JP2009245693A - 燃料電池発電装置及び停止時の制御方法並びに制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池スタックの急激な温度低下を抑制し、燃料電池発電装置を効率的に動作させる。
【解決手段】空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、燃料ガス及び水蒸気の供給を停止すると共に、酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定する。
【選択図】図3
【解決手段】空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、燃料ガス及び水蒸気の供給を停止すると共に、酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定する。
【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池発電装置及び制御方法並びに制御プログラムに関し、特に、燃料電池発電装置の運転を非常停止する際の酸化剤ガスの流量制御に関する。
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池発電装置は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用途などに利用されている。この燃料電池発電装置は、反応温度や電解質の種類によって分類することができ、反応温度が300℃程度以下の低温型には、固体高分子型(PEFC)、アルカリ型(AFC)、リン酸型(PAFC)などがあり、高温型には、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)などがある。
この中で、固体酸化物型は、運転温度が高いためにPt等の高価な貴金属の触媒を使用する必要がなく、排熱が利用しやすく、また、電池構成材料が全て固体でできていることから構成がシンプルであり、高い発電効率が得られるなどの特徴があり、近年盛んに開発が行われている(例えば、下記特許文献1参照)。また、燃料電池発電装置は、発電セルの形状により、円筒型、モノリス型、平板積層型の3つに分類されるが、発電セルの形成が容易な平板積層型が広く採用されている。
上記平板積層型の固体酸化物型燃料電池装置は、発電セルとセパレータとが交互に積層されて燃料電池スタックが構成されている。発電セルは、酸化物イオン導電体からなる固体電解質層を空気極(カソード)層と燃料極(アノード)層とで挟み込んだ積層構造を有し、空気極側には酸化剤ガスとしても酸素(空気)が供給され、燃料極側には燃料ガスが供給されるようになっている。
上記空気極層及び燃料極層は、酸素や燃料ガスが固体電解質層との界面に到達することができるように多孔質材料で形成されている。また、セパレータ或いはインターコネクタは、発電セル間を電気的に接続すると共に、燃料ガスや酸化剤ガスをセパレータ外周面から導入して燃料極層に向かって吐出させる通路を有している。また、セパレータと空気極層との間には空気極集電体が配置され、セパレータと燃料極層との間には燃料極集電体が配置されている。
上記構成の固体酸化物燃料電池では、セパレータを介して発電セルの空気極側に供給された酸化剤ガス(酸素)は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2−)になる。この酸化物イオンは、燃料極に向かって固体電解質層内を拡散移動し、燃料極との界面近傍で燃料ガスと反応して反応生成物(H2O等)となり、燃料極に電子を放出する。そして、この電子を燃料極集電体から取り出すことによって電流が発生する。上記電極反応(発電反応)は、燃料ガスとして水素を用いた場合は以下のようになる。
空気極: 1/2O2 + 2e− → O2−
燃料極: H2 + O2− → H2O + 2e−
全体 : H2 + 1/2O2 → H2O
燃料極: H2 + O2− → H2O + 2e−
全体 : H2 + 1/2O2 → H2O
ここで、燃料ガスとして水素を使用する場合、水素の濃度をコントロールするために窒素が混合されるが、装置が大型化するにつれて窒素の使用量が増加してしまう。そこで、燃料ガスとして水素に代えて都市ガスや天然ガスなどの炭化水素系ガスを使用する燃料電池発電装置が提案されている。
この燃料電池発電装置は、例えば、燃料ガスの流量と酸化剤ガスの流量とに応じて直流出力電力を発生する燃料電池スタックと、燃料電池スタックに酸化剤ガスを導入する空気供給系と、燃料電池スタックに燃料ガスを導入する燃料ガス供給系と、燃料ガス供給系から送られる炭化水素ガスを水素リッチな燃料ガスに改質する燃料改質器と、燃料ガス供給系に水蒸気を導入する水蒸気供給系と、各種制御を行う制御手段などで構成され、燃料電池スタックと燃料改質器とで燃料電池モジュールが構成される。
上記燃料電池発電装置の運転中において、システムエラーや外部系統電力の停止等の異常が発生した場合、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる必要がある。この場合、電気出力を停止すると共に、燃料電池モジュールに供給している燃料ガス(及び水蒸気)の供給を停止するが、通常、酸化剤ガスの供給は停止しない制御を行っている。
しかしながら、固体酸化物型の燃料電池発電装置では、燃料電池スタックを高温(例えば、SOFCでは、約600〜1000℃)で動作させているため、電気出力及び燃料ガスの供給を停止すると、発電に伴うジュール熱が発生しなくなり、燃料電池スタックは酸化剤ガスに冷却されてその温度は急激に低下する。
そして、この急激な温度低下により燃料電池スタックを構成する各構成物に熱ストレスが加わり、特に、セラミックス等の脆い部材で構成される固体電解質層を含む発電セルに割れ(以下、セル割れと呼ぶ。)が生じる。また、燃料電池スタックの温度が低下すると、運転を再開する際に、燃料電池スタックが定格発電時の温度に到達するまでに時間を要し、燃料電池発電装置を効率的に動作させることができない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、燃料電池スタックの急激な温度低下を抑制し、燃料電池発電装置を効率的に動作させることができる燃料電池発電装置及び非常停止時の制御方法並びに制御プログラムを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段と前記酸化剤ガス供給手段とを制御する制御手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、前記制御手段は、前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定するものである。
また、本発明は、空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置における非常停止時の制御方法であって、前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定するものである。
また、本発明は、空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置で動作する制御プログラムであって、コンピュータを、前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定する制御手段として機能させるものである。
本発明の燃料電池発電装置及び非常停止時の制御方法並びに制御プログラムによれば、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる時に、酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定する制御を行うため、燃料電池スタックの急激な温度低下を抑制し、セル割れを防止することができる。
また、酸化剤ガスの流量を下げて燃料電池スタックの温度低下を抑制することによって、運転再開時に、燃料電池スタックを定格発電時の温度に迅速に復帰させることができるため、燃料電池発電装置を効率的に動作させることができる。
背景技術で示したように、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、電気出力を停止すると共に、燃料ガス(及び水蒸気)の供給を停止するが、酸化剤ガスは定格発電時とほぼ同量の流量で供給を続けるため、燃料電池スタックの温度が急激に低下し、セル割れが発生したり、定格発電に復帰するまでに時間を要するという問題があった。
この燃料電池スタックの温度低下の問題を回避するためには、非常停止時に、酸化剤ガスの供給も停止すればよいが、非常停止を行うのは異常が発生した場合であり、そのような緊急時に酸化剤ガスの供給を停止すると、何らかの理由で燃料電池スタックの温度が上昇して、固体電解質層が溶融する等の問題が発生する可能性もある。
従って、フェイルセーフの観点から、酸化剤ガスはある程度流し続ける必要があるが、どの程度の流量に設定すればよいかを定めるのは容易ではなかった。
この技術的課題に対して、本願発明者は、酸化剤ガスの供給を続けた場合と供給を停止した場合の各々について、燃料電池スタックの各構成物の状態を考察した結果、燃料電池スタックが500℃以上の高温において、空気の供給を停止すると、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化し、イオン導電体として動作しなくなってしまう現象が生じることを見出した。そこで、この現象が生じるか否かを基準にして酸化剤ガスの流量を設定する方法を提案する。
具体的には、空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、必要に応じて、燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、燃料ガス供給手段(及び水蒸気供給手段)を制御して、燃料ガス(及び水蒸気)の供給を停止すると共に、酸化剤ガス供給手段を制御して、酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定する制御を行う。
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る燃料電池発電装置及び非常停止時の制御方法並びに制御プログラムについて、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本実施例の燃料電池発電装置の構成を模式的に示す図であり、図2は、燃料電池モジュール内の燃料電池スタックの具体的構成例を示す図である。また、図3は、本実施例の燃料電池発電装置の非常停止時の制御手順を示すフローチャート図である。
図1に示すように、本実施例の燃料電池発電装置1は、燃料ガス(都市ガスや天然ガス、LPGガスなどの炭化水素ガス)の流量と酸化剤ガス(酸素や空気など)の流量とに応じて直流出力電力を発生する燃料電池スタック3(バンドルとも呼ぶ。)と、燃料電池スタック3に酸化剤ガス(本実施例では空気とする。)を導入する空気ブロア6や空気供給配管などの空気供給系と、燃料電池スタック3に燃料ガスを導入する燃料ガス昇圧器7や燃料ガス供給配管などの燃料ガス供給系と、燃料電池モジュール2内に配設され、燃料ガス供給系から送られる炭化水素ガスを水素リッチな燃料ガスに改質する燃料改質器4と、燃料ガス供給系に水蒸気を導入する水移送ポンプ8や水蒸気発生器10、水蒸気供給配管などの水蒸気供給系と、燃料電池スタック3内の各構成物の電圧を測定する電圧測定手段(図示せず)と、燃料電池スタック3の温度を測定する温度測定手段(図示せず)と、電力測定手段で測定した電圧や温度測定手段で測定した温度に基づいて燃料ガスや水蒸気、空気の流量制御などを行う制御手段5と、燃料電池スタック3からの直流出力を交流出力に変換して交流電力を外部負荷に供給するインバータ(図示せず)などで構成されている。
また、図2に示すように、燃料電池スタック3は、固体電解質層12の両面に燃料極層13と空気極層11とを配置した発電セル14と、燃料極層13の外側に配置した燃料極集電体19と、空気極層11の外側に配置した空気極集電体18と、各集電体の外側に配したセパレータ17(インターコネクタとも呼ぶ。)とからなる単セル(ユニット)が縦方向に多数積層されて構成されている。
固体電解質層12は、ランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.05O2.85)やイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極層13は、Ni、Co等の金属又はNi−YSZ、Co−YSZ、Niとサマリウムドープセリア(Ce0.8Sm0.2O2)のサーメット等で構成され、空気極層11は、サマリウムコバルタイト(Sm0.5Sr0.5CoO3)、ランタンマンガナイト(LaMnO3)、ランタン鉄コバルタイト(LaSrCoFeO3)等で構成されている。また、燃料極集電体19はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体18はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成されている。
また、セパレータ17は、フェライト系のステンレス等で構成され、空気極集電体18側の面にはAgメッキ層が形成され、燃料極集電体19側の面にはNiメッキ層が形成され、発電セル14間を電気的に接続する。また、セパレータ17は、発電セル14に対してガスを供給する機能を有し、燃料ガスをセパレータ17の外周面から導入して燃料極集電体19に対向する面のほぼ中央部から吐出する燃料ガス流路と、酸化剤ガス(空気)をセパレータ17の外周面から導入して空気極集電体18に対向する面のほぼ中央部から吐出する酸化剤ガス流路とを備えている。
また、この燃料電池スタック3の両側にはステンレス等で形成された一対の端板15、16が配置されており、燃料電池スタック3の電力はこの上下一対の端板15、16を介して外部に取り出すことができるようになっている。
そして、運転時には、燃料ガス通路及び酸化剤ガス通路を通してセパレータ17の略中心部から発電セル14に向けて供給される燃料ガス及び酸化剤ガス(空気)を発電セル14の外周方向に拡散させながら燃料極層13及び空気極層11の全面に良好な分布で行き渡らせて発電反応を生じさせると共に、発電反応で消費されなかった余剰ガス(高温排ガス)を発電セル14の外周部からハウジング内に自由に放出するようになっており、ハウジングの内部空間に放出された排ガスは排気穴より燃料電池モジュール2外に排出されるようになっている。
なお、図2では、発電セル14の両側に燃料極集電体19及び空気極集電体18が配置された構成を示しているが、燃料極集電体19及び空気極集電体18を配置しない構成に対しても、本発明を適用することができる。また、図2では、発電セル14の外周部にガス漏れ防止シールを設けないシールレス構造の燃料電池スタック3を示したが、燃料電池スタック3が隔壁によって密閉されるシール構造に対しても、本発明を適用することができる。
このような構成において、上述したように、燃料電池スタックが500℃以上の高温において、空気の供給を停止すると、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化し、イオン導電体として動作しなくなってしまうという現象が発生する。この現象を測定データに基づいて説明する。
固体電解質層12としてランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.05O2.85)を使用した燃料電池スタック3を用いて定格発電を行い、酸化剤ガスを供給し続ける条件で非常停止させた。また、同様の燃料電池スタック3を用いて定格発電を行い、酸化剤ガスの供給を停止する条件で非常停止させた。そして、各々の燃料電池スタック3から固体電解質層12を取り出し、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて定量分析を行った。両試料の各元素の比率(Atomic%)を表1に示す。
表1より、酸化剤ガスの供給を停止した固体電解質層12(右欄)は、酸化剤ガスを供給した固体電解質層12(左欄)に比べて、酸素の比率が減少し、他の元素の比率が増加していることが分かる。これは、固体電解質層12中から酸素が抜け出して酸素の比率が減少し、これにより、他の元素の比率が相対的に増加していることを示している。
このように、燃料電池スタック3の温度低下を抑制するために酸化剤ガスの供給を停止すると、固体電解質層12が酸欠による結晶変化を起こしてしまう。従って、酸化剤ガスは、固体電解質層12が酸欠による結晶変化を起さない最低流量以上の流量で流し続けることが重要であり、酸化剤ガスの流量をこのように制御することにより、燃料極層13と空気極層11との酸素分圧の差によって、固体電解質層12中に、酸化物イオンの移動に必要な酸素が供給され、固体電解質層12の健全性を維持することができる。
なお、この最低流量は、酸化剤ガスの供給量を変えて上記実験を行うことにより求めることができる。また、固体電解質層12表面の空気中の酸素濃度が小さくなることによって固体電解質層12中から酸素が抜け出すと考えると、上記最低流量は、酸化剤ガスが固体電解質層12に滞留せずに流れる流量と考えることもできる。
また、上記酸化剤ガスの流量制御は制御手段5によって実行されるが、この制御は、コンピュータを、上記制御手段5として機能させる制御プログラムによって実行する構成とすることもできる。
次に、上記構成の燃料電池発電装置1を用いた非常停止時の具体的な制御手順について、図3のフローチャート図を参照して説明する。
まず、ステップS101で、コールドスタンバイ状態(常温状態)において、制御装置のボタン操作などによって燃料電池発電装置1の起動が指示されると、制御手段5は、燃料電池モジュール2を起動用のヒータやバーナにより加熱して、燃料電池スタック3を発電可能な温度まで昇温させる。
次に、ステップS102で、制御手段5は、空気供給系を制御して、燃料電池スタック3に第1の流量の空気を供給し、引き続きステップS103で、燃料ガス供給系及び水蒸気供給系を制御して、燃料電池スタック3に所定の流量の燃料ガス及び水蒸気を供給する。
次に、ステップS104で、制御手段5は、温度測定手段を用いて燃料電池スタック3の温度を監視し、ステップS105で、燃料電池スタック3の温度と予め定められた温度とを比較し、所定の温度に達したらホットスタンバイ状態になったと判断して、ステップS106で、定格発電を開始する。
次に、ステップS107で、制御手段5は、システムエラーや外部系統電力の停止等の異常を監視し、異常を検知したら、ステップS108で、制御手段5は、電気出力を停止させると共に、燃料ガス供給系及び水蒸気供給系を制御して、燃料ガス及び水蒸気の供給を停止させる。
次に、ステップS109で、制御手段5は、空気供給系を制御して、空気の流量を、定格発電時の第1の流量より小さく、かつ、固体電解質層12中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい第2の流量(好ましくは、固体電解質層12が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量)に変更する。
その後、ステップS110で、制御手段5は、システムエラーや外部系統電力の停止等の異常が解除されたかを監視し、異常が解除されたら、ステップS102に戻って、空気の流量を第1の流量に戻し、燃料ガス及び水蒸気を供給し、燃料電池スタック3が所定の温度に達したら定格発電を再開する。
このように、空気の流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量、好ましくは、固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量に設定することにより、燃料電池スタック3の急激な温度低下を抑制することができ、セル割れ等の不具合を防止することができる。また、燃料電池スタック3の温度低下を抑えることにより、非常停止から定格発電再開までの時間を短縮することができ、燃料電池発電装置1を効率的に動作させることができる。
以上、本実施例の燃料電池発電装置1の制御手順を説明したが、上記効果を確認するために、以下の実験を行った。
固体電解質層12としてランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.05O2.85)を使用し、空気極層11としてサマリウムコバルタイト(Sm0.5Sr0.5CoO3)、燃料極層13としてNiとサマリウムドープセリア(Ce0.8Sm0.2O2)のサーメットを使用し、径120mmの平板状の発電セル14を製作した。この発電セル14を、スポンジ状のNiからなる燃料極集電体19とスポンジ状のAgからなる空気極集電体18で挟み、フェライト系のステンレスからなるセパレータ17を介して、46段積層して燃料電池スタック3を制作した。
このような構成の発電セル14では、1枚当たり27Wの電気出力を発生させることができ、燃料電池スタック3全体としては1.2kWの電気出力を発生させることが可能である。このときの発電効率は約55%であり、45%の化学エネルギーが熱となって放出され、この熱を利用して、燃料電池スタック3を750℃に維持している。この定格発電での電流密度は300mA/cm2であり、燃料ガス(都市ガス)の流量は3.2L/min(0℃換算)、水の流量は10ml/min、酸化剤ガス(空気)の流量は74L/min(0℃換算)である。
そして、非常停止時に、上記フローに従って、電気出力を停止させ、燃料ガス及び水蒸気の供給を停止させると共に、酸化剤ガスの流量を3L/min(0℃換算)に低下させた。その結果、燃料電池スタック3の温度低下は小さく、発電セル14にセル割れは認められず、迅速に定格発電に復帰することができた。なお、この3L/minは、発電セル1枚当たりに換算すると65ml/minであり、セル面積(113.1cm2)を用いて標準化すると0.57ml/min/cm2である。
一方、非常停止時に、電気出力を停止させ、燃料ガス及び水蒸気の供給を停止させ、酸化剤ガスの流量を74L/min(0℃換算)のまま流し続けた場合は、燃料電池スタック3の温度が急激に低下し、発電セル14にセル割れが発生した。また、燃料電池スタック3の温度が下がったため、定格発電に復帰するまでに時間がかかった。
なお、上記実施例では、非常停止時の制御方法について記載したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、通常の停止動作における制御に対しても同様に適用することができる。
また、上記実施例では、炭化水素系の燃料ガスと水蒸気とを用いる燃料電池発電装置1について記載したが、水素ガスと窒素ガスを用いる燃料電池発電装置1においても同様に適用することができる。また、上記実施例では、シールレスタイプの燃料電池発電装置1について記載したが、シールタイプの燃料電池発電装置1においても、同様に適用することができる。
本発明は、固体酸化物型燃料電池発電装置において特に有効であるが、固体高分子型燃料電池発電装置、リン酸型燃料電池発電装置、溶融炭酸塩型燃料電池発電装置などの他の種類の燃料電池発電装置に対しても適用することが可能である。
1 燃料電池発電装置
2 燃料電池モジュール
3 燃料電池スタック
4 燃料改質器
5 制御手段
6 空気ブロア
7 燃料ガスブロア
8 水移送ポンプ
9 純水タンク
10 水蒸気発生器
11 空気極層
12 固体電解質層
13 燃料極層
14 発電セル
14a セル割れ
14b 酸化膜
15、16 端板
17 セパレータ
18 空気極集電体
19 燃料極集電体
2 燃料電池モジュール
3 燃料電池スタック
4 燃料改質器
5 制御手段
6 空気ブロア
7 燃料ガスブロア
8 水移送ポンプ
9 純水タンク
10 水蒸気発生器
11 空気極層
12 固体電解質層
13 燃料極層
14 発電セル
14a セル割れ
14b 酸化膜
15、16 端板
17 セパレータ
18 空気極集電体
19 燃料極集電体
Claims (9)
- 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段と前記酸化剤ガス供給手段とを制御する制御手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、
前記制御手段は、前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する、ことを特徴とする燃料電池発電装置。 - 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段と前記水蒸気供給手段と前記酸化剤ガス供給手段とを制御する制御手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置において、
前記制御手段は、前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段及び前記水蒸気供給手段を制御して、前記燃料ガス及び前記水蒸気の供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する、ことを特徴とする燃料電池発電装置。 - 前記第2の流量は、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池発電装置。
- 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置における非常停止時の制御方法であって、
前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する、ことを特徴とする非常停止時の制御方法。 - 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置における非常停止時の制御方法であって、
前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段及び前記水蒸気供給手段を制御して、前記燃料ガス及び前記水蒸気の供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する、ことを特徴とする非常停止時の制御方法。 - 前記第2の流量は、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量である、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の非常停止時の制御方法。
- 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段を制御して、前記燃料ガスの供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する制御手段として機能させる、ことを特徴とする制御プログラム。 - 空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が配設された発電セルがセパレータを挟んで積層された燃料電池スタックと、前記燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料ガスの供給経路に水蒸気を導入する水蒸気供給手段と、前記空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、を少なくとも備える燃料電池発電装置で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記燃料電池発電装置の運転を非常停止させる場合に、前記燃料ガス供給手段及び前記水蒸気供給手段を制御して、前記燃料ガス及び前記水蒸気の供給を停止させると共に、前記酸化剤ガス供給手段を制御して、前記酸化剤ガスの流量を、定格発電時の第1の流量よりも小さく、かつ、前記固体電解質層中の酸素が結晶格子から抜け出して結晶構造が変化しイオン導電体として動作しなくなる流量よりも大きい、第2の流量に設定する制御手段として機能させる、ことを特徴とする制御プログラム。 - 前記第2の流量は、前記固体電解質層が酸欠による結晶変化を起こさない最低流量である、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の制御プログラム。
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