JP2009235504A - 窒化珪素膜の成膜方法、ガスバリアフィルムの製造方法、および、ガスバリアフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原料ガスとして、シランガスと、アンモニアガスあるいは窒素ガスとを用い、シランガスの供給流量に対し、所定の計算式で算出される有効パワーを10〜100W/sccmとすることにより、前記課題を解決する。
【選択図】なし
Description
また、窒化珪素膜の形成方法として、プラズマCVDが利用されている。
ICP−CVD法とは、(誘導)コイルに高周波電力を供給することにより、誘導磁場を形成して誘導電界を形成し、この誘導電界によってプラズマを生成して、プラズマCVDによって基板に膜を成膜する方法である。
ICP−CVD法は、コイルに高周波電力を供給することによって、誘導電界を形成してプラズマを生成する方法であるので、CCP−CVD法等で必要な対向電極が不要であり、また、容易に高密度(>1×1011/cm3以上)のプラズマが生成できるという利点を有する。さらに、低圧かつ低温でプラズマが生成できるという利点もある。
例えば、特許文献1には、原料ガスとしてシランガスと窒素ガスを用い、シランガスの供給流量に対して窒素ガスの供給流量を10倍以上とし、さらに、ガスの総供給流量と供給電力(供給パワー)とを3W/sccm以上として、ICP−CVD法によって窒化珪素膜を形成する方法が開示されている。
そのため、特許文献1に開示される方法では、半導体装置の保護膜としては優れた特性を有する窒化珪素膜を成膜できるかもしれないが、ガスバリアフィルムのように、より緻密な膜が要求される用途では、必ずしも十分な特性を得ることはできない。
Peff=PRF*[1−(Vppon 2/Vppoff 2)]
上記式において、
Peff ; 有効パワー[W]
PRF ; 供給電力[W]
Vppon : プラズマ点灯時にコイルにかかるp−p(peak to peak)電圧[V]
Vppoff: プラズマ非点灯時にコイルにかかるp−p電圧[V]
このような本発明の窒化珪素膜の成膜方法において、原料ガスとしてシランガスとアンモニアガスとを用い、さらに、アンモニアガスの供給流量に対する前記有効パワーを、3〜30W/sccmとして成膜を行なうのが好ましい。
そのため、本発明によれば、シランガスを十分に分解して窒化珪素膜を成膜することができ、Si−H結合の少ない、緻密でガスバリア性の高い窒化珪素膜を成膜することができる。また、本発明のガスバリアフィルムの製造方法およびガスバリアフィルムによれば、前記本発明の成膜方法を利用することにより、ガスバリア性の高いガスバリアフィルムを安定して得ることができる。
この有効パワー(Peff)は、下記式によって示される。
Peff=PRF*[1−(Vppon 2/Vppoff 2)]
上記式において、Peffは、前述のとおりであり、PRFは、誘導電界を形成するためのコイルに供給する高周波電力(投入電力(投入パワー))である。
また、Vpponは、プラズマ点灯時(プラズマの生成時)に、コイルにかかる、プラス−マイナスのp−p(peak to peak)電圧[V]である。
さらに、Vppoffは、プラズマ非点灯時(プラズマの非生成時)にコイルにかかるp−p電圧[V]である。
図1に示すように、シランガスおよびアンモニアガスによるICP−CVD法による窒化珪素膜の成膜では、殆どの場合、放電開始から、3秒以上経過すると、放電が安定し、すなわち、プラズマの状態が安定する。従って、放電開始から、3秒以上経過した後に、プラズマ点灯時のp−p電圧を測定することにより、適正かつ正確なプラズマ点灯時のp−p電圧を測定できる。
なお、この傾向は、原料ガスとして、アンモニアガスに代えて窒素ガスを用いた場合でも、同様になる。
本発明者は、Si−H結合が少なく、緻密でガスバリア性(水蒸気バリア性(水蒸気非透過性))に優れる窒化珪素膜を得るために、鋭意検討を重ねた。その結果、十分にシランガスを分解して、優れた膜質の窒化珪素膜を成膜するためには、コイルに供給した高周波電力ではなく、プラズマに消費されて実際に成膜に寄与する高周波電力すなわち有効パワーが重要であることを見出し、さらに、シランガスの供給流量に対する有効パワーを10〜100W/sccmとすることにより、十分にシランガスを分解して、膜中のSi−H結合が少なく、かつ、緻密で、ガスバリア性に優れる窒化珪素膜を成膜出来ることを見出した。
従って、コイルに供給する高周波電力を大きくしても、この電力すなわちパワーが十分にプラズマに消費されなければ、シランガスを効率良く分解することができず、膜質が良好な窒化珪素膜を成膜することはできない。
これにより、シランガスの供給流量に対する供給電力を適正にして、供給した原料ガスによるプラズマに、十分にパワーを消費させることができ、シランガスのSi−H結合を好適に分解して成膜を行い、Si−H結合が少なく、緻密でガスバリア性の高い窒化珪素膜を成膜できる。
逆に、シランガスの供給流量と有効パワーとの関係が100W/sccmを超えると、シランガスの供給流量に対して、有効パワーが大きすぎ、窒化珪素膜を成膜する基板を損傷してしまう、良好なガスバリア性が得られなくなってしまう等の不都合が生じる。
シランガスの供給流量に対する有効パワーを、上記範囲とすることにより、より良好なガスバリア性を得ることができる等の点で、より好適な結果を得ることができる。
このように複数のコイルを用いる際には、個々のコイル毎に有効パワーを計算して、全コイルの有効パワーを加算した合計有効パワーが、シランガスの供給流量に対して上記範囲となるようにして、窒化珪素膜を成膜すればよい。
また、原料ガスとして、アンモニアガスを用いる際における、アンモニアガスの供給流量にも、特に限定はなく、真空チャンバのサイズ等に応じて、適宜、設定すればよいが、アンモニアガスは、シランガスの3倍程度とするのが好ましく、具体的には、30〜1500sccm、特に、90〜900sccmが好ましい。
さらに、原料ガスとして、窒素ガスを用いる際における、窒素ガスの供給流量にも、特に限定はなく、真空チャンバのサイズ等に応じて、適宜、設定すればよいが、窒素ガスは、シランガスの5〜10倍程度とするのが好ましく、具体的には、50〜5000sccm、特に、150〜3000sccmが好ましい。
各原料ガスの流量を、上記範囲とすることにより、成膜速度(堆積速度)を高めつつ、成膜室内の圧力を好適な圧力に維持することができ、また、より優れたガスバリア性を有する窒化珪素膜が得られる等の点で、より好適な結果を得ることができる。
本発明は、このような構成を有することにより、前記Si−H結合のみならず、N−H結合も少なく、より緻密でガスバリア性に優れた窒化珪素膜を成膜できる等の点で、より好適な結果を得ることができる。
有効パワーを上記範囲とすることにより、より良好なガスバリア性が得られる等の点で、より好ましい結果を得ることができる。
成膜圧力を上記範囲とすることにより、より良好なガスバリア性を有する窒化珪素膜を成膜できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
基板温度を制御(コントロール)する際における、基板温度にも、特に限定は無いが、0〜150℃、特に、20〜80℃とするのが好ましい。
基板温度を上記範囲とすることにより、基板の熱損傷を押さえることができる。この効果は、特に、基板が樹脂の場合には、有効である。
なお、基板の温度制御は、ICP−CVD法によるプラズマCVD装置で行なわれている公知の方法で行なえばよい。
このプラズマCVD装置10は、シート状の基板Zに、ICP−CVD法によって薄膜を成膜する、一般的なプラズマCVD装置であり、真空チャンバ12と、渦巻き状の(誘導)コイル14と、コイル14に高周波電力を供給する高周波電源16と、コイルに供給する高周波電力のインピーダンス整合を取るための整合器(マッチングボックス)18と、ガス供給手段20および24と、真空チャンバ12内を排気する排気手段26と、基板Zを所定位置に保持する基板ホルダ28とを有して構成される。基板ホルダ28は、接地(アース)されている。
また、コイル14は、複数であってもよいのは、前述のとおりであり、さらに、渦巻き状以外にも、U字状(ワンターンコイル)など、ICP−CVD法で利用されているコイルが、全て利用可能である。
さらに、基板ホルダ28は、接地されずに絶縁されていてもよく、バイアス電圧を印加できるようにしてもよく、さらに、接地状態/バイアス印加状態/絶縁状態の2以上から選択できるようにしてもよい。
なお、本発明の製造方法においては、これらのフィルム(シート状物)の上に、密着性を向上するための膜や反射防止膜など、各種の機能を発現する膜を有する物を、基板として用いてもよい。
窒化珪素膜の膜厚を上記範囲とすることにより、良好なガスバリア性を得られる等の点で好まし結果を得ることができる。
図2に示すような一般的なICP−CVD法によるCVD装置を用いて、下記表1に示す成膜条件で、基板Zに、厚さ200nmの窒化珪素膜を形成した。
原料ガスは、実施例1〜3および比較例1〜3はシランガスおよびアンモニアガスを用い、実施例4はシランガスおよび窒素ガスを用いた。また、基板Zは、厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製 ネオテックスQ65FA)を用いた。
真空チャンバ12内の真空度が目的とする成膜圧力になった時点で、高周波電源16を駆動してコイル14への高周波電力を供給して、有効パワー(Peff)を算出するためのプラズマ非点灯時にコイルにかかるp−p電圧(Vppoff)を測定した。
その後、ガス供給手段20および24からシランガスおよびアンモニアガスを供給し、かつ、目的とする成膜圧力となるように真空チャンバ内の排気を調整して、基板Zへの成膜を開始した。なお、有効パワーを算出するためのプラズマ点灯時にコイルにかかるp−p電圧(Vppon )は、原料ガスの供給開始後(すなわち放電開始後)、5秒が経過した時点で測定した。シランガスおよびアンモニアガスを原料ガスとするICP−CVD法による窒化珪素膜の成膜では、放電開始後3秒でプラズマの状態が安定するのは、前述のとおりである。
結果を、表1に併記する。
また、同様にして比較例1〜3における窒化珪素膜の状態を同様に調べた。その結果、比較例1では、Si−Hに起因するピークが認められた。他方、比較例2および3における窒化珪素膜は、Si−Hに起因するピークは認められなかったが、WVTRの値は大きい。これは、プラズマによって、基板Zがダメージを受けたことが原因と推測される。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
12 真空チャンバ
14 (誘導)コイル
16 高周波電源
18 整合器
20,24 ガス導入手段
26 排気手段
28 基板ホルダ
Claims (4)
- 原料ガスとして、シランガスと、アンモニアガスもしくは窒素ガスとを用い、誘導結合プラズマCVD法によって窒化珪素膜を成膜するに際し、
下記式で示される成膜の有効パワーPeffと、シランガスの供給流量とを10〜100W/sccmとして成膜を行なうことを特徴とする窒化珪素膜の成膜方法。
Peff=PRF*[1−(Vppon 2/Vppoff 2)]
上記式において、
Peff ; 有効パワー[W]
PRF ; 供給電力[W]
Vppon : プラズマ点灯時にコイルにかかるp−p(peak to peak)電圧[V]
Vppoff: プラズマ非点灯時にコイルにかかるp−p電圧[V] - 原料ガスとしてシランガスとアンモニアガスとを用い、さらに、アンモニアガスの供給流量に対する前記有効パワーを、3〜30W/sccmとして成膜を行なう請求項1に記載の窒化珪素膜の成膜方法。
- 基板の表面に、請求項1または2に記載の成膜方法で窒化珪素膜を形成するガスバリアフィルムの製造方法。
- 請求項3に記載のガスバリアフィルムの製造方法で製造されたガスバリアフィルム。
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