JP2009219367A - ウリカーゼ活性を有する蛋白質 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を作成する方法、および低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ改変体を提供し、該ウリカーゼ改変体の産業利用を可能とすることである。
【解決手段】ウリカーゼ活性を有する蛋白質の低温反応性の向上および熱安定性を、蛋白質工学的手法により両立させる方法、並びに該方法によって作成した低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ改変体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質、その製造法および用途、更には、蛋白質工学的改変により低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を産生する方法に関する。
ウリカーゼ(EC1.7.3.3)は、尿酸を酸化してアラントインと過酸化水素および二酸化炭素を生成する反応を触媒する酵素であり、臨床診断の分野においては、血中あるいは尿中の尿酸の測定試薬の原料酵素として使用されている。また、化粧品分野においては、染毛剤として使用できることが知られている。
ウリカーゼは、微生物、動物などに広く存在することが知られているが、例えばキャンディダ属(Candida)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セルロモナス属(Cellulomonas)、アースロバクター属(Arthrobacter)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バチルス属(Bacillus)などの微生物が生産するウリカーゼが報告されており、また、これらウリカーゼをコードする遺伝子を単離し、遺伝子工学技術によってウリカーゼの大量生産が可能となることも知られている。
しかしながら、従来のウリカーゼは一般的に酵素の低温反応性が十分でないことが知られていた。
特開昭42−5192号公報 特開平5−317055号公報 特公昭60−19990号公報 特許2971218号公報 特開平9−154581号公報 R.Legouxら,「J.Biol.Chem.」,1992年,第267巻,第12号,p8565-8670 K.Yamamotoら,「J.Biochem.」,1996年,第119巻,第1号,p80-84
本発明の目的は、産業上有用な、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質、その製造法および用途を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ウリカーゼの蛋白質工学的改変により、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を得ることに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)30℃における酵素活性が55℃における酵素活性の1.2倍以上であり、下記の理化学的性質を有することを特徴とする、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
熱安定性:60℃,10分間処理で80%以上の酵素活性が残存
至適pH:pH7〜8で50%以上
(2)ウリカーゼ活性を有する蛋白質がウリカーゼの変異体であり、野生型の30℃における酵素活性が55℃における酵素活性の1/5以下であることを特徴とする、(1)記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(3)30℃における比活性が野生型に比して1.5倍以上であり、更に25℃における比活性が野生型に比して2.0倍以上の変異体であることを特徴とする、(2)記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(4)野生型に比して熱安定性が実質的に同等以上の変異体であることを特徴とする、(2)または(3)記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(5)配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と、アミノ酸配列が50%以上の相同性を有する変異体であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(6)配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と、アミノ酸配列が80%以上の相同性を有する変異体であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(7)配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列の279位またはそれと同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(8)配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列の279位またはそれと同等の位置のアミノ酸がロイシンに置換されていることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(9)配列表の配列番号3、4または5に記載されるアミノ酸配列を有する変異体であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
(10)(1)〜(9)のいずれか1記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質を含む尿酸測定キット。
(11)(1)〜(9)のいずれか1記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質を含む尿酸センサー。
(12)(1)〜(9)のいずれか1記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質をコードする遺伝子。
(13)(12)に記載の遺伝子を含むベクター。
(14)(13)に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
(15)(14)に記載の形質転換体を培養することを特徴とする、ウリカーゼ活性を有する蛋白質の製造法。
本発明により、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出することが可能となり、産業利用上有用なウリカーゼを供給することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるウリカーゼの改変方法は、ウリカーゼ活性を有する改変前の蛋白質を構成するアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、改変前の蛋白質と比較して、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出させるものである。ここで「1もしくは数個のアミノ酸」とは、具体的には10個以内の範囲のアミノ酸数をいう。
本発明における「低温反応性が高い」とは、蛋白質の30℃における反応性(a)と55℃における反応性(b)が、(a)>(b)となるような状態をいう。「低温反応性の向上」の基準としては、改変前の親蛋白質の反応性が明らかに(b)>(a)であるのに比して、改変体の反応性が(a)>(b)であれば好ましい。
本発明における「比活性が高い」とは、改変体(a)と改変前の親蛋白質(b)が各々十分に精製され、適当な緩衝液中に溶解された状態で比較した場合の比活性が、(a)>(b)となるような状態をいう。「比活性の向上」の基準としては、(b)の比活性に対して(a)の比活性が高いと判断される場合であればよいが、活性測定において生じる分析誤差も考慮すれば、(a)の比活性が(b)の比活性に比べて5%以上向上した状態であれば好ましい。
「十分に精製された」とは、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、ウリカーゼ以外の夾雑蛋白質が見られない状態をいう。「適当な緩衝液」は、ウリカーゼが作用するpH範囲で十分な緩衝能を持つよう、その種類と濃度を選べば特に限定されないが、例えば、50mMトリス緩衝液(pH8.0)、または、50mMのPIPES−NaOH緩衝液(pH7.0)などが選択される。診断薬用途などを想定して、緩衝液にはさらに界面活性剤、塩類、キレート剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
本発明においては、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出するために改変する部位として、ウリカーゼ活性を有する蛋白質におけるサブユニットのインターフェースに位置するループ領域およびその近傍領域に位置するアミノ酸が選択され、これらのアミノ酸の1もしくは数個を欠失、置換もしくは付加することを特徴とする。
ウリカーゼのサブユニットは、共通してT-foldと呼ばれるモチーフの繰り返し構造を有することが知られている。T-foldモチーフは4つのβストランド(以下、N末側からS1,S2,S3,S4とする)と2つのαヘリックスからなる。サブユニット界面に存在するループはトポロジー構造上、S1とS2をつなぐループまたはS3とS4をつなぐループに限定されるが、本発明において好ましくは、S3とS4をつなぐインターフェースループおよびその近傍が選択される。
ウリカーゼの活性中心はサブユニット界面に存在し、このサブユニット界面を形成するのはT-foldモチーフのS1とS4であることが知られていた。本発明者らは、このS1とS4の運動性(フレキシビリティ)の温度変化が基質の結合速度や生成物の解離速度の温度変化に大きく影響すると予想し、S4の運動性の温度依存的変化を改変することができないかと考え、S3からS4をつないでいるインターフェースループおよびその近傍に着目した。本来、低温での酵素反応性を高めることと、高い熱安定性を有することとは相反する。低温でも十分に反応する運動性の高い蛋白質構造は高温での構造維持が難しく、熱安定性にはマイナス要因となるからである。しかしながら、インターフェースおよびその近傍を改変することにより、活性中心付近の部分的な運動性の向上と高温での蛋白質構造の維持が可能となるのではと期待した。そして、実際にこのループおよびその近傍のフレキシビリティを高めることが予想されるアミノ酸残基を変異導入し解析した結果、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出し得ることが実験的に確認され、本発明を完成させるに至った。
ウリカーゼ活性を有する蛋白質のインターフェースループ領域は、例えば、Bacillus sp.(バチルス・エスピー)TB−90株に由来するウリカーゼにおいては、配列番号2の120番目から146番目(インターフェースループ1)、277番目から300番目(インターフェースループ2)が該当する。これらはいずれも、T-foldモチーフの3番目と4番目のβストランドをつなぐループ領域に相当する。
改変の対象となるアミノ酸は、好ましくはサブユニットのインターフェースに位置するループ領域から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸である。
欠失、置換もしくは付加の対象とするアミノ酸の種類としては、本発明の目的である低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出し得るものであれば特に限定されないが、上記で記した本発明の思想より、側鎖が嵩高い、もしくはウリカーゼのフレキシビリティを高める傾向を有するアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリンなどを増加させる方向で選択することが好ましい。
本発明の改変に供されるウリカーゼ活性を有する蛋白質として、バチルス属、キャンディダ属、エンテロバクター属、セルロモナス属、アースロバクター属などの微生物由来のウリカーゼ等が例示されるが、上記のT-foldモチーフ構造を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。
より詳細には、例えば、Bacillus sp.TB−90株に由来するウリカーゼが例示され、そのアミノ酸配列は配列表の配列番号2、当該アミノ酸配列をコードする遺伝子は配列番号1でそれぞれ示される。これらの両配列はいずれも特許第1966484号公報に記載されている。なお、配列番号2において、アミノ酸の表記は、メチオニンを1として番号付けされている。
本発明の改変に供するウリカーゼは、ウリカーゼ活性を有する蛋白質であれば、野生型のものに限らず何らかの改変が施されたものであっても良い。改変としては、例えばアミノ酸を欠失、置換もしくは付加されたもの、分子間または分子内架橋が施されたもの、糖鎖やその他の官能基により化学修飾されたもの、あるいは、ヒスチジンタグが付与されたもの、各種融合蛋白質などが含まれるが、特に限定されない。
本発明のウリカーゼ改変体は、配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有し、サブユニットのインターフェースに位置するループ領域およびその近傍領域に位置するアミノ酸の1もしくは数個が欠失、置換または付加されたものである。サブユニットのインターフェースに位置するループ領域およびその近傍領域に位置するアミノ酸は、好ましくはサブユニットのインターフェースに位置するループ領域から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸であり、具体的にはウリカーゼの立体構造データより、Swiss−Pdb Viewer(SPDBV)を使用して定義することができる。
このような改変部位としては、例えば、Bacillus sp.TB−90株由来のウリカーゼをコードするアミノ酸配列(配列番号2)では、279位のアミノ酸が例示される。配列番号2における279位のアミノ酸では、特にロイシンに置換されてなるものが好ましい。また、279位および287位のアミノ酸の改変、279位および287位および305位のアミノ酸の改変なども例示される。
なお、上記の変換位置は、Bacillus sp.TB−90株以外の起源に由来するウリカーゼ活性を有する蛋白質のアミノ酸配列における同等の位置であっても良い。この同等の位置は、そのアミノ酸配列の一次構造、立体構造の知見を基に判断することができる。
ウリカーゼの立体構造は、上記バチルス属由来のもの以外に、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アースロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)由来のウリカーゼについてもProtein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb/Welcome.do)などで公開されているが、これまでに低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を蛋白質工学的に創出させることを示唆する記載はなかった。
本発明者らは、公知のウリカーゼの立体構造より試行錯誤と考察を重ねた結果、サブユニットのインターフェースに位置するループ領域およびその近傍領域が、ウリカーゼの低温反応性と熱安定性の両立に関係することを見い出した。具体的には、ループ領域およびその近傍領域のフレキシビリティを直接あるいは間接的に変化させることにより、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質の創出が可能であることを見い出した。一例として、配列番号2の279位に位置するアミノ酸を変換することで、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出することができる。
なお、当業者であれば、上記で例示した279位に限らず、該当領域のアミノ酸を適宜選択して変換することで、高い確率で低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を取得することが期待できる。
本発明によれば、上記以外の他起源に由来するウリカーゼ活性を有する蛋白質についても、それらの一次構造、立体構造の情報を用いて変換するアミノ酸を選択し、低温反応性が高く且つ熱安定な改変体を過度の検討なくして得ることが可能であるが、好ましくは、配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するウリカーゼ改変体であり、さらに好ましくは、配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するウリカーゼ改変体である。
例えば、Aspergillus flavus株由来のウリカーゼは、Bacillus sp.TB−90株と一次配列上の相同性は26%と低いことが知られているが(J.Biochem.119,80-84,1996)、立体構造上高い類似性を有しており、本発明を用いて低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質へと改変することができる。
なお、アミノ酸配列の相同性は、例えば、GENETYX等の市販の遺伝子解析ソフトウェアを利用した2種類の配列のhomology searchにより検索することができる。
本発明の別の実施態様としては、上記のようにして得られた低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ改変体である。本発明のウリカーゼ改変体は、尿酸に対する作用性(酵素活性)が本質的に維持される限り、さらに他のアミノ酸残基の一部が欠失または置換・挿入等されていてもよく、また他のアミノ酸残基が付加または置換等されていてもよい。
さらに、本発明のウリカーゼ改変体は、尿酸に対する作用性が本質的に維持される限り、そのアミノ酸配列にヒスチジンタグなどのタグを結合または挿入させた態様、或いは少なくとも一方の末端に他のペプチドや他の蛋白質(たとえばストレプトアビジンやシトクロム)を融合させた態様、糖鎖や他の化合物により化学修飾された態様、分子内および/または分子間でジスルフィド結合などにより架橋されたものやリンカーペプチドなどを介して連結されたもの等の態様をも含み得る。または、いくつかに由来する野生型ウリカーゼの断片を組み合わせて構成したキメラ蛋白質も含み得る。
本発明はさらに、ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子を含む。本発明のウリカーゼ改変体をコードする遺伝子は、例えば、微生物など種々の起源(由来)より得られる野生型ウリカーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片を改変することにより得ることができる。具体的には、例えばBacills sp.TB−90株、Aspergillus flavus、Arthrobacter globiformis、キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)、セルロモナス・フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)などの公知のウリカーゼをコードする遺伝子を利用して作成することができる。
本発明のウリカーゼ改変体をコードする遺伝子は、好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつウリカーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAである。ここでストリンジェントな条件とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドのTmから該Tmより15℃、好ましくは10℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。具体的には、例えば一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。本発明において、配列番号1に記載の塩基配列がコードするアミノ酸配列(配列番号2)と50%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性を有するアミノ配列をコードする塩基配列がストリンジェントな条件に相当すると考えられる。
さらに、本発明のウリカーゼ改変体をコードする遺伝子は、ウリカーゼの発現が向上するように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更したものを含み得る。
ウリカーゼをコードする遺伝子を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、蛋白質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit;Clonetech製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
本発明はさらに、ウリカーゼ改変体をコードする遺伝子を含むベクター、さらには該ベクターで形質転換された形質転換体を含む。作製されたウリカーゼ改変体の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変蛋白質を生産する形質転換体となる。
ベクターとしてプラスミドを用いる場合、例えば、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18などが使用できる。宿主微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどが利用できる。宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109;東洋紡績製)を用いても良い。
このような遺伝子はこれらの菌株より抽出してもよく、また化学的に合成することもできる。さらに、PCR法の利用により、ウリカーゼ遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。
本発明において、改変前のウリカーゼをコードする遺伝子を得る方法としては、例えば、遺伝子配列が未知のウリカーゼ生産菌であれば、染色体を分離、精製した後、超音波処理、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニアーな発現ベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、ウリカーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得ることでできる。
遺伝子配列が公知となっているものであれば、ウリカーゼのコードする遺伝子が増幅されるようなプライマーを作成した上で、PCR法を用いて遺伝子を取得し、適当なベクターに連結することで、比較的容易にウリカーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを得ることができる。
形質転換を行う宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。一般的には、エシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーHB101、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどを用いることができる。得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のウリカーゼを安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカーを発現する微生物を検索すればよい。
上記の方法により得られたウリカーゼ遺伝子の塩基配列は、Science ,第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読される。また、ウリカーゼのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定される。
このようにして、一度選択されたウリカーゼ遺伝子を保有する組換えベクターより、ウリカーゼ生産能を有する微生物にて複製できる組換えベクターへの移入は、ウリカーゼ遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法によりウリカーゼ遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによるウリカーゼ生産能を有する微生物の形質転換は、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポーレーション法などを用いることができる。
本発明はさらに、ウリカーゼをコードする遺伝子を含むベクターで形質転換された形質転換体を培養することを含むウリカーゼ改変体の製造法に関する。
例えば上記のようにして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変蛋白質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
培養温度は菌が成育し、ウリカーゼ改変体を生産する範囲で適宜変更し得るが、例えば、エシェリヒア・コリーを宿主として利用する場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は他の条件によって多少異なるが、ウリカーゼ改変体が最高収量に達する適当な時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは菌が発育し、ウリカーゼ改変体を生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
培養物中のウリカーゼ改変体を生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、ウリカーゼ改変体が培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、ウリカーゼ改変体含有溶液と微生物菌体とを分離した後のウリカーゼ改変体含有溶液が利用される。ウリカーゼ改変体が菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してウリカーゼ改変体を可溶化し、水溶液として分離採取する。
上記のようにして得られたウリカーゼ改変体含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたウリカーゼ改変体を得ることができる。
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケアバイオサイエンス)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)、オクチルセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
上記のようにして得られた精製酵素は、例えば凍結乾燥、真空乾燥やスプレードライなどにより粉末化して流通させることが可能である。また、実際に使用する際は、その用途によって適宜緩衝液に溶解した状態で使用することができる。緩衝液としては、例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、GOODの緩衝液などが選択される。また、粉末や溶液状態の酵素に、グルタミン酸、グルタミン、リジン等のアミノ酸類、さらに血清アルブミン等を添加することによりウリカーゼ改変体を安定化することができる。
本発明のウリカーゼ活性を有する蛋白質の製造方法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。蛋白質を構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、蛋白質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作製される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Mutagenesis Kit;Clonetech製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
本発明ではその一例として、ウリカーゼ活性を有する蛋白質を構成するアミノ酸配列のうち、サブユニットのインターフェースに位置するループ領域およびその近傍領域として、配列番号2に記載されるアミノ配列の279位を選択し、配列番号1に示されるウリカーゼ活性をコードする遺伝子を改変することで、279位のトリプトファンがロイシンに置換された、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ改変体を得た。
本発明の別の一形態は、項1〜9のいずれかに記載のウリカーゼを含む尿酸測定キットである。
本発明の別の一形態は、項1〜9のいずれかに記載のウリカーゼを含む尿酸測定センサーである。
上記各形態において、本発明のウリカーゼ改変体、尿酸測定用組成物、並びに尿酸測定キットやセンサーは、液状(水溶液、懸濁液等)、凍結乾燥粉末など種々の形態をとることができる。凍結乾燥法としては、特に制限されるものではなく常法に従って行えばよい。本発明の酵素を含む組成物は凍結乾燥物に限られず、凍結乾燥物を再溶解した溶液状態であってもよい。
さらに上記各形態において、本発明のウリカーゼ改変体、尿酸測定用組成物、並びに尿酸キットやセンサーは、その形態や使用方法に応じて、精製された状態であっても良いし、必要により他の成分、例えば界面活性剤、安定化剤、賦形剤など種々の添加物が加えられていても良い。
本発明へのそれらの添加物の配合法は特に制限されるものではない。例えばウリカーゼ改変体を含む緩衝液に添加剤を配合する方法、添加剤を含む緩衝液にウリカーゼ改変体を配合する方法、あるいはウリカーゼ改変体と安定化剤を緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられる。
含有される緩衝液としては特に限定されるものではないが、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液などが挙げられる。該緩衝液のpHは5.0〜10.0程度の範囲で使用目的に応じて調整される。凍結乾燥物中においては緩衝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1%(重量比)以上、特に好ましくは0.1〜30%(重量比)の範囲で使用される。
また、さらに血清アルブミン(BSA)を含有させてもよい。前記の水性組成物に血清アルブミンを添加する場合、その含有量は0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
使用できるアルブミンとしては、BSA、卵白アルブミン(OVA)などが挙げられる。特にBSAが好ましい。該アルブミンの含有量は、好ましくは1〜80%(重量比)、より好ましくは5〜70%(重量比)の範囲で使用される。
一方、上記各形態において、本発明のウリカーゼ改変体、尿酸測定用組成物、並びに尿酸キットやセンサーは、宿主由来の蛋白質成分以外の蛋白質成分を含有しない構成とすることもできる。
宿主由来の蛋白質成分以外の蛋白質成分としては、例えばBSA等の生体由来物質が挙げられる。
緩衝剤としては、一般的に使用されるものであれば良く、通常、組成物のpHを5〜10とするものが好ましい。緩衝剤としてさらに好ましくは、ホウ酸や酢酸といった緩衝剤や、BES、Bicine、Bis−Tris、CHES、EPPS、HEPES、HEPPSO、MES、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TAPS、TAPSO、TES、Tricineといったグッド緩衝剤が挙げられる。
また、粉末組成物において、緩衝剤の含有量(W/W)は、1.0%〜50%であることが望ましい。
また、ウリカーゼ改変体と緩衝剤から基本的に成る組成物に、アミノ酸、あるいは有機酸をさらに加えてもかまわない。また、該組成物は、これらを含有する水性組成物、凍結乾燥物のいずれの形態であってもよい。
後述の実施例にも記載されているように、本願発明のウリカーゼ改変体は、改変前のウリカーゼに対して低温反応性が高く且つ熱安定である。このことは、例えば、尿酸測定センサーにおけるウリカーゼ量を低下させることができ、低コスト化が見込める。また、染毛剤利用においても、染色性の向上、ウリカーゼ量の低下に繋がり、高性能化、低コスト化が期待できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される発明の思想および範囲内に入る他の態様も本発明に含まれる。実施例において、ウリカーゼの活性は、以下のように測定した。試薬はナカライテスク社より購入したものを使用した。
<ウリカーゼ活性測定法>
ウリカーゼ活性は、尿酸を基質とし、ウリカーゼ反応による過酸化水素の発生を吸光度の変化で測定した。終濃度0.30mMの尿酸、10U/mlの西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ、0.02%(W/V)の4−アミノアンチピリン、0.02%(W/V)のADPS、0.001%(W/V)のTriton X−100,0.1mMのEDTAを含む50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)、および酵素希釈液(0.001%(W/V)のTriton X−100,0.1mMのEDTAを含む50mMホウ酸緩衝液(pH8.0))で適宜希釈したウリカーゼ溶液から成る反応混液3mlにて、反応を開始する。37℃で反応混液の546nmの吸光度を10秒毎に〜5分間測定し、反応の進行に伴う1分間当りの吸光度変化を計測する(ΔODtest)。盲検は、酵素溶液を含まない反応混液にて上記同様に操作を行って吸光度を測定した(ΔODblank)。得られた吸光度変化およびキノンイミン色素のミリモル吸光係数より過酸化水素の生成速度を計算し、ウリカーゼの酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルの尿酸を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
実施例1 ウリカーゼ改変体W279L,W279L+P287G,W279L+P287G+C305Sをコードする遺伝子の作製
Bacillus sp.TB−90株由来のウリカーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpKU1(特許第1966484号公報)と、配列表の配列番号3記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、KOD-Plus Site-Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を使用して、そのプロトコールに従って変異処理操作を行い、更に塩基配列を決定して、配列番号2に記載のアミノ酸配列の279番目のトリプトファンがロイシンに置換されたウリカーゼ改変体(配列番号3に相当)をコードする組換えプラスミド(pUOD−W279L)、配列番号2に記載のアミノ酸配列の279番目のトリプトファンがロイシンに287番目のプロリンがグリシンにそれぞれ置換されたウリカーゼ改変体(配列番号4に相当)をコードする組換えプラスミド(pUOD−W279L+P287G)、配列番号2に記載のアミノ酸配列の279番目のトリプトファンがロイシンに287番目のプロリンがグリシンに305番目のシステインがセリンにそれぞれ置換されたウリカーゼ改変体(配列番号5に相当)をコードする組換えプラスミド(pUOD−W279L+P287G+C305S)、をそれぞれ取得した。
実施例2 ウリカーゼ改変体W279L,W279L+P287G,W279L+P287G+C305Sの作製
実施例1で取得した組換えプラスミドpUOD−W279L、pUOD−W279L+P287G、pUOD−W279L+P287G+C305Sを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α株コンピテントセル(東洋紡績製)を形質転換し、該形質転換体を取得した。得られた形質転換体は、エシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L)、エシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L+P287G)、エシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L+P287G+C305S)とそれぞれ命名した。
500mlのTB培地を2L容坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌濾過したアンピシリンをとイソプロピル−β−D−チオガラクトシドをそれぞれ終濃度が100μl/mlと0.1mMになるように添加した。この培地に100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間培養したエシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L)、エシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L+P287G)、エシェリヒア・コリーDH5α(pUOD−W279L+P287G+C305S)の培養液をそれぞれ5ml接種し、30℃で24時間通気攪拌培養を行った。培養終了より菌体を遠心分離により集菌し、50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、フレンチプレスにて破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸および硫安分画を行い、50mMホウ酸緩衝液(pH8.0)で透析を行った。更にDEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、およびオクチルセファロース(GEヘルスケアバイオサオエンス製)の各カラムクロマトグラフィーにより分離・精製することにより、精製酵素標品(W279L,W279L+P287G,W279L+P287G+C305S)を得た。本方法により得られた標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
比較例1 野生型ウリカーゼの作製
ウリカーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpKU1を用いて、エシェリヒア・コリーDH5α株コンピテントセル(東洋紡績製)を形質転換して、形質転換体を取得した。該形質転換体より、実施例2の方法と同様にして培養および精製を行い、野生型ウリカーゼの精製酵素標品を取得した。本方法により得られた標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
実施例3 ウリカーゼ改変体の特性評価
実施例2のウリカーゼ改変体および比較例1で取得した野生型ウリカーゼの各精製酵素標品の比活性を25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃で測定した。結果を図1に示す。野生型酵素の30℃における酵素活性は3.3U/mlであり、55℃における酵素活性は28.3U/ml、すなわち、30℃における酵素活性は55℃における酵素活性の約12%であった。これに対し、改変型酵素では、表1に示す割合となり、改変前と比較して低温における酵素活性が向上したことが確認された。また、W279L、W279L+P287G、W279L+P287G+C305Sは、野生型酵素に対し30℃における比活性がそれぞれ約1.8倍、2.2倍、1.8倍となり、野生型酵素に対し25℃における比活性がそれぞれ約2.2倍、2.9倍、2.9倍となった。なお、比活性の測定において蛋白質量は、Bradford法に基づく比色定量法により測定した。
Figure 2009219367
次に、野生型酵素および改変体の熱安定性を測定した。結果を図2に示す。各温度で10分間処理後の残存活性を測定したところ、いずれの酵素も60℃にて80%以上の残存活性を有しており、W279Lについては野生型とほぼ同等の安定性を示し、W279L+P287GおよびW279L+P287G+C305Sについては野生型に比して同等以上の安定性を示した。
更に、野生型酵素および改変体の至適pHを測定した。各pHにおける酵素活性を測定したところ、いずれの酵素もpH7〜8の中性〜弱アルカリ性域において50%以上の残存活性を有しており、実用上問題ないレベルであった。
本発明によって、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質を創出することが可能となる。このことは、例えば、尿酸測定センサーにおけるウリカーゼ量を低下させることができ、低コスト化が見込める。また、染毛剤利用においても、染色性の向上、ウリカーゼ量の低下に繋がり、高性能化、低コスト化が期待できる。
各酵素の反応温度曲線を示している。 各酵素の熱安定性を示している。

Claims (15)

  1. 30℃における酵素活性が55℃における酵素活性の1.2倍以上であり、下記の理化学的性質を有することを特徴とする、低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
    熱安定性:60℃,10分間処理で80%以上の酵素活性が残存
    至適pH:pH7〜8で50%以上
  2. ウリカーゼ活性を有する蛋白質がウリカーゼの変異体であり、野生型の30℃における酵素活性が55℃における酵素活性の1/5以下であることを特徴とする、請求項1記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  3. 30℃における比活性が野生型に比して1.5倍以上であり、更に25℃における比活性が野生型に比して2.0倍以上の変異体であることを特徴とする、請求項2記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  4. 野生型に比して熱安定性が実質的に同等以上の変異体であることを特徴とする、請求項2または3記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  5. 配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と、アミノ酸配列が50%以上の相同性を有する変異体であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  6. 配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列と、アミノ酸配列が80%以上の相同性を有する変異体であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  7. 配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列の279位またはそれと同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  8. 配列表の配列番号2に記載されるアミノ酸配列の279位またはそれと同等の位置のアミノ酸がロイシンに置換されていることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  9. 配列表の配列番号3、4または5に記載されるアミノ酸配列を有する変異体であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の低温反応性が高く且つ熱安定なウリカーゼ活性を有する蛋白質。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質を含む尿酸測定キット。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質を含む尿酸センサー。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のウリカーゼ活性を有する蛋白質をコードする遺伝子。
  13. 請求項12に記載の遺伝子を含むベクター。
  14. 請求項13に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  15. 請求項14に記載の形質転換体を培養することを特徴とする、ウリカーゼ活性を有する蛋白質の製造法。
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