JP2009242264A - 軽質オレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化水素原料を接触転換させて軽質オレフィンを製造する方法において、リンおよび希土類元素を含有するとともに、周期表10〜12族の元素の少なくとも一種を含有するゼオライトを触媒として用い、かつ、該ゼオライトに担持された10〜12族元素の粒子径が1nm以下であることを特徴とする軽質オレフィンの製造方法である。
【選択図】なし
Description
この触媒では、「実質的に酸性サイトをもたないように調製することが重要」としている(段落〔0013〕参照)。該特許文献によれば、プロピレンの収率はエチレンの収率よりも低い。
また、特許文献2には、実質的にプロトンを含まず、周期表IB族の元素(銀など)を含有させた触媒を用いて、ブテンの反応を行い、エチレン、プロピレンを製造する方法が開示されている。この触媒については、「IB族金属を対応する陽イオンの状態で含むこと」との記載がある(段落〔0031〕参照)。この触媒は、ゼオライト中のプロトン量(酸量)が、ゼオライト1グラムあたり0.02ミリモル以下であり、「実質的にプロトンを含まない」ことを特徴とする(段落〔0027〕参照)。該特許文献に記載のプロピレン収率は約20質量%である。
また、特許文献4および特許文献5には、銀あるいは銅と、リンで修飾したZSM−5型ゼオライトを触媒として、炭素数3〜10のパラフィンを主体とする炭化水素の接触反応によって、プロピレンが高収率(30〜60質量%)で得られることが記載されているが、ヘリウムガスで高希釈したパルス反応での結果であり、工業的に実施可能な反応条件で連続的にプロピレンが高収率で得られることは報告されていない。
なお、「周期表」の記載としては、上述の従来技術の記載では、引用した特許文献の例にしたがって、非特許文献1に記載の周期表の表記を参考に記載したが、以降の記述では、国際純正・応用化学連合(IUPAC:The International Union of Pure and Applied Chemistry)の周期表「IUPAC Periodic Table of the Elements,October 3th, 2005」にしたがって記載する。したがって、例えば上述の銀などの「IB族」は、IUPACの周期表では、「11族」となる。
〔2〕周期表10〜12族の元素が、銀、亜鉛、及びパラジウムの中から選ばれる少なくとも一種の元素である前記〔1〕に記載の軽質オレフィンの製造方法、
〔3〕ゼオライトがペンタシル型のゼオライトである前記〔1〕又は〔2〕に記載の軽質オレフィンの製造方法、
〔4〕ゼオライトが、MFI型構造のゼオライトである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法、
〔5〕炭化水素原料が、炭素数4以上の炭化水素類を10質量%以上含むものである前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法、
〔6〕炭化水素原料が、ブテン類であることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法、及び
〔7〕軽質オレフィンが、プロピレンを主成分とするものである前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法、
を提供するものである。
また、当該ゼオライトのSiO2/Al2O3比は25〜800、好ましくは40〜600であり、さらに好ましくは60〜300である。
本発明の触媒において、希土類元素の含有量は、ゼオライト中のアルミニウムに対し原子比で0.4〜20、好ましくは0.6〜5、さらに好ましくは1〜3であり、これらの値より含有量が少ない場合は副生成物である重質コークや芳香族が多くなり、含有量が多すぎる場合は触媒活性が低くなりプロピレン収率が低下する。一方、周期表10〜12族の元素の含有量は、その合計のモル数が、ゼオライト中のアルミニウムのモル数に対し、0.1〜20、好ましくは0.5〜10、さらに好ましくは1〜5であり、これらの値より含有量が少ない場合はプロピレンの生成量が低くなり、含有量が多すぎる場合は触媒活性が低くなる。また、このとき、担持された周期表10〜12族の元素は、ゼオライト上での粒子径を1nm以下となるように制御することが必要である。担持した後のこれらの粒子径が1nmよりも大きいと、触媒活性が著しく低下する。これらの金属の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは、粉末X線回折分析等で測定することができる。
本発明の接触転換反応の様式は特に限定しないが、固定床、移動床、流動床等の形式の反応器を使用し、上記の触媒を充填した触媒層へ炭化水素原料を供給することにより行われる。このとき炭化水素原料は、窒素、水素、ヘリウムあるいはスチーム等で希釈されていてもよい。反応温度は350〜780℃、好ましくは450〜650℃、さらに好ましくは500〜600℃の範囲である。780℃を越える温度でも実施できるが、メタンおよびコークの生成が急増する。また350℃以下では十分な活性が得られないため、一回通過あたりのプロピレン収量が少なくなる。反応圧力は常圧、減圧あるいは加圧のいずれでも実施できるが、通常は常圧からやや加圧が採用される。
以上のような条件下に本発明の方法を実施すれば、炭化水素原料から、軽質オレフィン特にプロピレンを選択的に製造することができる。
〔ゼオライト触媒の調製〕
ゼオライトとして粉末状のプロトン型ZSM−5ゼオライト(ケイ光X線分析で測定したSiO2/Al2O3比=60、比表面積350m2/g、粒子径150μm以下)100重量部を、硝酸銀を含む水溶液(1.575重量部の硝酸銀を脱イオン水1000重量部に溶解させたもの)に含浸し、40℃で2時間攪拌した。生成したスラリーを減圧下、40〜60℃で攪拌しながら約2時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中、120℃で8時間乾燥した後、マッフル炉内で4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた固体を粉砕し、さらに塩化ランタン水溶液(26.7質量部の塩化ランタン7水和物を脱イオン水1000質量部に溶解させたもの)に含浸し、硝酸銀水溶液に含浸したときと同様な操作で乾燥・焼成し、白色の固体を得た。それを乳鉢で粉砕し、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム17.1質量部を脱イオン水1000質量部に溶解させたもの)に含浸し、同様な操作で乾燥・焼成し、白色の固体を得た。それを乳鉢で粉砕し、さらにアルミナバインダー25質量部を加えて混練した後に、押出成型して直径1.6mm、長さ約2cmの円柱状の成型体とした(「触媒A」と呼称)。
得られた成型体(触媒A)は、ランタン:6.4質量%、リン:3.0質量%、銀:0.6質量%を含んでいた(蛍光X線分析法で定量、以下同様)。
観察の結果、銀に基づく明確な粒子は観測されず、またX線粉末回折分析でも銀粒子に基づくピークは観測されなかった(X線粉末回折分析は、リガク製RINT UltimaIII型X線回折装置を用い、Cu−Kα線によって測定範囲2θ=5〜80°、X線出力40kV、40mAの条件で測定した)。
これらのことから担持された銀の粒子径は1nm以下となっていることを確認した。
なお、フーリエ変換赤外分光分析は、非特許文献2に記載の方法に従い、日本分光株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−550型を使用して実施し、アンモニアTPD分析は、非特許文献3に記載の方法に従って日本ベル株式会社製のTPD−1−AT型を用いて測定した。
非特許文献3:ゼオライト、第21巻、第2号、45〜52頁(片田直伸、丹羽幹 著、2004年)
この触媒1gを内径10mmのステンレス製反応管(外径3mmの熱電対用内挿管付き)に充填した。触媒層の上下には石英砂を充填した。このリアクターに空気を40cm3/min(0℃、1気圧換算、以下同じ)で流しながら触媒層の温度を600℃まで昇温し、そのまま1時間前処理を行った。前処理終了後、触媒層の温度を550℃に保持し、原料として1−ブテンを6cm3/min、窒素およびスチームをそれぞれ20cm3/min、1.0g/hの流量で連続的に供給して、1−ブテンの接触転換反応を行った。
原料の供給を開始してから3時間後、活性が安定した時点で、反応器出口の生成物の分析をガスクロマトグラフィーにより行い、生成物収率および原料転化率を次式により算出した。
生成物収率(質量%)=(各成分重量/供給原料重量)×100 (式1)
原料転化率(%)=(1−未反応原料重量/供給原料重量)×100 (式2)
式(1)で算出したプロピレン収率は36.7質量%、式(2)で算出した原料転化率は72.0%であった。
反応生成物の分析結果を、第1表に示す。
〔ゼオライト触媒の調製〕
使用する硝酸銀の量を、7.875質量部とした他は、実施例1と同様にして、希土類、リンおよび銀を含有するゼオライト触媒(触媒B)を調製した。得られた触媒(触媒B)は、ランタン:6.4質量%、リン:3.0質量%、銀:3.0質量%を含んでいた。実施例1と同様な方法で透過型電子顕微鏡およびX線粉末回折分析で、銀の粒子径を調べたところ、観測された銀の粒子径は平均1.2nmであり、1nmよりも大きくなっていた。なお、透過型電子顕微鏡での粒子径の測定は、倍率10万倍で200nm×200nmの領域を3ヶ所以上観測し、その中から無作為に選んだ20nm×20nmの領域5ヶ所について、明瞭に観測可能な粒子の数と長軸方向の長さを、目視で計測して平均した。またX線粉末回折分析では、シェラー式を用いた。
比較例1の触媒は、実施例1と同様に、赤外分光分析では酸性プロトンに基づく吸収がみられ、アンモニアTPD法で測定した酸の量は、0.13mmol/gであった。
触媒Bを1g用い、実施例1と同じ条件で、1−ブテンの反応を行った。プロピレン収率は13.8質量%と低く、原料転化率も31.2%と低かった。
反応生成物の分析結果を、第1表に示す。
〔ゼオライト触媒の調製〕
硝酸銀1.575質量部に代えて、硝酸亜鉛6水和物13.65質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、希土類、リンおよび亜鉛を含有するゼオライト触媒(触媒C)を調製した。
得られた触媒(触媒C)は、ランタン:6.4質量%、リン:3.0質量%、亜鉛:1.6質量%を含んでいた。透過型電子顕微鏡およびX線粉末回折分析では、亜鉛に基づく明確な粒子は観測されず、担持された亜鉛の粒子径は1nm以下となっていることを確認した。実施例1と同様に、赤外分光分析では酸性プロトンに基づく吸収がみられ、アンモニアTPD法で測定した酸の量は、0.13mmol/gであった。
〔軽質オレフィンの製造実験〕
触媒Cを1g用い、実施例1と同じ条件で、1−ブテンの反応を行った。プロピレン収率は30.3質量%、原料転化率は66.7%であった。
反応生成物の分析結果を、第1表に示す。
〔ゼオライト触媒の調製〕
硝酸銀1.575質量部に代えて、硝酸パラジウム2.165質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、希土類、リンおよびパラジウムを含有するゼオライト触媒(触媒D)を調製した。
得られた触媒(触媒D)は、ランタン:6.2質量%、リン:3.1質量%、パラジウム:0.6質量%を含んでいた。透過型電子顕微鏡およびX線粉末回折分析では、パラジウムに基づく明確な粒子は観測されず、担持されたパラジウムの粒子径は1nm以下となっていることを確認した。また実施例1と同様に、赤外分光分析では酸性プロトンに基づく吸収がみられ、アンモニアTPD法で測定した酸の量は、0.29mmol/gであった。
〔軽質オレフィンの製造実験〕
触媒Dを1g用い、実施例1と同じ条件で、1−ブテンの反応を行った。プロピレン収率は31.8質量%、原料転化率は83.1%であった。
反応生成物の分析結果を、第1表に示す。
〔ゼオライト触媒の調製〕
実施例1と同様な方法で、塩化ランタンを用いずに、銀とリンのみで修飾したゼオライト触媒(触媒E)を調製した。
透過型電子顕微鏡およびX線粉末回折分析では、銀に基づく明確な粒子は観測されず、担持された銀の粒子径は1nm以下となっていることを確認した。実施例1と同様に、赤外分光分析では酸性プロトンに基づく吸収がみられ、アンモニアTPD法で測定した酸の量は、0.13mmol/gであった。
〔軽質オレフィンの製造実験〕
触媒Eを1g用い、実施例1と同じ条件で、1−ブテンの反応を行った。原料転化率は91.5%と高かったが、プロピレン収率は20.4質量%と低かった。
反応生成物の分析結果を、第1表に示す。
「C5」:ペンタン、ペンテン類、「C6+」は、炭素数6以上の生成物、
「その他軽質ガス」:水素および炭素数1〜4までの飽和炭化水素
Claims (7)
- 炭化水素原料を接触転換させて軽質オレフィンを製造する方法において、リンおよび希土類元素を含有するとともに、周期表10〜12族の元素の少なくとも一種を含有するゼオライトを触媒として用い、かつ、該ゼオライトに担持された10〜12族元素の粒子径が1nm以下であることを特徴とする軽質オレフィンの製造方法。
- 周期表10〜12族の元素が、銀、亜鉛、及びパラジウムの中から選ばれる少なくとも一種の元素である請求項1に記載の軽質オレフィンの製造方法。
- ゼオライトがペンタシル型のゼオライトである請求項1又は2に記載の軽質オレフィンの製造方法。
- ゼオライトが、MFI型構造のゼオライトである請求項1〜3のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法。
- 炭化水素原料が、炭素数4以上の炭化水素類を10質量%以上含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法。
- 炭化水素原料が、ブテン類であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法。
- 軽質オレフィンが、プロピレンを主成分とするものである請求項1〜6のいずれかに記載の軽質オレフィンの製造方法。
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