JP2009220777A - 車両ドア用のウォータプルーフフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両ドアのインナパネルとドアトリムとの間に介装される車両ドア用のウォータプルーフフィルムであって、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジカルボン酸成分とから成るジカルボン酸成分と、グリコール成分とを構成成分として有するポリエステルにより形成され、該芳香族ジカルボン酸成分は、70〜95モル%であり、該脂肪族ジカルボン酸成分は、5〜30モル%であり且つ炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を有し、該グリコール成分は、炭素数が10以下から構成する。
【選択図】図1
Description
そして、このウォータプルーフフィルムは、例えば、ポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニル(PVC)といった石油に由来する材料(石油由来材料)で作られるのが一般的である。
他方、上述したPEやPVCにより形成されたウォータプルーフフィルムであれば、このような異音は発生しにくいという利点はあるが、地球環境の保護という観点からは、石油由来材料であるPEやPVCをできる限り用いないようにすることが望まれる。
また、請求項3記載の本発明の車両ドア用のウォータプルーフフィルムは、請求項1または2に記載の内容において、該脂肪族ジカルボン酸成分が、ダイマー酸またはダイマー酸誘導体を有し、且つ、該グリコール成分が、発酵法によって合成される1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールを有することを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の車両ドア用のウォータプルーフフィルムは、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の内容において、添加剤としてのリン化合物として、リン酸、リン酸エステル、リン酸金属塩から選ばれる少なくとも1つが用いられ、該フィルム中には、20ppm以上150ppm以下のリン原子が含有されることを特徴としている。
ポリエステルの弾性率を150MPa以下とすることによりウォータプルーフフィルムからの異音(いわゆる、ビビリ音)を抑制することができる。(請求項2)
また、植物由来材料を用いることで地球環境へ悪影響を及ぼすことを防ぐことが可能となり、ポリエステルを構成する脂肪族ジカルボン酸成分およびグリコール成分を特定の構成とすることで、環境性能と車両ドアウォータプルーフフィルムとしての必要性能、即ち、車両が使用される温度環境に耐え且つ異音の発生を防ぐという性能とを両立させることができる。(請求項3)
また、末端カルボキシル基封鎖剤を用いて改質することで、加水分解の原因となるカルボオニル基を減少させることができる。(請求項4)
また、添加剤としてリン化合物を用い、フィルム中に20ppm以上150ppm以下のリン原子を含有させて改質することで、加水分解の原因となるカルボニル基の増加を抑制することができる。(請求項5)
また、必要に応じて各種粒子や添加剤を加えることで、フィルム間の粘着性を抑制し、取扱い性や工程内作業性を良好なものとすることができる。(請求項6)
なお、以下の説明において、ある原料モノマーに由来するポリマーの繰り返し単位を表わす場合に、その原料モノマーの化合物名に「単位」という言葉を付して表わす場合がある。例えば、ダイマー酸に由来する繰り返し単位は「ダイマー酸単位」という。
本発明の車両用ウォータプルーフフィルム(以下、適宜、「本発明のウォータプルーフフィルム」という)に使用されるポリエステルとしては、特に制限されるものではないが、通常は以下に規定するものを用いる。
本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分および脂肪族ジカルボン酸成分とグリコール成分とで構成され、グリコールとジカルボン酸とがエステル結合により交互に結合した構造を有する。さらに詳しくは、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸成分70〜95モル%と、炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を主体とする脂肪族ジカルボン酸成分5〜30モル%から構成され、グリコール成分として炭素数が10以下のグリコール成分を少なくとも1種以上含有している必要がある。
さらには、脂肪族ジカルボン酸成分による柔軟化効果を高めるために、芳香族ジカルボン酸成分は2種以上から構成されることが好ましい。例えば、テレフタル酸とイソフタル酸から構成され、全ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有量は、10〜30モル%が好ましく、より好ましくは15〜25モル%の範囲である。特に脂肪族ジカルボン酸成分量を10モル%未満とする必要がある場に、芳香族ジカルボン酸成分を2種以上とすることが好ましい。
(式中のRは、水素原子またはアルキル基、mは1〜25の整数、kは1〜5の整数、nは0〜25の整数、m、kおよびnは、8≦m+3k+n≦28の関係式を満足する。)
この不飽和脂肪酸の二量化反応においては、二量体とともに不飽和脂肪酸の三量化により得られる三量化脂肪酸(以下三量体と略称する)も生成する。よって不飽和脂肪酸の二量化反応により得られる脂肪族ジカルボン酸誘導体中には、二量体、三量化された三量体及び未反応であった単量体が含まれている。
ダイマー酸の色調は、ガードナー色差計での値で、1.0以下であることが好ましい。ガードナー色差計で1.0を超えるとポリエステル組成物のb値(黄味)が高くなり、外観が損なわれる可能性がある。ガードナー色差計で1.0以下のダイマー酸を得るには、原料を選択したり、不飽和脂肪酸を精製することで可能であるが、更に低くしたい場合には、合成時の反応を緩やかに行ったり(反応温度を下げ時間をかける)、蒸留条件を厳しくすることで得ることができる。
炭素数が10以下のグリコール成分とは、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロブタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれた少なくとも1種以上であることが柔軟性の点で好ましい。
本発明におけるポリエステルには、フィルムの強度および弾性率低下の原因となる加水分解を少なくするため、リン酸、リン酸エステル、リン酸金属塩から選ばれる少なくとも一種のリン化合物を用いて改質することが好ましい。リン化合物を用いる場合には、ポリエステル中にリン原子として20ppm以上150ppm以下の範囲で含有することが耐加水分解性を良好にするほか色調、耐熱性の点から好ましい。より好ましくは30ppm以上100ppmの範囲である。リン化合物としては、リン酸、リン酸二水素アルカリ金属塩、リン酸水素二アルカリ金属塩、亜リン酸、亜リン酸アルカリ金属塩、リン酸トリメチル、エチルジエチルホスホノアセテートなどのリン酸エステルなどをあげることができるが、中でもリン酸、リン酸二水素アルカリ金属塩、リン酸水素二アルカリ金属塩であることが耐熱性、色調、耐加水分解性の点から好ましい。重合反応性、耐加水分解性の点からリン酸水素二アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種以上であることが好ましく、特にリン酸水素二アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩の併用であることが好ましい。
本発明のポリエステルは、特に制限されるものではないが、通常酸価が30当量/トン以下であることが好ましい。より好ましくは20当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下である。ポリエステル中の酸性度が高くなる場合、カルボキシル基量が多い場合、ポリエステルの加水分解が促進され、ウォータプルーフフィルム物性低下が発生する場合がある。ポリエステルの酸価は、ポリエステルの重縮合条件、リン化合物、末端封鎖剤等の種類や量、さらにはフィルム製造時の温度条件等によって制御されるが、ウォータプルーフフィルムとして、30当量/トン以下であることが好ましい。
また、フィルムの易滑性や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機微粒子や有機粒子を添加する際には、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンなどの粒子を用いることができる。同様の目的で用いる有機化合物としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、N−ステアリルエルカアミド、エチレンビスステアリン酸アミド 、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等のアミド系有機滑剤、また、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル等長鎖脂肪酸アルコールエステル、べへニン酸べへニン、ミリスチン酸セチル等のモノエステル系有機滑剤、さらにはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム等の脂肪酸塩、シリコン系化合物、カルナウバワックス、キャンデリラワックスなどが挙げられる。なかでもアミド系滑剤が優れた滑り性の発現、耐ブリードアウト性などの点から好適に使用することが可能である。ポリエステルへの分散性の点からは、ステアリル酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドが好ましく、より好ましくはステアリン酸アミドである。
本発明で使用するポリエステルのガラス転移温度は、ウォータプルーフフィルムの異音(いわゆる、ビビリ音)の抑制、特に低温条件下で使用される場合の異音抑制の点から、ガラス転移温度が−20〜0℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃を越えると異音の抑制が不十分となる場合がある。逆にガラス転移温度が−20℃未満であるとポリマーのカッテング性など生産性、取り扱い性が悪化する場合がある。
本発明で使用するポリエステルのMFRは、製膜方法により適正な粘度が異なるため、特に限定されないがスリット状口金よりシート状に押出してフィルムを得る方法を用いる場合は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常、5g/10分以上であり、上限が通常、30g/10分以下、好ましくは20g/10分以下、特に好ましくは15g/10分以下である。MFRが30g/10分を超える場合、粘度不足のため、製膜が困難になることがある。またMFRが5g/10分未満の場合には、押し出し状態が安定せず、不均一な膜厚のものとなることがある。さらに、部分的に肉厚になったところが白化して斑点状になることがある。なおMFRはJIS K7210に準拠して測定される。
本発明で使用するポリエステルは、公知の方法で製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、グリコール成分並びに必要に応じて使用されるその他のモノマー成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合でポリエステルを製造する方法が好ましい。
このとき、ダイマー酸の添加時期は、エステル化反応の後半から重合初期の間に添加することが色調、耐熱性の点から好ましい。特に、エステル化反応後半において、反応系を200℃〜220℃に制御しながらダイマー酸を徐々に添加することが生産性の点から好ましく、特に200〜210℃に制御することが色調の点から好ましい。ダイマー酸の添加方法は、加温して低粘度化して添加することがハンドリング性の点から好ましく、その温度は50℃〜70℃であることがハンドリング性の点から好ましい。
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
その後の重縮合反応は、通常0.4×103Pa以下、好ましくは0.14×103Pa以下の真空度下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは5時間以下である。
また、本発明におけるポリエステルに、イソシアネート化合物やカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等を用いる場合には、ポリエステルの重縮合工程で含有させてもよく、得られたポリエステルに二軸押出機等で混練し含有させてもよい。重縮合工程で含有させる場合には、重縮合反応終了後に配合することが好ましい。二軸押出機で混練する方法は、ポリエステル中に高濃度に含有させ、マスター原料を製造し、フィルム製造時に希釈して用いることができ、ポリエステルの分子量低下を抑えられることから、特に好ましく用いられる。
本発明のウォータプルーフフィルムは、上述のポリエステルを用いれば、その他に特に制限はないが、好ましくは以下の特徴を有するものである。
本発明のウォータプルーフフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、フィルム製造時の製膜安定性や取扱い性の点で10〜200μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、30〜100μmの範囲である。厚みが10μm未満では、車両ドアへ装着する際に容易に変形してしまうほか、振動の影響を受けやすく、ウォータプルーフフィルムの異音(いわゆる、ビビリ音)が発生する場合がある。
本発明のウォータプルーフフィルムの面配向係数fnは、0.00〜0.04の範囲であることが好ましい。面配向係数fnを0.00〜0.04としたフィルムを得るためには、無延伸フィルムとする方法や高温延伸あるいは低倍率での延伸フィルムとする方法が挙げられる。
ここで、フィルムの長手方向や幅方向が分からない場合は、フィルム面内において最大屈折率を有する方向を長手方向、フィルム面内における長手方向に直行する方向を幅方向、フィルム面内に対して直行する方向を厚み方向として、面配向係数(fn)を求めることができる。また、フィルム面内における最大屈折率の方向は、面内全ての方向の屈折率をアッベ屈折率計で測定してもよいし、例えば、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
本発明のウォータプルーフフィルムの弾性率は、23℃の雰囲気下で150MPa以下であることが好ましい。23℃の雰囲気下での弾性率が150MPaを越えると、得られる車両ドア用のウォータプルーフフィルムの異音(いわゆる、ビビリ音)が問題となる場合がある。また、23℃の雰囲気下での弾性率が10MPa未満であるとポリマーのカッテング性など生産性、取り扱い性が悪化するため、好ましくは10〜150MPaの範囲である。より好ましくは10〜120MPaの範囲、さらに好ましくは10〜100MPaの範囲、特に好ましくは10〜70MPaの範囲である。23℃の雰囲気下での弾性率を上記範囲とするには、ジカルボン酸成分のダイマー酸成分の共重合量を10モル%以上とするほか、必要に応じてイソフタル酸の共重合量を15モル%以上とする方法、また、グリコール成分をエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれた少なくとも1種以上とし、好ましくは、1,4−ブタンジオールおよび/または1,3−プロパンジオールを選択することが好ましい。さらには1,4−ブタンジオールおよび/または1,3−プロパンジオールの全グリコール成分中の割合が80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上とすることで達成できるものである。
本発明のウォータプルーフフィルムの破断強度は、23℃の雰囲気下で20MPa以上であることが好ましい。より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上である。破断強度の上限は、特に限定されないが、120MPa以下である。
23℃の雰囲気下での破断強度が20MPa未満あるいは破断伸度が200%未満であると、車両ドア用のウォータプルーフフィルムの装着作業時にフィルムが破断するなどの問題が発生する場合があるため好ましくない。
本発明のウォータプルーフフィルムの製造方法は特に制限されず、任意の方法で製造することが可能であるが、主な方法としては、(i)上述のポリエステル、並びに必要に応じて用いられる成分を混合し、フィルム状に直接成形する方法(以下「直接成形法」という。)、(ii)上述のポリエステル、並びに必要に応じて用いられる成分を、溶媒に溶解又は分散させた液を用い、溶媒を除去して硬化させる方法(以下「溶媒法」という。)である。
また、ウォータプルーフフィルムの特性改善等の目的で、加熱処理、延伸加工処理、表面処理等の各種の処理を行ってもよい。
本発明のフィルムの製造においては、熱分解を抑制し高分子量のフィルムとするため、ポリエステルをあらかじめ乾燥した後に押出機に供給することが好ましく、少なくともポリエステル中の水分率を300ppm以下に乾燥を施すことが好ましい。また同様の理由により、押出温度をより低温とすることが好ましく、また滞留時間をより短時間とすることが好ましい。具体的には押出機やポリマー配管、口金などの温度は、使用するポリエステルの融点+20〜30℃とすることが好ましく、ポリエステルが押出機内で溶融されてから口金より吐出されるまでの滞留時間は20分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましく、5分以下であることがさらに好ましい。
いずれの延伸方法を用いる場合にも本発明のウォータプルーフフィルムの性能を得るため、面配向係数fnを低くする必要があり、予熱・延伸温度を高温とする方法や低倍率延伸とする方法などを用いることが好ましい。
以下、図面により、本発明の実施形態に係る本発明の車両ドア用のウォータプルーフフィルムを、実際に車両用ドアに用いる場合について説明する。
なお、図2および図3の表は、〔実施例〕として後述する実験とその結果とを説明する際に詳しく説明する。
これらのうち、アウタパネル11はドア10の外側を形成する板材であり、また、インナパネル12はアウタパネル11の内側に対して溶接により固着された板材である。また、これらのアウタパネル11とインナパネル12との間にはパワーウィンドウ機構(図示略)と窓ガラス16とが設けられ、この窓ガラス16がパワーウィンドウ機構により上下動できるようになっている。
そして、このウォータプルーフフィルム13は、インナパネル12とドアトリムとの間に介装される防水シートであって、インナパネル12の内側に対してブチルラバーテープ(図示略)により貼付され、インナパネル12に形成された複数の穴部(図示略)を塞ぐことができるようになっている。
これらのうち、本発明におけるポリエステルは、ポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニル(PVC)といった石油に由来する材料(石油由来材料)ではなく、植物より得られるダイマー酸に代表される脂肪酸および/または、発酵法による1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールを構成成分とする植物に由来する材料(植物由来材料)である。
また、ポリエステルの全ジカルボン酸中の炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を主体とする脂肪族ジカルボン酸成分量を5〜30モル%の間で変化させた場合には、異音特性および粘着特性のいずれにおいても大きな変化は見られないため、5〜30モル%の間であれば任意の割合にすればよいが、好ましくは10モル%以上に設定する。より好ましくはポリエステル中のグリコール成分を1,4−ブタンジオールおよび/または1,3−プロパンジオールとし、全グリコール成分中の割合が80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上に設定する。
そこで、ウォータプルーフフィルム13におけるポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分および炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を主体とする脂肪族ジカルボン酸成分、炭素数10以下のグリコール成分の配合量を特定の範囲に設定しておけば、このような温度環境の変化にも対応することが可能となるのである。
また、特に弾性率を低減する効果の高い植物由来材料である炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を構成成分とすることで、ウォータプルーフフィルムの異音(いわゆる、ビビリ音)の発生しにくさを良好に保つことができる。
以上、本発明の具体的な適用例を説明したが、本発明は係る適用例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
以下の実施例に記載の手順により、ウォータプルーフフィルムを作製し、その物性を測定した。
ポリエステルをアルカリにより加水分解し、各成分をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求めた。
装置:島津LC−10A(島津製作所製)
カラム:YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm S−5μm
120A
カラム温度:40℃
流量:1.2ml/min
検出器:UV 240nm
グリコール成分の定量はガスクロマトグラフィーを用いて既知の方法で分析することができる。例えば以下に一例を示す。
カラム:SUPELCOWAX−10 キャピラリーカラム30m
カラム温度:140℃〜250℃(昇温速度5℃/min)
流量 :窒素 25ml/min
検出器:FID
脂肪族ジカルボン酸(誘導体)を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求めた。測定条件は既知の方法で実施することができるが、以下に一例を示す。
移動相 :H3PO4水溶液/メタノール=80/20−(20min)
20/80−(40min)
流速 :0.4mL/min
カラム温度:45℃
検出器 :フォトダイオードアレイ(200〜400nm)
クロマトグラムは21512を使用
ここで、フィルム中の脂肪族ジカルボン酸(誘導体)中の単量体、二量体、三量体の組成比を求める場合は次のように行うことができる。さらにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などのクロマトグラフィーや核磁気共鳴測定(NMR)などを用いることで、脂肪族ジカルボン酸(誘導体)を同定して、その単量体、二量体、三量体の組成比を求めるなどの方法がある。
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式(3)によって計算される値を用いる。
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
パーキンエルマー社製DSC7を用い、10mgのサンプルを流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融し、−50℃に急冷した後に10℃/分の昇温条件で示差走査熱量計測定を行い、得られるDSC曲線から求めた。このDSC曲線から、JISK7121、JISK7122に準拠し、階段状変化の前後の各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度(Tg)とし、結晶融解に伴う吸熱ピークの温度を融点(Tm)とし、その吸熱ピークの面積から結晶融解熱量(ΔHm)を求めた。
フィルム厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、切り出した各試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均して求めた。
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの表面の長手方向屈折率(Nx),幅方向屈折率(Ny),厚み方向屈折率(Nz)を測定し、下式(4)から面配向係数(fn)を算出した。
フィルムから、長さ200mm、幅10mmのサンプルを切り出し、ASTM−D−882−81(A法)に従い、23℃雰囲気下で引張速度50mm/分で測定し、弾性率を求めた。同様の方法で破断強度および破断伸度を求めた。試験数は長手方向をn=5回、幅方向をn=5とし、長手方向、幅方向の平均値を求めてこれを弾性率、破断強度、破断伸度とした。
図2および図3に示すように、ポリエステルの構成を変更し温度23℃、湿度50%RHの条件下で評価した。
また、湿熱条件下での物性保持性について、フィルムサンプルを温度80℃、湿度95%RH条件に制御した恒温恒湿槽内に250時間保管後、取り出して温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間静置後に引張り試験を行った。得られた破断伸度から伸度保持率を求め、評価した。伸度保持率が90%以上のものを◎、80%以上90%未満のものを○、50%以上80%未満のものを△、50%未満を×として評価した。
[ポリエステル1] PBT/I10/DA10
テレフタル酸51.1重量部、イソフタル酸6.4重量部、1,4−ブタンジオール63重量部の混合物に、テトラブチルチタネート0.03重量部、IRGANOX1010FP(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.011重量部を仕込み、150℃から210℃まで昇温しながら常法に従いエステル化反応せしめた後、リン酸0.01重量部を添加し、その10分後にテトラブチルチタネート0.066重量部、IRGANOX1010FP(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.025重量部、あらかじめ50℃に加熱したダイマー酸(PRIPOL1098:クローダ・インターナショナル社製)21.8重量部/1,4−ブタンジオール4重量部の混合スラリーを添加した。缶内温度が210℃に復帰後、30分間攪拌してから重合反応槽へ移行し、常法に従って重縮合反応を行った。最終的には240℃、1.33×102Pa以下で重縮合反応を行い、固有粘度1.02、テレフタル酸90モル%、ダイマー酸10モル%のダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート:ポリエステル1を得た。
上記で得られたポリエステル90重量部、芳香族ポリカルボジイミド(スタバクゾール P100:ラインケミー社製)10重量部の混合物を30mmφのベント式異方向二押出機(L/D=35)を用い、230℃で混練し、ポリカルボジイミドを10重量%含有した末端封鎖剤のマスター原料1(MS−1)を作製した。
ポリカルボジイミドに替えて、カルボジイミド変性イソシアネート(カルボジライト LA−1:日清紡社製)に変更すること以外は、マスター原料1と同様の方法にて末端封鎖剤のマスター原料2(MS−2)を作製した。また、同様にトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(TEPIC−S:日産化学工業社製)に変更した末端封鎖剤のマスター原料3(MS−3)を作製した。
ポリエステルおよびマスター原料は、減圧下130℃×6時間乾燥を行い、以下の実施例および比較例に用いた。
(実施例1)
ダイマー酸10モル%、イソフタル酸10モル%を共重合したポリブチレンテレフタレート:ポリエステル1のペレット(100重量%)を用い、押出温度230℃に設定した単軸押出機に供給し、スリット間隙0.8mmのTダイ口金に導きフィルム状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加方式およびエアーチャンバー方式を併用し、表面温度60℃の梨地キャスティングドラム(中心線表面粗さRa=200〜350nm)に密着させて冷却固化し、厚み60μmのウォータプルーフフィルムを作製した。
(実施例2〜7、比較例1、2)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、グリコール成分としてエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールを変更したポリエステルを用いること以外は、実施例1と同様にして、フィルムを作製した。物性を図2に示す。
(実施例8〜11)
実施例3および実施例4で用いたポリエステルに、さらに含有せしめるリン化合物を変更し、末端封鎖剤のマスター原料を使用し末端封鎖剤がポリエステル中に1重量%となるように各々混合すること以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。物性を図3に示す。
また、その重量割合を約10モル%以上に増加させると、異音は発生しなくなる。
他方、その重量割合を約25モル%とすると、ウォータプルーフフィルム13の表面の粘着性が現れ、約30モル%を超えると粘着性が過度に増大して取扱い性が不良となることが予想される。
また、第2成分ポリエステルの配合割合を約10〜20モル%の間で変化させた場合には、異音特性および粘着特性のいずれにおいても大きな変化は見られないため、約10〜20モル%の間であれば任意の割合にすればよい。
11 アウタパネル
12 インナパネル
13 ウォータプルーフフィルム
16 窓ガラス
Claims (5)
- 車両ドアのインナパネルとドアトリムとの間に介装される車両ドア用のウォータプルーフフィルムであって、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジカルボン酸成分とから成るジカルボン酸成分と、グリコール成分とを構成成分として有するポリエステルにより形成され、該芳香族ジカルボン酸成分は、70〜95モル%であり、該脂肪族ジカルボン酸成分は、5〜30モル%であり且つ炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導される二量化脂肪酸を有し、該グリコール成分は、炭素数が10以下であることを特徴とする、車両ドア用のウォータプルーフフィルム。
- 該ウォータプルーフフィルムは、弾性率が150MPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の車両ドア用のウォータプルーフフィルム。
- 該脂肪族ジカルボン酸成分が、ダイマー酸またはダイマー酸誘導体を有し、且つ、該グリコール成分が、発酵法によって合成される1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両ドア用のウォータプルーフフィルム。
- 末端カルボキシル基封鎖剤として、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびオキサゾリン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1つが用いられることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の車両ドア用のウォータプルーフフィルム。
- 添加剤としてのリン化合物として、リン酸、リン酸エステル、リン酸金属塩から選ばれる少なくとも1つが用いられ、該フィルム中には、20ppm以上150ppm以下のリン原子が含有されることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の車両ドア用のウォータプルーフフィルム。
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