JP2009222604A - 装飾品の製造方法、装飾品および時計 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の装飾品1の製造方法は、基材2上に、主としてTiNで構成された第1の被膜3を形成する第1の被膜形成工程と、第1の被膜3上に、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金をターゲットとして用いた乾式めっき法により、第2の被膜4を形成する第2の被膜形成工程とを有する。
【選択図】 図2
Description
しかし、金属材料の硬度は、一般に比較的低く、前記のような材料で構成された装飾品(特に、時計用外装部品や装身具等)は、その表面に傷が付き易く、長期間使用することにより美的外観が著しく低下する等の問題点を有していた。
しかしながら、浸炭処理は、表面荒れをおこすので、研磨外観が変わってしまう。鏡面品は特に荒れて、くもりとなってしまい、そのままでは、装飾品としては使用できない。
また、上記のような浸炭処理を施した基材においては、その色調が高級感に欠けるため、優れた外観が要求される(特に、淡い金色の)装飾品に適用するのが困難であった。
本発明の装飾品の製造方法は、基材上に、主としてTiNで構成された第1の被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
前記第1の被膜上に、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金をターゲットとして用いた乾式めっき法により、第2の被膜を形成する第2の被膜形成工程とを有することを特徴とする。
これにより、長期間にわたって優れた硬度および美的外観を保持することができる装飾品を製造する製造方法を提供することができる。
これにより、特に優れた美的外観の装飾品を、安定して製造することができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記第1の被膜形成工程に先立ち、前記基材上に、少なくとも1層の下地層を形成する下地層形成工程を有することが好ましい。
これにより、例えば、基材と第1の被膜との密着性を向上させることができ、装飾品の信頼性、耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記下地層として、主としてTiで構成された層を形成することが好ましい。
これにより、例えば、基材と第1の被膜との密着性をさらに向上させることができ、装飾品の信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
これにより、長期間にわたって優れた硬度および美的外観を保持することができる装飾品を提供することができる。
本発明の装飾品は、基材と、
主としてTiNで構成された第1の被膜と、
前記第1の被膜の前記基材に対向する面とは反対側の表面に設けられ、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金で構成された第2の被膜とを有することを特徴とする。
これにより、長期間にわたって優れた硬度および美的外観を保持することができる装飾品を提供することができる。
これにより、装飾品の硬度を特に優れたものとすることができ、傷や打痕等の凹み等が特に付き難いものとすることができ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。また、基材と、第1の被膜との密着性が特に優れたものとなる。
これにより、装飾品の美的外観を特に優れたものとしつつ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜の平均厚さは、0.1〜5.0μmであることが好ましい。
これにより、第1の被膜の内部応力が大きくなるのを十分に防止しつつ、装飾品を、傷や打痕等の凹み等が特に付き難いものとすることができ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
これにより、装飾品としての硬度を十分に高いものとしつつ、装飾品の美的外観を特に優れたものとすることができ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が0.7〜2.9であり、かつ、b*が12.3〜16.9であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観は、特に優れたものとなる。
本発明の装飾品では、前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が84.2〜88.4であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観は、特に優れたものとなる。
時計用外装部品は、一般に、外部からの衝撃を受け易い装飾品であり、装飾品としての外観の美しさが要求されるとともに、実用品としての耐久性も求められるが、本発明によればこれらの要件を同時に満足することができる。
本発明の時計は、本発明の装飾品を備えたことを特徴とする。
これにより、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる時計を提供することができる。
まず、本発明の装飾品の第1実施形態、およびその製造方法の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の装飾品の第1実施形態を示す断面図、図2は、図1に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の装飾品1は、基材2と、第1の被膜3と、第2の被膜4とを有している。
基材2は、いかなる材料で構成されるものであってもよく、金属材料で構成されるものであっても、非金属材料で構成されるものであってもよい。
基材2が金属材料で構成される場合、特に優れた強度特性を有する装飾品1を提供することができる。
また、基材2が非金属材料で構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、直接成形するのが困難な形状の装飾品1であっても、比較的容易に提供することができる。
また、基材2が非金属材料で構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果も得られる。
基材2を構成する金属材料としては、例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag等の各種金属や、これらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、各種ステンレス鋼、真鍮等)等が挙げられる。
プラスチックとしては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
また、基材2がプラスチックで構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、複雑な形状を有する装飾品1であっても、比較的容易に製造することができる。
また、基材2がプラスチックで構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果が得られる。
基材2が前記のようなセラミックスで構成される場合、高強度、高硬度の装飾品1を得ることができる。
また、基材2の形状、大きさは、特に限定されず、通常、装飾品1の形状、大きさに基づいて決定される。
基材2の表面には、第1の被膜3が設けられている。第1の被膜3は、主としてTiNで構成されたものである。
このような第1の被膜3を有することにより、装飾品1全体としての硬度(第1の被膜3、第2の被膜4が設けられている面側における硬度。以下同様。)を優れたものとすることができ、傷や打痕等の凹み等を付き難くすることができる。また、このような第1の被膜3を有することにより、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合であっても、装飾品1全体としての美的外観を優れたものとすることができる。すなわち、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合には第1の被膜3の色調が装飾品1の美的外観に与える影響が大きくなるが、上記のようなTiN(第1の被膜3)の色調(色度)と、第2の被膜4の色調(色度)とは、比較的類似している(差が小さいため)ため、このような場合であっても、装飾品1全体としての美的外観を優れたものとすることができる。また、例えば、装飾品1の長期の使用により、万が一、第2の被膜4が磨耗、剥離した場合であっても、装飾品1の美的外観に与える悪影響を最小限に止めることができる。これに対し、装飾品がTiNで構成された第1の被膜を有していない場合、装飾品全体としての硬度を十分に大きいものとすることができない。その結果、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなる。また、装飾品がTiNで構成された第1の被膜を有していない場合、基材等の色調が装飾品としての外観に及ぼす影響が大きくなる。このため、第2の被膜の厚さ等によっては、装飾品としての美的外観を著しく損なう場合がある。
第1の被膜3が、Cを含む材料(TiCN)で構成されたものである場合、第1の被膜3中におけるCの含有率(X1C)とNの含有率(X1N)との和(X1)は、特に限定されないが、5〜30wt%であるのが好ましく、10.0〜28.0wt%であるのがより好ましく、15〜25.0wt%であるのがさらに好ましい。
また、第1の被膜3は、図示の構成では基材2の全面に形成されているが、基材2上の少なくとも一部に形成されていればよい。
第1の被膜3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)には、第2の被膜4が設けられている。
第2の被膜4は、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金で構成されたものである。第2の被膜4がこのような組成を有するものであることにより、装飾品1は、淡い金色の、外観に優れたものとなるとともに、十分な耐食性を有するものとなる。また、第2の被膜4が上記のようなAu−Pd−Ag−In系合金で構成されたものであると、第1の被膜3と第2の被膜4との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、装飾品1を、優れた美的外観を有するとともに耐久性に優れたもの、すなわち、長期間にわたって安定的に優れた外観を呈するものとすることができる。
一方、Au−Pd−Ag−In系合金において、各元素の含有量(含有率)が前記範囲外の値であると、十分な耐久性を有する、淡い金色の美的外観に優れた装飾品1を得るのが困難となる。
また、上述したように、Pdの含有量は、6.0〜9.0wt%であるが、6.2〜8.4wt%であるのが好ましく、6.5〜8.0wt%であるのがより好ましい。Pdの含有量が前記範囲内の値であると、装飾品1の美的外観および耐久性を特に優れたものとすることができる。
また、上述したように、Inの含有量は、7.0〜9.0wt%であるが、7.3〜8.6wt%であるのが好ましく、7.4〜8.2wt%であるのがより好ましい。Inの含有量が前記範囲内の値であると、装飾品1の美的外観および耐久性を特に優れたものとすることができる。
なお、第2の被膜4の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、第2の被膜4は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
また、第2の被膜4は、例えば、組成の異なる複数の層の積層体であってもよい。
また、第2の被膜4は、図示の構成では第1の被膜3の全面に形成されているが、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に形成されるものであればよい。
以上説明したような装飾品1は、装飾性を備えた物品であればいかなるものでもよいが、例えば、置物等のインテリア、エクステリア用品、宝飾品、時計ケース(胴、裏蓋、胴と裏蓋とが一体化されたワンピースケース等)、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱機構等を含む)、文字盤、時計用針、ベゼル(例えば、回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅうず等)、ボタン、カバーガラス、ガラス縁、ダイヤルリング、見切板、パッキン等の時計用外装部品、ムーブメントの地板、歯車、輪列受け、回転錘等の時計用内装部品、メガネ(例えば、メガネフレーム)、ネクタイピン、カフスボタン、指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ブローチ、ペンダント、イヤリング、ピアス等の装身具、ライターまたはそのケース、自動車のホイール、ゴルフクラブ等のスポーツ用品、銘板、パネル、賞杯、その他ハウジング等を含む各種機器部品、各種容器等に適用することができる。この中でも特に、時計用外装部品がより好ましい。時計用外装部品は、装飾品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品として、耐久性、耐食性、耐擦傷性、耐摩耗性や、優れた触感等が要求されるが、本発明によればこれらの要件を全て満足することができる。なお、本明細書中での「時計用外装部品」とは、外部から視認可能なものであればいかなるものであってもよく、時計の外部に露出しているものに限らず、時計の内部に内蔵されたものも含む。
また、装飾品1の第2の被膜4が設けられている側の面の色調は、例えば、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が0.7〜2.9でありかつb*が12.3〜16.9の範囲のものであるのが好ましく、a*が0.8〜1.8でありかつb*が14.1〜16.0の範囲のものであるのがより好ましく、a*が1.1〜1.5でありかつb*が14.3〜15.8の範囲のものであるのがさらに好ましい。これにより、装飾品1の美的外観は、特に優れたものとなる。
図2は、図1に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態の装飾品の製造方法は、基材2の表面の少なくとも一部(2a)に、第1の被膜3を形成する第1の被膜形成工程(2b)と、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に、第2の被膜4を形成する第2の被膜形成工程(2c)とを有する。
基材2としては、前述したようなものを用いることができる。
基材2の製造方法は、特に限定されない。
基材2が金属材料で構成される場合、その製造方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロストワックス法等が挙げられるが、この中でも特に、鋳造加工または金属粉末射出成形(MIM)が好ましい。鋳造加工、金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れている。このため、これらの方法を用いた場合、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ることができる。
まず、金属粉と有機バインダーとを含む材料を混合、混練して混練物を得る。
次に、この混練物を射出成形することにより成形体を形成する。
その後、この成形体に対して、脱脂処理(脱バインダー処理)を施し、脱脂体を得る。この脱脂処理は、通常、減圧条件下で、加熱することにより行われる。
さらに、得られた脱脂体を焼結することにより、焼結体を得る。この焼結処理は、通常、前記脱脂処理より高温で加熱することにより行われる。
本発明では、以上のようにして得られる焼結体を基材として用いることができる。
また、基材2が前記のようなセラミックスで構成される場合、その製造方法は、特に限定されないが、金属粉末射出成形(MIM)であるのが好ましい。金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れているため、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ることができる。
基材2の表面に、主としてTiNで構成された第1の被膜3を形成する(2b)。
第1の被膜3の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた第1の被膜3を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1の審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、形成すべき第1の被膜3が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1の信頼性を向上させる上でも有利である。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、第1の被膜3中におけるNの含有率(さらにはCの含有率)をより確実に制御することができる。
次に、上記のようにして形成された第1の被膜3の表面に、Au−Pd−Ag−In系合金で構成された第2の被膜4を形成する(2c)。
第2の被膜4の形成は、乾式めっき法(気相成膜法)により行うものである。
乾式めっき法を用いることにより、第1の被膜3との密着性に優れた第2の被膜4を形成することができる。その結果、得られる装飾品1は、特に優れた耐食性、耐久性を有するものとなる。また、乾式めっき法を用いることにより、高密度の第2の被膜4を形成することが可能となる。これにより、第2の被膜4は、光沢度が大きく、特に美的外観に優れたものとなる。
また、乾式めっき法を用いることにより、第2の被膜4の厚さが比較的薄い場合であっても、均一な膜厚で形成することができる。
また、乾式めっき法を用いることにより、第2の被膜4が必須元素以外の元素を含む複雑な組成のものであっても、第2の被膜4を容易かつ確実に形成することができる。
図3は、本発明の装飾品の第2実施形態を示す断面図、図4は、図3に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
以下、第2実施形態の装飾品およびその製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
下地層5は、例えば、基材2と第1の被膜3との密着性を向上させる機能(密着性向上層としての機能)や、基材2の傷をレベリング(ならし)により補修する機能(レベリング層としての機能)、得られる装飾品において、外部からの衝撃を緩和する機能(クッション層としての機能)等、いかなる機能を有するものであってもよい。
下地層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.03〜1.5μmであるのが好ましく、0.1〜0.5μmであるのがより好ましい。下地層5の平均厚さが前記範囲内の値であると、下地層5の内部応力が大きくなり、クラック等が発生するのを十分に防止しつつ、上記のような下地層5の機能をより効果的に発揮することができる。
図4は、図3に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態の装飾品の製造方法は、基材2の表面の少なくとも一部(4a)に、下地層5を形成する下地層形成工程(4b)と、下地層5の表面の少なくとも一部に第1の被膜3を形成する第1の被膜形成工程(4c)と、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に第2の被膜4を形成する第2の被膜形成工程(4d)とを有する。すなわち、第1の被膜3の形成に先立ち、下地層5を形成する以外は、前述した実施形態と同様である。
本実施形態では、基材2の表面に下地層5を形成する(4b)。
下地層5の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法が好ましい。下地層5の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた下地層5を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1の審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、下地層5の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、形成すべき下地層5が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1の信頼性を向上させる上でも有利である。
図5は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
図5に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)10は、胴(ケース)22と、裏蓋23と、ベゼル(縁)24と、ガラス板25とを備えている。また、ケース22内には、図示しないムーブメント(例えば、文字盤、針付きのもの)が収納されている。
胴22とベゼル24とは、プラスチックパッキン28により固定され、ベゼル24とガラス板25とはプラスチックパッキン29により固定されている。
また、胴22に対し裏蓋23が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)50には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)40が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部50が液密に封止され、防水機能が得られる。
本発明の腕時計10は、ベゼル24、胴22、りゅうず27、裏蓋23、時計バンド等の装飾品(特に、時計用外装部品)のうち少なくとも1つが前述したような本発明の装飾品で構成されたものである。
例えば、本発明の装飾品の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、第1の被膜形成工程と第2の被膜形成工程との間や、下地層形成工程と第1の被膜形成工程との間に、洗浄等の中間処理を施してもよい。また、基材に対しては、切削、研削、研磨、ホーニング等の前処理を施してもよい。
また、装飾品の表面の少なくとも一部には、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等を付与し、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向上するコート層(保護層)等が形成されていてもよい。このようなコート層は、装飾品の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、第1の被膜と第2の被膜は、互いに隣接して設けられるものとして説明したが、第1の被膜と第2の被膜との間には、少なくとも1層の中間層が設けられていてもよい。これにより、例えば、第1の被膜と第2の被膜との密着性の更なる向上等を図ることができる。
1.装飾品の製造
(実施例1)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、ステンレス鋼(SUS444)を用いて、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
まず、気相成膜装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を2×10−3Paまで排気(減圧)した。
次に、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して、5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
まず、気相成膜装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を1.0×10−1Paまで排気(減圧)した。
なお、第1の被膜、第2の被膜の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成および処理時間を調整することにより、第1の被膜、第2の被膜の構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程において、雰囲気ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスを用いることにより、第1の被膜をTiCNで構成されるものとして形成した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程(イオンプレーティング)は、窒素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、30ml/分、20ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を3.0×10−3Paとし、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定することによりを行った。
第1の被膜形成工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、さらに、第1の被膜形成工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるNの含有率、Cの含有率を表1に示すようにした以外は、前記実施例9と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材として、Tiで構成されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材としては、以下に述べるような金属粉末射出成形(MIM)により作製したものを用いた。
このTi粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、得られた混練物を粉砕、分級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレットを用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)し、腕時計ケースの形状を有する成形体を製造した。このとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金型温度40℃、射出圧力80kgf/cm2、射出時間20秒、冷却時間40秒であった。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨した後、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成および処理時間を調整することにより、第1の被膜、第2の被膜の構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例12と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程において、雰囲気ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスを用いることにより、第1の被膜をTiCNで構成されるものとして形成した以外は、前記実施例12と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程(イオンプレーティング)は、窒素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、30ml/分、20ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を3.0×10−3Paとし、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定することによりを行った。
第1の被膜形成工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、さらに、第1の被膜形成工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるNの含有率、Cの含有率を表1に示すようにした以外は、前記実施例18と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜の形成に先立ち、基材の表面に下地層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
下地層の形成は、以下のようにして行った。
まず、前記実施例1と同様にして洗浄を行った基材を、気相成膜装置の処理室内に設置した。
次に、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して、5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
その後、処理室内にアルゴンガスを、ガス圧力を53Paで導入し、400Vの直流電圧を印加して30〜60分保持した。このような状態で、ターゲットとしてTiを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:20A、処理時間:20分間に設定することにより、Tiで構成される下地層を形成した(下地層形成工程)。形成された下地層の平均厚さは、0.5μmであった。
なお、第1の被膜、第2の被膜、下地層の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
下地層形成工程で用いるターゲットの組成および処理時間、第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成および処理時間を調整・選択することにより、下地層、第1の被膜、第2の被膜の構成を表2に示すようにした以外は、前記実施例21と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程において、雰囲気ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスを用いることにより、第1の被膜をTiCNで構成されるものとして形成した以外は、前記実施例21と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程(イオンプレーティング)は、窒素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、30ml/分、20ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を3.0×10−3Paとし、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定することによりを行った。
下地層形成工程の処理時間を変更するとともに、第1の被膜形成工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、さらに、第1の被膜形成工程の処理時間を変更することにより下地層の平均厚さ、第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるNの含有率、Cの含有率を表2に示すようにした以外は、前記実施例27と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材として、Tiで構成されたものを用いた以外は、前記実施例21と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材としては、以下に述べるような金属粉末射出成形(MIM)により作製したものを用いた。
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径52μmのTi粉末を用意した。
このTi粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨した後、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
下地層形成工程で用いるターゲットの組成および処理時間、第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成および処理時間を調整・選択することにより、下地層、第1の被膜、第2の被膜の構成を表2に示すようにした以外は、前記実施例30と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程において、雰囲気ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスを用いることにより、第1の被膜をTiCNで構成されるものとして形成した以外は、前記実施例30と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程(イオンプレーティング)は、窒素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、30ml/分、20ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を3.0×10−3Paとし、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定することによりを行った。
下地層形成工程の処理時間を変更するとともに、第1の被膜形成工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、さらに、第1の被膜形成工程の処理時間を変更することにより下地層の平均厚さ、第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるNの含有率、Cの含有率を表2に示すようにした以外は、前記実施例36と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例39)
基材として、Cu−Zn合金(合金組成:Cu60wt%−Zn40wt%)で構成され、鋳造により成形されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
第1の被膜形成工程を省略した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。すなわち、本比較例では、第2の被膜を、基材の表面に直接形成した。
(比較例2)
第2の被膜形成工程を省略した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。すなわち、本比較例で製造された装飾品は、基材、および、第1の被膜からなるものであり、第2の被膜を有していないものであった。
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、前記実施例12と同様にしてTi製の基材を作製した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、浸炭処理を施すことにより、TiCで構成された浸炭層(TiC層)を形成した。
すなわち、加熱炉内にグラファイトファイバー等の断熱材で囲まれた処理室を有し、この処理室内をロッドグラファイトからなる発熱体で加熱すると共に、処理室内の上部に直流グロー放電の正極を接続し、かつ処理品の載置台に陰極を接続し、また処理室内の要所にガスマニホールドを設置して炭化水素、窒素、アルゴン、水素などのプロセスガス(浸炭用ガスおよび希釈用ガス)を適宜導入するようにした浸炭処理装置を用意した。
そして、まず、浸炭処理装置の処理室内に基材を設置し、処理室内を1.3Paまで減圧した。このように、処理室内が減圧された状態で、ヒータにより、基材を約300℃に加熱した。
その後、処理室内にプロパンガスを導入することにより、処理室内のガス組成をほぼ100%プロパンガスとし、ガス圧力を53Paとし、400Vの直流電圧を印加して90〜180分保持することにより、プラズマ浸炭処理を行った。その後、アルゴンガスおよび窒素ガスを処理室内に圧入して基材を常温にまで冷却した。このような浸炭処理により、約15μmの厚さの浸炭層が形成された。
その後、浸炭層の表面に、前記実施例1と同様にして第2の被膜を形成することにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
表3に示すように、第2の被膜形成工程において用いるターゲットを変更し、第2の被膜の組成を変更した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例19)
第2の被膜形成工程において、Au−Pd−Ag−In系合金の代わりに、Au−Niをターゲットとして用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例20)
第1の被膜形成工程を省略した以外は、前記比較例19と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、目視および顕微鏡による観察を行い、これらの外観を以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:外観優良。
B:外観良。
C:外観やや不良。
D:外観不良。
E:外観極めて不良。
(3−1)a*およびb*についての評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、被膜が形成された面側の色度を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、以下の5段階の基準に従い、評価した。
1.1〜1.5でありかつb*が14.3〜15.8の範囲内である。
B:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が
0.8〜1.8でありかつb*が14.1〜16.0の範囲内である(ただし、
Aの範囲を除く)。
C:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が
0.7〜2.9でありかつb*が12.3〜16.9の範囲内である(ただし、
AおよびBの範囲を除く)。
D:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が
0.4〜3.0でありかつb*が11.3〜18.2の範囲内である(ただし、
A、BおよびCの範囲を除く)。
E:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が
0.4〜3.0でありかつb*が11.3〜18.2の範囲外である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、被膜が形成された面側の色度を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が
85.2〜86.8の範囲内である。
B:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が
84.5〜87.8の範囲内である(ただし、Aの範囲を除く)。
C:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が
84.2〜88.4の範囲内である(ただし、AおよびBの範囲を除く)。
D:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が
83.2〜89.5の範囲内である(ただし、A、BおよびCの範囲を除く)。
E:JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が
83.2〜89.5の範囲外である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、常温(20℃)、常圧、湿度80%RHの環境下に、80日間放置した後の、装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、当該環境下に置く前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、180℃、常圧の大気雰囲気下で12時間放置し、その後の装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、当該環境下に置く前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、以下に示すような曝気試験を行うことにより、耐薬品性を評価した。
デシケーター内に人工汗を入れ、40℃で18時間放置した。その後、デシケーター内に、各装飾品を入れ、さらに40℃で放置した。このとき、各装飾品は、人工汗中に浸漬しないように配置した。36時間後、各装飾品をデシケーター内から取り出し、装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、前記曝気試験を行う前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、以下に示すような試験を行い、被膜(第1の被膜、第2の被膜、下地層)の密着性を評価した。
各装飾品を、以下のような熱サイクル試験に供した。
まず、装飾品を、20℃の環境下に1時間、次いで、65℃の環境下に2時間、次いで、20℃の環境下に1時間、次いで、−15℃の環境下に2時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(6時間)とし、このサイクルを合計4回繰り返した(合計24時間)。
その後、装飾品の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:被膜の浮き、剥がれ等が全く認められない。
B:被膜の浮きがほとんど認められない。
C:被膜の浮きがはっきりと認められる。
D:被膜のひび割れ、剥離がはっきりと認められる。
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行い、耐擦傷性を評価した。
スガ磨耗試験機(スガ試験機株式会社製、NUS−ISO−1)を用いて、荷重:200gfという条件で、各装飾品の被膜が形成された側の面(基材の表面が露出しているのとは反対側の面)を、合計300DS(ダブルストローク)磨耗した後の各装飾品の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。なお、上記試験は、住友スリーエム(株)製、ラッピングフィルム(酸化アルミニウム、粒度:30μm)を用いて行った。
A:被膜の表面に、傷の発生が全く認められない。
B:被膜の表面に、傷の発生がほとんど認められない。
C:被膜の表面に、傷の発生がわずかに認められる。
D:被膜の表面に、傷の発生が顕著に認められる。または、被膜の剥離が認められる。
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行うことにより、耐打痕性を評価した。
各装飾品の被膜が形成されている側の面に向けて、ステンレス鋼製の球(径1.5cm)を高さ50cmの位置から落下させて、装飾品表面の凹み大きさ(凹み痕の直径)の測定を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:凹み痕の直径が1mm未満、または、凹み痕が求められない。
B:凹み痕の直径が1mm以上2mm未満。
C:凹み痕の直径が2mm以上3mm未満。
D:凹み痕の直径が3mm以上。
これらの結果を、被膜のビッカース硬度Hvとともに表4、表5、表6に示す。なお、ビッカース硬度Hvとしては、各装飾品の表面(被膜が設けられている側の面)について、測定荷重10gfにて測定した値を示す。
これに対し、比較例では満足な結果が得られなかった。
また、前記各実施例のうち、第1の被膜が所定量のCを含むTiN(TiCN)で構成されたものについては、硝酸(HNO3):15vol%、硫酸(H2SO4):15vol%を含む水溶液を用いることにより、被膜(第1の被膜、第2の被膜)の除去を好適に行うことができ、また、その後の被膜(第1の被膜、第2の被膜)の再形成を好適に行うことができ、優れた美的外観の装飾品を再生することができた。
また、前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を用いて、図5に示すような腕時計を組み立てた。これらの腕時計について、上記と同様な評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
Claims (14)
- 基材上に、主としてTiNで構成された第1の被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
前記第1の被膜上に、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金をターゲットとして用いた乾式めっき法により、第2の被膜を形成する第2の被膜形成工程とを有することを特徴とする装飾品の製造方法。 - 前記第2の被膜をスパッタリングにより形成する請求項1に記載の装飾品の製造方法。
- 前記第1の被膜形成工程に先立ち、前記基材上に、少なくとも1層の下地層を形成する下地層形成工程を有する請求項1または2に記載の装飾品の製造方法。
- 前記下地層として、主としてTiで構成された層を形成する請求項3に記載の装飾品の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする装飾品。
- 基材と、
主としてTiNで構成された第1の被膜と、
前記第1の被膜の前記基材に対向する面とは反対側の表面に設けられ、Auを主成分とし、6.0〜9.0wt%のPd、6.0〜8.0wt%のAg、および、7.0〜9.0wt%のInを含むAu−Pd−Ag−In系合金で構成された第2の被膜とを有することを特徴とする装飾品。 - 前記基材は、少なくともその表面付近が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものである請求項5または6に記載の装飾品。
- 前記第1の被膜中におけるNの含有率が、2〜29wt%である請求項5ないし7のいずれかに記載の装飾品。
- 前記第1の被膜の平均厚さは、0.1〜5.0μmである請求項5ないし8のいずれかに記載の装飾品。
- 前記第2の被膜の平均厚さは、0.02〜2.0μmである請求項5ないし9のいずれかに記載の装飾品。
- 前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、a*が0.7〜2.9であり、かつ、b*が12.3〜16.9である請求項5ないし10のいずれかに記載の装飾品。
- 前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表示の色度図において、L*が84.2〜88.4である請求項5ないし11のいずれかに記載の装飾品。
- 装飾品は、時計用外装部品である請求項5ないし12のいずれかに記載の装飾品。
- 請求項5ないし13のいずれかに記載の装飾品を備えたことを特徴とする時計。
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