JP2009219235A - 分割固定子、及び分割固定子製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 分割固定子18のティース部11周囲に接着剤を塗布して接着剤層30を形成した状態で、下型21内にインサートし、溶融した繊維状フィラ31を含有したインシュレータ用材料25を注入し、上型22を移動してインシュレータ12を形成しているので、繊維状フィラ31をランダム方向に配置でき、インシュレータ12の熱伝導率を高くすることができる。
【選択図】 図4
Description
一方、固定子コアを複数個に分割して、巻線を組み付ける分割コアも固定子コアの製造方法として知られている。分割コアの場合には、焼きバメリングで複数の分割コアを一体的に組み立てることが行われている。
分割コアに対して、樹脂をモールドして分割固定子を製造する方法が、特許文献1に記載されている。
分割コアと金型とで、分割コアのティース部周囲にインシュレータのキャビティを形成し、繊維状無機強化材を含む樹脂を注入することにより、分割コアと一体的にインシュレータを製造する技術が開示されている。
すなわち、樹脂の流動方向に繊維状強化材が配向するため、インシュレータの厚み方向に積層されるように、繊維状強化材が配向され、インシュレータの厚み方向における熱伝導性が不十分となる問題があった。
特にハイブリッド自動車で使用されるモータにおいては、巻線の占有率が高く、かつ高い電圧で使用するため、インシュレータの熱伝導性が大きな問題となっていた。
(1)分割コアのティース部周囲に接着剤層を介して、インシュレータが成形されている。
また、本発明の分割固定子製造方法は、次の工程を有している。
(2)(1)に記載する分割固定子において、前記インシュレータが前記ティース部に樹脂モールド成形されていることを特徴とする。
(3)(2)に記載する分割固定子において、前記樹脂モールド材料が、材料樹脂にフィラが含有されたものであり、前記フィラの材料の熱伝導率が、前記材料樹脂の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。
(4)(3)に記載する分割固定子において、前記フィラが非球形であることを特徴とする。
(6)(5)に記載する分割固定子製造方法において、前記インシュレータが前記ティース部に樹脂モールド成形されていることを特徴とする。
(7)(6)に記載する分割固定子製造方法において、前記樹脂モールド材料が、材料樹脂にフィラが含有されたものであり、前記フィラの材料の熱伝導率が、前記材料樹脂の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。
(8)(7)に記載する分割固定子製造方法において、前記フィラが非球形であることを特徴とする。
(9)(5)乃至(8)に記載する分割固定子製造方法のいずれか1つにおいて、前記接着剤が予め加熱されていることを特徴とする。
本発明においては、分割固定子のティース部周囲に接着剤を塗布して接着剤層を形成した状態で、固定型内にインサートし、溶融した樹脂を注入し、可動型を移動してインシュレータを形成している。インシュレータの最終厚みは300μm程度である。溶融した樹脂が、ティース部に沿って移動していくときに、接着剤に接触している部分の流動が妨げられるため、ティース部に沿った方向の垂直な方向、すなわちティース部の面に鉛直な方向に流れが生じる。また、樹脂に混入されている繊維状無機強化材等の繊維状フィラの一端が接着剤層に接触して繊維状フィラに回転力が与えられる。
ティース部の面に鉛直な方向に生じた流れ、及び繊維状フィラに与えられた回転力により、繊維状フィラが、ティース部の面に鉛直な方向に回転される。この状態で、樹脂が硬化されることにより、繊維状フィラがインシュレータの内部で、ランダムな方向に向くこととなる。
それと比較して、接着剤層が形成されている場合には、繊維状フィラがランダムな方向に配置されるため、ティース部の面に鉛直な方向における熱伝導性を高めることができる。
例えば、PPS樹脂の熱伝導率は、0.2W/m・Kであり、フィラの熱伝導率は、30W/m・Kである。フィラを50%混入させたとしても、フィラ入り樹脂の熱伝導率は、1W/m・Kになるにすぎない。
接着剤として、エポキシ系樹脂を使用した場合、その熱伝導率は、PPS樹脂と同じく、0.2W/m・Kである。例えば、30μmの厚みで接着剤層を形成すると、その分では、熱伝導率は低下する。すなわち、フィラ入り樹脂の熱伝導率1W/m・Kから、接着剤の熱伝導率0.2W/m・Kとなった分、熱伝導率が低下する。
しかし、繊維状フィラがランダム方向に配置されることから、熱伝導率が大幅に増加するため、インシュレータ全体としての熱伝導率は、従来のインシュレータと比較して、20〜30%増加する。これにより、ハイブリッド自動車用モータにおいても、コイルで発生した熱を、インシュレータを介して効率よく固定子コアに熱伝導することができる。
図1に、分割固定子の製造手順を示す。分割固定子コア10は、コイルが装着されるティース部11を備えている。分割固定子コア10は、プレス打ち抜きで製造された鋼板を積層して構成している。ここでは、分割固定子コア10は、18個組み合わさることにより、環状の完成した固定子コアになる構造とする。分割固定子コア10を(a)に示す。次に、分割固定子コア10のティース部11に、インシュレータ12が装着された状態を図1の(b)に示す。インシュレータ12は、ティース部11を覆う筒部12b、分割固定子コア10のティース部11が突き出した以外の内面部分を覆い、上下方向に延設されたカバー部12a、筒部12bの上下に突き出した2箇所の突起部12cを備えている。特に、インシュレータ12bの側面の厚みは、0.2〜0.3mmである。
エッジワイズコイル13は、カバー部12aを介して、分割固定子コア10に密着している。また、エッジワイズコイル13は、左右方向は筒部12bを介してティース部11により位置決めされている。また、上下方向は、インシュレータ12の突起部12cにより位置決めされている。これにより、エッジワイズコイル13は、分割固定子コア10に対して、定位置に位置決めされている。エッジワイズコイル13には、カバー部12a近くで上に突き出ている長端末13aと、ティース部11先端付近で上に突き出ている長端末13bが備えられている。
本実施例では、成形済みコイルとして、エッジワイズコイル13について説明するが、断面が丸形でも、角形でも、成形されて形状が確定しているものであれば、他の種類のコイルでも同じである。
bが外部に突き出ている。樹脂モールドされた分割固定子18の断面図を図3に示す。この断面図は、エッジワイズコイル13と樹脂モールド14との位置関係を示すものである。
分割固定子コア10にインシュレータ12を介して、エッジワイズコイル13が装着され、エッジワイズコイル13のコイル部分を囲む部分にのみ樹脂モールド14が形成されている。図3は、分割固定子コア10の上にバスバー17を保持する樹脂製のバスバーホルダ16が取り付けられている状態を示している。バスバー17に対して、長端末13a,13bが曲げられて、接続される。
18個の分割固定子18が環状に組み合わされ、外側に加熱され、膨張して内径が大きくなっている外筒15が嵌め込まれる。その後、常温に冷却されることにより、外筒15の内径が縮小して、18個の分割固定子18が締りバメされ、一体化され固定子19となる。いわゆる外筒の焼きバメである。
次の工程において、図示していないが、分割固定子18の長端末13aは、左側に2つの分割固定子を越えた3つ目の分割固定子18の長端末13bと、バスバーホルダ16内のバスバー17により接続される。このように、18個の長端末は、順次バスバーホルダ16内のバスバー17により接続され、U,V,W相の3つのモータコイルを構成される。
図4に示すように、分割固定子コア10が、下型21に4方向で保持され、2面、3面、あるいは4面のスライドコアで固定するものの内、この図では、一対の下型スライドコア21a,21bに挟まれて固定される。
分割固定子コア10のティース部11の表面には、接着剤層30が形成されている。接着剤としては、エポキシ系樹脂の水性プライマを使用している。接着剤層の厚みは、30μm以下である。接着剤の熱伝導率は、0.1〜0.2W/m・Kである。
その状態で、上型22が下降する。上型22は、ガイド型22aによりガイドされ上下方向にスライド移動する上型スライドコア22bを備えている。下型21と上型22との間には、退避可能な注入装置24が保持されている。
(1)下型スライドコア21a,21bが左右に開いた状態で、接着剤層30が形成された分割固定子コア10が置かれ、下型スライドコア21a,21bが内側に閉じて分割固定子コア10を左右から位置決め保持する。ここで、分割固定子コア10は、接着剤層の温度が150℃程度になる程度まで事前に加熱されている。
(2)上型22が、開いた状態で注入装置24がティース部11の周りを1周することにより、インシュレータ用材料25であるフィラ入りPPS樹脂をキャビティK1内に必要量注入する。図4は、インシュレータ用材料25を注入した状態を示している。注入が終了すると、注入装置24は、退避する。
PPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性が液晶ポリエステル樹脂(LCP樹脂)より優れているので、本実施例では、PPSを使用している。フィラとしては、ガラス繊維等の繊維状フィラ、ウィスカ、タルク等の板状フィラを使用している。フィラの含有率は、10〜70重量%としている。
(4)その後、ガイド型22aがさらに下降して、インシュレータ12を形成するためのキャビティKを形成する。これにより、インシュレータ用材料25は、図1の(b)のインシュレータ12の形状に成形される。
(5)インシュレータ用材料25が固化するのを待って、上型22が上昇する。
図8に示すように、多数ある繊維状フィラ31の全てが、ほぼ上辺と平行に配置されていることがわかる。すなわち、図9に示すように、インシュレータ材料25が左辺から右辺に矢印Aに示すように平行に流れるため、その流れの中で繊維状フィラ31は、流れに対して最も抵抗の少ない位置に配置されている。
図5に本発明の実施例での結果を示す。図5は、成形されたインシュレータ12を切断し、その切断面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡(KEYENCE社製、型式VK−9500)で撮影した顕微鏡写真に基づいて作成した図である。樹脂は、PPS樹脂である。23℃、常圧、倍率500倍である。樹脂32の中に繊維状フィラ31が多数点在している。図の上辺がティース部11の表面と接触する面側であり、下辺が上型のガイド型22aの内面と接触している面側である。インシュレータ材料25は、左辺から右辺に流れる。写真の縦の長さは、約200μmである。ガイド面22aの内面からティース部11の表面までの距離は、約300μmであり、写真は、ガイド22aの内面とティース部11の表面の中間位置付近を撮影したものである。
る。図5に示すように、多数ある繊維状フィラ31の全てが、ランダムな方向を向いて配置されていることがわかる。
また、図7に示すように、接着剤層30に先端が衝突した繊維状フィラ31aは、衝突した端部を中心として回転する。また、次に流れてきた繊維状フィラ31b、31c等が玉突き衝突して、繊維状フィラ31の方向が変化してランダムとなることも考えられる。
ここで、分割固定子コア10は、接着剤層30の温度が150℃程度になる程度まで事前に加熱されているので、接着剤が活性化されており、接着性能が高くなっているので、繊維状フィラ31の方向をより変化させることができる。
実際の計測結果を図10に示す。縦軸がインシュレータ12の熱伝導率である。Lが従来例である図8に示す構造を有する場合のインシュレータ12の熱伝導率である。本グラフでは、その熱伝導率を100としている。
Mが本実施例である図5に示す構造を有する場合のインシュレータ12の熱伝導率である。Lと比較して、20〜30%程度、熱伝導率が向上している。
樹脂モールド工程においては、キャビティK2内にエッジワイズコイル13がインサートされた状態で成形を行うため、エッジワイズコイル13の長端末13a,13bのシールを行っている。
(1)下型スライドコア21a,21bが左右に開いた状態で、インシュレータ12が成形された分割固定子コア10が置かれ、下型スライドコア21a,21bが内側に閉じて分割固定子コア10を左右から保持する。ここで、分割固定子コア10は、事前に加熱されている。この状態で、成形済みのエッジワイズコイル13がインサートされる。
(2)上型26が、開いた状態で注入装置27がティース部11の周りを1周することにより、樹脂モールド材料28をキャビティK2内に必要量注入する。図11は、樹脂モールド材料28を注入した状態を示している。注入が終了すると、注入装置27は、退避する。
(4)その後、ガイド型26aがさらに下降して、樹脂モールド14を形成するためのキャビティK2を形成する。キャビティK2は、エッジワイズコイル13を含むものであり、キャビティK1と比較して、大きなキャビティである。樹脂モールド材料28をキャビティK2内に注入することにより、樹脂モールド材料28は、図1の(d)の樹脂モールド14の形状に成形される。
(5)が固化するのを待って、上型26が上昇する。
ティース部11の面に鉛直な方向に生じた流れ、及び繊維状フィラ31に与えられた回転力により、繊維状フィラ31が、ティース部11の面に鉛直な方向に回転される。この状態で、インシュレータ用材料25が硬化されることにより、繊維状フィラ31が成形されたインシュレータ12の内部で、ランダムな方向に向くこととなる。
ここで、分割固定子コア10は、接着剤層30の温度が150℃程度になる程度まで事前に加熱されているので、接着剤が活性化されており、接着性能が高くなっているので、繊維状フィラ31の方向をより変化させることができ、インシュレータ12の熱伝導率をより高くすることができる。
それと比較して、接着剤層30が形成されている場合には、図5に示すように、繊維状フィラ31がランダムな方向に配置されるため、ティース部11の面に鉛直な方向における熱伝導性を高めることができる。
例えば、PPS樹脂の熱伝導率は、0.2W/m・Kであり、繊維状フィラ31の熱伝導率は、30W/m・Kである。インシュレータ材料25中に繊維状フィラ31を50%混入させたとしても、フィラ入り樹脂の熱伝導率は、1W/m・Kになるにすぎない。
しかし、繊維状フィラ31がランダム方向に配置されることから、図5に示すように、熱パスCが形成されるため、熱伝導率が大幅に増加し、インシュレータ12全体としての熱伝導率は、図10に示すように、従来のインシュレータ12と比較して、20〜30%増加する。これにより、ハイブリッド自動車用モータにおいても、コイルで発生した熱を、インシュレータ12を介して効率よく分割固定子コア10に熱伝導することができる。
本実施例では、接着剤層30の厚みを30μm採っているが、接着剤層30を均一に形成できるならば、もっと薄くすることにより、全体の熱伝達率を向上させることができる。
例えば、本実施例では、接着剤として、エポキシ系水性プライマを使用したが、PPS樹脂の流動を妨げるだけの粘性があるもの、また繊維状フィラ30の先端が引っかかって回転力が与えられるレベルの粘性があれば、他の接着剤を用いても良い。
また、本実施例では、熱可塑性樹脂であるPPS樹脂を使用したが、熱硬化性樹脂を使用した射出成形にも適用することができる。
また、本実施例では、繊維状フィラ30について説明したが、板状のフィラを用いる場合でも、同様の効果を得ることができる。
また、1つのエッジワイズコイル13を有する分割固定子10について説明したが、2つのティース部11を備える分割固定子コアに、2つのエッジワイズコイル13を各々装着して、全体を樹脂モールドしても良い。また、3つのティース部11を備える分割固定子コアに、3つのエッジワイズコイル13を各々装着して、全体を樹脂モールドしても良い。
また、実施例の説明でも記載したが、本実施例では、エッジワイズコイルについて説明
したが、コイル巻線の断面が丸や正方形等であっても、コイルとして成形されておれば、本発明が適用できることは、明解である。
11 ティース部
12 インシュレータ
13 エッジワイズコイル
15 外筒
18 分割固定子
21 下型
21a,21b 下型スライドコア
22 インシュレータ成形用の上型
22a ガイド型
22b インシュレータ用上型スライドコア
25 インシュレータ材料
26 樹脂モールド成型用の上型
26a ガイド型
26b 樹脂モールド用上型スライドコア
30 接着剤層
31 繊維状フィラ
Claims (9)
- 分割コアのティース部周囲に接着剤層を介して、インシュレータが成形されていることを特徴とする分割固定子。
- 請求項1に記載する分割固定子において、
前記インシュレータが前記ティース部に樹脂モールド成形されていることを特徴とする分割固定子。 - 請求項2に記載する分割固定子において、
前記樹脂モールド材料が、材料樹脂にフィラが含有されたものであり、
前記フィラの材料の熱伝導率が、前記材料樹脂の熱伝導率よりも高いことを特徴とする分割固定子。 - 請求項3に記載する分割固定子において、
前記フィラが非球形であることを特徴とする分割固定子。 - 分割コアのティース部周囲にインシュレータを成形するときに、
前記ティース部の周囲に接着剤を塗布した状態で前記インシュレータを成形することを特徴とする分割固定子製造方法。 - 請求項5に記載する分割固定子製造方法において、
前記インシュレータが前記ティース部に樹脂モールド成形されていることを特徴とする分割固定子製造方法。 - 請求項6に記載する分割固定子製造方法において、
前記樹脂モールド材料が、材料樹脂にフィラが含有されたものであり、
前記フィラの材料の熱伝導率が、前記材料樹脂の熱伝導率よりも高いことを特徴とする分割固定子製造方法。 - 請求項7に記載する分割固定子製造方法において、
前記フィラが非球形であることを特徴とする分割固定子製造方法。 - 請求項5乃至請求項8に記載する分割固定子製造方法のいずれか1つにおいて、
前記接着剤が予め加熱されていることを特徴とする分割固定子製造方法。
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