従来からある、高融点シリサイド膜を形成する一般的なサリサイド(Self Alined Silicide)プロセスについて図10〜図13を用いて説明する。
シリコン基板1にウェル1a、分離酸化膜2、およびしきい値電圧制御用の不純物層3を形成する。その後、例えば、6.5nmの厚みの酸化膜をシリコン基板1上に形成して、その酸化膜上にゲート電極となる多結晶シリコンを200nmの厚みに堆積する。写真製版工程によってパターニングを行った後、多結晶シリコンを異方性エッチングしてゲート電極5を形成する。
次に、イクステンション(extension)とも呼ばれるLDD(Lightly Doped Drain)領域6を形成した後、CVD(化学蒸着)法により、酸化膜を堆積する。リアクティブイオンエッチング法を用いて、この酸化膜をエッチバックし、側壁酸化膜7を形成する。
続いて、高濃度イオン注入により、高濃度ソース/ドレイン領域8を形成した後、熱処理を施して、活性化を行なう。図10は、活性化が終了した後の状態を示す断面図である。
次に、サリサイドプロセスを行なう。まずシリコン基板1の表面を適当な前処理法で清浄化した後、ウェーハ面に金属膜9を堆積する(図11参照)。次に適当な雰囲気下で、これを加熱し、シリコン基板1およびゲート電極5の多結晶シリコンによってシリサイド膜10を形成する(図12参照)。このシリサイド膜10の組成は、例えばMが金属膜9を構成する金属元素を表す記号とすると、MSixのように表現する。ここで、xは金属に対するシリコンの割合を表す。現実的には、ランプアニール炉を用いた短時間熱処理(Rapid Thermal Annealing)を行なうことが多い。以下、金属膜9の堆積直後で、ランプアニール炉を用いた熱処理を1st.RTAという。
この時、分離酸化膜2の上部および側壁酸化膜7の上部には、シリコンがないため、シリサイド反応は起こらず、少なくともこれらの上に未反応金属膜9が残る(図12参照)。次に、反応したシリサイドMSixで構成されたシリサイド膜10は残し、未反応の金属Mなどが残存する金属膜9を選択的に除去する(図13参照)。基本的には、前述の工程でサリサイドプロセスは終了する。
しかし、金属膜9として例えばコバルトを用いると、1st.RTAにおいて600℃より高い熱処理温度でコバルトシリサイド膜CoSi2を形成すると横方向への成長が生じやすい。そのため、1st.RTAを600℃より低い温度で行い、金属膜9を除去した後に、再度、RTAを施す場合がある。
すなわち、コバルトCoとシリコンSiからコバルトシリサイドCoSi2が形成される過程において、まずコバルトシリサイドCo2Siが形成され、次にコバルトシリサイドCoSiが形成され、最後にコバルトシリサイドCoSi2が形成されるという過程を経るようにする場合がある。
コバルトシリサイド膜が側壁酸化膜7の下に潜り込む現象は、拡散種に起因していると考えられる。コバルトCoとシリコンSiからコバルトシリサイドCo2Siが形成される過程では、コバルトCoが拡散種となる。一方、コバルトシリサイドCo2SiからコバルトシリサイドCoSiが形成される過程では、シリコンSiが拡散種となる。1st.RTAを施すことにより、コバルトとシリコンからコバルトシリサイドCo2Siを経てコバルトシリサイドCoSiが形成される。さらに、コバルトシリサイドCoSiに2nd.RTAを施すことによりコバルトシリサイドCoSi2が形成される過程では、コバルトCoが拡散種となる。シリサイドCo2SiおよびCoSi2形成時において、コバルトCoが拡散種となるためシリコン基板1中にコバルトCoが拡散しやすく、コバルトシリサイドについては側壁酸化膜7の下で横方向成長が顕著になるのである。
この場合の熱処理にも、ランプアニール炉を用いた短時間熱処理が用いられることが多い。以下、未反応の金属膜9を除去した後でこのランプアニール炉を用いた熱処理を2nd.RTAという。
一方、シリサイド膜形成過程の拡散種がシリコンの場合、例えば、チタンシリサイドTiSi2の場合にはこのような潜り込みの現象は発生しない。
以上のプロセスを用いることにより、シリコンSi表面が露出した領域に選択的に電極を形成できる点が、サリサイドプロセスの優れた点である。また、ゲート長を短くしたときのゲート抵抗の上昇は、コバルトシリサイドの方が、チタンシリサイドに比べて緩やかであるため、コバルトシリサイドをMISトランジスタの製造に用いることにより、MISトランジスタを集積した集積回路において高密度化が容易になる。
本願に関連する先行技術文献を下掲する。
従来のサリサイドプロセスを用いて形成されるMISトランジスタは、近年高集積化が進みMISFETのゲート長が微細化され、それに伴いサイドウォール幅がますます微細化されてきている。
例えばシリサイド反応を起こさせる金属MとしてコバルトCoを用いるサリサイドプロセスを適用した場合、図13に示すように、ソースおよびドレイン領域上のシリサイド膜10が酸化膜で形成される側壁酸化膜7の下で長さL1だけ潜り込む現象が発生する。このシリサイドの潜り込み現象によってゲート耐圧の劣化、ゲート酸化膜信頼性の低下、および、ゲート電極とソースおよびドレインとの電気的短絡等が生じるという問題があるが、この問題は微細化されたゲート電極の場合には特に深刻である。
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、シリサイド膜のサイドウォール下への横方向成長を抑制し、ゲート耐圧の劣化、ゲート酸化膜信頼性の低下、およびゲートとソースとの間の、またはゲートとドレインとの間の電気的短絡を抑制することを目的とする。
この発明にかかる半導体装置の製造方法の第1の態様は、半導体基板を用意する工程と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極形成後、前記半導体基板中にLDD領域を形成する工程と、前記LDD領域を形成後、前記ゲート電極と前記半導体基板を覆うように酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜を形成後、前記酸化膜を覆うように応力を有する窒化膜を形成する工程と、前記酸化膜と前記窒化膜をエッチングし、前記ゲート電極の側壁にサイドウォールを形成する工程と、前記サイドウォール形成後、前記半導体基板中にソースおよびドレイン領域を形成する工程と、前記ソースおよび前記ドレイン領域を形成後、前記ソースおよびドレイン領域上にシリサイド膜を形成する工程と、を有する。
この発明にかかる半導体装置の製造方法の第2の態様は、半導体基板を用意する工程と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極形成後、前記半導体基板に窒素を注入する工程と、前記ゲート電極形成後、前記半導体基板中にLDD領域を形成する工程と、前記LDD領域を形成後、前記ゲート電極と前記半導体基板を覆うように酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜を形成後、前記酸化膜を覆うように窒化膜を形成する工程と、前記酸化膜と前記窒化膜をエッチングし、前記ゲート電極の側壁にサイドウォールを形成する工程と、前記サイドウォール形成後、前記半導体基板中にソースおよびドレイン領域を形成する工程と、前記ソースおよび前記ドレイン領域を形成後、前記ソースおよびドレイン領域上にシリサイド膜を形成する工程と、を有する。
この発明にかかるMISトランジスタの第1の態様は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極と、前記ゲート絶縁膜下方の前記シリコン基板を挟んで前記シリコン基板に配置されたLDD領域及びソース/ドレイン領域と、前記ゲート電極側面に隣接し前記LDD領域上に接して配置された窒化酸化シリコン層と前記窒化酸化シリコン層上に配置され、応力を持つ窒化シリコン層とを有するサイドウォールと、前記サイドウォールに隣接し前記ソース/ドレイン領域表面に配置されたシリサイド膜と、を備える。
この発明にかかるMISトランジスタの第2の態様は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極と、前記ゲート絶縁膜下方の前記シリコン基板を挟んで前記シリコン基板に配置されたLDD領域及びソース/ドレイン領域と、前記ゲート電極側面に隣接し前記LDD領域上に接して配置された酸化シリコン層と前記酸化シリコン層上に形成され、応力を持つ窒化シリコン層とを有するサイドウォールと、前記サイドウォールに隣接し前記ソース/ドレイン領域表面に配置されたシリサイド膜と、を備える。
この発明にかかるMISトランジスタの第3の態様は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極と、前記ゲート絶縁膜下方の前記シリコン基板を挟んで前記シリコン基板に配置されたLDD領域及びソース/ドレイン領域と、前記ゲート電極側面に隣接し前記LDD領域上に接して配置された窒化酸化シリコン層と前記窒化酸化シリコン層上に配置され、窒化シリコン層とを有するサイドウォールと、前記サイドウォールに隣接し前記ソース/ドレイン領域表面に配置されたシリサイド膜と、を備える。
この発明にかかるMISトランジスタの第4の態様は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極と、前記ゲート絶縁膜下方の前記シリコン基板を挟んで前記シリコン基板に配置されたLDD領域及びソース/ドレイン領域と、前記ゲート電極側面に隣接し前記LDD領域上に接して配置された酸化シリコン層と前記酸化シリコン層上に形成され、窒化シリコン層とを有するサイドウォールと、前記サイドウォールに隣接し前記ソース/ドレイン領域表面に配置されたシリサイド膜と、を備える。
本発明にかかるMISトランジスタによれば、横方向の拡散を抑制することで、ゲート耐圧の劣化、ゲート酸化膜信頼性の低下、およびゲート電極とソース/ドレイン電極との電気的短絡等を抑制することができる。またサイドウォールのバッファ層は、ゲート絶縁膜とシリコン基板との界面における界面準位の生成を抑制する役割を果たし、トランジスタ特性の劣化が抑制される。またバッファ層に窒化酸化シリコン層を用いることにより高いホットエレクトロン耐性を得る点で有利である。
また本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、本発明にかかるMISトランジスタを製造することができる。
この発明のMISトランジスタの製造工程を図1〜図7に示す。図1〜図7は各工程におけるMISトランジスタ、特にMIS電界効果トランジスタ(以下MISFETという。)が形成されるべきシリコン基板の断面図である。
まず、従来からある通常のMISFETの製造方法を用い、シリコン基板1のMISFETが形成されるべき部分に分離酸化膜2やウェル1aおよびしきい値電圧制御用の不純物層3を形成する。さらに、従来の製造方法により、分離酸化膜2で囲まれた領域に、膜厚が6.5nmの酸化膜を形成し、その酸化膜上にゲート電極となる多結晶シリコン膜を200nmの厚さに堆積する。
レジスト膜を形成してパターニングを行い、多結晶シリコンを異方性エッチングすることによりゲート電極5を形成する(図1参照)。
次に、シリコンが露出している領域前面に窒素の注入を行った後、LDD領域6を形成する。CVD法により、シリコン基板1の表面に接するように酸化膜11を堆積させた後、CVD法により、窒化膜12を堆積させる。
この時、サイドウォール下層となるCVD酸化膜11は約150オングストローム程度、サイドウォール上層となるCVD窒化膜12は約800オングストローム程度の厚みがある。この状態のシリコン基板の断面が図2に示されている。
次に、リアクティブイオンエッチング法により、この窒化膜12と酸化膜11がエッチバックされ、サイドウォール15が形成される。このサイドウォール15は、2層構造を有しており、シリコン基板1に接するように形成されたバッファ層13と、このバッファ層13上に形成された窒化シリコン層14とからなる。
ここではバッファ層13がゲート電極5にも接しているが、この製造工程上たまたまこのようになったにすぎず、バッファ層13がゲート電極5に接することは発明にとって必須の構成要件ではない。
ソース/ドレインが形成されるべき領域に不純物を添加した後に1000℃前後の温度で30秒間RTAを行い、ソース/ドレイン領域8を形成した状態が図3に示されている。この時、ゲート電極5の多結晶シリコン中の窒素およびソース/ドレイン領域8中の窒素がゲート絶縁膜4およびサイドウォール15のバッファ層13に入り込み、ゲート絶縁膜4およびサイドウォール15のバッファ層13が窒化される。
このシリコン基板1の深さ方向の窒素の濃度が図4に示されている。シリコン基板1とサイドウォール15との境界が図4のグラフにおける0.00μmに相当する。
次に、サリサイドプロセスを用いて、ゲート電極5の上に、およびソース/ドレイン領域8上にシリサイド膜が形成される。このサリサイドプロセスにおいて、まず、コバルトCoをスパッタ法により堆積する(図5参照)。このミキシングによってシリコン基板1とシリサイド膜10との界面が平坦化される。
ここでは、2段階のRTAを用いて、シリサイド反応を進め、図6にあるように、コバルトのシリサイド膜10を形成する。その後の未反応の金属膜9を除去したときのシリコン基板1の断面が図7に示されている。
ここで形成されたサイドウォール15は、最終的には、バッファ層13が窒化酸化シリコンで形成されている。このMISFETは、2層構造サイドウォール15によって、コバルトのシリサイド膜10がサイドウォール15の下に潜り込むことを防いでいる。
サイドウォール15を構成している窒化酸化シリコンからなるバッファ層13と窒化シリコン層14は、窒化シリコン層14の機械的応力(メカニカルストレス)により、コバルトシリサイドCoSi2のサイドウォール15の下での横方向拡散を抑制していると考えている。
このようにサイドウォール15の下での横方向の拡散を抑制することで、コバルトシリサイドCoSi2を用いたサリサイド化トランジスタにおける、ゲート耐圧の劣化、ゲート酸化膜信頼性の低下、およびゲート電極とソース/ドレイン電極との電気的短絡等を抑制することができるのである。
図8および図9は、それぞれ従来およびこの発明のMISトランジスタにおける、ゲートブレークダウン電圧とブレークダウンが起こる頻度との関係を示すグラフである。ここでは、ゲートとソース/ドレインの短絡の頻度を評価しやすいようにゲート端長の長い、216mmのトランジスタを測定している。
これらのグラフにおいて、正のゲートブレークダウン電圧によってブレークダウンを起こすのはPチャネルトランジスタであり、負のゲートブレークダウン電圧によってブレークダウンを起こすのはNチャネルトランジスタの場合である。
図8に比べて図9の方が絶対値が大きいゲートブレークダウン電圧でブレークダウンする素子が多いことを示しているから、ゲート絶縁膜4の下にシリサイド膜10が入り込む距離が従来のシリサイド膜10に比べて短くなったことによってゲート耐圧の安定性が増したことが、これらのグラフを比較することによって分かる。
なお、この実施の形態の説明においては、シリサイド反応に用いる金属にコバルトCoを使用したが、シリサイドを形成する際に拡散種となる金属、あるいはこれを含む合金(例えば、ニッケルNiなど)を用いても同様に、潜り込みが発生するので、上記と同様に2層構造サイドウォールを用いて同様の効果を得ることができる。
2層構造のサイドウォール15を有するMISトランジスタにおいて、サリサイド化を行うと、下層である窒化酸化シリコン層13により、サイドウォール15と基板間の界面準位は、従来の窒化酸化シリコンのみのサイドウォールと同等に保たれる。
ここではサイドウォール15のバッファ層13に窒化酸化シリコンを用いたが、酸化シリコンに比べて窒化酸化シリコンを用いた方が高いホットエレクトロン耐性を得る点で有利だからである。
なお、窒化シリコン層を直接、シリコン基板1上に堆積してもシリサイドのサイドウォール15下での横方向成長を抑えることができると考えられる。また、20〜100オングストローム程度の薄膜ゲート酸化膜4上に堆積した場合でも同様である。
しかし、これらの場合には、窒化シリコン層堆積時の応力により、窒化シリコン層とシリコン基板1との界面、および、薄膜ゲート酸化膜とシリコン基板1との界面に界面準位が多量に生成され、トランジスタ特性が劣化する事が判っている。
窒化シリコン層14と窒化酸化シリコンからなるバッファ層13を備える2層構造のサイドウォール15において、下層のバッファ層13(CVD酸化膜)は、この界面準位生成を抑制する層としての役割を果たす。
従って、バッファ層13は、例えば、酸化膜であってもよく、上記実施の形態と同様の効果を奏する。サイドウォール15のバッファ層13を酸化膜とするためには、例えば、上述の製造工程において、窒素を注入する工程を省けばよい。
サイドウォール15はバッファ層を備える2層以上の多層構造であれば、シリコン基板1の上で発生する界面準位生成の抑制ができるという上記実施の形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施の形態では、コバルトシリサイドCoSi2を生成する際に2段階のRTAを用いたが、従来は横方向拡散を抑制するためにこのような2段階のRTAを用いていたのであり、一度のRTAでコバルトCoとシリコンSiからコバルトシリサイドCoSi2を形成してもよく、この場合には、RTAの工程を一工程省くことができるという効果が生じる。