ低減するためには、これらの材質と厚さを考慮して、これらを成膜すべき配線溝の幅を設計、加工することが重要である。
従来、リソグラフィーとエッチングによって加工される配線溝の幅は、配線間隔の半分という値が用いられてきた。これは、配線溝および配線材の幅に比べて、バリア膜が無視できるほどの薄さであったためである。しかしながら、配線が微細で密になるにしたがって配線間隔は減少するのに対し、バリア膜の厚さは後工程における熱処理やデバイス動作時の電界の効果を考慮した上で、そのバリア性が保証される厚さが必要であり、その厚さは配線間隔によらない。
したがって、配線間隔の低減に伴ってバリア膜の厚さが無視できなくなるため、バリア膜の厚さを考慮した、より正確な設計と加工が必要である。上下層間に関しては、配線材の埋め込みが難しくなることを除けば、必ずしも横方向の配線間隔にしたがって間隔を狭める必要が無く、したがって最も問題となるのは横方向の配線間隔に対する配線溝の設計、加工の最適化である。本発明においては、配線溝の側面を覆うべきバリア膜は、必ずしも導体である必要が無いが、このバリア膜が導体である場合と絶縁体である場合とでは、バリア膜成膜前にリソグラフィーとエッチングによって形成しておく配線溝幅の最適値が異なる。
図10は、本発明における配線構造断面の模式図である。この図では、上記の配線溝もしくは接続孔の側面を覆うバリア膜を、便宜的に絶縁体と導体の積層とした構造として示してある。配線間隔をp、配線材M0の幅、比抵抗をそれぞれWM0、ρM0、導体バリア膜BMの厚さ、比抵抗をそれぞれをWBM、ρBM、層間絶縁膜I0の幅、膜厚、誘電率をそれぞれWI0、HI0、KI0、側面の絶縁体バリア膜I1の厚さ、誘電率をそれぞれWBI、KBI1、層間絶縁膜上面の絶縁体バリア膜I2の厚さ、誘電率をそれぞれHBI、KBI2とする。
導体配線部分の単位長さあたりの抵抗Rは、M0およびBMの抵抗R
M0、R
BMを用いると、
のように表わされる。この右辺は上記のパラメータを用いて、
すなわち、
と表わされる。一方で、隣接する配線間の容量Cは、I0、I1、I2、の容量C
I0、C
BI1、C
BI2を用いて、
と表わされる。この右辺は上記のパラメータを用いて、
すなわち、
と表わされる。ここで、
とおくと、式6は、
すなわち、
と変形できる。式7におけるK
I02は、I1以外の部分、すなわちI0とI2で構成される部分の平均誘電率と捉えることができる。
配線における遅延時間tは、上記の抵抗Rと容量Cの積に比例するため、その逆数1/tは、
すなわち、
に比例する。ここで、横方向の長さに関する、
という関係を用いて、上式をW
I0について解いて整理すると、
となる。したがって、バリア膜の厚さが規定されたとき、遅延を最小にする、すなわち式13を最大とするW
I0は、
であり、このとき式13は、
となる。
いま、エッチバックするバリア膜が導体のみ、すなわちBMのみでI1が存在しないとした場合に、遅延を最小にするW
I0は、
である。このとき、W
M0は、
となり、BM成膜前にリソグラフィーとエッチングで用意される溝の幅W
Tは、
となる。したがって、遅延を抑制するためにはこの寸法でBM成膜前の溝を加工することが望ましい。しかしながら、マスク作製や露光などの条件によって、厳密にこの寸法に加工することが困難である場合が多いため、適正な加工が行われているかどうかを簡便に判断する基準が必要である。ここで、比抵抗は正の値であり、かつ配線材とバリア膜の比抵抗はその材質の使用目的から明らかにρ
M0<ρ
BMであるので、
という関係が成立し、これを用いると、W
Tの最適値に関して、
が成立する。したがって、すなわちW
Tは配線間隔の半分より大きく、かつ側面片側分のバリア膜厚と配線間隔の半分を加えた値よりも小さいことが望ましい。
一方、エッチバックするバリア膜が絶縁体のみ、すなわちI1のみでBMが存在しないとした場合に、遅延を最小にするW
I0は、
である。このとき、W
M0は、
となり、I1成膜前にリソグラフィーとエッチングで用意される溝の幅W
Tは、
となる。したがって、遅延を抑制するためにはこの寸法でBM成膜前の溝を加工することが望ましい。また、上記の導体バリア膜を用いた場合と同様に、適正な加工が行われているかどうかを簡便に判断する基準を考えると以下のようになる。まず、誘電率は正の値であり、かつK
I02<K
BI1である。なぜなら、K
I02<K
BI1が成立しない場合にはI0およびI2の代わりにI1で配線間の全てを構成したほうが全体の誘電率を下げることができることになってしまうからである。したがって、
という関係が成立し、これを用いると、W
Tの最適値に関して、
が成立する。したがって、すなわちW
Tは配線間隔の半分に側面片側分のバリア膜厚を加えた値より大きく、かつ配線間隔の半分に側面両側分のバリア膜厚を加えた値よりも小さいことが望ましい。
同様にして、バリア膜が導体と絶縁体の積層である場合には、式14の最適値となるW
Tは式19と式24から、
で表わされる範囲にあることが分かる。
また、バリア膜の選択も遅延を抑制する上で重要である。バリア膜の種類によって、必要な膜厚は異なるが、当然ながら、導体バリア膜を用いる場合には、バリア性が保証される膜厚W
BMが一定ならば比抵抗ρ
BMができるだけ低いことが望ましく、絶縁体バリア膜を用いる場合には、バリア性が保証される膜厚W
BIが一定ならば誘電率K
BIができるだけ低いことが望ましい。導体と絶縁体とを比較する場合にも同様に、式15中の導体バリア膜、絶縁体バリア膜のそれぞれに関する項である、
を比較基準として適性を判断できる。例えば、配線材をCu、層間絶縁膜をSiO
2とした場合を考える。導体バリア膜をTaNとした場合は、ρ
M0/ρ
BMは、ほぼ0.01という値になるので、式27の値はほぼW
BMとなる。一方で、絶縁体バリア膜をSiNとした場合には、K
I0>2K
BI1であり、これにK
I02>KI0という前提を考慮すると、K
I02/K
BI1>0.5であるので、式28の値は2W
BIより大きい。したがって、同一の遅延を達成する際にSiNに許容される膜厚は、TaNの許容される膜厚の倍以上であることになる。もし、使用するTaNとSiNのバリア性が保証されるW
BM、W
BIがほぼ同じであれば、TaNを使用せず、SiNを使用したほうが遅延を低減できることになる。
この側面を覆うべきバリア膜に関しても、総体としてのバリア性が保証されれば必ずしもその材質を全てバリア性の高い材料で構成する必要はなく、例えばバリア性の高い絶縁体とバリア性の低い絶縁体、バリア性の高い絶縁体と密着性は高いがバリア性の低い導体、といったような複数の膜で構成することもできる。その場合の配線溝幅の見積もりなどは、BMに関する部分を導体の平均値、BIに関する部分を絶縁体の平均値を用いて上記の検討を行えば良い。
上記の検討は、配線溝の側壁が底面に対してほぼ垂直であることを前提としていたが、配線溝の断面形状を上面が下面より広くすることで、遅延を低減することも可能である。上記の検討においては、配線溝側方に存在するI1以外の絶縁膜I2およびI0に関して、その平均的なK
I02を用いていたが、K
BI2>KI0であることから、I2部分をI0部分より小さくする構造の方が、総体的な遅延が低減できる。このとき配線溝の上面開口部の幅W
Ttopと下面底部の幅W
TbottomとW
Tその関係は、
となる。
また、配線材であるCuのCMP時における過剰研磨、もしくはその後の配線上面を覆うバリア膜成膜前に溶液処理等でCuを若干エッチングすることによって、誘電率の高いバリア膜I1部分の寄与を減らすことで、同一配線層内における隣接配線間容量を低減し、遅延を削減することができる。図11は、単一の配線についての例を示したものである。I2に対応するバリア膜9上のCuを除去できた時点でCMPを止め、そのまま上面をカバーするバリア膜4、絶縁膜5を堆積した場合には、図11(a)に示されるように、I2に対応するバリア膜9が隣接する配線間に存在する。しかし、Cu配線部を過剰なCMPもしくはエッチングなどによって窪ませてから、上面をカバーするバリア膜4、絶縁膜5を堆積することで、図11(b)のようにバリア膜4の隣接配線間に存在率を低減、削除することができる。ただし、この場合には配線材の厚さの減少分を見込んで、配線溝を深めに形成しておく必要がある。
その構成から明らかなように、本発明の実施の形態はその全てにおいて、配線部側面を覆うべきバリア膜6およびバリア膜3は、上層−下層間の接続に直接寄与する必要が無いため、導体である必要はなく絶縁体でも良い。材料としては、CMPや熱処理を含めた加工や使用時における界面付近のEM耐性等の信頼性を高めるうえで、絶縁膜5との密着性および配線材となるCuとの密着性の両者がよいことが望ましい。また、当該部分のバリア性が保証される限り、必ずしも単一の膜である必要はなく、異なる材質の複数の膜を積層したものを使用できる。例えば窒化チタンとシリコン窒化膜といったように、導体と絶縁体を組み合わせることも可能である。
配線上面を覆うべきバリア膜8およびバリア膜4と配線下面を覆うバリア膜11、接続部下面の位置ずれ時のバリア性を保証すべきバリア膜9とバリア膜10のそれぞれは、基板表面の全面に成膜して接続部分以外を除去しないという形の最も簡便なパターニングを行う場合には、隣接する配線間の電気的結合を遮断するために絶縁体である必要がある。Cuと接する部分のバリア性が保証される絶縁物であれば、必ずしも単一の膜である必要はなく、異なる材質の複数の膜を積層したものを使用できる。
また、上記の配線部側面を覆うバリア膜、および接続部の下面の位置ずれ時のバリア性を保証すべく下層配線部以外の上面を覆うバリア膜は、良好な電気的接続を得るために上層の配線材を成膜する前に下層の配線材上面の清浄化を行う際に、絶縁膜を保護する役割も併せ持つ。上層電気的接続部の導体成膜前には、一般にArイオン等を用いて下層のCu上面を僅かにエッチングすることによって、成膜前に生じた銅酸化物や付着した汚染物を除去し、清浄なCu表面を保持するために真空中を搬送して上層の接続部導体を成膜する。
ここで、低誘電率が要求される層間絶縁膜、特に有機系の組成の高いものは一般に上記のようなArイオン照射に対する耐性が低く、容易に変質してしまうために上部に成膜された膜との密着性低下による剥がれ等の故障要因となる。したがって、これらのバリア膜はArイオン照射やエッチング後の洗浄に対して変質しないことが望ましい。一般にバリア膜として使用されているTiN等の導体やSiN、SiC等の絶縁体は、低誘電率層間絶縁膜に比べてこれらの清浄化工程における耐性が高く、有用である。なお、本発明のような構成と異なる、図16、図18に示されるようなバリアメタルをエッチバックせずにそのままCuを成膜する従来の手法においては、バリアメタル成膜前の低誘電率膜が配線溝等の上面に露出した状態でに上記の清浄化を行う必要が有るため、清浄化工程に対する耐性が低い低誘電率絶縁膜の使用が困難である。
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の具体的な材料構成を含めた実施例について図面を用いて説明する。
まず、本発明の第1の実施例に係る半導体装置の製造方法について、図12及び図13を参照して説明する。図12及び図13は、第1の実施例に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図であり、作図の都合上、分図したものである。図12(a)に示すように、素子を形成した半導体基板上に、SiO2膜16、SiON膜17を順次成膜し、リソグラフィーと異方性エッチングによって半導体素子との接合部となる接続孔を開口して、表面全面にTiN膜18、W膜19を成膜した後、接続孔以外の余剰なW膜19およびTiN膜18をCMPによって除去することによって、半導体素子と上部多層配線とを接続するWプラグ層を形成する。
その上に、米国Dow Chemical社のSilk&reg膜20を塗布法によって成膜した後、プラズマCVD法によってSiN膜21を成膜し、リソグラフィーと異方性エッチングによって第1の配線層の配線溝を形成する(図12(b))。Silk&reg膜20のような有機物を多量に含有する膜は、通常有機物であるレジストの剥離における耐性が低いが、このリソグラフィー時にSilk&reg膜20は表面に現れない。すなわち、SiN膜21上でレジストの塗布、現像が行われるため、例えば基板上の半導体素子との位置ずれが激しい場合に一旦レジストを剥離してから再度のリソグラフィーを行うことができる。また、SiON膜17は、異方性エッチングにおける配線溝底面でのエッチストッパの役割を持つ。
次に、真空装置内でArイオンによって表面を僅かにエッチングすることによって、Wプラグ19表面の清浄化を行い、真空を保ったまま、Ta/TaNという構成のバリアメタル膜22、Cu膜をスパッタ法によって配線溝を被覆する形で表面全面に成膜する。このスパッタ法によって成膜したCuを電極にして、電解めっき法によって配線溝を埋め込むように、表面全面にCuを成膜する。この後にCMPによって配線溝内以外の余剰なCuおよびバリアメタル膜22を除去し、第1配線層を形成する(図12(c))。このとき、SiN膜21はCMPにおけるストッパとして機能する。
次に、全表面にプラズマCVD法によってSiC膜24を成膜する(図12(d))。SiC膜24は、第1配線層のCu23の上面を被覆する役割を持つ。
次に、Silk&reg膜25、SiC膜26、Silk&reg膜27、SiN膜28、TiN膜29を順次、Silk&reg膜は塗布法によって、SiC膜、SiN膜はプラズマCVD法によって、TiN膜はスパッタ法によってそれぞれ成膜する(図12(e))。
次に、リソグラフィーと異方性エッチングによってTiN膜29を第2配線層の配線溝のパターンに加工する(図12(f))。このTiN膜29の異方性エッチングにおいて、SiN膜28はエッチストッパとして機能する。例えば、HBrとCl2系を用いることによって、SiNがエッチングされにくい条件でTiNをエッチングすることが可能である。
次に、リソグラフィーによってレジスト30を第1−2配線層間の接続孔のパターンに加工する(図12(g))。このリソグラフィーにおいても表面はSiN膜28またはTiN膜29で覆われているため、Silk&reg膜は損傷を受けない。
次に、異方性エッチングによって、SiN28膜、Silk&reg膜27、SiC膜26、Silk&reg膜25の一部を順次除去して、第1−2配線層間の接続孔の主部を形成する(図12(h))。この異方性エッチングにおいては、最上層のTiN膜29がエッチングされにくい条件で行われる。例えばフルオロカーボン系のガスを用いることで、TiNがエッチングされにくい、Si組成比の高い膜のエッチングが可能である。SiC膜26のエッチングが十分終了し、かつSilk&reg膜25のエッチングが終了する以前にSiC膜がエッチングされにくい条件を用いることによって、SiC膜24をエッチングストッパとして用いることができる。Silk&reg膜のような低誘電率膜は、例えばH2系のガスを用いたエッチング速度が非常に大きいため、比較的容易にバリア膜との選択比を得ることができる。ここで、Silk&reg膜25は完全に底部までエッチングされなくて良い。後に行う第2配線層配線溝の形成におけるSilk&reg膜27のエッチングにおいても、同時にエッチング条件にさらされるからである。なお、レジスト30の膜厚は、Silk&reg膜27、Silk&reg膜25のエッチング中に消失するように設定される。Silk&reg膜のエッチングされやすい条件においては、有機物であるレジストは比較的エッチングされやすい。SiN膜28がレジスト30のパターンを引き継いだ後は、SiN膜がエッチングされにくい条件を用いることによって、レジスト30が消失後もSiN膜28がマスクとなって異方性エッチングを進行できる。
次に、TiN膜29をマスクとして、SiN膜28を第2配線層の配線溝のパターンに加工し、継続してTiN膜29とSiN膜28の両者をマスクとしてSilk&reg膜27をエッチングして、第2配線層の配線溝を形成する。(図12(i))このエッチングにおいて、SiC膜26はエッチングストッパとして機能する。同時に、第1−2配線層間の接続孔となるSilk&reg膜25のエッチングは、この工程において十分終了させる。この場合SiC膜24がエッチストッパとして機能する。
次に、TiNからなるバリア膜31を、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の内面を被覆するように成膜した後、異方性エッチングによって第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の側壁部にTiNバリア膜31を残存させつつ、第1−2層間接続孔底面のTiNバリア膜31を除去する(図12(j))。
次に、第1−2層間接続孔の底面のSiC膜24を異方性エッチングによって除去して、第1配線層の上部接続面を露出させる(図13(k))。このとき、SiN膜21はストッパとして機能する。
次に、真空装置内でArイオンによって表面を僅かにエッチングすることによって、第1配線層のCu配線23における第2配線層への接続部表面の清浄化を行い、真空を保ったまま、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の内面を被覆するように、スパッタ法によってCuを成膜する。この後、電解めっき法によって第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔を埋め込むようにCu32を成膜し、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の内部以外の余剰なCuおよびTiN膜29をCMPによって除去する(図13(l))。このCMPにおいて、SiN膜28はストッパとして機能する。
次に、表面にプラズマCVD法によってSiC膜33を成膜する(図13(m))。SiC膜33は、第2配線層のCu部32の上面を被覆する役割を持つ。
以下、図12(e)〜図13(l)までと同様の工程を繰り返すことによって、第2配線層と接続する第3配線層を形成する(図13(n))。さらに同様の工程を繰り返すことで、より上層の配線層を形成できる。
次に、本発明の第2の実施例に係る半導体装置の製造方法について、図14及び図15を参照して説明する。図14及び図15は、第2の実施例に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図であり、作図の都合上、分図したものである。図14(a)に示すように、素子を形成した半導体基板上に、SiO2膜34、SiC膜35を順次成膜し、リソグラフィーと異方性エッチングによって半導体素子との接合部となる接続孔を開口して、表面全面にTiN膜36、W膜37を成膜した後、接続孔以外の余剰なW膜37およびTiN膜36をCMPによって除去することによって、半導体素子と上部多層配線とを接続するWプラグ層を形成する。
その上に、プラズマCVD法によってベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene:BCB)膜38を成膜した後、プラズマCVD法によってSiC膜39を成膜し、リソグラフィーと異方性エッチングによって第1の配線層の配線溝を形成するとともにWプラグ37の上面を露出させる(図14(b))。BCB膜もSilk®膜と同様に有機物を多量に含有するが、このリソグラフィー時にはSiC膜35が上部に有るのでBCB膜38は表面に現れず、例えば基板上の半導体素子との位置ずれが激しい場合に一旦レジストを剥離してから再度のリソグラフィーを行うことができる。ここではSiC膜35は、異方性エッチングにおける、配線溝底面でのエッチストッパの役割を持つ。
次に、配線溝を被覆する形でSiC膜40を表面全面に成膜し、異方性エッチングによって配線溝側壁にSiC膜40を残存させつつ、Wプラグ37上の、すなわち配線溝底部のSiC膜40を除去する。このエッチングの際には、配線溝底部のSiC膜40消失後はSiC膜35が、最表層のSiC膜40消失後はSiC膜39が、エッチング条件にさらされる。したがって、Wプラグ37の上面が確実に露出されるようにSiC膜40のエッチングはある程度過剰に行う必要があるが、この過剰分によっても十分残存するように、かつ配線間容量を低減するためにできるだけ小さい値にSiC膜35およびSiC膜39の厚さは設定される必要がある。
次に、真空装置内でArイオンによって表面を僅かにエッチングすることによって、Wプラグ37表面の清浄化を行い、真空を保ったままCu41を有機金属化学気相成長法(Metal−organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)によって、配線溝を埋め込むように表面全面に成膜する。この後にCMPによって配線溝内以外の余剰なCu除去し、第1配線層を形成する(図14(c))。このとき、SiC膜39はCMPにおけるストッパとして機能する。
次に、全表面にプラズマCVD法によってSiC膜42を成膜する(図14(d))。SiC膜42は、第1配線層のCu部41の上面を被覆する役割を持つ。
次に、プラズマCVD法によってBCB膜43、SiC膜44、BCB膜45、SiC膜46、SiO2膜47を順次成膜する(図14(e))。
次に、リソグラフィーと異方性エッチングによってSiO2膜47を第2配線層の配線溝のパターンに加工しする(図14(f))。このSiO2膜47の異方性エッチングにおいて、SiC膜46はエッチストッパとして機能する。また、最表面にはSiC膜46、SiO2膜47しか露出しないので、レジストの剥離等の工程においてBCB膜が損傷されない。
次に、リソグラフィーによってレジストを第1−2配線層間の接続孔のパターンに加工する(図14(g))。このリソグラフィーにおいても表面はSiC膜46またはSiO2膜47で覆われているため、BCB膜は損傷を受けない。
次に、異方性エッチングによって、SiC膜46、BCB膜45、SiC膜44、BCB膜43の一部を順次除去して、第1−2配線層間の接続孔の主部を形成する(図14(h))。この異方性エッチングにおいては、最上層のSiO2膜47がエッチングされにくい条件で行われる。なお、レジスト48の膜厚は、SiC膜44のエッチング終了後、BCB膜43のエッチング中に消失するように設定される。SiC46膜がレジスト48のパターンを引き継いだ後、SiC膜がエッチングされにくい条件を用いることで、レジスト48が消失後もSiC膜46がマスクとなって異方性エッチングを進行できる。
次に、SiO2膜47をマスクとして、SiC膜46を第2配線層の配線溝のパターンに加工する。このとき、第1−2配線層間の接続孔底部のSiC膜42も同時にエッチングされ、第1配線層のCu配線41の第2配線層へ接続する上面が露出される。この後、継続してSiO2膜47とSiC膜46の両者をマスクとしてBCB膜47をエッチングして、第2配線層の配線溝を形成する。(図14(i))このBCB膜47のエッチングにおいて、SiC膜44はエッチングストッパとして機能する。このエッチングにおいて、SiC膜46が第2配線層の配線溝のパターンに加工された後は、SiO2膜47は減少、消失しても構わない。
次に、SiC膜49を、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の内面を被覆するように成膜した後(図14(j))、異方性エッチングを施し、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の側壁部にSiC膜49を残存させつつ、第1−2層間接続孔底面のSiCバリア膜49を除去する(図15(k))。
次に、第2配線層の配線溝および第1−2層間接続孔の内面を埋め込むように、MOCVDによってCu50を成膜し、表面の余剰なCu、および残存するSiO2膜47をCMPによって除去する(図15(l))。CuのMOCVDにおいて、ヘキサフルオロアセチルアセトン(Hexafluoroacetylacetone:Hhfac)および水が添加された原料を用いた場合には、下地Cuの酸化表面がこれらの添加剤によって還元されるため、過剰な清浄化を用いずに良好な電気的接続を得やすい。もちろん、Arイオン照射や、例えば1997 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers 59〜50頁に記述のような、Cu表面清浄化を施すことで、より確実により純度の高いCu同士の接続が可能である。
次に、表面にプラズマCVD法によってSiC膜51を成膜する(図15(m))。SiC膜51は、第2配線層のCu50の上面を被覆する役割を持つ。
以下、図14(e)〜図15(l)までと同様の工程を繰り返すことによって、第2配線層と接続する第3配線層を形成する(図15(n))。さらに同様の工程を繰り返すことで、より上層の配線層を形成できる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば配線間を隔てる絶縁膜はSilk&regやBCBである必要はなく、空隙を含んだナノガラス等でもよい。誘電率が低く、かつ接すべきバリア膜との密着性が強固なものが望ましい。なお、本発明によれば、配線溝もしくは接続孔における電気的接続を担う部の導体の埋め込み成膜前に行うArイオン照射などにおける耐性は、従来ほど必要としない。また、配線溝もしくは接続孔の側壁バリア膜としても、導体に関してはTiNである必要はなくWやTaもしくはその窒化物などでもよい。配線材であるCuに対するバリア性が高く、かつ下地となる絶縁膜もしくはバリア膜との、およびCuとの密着性が高く、かつ比抵抗の低いものが望ましい。同様に、当該部の絶縁体に関してもSiCでなくてもよく、SiNやSiCN等の材料でも良い。配線材であるCuに対するバリア性が高く、かつ下地となる絶縁膜もしくはバリア膜との、およびCuとの密着性が高く、かつ誘電率の低いものが望ましい。他のバリア膜に関しても全く同様であり、実施例の各部位に用いた材料で無くても良く、配線材であるCuに対するバリア性が高く、かつ下地となる絶縁膜もしくはバリア膜との、およびCuとの密着性が高く、かつ誘電率の低いものが望ましい。また、成膜やエッチングの手法も同様に、実施例に限定されない。例えばCuの成膜に関して、MOCVDにめっきを組み合わせる、もしくはスパッタとMOCVDとメッキを組み合わせてもよい。他の成膜に関しても同様であり、上述のような各部位の膜に必要な特質を選られるものであれば、スパッタ法や熱CVD法、プラズマCVD法、塗布法等、適宜対象によって使用できる。