JP2009220399A - 透明積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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義弘 徳永
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哲也 竹内
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Abstract

【課題】従来に比較して、亀裂の抑制されたコーティング層を有する透明積層フィルムを提供すること。ゾル−ゲル法によるコーティング層に亀裂が発生し難い透明積層フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムと、易接着層の形成面とは反対側のフィルム面に接して形成された、ゾル−ゲル法によるコーティング層とを少なくとも有する透明積層フィルムとする。コーティング層の厚みは、5〜40nmの範囲内にあると良い。透明樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明積層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
近年、様々な分野において、光学機能性フィルムが使用されている。光学機能性フィルムとしては、透明樹脂フィルムの片面に、ゾル−ゲル法による金属酸化物層やスパッタ法による金属層などを多層に積層した透明積層フィルムが知られている。
例えば、特許文献1には、PETフィルムの片面に、ゾル−ゲル法によるチタン酸化物層とスパッタ法による銀層とを交互に7層積層した透明積層フィルムが開示されている。
ところで、光学用途に適用される透明樹脂フィルムは、フィルム両面に、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等からなる易接着層が形成されていることが多い。また、上市されている数は少ないが、フィルム面の片面にだけ易接着層が形成されているものもある。
上記易接着層は、透明樹脂フィルムの製造時や使用時等に、当該フィルムを巻いたり、重ねたりしても貼り付き難くする、フィルム同士が滑らずにハンドリング性が低下するのを防止するなどの目的を有するものである。
これまで、易接着層が両面にある場合はもちろんのこと、易接着層が片面に形成されている場合でも、透明樹脂フィルムと積層する層との機械的な噛み合い(アンカー効果)等による密着性を期待して、易接着層の表面に新たな層を形成することが普通に行われてきた。
特開2006−328353号公報
しかしながら、ゾル−ゲル法によるコーティング層を有する従来の透明積層フィルムは、以下の点で問題があった。
すなわち、透明樹脂フィルムの易接着層面側に、ゾル−ゲル法によりコーティング層を形成する場合、特に、一層目に亀裂が発生しやすいといった問題があった。この亀裂の問題は、前駆体層に紫外線を照射し、ゾル−ゲル重合反応を一気に進めてコーティング層を形成する際に顕著であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、従来に比較して、亀裂の抑制されたコーティング層を有する透明積層フィルムを提供することにある。また、ゾル−ゲル法によるコーティング層に亀裂が発生し難い透明積層フィルムの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る透明積層フィルムは、片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムと、上記易接着層の形成面とは反対側のフィルム面に接して形成された、ゾル−ゲル法によるコーティング層とを少なくとも有することを要旨とする。
ここで、上記コーティング層の厚みは、5〜40nmの範囲内にあることが好ましい。
また、上記コーティング層の屈折率は、1.7〜2.0の範囲内にあることが好ましい。
また、上記透明樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
一方、本発明に係る透明積層フィルムの製造方法は、片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムを準備し、上記易接着層の形成面とは反対側のフィルム面にゾル−ゲル法によるコーティング層を形成する工程を少なくとも有することを要旨とする。
ここで、上記製造方法では、上記コーティング層の厚みを5〜40nmの範囲内にすることが好ましい。
また、上前記コーティング層を形成する際には、上記コーティング層の前駆体層に紫外線を照射することが好ましい。
透明樹脂フィルムに易接着層が形成されている場合、易接着層のないフィルム表面の凹凸よりも易接着層の表面凹凸が粗い。そのため、従来、易接着層が両面にある場合はもちろんのこと、片面にある場合でも、表面凹凸による機械的噛み合い(アンカー効果)等を期待して、易接着層の表面にゾル−ゲル法によるコーティング層が積層されることが通常であった。
これに対し、本発明に係る透明積層フィルムでは、透明樹脂フィルムの片面に形成された易接着層の形成面とは反対側のフィルム面に接して、ゾル−ゲル法によるコーティング層が形成されている。そのため、従来に比較して、コーティング層の亀裂が抑制される。
これは、易接着層の表面凹凸は、ゾル−ゲル法によるコーティング層の形成時に亀裂の発生起点となりやすいが、本発明では、フィルム面に直接コーティング層を形成しているため、コーティング層形成時に亀裂が生じ難いためであると考えられる。
ここで、コーティング層の厚みが上述した範囲内にある場合には、亀裂の抑制効果と光学特性とのバランスに優れる。
また、コーティング層の屈折率が上述した範囲内にある場合には、光学特性に優れる。
また、上記透明樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである場合には、易接着層が片面に形成された光学用途の透明樹脂フィルムの選択の幅が広くなる。そのため、光学特性の設計自由度が高まる。また、比較的安価であるので、透明積層フィルムの低コスト化を図りやすくなる。
一方、本発明に係る透明積層フィルムの製造方法は、片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムを準備し、易接着層の形成面とは反対側のフィルム面にゾル−ゲル法によるコーティング層を形成する工程を有している。
そのため、フィルム面に接したコーティング層の亀裂発生を抑制することができる。また、1層目の亀裂を抑制できれば、さらに、コーティング層を積層しても亀裂発生を抑制することができるので、多層化を図りやすくなる。
また、上記コーティング層の厚みを、上述した範囲内にした場合には、コーティング層の形成時に亀裂の発生を抑制しやすく、また、光学特性に優れた透明積層フィルムを製造しやすくなる。
また、紫外線の照射によってコーティング層を形成する場合には、前駆体層中に紫外線を吸収する有機物などを取り込んでおき、ゾル−ゲル反応による重合を比較的速やかに進行させることがあるが、このようなときでもコーティング層に亀裂が発生し難く、品質に優れた透明積層フィルムを製造することができる。
以下、本実施形態に係る透明積層フィルム(以下、「本積層フィルム」ということがある。)、およびその製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。
1.本積層フィルム
本積層フィルムは、透明樹脂フィルムと、コーティング層とを少なくとも有する。
透明樹脂フィルムは、可視光領域において透明性を有する樹脂材料よりフィルム状に形成されたものである。
樹脂材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、2種以上積層して用いることもできる。
これら樹脂材料のうち、透明性、耐久性、加工性等に優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマーなどを好適に用いることができる。より好ましくは、易接着層が片面に形成された光学用途のフィルムの選択の幅が広く、光学特性の設計自由度が高まる、比較的安価であり、本積層フィルムの低コスト化を図りやすくなるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレートであると良い。
ここで、上記透明樹脂フィルムは、その片面に易接着層が形成されている。なお、易接着層の形成面と反対側の面は、フィルム本体を構成する樹脂が露出されている。
易接着層は、主に、透明樹脂フィルムの巻き取り性やハンドリング性などを向上させる目的を有している。このような易接着層は、特に、シリカ粒子などをフィルム中に配合したり、フィルム表面に付着させたりすることで上記目的を達成することが困難な光学用途向けの透明樹脂フィルムに形成されていることが多い。
易接着層は、通常、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂などの材料から構成されており、厚みは、20〜40nm程度である。本発明では、易接着層の材質や厚みは特に限定されるものではない。
透明樹脂フィルムの厚み(易接着層含む)は、本積層フィルムの用途、フィルム材料などを考慮して選択することができる。好ましくは、10〜500μm、より好ましくは、25〜250μmの範囲内にあると良い。
コーティング層は、透明樹脂フィルムの易接着層側とは反対側の面に直接接して積層された層で、ゾル−ゲル法により形成されている。このコーティング層は、主に、金属酸化物より構成されていると良い。
上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
上記金属酸化物としては、可視光に対する屈折率が比較的大きく、光学特性に優れるなどの観点から、酸化チタン(IV)(TiO)、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
また、コーティング層は、金属酸化物以外にも、ゾル−ゲル法の原料に由来する有機金属化合物(その分解物も含む)等の有機分を含んでいても良い。他にもゾル−ゲル法による重合方法に応じて添加される各種添加剤、例えば、紫外線照射により重合反応を生ぜしめる場合には、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する有機化合物(その分解物も含む)等の有機分を含んでいても良い。
コーティング層中に含まれる有機分の含有量は、高屈折率を得る、適度な柔軟性を得るなどの観点から、好ましくは、3〜30質量%、5〜20質量%、10〜15質量%の範囲内にあると良い。
なお、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。
コーティング層の厚みの下限は、高屈折率を得る、透明樹脂フィルム面との密着性を確保する、光学薄膜として機能しやすくなるなどの観点から、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、15nm以上であると良い。
一方、コーティング層の厚みの上限は、亀裂の発生を抑制しやすくなるなどの観点から、好ましくは、40nm以下、より好ましくは、35nm以下、さらに好ましくは、30nm以下、最も好ましくは、25nm以下であると良い。
なお、上記膜厚は、物理膜厚であり、透過型電子顕微鏡(TEM)による代表的な断面像から測定することができる。
コーティング層の屈折率は、可視光透過率の向上、可視光反射率の低下などの観点から、好ましくは、1.7以上、より好ましくは、1.8以上、さらに好ましくは、1.85以上であると良い。なお、屈折率は高いほど良いため、上限は特に限定されるものではない。また、本願にいう屈折率とは波長633nmの光に対する屈折率をいう。
コーティング層は一度に形成されたものであっても良いし、分割形成されたものであっても良い。
本積層フィルムは、透明樹脂フィルムの易接着層のない面に、第1層目としてコーティング層が形成されている。コーティング層よりも上段には、他の層が1層または2層以上積層されていても良く、本積層フィルムの用途等に応じて選択することができる。
フィルム面に直接接するコーティング層上に積層可能な層としては、例えば、主に金属(合金含む)等から構成されるスパッタ法等による導電層、主に金属酸化物から構成されるゾル−ゲル法等によるコーティング層などが挙げられる。
なお、本発明者らのこれまでの研究によれば、ゾル−ゲル法によるコーティング層に発生する亀裂は、易接着層に接している層に生じやすく、また1層目の亀裂を抑制できれば、2層目以降はほとんど亀裂の発生が問題にならないことが分かっている。
2層以上積層する場合、フィルム面に直接接するコーティング層の上に、導電層、コーティング層が交互に積層された積層構造などを例示することができる。また、導電層の何れか一方面または両面に、主に金属酸化物から構成されるバリア層などが形成されていても良い。なお、バリア層を形成した場合には、導電層を構成する元素の拡散を抑制しやすく、光学特性の劣化を抑制しやすくなる。バリア層は、連続的に層状に形成されていることが好ましいが、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
フィルム面に直接接するコーティング層の上段に積層されるコーティング層を主に構成する材料としては、上述した金属酸化物などを例示することができる。また、厚みも上述した範囲から選択することができる。
上記導電層を主に構成する材料としては、具体的には、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属としては、導電性、積層時の可視光透過性などに優れるなどの観点から、銀および/または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、ビスマス、金、パラジウム、白金、銅などの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金であると良い。特に好ましくは、銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの観点から、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)であると良い。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの割合としては、上述した効果を発揮しやすくなるなどの観点から、銀とビスマスとの総量に対して、好ましくは、0.01〜5原子%、より好ましくは、0.05〜2原子%の範囲内にあると良い。なお、上記ビスマスの割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。
上記導電層の厚みは、表面抵抗と可視光透過率とのバランスなどを考慮して種々調節することができる。導電層の厚みとしては、好ましくは、5〜30nm、より好ましくは、8〜20nmの範囲内にあると良い。
上記バリア層を主に構成する材料としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、上記金属酸化物層(B)は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
バリア層の厚みとしては、好ましくは、1〜15nm、より好ましくは、1.5〜10nm、さらに好ましくは、2〜8nmの範囲内にあると良い。
本積層フィルムは、例えば、調光シートやタッチパネルなどの透明電極フィルムや熱線カットフィルム、透明電磁波シールドフィルムなどの用途に好適に用いることができる。
2.本製造方法
本製造方法は、片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムを準備し、易接着層の形成面とは反対側のフィルム面にゾル−ゲル法によるコーティング層を形成する工程を少なくとも有している。
片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムは、上市されているものの中から適宜選択して準備しても良いし、易接着層のない透明樹脂フィルムの片面に易接着処理を施して準備するなどしても良い。
準備した透明樹脂フィルムの易接着層の形成面とは反対側の面に、ゾル−ゲル法によるコーティング層を形成する方法としては、例えば、各種のコーティング法を用いて、コーティング層を形成可能な成分を含有するコーティング液をフィルム面に塗工して前駆体層を形成した後、コーティング液の組成に応じた最適な方法にてゾル−ゲル重合反応を行い、前駆体層をコーティング層に変換する方法などを例示することができる。
ゾル−ゲル重合反応は、前駆体層に紫外線や電子線等を照射したり、前駆体層を熱処理するなどして行うことができる。好ましくは、透明樹脂フィルムが熱により変形し難い、比較的短時間で反応させることができるなどの観点から、紫外線照射によるのが良い。以下、より具体的に説明する。
上記コーティング液は、有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。また、これらは単量体、多量体の何れであっても良い。
上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量としては、1〜20質量%、より好ましくは、3〜15質量%、さらに好ましくは、5〜10質量%の範囲内にあると良い。
ゾル−ゲル重合反応を紫外線により行う場合、上記コーティング液中に、有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め紫外線吸収性キレートが形成されたところに紫外線照射がなされるので、比較的低温下においてコーティング層の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合は、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、好ましくは、0.1〜2倍モルの範囲内にあると良い。
上記コーティング液中には、ゾル−ゲル法による加水分解が促進され、高屈折率化が図りやすくなるなどの観点から、必要に応じて水が含まれていても良い。この場合、上記コーティング液中に占める水分含有量は、好ましくは1質量%以上あると良い。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングにより形成した前駆体層は、ゾル−ゲル重合反応を行う前に、必要に応じて乾燥をしても良い。この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体層に紫外線を照射する場合、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する紫外線の光量は、前駆体層を主に形成している有機金属化合物の種類、コーティング層の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する紫外線の光量が過度に小さすぎると、コーティング層の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する紫外線の光量が過度に大きすぎると、紫外線照射の際に生じる熱により透明樹脂フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する紫外線の光量としては、測定波長300〜390nmのとき、好ましくは、300〜8000mJ/cm、より好ましくは、500〜5000mJ/cmの範囲内であると良い。
なお、フィルム面に直接接するコーティング層上にコーティング層をさらに形成する場合には、上記に準じて形成することができる。また、導電層を形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーション法などといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法を好適に用いることができる。また、バリア層を形成する場合には、反応性スパッタリング法などを好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下における屈折率は、波長633nmのときの値である。
1.透明積層フィルムの作製
(透明樹脂フィルムの準備)
透明樹脂フィルムとして、片面にアクリル/ウレタン系の易接着層が形成された厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)を準備した。
(ゾル−ゲル法に用いるコーティング液の調製)
チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、攪拌機を用いて10分間混合することによりコーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75質量%/3.38質量%/59.87重量%/30.00質量%とした。
(層形成)
マイクログラビアコーターを用いて、各実施例については、PETフィルムの易接着層の形成面とは反対側のフィルム面に上記コーティング液を連続的に塗工した。一方、各比較例については、PETフィルムの易接着層の形成面に上記コーティング液を連続的に塗工した。
次いで、インラインの乾燥炉を用いて、各塗工層を100℃で80秒間乾燥させ、各前駆体層を形成した。
次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、各前駆体層に対して連続的に紫外線を照射した(照射光量:1J/cm)。
これにより、各実施例についてはPETフィルムの易接着層とは反対側のフィルム面に、各比較例についてはPETフィルムの易接着層面に、主にTiOより構成された所定厚みの各コーティング層を形成した。
なお、形成した各コーティング層の厚みは、表1に示した通りである。各コーティング層の厚み調整は、塗工時のフィルム線速を可変させることにより行った。
また、各コーティング層の屈折率を、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定したところ、測定波長633nmにおける各屈折率は、表1に示す通りであった。
また、各コーティング層中に含まれる有機分の含有量を、X線光電子分光法(XPS)により測定したところ、表1に示す通りであった。
次に、2層目として、1層目のコーティング層上に、主にチタン酸化物より構成されるバリア層/主にAg−Bi合金より構成される金属層/主にチタン酸化物より構成されるバリア層を以下の手順により成膜した。なお、バリア層は、金属層に付随する層として金属層と合わせて1層と層数を数えている。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、各コーティング層が形成された透明樹脂フィルムを繰り出しながら、各コーティング層の上に下側のバリア層を反応性スパッタリング法により成膜した。次いで、この下側のバリア層上に金属層をスパッタリング法により成膜した。次いで、この金属層上に上側のバリア層を反応性スパッタリング法により成膜した。
この際、バリア層の成膜条件は、Tiターゲット(純度4N)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、反応性ガス:O、ガス流量比:Ar/O=50/20、ガス圧:2.0×10−3(Torr)、投入電力:8.3(W/cm)、成膜時間:1.5秒とした。
金属層の成膜条件は、Ag−Biターゲット(Bi含有量0.45〜0.55原子%)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.0×10−3(Torr)、投入電力:1.1(W/cm)、成膜時間:1.5秒とした。
なお、成膜したバリア層について、EDX分析を行い、Ti/O比を求めたところ、Ti/O比は、1.0/1.8〜1.0/2.5であった。
また、上記金属層の成膜条件において、別途、基体上に金属層を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により金属層のBi割合を測定した。その結果、金属層のBi割合は、0.4原子%であった。
次に、3層目として、2層目の上側のバリア層上に、主にTiO薄膜より構成されたコーティング層を成膜した。ここでは、1層目の成膜手順に準じて、30nmのコーティング層を2回繰り返し成膜した。
次に、4層目として、3層目のコーティング層上に、主にチタン酸化物より構成されるバリア層/主にAg−Bi合金より構成される金属層/主にチタン酸化物より構成されるバリア層を成膜した。ここでは、2層目と同じ成膜手順を1回行った。
次に、5層目として、4層目の上側のバリア層上に、主にTiO薄膜より構成されたコーティング層を成膜した。ここでは、1層目の成膜手順に準じて、30nmのコーティング層を2回繰り返し成膜した。
次に、6層目として、5層目のコーティング層上に、主にチタン酸化物より構成されるバリア層/主にAg−Bi合金より構成される金属層/主にチタン酸化物より構成されるバリア層を成膜した。ここでは、2層目と同じ成膜手順を1回行った。
次に、7層目として、6層目の上側のバリア層上に、主にTiO薄膜より構成されたコーティング層を成膜した。ここでは、1層目に準じた成膜手順を1回行った。
以上により、PETフィルムの易接着層とは反対側のフィルム面に、表1に示した積層構造を有する7層構造の各実施例に係る透明積層フィルムを作製した。また、PETフィルムの易接着層面に、表1に示した積層構造を有する7層構造の各比較例に係る透明積層フィルムを作製した。
2.透明積層フィルムの評価
(亀裂評価)
上記透明積層フィルムの作製時に、1層目、3層目、5層目、7層目のコーティング層を形成するたびごとに、マイクロスコープ(倍率500倍)を用いて、亀裂の発生状況を確認した。
そして、7層目のコーティング層を形成した後まで、亀裂が全く見られなかったものを、亀裂の抑制効果に極めて優れるとして「A」、亀裂が見られたが、微小な凝集塊または異物を中心として島状に1点見られる程度のものを、亀裂の抑制効果がやや良好であるとして「B+」、亀裂が繋がらないで島状に散点している程度のものを、亀裂の抑制効果が良好であるとして「B」、ハニカム状に亀裂が繋がって全面に発生したものを、亀裂の抑制効果に劣るとして「C」と評価した。
(表面抵抗)
渦電流計(コペル電子(株)製、「非接触抵抗率計モデル717」)を用いて、表面抵抗値の測定を行った。なお、コーティング層に亀裂が発生すればするほど、その上に成膜される金属層にも亀裂が生じて導電経路が遮断されることから、表面抵抗は大きくなる。
(可視光透過率、可視光反射率)
可視光透過率および可視光反射率は、JIS R3106に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率および可視光反射率を計算することにより行った。
表1に、実施例および比較例に係る透明積層フィルムの層構成、特性などをまとめて示す。
Figure 2009220399
表1を相対比較すると以下のことが分かる。
すなわち、1層目のコーティング層の厚みが同じもの同士で実施例および比較例を比較すると、比較例では、亀裂が発生しやすく、亀裂の発生により表面抵抗が大きくなっているのに対し、実施例では、亀裂の発生が抑制され、これにより表面抵抗も小さいことが分かる。
これは、比較例は、易接着層上に第1層目のコーティング層を形成したため、ゾル−ゲル重合反応時に、易接着層の表面凹凸に起因して亀裂が発生しやすかったが、実施例では、易接着層のない平滑なフィルム面に第1層目のコーティング層を形成したため、亀裂の抑制を図ることができたためであると推察される。
また、実施例同士を比較すると、第1層目のコーティング層の厚みが厚くなるにつれ、亀裂が発生しやすくなる傾向が見られる。この結果から、第1層目のコーティング層の厚みは、25nm以下にするのが最も良いことが分かる。
一方、第1層目のコーティング層の厚みが薄くなるにつれ、可視光反射率が大きくなる傾向が見られる。これは、コーティング層の厚みが薄くなると、反射スペクトルのボトム値が視感度ピーク波長(約550nm)より短波長側に移動し、550nmでの反射率が上昇するためであると考えられる。この結果から、第1層目のコーティング層の厚みは、5nm以上あると好ましいといえる。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (7)

  1. 片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムと、
    前記易接着層の形成面とは反対側のフィルム面に接して形成された、ゾル−ゲル法によるコーティング層と、
    を少なくとも有することを特徴とする透明積層フィルム。
  2. 前記コーティング層の厚みは、5〜40nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の透明積層フィルム。
  3. 前記コーティング層の屈折率は、1.7〜2.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明積層フィルム。
  4. 前記透明樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の透明積層フィルム。
  5. 片面に易接着層を有する透明樹脂フィルムを準備し、前記易接着層の形成面とは反対側のフィルム面にゾル−ゲル法によるコーティング層を形成する工程を少なくとも有することを特徴とする透明積層フィルムの製造方法。
  6. 前記コーティング層の厚みを、5〜40nmの範囲内にすることを特徴とする請求項5に記載の透明積層フィルムの製造方法。
  7. 前記コーティング層を形成する際に、前記コーティング層の前駆体層に紫外線を照射することを特徴とする請求項5または6に記載の透明積層フィルムの製造方法。
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