JP2006212341A - 装飾品および時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】 長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる装飾品を提供すること、また、前記装飾品を備えた時計を提供すること。
【解決手段】 装飾品1Aは、少なくとも表面付近の一部が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成された基材2と、基材2上に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3上に設けられた第2の被膜4とを有している。第1の被膜3は、主としてTiCNで構成されたものであり、第1の被膜3中におけるCの含有率とNの含有率との和は、5〜30wt%である。第2の被膜4は、M(ただし、Mは、Ti、Pt、PdおよびRhから選択される1種または2種以上)と、Inとを含む材料で構成されたものであり、第2の被膜4中におけるInの含有率は、0.05〜10wt%である。第1の被膜3の平均厚さは、1.6〜5μmである。また、第2の被膜4の平均厚さは、0.15〜0.5μmである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、装飾品および時計に関する。
時計用外装部品のような装飾品には、優れた美的外観が要求される。従来、このような目的を達成するために、一般に、装飾品の構成材料として、Pt、Ag等の金属材料を用いてきた。
しかし、金属材料の硬度は、一般に比較的低く、前記のような材料で構成された装飾品(特に、時計用外装部品や装身具等)は、その表面に傷が付き易く、長期間使用することにより美的外観が著しく低下する等の問題点を有していた。
このような問題を解決するために、基材を硬質化する技術として、例えばステンレス鋼やTiからなる基材の表面を、窒素により窒化する技術(例えば、特許文献1参照)が用いられている。
しかしながら、窒化処理は、表面荒れをおこすので、研磨外観が変わってしまう。鏡面品は特に荒れて、くもりとなってしまい、そのままでは、装飾品としては使用できない。
そこで、後工程として、機械的研磨により、鏡面に磨く方法がとられていた。しかし、この方法は、研磨により固い硬化層を削り取りすぎて硬度が落ちたり、後研磨できない形状(バフが当たらないような形状)のものは処理不可であるといった欠点がある。
また、上記のような窒化処理を施した基材においては、その色調が高級感に欠けるため、優れた外観が要求される(特に、白色、銀白色の)装飾品に適用するのが困難であった。
特開平11−318520号公報
本発明の目的は、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる装飾品を提供すること、また、前記装飾品を備えた時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の装飾品は、少なくとも表面付近の一部が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成された基材と、
前記基材上に設けられ、主としてTiCNで構成された第1の被膜と、
前記第1の被膜の前記基材に対向する面とは反対の面側に設けられ、M(ただし、Mは、Ti、Pt、PdおよびRhから選択される1種または2種以上)と、Inとを含む材料で構成された第2の被膜とを有し、
前記第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が、5〜30wt%であり、かつ、
前記第2の被膜中におけるInの含有率が、0.05〜10wt%であることを特徴とする。
これにより、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる装飾品を提供することができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜中におけるCの含有率は、3〜12wt%であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観を特に優れたものとしつつ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜中におけるNの含有率は、2〜18wt%であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観を特に優れたものとしつつ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜中におけるCの含有率が、前記第1の被膜中におけるNの含有率より低いことが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜の平均厚さは、1.6〜5μmであることが好ましい。
これにより、第1の被膜の内部応力が大きくなるのを十分に防止しつつ、装飾品を、傷や打痕等の凹み等が特に付き難いものとすることができ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第2の被膜の平均厚さは、0.15〜0.5μmであることが好ましい。
これにより、装飾品としての硬度を十分に高いものとしつつ、装飾品の美的外観を特に優れたものとすることができ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記第1の被膜は、気相成膜法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、均一な膜厚を有し(膜厚のばらつきが小さく)、かつ、基材との密着性(下地層を介しての基材との密着性を含む)が特に優れた第1の被膜を確実に形成することができる。その結果、装飾品としての審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき第1の被膜が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができるため、装飾品の信頼性を向上させる上でも有利である。
本発明の装飾品では、前記気相成膜法は、イオンプレーティングであることが好ましい。
これにより、均一な膜厚を有し(膜厚のばらつきが小さく)、かつ、基材との密着性(下地層を介しての基材との密着性を含む)が特に優れた第1の被膜を確実に形成することができる。その結果、装飾品としての審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき第1の被膜が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができるため、装飾品の信頼性を向上させる上でも有利である。
本発明の装飾品では、前記第2の被膜は、イオンプレーティングにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、第2の被膜の密着性を特に優れたものとすることができる。また、(特に、形成すべき第2の被膜が膜厚の比較的小さい場合であっても、)膜厚のばらつきが小さく、かつ、均質な第2の被膜を容易に形成することができる。したがって、装飾品の美的外観を特に優れたものとしつつ、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品では、前記基材と前記第1の被膜との間に、少なくとも1層の下地層を有することが好ましい。
これにより、例えば、基材と第1の被膜との密着性を向上させることができ、装飾品の信頼性、耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の装飾品では、前記下地層として、主としてTiで構成された層を有することが好ましい。
これにより、例えば、基材と第1の被膜との密着性をさらに向上させることができ、装飾品の信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品では、前記下地層の平均厚さは、0.1〜2.0μmであることが好ましい。
これにより、例えば、下地層の内部応力が大きくなり、クラック等が発生するのを十分に防止しつつ、基材と第1の被膜との密着性をさらに向上させることができる。
本発明の装飾品では、前記第2の被膜が設けられた側の面において、10gfの荷重で測定されるビッカース硬度Hvが650〜1000であることが好ましい。
これにより、より長期間にわたって、装飾品としての優れた美的外観を保持することができる。
本発明の装飾品は、時計用外装部品であることが好ましい。
時計用外装部品は、一般に、外部からの衝撃を受け易い装飾品であり、装飾品としての外観の美しさが要求されるとともに、実用品としての耐久性も求められるが、本発明によればこれらの要件を同時に満足することができる。
本発明の時計は、本発明の装飾品を備えたことを特徴とする。
これにより、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる時計を提供することができる。
本発明によれば、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる装飾品を提供すること、また、前記装飾品を備えた時計を提供することができる。
以下、本発明の装飾品および時計の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の装飾品の第1実施形態、およびその製造方法の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の装飾品の第1実施形態を示す断面図、図2は、図1に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の装飾品1Aは、基材2と、第1の被膜3と、第2の被膜4とを有している。
[基材]
基材(金属基材)2は、少なくとも表面付近の一部が、主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものである。主としてTiで構成される材料としては、例えば、Ti(単体としてのTi)、Ti合金等が挙げられる。また、ステンレス鋼としては、例えば、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金等が挙げられ、より具体的には、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F等、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L等が挙げられる。なお、窒化処理または浸炭処理が可能な材料としては、上記のようなTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたもの以外の材料も挙げられるが、このような材料(主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成された材料)を用いた場合には、最終的に得られる装飾品の硬度を十分に高めることが困難である。また、主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成された材料を用いなかった場合、最終的に得られる装飾品において、十分長期間にわたって優れた美的外観(特に、時計用外装部品等の装飾品において求められる美的外観)を保持するのが困難となる。
また、基材2は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。例えば、基材2は、基部と、該基部上に設けられた表面層を有するものであってもよい。基材2がこのような構成のものであると、基部の構成材料の選択により、例えば、基材2の成形の自由度を増すことができ、より複雑な形状の装飾品1Aであっても、比較的容易に製造することができる。基材2が基部と表面層とを有するものである場合、表面層の厚さ(平均値)は、特に限定されないが、0.1〜50μmであるのが好ましく、1.0〜10μmであるのがより好ましい。表面層の厚さが前記範囲内の値であると、硬化処理後における基材2の強度を特に優れたものとすることができるとともに、表面層の基部からの不本意な剥離等をより確実に防止することができる。
基材2が基部と表面層とを有するものである場合、表面層の構成材料としては、例えば、前述したような材料を好適に用いることができる。また、基部の構成材料としては、例えば、金属材料、非金属材料等を用いることができる。
基部が金属材料で構成される場合、特に優れた強度特性を有する装飾品1Aを提供することができる。
また、基部が金属材料で構成される場合、基部の表面粗さが比較的大きい場合であっても、表面層や、後述する第1の被膜3、第2の被膜4等を形成する際のレベリング効果により、得られる装飾品1Aの表面粗さを小さくすることができる。例えば、基部の表面に対する切削加工、研磨加工などによる機械加工を省略しても、鏡面仕上げを行うことが可能となったり、基部がMIM法により成形されたもので、その表面が梨地面である場合でも、容易に鏡面にすることができる。これにより、光沢に優れた装飾品を得ることができる。
基部が非金属材料で構成される場合、例えば、比較的軽量で携帯し易く、かつ、重厚な外観を有する装飾品1Aを提供することができる。
また、基部が非金属材料で構成される場合、例えば、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。
また、基部が非金属材料で構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果も得られる。
基部を構成する金属材料としては、例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Ti、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag等の各種金属や、これらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。この中でも特に、Cu、Zn、Ni、Ti、Alまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金が好ましい。基部が前述したような材料で構成されることにより、基部と、表面層との密着性を特に優れたものとすることができるとともに、基部の加工性が向上し、基材2全体としての成形の自由度がさらに増す。
また、基部を構成する非金属材料としては、例えば、セラミックス、プラスチック(特に耐熱性プラスチック)、石材、木材等が挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、Al、SiO、TiO、Ti、ZrO、Y、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の酸化物系セラミックス、AlN、Si、SiN、TiN、BN、ZrN、HfN、VN、TaN、NbN、CrN、CrN等の窒化物系セラミックス、グラファイト、SiC、ZrC、Al、CaC、WC、TiC、HfC、VC、TaC、NbC等の炭化物系のセラミックス、ZrB、MoB等のホウ化物系のセラミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組み合わせた複合セラミックスが挙げられる。
基部が前記のようなセラミックスで構成される場合、特に優れた強度、硬度を有する装飾品1Aを得ることができる。
また、基部を構成するプラスチック材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
また、基材2の形状、大きさは、特に限定されず、通常、装飾品1Aの形状、大きさに基づいて決定される。
[第1の被膜]
基材2の表面には、第1の被膜3が設けられている。第1の被膜3は、主としてTiCNで構成されたものである。そして、第1の被膜3中におけるCの含有率とNの含有率との和が5〜30wt%である。
このような第1の被膜3を有することにより、装飾品1A全体としての硬度(第1の被膜3、第2の被膜4が設けられている面側における硬度。以下同様。)を優れたものとすることができ、傷や打痕等の凹み等を付き難くすることができる。また、このような第1の被膜3を有することにより、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合であっても、装飾品1A全体としての美的外観を優れたものとすることができる。すなわち、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合には第1の被膜3の色調が装飾品1Aの美的外観に与える影響が大きくなるが、上記のようなTiCN(第1の被膜3)の色調(色度)と、第2の被膜4の色調(色度)とは、比較的類似している(差が小さいため)ため、このような場合であっても、装飾品1A全体としての美的外観を優れたものとすることができる。また、例えば、装飾品1Aの長期の使用により、第2の被膜4が磨耗、剥離した場合であっても、装飾品1Aの美的外観に与える悪影響を最小限に止めることができる。これに対し、装飾品がTiCNで構成された第1の被膜を有していない場合、装飾品全体としての硬度を十分に大きいものとすることができない。その結果、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなる。また、装飾品がTiCNで構成された第1の被膜を有していない場合、基材等の色調が装飾品としての外観に及ぼす影響が大きくなる。このため、基材の構成材料や第2の被膜の構成材料等の組合せによっては、装飾品としての美的外観を著しく損なう場合がある。また、第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が前記下限値未満である場合には、装飾品全体としての硬度を十分に大きいものとすることができない。その結果、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなる。また、第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が前記上限値を超える場合には、第1の被膜の厚さ等によっては、当該被膜の内部応力が大きくなり過ぎ、クラック等を生じ易くなる。このため、装飾品としての信頼性が著しく低下する。また、第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が前記上限値を超える場合には、第2の被膜との色調(色度)の差が大きくなり過ぎ、装飾品全体としての美的外観を低下させてしまう。
上述したように、第1の被膜3中におけるCの含有率(X1C)とNの含有率(X1N)との和(X)は、5〜30wt%であるが、10〜28wt%であるのが好ましく、15〜25wt%であるのがさらに好ましい。このように、本発明においては、第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が比較的小さいのが好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
また、第1の被膜3中におけるCの含有率(X1C)は、3〜12wt%であるのが好ましく、5〜10wt%であるのがより好ましい。第1の被膜3中におけるCの含有率が前記範囲内の値であると、装飾品1Aの硬度を十分に高いものとしつつ、第1の被膜3の色調(色度)を最適なものとすることができる。その結果、前述したような本発明の効果が、より顕著に発揮される。これに対し、第1の被膜3中におけるCの含有率が前記下限値未満であると、第1の被膜3中におけるNの含有率等によっては、装飾品1Aの硬度を十分に高いものとするのが困難になる可能性がある。また、第1の被膜3中におけるCの含有率が前記上限値を超えると、第1の被膜3の色調が濃くなり過ぎ(黒っぽくなり過ぎ)、第2の被膜4の厚さ等によっては、装飾品1Aの美的外観に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、第1の被膜3中におけるNの含有率(X1N)は、2〜18wt%であるのが好ましく、8〜16wt%であるのがより好ましい。第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、装飾品1Aの硬度を十分に高いものとしつつ、第1の被膜3の色調(色度)を最適なものとすることができる。その結果、前述したような本発明の効果が、より顕著に発揮される。これに対し、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記下限値未満であると、第1の被膜3中におけるCの含有率等によっては、装飾品1Aの硬度を十分に高いものとするのが困難になる可能性がある。また、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記上限値を超えると、第1の被膜3の色調が濃くなり過ぎ(金色っぽくなり過ぎ)、第2の被膜4の厚さ等によっては、装飾品1Aの美的外観に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、第1の被膜3中におけるCの含有率X1C[wt%]は、第1の被膜3中におけるNの含有率X1N[wt%]より低いのが好ましい。これにより、第1の被膜3の色調が黒っぽくなり過ぎるのを効果的に防止することができ、結果として、(特に、第2の被膜4の厚さが比較的小さい場合であっても、)装飾品1Aの美的外観を特に優れたものとすることができる。
また、第1の被膜3中におけるCの含有率X1C[wt%]と、第1の被膜3中におけるNの含有率X1N[wt%]とは、1≦X1N−X1C≦10の関係を満足するのが好ましく、2≦X1N−X1C≦9の関係を満足するのがより好ましく、3≦X1N−X1C≦8の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、第1の被膜3の色調が黒っぽくなり過ぎるのを効果的に防止しつつ、装飾品1Aとしての硬度を十分に大きなものとすることができる。その結果、装飾品1Aは、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
ところで、上記のように、本発明において、第1の被膜は、主としてTiCNで構成されたものである。一方、TiCやTiNも、TiCNと同様に硬質の材料である。しかしながら、第1の被膜がTiCやTiNからなるものである場合、本発明の効果は得られない。すなわち、第1の被膜がTiCからなるものである場合、第1の被膜の色調が黒っぽくなり過ぎ、装飾品全体としての美的外観を著しく損ねてしまう。また、これを防止するために、第1の被膜(TiC被膜)中におけるCの含有率を低くしていくと、装飾品全体としての硬度が十分に得られなくなり、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなる。同様に、第1の被膜がTiNからなるものである場合、第1の被膜の色調が金色っぽくなり過ぎ、装飾品全体としての美的外観を著しく損ねてしまう。また、これを防止するために、第1の被膜(TiN被膜)中におけるNの含有率を低くしていくと、装飾品全体としての硬度が十分に得られなくなり、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなる。
また、第1の被膜3が上記のようなTiCN(Cの含有率とNの含有率との和が所定範囲内のTiCN)で構成されたものであることにより、装飾品1Aは、通常の使用条件(例えば、温度:−50〜120℃、湿度:0〜100%RH)においては十分な安定性を有しつつ、特定の薬品を用いることにより、基材2に対して実質的な損傷を与えることなく、第1の被膜3の除去を容易かつ確実に行うことができる。したがって、装飾品1Aの第1の被膜3に汚損が生じた場合等には、当該第1の被膜3を除去し、再度、第1の被膜3を好適に形成することができる。このように、本発明の装飾品においては、特定の薬品を用いることによる被膜(第1の被膜)の剥離および被膜の再形成を、容易かつ確実に行うことができるため、極めて長期間にわたって、その特性を発揮しつづけることができる。第1の被膜3の剥離に使用することができる剥離剤としては、例えば、硝酸(HNO)と硫酸(HSO)とを含む溶液等が挙げられる。剥離剤がこのような溶液である場合、当該溶液中における硝酸(HNO)の濃度は10〜30vol%程度であるのが好ましく、硫酸(HSO)の濃度は10〜30vol%程度であるのが好ましい。これにより、基材2等に対する実質的な損傷を与えることなく、比較的短時間で、第1の被膜3を容易かつ確実に除去することができる。これに対し、TiN、TiCで構成された被膜や、Cの含有率とNの含有率との和が前記範囲から外れるTiCN被膜では、上記のような薬品を用いても、被膜を剥離するのが困難または実質的に不可能である。
また、第1の被膜3の平均厚さは、特に限定されないが、1.3〜5μmであるのが好ましく、1.5〜4.0μmであるのがより好ましい。第1の被膜3の平均厚さが前記範囲内の値であると、第1の被膜3の硬度を十分に高いものとしつつ、第1の被膜3の内部応力が大きくなるのをより効果的に防止することができ、結果として、装飾品1Aの信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。これに対し、第1の被膜3の平均厚さが前記下限値未満であると、第1の被膜3中におけるCの含有率(X1C)、Nの含有率(X1N)等によっては、上述したような第1の被膜3の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、第1の被膜3の平均厚さが前記上限値を超えると、第1の被膜3中におけるCの含有率(X1C)、Nの含有率(X1N)等によっては、第1の被膜3の内部応力が大きくなる傾向を示す。
また、第1の被膜3は、Cの含有率とNの含有率との和の値(または、Cの含有率の値、Nの含有率の値)が、互いに異なる複数の領域を有していてもよい。例えば、第1の被膜3は、Cの含有率とNの含有率との和が所定値Xである第1の領域と、Cの含有率とNの含有率との和が前記Xより大きい所定値X’である第2の領域とを有するものであってもよい。このような場合、例えば、第1の領域が第2の領域よりも基材2側に設けられることにより、第1の被膜3の内部応力が大きくなるのをより効果的に防止しつつ、第1の被膜3の硬度をより高いものとすることができ、基材2と第1の被膜3との密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、装飾品1Aは、より長期間にわたり、安定して、優れた美的外観を保持することができる。また、第2の領域が第1の領域よりも基材2側に設けられている場合には、以下のような効果が得られる。Cの含有率とNの含有率との和が比較的大きい第2の領域を有することにより、第1の被膜3全体としての硬度(装飾品1A全体としての硬度)を特に優れたものとしつつ、比較的濃い色調を有する第2の領域が、装飾品1Aの美的外観に与える影響を低減させることができる。すなわち、第2の領域よりも第2の被膜4側(装飾品の外表面側)に第1の領域を有することにより、装飾品1Aの外観は、第2の領域の色調による影響よりも、第1の領域の色調による影響を受け易くなるため、第1の被膜3全体としての硬度(装飾品1A全体としての硬度)を特に優れたものとしつつ、装飾品1A全体としての美的外観を特に優れたものとすることができる。したがって、装飾品1Aは、より長期間にわたり、安定して、優れた美的外観を保持することができる。
また、第1の被膜3が組成の異なる複数の領域を有するものである場合(例えば、上記のような第1の領域と第2の領域とを有するものである場合)、第1の被膜3は、例えば、異なる組成を有する複数の層を備えた積層体で構成されたものであってもよいし、組成がその厚さ方向に沿って傾斜的に変化するものであってもよい。
[第2の被膜]
第1の被膜3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)には、第2の被膜4が設けられている。
第2の被膜4は、M(ただし、Mは、Ti、Pt、PdおよびRhから選択される1種または2種以上)と、Inとを含む材料で構成されたものである。
このような第2の被膜4を有することにより、装飾品1A全体としての美的外観は優れたものとなり、特に、高級感のある白色または銀白色の色調を有するものとなる。なお、前述した第1の被膜3の色調は、第2の被膜4の色調に比較的近いものであるが、第2の被膜4を有さない場合、装飾品1A全体としての美的外観は不十分である。より具体的には、第2の被膜4を有さないと、装飾品1Aは、高級感に欠けたものとなる。
また、第2の被膜が、MまたはInの一方のみを含み、他方を含まない場合には、以下のような問題が発生する。すなわち、第2の被膜がMを含まない材料で構成されるものである場合、第1の被膜と第2の被膜との密着性が著しく低下し、比較的小さな外力により容易に剥離等を生じてしまう。また、第2の被膜がInを含まないものであると、第2の被膜自体の硬度が著しく低くなり、上述したような第1の被膜を有していたとしても、装飾品全体としての硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐打痕性(打痕の付き難さ)等を十分に高めることができない。その結果、装飾品全体としての耐久性が低くなる。また、第2の被膜がInを含まないものであると、第2の被膜の明度が落ち、暗くなる傾向を示し、装飾品全体としての美的外観を十分に優れたものとすることができない。
また、第2の被膜4中におけるInの含有率(X2In)は、0.05〜10wt%である。第2の被膜4中におけるInの含有率が前記範囲内の値であることにより、上述したようなMとInとを含むことによる効果が確実に発揮される。これに対し、第2の被膜中におけるInの含有率が前記下限値未満であると、第2の被膜自体の硬度が低くなり、装飾品全体としての硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐打痕性(打痕の付き難さ)等を十分に高めることできない。一方、第2の被膜中におけるInの含有率が前記上限値を超えると、第1の被膜と第2の被膜との密着性が低下し、装飾品として求められる耐久性が得られない。また、第2の被膜中におけるInの含有率が前記上限値を超えると、第2の被膜中において、構成組織の相分離が起こり易くなり(より具体的には、Mの含有率の高い相とInの含有率の高い相とが併存することとなり)、均質な膜を形成するのが困難となる。その結果、装飾品としての美的外観、耐食性、耐久性等の低下を引き起こす。
上述したように、第2の被膜4中におけるInの含有率(X2In)は、0.05〜10wt%であるが、特に、1.0〜8wt%であるのが好ましく、3.2〜7wt%であるのがより好ましい。第2の被膜4中におけるMの含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果は、さらに顕著なものとして発揮される。これに対し、第2の被膜4中におけるInの含有率が前記下限値未満であると、第2の被膜4自体の硬度が低くなり、装飾品1A全体としての硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐打痕性(打痕の付き難さ)等を十分に高めることが困難になる可能性がある。一方、第2の被膜4中におけるInの含有率が前記上限値を超えると、Mの組成(種類)やMの含有率等によっては、第1の被膜3と第2の被膜4との密着性が低下する傾向を示す。
また、第2の被膜4中におけるMの含有率(X2M)は、特に限定されないが、45〜99.95wt%であるのが好ましく、80〜98wt%であるのがより好ましく、82〜96.8wt%であるのがさらに好ましい。第2の被膜4中におけるMの含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果は、さらに顕著なものとして発揮される。これに対し、第2の被膜4中におけるMの含有率が前記下限値未満であると、Mの組成(種類)やInの含有率等によっては、第1の被膜3と第2の被膜4との密着性が低下する傾向を示す。一方、第2の被膜4中におけるMの含有率が前記上限値を超えると、Inの含有率が相対的に低下し、第2の被膜4自体の硬度が低くなり、装飾品1A全体としての硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐打痕性(打痕の付き難さ)等を十分に高めることが困難になる可能性がある。
また、第2の被膜4中におけるMの含有率とInの含有率との和(X2M+X2In)は、50wt%以上であるのが好ましく、90wt%以上であるのがより好ましく、99wt%以上であるのがさらに好ましい。これにより、前述したような効果は、さらに顕著なものとして発揮される。
また、第2の被膜4中には、MおよびIn以外の成分が含まれていてもよい。例えば、第2の被膜中には、Ir、Ag、Cu、Fe、Co、Ni等の成分が含まれていてもよい。このような成分が含まれることにより、当該成分に固有の優れた効果が発揮される。例えば、第2の被膜4中にIr、Fe、Co、Niが含まれる場合、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐打痕性(打痕の付き難さ)等を高めることができるという効果が得られる。また、第2の被膜4中にAg、Cuが含まれる場合、微妙な色調を自由調整ができ、デザインバリエーションを増やすことができる。なお、第2の被膜中にMおよびIn以外の成分(以下、Qで表す)が含まれる場合、Qの含有率(複数種の成分が含まれる場合はそれらの含有率の和)は、10wt%以下であるのが好ましく、5wt%以下であるのがより好ましく、0.01〜3wt%であるのがさらに好ましい。これにより、MとInとを含むことによる効果を阻害することなく、Qを含むことによる効果を十分に発揮させることができる。
第2の被膜4の平均厚さは、特に限定されないが、0.15〜0.5μmであるのが好ましく、0.15〜0.3μmであるのがより好ましい。第2の被膜4の平均厚さが前記範囲内の値であると、装飾品1A全体としての美的外観を特に優れたものとしつつ、装飾品1A全体としての硬度を特に高いものとすることができる。その結果、装飾品1Aは、より長期間にわたり、安定して、優れた美的外観を保持することができる。これに対し、第2の被膜4の平均厚さが前記下限値未満であると、第1の被膜3の組成(例えば、Cの含有率、Nの含有率)等によっては、装飾品1Aとしての外観を十分に優れたものとするのが困難になる可能性がある。また、第2の被膜4の平均厚さが前記上限値を超えると、前述した第1の被膜を有することによる効果を十分に発揮させるのが困難となり、装飾品1Aの硬度が低下する傾向を示す。
また、第2の被膜4は、互いに組成の異なる複数の領域を有するものであってもよい。また、第2の被膜は、例えば、異なる組成を有する複数の層を備えた積層体で構成されたものであってもよいし、組成がその厚さ方向に沿って傾斜的に変化するものであってもよい。
[装飾品]
以上説明したような装飾品1Aは、装飾性を備えた物品であればいかなるものでもよいが、例えば、置物等のインテリア、エクステリア用品、宝飾品、時計ケース(胴、裏蓋、胴と裏蓋とが一体化されたワンピースケース等)、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱機構等を含む)、文字盤、時計用針、ベゼル(例えば、回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅうず等)、ボタン、カバーガラス、ガラス縁、ダイヤルリング、見切板、パッキン等の時計用外装部品、ムーブメントの地板、歯車、輪列受け、回転錘等の時計用内装部品、メガネ(例えば、メガネフレーム)、ネクタイピン、カフスボタン、指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ブローチ、ペンダント、イヤリング、ピアス等の装身具、ライターまたはそのケース、自動車のホイール、ゴルフクラブ等のスポーツ用品、銘板、パネル、賞杯、その他ハウジング等を含む各種機器部品、各種容器等に適用することができる。この中でも特に、時計用外装部品がより好ましい。時計用外装部品は、装飾品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品として、耐久性、耐食性、耐擦傷性、耐摩耗性や、優れた触感等が要求されるが、本発明によればこれらの要件を全て満足することができる。なお、本明細書中での「時計用外装部品」とは、外部から視認可能なものであればいかなるものであってもよく、時計の外部に露出しているものに限らず、時計の内部に内蔵されたものも含む。
また、装飾品1Aは、第2の被膜4が設けられた側の面において、10gfの荷重で測定されるビッカース硬度Hvが650〜1500であるのが好ましい。これにより、より長期間にわたって、装飾品としての優れた美的外観を保持することができる。
次に、上述した装飾品1Aの製造方法について説明する。
図2は、図1に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態の装飾品の製造方法は、基材2の表面の少なくとも一部(2a)に、第1の被膜3を形成する第1の工程(2b)と、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に、第2の被膜4を形成する第2の工程(2c)とを有する。
[基材]
基材2としては、前述したようなものを用いることができる。
また、基材2は、いかなる方法で成形されたものであってもよいが、基材2の成形方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロストワックス法等が挙げられる。
また、基材2が前述したような基部と表面層とを有するものである場合、基材2は、以下のようにして製造することができる。すなわち、前述したような方法により製造した基部上に、表面層を形成することにより基材2を得ることができる。表面層の形成方法としては、例えば、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射等が挙げられる。
また、基材2の表面に対しては、例えば、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工が施されてもよい。これにより、得られる装飾品1Aの表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、得られる装飾品1Aの装飾性をさらに向上させることができる。鏡面加工は、例えば、周知の研磨方法を用いて行うことができ、例えば、バフ(羽布)研磨、バレル研磨、その他の機械研磨等を採用することができる。
また、このような表面加工を施した基材2を用いて製造される装飾品1Aは、第1の被膜3、第2の被膜4に対して前記表面加工を直接施すことにより得られるものに比べて、ギラツキ等が抑制されたものとなり、特に美的外観に優れたものとなる。また、前述したように、第1の被膜3は硬質材料であるTiCNで構成されているため、第1の被膜3に対して表面加工を直接施す場合には、当該表面加工を施す際に第1の被膜3にカケ等の欠陥を生じ易く、装飾品1Aの製造の歩留りが著しく低下する場合があるが、基材2に対して表面処理を行うことにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。また、基材2に対する表面処理は、第1の被膜3に対する表面加工に比べて、温和な条件で容易に行うことができる。また、第2の被膜4は、通常、その厚さが比較的薄いものであるため、第2の被膜4の形成後に上記のような表面加工を施した場合、対応する部位における第2の被膜の膜厚が極端に薄くなったり、第1の被膜が露出してしまう可能性がある。このような場合、装飾品1Aの美的外観を著しく損なうことになる。
[第1の工程(第1の被膜形成工程)]
基材2の表面に、TiCNで構成された第1の被膜3を形成する(2b)。
第1の被膜3の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた第1の被膜3を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1Aの審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、形成すべき第1の被膜3が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1Aの信頼性を向上させる上でも有利である。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、第1の被膜3中におけるCの含有率およびNの含有率をより確実に制御することができる。
また、上記のような乾式めっき法(気相成膜法)の中でも、イオンプレーティングが特に好ましい。第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、上記のような効果はより顕著なものとなる。すなわち、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた第1の被膜3をより確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1Aの審美的外観、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、形成すべき第1の被膜3が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを特に小さいものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、第1の被膜3中におけるCの含有率およびNの含有率をより確実に制御することができる。
なお、上記のような乾式めっき法を適用する場合、例えば、Tiをターゲットとして用い、C(炭素)およびN(窒素)を含む雰囲気中で処理を行うことにより、第1の被膜3を容易かつ確実に形成することができる。このような雰囲気ガスとしては、例えば、窒素ガス(Nガス)と、アセチレン等の炭化水素ガスとの混合ガスを用いることができる。そして、これらの配合比率等を適宜調整することにより、形成される第1の被膜3の組成(C、Nの含有率)等を調節することができる。
なお、雰囲気ガス中には、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスが含まれていてもよい。これにより、第1の被膜3中におけるCの含有率およびNの含有率を、容易かつ確実に比較的低く制御することができる。また、雰囲気ガス中には、例えば、酸素ガス(O)等が含まれていてもよい。これにより、酸素を含む組成(TiCNO)の第1の被膜3を容易かつ確実に形成することができる。
[第2の工程(第2の被膜形成工程)]
次に、上記のようにして形成された第1の被膜3の表面に、第2の被膜4を形成する(2c)。
第2の被膜4の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。第2の被膜4の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、第1の被膜3との密着性が特に優れた第2の被膜4を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1Aの審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第2の被膜4の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、形成すべき第2の被膜4が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1Aの信頼性を向上させる上でも有利である。
また、上記のような乾式めっき法(気相成膜法)の中でも、イオンプレーティングが特に好ましい。第2の被膜4の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、上記のような効果はより顕著なものとなる。すなわち、第2の被膜4の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、第1の被膜3との密着性が特に優れた第2の被膜4をより確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1Aの審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第2の被膜4の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、形成すべき第2の被膜4が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができるため、装飾品1Aの信頼性を向上させる上でも有利である。
また、上述した第1の工程を乾式めっき法により行う場合、例えば、ターゲットの種類、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成(例えば、Arガス等の不活性ガスと窒素ガスと炭化水素ガスとの配合比)等を変更することにより、同一装置内で、第1の工程と第2の工程とを、(基材2を装置内から取り出すことなく)引き続いて行うことができる。これにより、基材2、第1の被膜3、第2の被膜4の密着性が特に優れたものとなるとともに、装飾品1Aの生産性も向上する。
次に、本発明の装飾品の第2実施形態、およびその製造方法の好適な実施形態について説明する。
図3は、本発明の装飾品の第2実施形態を示す断面図、図4は、図3に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
以下、第2実施形態の装飾品およびその製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の装飾品1Bは、基材2と、基材2の表面に設けられた下地層5と、下地層5の表面に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3の表面に設けられた第2の被膜4とを有している。すなわち、装飾品1Bは、基材2と第1の被膜3との間に下地層5を有している以外は、前述した装飾品1Aと同様である。したがって、以下、下地層5について説明する。
[下地層]
下地層5は、例えば、基材2と第1の被膜3との密着性を向上させる機能(密着性向上層としての機能)や、基材2の傷をレベリング(ならし)により補修する機能(レベリング層としての機能)、得られる装飾品において、外部からの衝撃を緩和する機能(クッション層としての機能)等、いかなる機能を有するものであってもよい。
下地層5の構成材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Alやこれらのうち少なくとも1種を含む合金等の金属材料等が挙げられるが、中でも、Tiが好ましい。下地層5が主としてTiで構成されたものであると、例えば、基材2と第1の被膜3との密着性をさらに向上させることができ、装飾品1Bの信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、下地層5が主としてTiで構成されたものであると、基材2の表面の凹凸を緩和するレベリング層としての機能がより顕著に発揮される。また、下地層5が主としてTiで構成されたものであると、得られる装飾品1Bにおいて、下地層5が外部からの衝撃を緩和するクッション層としてより効果的に機能し、その結果、装飾品1Bは、打痕等の凹みが特に生じ難いものとなる。
下地層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜2.0μmであるのが好ましく、0.5〜1.0μmであるのがより好ましい。下地層5の平均厚さが前記範囲内の値であると、下地層5の内部応力が大きくなるのを十分に防止しつつ、上記のような下地層5の機能をより効果的に発揮することができる。
次に、上述した装飾品1Bの製造方法について説明する。
図4は、図3に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態の装飾品の製造方法は、基材2の表面の少なくとも一部(4a)に、下地層5を形成する工程(4b)と、下地層5の表面の少なくとも一部に第1の被膜3を形成する第1の工程(4c)と、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に第2の被膜4を形成する第2の工程(4d)とを有する。すなわち、第1の被膜3の形成に先立ち、下地層5を形成する以外は、前述した実施形態と同様である。
[下地層形成工程]
本実施形態では、基材2の表面に下地層5を形成する(4b)。
下地層5の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。下地層5の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた下地層5を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1Bの審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、下地層5の形成方法として乾式めっき法(気相成膜法)を適用することにより、形成すべき下地層5が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1Bの信頼性を向上させる上でも有利である。
また、上述した第1の工程(および第2の工程)を乾式めっき法により行う場合、例えば、ターゲットの種類、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成(例えば、Arガス等の不活性ガスと窒素ガスと炭化水素ガスとの配合比)等を変更することにより、同一装置内で、下地層形成工程と第1の工程(と第2の工程)とを、(基材2を装置内から取り出すことなく)引き続いて行うことができる。これにより、基材2、下地層5、第1の被膜3(、第2の被膜4)の密着性が特に優れたものとなるとともに、装飾品1Bの生産性も向上する。また、特に、下地層5がTiで構成されるものである場合、同一のターゲットを用い、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成を変更することにより、好適に、下地層5と第1の被膜3とを引き続いて(連続的に)形成することができる。
次に、上述したような本発明の装飾品を備えた本発明の時計について説明する。
図5は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
図5に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)10は、胴(ケース)22と、裏蓋23と、ベゼル(縁)24と、ガラス板25とを備えている。また、ケース22内には、図示しないムーブメント(例えば、文字盤、針付きのもの)が収納されている。
胴22には巻真パイプ26が嵌入・固定され、この巻真パイプ26内にはりゅうず27の軸部271が回転可能に挿入されている。
胴22とベゼル24とは、プラスチックパッキン28により固定され、ベゼル24とガラス板25とはプラスチックパッキン29により固定されている。
また、胴22に対し裏蓋23が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)50には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)40が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部50が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず27の軸部271の途中の外周には溝272が形成され、この溝272内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)30が嵌合されている。ゴムパッキン30は巻真パイプ26の内周面に密着し、該内周面と溝272の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず27と巻真パイプ26との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず27を回転操作したとき、ゴムパッキン30は軸部271と共に回転し、巻真パイプ26の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
本発明の腕時計10は、ベゼル24、胴22、りゅうず27、裏蓋23、時計バンド等の装飾品(特に、時計用外装部品)のうち少なくとも1つが前述したような本発明の装飾品で構成されたものである。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の装飾品の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、第1の工程と第2の工程との間に、洗浄等の中間処理を施してもよい。また、基材に対しては、切削、研削、研磨、ホーニング等の前処理を施してもよい。
また、装飾品の表面の少なくとも一部には、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等を付与し、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向上するコート層(保護層)等が形成されていてもよい。このようなコート層は、装飾品の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、第1の被膜と第2の被膜とは、互いに隣接して設けられるものとして説明したが、第1の被膜と第2の被膜との間には、少なくとも1層の中間層が設けられていてもよい。これにより、例えば、第1の被膜と第2の被膜との密着性の更なる向上等を図ることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.装飾品の製造
(実施例1)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、ステンレス鋼(SUS444)を用いて、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、イオンプレーティング装置を用いて、以下のようにして、主としてTiCNで構成される第1の被膜を形成した。
まず、イオンプレーティング装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を2×10−3Paまで排気(減圧)した。その後、窒素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、30ml/分、20ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を3.0×10−3Paとした。このような状態(窒素ガス、アセチレンガスを導入し続けた状態)で、ターゲットとしてTiを用い、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定し、この状態で60分間気相成膜(イオンプレーティング)を行った(第1の工程)。その結果、TiCNで構成され、平均厚さが1.6μmの第1の被膜が形成された。形成された第1の被膜中のCの含有率は10.0wt%、Nの含有率は15.0wt%であった。なお、第1の被膜の厚さは、JIS H 5821で規定される顕微鏡断面試験方法に従い測定した。
その後、上記のイオンプレーティング装置を用いて、第1の被膜の表面に、Ti−In合金で構成される第2の被膜を形成した(第2の工程)。第2の被膜の形成は、以下のようにして行った。
まず、イオンプレーティング装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を2×10−3Paまで排気(減圧)した。その後、アルゴンガスを、100ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧を5.0×10−3Paとした。このような状態(アルゴンガスを導入し続けた状態)で、ターゲットとしてTi−In合金を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:25Aに設定し、この状態で10分間気相成膜(イオンプレーティング)を行った(第2の工程)。その結果、Ti−In合金で構成され、平均厚さが0.3μmの第2の被膜が形成された。形成された第2の被膜中におけるTiの含有率は95.5wt%、Inの含有率は4.5wt%であった。
なお、第1の被膜、第2の被膜の厚さは、JIS H 5821で規定される顕微鏡断面試験方法に従い測定した。
(実施例2、3)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例4)
第2の工程において、ターゲットとしてPt−In合金を用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例5、6)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(PtとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例4と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例7)
第2の工程において、ターゲットとしてTi−Pd−In合金を用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例8、9)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとPdとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例7と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例10)
基材として、Tiで構成されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材としては、以下に述べるような金属粉末射出成形(MIM)により作製したものを用いた。
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径52μmのTi粉末を用意した。
このTi粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、得られた混練物を粉砕、分級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレットを用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)し、腕時計ケースの形状を有する成形体を製造した。このとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金型温度40℃、射出圧力80kgf/cm、射出時間20秒、冷却時間40秒であった。
次に、前記成形体に対して、脱脂炉を用いた脱バインダー処理を施し、脱脂体を得た。この脱バインダー処理は、1.0×10−1Paのアルゴンガス雰囲気中、80℃で1時間、次いで、10℃/時間の速度で400℃まで昇温した。熱処理時におけるサンプルの重さを測定し、重量低下がなくなった時点を脱バインダー終了時点とした。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨した後、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
(実施例11、12)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例13)
第2の工程において、ターゲットとしてPt−In合金を用いた以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例14、15)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(PtとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例16)
第2の工程において、ターゲットとしてTi−Pd−In合金を用いた以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例17、18)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1に示すようにするとともに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとPdとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例16と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例19)
第1の被膜の形成に先立ち、基材の表面に下地層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
下地層の形成は、以下のようにして行った。
まず、前記実施例1と同様にして洗浄を行った基材を、イオンプレーティング装置の処理室内に設置した。
次に、イオンプレーティング装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。
次に、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して、5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
その後、処理室内にアルゴンガスを導入し、400Vの直流電圧を印加して30〜60分保持した。このような状態で、ターゲットとしてTiを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:20A、処理時間:20分間に設定することにより、Tiで構成される下地層を形成した(下地層形成工程)。形成された下地層の平均厚さは、0.5μmであった。
(実施例20〜22)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表1、表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表1、表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表1、表2に示すようにした以外は、前記実施例19と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例23)
第2の工程において、ターゲットとしてPt−In合金を用いた以外は、前記実施例19と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例24〜26)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(PtとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表2に示すようにした以外は、前記実施例23と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例27)
第2の工程において、ターゲットとしてTi−Pd−In合金を用いた以外は、前記実施例19と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例28〜30)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとPdとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表2に示すようにした以外は、前記実施例27と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例31)
基材として、Tiで構成されたものを用いた以外は、前記実施例19と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材としては、前記実施例10で説明したのと同様の方法、条件で作製したものを用いた。
(実施例32〜34)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表2に示すようにした以外は、前記実施例31と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例35)
第2の工程において、ターゲットとしてPt−In合金を用いた以外は、前記実施例31と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例36〜38)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(PtとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表2に示すようにした以外は、前記実施例35と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例39)
第2の工程において、ターゲットとしてPd−Ir−In合金を用いた以外は、前記実施例31と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例40〜42)
下地層を形成する工程の処理時間を変更することにより、下地層の厚さを表2に示すようにするとともに、第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表2に示すようにし、さらに、第2の工程で用いるターゲットの組成(PdとIrとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表2に示すようにした以外は、前記実施例39と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例1)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、前記実施例10と同様にしてTi製の基材を作製した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、浸炭処理を施すことにより、TiCで構成された浸炭層(TiC層)を形成した。
浸炭処理は、以下に説明するようなプラズマ浸炭処理により行った。
すなわち、加熱炉内にグラファイトファイバー等の断熱材で囲まれた処理室を有し、この処理室内をロッドグラファイトからなる発熱体で加熱すると共に、処理室内の上部に直流グロー放電の正極を接続し、かつ処理品の載置台に陰極を接続し、また処理室内の要所にガスマニホールドを設置して炭化水素、窒素、アルゴン、水素などのプロセスガス(浸炭用ガスおよび希釈用ガス)を適宜導入するようにした浸炭処理装置を用意した。
そして、まず、浸炭処理装置の処理室内に基材を設置し、処理室内を1.3Paまで減圧した。このように、処理室内が減圧された状態で、ヒータにより、基材を約300℃に加熱した。
その後、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
その後、処理室内にプロパンガスを導入することにより、処理室内のガス組成をほぼ100%プロパンガスとし、ガス圧力を53Paとし、400Vの直流電圧を印加して90〜180分保持することにより、プラズマ浸炭処理を行った。その後、アルゴンガスおよび窒素ガスを処理室内に圧入して基材を常温にまで冷却した。このような浸炭処理により、約15μmの厚さの浸炭層が形成された。
その後、浸炭層の表面に、前記実施例1と同様にして第2の被膜を形成し、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例2)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、前記実施例10と同様にしてTi製の基材を作製した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、窒化処理を施すことにより、TiNで構成された窒化層(TiN層)を形成した。
窒化処理は、以下に説明するようなイオン窒化処理により行った。
まず、イオン窒化処理装置の処理室内に基材を設置し、処理室内を1.3×10−3Paまで減圧した。このように、処理室内が減圧された状態で、ヒータにより基材を300℃に加熱した。
次に、処理室内に水素ガスとアンモニアガスとを導入した。導入後における、処理室内での水素ガスの分圧は、1.3×10−4Pa、アンモニアガスの分圧は、1.2×10−4Paであった。
その後、400Vの直流電圧を印加し、温度300℃に加熱して8時間保持しながら、グロー放電を行い、窒化処理を行い約15μmの厚さの窒化層を形成した。
その後、窒化層の表面に、前記実施例1と同様にして第2の被膜を形成し、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例3)
第1の被膜を形成することなく、直接、基材の表面に第2の被膜を形成した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例4)
第1の被膜を形成した後、第2の被膜を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例5、6)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例7)
第2の工程において、ターゲットとしてTiを用い、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例8)
第2の工程において、ターゲットとしてInを用い、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例9、10)
第2の工程で用いるターゲットの組成(TiとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例11)
第1の被膜を形成することなく、直接、基材の表面に第2の被膜を形成した以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例12)
第1の被膜を形成した後、第2の被膜を形成しなかった以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例13、14)
第1の工程における窒素ガスおよびアセチレンガスの流量を変更し、第1の工程の処理時間を変更することにより第1の被膜の平均厚さ、第1の被膜中におけるCの含有率、Nの含有率を表3に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例15)
第2の工程において、ターゲットとしてPdを用い、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例16)
第2の工程において、ターゲットとしてInを用い、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例17)
第2の工程において、ターゲットとしてPt−Inを用い、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記実施例10と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例18)
第2の工程で用いるターゲットの組成(PtとInとの含有比率)、第2の工程の処理時間を変更することにより第2の被膜の組成、平均厚さを表3に示すようにした以外は、前記比較例17と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
各実施例および各比較例の装飾品の構成を表1、表2、表3にまとめて示す。なお、表1〜表3中においては、ステンレス鋼をSUSで示した。また、表3中、比較例1、2については、それぞれ、浸炭処理、窒化処理により形成された浸炭層、窒化層に関する値を、第1の被膜の欄に示した。
Figure 2006212341
Figure 2006212341
Figure 2006212341
2.外観評価
上記の各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、目視および顕微鏡による観察を行い、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:外観優良。
○:外観良。
△:外観やや不良。
×:外観不良。
3.耐擦傷性評価
上記の各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行い、耐擦傷性を評価した。
スガ磨耗試験機(スガ試験機株式会社製、NUS-ISO-1)を用いて、荷重:500gfという条件で、各装飾品の被膜が形成された側の面(基材の表面が露出しているのとは反対側の面)を、合計300DS(ダブルストローク)磨耗した後の各装飾品の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。なお、上記試験は、住友スリーエム(株)製、ラッピングフィルム(酸化アルミニウム、粒度:30μm)を用いて行った。
◎:被膜の表面に、傷の発生が全く認められない。
○:被膜の表面に、傷の発生がほとんど認められない。
△:被膜の表面に、傷の発生がわずかに認められる。
×:被膜の表面に、傷の発生が顕著に認められる。
4.耐打痕性(打痕の付き難さ)評価
上記の各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行うことにより、耐打痕性を評価した。
各装飾品の被膜が形成されている側の面に向けて、ステンレス鋼製の球(径1cm)を高さ60cmの位置から落下させて、装飾品表面の凹み大きさ(凹み痕の直径)の測定を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:凹み痕の直径が1mm未満、または、凹み痕が求められない。
○:凹み痕の直径が1mm以上2mm未満。
△:凹み痕の直径が2mm以上3mm未満。
×:凹み痕の直径が3mm以上。
5.薬品による被膜の除去および被膜の再形成
上記の各実施例および各比較例で製造した装飾品について、薬品による被膜の除去と、それぞれに対応する上述した各実施例および各比較例での条件と同様の条件で、被膜の再形成とを行い、被膜(第1の被膜、第2の被膜)の除去、被膜の再形成のし易さを、以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:薬品による被膜の除去および被膜の再形成を容易かつ確実に行うことができ、か
つ、被膜が再形成された装飾品についての外観が、薬品による被膜の除去を行う
前と同等。
○:薬品による被膜の除去および被膜の再形成がやや困難であるが、被膜が再形成さ
れた装飾品についての外観は、薬品による被膜の除去を行う前とほぼ同等。また
は、薬品による被膜の除去および被膜の再形成は容易であるが、被膜が再形成さ
れた装飾品についての外観が、薬品による被膜の除去を行う前に比べてやや劣る

△:薬品による被膜の除去および被膜の再形成がやや困難であり、かつ、被膜が再形
成された装飾品についての外観が、薬品による被膜の除去を行う前に比べてやや
劣る。
×:薬品による被膜の除去および被膜の再形成が実質的に不可能、および/または、
被膜が再形成された装飾品についての外観が、薬品による被膜の除去を行う前に
比べて著しく劣る。
なお、被膜を除去するための方法としては、上記薬品として、硝酸(HNO):15vol%、硫酸(HSO):15vol%を含む水溶液を用い、この水溶液中に各装飾品を浸漬する方法を採用した。
また、上記薬品による被膜の除去ができなかった装飾品については、研削、研磨等の機械的な方法による被膜の除去を試みた。その結果、被膜を除去することはできたものの、基材に傷が付いてしまった。その後、被膜が除去された装飾品に対して、前記と同様の条件で被膜を再形成したところ、基材の傷による影響で、得られた装飾品は審美性が著しく低下していた。
これらの結果を、被膜のビッカース硬度Hvとともに表4、表5に示す。なお、ビッカース硬度Hvとしては、各装飾品の表面(第2の被膜が設けられている側の面)について、測定荷重10gfにて測定した値を示す。
Figure 2006212341
Figure 2006212341
表4、表5から明らかなように、本発明の装飾品は、いずれも優れた美的外観を有していた。また、本発明の装飾品は、高い硬度を有しており、耐擦傷性、耐打痕性にも優れていた。また、第1の被膜中におけるC、Nの含有率、第2の被膜中におけるInの含有率、被膜(第1の被膜、第2の被膜、下地層)の厚さが好ましい範囲の値であるものでは、特に優れた結果が得られた。
また、本発明の装飾品は、いずれも、ザラツキ感のない、優れた触感を有していた。
また、本発明においては、イオンプレーティング時の雰囲気組成等を適宜選択することにより、容易に、所望の組成、特性を有する被膜(第1の被膜、第2の被膜、下地層)を形成することができた。
また、本発明の装飾品では、優れた耐久性を有しつつ、特定の薬品を用いることにより、被膜を容易かつ確実に除去することができ、被膜の再形成を好適に行うことができた。
これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。特に、比較例1、2の装飾品は、浸炭層、窒化層の形成時における表面荒れが顕著で、その後、第2の被膜(Ti−In層)により被覆した装飾品についての外観も著しく劣っていた。また、比較例3〜18の装飾品についても外観に劣り、高級感が欠如していた。中でも、第1の被膜中におけるCの含有率が高い比較例6、14の装飾品では、黒味の強い外観を有しており、第1の被膜の表面に第2の被膜が被覆されているにも関わらず、第1の被膜の色彩が装飾品としての外観にも悪影響を及ぼしていた。また、比較例3、5、6、11、13、14の装飾品は、耐擦傷性、耐打痕性の評価が特に低かった。これは、第1の被膜を有していない、または、第1の被膜のビッカース硬度が低いためであると考えられる。中でも、比較例6、14の装飾品は、第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が大きいにも関わらず、上記のようにして測定されたビッカース硬度が低いのは、第1の被膜の厚さが小さいためであると考えられる。そこで、第1の被膜の成膜時間を変更し、第1の被膜の厚さが大きい以外は、前記比較例6、14と同様の構成の装飾品を製造しようと試みたところ、成膜中の第1の被膜の膜厚が約1.2μmとなった時点で、当該第1の被膜に大きなクラックが生じてしまった。その結果、このような方法により製造された装飾品は、著しく外観に劣るものとなった。また、比較例7、9、15、17の装飾品も、耐擦傷性、耐打痕性の評価が特に低かった。これは、第2の被膜中におけるInの含有率が低いためであると考えられる。
また、前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を用いて、図5に示すような腕時計を組み立てた。これらの腕時計について、上記と同様な評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
本発明の装飾品の第1実施形態を示す断面図である。 図1に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の装飾品の第2実施形態を示す断面図である。 図3に示す装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
符号の説明
1A、1B…装飾品 2…基材 3…第1の被膜 4…第2の被膜 5…下地層 10…腕時計(携帯時計) 22…胴(ケース) 23…裏蓋 24…ベゼル(縁) 25…ガラス板 26…巻真パイプ 27…りゅうず 271…軸部 272…溝 28…プラスチックパッキン 29…プラスチックパッキン 30…ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 40…ゴムパッキン(裏蓋パッキン) 50…接合部(シール部)

Claims (15)

  1. 少なくとも表面付近の一部が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成された基材と、
    前記基材上に設けられ、主としてTiCNで構成された第1の被膜と、
    前記第1の被膜の前記基材に対向する面とは反対の面側に設けられ、M(ただし、Mは、Ti、Pt、PdおよびRhから選択される1種または2種以上)と、Inとを含む材料で構成された第2の被膜とを有し、
    前記第1の被膜中におけるCの含有率とNの含有率との和が、5〜30wt%であり、かつ、
    前記第2の被膜中におけるInの含有率が、0.05〜10wt%であることを特徴とする装飾品。
  2. 前記第1の被膜中におけるCの含有率は、3〜12wt%である請求項1に記載の装飾品。
  3. 前記第1の被膜中におけるNの含有率は、2〜18wt%である請求項1または2に記載の装飾品。
  4. 前記第1の被膜中におけるCの含有率が、前記第1の被膜中におけるNの含有率より低い請求項1ないし3のいずれかに記載の装飾品。
  5. 前記第1の被膜の平均厚さは、1.6〜5μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の装飾品。
  6. 前記第2の被膜の平均厚さは、0.15〜0.5μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の装飾品。
  7. 前記第1の被膜は、気相成膜法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の装飾品。
  8. 前記気相成膜法は、イオンプレーティングである請求項7に記載の装飾品。
  9. 前記第2の被膜は、イオンプレーティングにより形成されたものである請求項1ないし8のいずれかに記載の装飾品。
  10. 前記基材と前記第1の被膜との間に、少なくとも1層の下地層を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の装飾品。
  11. 前記下地層として、主としてTiで構成された層を有する請求項10に記載の装飾品。
  12. 前記下地層の平均厚さは、0.1〜2.0μmである請求項10または11に記載の装飾品。
  13. 前記第2の被膜が設けられた側の面において、10gfの荷重で測定されるビッカース硬度Hvが650〜1000である請求項1ないし12のいずれかに記載の装飾品。
  14. 装飾品は、時計用外装部品である請求項1ないし13のいずれかに記載の装飾品。
  15. 請求項1ないし14のいずれかに記載の装飾品を備えたことを特徴とする時計。
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