JP2013224965A - 装飾品および時計 - Google Patents

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淳 川上
Wataru Tsukamoto
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Abstract

【課題】ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を安定的に製造することのできる装飾品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の装飾品1の製造方法は、主としてTiNで構成された第1の被膜3を形成する工程(1c)と、70.0wt%以上85.0wt%以下のAuおよび15.0wt%以上30.0wt%以下のCuを含むターゲットを用いた乾式めっき法により、第1の被膜3上に第2の被膜4を形成する工程(1d)と、300℃以上395℃以下に加熱する加熱処理を施し、その後、冷却処理を施すことにより、第2の被膜4の構成材料の固溶体化を促進する工程(1e)と、酸処理を施すことにより、第2の被膜4の構成成分のうち、固溶体を構成していないものの少なくとも一部を除去する工程(1f)とを有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、装飾品の製造方法、装飾品および時計に関する。
時計用外装部品のような装飾品には、優れた美的外観が要求される。従来、このような目的を達成するために、一般に、装飾品の構成材料として、Au、Pt、Ag等の金属材料を用いてきた。特に、単体金属では表現することのできない色調、外観を有する装飾品を得る目的で、合金、例えば、金属光沢のあるピンク色を呈するピンクゴールド等が用いられている。このようなピンク色を呈するAu合金メッキ被膜を備えた装飾品としては、特許文献1に開示されているようなものがある。
しかし、従来、ピンク色を呈するAu合金メッキ被膜を備えた装飾品では、各部位での色むらを生じ易く、安定した外観を得るのが困難であった。また、上記のような合金は硬度が低く、当該合金で構成された装飾品(特に、時計用外装部品や装身具等)は、その表面に傷が付き易く、長期間使用することにより美的外観が著しく低下する等の問題点を有していた。
特開昭64−62478号公報
本発明の目的は、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を安定的に製造することのできる装飾品の製造方法を提供すること、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を提供すること、また、当該装飾品を備えた時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の装飾品の製造方法は、基材上に、主としてTiNで構成された第1の被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
70.0wt%以上85.0wt%以下のAuおよび15.0wt%以上30.0wt%以下のCuを含むターゲットを用いた乾式めっき法により、前記第1の被膜上に第2の被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
前記第1の被膜および前記第2の被膜が設けられた前記基材に対し、300℃以上395℃以下に加熱する加熱処理を施し、その後、冷却処理を施すことにより、前記第2の被膜の構成材料の固溶体化を促進する熱処理工程と、
酸処理を施すことにより、前記熱処理が施された前記第2の被膜の構成成分のうち、固溶体を構成していないものを除去する酸処理工程とを有することを特徴とする。
これにより、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を安定的に製造することのできる装飾品の製造方法を提供することができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記酸処理工程は、前記熱処理工程に供された前記第2の被膜を、50wt%以上70wt%以下のHNO水溶液と、1秒以上180秒以下接触させることにより行うことが好ましい。
これにより、より確実に美的外観に優れた装飾品を製造することができる。また、装飾品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記第1の被膜形成工程に先立ち、前記基材上に、少なくとも1層の下地層を形成する下地層形成工程を有することが好ましい。
これにより、得られる装飾品の耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記下地層として、主としてTiで構成された層を形成することが好ましい。
これにより、得られる装飾品の耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記基材は、少なくともその表面付近が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものであることが好ましい。
これにより、得られる装飾品の耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記装飾品が備える前記第1の被膜中におけるNの含有率が、2.0wt%以上29.0wt%以下であることが好ましい。
これにより、より確実に美的外観に優れた装飾品を製造することができる。また、装飾品の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、装飾品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記装飾品が備える前記第1の被膜の平均厚さは、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
これにより、より確実に美的外観に優れた装飾品を製造することができる。また、装飾品の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、装飾品の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記装飾品が備える前記第2の被膜の平均厚さは、0.02μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。
本発明の装飾品は、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を提供することができる。
本発明の装飾品は、時計用外装部品であることが好ましい。
時計用外装部品は、一般に、外部からの衝撃を受け易い装飾品であり、装飾品としての外観の美しさが要求されるとともに、実用品としての耐久性も求められるが、本発明によればこれらの要件を同時に満足することができる。すなわち、時計用外装部品に本発明が適用されることにより、本発明の効果がより顕著に発揮される。
本発明の時計は、本発明の装飾品を備えたことを特徴とする。
これにより、色むらが防止され、長期間にわたってピンク色で光沢感のある優れた美的外観を保持することができる装飾品を備えた時計を提供することができる。
本発明によれば、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を安定的に製造することのできる装飾品の製造方法を提供すること、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を提供すること、また、当該装飾品を備えた時計を提供することができる。
本発明の装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を強調して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
<装飾品の製造方法>
まず、本発明の装飾品の製造方法の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の装飾品の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の製造方法は、基材2を用意する基材用意工程(1a)と、基材2上に、少なくとも1層の下地層5を形成する下地層形成工程(1b)と、主としてTiNで構成された第1の被膜3を形成する第1の被膜形成工程(1c)と、乾式めっき法により、第1の被膜3上に第2の被膜4’’を形成する第2の被膜形成工程(1d)と、第1の被膜3および第2の被膜4’’が設けられた基材2に対し、加熱処理および冷却処理を施すことにより、第2の被膜4’’の構成材料の固溶体化を促進し、第2の被膜4’とする熱処理工程(1e)と、酸処理を施すことにより、第2の被膜4’の構成成分のうち、固溶体を構成していないものを除去し、第2の被膜4とする酸処理工程(1f)とを有している。
[基材用意工程]
本工程で用意する基材2は、いかなる材料で構成されるものであってもよく、金属材料で構成されるものであっても、非金属材料で構成されるものであってもよい。
基材2が金属材料で構成される場合、特に優れた強度特性を有する装飾品1を提供することができる。
また、基材2が金属材料で構成される場合、基材2の表面粗さが比較的大きい場合であっても、後述する第1の被膜3、第2の被膜4’’を形成する際のレベリング効果により、得られる装飾品1の表面粗さを小さくすることができる。例えば、基材2の表面に対する切削加工、研磨加工等による機械加工を省略しても、鏡面仕上げを行うことが可能となったり、基材2がMIM法により成形されたもので、その表面が梨地面である場合でも、容易に鏡面にすることができる。これにより、光沢に優れた装飾品を得ることができる。
基材2が非金属材料で構成される場合、比較的軽量で携帯し易く、かつ、光沢感があり高級な外観を有する装飾品1を提供することができる。
また、基材2が非金属材料で構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、直接成形するのが困難な形状の装飾品1であっても、比較的容易に提供することができる。
また、基材2が非金属材料で構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果も得られる。
基材2を構成する金属材料としては、例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag等の各種金属や、これらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、各種ステンレス鋼、真鍮等)等が挙げられる。
基材2の少なくとも表面付近が、主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものであると、装飾品1は、特に優れた硬度を有するものとなり、傷や打痕等の凹み等が特に付き難いものとなる。その結果、装飾品1は、より長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。また、基材2の少なくとも表面付近が、主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものであると(特に、主としてTiで構成されたものであると)、基材2と、後述する第1の被膜3との密着性(特に、本実施形態では、下地層5を介しての第1の被膜3との密着性)が特に優れたものとなる。なお、本発明では、「主として」とは、対象としている部位(部材)を構成する材料のうち最も含有量の多い成分を指し、その含有量は特に限定されないが、対象としている部位(部材)を構成する材料の70wt%以上であることが好ましく、90wt%以上であることがより好ましく、95wt%以上であることがさらに好ましい。
主としてTiで構成される材料としては、例えば、Ti(単体としてのTi)、Ti合金等が挙げられる。また、ステンレス鋼としては、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金等が挙げられる。Fe−Cr−Ni系合金としては、例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L等が挙げられ、Fe−Cr系合金としては、例えば、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F等が挙げられる。
また、基材2を構成する非金属材料としては、例えば、プラスチックやセラミックス、石材、木材、ガラス等が挙げられる。
プラスチックとしては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
基材2がプラスチックで構成される場合、比較的軽量で携帯し易く、かつ、光沢感があり高級な外観を有する装飾品1を得ることができる。
また、基材2がプラスチックで構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、複雑な形状を有する装飾品1であっても、比較的容易に製造することができる。
また、基材2がプラスチックで構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果が得られる。
セラミックスとしては、例えば、Al、SiO、TiO、Ti、ZrO、Y、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の酸化物系セラミックス、AlN、Si、SiN、TiN、BN、ZrN、HfN、VN、TaN、NbN、CrN、CrN等の窒化物系セラミックス、グラファイト、SiC、ZrC、Al、CaC、WC、TiC、HfC、VC、TaC、NbC等の炭化物系のセラミックス、ZrB、MoB等のホウ化物系のセラミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組み合わせた複合セラミックスが挙げられる。
基材2が前記のようなセラミックスで構成される場合、特に、高強度、高硬度の装飾品1を得ることができる。
また、基材2は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。例えば、基材2は、基部と、該基部上に設けられた表面層を有するものであってもよい。基材2がこのような構成のものであると、基部の構成材料の選択により、例えば、基材2の成形の自由度を増すことができ、より複雑な形状の装飾品1であっても、比較的容易に製造することができる。基材2が基部と、金属材料で構成された表面層とを有するものである場合、表面層の厚さ(平均値)は、特に限定されないが、0.1μm以上50μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上10μm以下であるのがより好ましい。表面層の厚さが前記範囲内の値であると、基材2の強度を十分に優れたものとすることができるとともに、表面層の基部からの不本意な剥離等をより確実に防止することができる。
また、基材2の形状、大きさは、特に限定されず、通常、装飾品1の形状、大きさに基づいて決定される。
基材2の製造方法は、特に限定されない。
基材2が金属材料で構成される場合、その製造方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロストワックス法等が挙げられるが、この中でも特に、鋳造加工または金属粉末射出成形(MIM)が好ましい。鋳造加工、金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れている。このため、これらの方法を用いた場合、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ることができる。
また、基材2が前記のようなプラスチックで構成される場合、その製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形等が挙げられる。
また、基材2が前記のようなセラミックスで構成される場合、その製造方法は、特に限定されないが、金属粉末射出成形(MIM)であるのが好ましい。金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れているため、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ることができる。
また、基材2が前述したような基部と表面層とを有するものである場合、基材2は、以下のようにして製造することができる。すなわち、前述したような方法により製造した基部上に、表面層を形成することにより基材2を得ることができる。表面層の形成方法としては、例えば、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射等が挙げられる。
また、基材2は、例えば、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工が施されたものであってもよい。これにより、得られる装飾品1の表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、得られる装飾品1の装飾性をさらに向上させることができる。また、このような表面加工が施された基材2を用いて製造される装飾品1は、下地層5、第1の被膜3、第2の被膜4’’等に対して前記表面加工を直接施すことにより得られるものに比べて、ギラツキ等が抑制されたものとなり、特に美的外観に優れたものとなる。また、後に詳述するように、第1の被膜3は硬質材料であるTiNで構成されているため、第1の被膜3に対して表面加工を直接施す場合には、当該表面加工を施す際に第1の被膜3にカケ等の欠陥を生じ易く、装飾品1の製造の歩留りが著しく低下する場合があるが、基材2に対して表面処理を行うことにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。また、基材2に対する表面処理は、第1の被膜3に対する表面加工に比べて、温和な条件で容易に行うことができる。
また、基材2と第1の被膜3との密着性(下地層5を介しての第1の被膜3との密着性)の向上等を目的として、後述する工程に先立ち、基材2に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理、エッチング処理等が挙げられる。この中でも、清浄化処理を施すことにより、基材2と第1の被膜3との密着性(下地層5を介しての第1の被膜3との密着性)を特に優れたものとすることができる。
[下地層形成工程]
次に、基材2の表面に、少なくとも1層の下地層を形成する(1b)。
このように、本実施形態では、第1の被膜3の形成に先立ち、基材2上に、少なくとも1層の下地層5を形成する。これにより、得られる装飾品1の耐久性を特に優れたものとすることができる。
下地層5は、例えば、基材2と第1の被膜3との密着性を向上させる機能(密着性向上層としての機能)や、基材2の傷をレベリング(ならし)により補修する機能(レベリング層としての機能)、得られる装飾品1において、外部からの衝撃を緩和する機能(クッション層としての機能)等、いかなる機能を有するものであってもよい。
下地層5の構成材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Alやこれらのうち少なくとも1種を含む合金等の金属材料等が挙げられるが、中でも、Tiが好ましい。下地層5が主としてTiで構成されたものであると、例えば、基材2と第1の被膜3との密着性をさらに向上させることができ、装飾品1の信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、下地層5が主としてTiで構成されたものであると、基材2の表面の凹凸を緩和するレベリング層としての機能がより顕著に発揮される。また、下地層5が主としてTiで構成されたものであると、得られる装飾品1において、下地層5が外部からの衝撃を緩和するクッション層としてより効果的に機能し、その結果、装飾品1は、打痕等の凹みが特に生じ難いものとなる。
下地層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.03μm以上1.5μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であるのがより好ましい。下地層5の平均厚さが前記範囲内の値であると、下地層5の内部応力が大きくなり、クラック等が発生するのを十分に防止しつつ、上記のような下地層5の機能をより効果的に発揮することができる。
また、下地層5は、図示の構成では基材2の一方の面の全体に形成されているが、基材2上の少なくとも一部に形成されるものであってもよい。
下地層5の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法が好ましい。下地層5の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた下地層5を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1の審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、下地層5の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、形成すべき下地層5が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1の信頼性を向上させる上でも有利である。
また、後述する第1の被膜形成工程を乾式めっき法により行う場合、例えば、ターゲットの種類、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成等を変更することにより、同一装置内で、下地層形成工程と第1の被膜形成工程とを、(基材2を装置内から取り出すことなく)引き続いて行うことができる。これにより、基材2、下地層5、第1の被膜3の密着性が特に優れたものとなるとともに、装飾品1の生産性も向上する。また、特に、下地層5がTiで構成されるものである場合、同一のターゲットを用い、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成を変更することにより、好適に、下地層5と第1の被膜3とを引き続いて(連続的に)形成することができる。
[第1の被膜形成工程]
次に、下地層5が設けられた基材2上に、主としてTiNで構成された第1の被膜3を形成する(2b)。
このような第1の被膜3を設けることにより、後述する工程における第2の被膜4’’の構成材料等の拡散を防止することができ、確実に目的とする色調を有する装飾品1(光沢感のあるピンク色の装飾品1)を得ることができる。
また、このような第1の被膜3を設けることにより、後に詳述する熱処理工程での固溶体化が促進され、結果として、装飾品1の生産性を優れたものとすることができる。
また、このような第1の被膜3を設けることにより、最終的に得られる装飾品1において、被膜にクラック等が発生することを確実に防止することができるとともに、後に詳述する酸処理工程において、当該工程において用いる酸が、第2の被膜4’中に浸透して、下地層5、基材2にダメージを与えることが確実に防止される。このようなことから、基材2と下地層5との密着性、基材2と第2の被膜4との密着性(下地層5および第1の被膜3を介しての密着性)が低下することを防止することができ、得られる装飾品1の耐久性を特に優れたものとすることができる。
また、このような第1の被膜3を設けることにより、装飾品1全体としての硬度(第1の被膜3、第2の被膜4が設けられている面側における硬度。以下同様。)を優れたものとすることができ、傷や打痕等の凹み等を付き難くすることができる。
また、このような第1の被膜3を設けることにより、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合であっても、装飾品1全体としての美的外観を優れたものとすることができる。すなわち、後述する第2の被膜4の膜厚が比較的小さい場合には第1の被膜3の色調が装飾品1の美的外観に与える影響が大きくなるが、上記のようなTiN(第1の被膜3)の色調(色度)と、第2の被膜4の色調(色度)とは、比較的類似している(差が小さいため)ため、このような場合であっても、装飾品1全体としての美的外観を優れたものとすることができる。また、例えば、装飾品1の長期の使用により、万が一、第2の被膜4が磨耗、剥離した場合であっても、装飾品1の美的外観に与える悪影響を最小限に止めることができる。
これに対し、TiNで構成された第1の被膜を設けない場合には、後述する工程における第2の被膜の構成材料等の拡散を防止することができず、特に、第2の被膜の各構成成分の拡散速度が異なるため、確実に目的とする色調を有する装飾品(光沢感のあるピンク色の装飾品)を得ることができない。なお、第2の被膜形成工程後の工程を省略することにより、第2の被膜の構成材料等の拡散を防止することも考えられるが、このような場合、得られる装飾品は、各部位での色むらがあり、十分に優れた外観を有するものではない。また、TiNで構成された第1の被膜を設けない場合には、後に詳述するような熱処理工程を施したとしても、第2の被膜の構成材料の固溶体化を十分に促進させることができず、装飾品の生産性を優れたものとすることができない。また、このような場合、過酷な条件の熱処理を必要とするため、基材等に悪影響を及ぼすおそれがある。また、TiNで構成された第1の被膜を設けない場合には、後に詳述するような酸処理工程を施した際に、基材と被膜との密着性を低下させてしまい、最終的に得られる装飾品の耐久性、信頼性を十分に優れたものとすることができない。また、TiNで構成された第1の被膜を設けない場合には、装飾品全体としての硬度を十分に大きいものとすることができない。その結果、装飾品は、傷や打痕等の凹み等を生じ易いものとなり、装飾品の耐久性、信頼性は不十分なものとなる。
第1の被膜3中におけるNの含有率(X1N)は、特に限定されないが、2.0wt%以上29.0wt%以下であるのが好ましく、5.0wt%以上27.0wt%以下であるのがより好ましく、7.0wt%以上24.0wt%以下であるのがさらに好ましく、8.0wt%以上16.0wt%以下であるのが最も好ましい。第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、後述する工程における第2の被膜4’’の構成材料等の拡散をより効果的に防止することができるとともに、第1の被膜3の色調(色度)を最適なものとすることができる。その結果、より確実に目的とする色調を有する装飾品1(光沢感のあるピンク色の装飾品1)を得ることができる。また、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、装飾品1の硬度をより高いものとすることができるとともに、後述する酸処理工程における基材2、下地層5のダメージをより確実に防止することができ、最終的に得られる装飾品1の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する熱処理工程での固溶体化がより効果的に促進され、装飾品1の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、第1の被膜3中には、Ti、N以外の構成成分(構成元素)が含まれていてもよい。これにより、例えば、第1の被膜3の色調と、後述する第2の被膜4の色調との差をより小さなものとしたり、第1の被膜3の硬度等をさらに優れたものとすることができる。
また、第1の被膜3の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上5.0μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上3.0μm以下であるのがより好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であるのがさらに好ましい。第1の被膜3の平均厚さが前記範囲内の値であると、後述する工程における第2の被膜4’’の構成材料等の拡散をより効果的に防止することができるとともに、第1の被膜3の色調(色度)を最適なものとすることができる。その結果、より確実に目的とする色調を有する装飾品1(光沢感のあるピンク色の装飾品1)を得ることができる。また、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、第1の被膜3の内部応力が大きくなるのを効果的に防止しつつ、装飾品1の硬度をより高いものとすることができるとともに、後述する酸処理工程における基材2、下地層5のダメージをより確実に防止することができ、最終的に得られる装飾品1の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、第1の被膜3中におけるNの含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する熱処理工程での固溶体化がより効果的に促進され、装飾品1の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、第1の被膜3は、組成の異なる複数の領域を有していてもよい。例えば、第1の被膜3は、Nの含有率が所定値Xである第1の領域と、Nの含有率が前記Xより大きい所定値X’である第2の領域とを有するものであってもよい。このような場合、例えば、第1の領域が第2の領域よりも基材2側に設けられることにより、第1の被膜3の内部応力が大きくなるのをより効果的に防止しつつ、第1の被膜3の硬度をより高いものとすることができ、基材2と第1の被膜3との密着性を特に優れたものとすることができる。したがって、装飾品1は、より長期間にわたり、安定して、優れた美的外観を保持することができる。
また、第1の被膜3が組成の異なる複数の領域を有するものである場合(例えば、上記のような第1の領域と第2の領域とを有するものである場合)、第1の被膜3は、例えば、異なる組成を有する複数の層を備えた積層体で構成されたものであってもよいし、組成がその厚さ方向に沿って傾斜的に変化するものであってもよい。
また、第1の被膜3は、図示の構成では基材2の一方の面上の全体(下地層5の表面全体)に形成されており、その全体が下地層5と接触するように形成されているが、第1の被膜3は、基材2上の少なくとも一部に形成されていればよい。
第1の被膜3の形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法(気相成膜法)、溶射等が挙げられるが、乾式めっき法(気相成膜法)が好ましい。第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性(本実施形態では、下地層5を介しての密着性)が特に優れた第1の被膜3を確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1の審美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、形成すべき第1の被膜3が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを十分に小さいものとすることができる。このため、装飾品1の信頼性を向上させる上でも有利である。また、第1の被膜3の形成方法として乾式めっき法を適用することにより、第1の被膜3中におけるNの含有率をより確実に制御することができる。
また、上記のような乾式めっき法の中でも、イオンプレーティングが特に好ましい。第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、上記のような効果はより顕著なものとなる。すなわち、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、均一な膜厚を有し、均質で、かつ、基材2との密着性が特に優れた第1の被膜3をより確実に形成することができる。その結果、最終的に得られる装飾品1の審美的外観、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、形成すべき第1の被膜3が比較的薄いものであっても、膜厚のばらつきを特に小さいものとすることができる。また、第1の被膜3の形成方法としてイオンプレーティングを適用することにより、第1の被膜3中におけるNの含有率をより確実に制御することができる。
なお、上記のような乾式めっき法を適用する場合、例えば、Tiをターゲットとして用い、N(窒素)を含む雰囲気中で処理を行うことにより、第1の被膜3を容易かつ確実に形成することができる。このような雰囲気ガスとしては、例えば、窒素ガス(Nガス)等を用いることができる。そして、雰囲気ガスの圧力等を適宜調整することにより、形成される第1の被膜3の組成(Nの含有率)等を調節することができる。
なお、雰囲気ガス中には、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスが含まれていてもよい。これにより、第1の被膜3中におけるNの含有率を、容易かつ確実に比較的低く制御することができる。
[第2の被膜形成工程]
次に、乾式めっき法により、第1の被膜3上に第2の被膜4’’を形成する(1d)。
乾式めっき法を用いることにより、第1の被膜3との密着性に優れた第2の被膜4’’を形成することができる。その結果、得られる装飾品1は、特に優れた耐食性、耐久性を有するものとなる。また、乾式めっき法を用いることにより、高密度の第2の被膜4’’を形成することが可能となる。これにより、第2の被膜4は、光沢度が大きく、特に美的外観に優れたものとなる。また、乾式めっき法を用いることにより、第2の被膜4’’の厚さが比較的薄い場合であっても、均一な膜厚で形成することができる。また、乾式めっき法を用いることにより、第2の被膜4’’が必須元素以外の元素を含む複雑な組成のものであっても、第2の被膜4’’を容易かつ確実に形成することができる。
本工程は、70.0wt%以上85.0wt%以下のAuおよび15.0wt%以上30.0wt%以下のCuを含むターゲットを用いて行う。このようなターゲットを用いることにより、最終的に得られる装飾品1を、ピンク色で光沢感があり、美的外観に優れたものとすることができる。また、最終的に得られる装飾品1の耐久性、信頼性を十分に優れたものとすることができる。また、AuおよびCuは、アレルギー反応を起こし難い材料である。したがって、本発明は、皮膚に接触して用いられる装飾品(例えば、時計等)に好適に適用することができる。
これに対し、ターゲットとして、上記組成を有するものを用いないと、ピンク色で光沢感があり、美的外観に優れた装飾品1を得るのが困難となる。
本工程で用いるターゲット中でのAuの含有率は、上記のように、70.0wt%以上85.0wt%以下であるが、72.5wt%以上84.5wt%以下であるのが好ましく、75.0wt%以上84.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる装飾品1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
また、本工程で用いるターゲット中でのCuの含有率は、上記のように、15.0wt%以上30.0wt%以下であるが、15.5wt%以上27.5wt%以下であるのが好ましく、16.0wt%以上25.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる装飾品1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
なお、本工程で用いるターゲット(形成される第2の被膜4’’も同様)は、AuおよびCu(以下、「必須元素」ともいう。)以外の元素を含むものであってもよい。ただし、ターゲットが必須元素以外の元素を含むものである場合、その含有量(2種以上の元素を含む場合はその総量)は、1.5wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以下であるのがより好ましい。
また、本工程で用いるターゲット(形成される第2の被膜4’’も同様)は、Niを実質的に含まないものであるのが好ましい。ターゲットが実質的にNiを実質的に含まないものであることにより、最終的に得られる装飾品1は、アレルギー反応を極めて起こしにくいものとなる。その結果、例えば、装飾品1を、時計用外装部品(例えば、時計ケース(胴、裏蓋、胴と裏蓋とが一体化されたワンピースケース等)、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱機構等を含む)、ベゼル(例えば、回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅうず等)、ボタン等)等の皮膚に接触して用いられるもの(特に、長時間にわたって、皮膚に接触して用いるもの)に好適に適用することができる。ターゲット(形成される第2の被膜4’’も同様)中におけるNiの含有率は、100ppm以下であるのが好ましく、50ppm以下であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより確実に発揮される。
乾式めっき法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング、イオン注入等が挙げられるが、この中でも特に、スパッタリングが好ましい。乾式めっき法としてスパッタリングを用いることにより、特に優れた美的外観の装飾品1を得ることができる。
また、上述した下地層形成工程、第1の被膜形成工程を乾式めっき法により行う場合、例えば、ターゲットの種類、気相成膜装置内(チャンバー内)の雰囲気ガスの組成等を変更することにより、同一装置内で、下地層形成工程と第1の被膜形成工程と第2の被膜形成工程とを、(基材2を装置内から取り出すことなく)引き続いて行うことができる。これにより、基材2、下地層5、第1の被膜3、第2の被膜4の密着性が特に優れたものとなるとともに、装飾品1の生産性も向上する。
また、第2の被膜4’’は、図示の構成では第1の被膜3の表面全体に形成されており、その全体が第1の被膜3と接触するように形成されているが、第2の被膜4’’は、第1の被膜3上の少なくとも一部に形成されていればよい。
[熱処理工程]
次に、第1の被膜3および第2の被膜4’’が設けられた基材2に対し、加熱処理および冷却処理を施す(1e)。これにより、第2の被膜4’’の構成材料の固溶体化が促進され第2の被膜4’となり、最終的に得られる装飾品1の美的外観、耐食性等を特に優れたものとすることができる。
本工程では、まず、300℃以上395℃以下に加熱する加熱処理を施し、その後、冷却処理を施すことにより行う。このような条件で熱処理(加熱処理および冷却処理)を行うことにより、第2の被膜4’’の構成材料を十分に固溶体化させることができる。より詳しく説明すると、熱処理が施される第2の被膜4’’は、その背面側に第1の被膜3が設けられているため、本工程における第2の被膜4’’の構成材料等の拡散が防止され、また、固溶体化が促進される。その結果、上記のような比較的穏やかな条件で、第2の被膜4’’の構成材料を効率よく固溶体化させることができ、最終的に得られる装飾品1を美的外観、耐久性、信頼性に優れたものとすることができる。また、装飾品1の生産性を優れたものとすることができる。これに対し、熱処理を上記条件で行わない場合には、最終的に得られる装飾品の美的外観、耐久性を十分に優れたものとすることができない。また、上記のような条件で固溶体化を行うことにより、本工程後の第2の被膜4’中において、固溶体を構成しない成分の割合を十分に少ないものとすることができる。その結果、多数個の装飾品1を製造する場合においても、各個体間での品質のばらつきを抑制することができ、装飾品1の信頼性を特に優れたものとすることができる。
本工程での加熱処理の加熱温度(最高温度)は、上記のように、300℃以上395℃以下であればよいが、320℃以上390℃以下であるのが好ましく、330℃以上380℃以下であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮され、特に優れた美的外観を有する装飾品1をより生産性よく得ることができる。
また、本工程での加熱処理の加熱時間(300℃以上での保持時間)は、15分以上180分以下であるのが好ましく、20分以上150分以下であるのがより好ましく、30分以上90分以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮され、特に優れた美的外観を有する装飾品1をより生産性よく得ることができる。
また、本工程での冷却処理の25℃までの冷却速度は、0.02℃/秒以上0.03℃/秒以下であるのが好ましく、0.022℃/秒以上0.028℃/秒以下であるのがより好ましく、0.024℃/秒以上0.026℃/秒以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮され、特に優れた美的外観を有する装飾品1をより生産性よく得ることができる。
[酸処理工程]
その後、酸処理を施すことにより、前記熱処理工程で熱処理が施された第2の被膜4’の構成成分のうち、固溶体を構成していないものを除去する(1f)。これにより、固溶体で構成され、色むらが防止された第2の被膜4を備えた装飾品1が得られる。特に、酸処理が施される第2の被膜4’の背面には、第1の被膜3が配されているため、本工程において用いる酸が、第2の被膜4’中に浸透して、下地層5、基材2にダメージを与えることが確実に防止されているため、美的外観に優れ、耐久性、信頼性に優れた装飾品1を確実に得ることができる。
本工程での酸処理は、酸を用いて行うものであればよいが、第2の被膜4’を、50wt%以上70wt%以下のHNO水溶液と、1秒以上180秒以下接触させることにより行うのが好ましい。これにより、より確実に美的外観に優れた装飾品1を製造することができるとともに、装飾品1の生産性を特に優れたものとすることができる。上記のように、HNO水溶液と第2の被膜4’との接触時間は、1秒以上180秒以下であるのが好ましいが、1秒以上90秒以下であるのがより好ましく、2秒以上60秒以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をさらに顕著に発揮させることができる。
本工程での処理温度は、5℃以上50℃以下であるのが好ましく、7℃以上35℃以下であるのがより好ましく、10℃以上30℃以下であるのがさらに好ましい。
本工程は、例えば、第2の被膜4’以外の部位(例えば、基材2の図1中での下側の面)をマスクで被覆した状態で行ってもよい。これにより、基材2等が酸による悪影響を受けることをより確実に防止することができる。
なお、本工程では、第2の被膜4’の構成成分のうち、固溶体を構成していないものの少なくとも一部を除去すればよく、例えば、第2の被膜4のうち外表面に露出していない部位に、固溶体を構成していない成分が残存していてもよい。このような場合であっても、本発明では、前述した熱処理工程により、第2の被膜4’は、構成成分の固溶体化が十分に促進されたものとなっている、固溶体を構成していない成分の残存量は通常十分に少ないものであり、装飾品1の外観にほとんど影響を及ぼさない。
本工程の後、通常、装飾品1に対して水洗等の洗浄処理が施される。これにより、装飾品1に付着した酸を確実に除去することができ、装飾品1の経時的な腐食等を確実に防止することができる。
<装飾品>
次に、上述したような方法により得られる本発明の装飾品について、より詳細に説明する。
装飾品1は、装飾性を備えた物品であればいかなるものでもよいが、例えば、置物等のインテリア、エクステリア用品、宝飾品、時計ケース(胴、裏蓋、胴と裏蓋とが一体化されたワンピースケース等)、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱機構等を含む)、文字盤、時計用針、ベゼル(例えば、回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅうず等)、ボタン、カバーガラス、ガラス縁、ダイヤルリング、見切板、パッキン等の時計用外装部品、ムーブメントの地板、歯車、輪列受け、回転錘等の時計用内装部品、メガネ(例えば、メガネフレーム)、ネクタイピン、カフスボタン、指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ブローチ、ペンダント、イヤリング、ピアス等の装身具、ライターまたはそのケース、自動車のホイール、ゴルフクラブ等のスポーツ用品、銘板、パネル、賞杯、その他ハウジング等を含む各種機器部品、各種容器等に適用することができる。この中でも特に、時計用外装部品がより好ましい。時計用外装部品は、装飾品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品として、耐久性、耐食性、耐擦傷性、耐摩耗性や、優れた触感等が要求されるが、本発明によればこれらの要件を全て満足することができる。なお、本明細書中での「時計用外装部品」とは、外部から視認可能なものであればいかなるものであってもよく、時計の外部に露出しているものに限らず、時計の内部に内蔵されたもの(例えば、時計用文字板等)も含む。
また、装飾品1を構成する第2の被膜4の平均厚さは、特に限定されないが、0.02μm以上2.0μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上0.8μm以下であるのがより好ましく、0.05μm以上0.20μm以下であるのがさらに好ましい。第2の被膜4の平均厚さが前記範囲内の値であると、装飾品1の美的外観、耐久性を特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の被膜4の平均厚さが前記下限値未満であると、第2の被膜4にピンホールが発生し易くなり、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、第2の被膜4の平均厚さが前記上限値を超えると、第2の被膜4の内部応力が高くなり、第1の被膜3と第2の被膜4との密着性が低下したり、クラックが発生し易くなる。また、第2の被膜4の平均厚さが前記上限値を超えると、装飾品1としての硬度が低下する傾向を示す。
また、上記のような第2の被膜4を有することにより、装飾品1は、表面の滑り性に優れたものとなる。これにより、表面のザラツキ感を軽減、防止することができ、装飾品1が皮膚等に接触したときの違和感、不快感を軽減、防止することができる。
また、装飾品1は、第2の被膜4が設けられた側の面において、10gfの荷重で測定されるビッカース硬度Hvが500以上1000以下であるのが好ましく、550以上800以下であるのがより好ましい。これにより、より長期間にわたって、装飾品としての優れた美的外観を保持することができる。
また、装飾品1の第2の被膜4が設けられている側の面の色調は、例えば、JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、aが7.0以上15.0以下でありかつbが15.0以上27.0以下の範囲のものであるのが好ましく、aが8.0以上13.0以下でありかつbが17.0以上25.0以下の範囲のものであるのがより好ましく、aが9.0以上11.0以下でありかつbが18.0以上23.0以下の範囲のものであるのがさらに好ましい。これにより、装飾品1の美的外観は、特に優れたものとなる。
また、装飾品1の第2の被膜4が設けられている側の面の色調は、例えば、JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、Lが75.0以上89.0以下であるのが好ましく、Lが78.0以上88.0以下であるのがより好ましく、Lが82.0以上87.0以下であるのがさらに好ましい。これにより、装飾品1の美的外観は、特に優れたものとなる。
<時計>
次に、上述したような本発明の装飾品を備えた本発明の時計について説明する。
図2は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
図2に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)10は、胴(ケース)22と、裏蓋23と、ベゼル(縁)24と、ガラス板25とを備えている。また、ケース22内には、図示しないムーブメント(例えば、文字盤、針付きのもの)が収納されている。
胴22には巻真パイプ26が嵌入・固定され、この巻真パイプ26内にはりゅうず27の軸部271が回転可能に挿入されている。
胴22とベゼル24とは、プラスチックパッキン28により固定され、ベゼル24とガラス板25とはプラスチックパッキン29により固定されている。
また、胴22に対し裏蓋23が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)50には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)40が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部50が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず27の軸部271の途中の外周には溝272が形成され、この溝272内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)30が嵌合されている。ゴムパッキン30は巻真パイプ26の内周面に密着し、該内周面と溝272の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず27と巻真パイプ26との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず27を回転操作したとき、ゴムパッキン30は軸部271と共に回転し、巻真パイプ26の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
本実施形態の腕時計10は、ベゼル24、胴22、りゅうず27、裏蓋23、時計バンド等の装飾品(特に、時計用外装部品)のうち少なくとも1つが前述したような本発明の装飾品で構成されたものである。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の装飾品の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。例えば、第1の被膜形成工程と第2の被膜形成工程との間や、下地層形成工程と第1の被膜形成工程との間に、洗浄等の中間処理を施してもよい。また、基材に対しては、切削、研削、研磨、ホーニング等の前処理を施してもよい。
また、前述した実施形態では、第1の被膜を気相成膜により形成する場合について中心的に説明したが、第1の被膜は、例えば、Tiで構成された被膜に対し、窒化処理を施すことにより形成されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、下地層を設ける場合について代表的に説明したが、下地層は形成しなくてもよい。また、前述した実施形態では、基材の一つの面上に第1の被膜、第2の被膜を形成するものとして説明したが、第1の被膜、第2の被膜は、基材の複数の面上に形成するものであってもよい。
また、装飾品の表面の少なくとも一部には、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等を付与し、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向上するコート層(保護層)等が形成されていてもよい。このようなコート層は、装飾品の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、第1の被膜と第2の被膜は、互いに隣接して設けられるものとして説明したが、第1の被膜と第2の被膜との間には、少なくとも1層の中間層が設けられていてもよい。これにより、例えば、第1の被膜と第2の被膜との密着性の更なる向上等を図ることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.装飾品の製造
(実施例1)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、ステンレス鋼(SUS444)を用いて、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、気相成膜装置を用いて、以下のようにして、Tiで構成される下地層を形成した。
まず、気相成膜装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。
次に、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して、5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
その後、処理室内にアルゴンガスを、ガス圧力を53Paで導入し、400Vの直流電圧を印加して45分保持した。このような状態で、ターゲットとしてTiを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:20A、処理時間:20分間に設定することにより、Tiで構成される下地層を形成した(下地層形成工程)。形成された下地層の平均厚さは、0.5μmであった。
その後、上記の気相成膜装置を用いたイオンプレーティングにより、下地層の表面に、TiNで構成される第1の被膜を形成した(第1の被膜形成工程)。第1の被膜の形成は、以下のようにして行った。
まず、気相成膜装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を2×10−3Paまで排気(減圧)した。その後、窒素ガスを40ml/分の流量で導入し、処理室内における雰囲気圧(全圧)を1.8×10−3Paとした。このような状態(窒素ガスを導入し続けた状態)で、ターゲットとしてTiを用い、イオン化電圧:50V、イオン化電流:40Aに設定し、この状態で19分間イオンプレーティングを行った(第1の被膜形成工程)。その結果、TiNで構成され、平均厚さが0.5μmの第1の被膜が形成された。また、形成された第1の被膜中におけるNの含有率は15.0wt%であった。
その後、上記の気相成膜装置を用いたスパッタリングにより、第1の被膜の表面に、Au−Cu系合金で構成される第2の被膜を形成した(第2の被膜形成工程)。第2の被膜の形成は、以下のようにして行った。
まず、気相成膜装置の処理室内を予熱しながら、処理室内を1.0×10−1Paまで排気(減圧)した。
次に、アルゴン流量:40ml/分でアルゴンガスを導入した。このような状態で、82.5wt%のAuと、17.5wt%のCuとで構成されるターゲットを用い、電圧:650V、電流:2.0A、処理時間:5.0分間という条件で放電を行うことにより、Au−Cu系合金で構成される第2の被膜を形成した。
次に、無酸化炉を用いて、350℃(最高温度)に加熱する加熱処理を60分施し、その後、25℃までの冷却速度を0.024℃/秒とする冷却処理を施した(熱処理工程)。
次に、上記のような熱処理工程(加熱処理および冷却処理)を施した基材のうち第2の被膜以外の部位を、アクリル樹脂製のマスクで被覆し、この状態で、25℃において、60wt%のHNO水溶液中に、3秒間浸漬した(酸処理工程)。
その後、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行い、乾燥した。その後、マスクを剥離することにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。このようにして得られた装飾品が有する第2の被膜の平均厚さは、0.08μmであった。
なお、下地層、第1の被膜、第2の被膜の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
(実施例2〜6)
第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成、熱処理工程の条件、酸処理工程の条件を表1に示すようにするとともに、下地層形成工程で用いるターゲットの組成および処理時間、第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程での処理時間を調整・選択することにより、表1に示すような構成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例7)
基材として、Tiで構成されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
基材としては、以下に述べるような金属粉末射出成形(MIM)により作製したものを用いた。
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径52μmのTi粉末を用意した。
このTi粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、得られた混練物を粉砕、分級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレットを用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)し、腕時計ケースの形状を有する成形体を製造した。このとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金型温度40℃、射出圧力80kgf/cm、射出時間20秒、冷却時間40秒であった。
次に、前記成形体に対して、脱脂炉を用いた脱バインダー処理を施し、脱脂体を得た。この脱バインダー処理は、1.0×10−1Paのアルゴンガス雰囲気中、80℃で1時間、次いで、10℃/時間の速度で400℃まで昇温した。熱処理時におけるサンプルの重さを測定し、重量低下がなくなった時点を脱バインダー終了時点とした。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨した後、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
(実施例8〜12)
第2の被膜形成工程で用いるターゲットの合金組成、熱処理工程の条件、酸処理工程の条件を表1に示すようにするとともに、下地層形成工程で用いるターゲットの組成および処理時間、第1の被膜形成工程における窒素ガスの流量および処理時間、第2の被膜形成工程での処理時間を調整・選択することにより、表1に示すような構成となるようにした以外は、前記実施例7と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(実施例13)
基材として、Cu−Zn合金(合金組成:Cu60wt%−Zn40wt%)で構成され、鋳造により成形されたものを用い、下地層形成工程を省略した以外は、前記実施例1と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例1)
第1の被膜形成工程を省略した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。すなわち、本比較例では、第2の被膜を、基材の表面に直接形成した。
(比較例2)
第2の被膜形成工程を省略した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。すなわち、本比較例で製造された装飾品は、基材および第1の被膜からなるものであり、第2の被膜を有していないものであった。
(比較例3)
以下に示すような方法により、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
まず、前記実施例7と同様にしてTi製の基材を作製した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
上記のようにして洗浄を行った基材に対して、浸炭処理を施すことにより、TiCで構成された浸炭層(TiC層)を形成した。
浸炭処理は、以下に説明するようなプラズマ浸炭処理により行った。
すなわち、加熱炉内にグラファイトファイバー等の断熱材で囲まれた処理室を有し、この処理室内をロッドグラファイトからなる発熱体で加熱すると共に、処理室内の上部に直流グロー放電の正極を接続し、かつ処理品の載置台に陰極を接続し、また処理室内の要所にガスマニホールドを設置して炭化水素、窒素、アルゴン、水素などのプロセスガス(浸炭用ガスおよび希釈用ガス)を適宜導入するようにした浸炭処理装置を用意した。
そして、まず、浸炭処理装置の処理室内に基材を設置し、処理室内を1.3Paまで減圧した。このように、処理室内が減圧された状態で、ヒータにより、基材を約300℃に加熱した。
その後、クリーニング用アルゴンガスを処理室内に導入して5分間のクリーニング処理を行った。クリーニング処理は、350Vの直流電圧を印加することにより行った。
その後、処理室内にプロパンガスを導入することにより、処理室内のガス組成をほぼ100%プロパンガスとし、ガス圧力を53Paとし、400Vの直流電圧を印加して140分保持することにより、プラズマ浸炭処理を行った。その後、アルゴンガスおよび窒素ガスを処理室内に圧入して基材を常温にまで冷却した。このような浸炭処理により、約15μmの厚さの浸炭層が形成された。
その後、浸炭層の表面に、前記実施例13と同様にして第2の被膜を形成することにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例4〜6)
表2に示すように、第2の被膜形成工程において用いるターゲットを変更した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例7)
熱処理工程を省略した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
(比較例8、9)
表2に示すように、熱処理工程の条件を変更した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
(比較例10)
酸処理工程を省略した以外は、前記実施例13と同様にして装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を得た。
各実施例および各比較例の装飾品の構成を表1、表2にまとめて示す。なお、表1、表2中においては、ステンレス鋼をSUSで示し、Cu−Zn合金をBSで示した。また、表2中、比較例3については、浸炭処理により形成された浸炭層に関する値を、第1の被膜の欄に示した。また、表1、表2中、加熱処理の処理温度の欄には、加熱処理での最高温度(設定温度)を示し、加熱処理の処理時間の欄には、300℃以上での保持時間を示し、冷却処理の冷却速度の欄には、25℃までの冷却速度を示した。また、各実施例の装飾品の第2の被膜中におけるNiの含有率は、いずれも、10ppm以下であった。
Figure 2013224965
Figure 2013224965
2.目視による外観評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品の被膜が設けられた面側について、目視による観察を行った。
(2−1)装飾品の色調についての評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品の被膜が設けられた面側の色調(光沢感を含む)を、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:目的とする色調(光沢感のあるピンク色)を有している。
B:目的とする色調(光沢感のあるピンク色)とはやや異なる色調を有している。
C:目的とする色調(光沢感のあるピンク色)とはまったく異なる色調を有している
(2−2)装飾品における色むらについての評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品の被膜が設けられた面側における色むらの発生を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むらの発生がまったく認められない。
B:色むらの発生がほとんど認められない。
C:色むらの発生がわずかに認められる。
D:色むらの発生がはっきりと認められる。
E:色むらの発生が顕著に認められる。
(2−3)外観の総合評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品の被膜が設けられた面側の外観を以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:外観優良。
B:外観良。
C:外観やや不良。
D:外観不良。
E:外観極めて不良。
3.色度計による外観評価
(3−1)aおよびbについての評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、被膜が形成された面側の色度を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、a
9.0以上11.0以下でありかつbが18.0以上23.0以下の範囲内で
ある。
B:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、a
7.0以上15.0以下でありかつbが15.0以上27.0以下の範囲内で
ある(ただし、Aの範囲を除く)。
C:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、a
6.0以上16.0以下でありかつbが14.0以上30.0以下の範囲内で
ある(ただし、AおよびBの範囲を除く)。
D:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、a
6.0以上16.0以下でありかつbが14.0以上30.0以下の範囲外で
ある。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
(3−2)Lについての評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、被膜が形成された面側の色度を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、L
82.0以上87.0以下の範囲内である。
B:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、L
78.0以上88.0以下の範囲内である(ただし、Aの範囲を除く)。
C:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、L
75.0以上89.0以下の範囲内である(ただし、AおよびBの範囲を
除く)。
D:JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、L
75.0以上89.0以下の範囲外である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
4.長期安定性評価
(4−1)目視による評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、常温(25℃)、常圧、湿度75%RHの環境下に、80日間放置した後の、装飾品の被膜が形成された面側について、目視による観察を行い、色むらの発生を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むらの発生がまったく認められない。
B:色むらの発生がほとんど認められない。
C:色むらの発生がわずかに認められる。
D:色むらの発生がはっきりと認められる。
E:色むらの発生が顕著に認められる。
(4−2)色度計による評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、常温(25℃)、常圧、湿度75%RHの環境下に、80日間放置した後の、装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、当該環境下に置く前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
5.耐酸化性評価
(5−1)目視による評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、200℃、常圧の大気雰囲気下で8時間放置し、その後の装飾品の被膜が形成された面側について、目視による観察を行い、色むらの発生を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むらの発生がまったく認められない。
B:色むらの発生がほとんど認められない。
C:色むらの発生がわずかに認められる。
D:色むらの発生がはっきりと認められる。
E:色むらの発生が顕著に認められる。
(5−2)色度計による評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を、200℃、常圧の大気雰囲気下で8時間放置し、その後の装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、当該環境下に置く前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
6.耐薬品性評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、以下に示すような曝気試験を行うことにより、耐薬品性を評価した。
(6−1)目視による評価
デシケーター内に人工汗を入れ、45℃で12時間放置した。その後、デシケーター内に、各装飾品を入れ、さらに45℃で放置した。このとき、各装飾品は、人工汗中に浸漬しないように配置した。30時間後、各装飾品をデシケーター内から取り出し、装飾品の被膜が形成された面側について、目視による観察を行い、色むらの発生を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むらの発生がまったく認められない。
B:色むらの発生がほとんど認められない。
C:色むらの発生がわずかに認められる。
D:色むらの発生がはっきりと認められる。
E:色むらの発生が顕著に認められる。
(6−2)色度計による評価
デシケーター内に人工汗を入れ、45℃で12時間放置した。その後、デシケーター内に、各装飾品を入れ、さらに45℃で放置した。このとき、各装飾品は、人工汗中に浸漬しないように配置した。30時間後、各装飾品をデシケーター内から取り出し、装飾品の被膜が形成された面側の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、前記曝気試験を行う前後での色差を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:色差ΔEが3未満である。
B:色差ΔEが3以上4未満である。
C:色差ΔEが4以上5未満である。
D:色差ΔEが5以上である。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
7.被膜の密着性評価
前記各実施例および各比較例で製造した装飾品について、以下に示すような試験を行い、被膜(第1の被膜、第2の被膜、下地層)の密着性を評価した。
各装飾品を、以下のような熱サイクル試験に供した。
まず、装飾品を、20℃の環境下に1.5時間、次いで、65℃の環境下に2時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−15℃の環境下に3時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計3回繰り返した(合計24時間)。
その後、装飾品の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:被膜の浮き、剥がれ等が全く認められない。
B:被膜の浮きがほとんど認められない。
C:被膜の浮きがはっきりと認められる。
D:被膜のひび割れ、剥離がはっきりと認められる。
8.耐擦傷性評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行い、耐擦傷性を評価した。
スガ磨耗試験機(スガ試験機株式会社製、NUS-ISO-1)を用いて、荷重:200gfという条件で、各装飾品の被膜が形成された側の面(基材の表面が露出しているのとは反対側の面)を、合計300DS(ダブルストローク)磨耗した後の各装飾品の外観を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。なお、上記試験は、住友スリーエム(株)製、ラッピングフィルム(酸化アルミニウム、粒度:30μm)を用いて行った。
A:被膜の表面に、傷の発生が全く認められない。
B:被膜の表面に、傷の発生がほとんど認められない。
C:被膜の表面に、傷の発生がわずかに認められる。
D:被膜の表面に、傷の発生が顕著に認められる。または、被膜の剥離が認められる。
9.耐打痕性(打痕の付き難さ)評価
前記各実施例および各比較例で製造した各装飾品について、以下に示すような試験を行うことにより、耐打痕性を評価した。
各装飾品の被膜が形成されている側の面に向けて、ステンレス鋼製の球(径1cm)を高さ60cmの位置から落下させて、装飾品表面の凹み大きさ(凹み痕の直径)の測定を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:凹み痕の直径が1mm未満、または、凹み痕が求められない。
B:凹み痕の直径が1mm以上2mm未満。
C:凹み痕の直径が2mm以上3mm未満。
D:凹み痕の直径が3mm以上。
これらの結果を、被膜のビッカース硬度Hvとともに表3、表4に示す。なお、ビッカース硬度Hvとしては、各装飾品の表面(被膜が設けられている側の面)について、測定荷重10gfにて測定した値を示す。
Figure 2013224965
Figure 2013224965
表3、表4から明らかなように、本発明の装飾品は、優れた美的外観、特に、光沢感のあるピンク色の優れた外観を有していた。また、本発明の装飾品は、長期安定性、耐酸化性、耐薬品性、被膜の密着性にも優れていた。また、本発明の装飾品は、高い硬度を有しており、耐擦傷性、耐打痕性にも優れていた。これらの結果から、本発明の装飾品は、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができるものであることがわかる。
また、本発明の装飾品は、いずれも、ザラツキ感のない、優れた触感を有していた。
これに対し、比較例では満足な結果が得られなかった。
また、前記各実施例および各比較例で製造した装飾品を用いて、図2に示すような腕時計を組み立てた。これらの腕時計について、上記と同様な評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
また、本発明では、個体間での特性差が小さく、安定した品質の装飾品を確実に製造することができたのに対し、比較例では、個体間での外観、品質のばらつきが大きかった。
1…装飾品 2…基材 3…第1の被膜 4…第2の被膜 4’…第2の被膜 4’’…第2の被膜 5…下地層 10…腕時計(携帯時計) 22…胴(ケース) 23…裏蓋 24…ベゼル(縁) 25…ガラス板 26…巻真パイプ 27…りゅうず 271…軸部 272…溝 28…プラスチックパッキン 29…プラスチックパッキン 30…ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 40…ゴムパッキン(裏蓋パッキン) 50…接合部(シール部)
本発明は、装飾品および時計に関する。
本発明の目的はピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を提供すること、また、当該装飾品を備えた時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の装飾品は、基材と、
前記基材上に形成された少なくともTiNを含む第1の被膜と、
前記第1の被膜上に形成された少なくともAuおよびCuを含む第2の被膜と、を有する装飾品であって、
前記第1の被膜の平均厚さが0.1μm以上5.0μm以下であり、かつ、Nの含有率が2.0wt%以上29.0wt%以下であり、
前記第2の被膜の平均厚さが0.02μm以上2.0μm以下であることを特徴とする。
これにより、ピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品提供することができる。
本発明の装飾品では、装飾品の前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL 表示の色度図において、a が7.0以上15.0以下でありかつb が15.0以上27.0以下の範囲のものであることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観は、特に優れたものとなる。
本発明の装飾品では、装飾品の前記第2の被膜が設けられている側の面の色調は、JIS Z 8729で規定されるL 表示の色度図において、L が75.0以上89.0以下であることが好ましい。
これにより、装飾品の美的外観は、特に優れたものとなる。
本発明の装飾品では、前記基材がFe,Cu,Zn,Ni,Mg,Cr,Mn,Mo,Nb,Al,V,Zr,Sn,Au,Pd,Pt,Agの少なくとも1種を含む合金で構成されたものであることが好ましい。
これにより、特に優れた強度特性を有する装飾品を提供することができる。また、基材の表面粗さが比較的大きい場合であっても、装飾品の表面粗さを小さくすることができる。
本発明の装飾品では、前記基材がプラスチック、セラミックス、石材、木材、ガラスのいずれかで構成されたものであることが好ましい。
これにより、比較的軽量で携帯し易く、かつ、光沢感があり高級な外観を有する装飾品を提供することができる。また、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、直接成形するのが困難な形状の装飾品であっても、比較的容易に提供することができる。また、電磁ノイズを遮蔽する効果も得られる。
本発明の装飾品では、前記基材の表面には、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工が施されていることが好ましい。
これにより、装飾品の表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、装飾品の装飾性をさらに向上させることができる。また、下地層、第1の被膜、第2の被膜等に対して表面加工を直接施すことにより得られるものに比べて、ギラツキ等が抑制されたものとなり、特に美的外観に優れたものとなる。また、第1の被膜は硬質材料であるTiNで構成されているため、第1の被膜に対して表面加工を直接施す場合には、当該表面加工を施す際に第1の被膜にカケ等の欠陥を生じ易く、装飾品の製造の歩留りが著しく低下する場合があるが、基材に対して表面処理を行うことにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。また、基材に対する表面処理は、第1の被膜に対する表面加工に比べて、温和な条件で容易に行うことができる。
本発明の装飾品では、前記基材と前記第1の被膜との間に、平均厚さが0.03μm以上1.5μm以下の少なくとも1層の下地層を有することが好ましい。
これにより、下地層の内部応力が大きくなり、クラック等が発生するのを十分に防止しつつ、装飾品の耐久性を向上させる効果がより顕著に発揮される。
本発明の時計は、本発明の装飾品を備えたことを特徴とする。
これにより、色むらが防止され、長期間にわたってピンク色で光沢感のある優れた美的外観を保持することができる装飾品を備えた時計を提供することができる。
本発明によればピンク色で光沢感があり、各部位での色むらが防止された優れた美的外観を有し、耐久性にも優れた装飾品を提供すること、また、当該装飾品を備えた時計を提供することができる。

Claims (11)

  1. 基材上に、主としてTiNで構成された第1の被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
    70.0wt%以上85.0wt%以下のAuおよび15.0wt%以上30.0wt%以下のCuを含むターゲットを用いた乾式めっき法により、前記第1の被膜上に第2の被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
    前記第1の被膜および前記第2の被膜が設けられた前記基材に対し、300℃以上395℃以下に加熱する加熱処理を施し、その後、冷却処理を施すことにより、前記第2の被膜の構成材料の固溶体化を促進する熱処理工程と、
    酸処理を施すことにより、前記熱処理が施された前記第2の被膜の構成成分のうち、固溶体を構成していないものを除去する酸処理工程とを有することを特徴とする装飾品の製造方法。
  2. 前記酸処理工程は、前記熱処理工程に供された前記第2の被膜を、50wt%以上70wt%以下のHNO水溶液と、1秒以上180秒以下接触させることにより行う請求項1に記載の装飾品の製造方法。
  3. 前記第1の被膜形成工程に先立ち、前記基材上に、少なくとも1層の下地層を形成する下地層形成工程を有する請求項1または2に記載の装飾品の製造方法。
  4. 前記下地層として、主としてTiで構成された層を形成する請求項3に記載の装飾品の製造方法。
  5. 前記基材は、少なくともその表面付近が主としてTiおよび/またはステンレス鋼で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の装飾品の製造方法。
  6. 前記装飾品が備える前記第1の被膜中におけるNの含有率が、2.0wt%以上29.0wt%以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の装飾品の製造方法。
  7. 前記装飾品が備える前記第1の被膜の平均厚さは、0.1μm以上5.0μm以下である請求項1ないし6のいずれかに記載の装飾品の製造方法。
  8. 前記装飾品が備える前記第2の被膜の平均厚さは、0.02μm以上2.0μm以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の装飾品の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする装飾品。
  10. 装飾品は、時計用外装部品である請求項9に記載の装飾品。
  11. 請求項9または10に記載の装飾品を備えたことを特徴とする時計。
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