JP2009234204A - 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な材料から成り、しかも光輝性、高電気抵抗、及び高電波透過性を有し、ミリ波対応型の樹脂成型品に適用可能な高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂基材と、前記樹脂基材の表面に形成されたAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜とを備え、前記高抵抗金属薄膜は、前記樹脂基材表面に層状に形成された酸化物層と、前記酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、前記金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜とを備えた高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えた高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法。
【選択図】図3
【解決手段】樹脂基材と、前記樹脂基材の表面に形成されたAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜とを備え、前記高抵抗金属薄膜は、前記樹脂基材表面に層状に形成された酸化物層と、前記酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、前記金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜とを備えた高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えた高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法。
【選択図】図3
Description
本発明は、高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、光輝性、高電気抵抗、高電波透過性を有し、ミリ波レーダー装置カバーの材料として好適な高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法に関する。
ミリ波レーダーは、ミリ波を出射し、対象物から反射してきた電波を受信することによって対象物の位置、相対速度、方向などを測定するセンサーである。ミリ波レーダーは、100〜150m程度の領域を探知可能であり、しかも、赤外線レーダーと異なり、雨や霧などによって電波が拡散・吸収されにくいという特徴を持つ。そのため、ミリ波レーダーは、車載用の衝突軽減を目的とする各種安全装置に応用されている。
車載用ミリ波レーダー装置は、ラジエータグリル、サイドモール、バックパネルなどの背後に設けることが検討されている。しかしながら、ラジエータグリルなどの車両の外側を覆う部品には、装飾性を持たせるために、樹脂基材の表面に光輝性のある金属被膜が形成された材料を用いることが多い。金属被膜が電気伝導性を持つ場合、金属被膜がミリ波を減衰させる。従って、ミリ波の経路上に金属被膜を形成する必要がある場合には、金属被膜は、ミリ波透過性に優れている必要がある。
光輝性のある金属被膜にミリ波透過性を持たせるためには、金属薄膜は、多数の微細な金属粒子が僅かな間隔を隔てて島状に孤立している構造(海島構造)を備えている必要がある。このような構造を有する金属薄膜としては、In薄膜やCr薄膜が知られており、ミリ波対応型の各種樹脂成型品に応用されている。
光輝性のある金属被膜にミリ波透過性を持たせるためには、金属薄膜は、多数の微細な金属粒子が僅かな間隔を隔てて島状に孤立している構造(海島構造)を備えている必要がある。このような構造を有する金属薄膜としては、In薄膜やCr薄膜が知られており、ミリ波対応型の各種樹脂成型品に応用されている。
このようなミリ波対応型の樹脂成型品又はその製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、樹脂基材の上にSiO2、TiO2等からなる無機質下地膜を形成し、その上にCr又はInからなる光輝性及び不連続構造の金属被膜を形成する樹脂製品の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、光輝性及び不連続構造の金属被膜を高生産性・低コストで得ることができる点が記載されている。
例えば、特許文献1には、樹脂基材の上にSiO2、TiO2等からなる無機質下地膜を形成し、その上にCr又はInからなる光輝性及び不連続構造の金属被膜を形成する樹脂製品の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、光輝性及び不連続構造の金属被膜を高生産性・低コストで得ることができる点が記載されている。
また、特許文献2には、スパッタ法又は印刷法を用いて透明シート表面にIn微粒子群からなるIn膜層を形成し、この透明シートを金型内に設置し、In膜層が形成された面にプラスチック材を注入するミリ波対応型プラスチック成型品の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法によって、ミリ波透過性及び光輝性が均一なIn膜層をプラスチック成型品の表面に形成することができる点が記載されている。
同文献には、このような方法によって、ミリ波透過性及び光輝性が均一なIn膜層をプラスチック成型品の表面に形成することができる点が記載されている。
所定の条件下で成膜されたIn薄膜及びCr薄膜は、光輝性及びミリ波透過性に優れている。しかしながら、In及びCrは、いずれも資源枯渇、資源外交などにより材料コストが急上昇しており、将来的には入手困難が予想される。
一方、安価な材料から成り、しかも光輝性及びミリ波透過性に優れた金属薄膜を備えたミリ波対応型の樹脂基材又はこれを用いた成型品が提案された例は、従来にはない。
一方、安価な材料から成り、しかも光輝性及びミリ波透過性に優れた金属薄膜を備えたミリ波対応型の樹脂基材又はこれを用いた成型品が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、安価な材料から成り、しかも高光輝性、高電気抵抗、及び高電波透過性を有し、ミリ波対応型の樹脂成型品に適用可能な高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料は、
樹脂基材と、
前記樹脂基材の表面に形成されたAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜とを備え、
前記高抵抗金属薄膜は、
前記樹脂基材表面に層状に形成された酸化物層と、
前記酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、
前記金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜と、
を備えていることを要旨とする。
また、本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法は、
金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えていることを要旨とする。
樹脂基材と、
前記樹脂基材の表面に形成されたAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜とを備え、
前記高抵抗金属薄膜は、
前記樹脂基材表面に層状に形成された酸化物層と、
前記酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、
前記金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜と、
を備えていることを要旨とする。
また、本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法は、
金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えていることを要旨とする。
金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、所定の圧力に保持された真空容器内にてパルスレーザデポジションを行うと、樹脂基材表面に、高光輝性、高電気抵抗、及び高電波透過性を有する高抵抗金属薄膜を形成することができる。
これは、真空容器中に存在する酸素との親和力が異なる2種類の金属(Al、Mg)を交互に蒸着させることによって、酸素との親和力の高いMgが優先的に酸化し、微細な金属粒子の周囲が酸化物で覆われた海島構造の形成が促進されるためと考えられる。
これは、真空容器中に存在する酸素との親和力が異なる2種類の金属(Al、Mg)を交互に蒸着させることによって、酸素との親和力の高いMgが優先的に酸化し、微細な金属粒子の周囲が酸化物で覆われた海島構造の形成が促進されるためと考えられる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料]
本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料は、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成された高抵抗金属薄膜とを備えている。
[1. 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料]
本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料は、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成された高抵抗金属薄膜とを備えている。
[1.1 樹脂基材]
本発明において、樹脂基材の材質は、特に限定されるものではなく、あらゆる樹脂基材に対して本発明を適用することができる。樹脂基材としては、具体的には、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンなどがある。
また、樹脂基材の形状も特に限定されるものではなく、あらゆる形状を有する樹脂基材に対して本発明を適用することができる。樹脂基材の形状としては、具体的には、板材、シート、フィルムなどがある。
本発明において、樹脂基材の材質は、特に限定されるものではなく、あらゆる樹脂基材に対して本発明を適用することができる。樹脂基材としては、具体的には、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンなどがある。
また、樹脂基材の形状も特に限定されるものではなく、あらゆる形状を有する樹脂基材に対して本発明を適用することができる。樹脂基材の形状としては、具体的には、板材、シート、フィルムなどがある。
[1.2 高抵抗金属薄膜]
後述する方法により得られる高抵抗金属薄膜は、Al及びMgを含み、かつ、
(1)樹脂基材の表面に層状に形成された酸化物層と、
(2)酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、
(3)金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜と、
を備えている。すなわち、高抵抗金属薄膜は、いわゆる「海島構造」を備えている。
樹脂基材の表面に層状に酸化物層が形成されるのは、樹脂基材の表面に存在する水分やOH基あるいは酸素によってAl及び/又はMgが酸化されるためと考えられる。また、酸化物層、金属粒子及び酸化物被膜は、いずれも、Al及びMgの双方を含むと考えられるが、いずれか一方のみを含む場合も有り得る。
後述する方法により得られる高抵抗金属薄膜は、Al及びMgを含み、かつ、
(1)樹脂基材の表面に層状に形成された酸化物層と、
(2)酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、
(3)金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜と、
を備えている。すなわち、高抵抗金属薄膜は、いわゆる「海島構造」を備えている。
樹脂基材の表面に層状に酸化物層が形成されるのは、樹脂基材の表面に存在する水分やOH基あるいは酸素によってAl及び/又はMgが酸化されるためと考えられる。また、酸化物層、金属粒子及び酸化物被膜は、いずれも、Al及びMgの双方を含むと考えられるが、いずれか一方のみを含む場合も有り得る。
高抵抗金属薄膜全体に含まれるMg量は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、高抵抗金属薄膜全体に含まれるMg量が少なすぎると、金属粒子間が連結しやすくなり、電気抵抗が低下する。高電気抵抗を得るためには、薄膜全体に含まれるAl及びMgに対するMgの原子割合(=Mg×100/(Al+Mg)。以下、単に「Mg量」という。)は、5at%以上が好ましい。Mg量は、さらに好ましくは、15at%以上である。
一方、高抵抗金属薄膜全体に含まれるMg量が過剰になると、薄膜の光輝性が低下する。高い光輝性を得るためには、Mg量は、35at%以下が好ましい。Mg量は、さらに好ましくは、30at%以下である。
一方、高抵抗金属薄膜全体に含まれるMg量が過剰になると、薄膜の光輝性が低下する。高い光輝性を得るためには、Mg量は、35at%以下が好ましい。Mg量は、さらに好ましくは、30at%以下である。
薄膜に含まれる金属粒子は、細長く、かつ、不規則に蛇行した「ミミズ状」を呈している。このミミズ状の金属粒子の短径及び粒子間隔は、成膜時の飛散粒子の量や成膜速度により制御することができる。一般に、金属粒子の短径が小さくなりすぎると、薄膜に含まれる金属粒子の割合が少なくなり、光輝性が失われる。従って、金属粒子の短径は、10nm以上が好ましい。
一方、金属粒子の短径が大きくなりすぎると、薄膜の電気抵抗が低下する。従って、金属粒子の短径は、100nm以下が好ましい。
また、金属粒子の粒子間隔が狭くなりすぎると、薄膜の電気抵抗が低下する。従って、金属粒子の粒子間隔は、2nm以上が好ましい。
一方、金属粒子の粒子間隔が広くなりすぎると、薄膜の光輝性が低下する。従って、金属粒子の粒子間隔は、20nm以下が好ましい。
一方、金属粒子の短径が大きくなりすぎると、薄膜の電気抵抗が低下する。従って、金属粒子の短径は、100nm以下が好ましい。
また、金属粒子の粒子間隔が狭くなりすぎると、薄膜の電気抵抗が低下する。従って、金属粒子の粒子間隔は、2nm以上が好ましい。
一方、金属粒子の粒子間隔が広くなりすぎると、薄膜の光輝性が低下する。従って、金属粒子の粒子間隔は、20nm以下が好ましい。
高抵抗金属薄膜の厚さは、光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、薄膜の厚さが薄くなりすぎると、光輝性が失われる。従って、薄膜の厚さは、10nm以上が好ましい。
一方、薄膜の厚さが厚くなりすぎると、金属粒子が連結する確率が高くなり、電気抵抗が低下する。従って、薄膜の厚さは、500nm以下が好ましい。
一方、薄膜の厚さが厚くなりすぎると、金属粒子が連結する確率が高くなり、電気抵抗が低下する。従って、薄膜の厚さは、500nm以下が好ましい。
薄膜の製造条件を最適化し、薄膜に含まれるMg量、金属粒子の短径、薄膜の厚さなどを制御すると、高光輝性、高電気抵抗、及び高電波透過性を兼ね備えた薄膜が得られる。
具体的には、薄膜の組成、形態等を制御することにより、薄膜の光線反射率が25%以上である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
同様に、薄膜の組成、形態等を制御することにより、薄膜の表面抵抗率が1014Ω/□以上である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
同様に、薄膜の組成、形態等を制御することにより、ミリ波透過減衰量が10dB以下である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
さらに、薄膜の組成、形態等を制御することにより、電気抵抗の最小値(Rmin)に対する電気抵抗の最大値(Rmax)の比(Rmax/Rmin)、あるいは、表面抵抗率の最小値(ρmin)に対する表面抵抗率の最大値(ρmax)の比(ρmax/ρmin)が102以下である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
なお、「光線反射率」とは、島津製作所製UV−1650PCを使用し、測定波長550nmにて、Al蒸着ミラーの反射率を基準の100%としたときの、基準に対する薄膜の反射率をいう。
「ミリ波透過減衰量」とは、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角0°にて薄膜に入射させ、透過した電磁波を測定して計算した値をいう。
「電気抵抗の比(Rmax/Rmin)」とは、2端子2探針法(端子間距離:5mm)により測定された薄膜の電気抵抗の最大値Rmaxと最小値Rminの比をいう。また、「表面抵抗率の比(ρmax/ρmin)」とは、JIS−K7194に準拠した4端子4探針法により測定された薄膜の表面抵抗率の最大値ρmaxと最小値ρminの比をいう。
具体的には、薄膜の組成、形態等を制御することにより、薄膜の光線反射率が25%以上である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
同様に、薄膜の組成、形態等を制御することにより、薄膜の表面抵抗率が1014Ω/□以上である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
同様に、薄膜の組成、形態等を制御することにより、ミリ波透過減衰量が10dB以下である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
さらに、薄膜の組成、形態等を制御することにより、電気抵抗の最小値(Rmin)に対する電気抵抗の最大値(Rmax)の比(Rmax/Rmin)、あるいは、表面抵抗率の最小値(ρmin)に対する表面抵抗率の最大値(ρmax)の比(ρmax/ρmin)が102以下である高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料が得られる。
なお、「光線反射率」とは、島津製作所製UV−1650PCを使用し、測定波長550nmにて、Al蒸着ミラーの反射率を基準の100%としたときの、基準に対する薄膜の反射率をいう。
「ミリ波透過減衰量」とは、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角0°にて薄膜に入射させ、透過した電磁波を測定して計算した値をいう。
「電気抵抗の比(Rmax/Rmin)」とは、2端子2探針法(端子間距離:5mm)により測定された薄膜の電気抵抗の最大値Rmaxと最小値Rminの比をいう。また、「表面抵抗率の比(ρmax/ρmin)」とは、JIS−K7194に準拠した4端子4探針法により測定された薄膜の表面抵抗率の最大値ρmaxと最小値ρminの比をいう。
[2. 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法]
本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法は、金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション(PLD)法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えている。
本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法は、金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション(PLD)法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えている。
[2.1 ターゲット]
ターゲットには、レーザー照射面が金属Al領域と金属Mg領域に分割されているものを用いる。領域が分割されているターゲットを用いると、詳細は不明であるが、海島構造を備えた薄膜の形成が容易化する。
ターゲットには、具体的には、Al板の上に所定の面積を有するMg板を貼り付けたものを用いる。ターゲットを回転させながらレーザーを照射するので、Mg板の貼付位置と面積を変えることにより、AlとMgの照射時間を調節することができる。
ターゲットには、レーザー照射面が金属Al領域と金属Mg領域に分割されているものを用いる。領域が分割されているターゲットを用いると、詳細は不明であるが、海島構造を備えた薄膜の形成が容易化する。
ターゲットには、具体的には、Al板の上に所定の面積を有するMg板を貼り付けたものを用いる。ターゲットを回転させながらレーザーを照射するので、Mg板の貼付位置と面積を変えることにより、AlとMgの照射時間を調節することができる。
金属Mg領域の照射時間割合と薄膜中のMg量割合は、ほぼ対応している。従って、Mg量が5〜35at%である薄膜を得るためには、金属Mg領域の面積割合が5〜35%であるターゲットを用いればよい。
[2.2 照射条件]
レーザーの照射条件は、薄膜の特性に影響を与える。具体的には、以下のような条件下でレーザーの照射を行うのが好ましい。
レーザーの照射条件は、薄膜の特性に影響を与える。具体的には、以下のような条件下でレーザーの照射を行うのが好ましい。
[2.2.1 真空容器内の圧力]
真空容器内の圧力(真空度)は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、圧力が高すぎると、ターゲットから飛散した粒子の大半が酸化され、光輝性のある薄膜が得られない。従って、圧力は、10-4Torr(1.33×10-2Pa)以下が好ましい。
一方、圧力が低すぎると、基板(樹脂基材)表面に付着した金属粒子が連結し、電気抵抗が低下する。従って、圧力は、5×10-6Torr(6.65×10-4Pa)以上が好ましい。
真空容器内の圧力(真空度)は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、圧力が高すぎると、ターゲットから飛散した粒子の大半が酸化され、光輝性のある薄膜が得られない。従って、圧力は、10-4Torr(1.33×10-2Pa)以下が好ましい。
一方、圧力が低すぎると、基板(樹脂基材)表面に付着した金属粒子が連結し、電気抵抗が低下する。従って、圧力は、5×10-6Torr(6.65×10-4Pa)以上が好ましい。
[2.2.2 ターゲットの回転速度]
ターゲットが板状である場合、ターゲットを回転させながらレーザーの照射を行う。このターゲットの回転速度は、薄膜の電気抵抗とその分布に強い影響を与える。
ターゲットの回転速度が相対的に遅すぎると、相対的に多量のAlと相対的に多量のMgが交互に基板表面に到達する。その結果、海島構造が形成されず、層構造になるおそれがある。例えば、ターゲットを回転させる場合、回転速度は、1rpm以上が好ましい。
一方、ターゲットの回転速度が相対的に速すぎると、相対的に少量のAlと相対的に少量のMgが交互に基板表面に到達する。その結果、金属粒子が連結しやすくなり、電気抵抗が低下する。例えば、ターゲットを回転させる場合、回転速度は、20rpm以下が好ましい。
ターゲットが板状である場合、ターゲットを回転させながらレーザーの照射を行う。このターゲットの回転速度は、薄膜の電気抵抗とその分布に強い影響を与える。
ターゲットの回転速度が相対的に遅すぎると、相対的に多量のAlと相対的に多量のMgが交互に基板表面に到達する。その結果、海島構造が形成されず、層構造になるおそれがある。例えば、ターゲットを回転させる場合、回転速度は、1rpm以上が好ましい。
一方、ターゲットの回転速度が相対的に速すぎると、相対的に少量のAlと相対的に少量のMgが交互に基板表面に到達する。その結果、金属粒子が連結しやすくなり、電気抵抗が低下する。例えば、ターゲットを回転させる場合、回転速度は、20rpm以下が好ましい。
[2.2.3 レーザー照射強度]
レーザー照射強度は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、レーザー照射強度が弱すぎると、飛散粒子が基板表面に到達する前及び到達後に酸化し、金属粒子の形成が困難となる。従って、レーザー照射強度は、0.1GW/cm2以上が好ましい。
一方、レーザー照射強度が強くなりすぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達するために金属粒子が連結し、電気抵抗が低下する。また、ターゲットの摩耗も著しくなる。従って、レーザー照射強度は、2GW/cm2以下が好ましい。
レーザー照射強度は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、レーザー照射強度が弱すぎると、飛散粒子が基板表面に到達する前及び到達後に酸化し、金属粒子の形成が困難となる。従って、レーザー照射強度は、0.1GW/cm2以上が好ましい。
一方、レーザー照射強度が強くなりすぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達するために金属粒子が連結し、電気抵抗が低下する。また、ターゲットの摩耗も著しくなる。従って、レーザー照射強度は、2GW/cm2以下が好ましい。
[2.2.4 レーザー照射径]
レーザー照射径は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、レーザーの照射径が大きくなりすぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達し、海島構造の形成が困難となっる。従って、レーザーの照射径は、φ8mm以下が好ましい。
一方、レーザーの照射径が小さくなりすぎると、飛散粒子の大半が酸化され、基板表面に金属粒子を形成するのが困難となる。従って、レーザーの照射径は、φ1.5mm以上が好ましい。
レーザー照射径は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、レーザーの照射径が大きくなりすぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達し、海島構造の形成が困難となっる。従って、レーザーの照射径は、φ8mm以下が好ましい。
一方、レーザーの照射径が小さくなりすぎると、飛散粒子の大半が酸化され、基板表面に金属粒子を形成するのが困難となる。従って、レーザーの照射径は、φ1.5mm以上が好ましい。
[2.2.5 ターゲットと基板の距離]
ターゲットと基板の距離は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、ターゲットと基板の距離が長くなりすぎると、飛散粒子が基板に到達する前に酸化されやすくなる。従って、ターゲットと基板の距離は、300mm以下が好ましい。
一方、ターゲットと基板の距離が短すぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達し、均一な海島構造の形成が困難となる。従って、ターゲットと基板の距離は、50mm以上が好ましい。
ターゲットと基板の距離は、薄膜の光輝性及び電気抵抗に影響を与える。一般に、ターゲットと基板の距離が長くなりすぎると、飛散粒子が基板に到達する前に酸化されやすくなる。従って、ターゲットと基板の距離は、300mm以下が好ましい。
一方、ターゲットと基板の距離が短すぎると、相対的に多量の飛散粒子が基板表面に到達し、均一な海島構造の形成が困難となる。従って、ターゲットと基板の距離は、50mm以上が好ましい。
[2.2.6 基板の向き]
基板の向きは、薄膜の均一性に影響を与える。PLD法においては、一般に、ターゲットの法線方向に対してやや傾いた方向(例えば、10〜20°)からレーザーを照射する。また、基板は、レーザー照射によってターゲット表面からはじき出された飛散粒子の飛行方向に配置される。この時、飛散粒子の飛行方向に対する基板の向きを制御すると、薄膜の均一性を制御することができる。電気抵抗のばらつきの小さい薄膜を得るためには、基板表面を飛散粒子の飛行方向に対してほぼ平行あるいはやや傾いた方向に配置するのが好ましい。
基板の向きは、薄膜の均一性に影響を与える。PLD法においては、一般に、ターゲットの法線方向に対してやや傾いた方向(例えば、10〜20°)からレーザーを照射する。また、基板は、レーザー照射によってターゲット表面からはじき出された飛散粒子の飛行方向に配置される。この時、飛散粒子の飛行方向に対する基板の向きを制御すると、薄膜の均一性を制御することができる。電気抵抗のばらつきの小さい薄膜を得るためには、基板表面を飛散粒子の飛行方向に対してほぼ平行あるいはやや傾いた方向に配置するのが好ましい。
[2.3 その他の処理]
上述の方法により得られた薄膜は、そのままの状態でも実用上十分な光輝性と高電気抵抗とを兼ね備えているが、成膜後の薄膜に対して熱処理を施すと、電気抵抗の面内ばらつき及びロット間ばらつきをさらに軽減することができる。これは、熱処理によって金属粒子の酸化が進行し、連結している金属粒子が孤立化するためと考えられる。
熱処理温度、熱処理時間、及び熱処理時の雰囲気は、目的に応じて最適な条件を選択する。一般に、熱処理温度が高くなるほど、薄膜の電気抵抗を増大させることができる。一方、熱処理温度が高すぎると、金属粒子がすべて酸化され、光輝性が失われる。
同様に、熱処理時間が長くなるほど、薄膜の電気抵抗を増大させることができる。一方、熱処理時間が長すぎると、金属粒子がすべて酸化され、光輝性が失われる。
さらに、熱処理を加湿雰囲気下で行うと、薄膜の高抵抗化を促進することができる。
上述の方法により得られた薄膜は、そのままの状態でも実用上十分な光輝性と高電気抵抗とを兼ね備えているが、成膜後の薄膜に対して熱処理を施すと、電気抵抗の面内ばらつき及びロット間ばらつきをさらに軽減することができる。これは、熱処理によって金属粒子の酸化が進行し、連結している金属粒子が孤立化するためと考えられる。
熱処理温度、熱処理時間、及び熱処理時の雰囲気は、目的に応じて最適な条件を選択する。一般に、熱処理温度が高くなるほど、薄膜の電気抵抗を増大させることができる。一方、熱処理温度が高すぎると、金属粒子がすべて酸化され、光輝性が失われる。
同様に、熱処理時間が長くなるほど、薄膜の電気抵抗を増大させることができる。一方、熱処理時間が長すぎると、金属粒子がすべて酸化され、光輝性が失われる。
さらに、熱処理を加湿雰囲気下で行うと、薄膜の高抵抗化を促進することができる。
[3. 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法の作用]
金属Al領域のみからなるターゲットを用いて、パルスレーザーデポジションを行うと、樹脂基材表面に、光輝性があり、しかも海島構造に類似した構造を有する薄膜が得られる。しかしながら、得られた薄膜は、電気抵抗のばらつきが大きく、低抵抗となりやすい。薄膜の電気抵抗と電波透過性とは相関があり、薄膜の電気抵抗が小さくなるほど、電波の減衰率が大きくなる。電気抵抗のばらつきが大きくなるのは、海島構造の形成が不完全であり、一部の金属粒子が連結しているためと考えられる。
金属Al領域のみからなるターゲットを用いて、パルスレーザーデポジションを行うと、樹脂基材表面に、光輝性があり、しかも海島構造に類似した構造を有する薄膜が得られる。しかしながら、得られた薄膜は、電気抵抗のばらつきが大きく、低抵抗となりやすい。薄膜の電気抵抗と電波透過性とは相関があり、薄膜の電気抵抗が小さくなるほど、電波の減衰率が大きくなる。電気抵抗のばらつきが大きくなるのは、海島構造の形成が不完全であり、一部の金属粒子が連結しているためと考えられる。
これに対し、金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、所定の圧力に保持された真空容器内にてパルスレーザデポジションを行うと、樹脂基材表面には、高光輝性、高電気抵抗、及び高電波透過性を有する高抵抗金属薄膜が形成される。
これは、真空容器中に存在する酸素との親和力が異なる2種類の金属(Al、Mg)を交互に蒸着させることによって、酸素との親和力の高いMgが優先的に酸化し、微細な金属粒子の周囲が酸化物で覆われた海島構造の形成が促進されるためと考えられる。
これは、真空容器中に存在する酸素との親和力が異なる2種類の金属(Al、Mg)を交互に蒸着させることによって、酸素との親和力の高いMgが優先的に酸化し、微細な金属粒子の周囲が酸化物で覆われた海島構造の形成が促進されるためと考えられる。
(実施例1〜2、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1 Al−Mg薄膜(実施例1、2)]
図1に示すパルスレーザーデポジション装置を用いて、ポリカーボネート板上にAl−Mg薄膜を形成した。
Al板(□20×1mm)と金属Mg板(□10×1mm)を準備し、金属Mg板をその頂点がAl板の中心に一致するようにAl板の上に接着して、ターゲットとした。
このターゲットを真空容器内の回転機構を有するターゲット保持具に設置した。ターゲットは、Al板の中心が回転中心に一致するように設置した。レーザーをレンズにより絞り、ターゲット表面にてφ3.5mmの照射径になるように調整した。また、ターゲット表面でのレーザー照射位置は、ターゲットの中心(回転中心)から約8mmの位置とした。ターゲットの回転数は、2.4rpmとした。
樹脂基板には、ポリカーボネート板(75×75×3mm)を用い、ターゲットから約180mmの位置に設置された回転機構を有する基板保治具に固定した。基板の向きは、レーザー光に対して平行とした。
ターゲット及び基板を真空容器内に設置後、所定の真空度でレーザーをターゲットに照射し、基板上にAl−Mg薄膜を成膜した。レーザーは、波長532nm、パルス幅7nsecのパルスYAGレーザーを使用した。成膜時間は、10分間(実施例1)又は15分間(実施例2)とした。成膜時の真空度は、5×10-5Torr(6.65×10-3Pa)とした。また、基板の回転数は、100rpmとした。
成膜後、140℃×2時間(実施例1)又は140℃×5時間×加湿(100%)(実施例2)の熱処理を行った。
[1. 試料の作製]
[1.1 Al−Mg薄膜(実施例1、2)]
図1に示すパルスレーザーデポジション装置を用いて、ポリカーボネート板上にAl−Mg薄膜を形成した。
Al板(□20×1mm)と金属Mg板(□10×1mm)を準備し、金属Mg板をその頂点がAl板の中心に一致するようにAl板の上に接着して、ターゲットとした。
このターゲットを真空容器内の回転機構を有するターゲット保持具に設置した。ターゲットは、Al板の中心が回転中心に一致するように設置した。レーザーをレンズにより絞り、ターゲット表面にてφ3.5mmの照射径になるように調整した。また、ターゲット表面でのレーザー照射位置は、ターゲットの中心(回転中心)から約8mmの位置とした。ターゲットの回転数は、2.4rpmとした。
樹脂基板には、ポリカーボネート板(75×75×3mm)を用い、ターゲットから約180mmの位置に設置された回転機構を有する基板保治具に固定した。基板の向きは、レーザー光に対して平行とした。
ターゲット及び基板を真空容器内に設置後、所定の真空度でレーザーをターゲットに照射し、基板上にAl−Mg薄膜を成膜した。レーザーは、波長532nm、パルス幅7nsecのパルスYAGレーザーを使用した。成膜時間は、10分間(実施例1)又は15分間(実施例2)とした。成膜時の真空度は、5×10-5Torr(6.65×10-3Pa)とした。また、基板の回転数は、100rpmとした。
成膜後、140℃×2時間(実施例1)又は140℃×5時間×加湿(100%)(実施例2)の熱処理を行った。
[1.2 Al薄膜(比較例1)]
ターゲットとしてAlのみを用いた以外は、実施例2と同様にして、Al薄膜を成膜した。
[1.3 Al薄膜(比較例2)]
スパッタ法により、厚みの異なるAl薄膜を形成した。
ターゲットとしてAlのみを用いた以外は、実施例2と同様にして、Al薄膜を成膜した。
[1.3 Al薄膜(比較例2)]
スパッタ法により、厚みの異なるAl薄膜を形成した。
[2. 評価]
[2.1 組織観察]
薄膜表面のSEM観察を行った。
[2.2 電気抵抗]
得られた薄膜の電気抵抗を2端子2探針法により測定した。端子間距離は、5mmとした。また、薄膜の表面抵抗率(皮膜抵抗)をJIS−K7194に準拠した4端子4探針法により測定した。
[2.3 光線反射率]
薄膜の反射率を、島津製作所製UV−1650PCを使用して測定した。測定波長は、550nmとした。Al蒸着ミラーの反射率を基準(100%)とし、基準に対する薄膜の反射率を光線反射率とした。
[2.4 ミリ波透過性]
薄膜のミリ波透過減衰量を、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角0°にて薄膜に入射させ、透過した電磁波を測定して計算した。
[2.1 組織観察]
薄膜表面のSEM観察を行った。
[2.2 電気抵抗]
得られた薄膜の電気抵抗を2端子2探針法により測定した。端子間距離は、5mmとした。また、薄膜の表面抵抗率(皮膜抵抗)をJIS−K7194に準拠した4端子4探針法により測定した。
[2.3 光線反射率]
薄膜の反射率を、島津製作所製UV−1650PCを使用して測定した。測定波長は、550nmとした。Al蒸着ミラーの反射率を基準(100%)とし、基準に対する薄膜の反射率を光線反射率とした。
[2.4 ミリ波透過性]
薄膜のミリ波透過減衰量を、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角0°にて薄膜に入射させ、透過した電磁波を測定して計算した。
[3. 結果]
[3.1 SEM観察]
図2に、実施例2及び比較例1で得られた薄膜のSEM像を示す。なお、図2には、2端子2探針法により測定した電気抵抗も併せて示した。
Al−Mg複合ターゲットを用いた実施例2の場合、2端子2探針法による電気抵抗は、40MΩ以上(測定限界)であった。形成された薄膜は緻密であり、薄膜の厚さは70nmであった。また、Alを主成分とするミミズ状の金属粒子が全面に観察された。金属粒子の短径は約30nmであり、金属粒子の間隔は約5nmであった。
一方、Alターゲットを用いた比較例1の場合、実施例2と同様のミミズ状のAl粒子が観察された。しかしながら、2端子2探針法による電気抵抗は1.1kΩであり、高抵抗な薄膜は形成できなかった。これは、Al粒子が孤立しておらず、連結しているためと考えられる。
[3.1 SEM観察]
図2に、実施例2及び比較例1で得られた薄膜のSEM像を示す。なお、図2には、2端子2探針法により測定した電気抵抗も併せて示した。
Al−Mg複合ターゲットを用いた実施例2の場合、2端子2探針法による電気抵抗は、40MΩ以上(測定限界)であった。形成された薄膜は緻密であり、薄膜の厚さは70nmであった。また、Alを主成分とするミミズ状の金属粒子が全面に観察された。金属粒子の短径は約30nmであり、金属粒子の間隔は約5nmであった。
一方、Alターゲットを用いた比較例1の場合、実施例2と同様のミミズ状のAl粒子が観察された。しかしながら、2端子2探針法による電気抵抗は1.1kΩであり、高抵抗な薄膜は形成できなかった。これは、Al粒子が孤立しておらず、連結しているためと考えられる。
[3.2 光線反射率、表面抵抗率、ミリ波透過減衰量]
表1に、実施例1〜2、及び、比較例2で得られた薄膜の光線反射率、表面抵抗率、及び、ミリ波透過減衰量を示す。また、図3に、実施例1〜2及び比較例2で得られた薄膜の光線反射率とミリ波透過減衰量との関係を示す。
実施例1で得られた薄膜は、表面抵抗率が高く、表面抵抗率の面内ばらつきもほとんど無い。また、ミリ波透過減衰量は2dB以下であった。しかしながら、光線反射率は、10〜16%であった。これは、成膜時間が短く、薄膜の厚さが薄すぎたためである。
これに対し、実施例2で得られた薄膜は、表面抵抗率が高く、表面抵抗率の面内ばらつきもほとんど無い。また、ミリ波透過減衰量は、7.5〜8.5dBであった。さらに、光線反射率は、24〜31%であった。
表1に、実施例1〜2、及び、比較例2で得られた薄膜の光線反射率、表面抵抗率、及び、ミリ波透過減衰量を示す。また、図3に、実施例1〜2及び比較例2で得られた薄膜の光線反射率とミリ波透過減衰量との関係を示す。
実施例1で得られた薄膜は、表面抵抗率が高く、表面抵抗率の面内ばらつきもほとんど無い。また、ミリ波透過減衰量は2dB以下であった。しかしながら、光線反射率は、10〜16%であった。これは、成膜時間が短く、薄膜の厚さが薄すぎたためである。
これに対し、実施例2で得られた薄膜は、表面抵抗率が高く、表面抵抗率の面内ばらつきもほとんど無い。また、ミリ波透過減衰量は、7.5〜8.5dBであった。さらに、光線反射率は、24〜31%であった。
スパッタ法による薄膜(比較例2)は、厚みの差により光線反射率は20〜50%まで、ミリ波透過減衰量は12.5〜22.5dBまで変化した。図3より、同等の光線反射率で比較した場合、実施例1〜2の薄膜のミリ波透過減衰量は、比較例2の約1/2以下であることがわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法は、ミリ波レーダー装置カバーなどのミリ波対応型の各種樹脂成型品、これを製造するための素材、及び、これらの製造方法として用いることができる。
Claims (10)
- 樹脂基材と、
前記樹脂基材の表面に形成されたAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜とを備え、
前記高抵抗金属薄膜は、
前記樹脂基材表面に層状に形成された酸化物層と、
前記酸化物層の表面に孤立した島状に形成された金属粒子と、
前記金属粒子の表面及び粒子間に形成された酸化物被膜と
を備えた高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。 - 前記高抵抗金属薄膜は、Al及びMgに対するMgの原子割合が5at%以上35at%以下である請求項1に記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記金属粒子は、短径が10nm以上100nm以下である請求項1又は2に記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記高抵抗金属薄膜は、厚さが10nm以上500nm以下である請求項1から3までのいずれかに記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記高抵抗金属薄膜は、光線反射率が25%以上である請求項1から4までのいずれかに記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記高抵抗金属薄膜は、表面抵抗率が1014Ω/□以上である請求項1から5までのいずれかに記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記高抵抗金属薄膜は、ミリ波透過減衰量が10dB以下である請求項1から6までのいずれかに記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 前記高抵抗金属薄膜は、電気抵抗の最小値(Rmin)に対する電気抵抗の最大値(Rmax)の比(Rmax/Rmin)、又は、表面抵抗率の最小値(ρmin)に対する表面抵抗率の最大値(ρmax)の比(ρmax/ρmin)が102以下である請求項1から7までのいずれかに記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料。
- 金属Al領域と金属Mg領域に分割されたターゲットを用いて、パルスレーザーデポジション法により、樹脂基材表面にAl及びMgを含む高抵抗金属薄膜を形成する薄膜形成工程を備えた高抵抗金属被膜被覆樹脂材料の製造方法。
- 前記ターゲットは、レーザーの照射面積に占める前記金属Mg領域の面積の割合が5〜35%である請求項9に記載の高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料の製造方法。
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JP2008086497A JP2009234204A (ja) | 2008-03-28 | 2008-03-28 | 高抵抗金属薄膜被覆樹脂材料及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014240966A (ja) * | 2014-07-17 | 2014-12-25 | 凸版印刷株式会社 | 光学素子及びカード並びにそれらの製造方法 |
JP2015038236A (ja) * | 2013-08-19 | 2015-02-26 | アイシン精機株式会社 | 金属調皮膜の製造方法 |
JP2020110967A (ja) * | 2019-01-11 | 2020-07-27 | 株式会社ミツバ | 成膜成形体の製造方法 |
CN114635113A (zh) * | 2022-03-09 | 2022-06-17 | 北京科技大学 | 一种高亮度银白色电磁波透过复合薄膜的制备方法 |
-
2008
- 2008-03-28 JP JP2008086497A patent/JP2009234204A/ja active Pending
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JP2020110967A (ja) * | 2019-01-11 | 2020-07-27 | 株式会社ミツバ | 成膜成形体の製造方法 |
JP7169200B2 (ja) | 2019-01-11 | 2022-11-10 | 株式会社ミツバ | 成膜成形体の製造方法 |
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