JP2009241191A - 超音波振動子を備えた切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波振動子と切削砥石とを備えた切削工具において、超音波振動子において発生した振動が切削砥石に充分伝達されるようにして切削を円滑に行う。
【解決手段】基台10に超音波振動子13を備えると共に外周に切削砥石11が形成され、被挟持部10cにおいてフランジによって挟持されて固定され回転可能な切削工具1において、基台10の被挟持部10cと超音波振動子13との間に2条の貫通孔14、15を同心円状に設けることにより、振動を抑制する力を大幅に解放すると共に超音波振動の径方向の振幅を略均等化することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種被加工物を切削する切削工具に関するものである。
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画されて複数形成されたウェーハは、外周に切削砥石を備えた切削工具を高速回転させて分割予定ラインに切り込ませて切削することにより個々のデバイスに分割される。
ところが、サファイヤ、SiC等の難削材については、単に切削工具を切り込ませるだけでは切削が円滑に行われないという問題がある。そこで、切削工具を超音波によって径方向に振動させ、切削工具の回転と共に径方向の振動も利用して、切断や溝入れ等の加工が行われている(例えば特許文献1参照)。
特開2004−291636号公報
しかし、上記の切削工具は、両側からフランジによって挟持されナットによって回転軸に固定されるため、超音波振動子から発生する超音波振動が切削砥石に充分に伝達されず、被切削物、特に難削材を円滑に切削することができないという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、外周に切削砥石を備えると共に超音波振動子による振動が可能な切削工具において、超音波振動子において発生した振動が切削砥石に充分伝達されるようにして切削を円滑に行うことにある。
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段とを少なくとも備えた切削装置において使用される切削工具に関するもので、該切削手段は、スピンドルと、該スピンドルの端部に備えた切削工具取付部とを含み、該切削工具取付部は、該スピンドルに固定された固定フランジと、該固定フランジから突出し先端部に雄ネジが形成された支持軸と、該支持軸に係合する開口部を有する着脱フランジと、該着脱フランジと一体または別体に形成され前記雄ネジに螺着し該着脱フランジを締結するナットとから構成され、該切削工具は、基台と、該基台の外周に形成された切削砥石と、該基台に備えた超音波振動子と、該基台の中心部に形成され該支持軸に係合する係合孔と、該固定フランジと該着脱フランジとで挟持される被挟持部と、該被挟持部と該超音波振動子との間に第一の同心円領域に等間隔に形成された2個以上の第一の隔壁によって規制される第一の貫通孔と、該第一の同心円領域より大径の第二の同心円領域に該第一の隔壁と連接する該第一の隔壁の中央部に形成された該第一の隔壁と同数の第二の隔壁によって規制される第二の貫通孔とから構成されることを特徴とする。
本発明では、切削工具の基台における被挟持部と超音波振動子との間に第一と第二の貫通孔とを同心円状に形成したことにより、超音波による振動を抑制する力が大幅に解放されるため、貫通孔が形成されていない従来の切削工具と比較して、超音波振動の径方向の振幅を略均等に大きくすることができ、円滑な切削が可能となる。
図1に示す切削工具1は、円形に形成された基台10の外周部に切削砥石11が形成されて構成される。基台10の中心部には、回転軸に係合させるための係合孔12が形成されており、図1及び図2に示すように、基台10の両面には環状の超音波振動子13が埋め込まれている。超音波振動子13としては、チタン酸バリウム(BaTio)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O)、リチウムタンタレート(LiTaO)等を用いることができる。
係合孔12と超音波振動子13との間には、基台10の表裏を貫通する第一の貫通孔14と第二の貫通孔15とが形成されている。これら第一及び第二の貫通孔14、15は、回転時の回転バランスがとれるように2以上形成される。特に、第一の貫通孔14は、第一の同心円領域14aにおいて等間隔に形成された2個以上の第一の隔壁10aによって規制されて等間隔に2個以上の貫通孔が対称的に形成され、第二の貫通孔15も同様に第一の同心円領域14aより大径の第二の同心円領域15aに第一の隔壁10aと隣接する第一の隔壁10aの中央部に形成された第一の隔壁10aと同数の第二の隔壁10bによって規制されて等間隔に2個以上の貫通孔が対称的に形成される。
この場合に、第一及び第二の貫通孔14、15は、それぞれ同心円状に弧状を呈する不連続で複数の貫通孔とするものであって、図示の実施例では6個の不連続な弧状の貫通孔を示してあるが、これに限定されることなく、回転バランスがとれるように2個以上複数個設けられ、第一の貫通孔14と第二の貫通孔15とが相互に位置的(角度的)に重なり合わないようにずらした状態、即ち、複数形成される第一の隔壁10aと第二の隔壁10bとが一致しないように角度的にバランス良くずらして形成するものである。つまり、係合孔12と超音波振動子13との間の基台10に、弧状を呈する不連続な複数の貫通孔を同心円状に少なくとも2条形成したものであれば良いのである。
図1及び図2に示した切削工具1は、例えば図3に示す切削装置2において用いられる。この切削装置2は、被加工物を保持してX軸方向に移動可能なチャックテーブル20と、被加工物を切削するY軸方向及びZ軸方向に移動可能な切削手段21とを備えており、図1及び図2に示した切削工具1は、切削手段21に搭載される。
この切削装置2では、被加工物Wは、例えば粘着テープTに貼着され、粘着テープTがリング状のフレームFの開口部を塞ぐように貼着されることにより、被加工物Wが粘着テープTを介してフレームFと一体となった状態となる。そして、その状態で被加工物Wがチャックテーブル20に保持され、チャックテーブル20がX軸方向に移動すると共に切削手段21がY軸方向及びZ軸方向に移動しながら被加工物Wに作用することにより、被加工物Wが切削される構成となっている。
図4に示すように、切削手段21においては、スピンドルハウジング22によってスピンドル23が回転可能に支持されている。スピンドル23には、先端部に向けて小径となるテーパー部23aが形成されており、テーパー部23aの先端側には、雄ネジ部23bが形成されている。
スピンドル23には、まず、給電部24が挿入される。給電部24では、環状の給電コイル24aを枠体24bの内部に備えており、枠体24bの外側には、給電コイル24aと接続された2つの端子24cを備えている。この給電部24は、ネジ止め部24dにおいてネジ止めによりスピンドルハウジング22に固定される。
給電部24がスピンドル23に挿入されてスピンドルハウジング22に固定されると、次に、固定フランジ25がスピンドル23に挿入される。固定フランジ25は、スピンドル23と係合する孔25aと、切削工具1の一方の面を支持する壁部25bとを備えており、壁部25bにおいては電極25cが露出している。
また、固定フランジ25からは、スピンドル23と同方向の軸心を有する支持軸26が突出して形成されている。支持軸26の先端部には雄ネジ26aが形成されている。
図5に示すように、固定フランジ25の壁部25bの裏側には、環状の受電コイル25dを備えている。固定フランジ25がスピンドル23に挿入されると、図4に示した孔25aがスピンドル23のテーパー部23aと係合し、給電コイル24aと受電コイル25dとが非接触の状態で対面してロータリートランスが構成される。
給電部24及び固定フランジ25がスピンドル23に挿入されると、次に、図4に示す固定ナット27が雄ネジ部23bに螺着され、図6に示すように、固定フランジ25がスピンドル23に固定される。
図6に示すように、固定フランジ25には、切削工具1が挿入される。次に、着脱フランジ28の開口部28aを支持軸26に挿入し、ナット29を雄ネジ26aに螺着すると、図7に示すように、切削手段21が構成される。すなわち、固定フランジ25と支持軸26と着脱フランジ28とナット29とは、図6に示すように、切削工具取付部30として機能するものである。なお、着脱フランジ28とナット29とを一体に形成したものでも良い。
図7に示すように、給電部24に形成された2つの端子24cは、交流電源31に接続されている。また、交流電源31における周波数は、周波数変換器32において設定可能となっている。図7のように切削手段21が構成された状態では、図4及び図6に示した2つの電極25cから超音波振動子13に対して交流電力が伝達可能な状態となる。周波数変換器32としては、例えば株式会社エヌエフ回路設計ブロックが提供するデジタルファンクションジェネレータ「DF-1905」を使用することができる。このデジタルファンクションジェネレータによれば、DC〜500[kHz]までの調整が可能である。
図7及び図8に示すように、少なくとも着脱フランジ28は、切削工具1の基台10に形成された第一の貫通孔14と第二の貫通孔15とを塞がない位置において基台10に当接している。したがって、図1及び図6に示すように、基台10のうち、着脱フランジ28が当接して固定フランジ25との間で挟持される部位は、被挟持部10cとなっており、超音波振動子13と被挟持部10cとの間に第一貫通孔14と第二の貫通孔15とが同心円状に位置する。
図7及び図8に示した切削手段21において、周波数変換器32において周波数を設定して交流電源31から交流電圧を印可すると、図4及び図5に示した給電コイル24aに流れる電流によって受電コイル25dに起電力が生じ、電極25cからその電力が出力されて超音波振動子13が振動する。そうすると、その振動が切削砥石11に伝わり、切削砥石11が径方向に超音波振動する。
図6に示したように、切削工具1は、固定フランジ25及び着脱フランジ28によって挟持されて固定されているため、超音波振動子13が振動しても、固定フランジ25及び着脱フランジ28によって切削工具1の振動を抑制する力が働くが、切削工具1には不連続な孔群からなる第一の貫通孔14と第二の貫通孔15とが同心円状に位置をずらして形成されているため、これら2条の貫通孔14、15によって、振動を抑制する力を大きく解放する。したがって、基台10の外周部に形成された切削砥石11に超音波振動が充分に伝達され、このような2条の貫通孔が形成されていない切削工具と比較して、切削工具1の径方向の振幅がさらに大幅に大きくなる。
超音波振動子13としてチタン酸ジルコン酸鉛で形成されたものを使用し、貫通孔が形成されていない切削工具と、図1等に示した第一及び第二の貫通孔14、15が形成されている切削工具1とで、同一周波数、同一電圧の超音波を使用して、それぞれの切削工具の切削砥石の振幅を計測した。貫通孔が形成されていない切削工具の振幅を表1に示し、第一及び第二の貫通孔14、15が形成されている切削工具1の振幅を表2に示す。表中の数値は、交流電圧の実効値を150[Vrms]、周波数を50[kHz]としたときの計測値である。
表1
Figure 2009241191
表2
Figure 2009241191
上記表1及び表2から、2条の貫通孔14、15を設けた切削工具1では、貫通孔を設けていない従来の切削工具の約30倍以上で全体的に均等化した振幅を得られることが確認された。
切削工具の一例を示す斜視図である。 切削工具の一例を示す断面図である。 切削装置の一例を示す斜視図である。 切削手段を構成するスピンドル、給電部、固定フランジ及び固定ナットを示す斜視図である。 固定フランジを示す斜視図である。 切削手段を構成するスピンドル、切削工具取付部及び切削工具を示す斜視図である。 切削手段と交流電源との接続状態を示す斜視図である。 切削手段を略示的に示す断面図である。
符号の説明
1:切削工具
10:基台 10a:第一の隔壁 10b:第二の隔壁 10c:被挟持部
11:切削砥石 12:係合孔 13:超音波振動子 14:第一の貫通孔
14a:第一の同心円領域 15:第二の貫通孔 15a:第二の同心円領域
2:切削装置
20:チャックテーブル
21:切削手段
22:スピンドルハウジング 23:スピンドル
24:給電部 24a:給電コイル 24b:枠体 24c:端子 24d:ネジ止め部
25:固定フランジ 25a:孔 25b:壁部 25c:電極 25d:受電コイル
26:支持軸 26a:雄ネジ
27:固定ナット
28:着脱フランジ 29:ナット 30:切削工具取付部
31:交流電源 32:周波数変換器

Claims (1)

  1. 被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段とを少なくとも備えた切削装置において使用される切削工具であって、
    該切削手段は、スピンドルと、該スピンドルの端部に備えた切削工具取付部とを含み、 該切削工具取付部は、該スピンドルに固定された固定フランジと、該固定フランジから突出し先端部に雄ネジが形成された支持軸と、該支持軸に係合する開口部を有する着脱フランジと、該着脱フランジと一体または別体に形成され前記雄ネジに螺着して着脱フランジを締結するナットとから構成され、
    該切削工具は、基台と、該基台の外周に形成された切削砥石と、該基台に備えた超音波振動子と、該基台の中心部に形成され該支持軸に係合する係合孔と、該固定フランジと該着脱フランジとで挟持される被挟持部と、該被挟持部と該超音波振動子との間に第一の同心円領域に等間隔に形成された2個以上の第一の隔壁によって規制される第一の貫通孔と、
    該第一の同心円領域より大径の第二の同心円領域に該第一の隔壁と隣接する該第一の隔壁の中央部に形成された該第一の隔壁と同数の第二の隔壁によって規制される第二の貫通孔とから構成されている切削工具。
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