JP2009242147A - 樹脂成型材 - Google Patents

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Abstract

【課題】
樹脂アルミナ複合材中の繊維状アルミナの充填量を多くすると共に、充填された繊維間にネットワーク構造を形成して樹脂アルミナ複合材の熱伝導率を高くすること。
【解決手段】
300nm以下の結晶子径から成る繊維状アルミナ成型材にアルミナ前駆体を含浸せしめ、焼成することにより繊維状アルミナ表面及び繊維状アルミナ間に結晶子径300nm以下のアルミナ微結晶を形成し、よって、樹脂アルミナ複合材中におけるアルミナフィラ充填量を増加させることにより形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂中にアルミナを包含する樹脂アルミナ複合材に関する。特に、各種の電気および電子機器の発熱性部品から発生される熱を効率よく放熱するための放熱材として好適な樹脂アルミナ複合材に関する。
近年、電子機器の小型,高性能化に伴い、いかに放熱対策を講じるかが重要な課題となっている。そこで、樹脂を高熱伝導化するため、一般に熱伝導率の高い微粒子をフィラとして樹脂に添加する方法が用いられている。高熱伝導性の絶縁性樹脂を形成するために添加する電気絶縁性フィラとして、より熱伝導率の高いアルミナや窒化アルミナが良く用いられている。樹脂の高熱伝導率フィラ添加の効果はフィラの充填量を多くすると顕著に現れるが、フィラの充填量を多くすると樹脂の成形性,接着性等の悪化をもたらすため、実用的なフィラ充填量は多くても50〜60vol%程度である。
より少ないフィラの添加量でより大きなフィラ添加効果が得られる方法が求められている。その一つとして繊維状の構造を有するフィラを用いる方法が考えられる。形状が繊維状を有するのフィラを添加材として用いることにより、従来の球状フィラを添加剤として用いた場合に比べ、高熱伝導フィラによる連続構造が容易に形成でき、従来と同様のフィラ添加量でより大きな熱伝導率が期待できる。アルミナのような繊維状の高熱伝導フィラは硬く、脆いため所望の形に加工することが困難であり、特開昭59−397658号公報(特許文献1)に記載されているように、アルミナの純度を下げる、他の繊維と混合するなどの工夫が必要である。また、特開昭63−132045号公報(特許文献2)には、熱伝導率を下げる結果を回避するため、アルミナの純度を下げることや他の繊維と混合することをせず、加工性に優れるアルミナ前駆体を所望の形に加工した後、焼成することにより繊維状のアルミナを形成する方法が知られている。
特開昭59−39765号公報 特開昭63−132045号公報
上述のように、アルミナの純度を下げることや他の繊維と混合することは、熱伝導性の維持のため好ましくない。また、アルミナ前駆体を加工・焼成することは、前駆体が繊維状であり、焼成によりアルミナ前駆体が体積収縮することから、アルミナ/樹脂コンポジットを形成した場合、繊維状フィラの充填量に限界がある。また、充填された繊維間の接触が不十分であり、熱伝導が阻害され、樹脂アルミナ複合材でも熱伝導率を向上させることに限界がある。そこで本発明の目的は、アルミナの充填量を多くし、かつ熱伝導率を更に向上させる樹脂アルミナ複合材を提供することにある。
上記課題を解決する本発明の特徴は、請求項記載のとおりである。
繊維状アルミナから成るシート材等のアルミナ多孔質体前駆体にアルミナ結晶前駆体を含浸させ、焼成することにより繊維状アルミナ表面及び繊維状アルミナ間に300nm以下の結晶子径のアルミナ微結晶を形成せしめる。その結果、平均結晶子径が300nm以下のα−アルミナ結晶よりなる繊維の間にアルミナ結晶が成長し、アルミナ繊維間がアルミナ結晶で固着したネットワーク構造を有するアルミナ多孔質体ができる。このようなアルミナネットワーク構造を形成したアルミナ多孔質体により、樹脂成型物中におけるアルミナ充填量を増加させると共に、熱電導が向上する。
本発明の樹脂アルミナ複合材は、アルミナ多孔質体と、前記アルミナ多孔質体に含浸された樹脂組成物とを有する。アルミナ多孔質体は、結晶子径300nm以下のアルミナ微結晶よりなることが好ましい。繊維状のアルミナは成型し易い。また、アルミナ微結晶は繊維状のアルミナの表面に付着して、アルミナ多孔質体の体積あたりのアルミナの密度を高くして樹脂アルミナ複合材中のアルミナ充填量を多くし、また繊維状アルミナの繊維間を接合してネットワーク構造を形成することで、樹脂アルミナ複合材としたときの高い熱伝導率を達成する。
アルミナ多孔質体は、繊維状のαアルミナの集合体よりなる繊維状アルミナシートにアルミナ前駆体溶液を含浸させ、繊維状アルミナシートを乾燥させた後焼成することにより作成する。また、繊維状アルミナシートは、繊維形状のアルミニウム化合物などのアルミナ前駆体繊維をシート状に成型し、焼成することによりアルミニウム化合物がαアルミナとなり、作成できる。樹脂アルミナ複合材は、アルミナ多孔質体に樹脂組成物を含浸させ、成型して硬化して作成する。
本発明によれば、アルミナの充填率を増加させると共に、充填された繊維間にネットワーク構造を形成して熱伝導率を向上させ、かつ所望の形状に成型できる樹脂アルミナ複合材を提供することができる。
本発明の樹脂アルミナ複合材用のアルミナ多孔質体は、下記の工程により製造される。
(1)アルミナ前駆体繊維をシート状に形成,焼成することにより繊維状アルミナシート など、α−アルミナ多孔質体の前駆体を形成する工程
(2)繊維状アルミナシートなどのアルミナ多孔質体前駆体に、アルミナ前駆体溶液を含 浸,乾燥,焼成することによりアルミナ多孔質体を形成する工程
(3)アルミナ多孔質体に樹脂を含浸させることにより樹脂アルミナ複合材を形成する工 程
このように形成した樹脂アルミナ複合材は、所望の形状を容易に達成するとともに、熱電導率が高い。
繊維状アルミナシートを製造するためのアルミナ前駆体繊維としては、焼成によりアルミナ繊維を形成しうる繊維状のアルミナ前駆体化合物を用いる。アルミナ前駆体繊維をシート状、その他の形状に成型しておき、焼成することによりα−アルミナ繊維よりなる繊維状アルミナシートなどの自由な形状の繊維状アルミナ集合体を得られる。
アルミナ前駆体繊維をシート状に形成する方法としては種々考えられるが、例えばアルミナ前駆体繊維の分散液を吸引濾過などにより処理し、圧縮することにより、シート状に成型することができる。また、セルロースファイバ等、焼成により焼失する有機物繊維の分散液を吸引濾過などにより処理し、圧縮,シート状に成型した後、表面にアルミナ前駆体を付着させることによってもアルミナ前駆体繊維をシート状に形成することが可能である。形成したアルミナ前駆体シートをα化する温度で焼成し、α−アルミナ繊維よりなるアルミナシートとする。繊維状アルミナシートのアルミナ繊維径は、元のアルミナ前駆体繊維よりも細くなり、300nm以下であることが好ましい。繊維状アルミナシートの繊維の間が十分に離隔していることにより、繊維状アルミナシートの内部にアルミナ前駆体溶液が入り込むようにするためである。
アルミナ前駆体繊維としては、たとえば、繊維状ベーマイト,塩基性塩化アルミニウム,塩基性硫酸アルミニウム,塩基性炭酸アルミニウム等を用いることができる。繊維状ベーマイト,塩基性塩化アルミニウム,塩基性硫酸アルミニウム、塩基性炭酸アルミニウム等の化合物は繊維状の構造を有し、1000℃〜1500℃で焼成することにより300nm以下の結晶子径を有する繊維状のα−アルミナを形成することができる。
上述のようにこの繊維状アルミナ集合体はシート形状に限らない。アルミナ前駆体繊維は、目的とする樹脂アルミナ複合材の形状にあわせて、所望の形状として使用することができる。
繊維状アルミナシートのアルミナ繊維の表面にアルミナを付し、また繊維間をアルミナで結合させてアルミナ多孔質体を形成する場合、アルミナ前駆体の溶液を用いる。アルミナ前駆体は、焼成によりα−アルミナを形成しうる化合物であればよい。例えばアルミニウム塩,アルミニウムアルコキシド,アルミニウムキレートを用いることができる。これらは単独または2種以上の混合物として用いることもできる。
アルミニウム塩としては、例えば硝酸アルミニウム,硝酸アンモニウムアルミニウム,塩化アルミニウム,硫酸アルミニウム,アンモニウム明礬,炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム無機塩,シュウ酸アルミニウム,酢酸アルミニウム,ステアリン酸アルミニウム,乳酸アルミニウム,ラウリン酸アルミニウムなどのアルミニウム有機塩を用いることができる。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えばアルミニウムイソプロポキシド,アルミニウムエトキシド,アルミニウムsec−ブトキシド,アルミニウムtert−ブトキシドなどを用いることができる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート),アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート),アルミニウムトリス(アセチルアセテート),トリス(サリチルアルデヒド)アルミニウム等を用いることができる。
繊維状アルミナシートにアルミナ前駆体溶液を含浸させ、α−アルミナ結晶を生ぜしめる温度で焼成する。1000℃〜1500℃程度で焼成させることが望ましい。繊維状アルミナシートを構成するα−アルミナ結晶が種結晶となり、アルミナ前駆体溶液からも同じくらいの大きさの結晶ができるが、焼成温度が高すぎたり時間が長すぎると、生成するα−アルミナ結晶が成長する。平均結晶子径が300nm以上になると、アルミナ多孔質体の繊維状の形態を維持できず、多孔質体が壊れやすくなる。その結果、アルミナ結晶による繊維状の熱伝導パスが切断され熱伝導率低減の原因となる。平均結晶子径とは、結晶子径の平均値を意味するものとし、粉末X線回折法により得られた回折パターンにおけるアルミナのピーク(2θ=25.5゜)における半価幅からシェラー式により算出される結晶子径、または透過電子顕微鏡写真から、任意の50個の結晶における、各結晶の長軸と短軸との長さをもとめ、その相加平均により定めるものとする。
また、α−アルミナ結晶繊維の繊維径が300nm以上であると、アルミナ繊維間に樹脂が含浸しにくい空隙が生じ、樹脂含浸によるコンポジット形成の際に、樹脂が含浸されずに空孔となってしまう部分が生じ、熱伝導率低減の原因となる。
アルミナ多孔質体と、樹脂より形成した樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は80vol%以下であることが望ましい。80vol%以上であるとアルミナ多孔質体の繊維間のネットワーク形成が不十分であり、熱伝導率の異方性が大きくなってしまう。
なお、アルミナ前駆体繊維をシート状に形成,焼成して繊維状アルミナシートを形成する工程や、繊維状アルミナシートにアルミナ前駆体溶液を含浸,乾燥する工程はそれぞれ一回ずつでも良いが、繰り返し行うことによりアルミナの含有量を増加させ、樹脂アルミナ複合材の熱伝導率を高くすることが可能である。
アルミナ多孔質体に樹脂を含浸させることにより樹脂アルミナ複合材を形成する工程に用いる樹脂は特に制限されるものではなく、不飽和ポリエステル,エポキシ,ポリイミド,フェノールなどの熱硬化性樹脂,ポリアミド,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリスルホンなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。また、シリコーングリースなども用いることもできる。
樹脂アルミナ複合材はプリプレグとして用いることもできる。プリプレグは、繊維材等の基材に樹脂を含浸し、樹脂の一部を反応させたシートをいう。複数枚のプリプレグを積層して完全に硬化し、積層板として使用することができる。プリプレグ用の樹脂としては熱硬化性樹脂を用いる。中でも、エポキシ樹脂を用いることが望ましい。エポキシ樹脂用の硬化剤は、アミン化合物やその誘導体,脂環式酸無水物,脂肪族酸無水物,芳香族酸無水物,イミダゾールやその誘導体,フェノール類又はその化合物や重合体などを用いることができる。また、これらを2種類以上併用しても良い。
実施例1では、アルミナ前駆体繊維として、繊維状の塩基性硫酸アルミニウム結晶を使用した。
繊維状の塩基性硫酸アルミニウム結晶の分散液を吸引濾過,圧縮することにより塩基性硫酸アルミニウムシートを形成する。形成した塩基性硫酸アルミニウムシートを乾燥させた後、1200℃/4時間焼成させα化し、繊維状α化アルミナシートを得た。
硝酸アルミナに水を加え飽和水溶液にしてアルミナ前駆体溶液とした。繊維状α化アルミナシートをアルミナ前駆体溶液に浸し、繊維状アルミナシートの繊維間にアルミナ前駆体を含浸させた後、100℃で乾燥させた。さらにもう一度、アルミナ前駆体溶液を含浸させ、100℃で乾燥させた。その後、1200℃で4時間焼成させ、アルミナ前駆体をα化した。その結果、α−アルミナ多孔質体が得られる。得られたアルミナ多孔質体は結晶子径85nmのα−アルミナであった。
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製:エピコート828),硬化剤(日立化成工業製:MHAC−P),触媒(四国化成製:2E4MZ−CN)からなる樹脂組成物に、形成したα−アルミナ多孔質体を浸し、減圧にすることによりアルミナ多孔質体の孔内に樹脂を含浸させた。樹脂を含浸させたアルミナ多孔質体を120℃/1時間,140℃/1時間,180℃/1時間加熱することによりエポキシ樹脂を硬化させ、樹脂アルミナ複合材とした。得られた樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は70vol%であった。
Xeフラッシュ法にて、樹脂アルミナ複合材の熱伝導率を計測したところ、面内方向の熱伝導率は5.3W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は4.3W/m・Kであった。
実施例1と同様に、α−アルミナ多孔質体を形成した。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製:エピコート828),硬化剤(日立化成工業製:MHAC−P),触媒(四国化成製:2E4MZ−CN)からなる樹脂組成物にアルミナ多孔質体を浸し、減圧にすることによりアルミナ多孔質体の孔内に樹脂を含浸させた。樹脂を含浸させたアルミナ多孔質体を120℃/1時間で半硬化してプリプレグを作成した。
面圧10MPa,180℃で60分間プレスして、二枚のプリプレグを一体化した積層板を作成するとともに、樹脂組成物を完全に硬化した。NETZSCH(Bruker),nanoflash LFA447を用いて、Xeフラッシュ法にて熱伝導率を計測したところ、面内方向の熱伝導率は5.0W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は4.1W/m・Kであった。プリプレグを積層することにより、アルミナ多孔質体の間に薄い樹脂層が形成され、単層の場合と比して熱伝導率を低下させているが、積層板として高い熱電導率を達成した。
実施例3は、実施例1よりもアルミナ多孔質体の結晶子径を大きく成長させた例である。
実施例1と同様の方法により繊維状アルミナシートを得た。硝酸アルミナに水を加え飽和水溶液にしてアルミナ前駆体溶液とした。繊維状アルミナシートをアルミナ前駆体溶液に浸し、繊維間にアルミナ前駆体を含浸させた後、100℃で乾燥させた。さらに2回アルミナ前駆体溶液を含浸させ、100℃で乾燥させた後、1200℃/4時間焼成させα化した。得られたアルミナ多孔質体は結晶子径96nmのα−アルミナであった。
形成したアルミナ多孔質体に、実施例1と同様に樹脂を含浸,硬化させた。得られた樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は63vol%であった。熱伝導率をXeフラッシュ法にて計測したところ、面内方向の熱伝導率は8.2W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は6.5W/m・Kであった。このようにアルミナ多孔質体の結晶を大きくすることで、熱電導率を向上させることができた。
実施例3と同様に形成したアルミナ多孔質体を、実施例2と同様に樹脂を含浸させて成型し、積層板を作成した。熱伝導率をNETZSCH(Bruker),nanoflash LFA447を用いてXeフラッシュ法にて計測したところ、面内方向の熱伝導率は7.7W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は6.1W/m・Kであった。
〔比較例1〕
実施例1と同様に繊維状アルミナシートを形成し、アルミナ前駆体溶液を含浸させ、100℃で乾燥させた後、1500℃/4時間焼成させα化した。得られたアルミナ多孔質体は結晶子径425nmのα−アルミナであり繊維形状は維持されていなかった。高温で長時間焼成したため、大きい粒子の集合体となり、また多孔質体が一部壊れた。
形成したアルミナ多孔質体に実施例1と同様にエポキシ樹脂を含浸させ、樹脂アルミナ複合材を得た。得られた樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は70vol%であり、熱伝導率をNETZSCH(Bruker),nanoflash LFA447を用いてXeフラッシュ法にて計測したところ、面内方向の熱伝導率は3.1W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は2.2W/m・Kであり、同様なアルミナ含有量である実施例1で形成した樹脂アルミナ複合材に比べ小さい値であった。アルミナ多孔質体のアルミナ結晶間のネットワークが維持されないことにより、熱伝導率が低下している。
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法により繊維状α化アルミナシートを得た。得られた繊維状アルミナシートは結晶子径73nmのα−アルミナであった。繊維状アルミナシートにエポキシ樹脂に浸し、減圧にすることにより樹脂を含浸させた。樹脂含浸アルミナを120℃/1時間,140℃/1時間,180℃/1時間加熱することによりエポキシ樹脂を硬化させた。得られた樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は90vol%であり、熱伝導率をNETZSCH(Bruker),nanoflash LFA447を用いてXeフラッシュ法にて計測したところ、面内方向の熱伝導率は1.3W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は0.7W/m・Kであり、実施例1,3に比べ熱伝導率が低く、実施例1,3に比べ熱伝導異方性が大きい材料となってしまっている。
アルミナ前駆体繊維は、焼成することによりα−アルミナとなり熱伝導率が上昇するものの、焼成による体積収縮で繊維径が細く、密度が低くなる。従って、複合材とした場合に、アルミナの充填量は10%程度であり、アルミナの高充填は困難である。また、繊維間にアルミナが析出しておらず、ネットワークが形成されていない。従って、アルミナ繊維方向の熱伝導率と比して、その垂直方向の熱伝導率が低い結果となる。
〔比較例3〕
実施例1と同様の方法により繊維状アルミナシートを得た。硝酸アルミナに水を加え飽和水溶液にしてアルミナ前駆体とした。アルミナ前駆体溶液を1/5に希釈した後、繊維状アルミナシートをアルミナ前駆体溶液に浸し、繊維間にアルミナ前駆体を含浸させた後、100℃で乾燥させた。さらにアルミナ前駆体溶液を含浸させ、100℃で乾燥させた後、1200℃/4時間焼成させα化した。得られたアルミナ多孔質体は結晶子径75nmのα−アルミナであった。
形成したアルミナ多孔質体を、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製:エピコート828),硬化剤(日立化成工業製:MHAC−P),触媒(四国化成製:2E4MZ−CN)からなる樹脂に浸し、減圧にすることによりアルミナ多孔質体の孔内に樹脂を含浸させた。樹脂含浸アルミナを120℃/1時間,140℃/1時間,180℃/1時間加熱することによりエポキシ樹脂を硬化させた。得られた樹脂アルミナ複合材の樹脂含有量は87vol%であり、熱伝導率をXeフラッシュ法にて計測したところ、面内方向の熱伝導率は1.9W/m・Kであり、膜厚方向の熱伝導率は1.1W/m・Kであった。実施例1,3に比べ熱伝導率が低く、実施例1,3に比べ熱伝導異方性が大きい。
上記樹脂アルミナ複合材の性能について、樹脂アルミナ複合材の樹脂含有率,アルミナの結晶子径,樹脂アルミナ複合材の熱伝導率を以下の表1にまとめる。
Figure 2009242147
本発明は、高熱伝導材料に関する技術分野に適用できる。
樹脂アルミナ複合材の形成方法を示す図である
符号の説明
1 アルミナ前駆体繊維
2 焼成(α化)
3 α−アルミナ繊維よりなる繊維状アルミナシート
4 アルミナ前駆体溶液の含浸−焼成(α化)
5 アルミナ多孔質体
6 樹脂含浸
7 樹脂
8 アルミナ複合材

Claims (8)

  1. アルミナ多孔質体と、前記アルミナ多孔質体に含浸された樹脂組成物とよりなる樹脂アルミナ複合材であって、前記樹脂アルミナ複合材中の前記樹脂組成物の割合が80vol%以下であり、前記アルミナ多孔質体は、α−アルミナ結晶からなり、前記結晶の平均結晶子径が300nm以下であることを特徴とする樹脂アルミナ複合材。
  2. 請求項1に記載された樹脂アルミナ複合材であって、
    前記樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする樹脂アルミナ複合材。
  3. 請求項1に記載された樹脂アルミナ複合材であって、
    前記樹脂組成物は半硬化物であることを特徴とする樹脂アルミナ複合材。
  4. 基材と、樹脂組成物とよりなる複合材を複数枚積層した積層板であって、
    少なくとも一の複合材として請求項1に記載された樹脂アルミナ複合材を用いたことを特徴とする積層板。
  5. 平均結晶子径が300nm以下のα−アルミナ結晶の集合体よりなり、アルミナ結晶よりなる繊維間がアルミナ結晶で結合したネットワーク構造を有することを特徴とするアルミナ多孔質体。
  6. アルミナ前駆体よりなる繊維の集合体を焼成して繊維状のα−アルミナよりなる繊維状アルミナシートを製造し、前記繊維状アルミナシートにアルミナ前駆体溶液を含浸させた後焼成してアルミナ多孔質体を製造し、前記アルミナ多孔質体に樹脂組成物を含浸させることを特徴とする樹脂アルミナ複合材の製造方法。
  7. 請求項6記載の樹脂アルミナ複合材の製造方法であって、
    前記アルミナ前駆体溶液は、アルミニウム塩,アルミニウムアルコキシド,アルミニウムキレートの少なくともいずれかを含むことを特徴とする樹脂アルミナ複合材の製造方法。
  8. アルミナ前駆体よりなる繊維の集合体を焼成して繊維状のα−アルミナよりなる繊維状アルミナシートを製造し、前記繊維状アルミナシートにアルミナ前駆体溶液を含浸させ、乾燥させた後1000℃〜1500℃で焼成することを特徴とするアルミナ多孔質体の製造方法。
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