JP2009239083A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】非極性面または半極性面を成長主面としたIII族窒化物半導体を用いて、発光効率の向上された半導体発光素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザダイオード70は、基板1と、この基板1上に形成されたIII族窒化物半導体積層構造2とを含む。基板1は、m面を主面としたGaN単結晶基板である。III族窒化物半導体積層構造2が結晶成長させられている。III族窒化物半導体積層構造2は、n型半導体層11、発光層10、およびp型半導体層12を積層して構成されている。発光層10は、InGaN量子井戸層とAlGaN障壁層とを積層した多重量子井戸構造を有している。AlGaN障壁層は、InGaN量子井戸層の圧縮応力を緩和する歪み補償層として機能する。
【選択図】図1

Description

この発明は、III族窒化物半導体を用いた半導体発光素子(発光ダイオード、レーザダイオード等)に関する。
III族窒化物半導体とは、III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体である。窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)が代表例である。一般には、AlXInYGa1-X-YN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦X+Y≦1)と表わすことができる。
青色や緑色といった短波長のレーザ光源は、DVDに代表される光ディスクへの高密度記録、画像処理、医療機器、計測機器などの分野で活用されるようになってきている。このような短波長レーザ光源は、たとえば、GaN半導体を用いたレーザダイオードで構成されている。
GaN半導体レーザダイオードは、c面を主面とする窒化ガリウム(GaN)基板上にIII族窒化物半導体を有機金属気相成長法(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)によって成長させて製造される。より具体的には、GaN基板上に、有機金属気相成長法によって、n型GaNコンタクト層、n型AlGaNクラッド層、n型GaNガイド層、発光層(活性層)、p型GaNガイド層、p型AlGaNクラッド層、p型GaNコンタクト層が順に成長させられ、これらの半導体層からなる半導体積層構造が形成される。発光層では、n型層から注入される電子とp型層から注入される正孔との再結合による発光が生じる。その光は、n型AlGaNクラッド層およびp型AlGaNクラッド層の間に閉じ込められ、半導体積層構造の積層方向と垂直な方向に伝搬する。その伝搬方向の両端に共振器端面が形成されており、この一対の共振器端面間で、誘導放出を繰り返しながら光が共振増幅され、その一部がレーザ光として共振器端面から出射される。
T. Takeuchi et al., Jap. J. Appl. Phys. 39, 413-416, 2000
半導体レーザダイオードの重要な特性の一つは、レーザ発振を生じさせるための閾値電流(発振閾値)である。この閾値電流が低いほど、エネルギー効率の良いレーザ発振が可能になる。
ところが、c面を主面として成長された発光層から生じる光はランダム偏光であるため、TEモードの発振に寄与する光の割合が少ない。そのため、レーザ発振の効率が必ずしもよくなく、閾値電流を低減するうえで、改善の余地がある。
そこで、m面等の非極性面を主面とするレーザダイオードが提案されている。たとえば、m面を結晶成長主面とするIII族窒化物半導体積層構造でレーザダイオードを作製すると、発光層は、m面に平行な偏光成分(より具体的にはa軸方向の偏光成分)を多く含む光を発生する。これにより、発光層で生じた光のうち、多くの割合をレーザ発振に寄与させることができるので、レーザ発振の効率が良くなり、閾値電流を低減することができる。
その他、発光層が量子井戸構造(より具体的にはInを含むもの)からなる場合に、量子井戸での自発圧電分極によるキャリアの分離が抑制されるので、これによっても、発光効率が増加する。さらに、m面を結晶成長の主面とすることで、結晶成長を極めて安定に行うことができ、c面やその他の結晶面を結晶成長の主面とする場合に比較して、結晶性を向上することができる。その結果、高性能のレーザダイオードの作製が可能になる。
一方、発光波長を450nm以上の長波長とするには、量子井戸層のIn組成を増大させる必要がある。また、光閉じ込めのためにクラッド層とガイド層との間の屈折率差を確保するために、ガイド層にはInGaN層を適用する必要がある。
ところが、m面GaN層上にInGaN量子井戸層およびInGaNガイド層をコヒーレントに成長させると、これらの層には、面内異方性圧縮応力が働く。より具体的には、c軸に垂直な方向、すなわち、a軸方向に沿って比較的大きな圧縮応力が生じる。これは、InGaNのa軸格子定数が、GaNのa軸格子定数よりも大きいからである。そのため、InGaN量子井戸層またはInGaNガイド層のIn組成や膜厚を大きくしたりすると、a軸方向に沿って結晶欠陥が生じる。この結晶欠陥は、蛍光顕微鏡により観察したときに、a軸方向に平行なダークラインとして観察される。したがって、非発光性の欠陥であると考えられる。この非発光性の欠陥を抑制することができれば、さらに発光効率を高めることができると考えられる。
レーザダイオードに限らず、m面を主面とするIII族窒化物半導体で発光ダイオード等の他の発光デバイスを作製する場合においても、同様の課題がある。また、他の非極性面であるa面や半極性面を成長主面としたIII族窒化物半導体を用いる発光素子についても、同様の課題がある。
そこで、この発明の目的は、非極性面または半極性面を成長主面としたIII族窒化物半導体を用いて、発光効率の向上された半導体発光素子を提供することである。
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、非極性面または半極性面を成長主面とするIII族窒化物半導体からなり、発光層にInを含む量子井戸層を有する半導体発光素子において、無歪みの状態での格子定数が前記量子井戸層の格子定数よりも小さく、Alを含むIII族窒化物半導体からなる歪み補償層が、量子井戸層および障壁層を有する量子井戸構造の発光層内、または当該発光層に隣接する隣接層内に介在していることを特徴とする、半導体発光素子である。
量子井戸層は、Inを含むIII族窒化物半導体(たとえばInGaN層)からなり、したがって、無歪みの状態での格子定数が比較的大きいので、下地層(たとえば、GaN層)に対してコヒーレントに成長したときに、成長主面(非極性面または半極性面)に沿う方向への圧縮歪みが生じる。一方、歪み補償層は、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、したがって、無歪みの状態での格子定数が比較的小さいから、下地層に対してコヒーレントに成長したときには、成長主面(非極性面または半極性面)に沿う方向への引っ張り歪みが生じる。このような歪み補償層が、発光層内または発光層に隣接する隣接層内に設けられることによって、量子井戸層の圧縮応力を緩和することができる。その結果、量子井戸層の結晶欠陥を少なくすることができるので、発光効率を向上することができる。
前記歪み補償層は、たとえば、AlGaN層からなっていてもよい。このAlGaN層には、微量のIn(たとえば、結晶成長室内の雰囲気中に残留するIn)が取り込まれていてもよい。
前記歪み補償層が隣接層に設けられるときには、発光層よりも前に形成される隣接層内に設けられることが好ましい。これにより、発光層内の量子井戸層における圧縮応力を効果的に緩和することができる。たとえば、基板上にIII族窒化物半導体を成長させる場合には、発光層と基板との間に配置される隣接層内に歪み補償層を設けることが好ましい。
請求項2記載の発明は、前記歪み補償層が、前記障壁層内に設けられている、請求項1記載の半導体発光素子である。このような構成により、量子井戸層に隣接して歪み補償層が配置されていることによって、量子井戸層における圧縮応力を効果的に低減できる。
前記障壁層の全部が歪み補償層であってもよいし、障壁層の一部が歪み補償層であってもよい。より具体的には、障壁層全体をAlGaN層としてもよく、障壁層をInGaN層(ただし、量子井戸層よりもIn組成が少ないもの)とAlGaN層(歪み補償層)とで構成してもよい。InGaN層とAlGaN層とで歪み補償層を構成する場合には、InGaN層と量子井戸層との間にAlGaN歪み補償層を介在させることが好ましい。
請求項3記載の発明は、前記歪み補償層が、前記量子井戸層に接するように設けられている、請求項2記載の半導体発光素子である。この構成では、歪み補償層が量子井戸層に接しているので、量子井戸層の圧縮応力を一層効果的に低減できる。
請求項4記載の発明は、前記歪み補償層が、前記隣接層内に設けられ、前記量子井戸構造に接している、請求項1記載の半導体発光素子である。この構成によれば、隣接層内に設けられる歪み補償層が、量子井戸構造に接しているので、量子井戸層の圧縮応力を効果的に低減でき、その結晶欠陥を抑制できる。
より具体的には、請求項5に記載されているように、前記歪み補償層が、前記量子井戸構造の障壁層に接していることが好ましい。
請求項6記載の発明は、前記歪み補償層が、前記隣接層内に設けられ、前記量子井戸構造に接していない、請求項1記載の半導体発光素子である。このような構成でも、量子井戸層の圧縮歪みの低減に効果があり、量子井戸層における結晶欠陥を低減できる。
請求項7記載の発明は、前記隣接層が、Inを含むIII族窒化物半導体(たとえば、InGaN)からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光素子である。このような構成の場合、隣接層においても圧縮応力が生じる結果、量子井戸層における圧縮応力に起因する結晶欠陥が多くなるおそれがある。このような構成の場合に、歪み補償層を発光層内または隣接層内に設けることによって、量子井戸層における結晶欠陥を効果的に低減することができる。
請求項8記載の発明は、前記隣接層が、ガイド層およびクラッド層を含み、前記クラッド層が、Alの平均組成が5%以下のIII族窒化物半導体からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体発光素子である。たとえば、発光層の発光波長を450nm以上の長波長域に設定する場合、ガイド層にはInGaN層を適用し、クラッド層にはAlGaN層を適用するとよい。そして、クラッド層のAl平均組成を5%以下とすることによって、良好な光閉じ込め構造を形成することができる。
請求項9記載の発明は、前記量子井戸構造は、厚さ100Å以下の少なくとも1つの量子井戸層を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体発光素子である。量子井戸層の厚さを100Å以下とすることによって、量子効果により、発光効率を高めることができる。このような薄い量子井戸層における圧縮応力に起因する結晶欠陥が、歪み補償層の働きによって低減されることになる。したがって、量子効果との相乗効果によって、優れた発光効率を実現することができる。
請求項10記載の発明は、前記成長主面がm面である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体発光素子である。m面を主面とするIII族窒化物半導体結晶の成長は安定しており、良好な結晶性を有している。このような良好な結晶性のIII族窒化物半導体で構成された半導体発光素子に歪み補償層を導入することによって、量子井戸層の圧縮応力を効果的に低減できるから、量子井戸層は結晶欠陥が極めて少ない状態となる。これにより、優れた発光効率を実現できる。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための斜視図であり、図2は、図1のII−II線に沿う縦断面図であり、図3は、図1のIII−III線に沿う横断面図である。
この半導体レーザダイオード70は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成されたIII族窒化物半導体積層構造2と、基板1の裏面(III族窒化物半導体積層構造2と反対側の表面)に接触するように形成されたn型電極3と、III族窒化物半導体積層構造2の表面に接触するように形成されたp型電極4とを備えたファブリペロー型のものである。
基板1は、この実施形態では、GaN単結晶基板で構成されている。この基板1は、非極性面の一つであるm面を主面としたものであり、この主面上における結晶成長によって、III族窒化物半導体積層構造2が形成されている。したがって、III族窒化物半導体積層構造2は、m面を結晶成長主面とするIII族窒化物半導体からなる。
III族窒化物半導体積層構造2を形成する各層は、基板1に対してコヒーレントに成長されている。コヒーレントな成長とは、下地層からの格子の連続性を保った状態での結晶成長をいう。下地層との格子不整合は、結晶成長される層の格子の歪みによって吸収され、下地層との界面での格子の連続性が保たれる。無歪みの状態でのInGaNのa軸格子定数はGaNのa軸格子定数よりも大きいので、InGaN層にはa軸方向への圧縮応力(圧縮歪み)が生じる。これに対して、無歪みの状態でのAlGaNのa軸格子定数はGaNのa軸格子定数よりも小さいので、AlGaN層にはa軸方向への引っ張り応力(引っ張り歪み)が生じる。
III族窒化物半導体積層構造2は、発光層10と、n型半導体層11と、p型半導体層12とを備えている。n型半導体層11は発光層10に対して基板1側に配置されており、p型半導体層12は発光層10に対してp型電極4側に配置されている。こうして、発光層10が、n型半導体層11およびp型半導体層12によって挟持されていて、ダブルヘテロ接合が形成されている。発光層10には、n型半導体層11から電子が注入され、p型半導体層12から正孔が注入される。これらが発光層10で再結合することにより、光が発生するようになっている。
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型GaNコンタクト層13(たとえば2μm厚)、n型AlGaNクラッド層14(1.5μm厚以下。たとえば1.0μm厚)およびn型InGaNガイド層15(たとえば0.1μm厚)を積層して構成されている。一方、p型半導体層12は、発光層10の上に、順に、p型InGaNガイド層16(たとえば0.1μm厚)、p型AlGaN電子ブロック層17(たとえば20nm厚)、p型AlGaNクラッド層18(1.5μm厚以下。たとえば0.4μm厚)およびp型GaNコンタクト層19(たとえば0.3μm厚)を積層して構成されている。
n型GaNコンタクト層13およびp型GaNコンタクト層19は、それぞれn型電極3およびp型電極4とのオーミックコンタクトをとるための低抵抗層である。n型GaNコンタクト層13は、GaNにたとえばn型ドーパントとしてのSiを高濃度にドープ(ドーピング濃度は、たとえば、3×1018cm-3)することによってn型半導体とされている。また、p型GaNコンタクト層19は、p型ドーパントとしてのMgを高濃度にドープ(ドーピング濃度は、たとえば、3×1019cm-3)することによってp型半導体層とされている。
n型AlGaNクラッド層14およびp型AlGaNクラッド層18は、発光層10からの光をそれらの間に閉じ込める光閉じ込め効果を生じるものである。n型AlGaNクラッド層14は、AlGaNにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、1×1018cm-3)することによってn型半導体とされている。また、p型AlGaNクラッド層18は、p型ドーパントとしてのMgをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、1×1019cm-3)することによってp型半導体層とされている。n型AlGaNクラッド層14は、n型InGaNガイド層15よりもバンドギャップが広く、p型AlGaNクラッド層18は、p型InGaNガイド層16よりもバンドギャップが広い。これにより、良好な閉じ込めを行うことができ、低閾値および高効率の半導体レーザダイオードを実現できる。
発光層10の発光波長が450nm以上の長波長域に設定されている場合には、n型AlGaNクラッド層14およびp型AlGaNクラッド層18は、Alの平均組成が5%以下のAlGaNで構成されていることが好ましい。これにより、良好な光閉じ込めを実現できる。クラッド層14,18は、AlGaN層とGaN層との超格子構造で構成することもできる。この場合でも、クラッド層14,18全体のAl平均組成が5%以下とされることが好ましい。
n型InGaNガイド層15およびp型InGaNガイド層16は、発光層10にキャリア(電子および正孔)を閉じ込めるためのキャリア閉じ込め効果を生じる半導体層であり、かつ、クラッド層14,18とともに、発光層10への光閉じ込め構造を形成している。これにより、発光層10における電子および正孔の再結合の効率が高められるようになっている。n型InGaNガイド層15は、InGaNにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、1×1018cm-3)することによりn型半導体とされており、p型InGaNガイド層16は、InGaNにたとえばp型ドーパントとしてのMgをドープする(ドーピング濃度は、たとえば、5×1018cm-3)ことによってp型半導体とされている。
p型AlGaN電子ブロック層17は、AlGaNにp型ドーパントとしてのたとえばMgをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、5×1018cm-3)して形成されたp型半導体であり、発光層10からの電子の流出を防いで、電子および正孔の再結合効率を高めている。
発光層10は、たとえばInGaNを含むMQW(multiple-quantum well)構造(多重量子井戸構造)を有しており、電子と正孔とが再結合することにより光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。
発光層10は、この実施形態では、図4に示すように、InGaN層からなる量子井戸層(たとえば3nm厚)221とAlGaN層からなる障壁層(たとえば9nm厚)222とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸(MQW:Multiple-Quantum Well)構造を有している。この場合に、InGaNからなる量子井戸層221は、Inの組成比が5%以上とされることにより、バンドギャップが比較的小さくなり、AlGaNからなる障壁層222は、バンドギャップが比較的大きくなる。たとえば、量子井戸層221と障壁層222とは交互に2〜7周期繰り返し積層されており、これにより、多重量子井戸構造の発光層10が構成されている。発光波長は、量子井戸層221のバンドギャップに対応しており、バンドギャップの調整は、インジウム(In)の組成比を調整することによって行うことができる。インジウムの組成比を大きくするほど、バンドギャップが小さくなり、発光波長が大きくなる。この実施形態では、発光波長は、量子井戸層(InGaN層)におけるInの組成を調整することによって、450nm〜550nmとされている。前記多重量子井戸構造は、Inを含む量子井戸層221の数が3以下とされることが好ましい。
図1等に示すように、p型半導体層12は、その一部が除去されることによって、リッジストライプ20を形成している。より具体的には、p型コンタクト層19、p型AlGaNクラッド層18、p型AlGaN電子ブロック層17およびp型InGaNガイド層16の一部がエッチング除去され、横断面視ほぼ台形形状(メサ形)のリッジストライプ20が形成されている。このリッジストライプ20は、c軸方向に沿って形成されている。
III族窒化物半導体積層構造2は、リッジストライプ20の長手方向両端における劈開により形成された一対の端面21,22(劈開面)を有している。この一対の端面21,22は、互いに平行であり、いずれもc軸に垂直である。こうして、n型InGaNガイド層15、発光層10およびp型InGaNガイド層16によって、端面21,22を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、発光層10で発生した光は、共振器端面21,22の間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、共振器端面21,22からレーザ光として素子外に取り出される。
n型電極3およびp型電極4は、たとえばAl金属からなり、それぞれp型コンタクト層19および基板1にオーミック接続されている。p型電極4がリッジストライプ20の頂面(ストライプ状の接触領域)のp型GaNコンタクト層19だけに接触するように、p型InGaNガイド層16、p型AlGaN電子ブロック層17およびp型AlGaNクラッド層18の露出面を覆う絶縁層6が設けられている。これにより、リッジストライプ20に電流を集中させることができるので、効率的なレーザ発振が可能になる。また、リッジストライプ20の表面は、p型電極4との接触部を除く領域が絶縁層6で覆われて保護されているので、横方向の光閉じ込めを緩やかにして制御を容易にすることができるとともに、側面からのリーク電流を防ぐことができる。絶縁層6は、屈折率が1よりも大きな絶縁材料、たとえば、SiO2やZrO2で構成することができる。
さらに、リッジストライプ20の頂面はm面となっていて、このm面にp型電極4が形成されている。そして、n型電極3が形成されている基板1の裏面もm面である。このように、p型電極4およびn型電極3のいずれもがm面に形成されているので、レーザの高出力化や高温動作に十分に耐えられる信頼性を実現できる。
共振器端面21,22は、それぞれ絶縁膜23,24(図1では図示を省略した。)によって被覆されている。共振器端面21は、+c軸側端面であり、共振器端面22は−c軸側端面である。すなわち、共振器端面21の結晶面は+c面であり、共振器端面22の結晶面は−c面である。−c面側の絶縁膜24は、アルカリに溶けるなど化学的に弱い−c面を保護する保護膜として機能することができ、半導体レーザダイオード70の信頼性の向上に寄与する。
図5に図解的に示すように、+c面である共振器端面21を被覆するように形成された絶縁膜23は、たとえばZrO2の単膜からなる。これに対し、−c面である共振器端面22に形成された絶縁膜24は、たとえばSiO2膜とZrO2膜とを交互に複数回(図5の例では5回)繰り返し積層した多重反射膜で構成されている。絶縁膜23を構成するZrO2の単膜は、その厚さがλ/2n1(ただし、λは発光層10の発光波長。n1はZrO2の屈折率)とされている。一方、絶縁膜24を構成する多重反射膜は、膜厚λ/4n2(但しn2はSiO2の屈折率)のSiO2膜と、膜厚λ/4n1のZrO2膜とを交互に積層した構造となっている。
このような構造により、+c軸側端面21における反射率は小さく、−c軸側端面22における反射率が大きくなっている。より具体的には、たとえば、+c軸側端面21の反射率は20%程度とされ、−c軸側端面22における反射率は99.5%程度(ほぼ100%)となる。したがって、+c軸側端面21から、より大きなレーザ出力が出射されることになる。すなわち、この半導体レーザダイオード70では、+c軸側端面21が、レーザ出射端面とされている。
このような構成によって、n型電極3およびp型電極4を電源に接続し、n型半導体層11およびp型半導体層12から電子および正孔を発光層10に注入することによって、この発光層10内で電子および正孔の再結合を生じさせ、波長450nm〜550nmの光を発生させることができる。この光は、共振器端面21,22の間をガイド層15,16に沿って往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、レーザ出射端面である共振器端面21から、より多くのレーザ出力が外部に取り出されることになる。
図6は、III族窒化物半導体の結晶構造のユニットセルを表した図解図である。III族窒化物半導体の結晶構造は、六方晶系で近似することができ、一つのIII族原子に対して4つの窒素原子が結合している。4つの窒素原子は、III族原子を中央に配置した正四面体の4つの頂点に位置している。これらの4つの窒素原子は、一つの窒素原子がIII族原子に対して+c軸方向に位置し、他の三つの窒素原子がIII族原子に対して−c軸側に位置している。このような構造のために、III族窒化物半導体では、分極方向がc軸に沿っている。
c軸は六角柱の軸方向に沿い、このc軸を法線とする面(六角柱の頂面)がc面(0001)である。c面に平行な2つの面でIII族窒化物半導体の結晶を劈開すると、+c軸側の面(+c面)はIII族原子が並んだ結晶面となり、−c軸側の面(−c面)は窒素原子が並んだ結晶面となる。そのため、c面は、+c軸側と−c軸側とで異なる性質を示すので、極性面(Polar Plane)と呼ばれる。
+c面と−c面とは異なる結晶面であるので、それに応じて、異なる物性を示す。具体的には、+c面は、アルカリに強いなどといった化学反応性に対する耐久性が高く、逆に、−c面は化学的に弱く、たとえば、アルカリに溶けてしまうことが分かっている。
一方、六角柱の側面がそれぞれm面(10-10)であり、隣り合わない一対の稜線を通る面がa面(11-20)である。これらは、c面に対して直角な結晶面であり、分極方向に対して直交しているため、極性のない平面、すなわち、非極性面(Nonpolar Plane)である。さらに、c面に対して傾斜している(平行でもなく直角でもない)結晶面は、分極方向に対して斜めに交差しているため、若干の極性のある平面、すなわち、半極性面(Semipolar Plane)である。半極性面の具体例は、(10-1-1)面、(10-1-3)面、(11-22)面などの面である。
非特許文献1に、c面に対する結晶面の偏角と当該結晶面の法線方向の分極との関係が示されている。この非特許文献1から、(11-24)面、(10-12)面なども分極の少ない結晶面であり、大きな偏光状態の光を取り出すために採用される可能性のある有力な結晶面であると言える。
たとえば、m面を主面とするGaN単結晶基板は、c面を主面としたGaN単結晶から切り出して作製することができる。切り出された基板のm面は、たとえば、化学的機械的研磨処理によって研磨され、(0001)方向および(11−20)方向の両方に関する方位誤差が、±1°以内(好ましくは±0.3°以内)とされる。こうして、m面を主面とし、かつ、転位や積層欠陥といった結晶欠陥のないGaN単結晶基板が得られる。このようなGaN単結晶基板の表面には、原子レベルの段差が生じているにすぎない。
このようにして得られるGaN単結晶基板上に、有機金属気相成長法によって、半導体レーザダイオード構造を構成するIII族窒化物半導体積層構造2が成長させられる。
m面を主面とするGaN単結晶基板1上にm面を成長主面とするIII族窒化物半導体積層構造2を成長させてa面に沿う断面を電子顕微鏡(STEM:走査透過電子顕微鏡)で観察すると、III族窒化物半導体積層構造2には、転位の存在を表す条線が見られない。そして、表面状態を光学顕微鏡で観察すると、c軸方向への平坦性(最後部と最低部との高さの差)は10Å以下であることが分かる。このことは、発光層10、とくに量子井戸層のc軸方向への平坦性が10Å以下であることを意味し、発光スペクトルの半値幅を低くすることができる。
このように、無転位でかつ積層界面が平坦なm面III族窒化物半導体を成長させることができる。ただし、GaN単結晶基板1の主面のオフ角は±1°以内(好ましくは±0.3°以内)とすることが好ましく、たとえば、オフ角を2°としたm面GaN単結晶基板上にGaN半導体層を成長させると、GaN結晶がテラス状に成長し、オフ角を±1°以内とした場合のような平坦な表面状態とすることができないおそれがある。
m面を主面としたGaN単結晶基板上に結晶成長させられるIII族窒化物半導体は、m面を成長主面として成長する。c面を主面として結晶成長した場合には、c軸方向の分極の影響で、発光層10での発光効率が悪くなるおそれがある。これに対して、m面を結晶成長主面とすれば、量子井戸層での分極が抑制され、発光効率が増加する。これにより、閾値の低下やスロープ効率の増加を実現できる。また、分極が少ないため、発光波長の電流依存性が抑制され、安定した発振波長を実現できる。
さらにまた、m面を主面とすることにより、c軸方向およびa軸方向に物性の異方性が生じる。加えて、Inを含む発光層10(活性層)には、格子歪みによる2軸性応力が生じている。その結果、c面を主面とした場合よりも価電子帯の状態密度が小さくなって反転分布が得られやすくなり利得が増強され、レーザ特性が向上する。
また、m面を結晶成長の主面とすることにより、III族窒化物半導体結晶の成長を極めて安定に行うことができ、c面やa面を結晶成長主面とする場合よりも、結晶性を向上することができる。これにより、高性能のレーザダイオードの作製が可能になる。
発光層10は、m面を結晶成長主面として成長させられたIII族窒化物半導体からなるので、ここから発生する光は、a軸方向、すなわちm面に平行な方向に偏光しており、TEモードの場合、その進行方向はc軸方向である。したがって、半導体レーザダイオード70は、結晶成長主面が偏光方向に平行であり、かつ、ストライプ方向、すなわち導波路の方向が光の進行方向と平行に設定されている。これにより、TEモードの発振を容易に生じさせることができ、レーザ発振を生じさせるための閾値電流を低減することができる。
また、この実施形態では、基板1としてGaN単結晶基板を用いているので、III族窒化物半導体積層構造2は、欠陥の少ない高い結晶品質を有することができる。その結果、高性能のレーザダイオードを実現できる。
さらにまた、実質的に転位のないGaN単結晶基板上にIII族窒化物半導体積層構造を成長させることにより、このIII族窒化物半導体積層構造2は基板1の再成長面(m面)からの積層欠陥や貫通転位が生じていない良好な結晶とすることができる。これにより、欠陥に起因する発光効率低下などの特性劣化を抑制することができる。
図7は、m面GaN基板上にコヒーレントに成長させたInGaN層における面内圧縮歪みのInNモル分率依存性を示すグラフである。負の歪み量(%)は圧縮歪みを表し、正の歪み量は引っ張り歪みを表す。この図7から、InNモル分率(InN molar fraction。すなわち、Inの組成)を増やすことによって、a軸方向圧縮歪みεxxおよびc軸方向圧縮歪みεzz、ならびにm軸方向引っ張り歪みεyyが増大することが分かる。a軸方向圧縮歪みεxxに着目すると、この歪みは、無歪みの状態におけるInGaNのa軸格子定数がGaNのa軸格子定数よりも大きいことに起因するものである。そして、In組成の増大に伴って、格子不整合が増大するために、それに応じてa軸方向圧縮歪みεxxが増大することになるものと理解される。
一方、図8は、m面GaN基板上にコヒーレントに成長させたAlGaN層における面内圧縮歪みのAlNモル分率依存性を示すグラフである。負の歪み量(%)は圧縮歪みを表し、正の歪み量は引っ張り歪みを表す。この図8から、AlNモル分率(AlN molar fraction。すなわち、Alの組成)を増やすことによって、a軸方向引っ張り歪みεxxおよびc軸方向引っ張り歪みεzz、ならびにm軸方向圧縮歪みεyyが増大することが分かる。a軸方向引っ張り歪みεxxに着目すると、この歪みは、無歪みの状態におけるAlGaNのa軸格子定数がGaNのa軸格子定数よりも小さい(したがって、InGaNのa軸格子定数よりも小さい)ことに起因するものである。そして、Al組成の増大に伴って、格子不整合が増大するために、それに応じてa軸方向引っ張り歪みεxxが増大することになるものと理解される。
この実施形態では、前述のとおり、発光層10が、InGaN層からなる量子井戸層221とAlGaN層からなる障壁層222とを交互に積層した多重量子井戸構造を形成している。III族窒化物半導体積層構造2を構成する各層は、m面GaN基板1に対してコヒーレントに成長されている。そのため、a軸方向に関して、InGaN層には圧縮歪みが生じ、AlGaN層には引っ張り歪みが生じることになる。しかし、発光層10では、これらが交互に積層されているため、InGaN層からなる量子井戸層221の圧縮応力が、AlGaN層からなる障壁層222によって緩和されている。すなわち、障壁層222は、量子井戸層221の圧縮応力を緩和する歪み補償層として機能している。これにより、圧縮応力に起因する結晶欠陥を抑制できるため、量子井戸層221は、欠陥の少ない優れた結晶性を有することができる。より具体的には、m面GaN基板上にInGaN層を形成した場合に見られるa軸方向に平行なストライプ状結晶欠陥の発生を抑制または解消できる。これにより、量子井戸層221において発光に寄与することができる領域が増大するから、発光効率が向上し、それに応じて発振閾値を低減することができる。
しかも、この実施形態では、前述のとおり、量子井戸層221の厚さが100Å以下とされているため、量子効果による発光効率の向上をも見込むことができる。量子井戸層221が量子効果を生じるほど薄く、しかも、結晶欠陥が少ない高品質の結晶状態であるため、優れた発光効率を実現できる。
図9は、III族窒化物半導体積層構造2を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。処理室30内に、ヒータ31を内蔵したサセプタ32が配置されている。サセプタ32は、回転軸33に結合されており、この回転軸33は、処理室30外に配置された回転駆動機構34によって回転されるようになっている。これにより、サセプタ32に処理対象のウエハ35を保持させることにより、処理室30内でウエハ35を所定温度に昇温することができ、かつ、回転させることができる。ウエハ35は、前述のGaN単結晶基板1を構成するGaN単結晶ウエハである。
処理室30には、排気配管36が接続されている。排気配管36はロータリポンプ等の排気設備に接続されている。これにより、処理室30内の圧力は、1/10気圧〜常圧とされ、処理室30内の雰囲気は常時排気されている。
一方、処理室30には、サセプタ32に保持されたウエハ35の表面に向けて原料ガスを供給するための原料ガス供給路40が導入されている。この原料ガス供給路40には、窒素原料ガスとしてのアンモニアを供給する窒素原料配管41と、ガリウム原料ガスとしてのトリメチルガリウム(TMG)を供給するガリウム原料配管42と、アルミニウム原料ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMAl)を供給するアルミニウム原料配管43と、インジウム原料ガスとしてのトリメチルインジウム(TMIn)を供給するインジウム原料配管44と、マグネシウム原料ガスとしてのエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を供給するマグネシウム原料配管45と、シリコンの原料ガスとしてのシラン(SiH4)を供給するシリコン原料配管46とが接続されている。これらの原料配管41〜46には、それぞれバルブ51〜56が介装されている。各原料ガスは、いずれも水素もしくは窒素またはこれらの両方からなるキャリヤガスとともに供給されるようになっている。
たとえば、m面を主面とするGaN単結晶ウエハをウエハ35としてサセプタ32に保持させる。この状態で、バルブ52〜56は閉じておき、窒素原料バルブ51を開いて、処理室30内に、キャリヤガスおよびアンモニアガス(窒素原料ガス)が供給される。さらに、ヒータ31への通電が行われ、ウエハ温度が1000℃〜1100℃(たとえば、1050℃)まで昇温される。これにより、表面の荒れを生じさせることなくGaN半導体を成長させることができるようになる。
ウエハ温度が1000℃〜1100℃に達するまで待機した後、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびシリコン原料バルブ56が開かれる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウムおよびシランが供給される。その結果、ウエハ35の表面に、シリコンがドープされたGaN層からなるn型GaNコンタクト層13が成長する。
次に、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびシリコン原料バルブ56に加えて、アルミニウム原料バルブ53が開かれる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウム、シランおよびトリメチルアルミニウムが供給される。その結果、n型GaNコンタクト層13上に、n型AlGaNクラッド層14がエピタキシャル成長させられる。このときAlGaNクラッド層14のAl組成が5%以下となるように、各原料ガス(とくにアルミニウム原料ガス)の流量比が調整される。
次いで、アルミニウム原料バルブ53を閉じ、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、インジウム原料バルブ54、およびシリコン原料バルブ56を開く。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルインジウムおよびシランが供給される。その結果、n型AlGaNクラッド層14上にn型InGaNガイド層15がエピタキシャル成長させられる。このn型InGaNガイド層15の形成時には、ウエハ35の温度は、800℃〜900℃(たとえば850℃)とされることが好ましい。
次に、シリコン原料バルブ56が閉じられ、多重量子井戸構造の発光層10(活性層)の成長が行われる。発光層10の成長は、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびインジウム原料バルブ54を開いてアンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルインジウムをウエハ35へと供給することによりInGaN層からなる量子井戸層221を成長させる工程と、インジウム原料バルブ54を閉じ、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびアルミニウム原料バルブ53を開いてアンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルアルミニウムをウエハ35へと供給することにより、AlGaN層からなる障壁層222を成長させる工程とを交互に実行することによって行える。具体的には、障壁層222を始めに形成し、その上に量子井戸層221を形成する。これを、たとえば、2回に渡って繰り返し行い、最後に障壁層222を形成する。発光層10の形成時には、ウエハ35の温度は、たとえば、700℃〜800℃(たとえば730℃)とされることが好ましい。このとき、成長圧力は700torr以上とすることが好ましく、これにより、耐熱性を向上することができる。
次に、アルミニウム原料バルブ53が閉じられ、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、インジウム原料バルブ54およびマグネシウム原料バルブ55が開かれる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルインジウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたp型InGaN層からなるガイド層16が形成されることになる。このp型InGaNガイド層16の形成時には、ウエハ35の温度は、800℃〜900℃(たとえば850℃)とされることが好ましい。
次いで、p型AlGaN電子ブロック層17が形成される。すなわち、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたAlGaN層からなるp型AlGaN電子ブロック層17が形成されることになる。このp型AlGaN電子ブロック層17の形成時には、ウエハ35の温度は、900℃〜1100℃(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
次いで、p型AlGaNクラッド層18が形成される。すなわち、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされてp型とされたAlGaN層からなるクラッド層18が形成されることになる。このp型AlGaNクラッド層18の形成時には、ウエハ35の温度は、900℃〜1100℃(たとえば1000℃)とされることが好ましい。また、p型AlGaNクラッド層18のAl組成が5%以下となるように、各原料ガス(とくにアルミニウム原料ガス)の流量が調節されることが好ましい。
次に、p型コンタクト層19が形成される。すなわち、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ53,54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたGaN層からなるp型GaNコンタクト層19が形成されることになる。p型GaNコンタクト層19の形成時には、ウエハ35の温度は、900℃〜1100℃(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
p型半導体層12を構成する各層は、1000℃以下の平均成長温度で結晶成長させられることが好ましい。これにより、発光層10への熱ダメージを低減できる。
ウエハ35(GaN単結晶基板1)上にIII族窒化物半導体積層構造2の構成層10,13〜19を成長するのに際しては、いずれの層の成長の際も、処理室30内のウエハ35に供給されるガリウム原料(トリメチルガリウム)のモル分率に対する窒素原料(アンモニア)のモル分率の比であるV/III比は、1000以上(好ましくは3000以上)の高い値に維持される。より具体的には、n型クラッド層14から最上層のp型コンタクト層19までにおいて、V/III比の平均値が1000以上であることが好ましい。これにより、n型クラッド層14、発光層10およびp型クラッド層18の全ての層において、点欠陥の少ない良好な結晶を得ることができる。
この実施形態では、上記のような高いV/III比を用い、かつ、GaN単結晶基板1とIII族窒化物半導体積層構造2との間にバッファ層を介在することなく、m面等を主面とするIII族窒化物半導体積層構造2が、無転位の状態で、かつ、平坦に成長する。このIII族窒化物半導体積層構造2は、GaN単結晶基板1の主面から生じる積層欠陥や貫通転位を有していない。
こうして、ウエハ35上にIII族窒化物半導体積層構造2が成長させられると、このウエハ35は、エッチング装置に移され、たとえばプラズマエッチング等のドライエッチングによって、p型半導体層12の一部を除去してリッジストライプ20が形成される。このリッジストライプ20は、c軸方向に平行になるように形成される。
リッジストライプ20の形成後には、絶縁層6が形成される。絶縁層6の形成は、たとえば、リフトオフ工程を用いて行われる。すなわち、ストライプ状のマスクを形成した後、p型AlGaNクラッド層18およびp型GaNコンタクト層19の全体を覆うように絶縁体薄膜を形成した後、この絶縁体薄膜をリフトオフしてp型GaNコンタクト層19を露出させるようにして、絶縁層6を形成できる。
次いで、p型GaNコンタクト層19にオーミック接触するp型電極4が形成され、n型GaNコンタクト層13にオーミック接触するn型電極3が形成される。これらの電極3,4の形成は、たとえば、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって行うことができる。
次の工程は、個別素子への分割である。すなわち、ウエハ35をリッジストライプ20に平行な方向およびこれに垂直な方向に劈開して、半導体レーザダイオードを構成する個々の素子が切り出される。リッジストライプに平行な方向に関する劈開はa面に沿って行われる。また、リッジストライプ20に垂直な方向に関する劈開はc面に沿って行われる。こうして、+c面からなる共振器端面21と、−c面からなる共振器端面22とが形成される。
次に、共振器端面21,22に、それぞれ前述の絶縁膜23,24が形成される。この絶縁膜23,24の形成は、たとえば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)成膜法によって行うことができる。
図10は、この発明の第2の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層の構成を示す図解的な断面図である。図1〜図3を併せて参照し、本実施形態の半導体レーザダイオードを説明する。
この実施形態の発光層10は、量子井戸層221および障壁層222Aを交互に積層した多重量子井戸層を有している点で第1の実施形態と共通しているが、障壁層222Aの構成が異なっている。すなわち、障壁層222Aは、InGaN層223と、このInGaN層223と量子井戸層221との間に介在された歪み補償層224とを有している。すなわち、歪み補償層224は、量子井戸層221に接している。
歪み補償層224は、AlGaN層からなる。量子井戸層221は、In組成が比較的多く(たとえば、5%以上)、障壁層222AのInGaN層223はIn組成が比較的小さい(たとえば、5%未満)。そのため、InGaN層223は、量子井戸層221よりもバンドギャップが大きい。
一方、図7から理解されるとおり、In組成が少ないInGaN層223は、In組成が多い量子井戸層221よりもa軸方向圧縮歪みεxxが小さい。そして、これらの間に、a軸方向引っ張り歪みを生じるAlGaN層(図8参照)からなる歪み補償層224が介在されている。したがって、主として歪み補償層224の働きによって、量子井戸層221のa軸方向圧縮応力が緩和されるので、第1の実施形態の場合と同様に、量子井戸層221における結晶欠陥を抑制でき、発光効率を向上できる。
歪み補償層224は、たとえば、Al組成が4%とされ、層厚は、1nm程度とされる。
この実施形態の半導体レーザダイオードの製造工程は、第1の実施形態の半導体レーザダイオードの製造工程と類似しており、図9に示す装置を用いてIII族窒化物半導体積層構造2の各層を形成できる。ただし、発光層10の形成工程は、以下の通りとなる。
発光層10の成長は、InGaN量子井戸層221を形成する工程と、InGaN層223を形成する工程と、AlGaN歪み補償層224を形成する工程とを含む。より具体的には、n型InGaNガイド層15上にInGaN層223が形成され、その上にAlGaN歪み補償層224が形成され、その上にInGaN量子井戸層221が形成され、さらにその上にAlGaN歪み補償層224が形成される。以後、InGaN層223、AlGaN歪み補償層224、InGaN量子井戸層221、およびAlGaN歪み補償層224の形成を、この順序で所定回行い、必要数の量子井戸層221を形成する。そして、最後に、InGaN層223が形成される。
InGaN量子井戸層221およびInGaN層223の形成は、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびインジウム原料バルブ54を開き、残余の原料ガスバルブ53,55,56を閉じて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルインジウムをウエハ35へと供給することによって行うことができる。ただし、InGaN層223のIn組成がInGaN量子井戸層221のIn組成よりも少なくなるように、各層の成長時の原料ガス(とくにインジウム原料ガス)の流量比が調節される。
AlGaN歪み補償層224の形成は、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびアルミニウム原料バルブ53を開き、残余の原料ガスバルブ54,55,56を閉じて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルアルミニウムをウエハ35へと供給することによって行える。
図11は、この発明の第3の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層付近の構成を示す図解的な断面図である。図1〜図3を併せて参照し、本実施形態の半導体レーザダイオードを説明する。
この実施形態の発光層10は、量子井戸層221および障壁層222Bが交互に積層された多重量子井戸構造を有している点で、前述の第1および第2実施形態と共通している。ただし、障壁層222Bは、InGaN層の単層(たとえば、厚さ9nm)からなり、このInGaN層が量子井戸層221に接している。量子井戸層221は、In組成が比較的多く(たとえば、5%以上)、障壁層222Bを構成するInGaN層はIn組成が比較的小さい(たとえば、5%未満)。そのため、障壁層222Bは、量子井戸層221よりもバンドギャップが大きい。
一方、この実施形態では、発光層10に隣接する隣接層であるn型ガイド層15およびp型ガイド層16には、発光層10に接するように、n型AlGaN層からなる歪み補償層61nおよびp型AlGaN層からなる歪み補償層61pがそれぞれ設けられている。より具体的には、発光層10の最下層(基板1側)の障壁層222Bとn型AlGaN歪み補償層61nとが接している。また、発光層10の最上層(リッジストライプ20側)の障壁層222Bとp型AlGaN歪み補償層61pとが接している。
このような構成により、発光層10の上下に接する歪み補償層61n,61pの働きによって、量子井戸層221のa軸方向圧縮応力が緩和されるので、第1および第2の実施形態の場合と同様に、量子井戸層221における結晶欠陥を抑制でき、発光効率を向上できる。
量子井戸層221での圧縮応力の低減に対する寄与は、発光層10上に設けられたp型歪み補償層61pよりも、発光層10とGaN基板1との間に設けられたn型歪み補償層61nの方が大きい。これは、n型歪み補償層61nが、発光層10よりも前に成長されるからである。したがって、n型歪み補償層61nだけで充分な応力緩和効果が得られる場合には、p型歪み補償層61pは省かれてもよい。
この実施形態の半導体レーザダイオードの製造工程は、第1の実施形態の半導体レーザダイオードの製造工程と類似しており、図9に示す装置を用いてIII族窒化物半導体積層構造2の各層を形成できる。ただし、n型ガイド層15のInGaN層部分の形成の後、n型AlGaN歪み補償層61nが形成され、その上に発光層10が形成される。また、発光層10の形成の後、p型AlGaN歪み補償層61pが形成され、その上にp型ガイド層16のInGaN層部分が形成される。
n型AlGaN歪み補償層61nの形成時には、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびシリコン原料バルブ56が開かれ、残余の原料ガスバルブ54,55が閉じられる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびシランが供給される。その結果、n型InGaNガイド層15上にn型AlGaN歪み補償層61がエピタキシャル成長させられる。
p型AlGaN歪み補償層61pの形成時には、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、残余の原料ガスバルブ54,56が閉じられる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給される。その結果、発光層10上にp型AlGaN歪み補償層61pがエピタキシャル成長させられる。
図12は、この発明の第4の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層付近の構成を示す図解的な断面図である。この図12において、前述の図11に示された構成に対応する各部には、図12の場合と同一の参照符号を付して示す。図1〜図3を併せて参照し、本実施形態の半導体レーザダイオードを説明する。
この実施形態では、発光層10とGaN基板1との間に設けられたn型ガイド層15の膜厚途中位置にn型歪み補償層62nが介在されている。すなわち、n型ガイド層15は、n型AlGaNクラッド層14側の第1InGaN部分151と、発光層10側の第2InGaN部分152とに分割されており、これらの間にn型AlGaN歪み補償層62が介在されている。
また、発光層10上に設けられたp型ガイド層16の膜厚途中位置にp型歪み補償層62pが介在されている。すなわち、p型ガイド層15は、p型AlGaNクラッド層18側の第1InGaN部分161と、発光層10側の第2InGaN部分162とに分割されており、これらの間にp型AlGaN歪み補償層62pが介在されている。
このような構成により、歪み補償層62n,62pの働きによって、量子井戸層221のa軸方向圧縮応力が緩和されるので、第1〜第3の実施形態の場合と同様に、量子井戸層221における結晶欠陥を抑制でき、発光効率を向上できる。
n型ガイド層15において、第1InGaN部分151の層厚は、たとえば、50nm程度とされ、第2InGaN部分152の層厚は、たとえば、50nm程度とされる。同様に、p型ガイド層16において、第1InGaN部分161の層厚は、たとえば、50nm程度とされ、第2InGaN部分162の層厚は、たとえば、50nm程度とされる。
AlGaN歪み補償層62n,62pの形成方法は、前述の第3の実施形態のAlGaN歪み補償層61n,61p場合と同様であるので、説明を省く。
量子井戸層221での圧縮応力の低減に対する寄与は、発光層10よりも上に設けられたp型歪み補償層62pよりも、発光層10とGaN基板1との間に設けられたn型歪み補償層62nの方が大きい。これは、n型歪み補償層62nが、発光層10よりも前に成長されるからである。したがって、n型歪み補償層62nだけで充分な応力緩和効果が得られる場合には、p型歪み補償層62pは省かれてもよい。
図13は、この発明の第5の実施形態に係る発光ダイオードの構造を説明するための図解的な断面図である。この発光ダイオード80は、GaN(窒化ガリウム)単結晶基板81上にIII族窒化物半導体積層構造をなすIII族窒化物半導体層82を成長させて構成された素子本体を有している。III族窒化物半導体層82は、GaN単結晶基板81側から順に、n型コンタクト層101、発光層としての多重量子井戸(MQW)層102、p型電子阻止層103、およびp型コンタクト層104を積層した積層構造を有している。p型コンタクト層104層の表面には、透明電極としてのp型電極(アノード電極)83が形成されており、さらに、このp型電極83の一部には、配線接続のための接続部84が接合されている。また、n型コンタクト層101には、n型電極(カソード電極)85が接合されている。こうして、発光ダイオード構造が形成されている。n型コンタクト層101においてn型電極85が接合される部分は、このn型電極85との間にオーミック接合を形成する接触部101Aをなしている。
GaN単結晶基板1は、支持基板(配線基板)90に接合されている。支持基板90の表面には、配線91,92が形成されている。そして、接続部84と配線91とがボンディングワイヤ93で接続されており、n型電極85と配線92とがボンディングワイヤ94で接続されている。さらに、図示は省略するが、前記発光ダイオード構造と、ボンディングワイヤ93,94とが、エポキシ樹脂等の透明樹脂によって封止されることにより、発光ダイオード素子が構成されている。
n型コンタクト層101は、シリコンをn型ドーパントとして添加したn型GaN層からなる。層厚は3μm以上とすることが好ましい。シリコンのドーピング濃度は、たとえば、1018cm-3とされる。
多重量子井戸層102としては、前述の図4(第1実施形態)または図10(第2実施形態)の構造が適用される。これにより、量子井戸層221の圧縮応力がAlGaNからなる障壁層222(図4)または歪み補償層224(図10)によって緩和される。そのため、量子井戸層221は結晶欠陥の少ない優れた結晶性を有するので、優れた発光効率を有することになる。
p型電子阻止層103は、p型ドーパントとしてのマグネシウムを添加したAlGaN層からなる。層厚は、たとえば、28nmである。マグネシウムのドーピング濃度は、たとえば、3×1019cm-3とされる。
p型コンタクト層104は、p型ドーパントとしてのマグネシウムを高濃度に添加したGaN層からなる。層厚は、たとえば、70nmである。マグネシウムのドーピング濃度は、たとえば、1020cm-3とされる。p型コンタクト層104の表面はIII族窒化物半導体層82の表面82aをなし、この表面82aは鏡面となっている。この表面82aは、多重量子井戸層102で発生した光が取り出される光取り出し側表面である。
p型電極83は、Ni層とAu層とから構成される透明な薄い金属層(たとえば、200Å以下)で構成される。III族窒化物半導体層82の表面82aが鏡面であるので、この表面82aに接して形成されるp型電極83の表面83a(光取り出し側表面)も鏡面となる。このように、III族窒化物半導体層82の光取り出し側表面82aおよびp型電極83の光取り出し側表面83aがいずれも鏡面であるので、多重量子井戸層102から発生した光は、その偏光状態にほとんど影響を与えることなく、p型電極83側へと取り出されることになる。
n型電極85は、Ti層とAl層とから構成される膜である。
GaN単結晶基板81は、非極性面(この実施形態ではm面)を主面とするGaN単結晶からなる基板である。より具体的には、GaN単結晶基板81の主面は、非極性面の面方位から±1°以内のオフ角を有する面である。
この発光ダイオード80のIII族窒化物半導体層82の形成には、前述の図9に示された装置を用いることができる。
たとえば、m面を主面とするGaN単結晶ウエハをウエハ35としてサセプタ32に保持させる。この状態で、バルブ52〜56は閉じておき、窒素原料バルブ51を開いて、処理室30内に、キャリヤガスおよびアンモニアガス(窒素原料ガス)が供給される。さらに、ヒータ31への通電が行われ、ウエハ温度が1000℃〜1100℃(たとえば、1050℃)まで昇温される。これにより、表面の荒れを生じさせることなくGaN半導体を成長させることができるようになる。
ウエハ温度が1000℃〜1100℃に達するまで待機した後、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびシリコン原料バルブ56が開かれる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウムおよびシランが供給される。その結果、ウエハ35の表面に、シリコンがドープされたGaN層からなるn型コンタクト層101が成長する。
次に、シリコン原料バルブ56が閉じられ、多重量子井戸層102の成長が行われる。多重量子井戸層102の形成方法は、前述の第1実施形態または第2実施形態の発光層10の形成方法と、同様であるので、ここでは説明を省略する。
次いで、p型電子阻止層103が形成される。すなわち、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたAlGaN層からなるp型電子阻止層103が形成されることになる。このp型電子阻止層103の形成時には、ウエハ35の温度は、1000℃〜1100℃(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
次に、p型コンタクト層104が形成される。すなわち、窒素原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ53,54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたGaN層からなるp型コンタクト層104が形成されることになる。p型コンタクト層104の形成時には、ウエハ35の温度は、1000℃〜1100℃(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
こうして、ウエハ35上にIII族窒化物半導体層82が成長させられると、このウエハ35は、エッチング装置に移され、たとえばプラズマエッチングによって、n型コンタクト層101を露出させるための凹部87が形成される。凹部87は、多重量子井戸層102、p型電子阻止層103およびp型コンタクト層104を島状に取り囲むように形成されてもよく、これにより、多重量子井戸層102、p型電子阻止層103およびp型コンタクト層104をメサ形に整形するものであってもよい。
次いで、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって、p型電極83、接続部84、n型電極85が形成される。これにより、発光ダイオード構造を得ることができる。
このようなウエハプロセスの後に、ウエハ35の劈開によって個別素子が切り出され、この個別素子は、ダイボンディングおよびワイヤボンディングによってリード電極に接続された後、エポキシ樹脂等の透明樹脂中に封止される。こうして、発光ダイオード素子80が作製される。
ウエハ35(GaN単結晶基板1)上にIII族窒化物半導体層82の構成層101〜104の成長に際しては、いずれの層の成長の際も、処理室30内のウエハ35に供給されるガリウム原料(トリメチルガリウム)のモル分率に対する窒素原料(アンモニア)のモル分率の比であるV/III比は、3000以上の高い値に維持される。この実施形態では、このような高いV/III比を用い、かつ、GaN単結晶基板81とIII族窒化物半導体層82との間にバッファ層を介在することなく、m面等を主面とするIII族窒化物半導体層82が、無転位の状態で、かつ、平坦に成長する。
以上、この発明の5つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第1〜第4の実施形態では、リッジストライプ20をc軸に平行に形成した構造について説明したが、リッジストライプ20をa軸に平行とし、共振器端面をa面としてもよい。また、基板1の主面は、m面に限らず、他の非極性面であるa面としてもよいし、半極性面としてもよい。
さらにまた、III族窒化物半導体積層構造2を構成する各層の層厚や不純物濃度等は一例であり、適宜適切な値を選択して用いることができる。
また、III族窒化物半導体積層構造2を形成した後にレーザリフトオフなどで基板1を除去し、基板1のない半導体レーザダイオードとすることもできる。
また、前述の第5の実施形態では、多重量子井戸層102内に歪み補償層を設ける例について説明したが、図11または図12に示す構成をとることもできる。つまり、多重量子井戸層102に隣接するn型コンタクト層101にn型AlGaN歪み補償層を設けてもよい。このn型AlGaN歪み補償層は、図11の構成に倣って、多重量子井戸層102に接するように設けられることが好ましいが、図12の構成に倣って、n型コンタクト層101の層厚途中に設けられてもよい。
また、前述の第5の実施形態では、一つの非極性面であるm面を成長主面とするIII族窒化物半導体積層構造を有する発光ダイオードを例にとったが、別の非極性面であるa面を成長主面とするIII族窒化物半導体積層構造でダイオード構造を形成してもよい。さらには、非極性面に限らず、半極性面を成長主面とするIII族窒化物半導体積層構造でダイオード構造を形成した場合にも、この発明を適用することができる。
また、前述の実施形態では、量子井戸層が複数個設けられた多重量子井戸構造の発光層を有する素子について説明したが、発光層の構造は、量子井戸層が1個の量子井戸構造としてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の第1の実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための斜視図である。 図1のII−II線に沿う縦断面図である。 図1のIII−III線に沿う横断面図である。 前記半導体レーザダイオードの発光層の構成を説明するための図解的な断面図である。 共振器端面に形成された絶縁膜(反射膜)の構成を説明するための図解図である。 III族窒化物半導体の結晶構造のユニットセルを表した図解図である。 m面GaN基板上にコヒーレントに成長させたInGaN層における面内圧縮歪みのInNモル分率依存性を示すグラフである。 m面GaN基板上にコヒーレントに成長させたAlGaN層における面内圧縮歪みのAlNモル分率依存性を示すグラフである。 III族窒化物半導体積層構造を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。 この発明の第2の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層の構成を示す図解的な断面図である。 この発明の第3の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層の構成を示す図解的な断面図である。 この発明の第4の実施形態に係る半導体レーザダイオードの発光層の構成を示す図解的な断面図である。 この発明の第5の実施形態に係る発光ダイオードの構造を説明するための図解的な断面図である。
符号の説明
1 基板(GaN単結晶基板)
2 III族窒化物半導体積層構造
3 n側電極
4 p側電極
6 絶縁層
10 発光層
221 量子井戸層
222,222A,222B 障壁層
223 InGaN層
224 歪み補償層
11 n型半導体層
12 p型半導体層
13 n型GaNコンタクト層
14 n型AlGaNクラッド層
15 n型ガイド層
151 第1InGaN部分
152 第2InGaN部分
16 p型ガイド層
161 第1InGaN部分
162 第2InGaN部分
17 p型AlGaN電子ブロック層
18 p型AlGaNクラッド層
19 p型GaNコンタクト層
20 リッジストライプ
21,22 端面
23,24 絶縁膜
26 n型InGaN層
30 処理室
31 ヒータ
32 サセプタ
33 回転軸
34 回転駆動機構
35 基板
36 排気配管
40 原料ガス導入路
41 窒素原料配管
42 ガリウム原料配管
43 アルミニウム原料配管
44 インジウム原料配管
45 マグネシウム原料配管
46 シリコン原料配管
51 窒素原料バルブ
52 ガリウム原料バルブ
53 アルミニウム原料バルブ
54 インジウム原料バルブ
55 マグネシウム原料バルブ
56 シリコン原料バルブ
61n,61p 歪み補償層
62n,62p 歪み補償層
70 半導体レーザダイオード
80 発光ダイオード
81 GaN単結晶基板
82 III族窒化物半導体層
83 p型電極
84 接続部
85 n型電極
87 凹部
90 支持基板
91,92 配線
93,94 ボンディングワイヤ
101 n型コンタクト層
102 多重量子井戸層
104 p型コンタクト層

Claims (10)

  1. 非極性面または半極性面を成長主面とするIII族窒化物半導体からなり、発光層にInを含む量子井戸層を有する半導体発光素子において、
    無歪みの状態での格子定数が前記量子井戸層の格子定数よりも小さく、Alを含むIII族窒化物半導体からなる歪み補償層が、量子井戸層および障壁層を有する量子井戸構造の発光層内、または当該発光層に隣接する隣接層内に介在していることを特徴とする、半導体発光素子。
  2. 前記歪み補償層が、前記障壁層内に設けられている、請求項1記載の半導体発光素子。
  3. 前記歪み補償層が、前記量子井戸層に接するように設けられている、請求項2記載の半導体発光素子。
  4. 前記歪み補償層が、前記隣接層内に設けられ、前記量子井戸構造に接している、請求項1記載の半導体発光素子。
  5. 前記歪み補償層が、前記量子井戸構造の障壁層に接している、請求項4記載の半導体発光素子。
  6. 前記歪み補償層が、前記隣接層内に設けられ、前記量子井戸構造に接していない、請求項1記載の半導体発光素子。
  7. 前記隣接層が、Inを含むIII族窒化物半導体からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
  8. 前記隣接層が、ガイド層およびクラッド層を含み、前記クラッド層が、Alの平均組成が5%以下のIII族窒化物半導体からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
  9. 前記量子井戸構造は、厚さ100Å以下の少なくとも1つの量子井戸層を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
  10. 前記成長主面がm面である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
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