JP2009218006A - 電解質膜−電極接合体の製造方法 - Google Patents

電解質膜−電極接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イオノマー抵抗に起因する抵抗損失を小さく抑えることができ、発電性能に優れる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に順次配置された、カソード触媒層およびカソード側ガス拡散層と、前記高分子電解質膜の他方の側に順次配置された、アノード触媒層およびアノード側ガス拡散層と、を有する電解質膜−電極接合体の製造方法であって、前記カソード触媒層またはアノード触媒層は、(i)水に分散されたプロトン伝導性高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒とを混合して、触媒インクを作製し、(ii)前記高分子電解質膜の表面に前記(i)で作製された触媒インクを塗布し、さらに(iii)前記高分子電解質膜の表面に塗布した触媒インクを、空気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、90℃以下の温度で、乾燥する工程を有し、前記有機溶媒は、水と均一に混合されかつ水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低いアルコールである、電解質膜−電極接合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、電解質膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)の製造方法、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体の製造方法に関するものである。特に、本発明は、触媒の利用効率および発電性能に優れた電解質膜−電極接合体(MEA)の製造方法、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体の製造方法に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子形燃料電池は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子形燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体を、セパレータで挟持した構造となっている。電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜が一対の電極触媒層及びガス拡散性の電極(ガス拡散層;GDL)により挟持されてなるものである。
上記したようなMEAを有する固体高分子形燃料電池では、固体高分子電解質膜を挟持する両電極(カソード及びアノード)において、その極性に応じて以下に記す反応式で示される電極反応を進行させ、電気エネルギーを得ている。まず、アノード(水素極)側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒成分により酸化され、プロトンおよび電子となる(H→2H+2e:反応1)。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、カソード(酸素極)側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する(2H+2e+(1/2)O→2HO:反応2)。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
上記電気化学的反応において、アノード側で上記反応1により生成した水素イオン(H)(以下、「プロトン」とも称する)は、水和状態(H)で固体高分子電解質膜を透過(拡散)する。膜を透過したプロトンは、カソードで、ガス拡散層を透過(拡散)した酸素が、プロトンおよび電子とともに、上記反応2に供される。すなわち、アノードおよびカソードでの電極反応は、電解質膜に密着した電極触媒層を反応サイトとし、当該電極触媒層内の触媒と高分子電解質(以下、「イオノマー」とも称する)との界面で進行する。したがって、触媒と高分子電解質との界面が増大し、界面形成が均一化すれば、上記した反応1及び2が、より円滑かつ活発に進行する。
一般的に、電極触媒層内の触媒としては、導電性担体(カーボンブラックなど)に白金や白金合金を担持したものが用いられる。ここで、上記反応1及び2の反応が円滑かつ活発に進行するのには、白金や白金合金の表面(還元・酸化)状態や表面吸着種の状態が重要になる。例えば、アノード側で反応1によりプロトンを生成するには、活性サイトである白金の表面に吸着(脱離)する水素や白金表面に配位する水素、および白金近傍に存在するHOや白金表面に配位するHOなどが重要と推測される。一方、カソード側では、反応2によりHOを生成するには、活性サイトである白金の表面に吸着(脱離)する酸素や白金表面に配位する酸素、および、白金近傍に存在するHOや白金表面に配位するHOなどが重要と推測される。したがって、上記した反応1及び2がより円滑かつ活発に進行するためには、電極触媒層において、触媒成分(Pt)と高分子電解質との界面(=反応サイト)が増大し、界面形成が均一化することが非常に重要となる。
上記課題を達成するために、例えば、特許文献1が報告される。特許文献1では、主鎖の長さが30〜200nmの水素イオン伝導性高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、溶媒とを混合して、触媒インクを作製し、この触媒インクを用いて触媒層を形成することが記載されている。ここで、特許文献1では、高分子電解質が分散/溶解させる溶媒の誘電率によって形状が変化することを見出し、これにより触媒層の貴金属触媒の有効活性面積を極大化することを特徴としている(段落「0021」)。このためには、高分子形電解質を、第1溶媒に分散/溶解した後に、第1溶媒とは誘電率が異なる(小さいまたは大きい)第2溶媒を添加した後、触媒(Pt/C)を分散させて、触媒インクを作製することが好ましい旨が記載されている。特許文献1の実施例では、このようにして作製した触媒インクを、ガス拡散層の片面と水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に塗布して、塗布面同士が重なるように、電解質膜を一対のガス拡散層で挟み込む。次に、この積層体を、ホットプレス法を用いて加圧、加熱して接合することにより、MEAを作製している。
特開2002−63912号公報
上記特許文献1において、ホットプレス温度が記載されていないが、一般的に、ホットプレスは、高分子電解質のガラス転移温度(軟化点)付近の温度、例えば、100〜200℃程度の温度で、加熱・加圧が行われる。しかし、このように100℃以上〜ガラス転移転(軟化点)付近の高温に加熱すると、電解質の特性(含水性やプロトン導電性)が一時的に低下し、初期から高い性能を得ることができない。このため、初期から電解質本来の特性を発現させるには、100℃以上の温度に加熱しないことが望ましい。しかし、従来、触媒層のクラックや発火の問題を考慮して、高沸点溶媒(例えば、酢酸ブチル(沸点:124〜127℃))が使用されていた。このため、残留溶媒を除去するためには、やはり上記したような高温での加熱が必要であった。また、特許文献1では、高温で加圧しているため、触媒層中の空孔容積が減少する上、電解質膜にも熱がかかるため、膜の状態もまた変化してしまう。
特許文献1では、溶媒の誘電率により、高分子電解質と触媒とを十分かつ均一に接触させ、電極内部の反応面積を増大できるとしている(段落「0023」)。誘電率の低い溶媒中ではイオノマーの親水基側鎖部分を内側にして凝集する。また、誘電率の高い溶媒(例えば、水)中ではイオノマーの疎水基主鎖部分を内側にして凝集するが、外側にスルホン酸基が向いていても凝集しているので触媒表面や細孔内への分散性が悪い。さらに、誘電率が15〜25位の溶媒(例えば、アルコール)中ではイオノマーの主鎖が比較的のびた状態で分散している。従って、分散溶媒の誘電率が15〜25ぐらいの場合や、誘電率の高い溶媒や低い溶媒中でも高分子電解質の分散量(wt%)が大きい場合などは、いくつかの分子が絡み合い凝集し比較的大きな分子として存在する。
一方、炭素粒子が集まるとその状態は、一次粒子が融着状に結合するアグリゲート構造、または、単に物理的に二次的に絡み合って生じるアグロメレート構造をもち、ストラクチャーを形成する。例えば、燃料電池に一般的に用いられる炭素粒子は、アグリゲート構造がさらに凝集したアグロメレート粒子と呼ぶ粒子状の構造物を形成する。このとき、一次粒子が10〜50nmで、200m/g以上の大きい比表面積を持つ炭素粒子を用いた場合には、上述している炭素粒子のアグロメレート構造内の細孔が非常に小さくなる。ゆえに、特許文献1では、前述のアグロメレート構造内の細孔に高分子電解質が入り込めず、細孔内の触媒金属との接触が十分行われず、触媒を有効に利用できない。
上記に加えて、上述したように、100〜200℃という高温でホットプレスを行うと、沸点の差によって触媒インクの溶媒組成が変化する。このような変化があると、高分子電解質と触媒との接触状態もまた変化するため、触媒層の形成工程中で高分子電解質と触媒との均一な接触状態を維持することができない。特に高沸点溶媒を用いて、塗布膜の乾燥をゆっくり行なう場合には、乾燥が表面から進行していくため、溶媒組成の変化に伴い、不均一な層構造をなってしまう。
アノード触媒層、カソード触媒層における上記反応1、2の円滑化および活発化には、各触媒層内の触媒と高分子電解質(イオノマー)との界面の増大および界面形成の均一化を触媒層の形成工程中に維持することが非常に重要である。しかし、上記特許文献1で提案されたMEAでは、上述した問題点が十分解決できない。
また、従来の燃料電池の触媒層の形成では主にパーフルオロカーボンスルホン酸イオノマーが高分子電解質として用いられているが、前述した観点からの最適化・維持が十分とはいえなかった。即ち、反応面積を増大させるため、細孔内の触媒と高分子電解質を接触させるためには、触媒インク中の高分子電解質の状態、触媒層の細孔(空孔径や空孔分布)や炭素粒子の細孔の最適化だけでは不十分であった。
したがって、本発明は、触媒インク中の高分子電解質の状態を最適化すると共に、その後の触媒層形成過程においても最適な状態をできるだけ維持することで、反応面積の増大(触媒利用効率の向上)、性能向上を図ることを目的とする。
すなわち、本発明は、イオノマー抵抗に起因する抵抗損失を小さく抑えることができ、発電性能に優れる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、分散溶媒の誘電率と性能/イオノマーの分散性との間には相関性がないことが判明した。むしろ、触媒インク中の溶媒の蒸発時に、その溶媒組成を変化させないことにより、イオノマーの再凝集を抑制して、触媒と高分子電解質との十分かつ均一な接触状態を維持できることを見出した。すなわち、水と均一に混合され、水との混合物が気液平衡(蒸発平衡)組成を形成しかつ沸点が水の沸点より低い有機溶媒を触媒インクに使用することが上記最適な接触状態の維持に重要である。このような溶媒組成を使用することによって、溶媒が蒸発する過程でも、イオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散できる。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
本発明の方法によると、触媒インク中の高分子電解質の状態を最適化すると共に、その後の触媒層形成過程においても最適な状態を維持することができる。このため、本発明の方法によって得られる電解質膜−電極接合体は、触媒利用効率を向上でき、性能向上を図ることができる。
本発明は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に順次配置された、カソード触媒層およびカソード側ガス拡散層と、前記高分子電解質膜の他方の側に順次配置された、アノード触媒層およびアノード側ガス拡散層と、を有する電解質膜−電極接合体の製造方法であって、前記カソード触媒層またはアノード触媒層は、(i)水に分散されたプロトン伝導性高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒とを混合して、触媒インクを作製し、(ii)前記高分子電解質膜の表面に前記(i)で作製された触媒インクを塗布し、さらに(iii)前記高分子電解質膜の表面に塗布した触媒インクを、空気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、90℃以下の温度で、乾燥する工程を有し、前記有機溶媒は、水と均一に混合されかつ水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低いアルコールである、電解質膜−電極接合体の製造方法に関するものである。
従来、一般的に用いられているパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質の溶液は、イオノマー溶液と呼ばれる。しかし、例えば、Macromolecules、1989年、第22号、第3594-3599頁に記載されているように、このイオノマー溶液は、高分子電解質が溶媒中に分散しているだけで、溶解しているものではない。また、このイオノマーの存在状態は、分散媒の種類や組成、分散媒の極性、固形分濃度などの様々な要因に影響され、凝集状態や解膠状態が異なる。ここで、「凝集状態」とは、複数の高分子鎖が絡まって集合する状態を意味する。また、「解膠状態」とは、複数の高分子鎖が解れて伸びた状態を意味する。
一般に、水に分散されたイオノマー(高分子電解質)は、いくつかの高分子鎖が絡み合い凝集し、疎水基主鎖部分を内側に、親水基(例えば、スルホン酸基)を外側にして、比較的大きな凝集体として存在する。また、有機溶媒に分散されたイオノマーは、疎水基主鎖部分を外側に、親水基を内側にして比較的小さな凝集体としてすると考えられている。一方、親水基と疎水基とを併せ持つアルコール(例えば、メタノール)を添加すると、凝集したイオノマーが解膠して比較的伸びた状態で分散する。さらに、イオノマーの骨格部分や側鎖の疎水基部分に有機溶媒の疎水基部分がファンデルワールス力で配位して安定化し、イオノマーが擬似的に親水化(溶媒化合物を形成)することも考えられる。J. Phys. Chem. B 2001, 105, 7830-7834参照。さらに、水−アルコール系の混合分散媒では、上記に加えて、プロトン導電性に寄与する(プロトン導電性の経路となる)スルホン酸基の配向性が変化すると考えられている。
このように、分散溶媒の種類や組成を選択することで、イオノマーが親水基側鎖部分を内側にして凝集したり、イオノマーが疎水基主鎖部分を内側にして凝集したり、プロトン伝導性に寄与するスルホン酸基の配向性を変化させたりすることができる。ゆえに、イオノマーが触媒と接触し3相界面を形成する際には、触媒インク中における上述のイオノマーの凝集体状態および解膠状態が、界面の増大や界面形成の均一化に重要となることが判明した。
一方、上述したように、炭素粒子が集まるとその状態は、一次粒子が融着状に結合するアグリゲート構造、または、単に物理的に二次的に絡み合って生じるアグロメレート構造をもち、ストラクチャーを形成する。例えば、燃料電池に一般的に用いられる炭素粒子は、アグリゲート構造がさらに凝集したアグロメレート粒子と呼ぶ粒子状の構造物を形成する。このとき、一次粒子が10〜50nmで、200m/g以上の大きい比表面積を持つ炭素粒子を用いた場合には、上述している炭素粒子のアグロメレート構造内の細孔が非常に小さくなる。また、炭素粒子表面には官能基(親水基も疎水基も両方)が非常に少ない。このため、触媒インク中のイオノマーは、アグロメレート粒子表面に付着あるいはアグロメレート構造内の細孔内に浸入しても、表面や細孔内に固定化されないと考えられる。すなわち、分散溶媒を除去する過程(乾燥過程)で、表面や細孔内から移動(蒸発)する溶媒と共にイオノマーも移動し、イオノマーの分散状態が変化する。このように、イオノマーの溶媒化合物は固定化(炭素粒子表面や細孔内部に強く吸着・保持)されず、不安定な状態(動きやすい状態)であるため、触媒インクの乾燥過程において、溶媒組成が徐々に変化すると、イオノマーの再凝集が起こると推測される。特に、触媒インク中の乾燥工程で、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔にイオノマーと共に存在する溶媒が蒸発する際には、沸点の低い有機溶媒のみが選択的に蒸発して、イオノマーの再凝集が起こり易いと推測される。
したがって、従来用いるイオノマーでは、炭素粒子の表面やアグロメレート構造内の細孔にイオノマーが入り込めず、細孔内の触媒金属(例えば、Pt)との接触が不十分となり触媒を有効に利用できない。このため、触媒インク中のイオノマーの凝集体状態及び解膠状態が、アグロメレート粒子表面やアグロメレート構造内の細孔における3相界面の増大や界面形成の均一化に重要となる。
本発明によるように、3相界面の増大や界面形成の均一化を図るためには、分散溶媒を除去する過程で、水と均一に混合される混合物(気液平衡(蒸発平衡)組成)を形成する有機溶媒で、かつ、沸点が水の沸点よりも低くなる混合物組成とすることが好ましい。このような組成をとることで、溶媒が蒸発する過程でも、イオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散できるからである。換言すると、触媒インク調製時のみならず、触媒層形成過程に至るまで、高分子電解質と触媒とを十分かつ均一に接触でき、イオノマー分散状態を最適な状態に維持した電極(触媒層)構造にすることができる。このため、電極触媒の反応効率の改善や利用率を向上できる。さらに、乾燥工程における相分離(固相−液相の分離)を抑制するためには、乾燥時間が短いことも重要となる。本発明では、触媒インクで使用される混合溶媒の沸点を水の沸点よりも低くなるように設定する。このため、乾燥工程を低い温度であっても短時間で完了することができる。特に、触媒(白金等)の使用量の低減を目的とする場合には、本発明の方法は有効である。
また、本発明の方法では、触媒インク作製から触媒層形成に至る工程にわたって、イオノマーの凝集状態と分散状態を好適な状態にできるため、アグロメレート粒子表面やアグロメレート構造内の細孔における3相界面の増大や界面形成の均一化が図れる。
触媒層を形成する工程(触媒インク中の分散溶媒を除去する工程)において、分散溶媒が水と均一に混合され気液平衡(蒸発平衡)組成を形成する混合物であることが好ましい。これにより、触媒インク中の分散溶媒を除去する間であっても、触媒インクの溶媒組成が実質的に変化しない、即ち、高分子電解質と触媒との接触状態を維持できるからである。このため、分散溶媒の除去過程においてイオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散な状態が維持できる。
これらの作用によって、触媒成分とイオノマーとの界面(=反応サイト)が増大し、さらに界面形成が均一化するため、高い発電性能(イオノマー抵抗に起因する抵抗損失が小さい)が得られる。
さらに、本発明では、触媒インクの作製に使用される水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低い。このため、触媒粒子と接触した高分子電解質(特に、パーフルオロカーボンスルホン酸イオノマー)および電解質膜を、100℃以上〜ガラス転移転(軟化点)付近温度に加熱する必要がない。ゆえに、電解質の特性(含水性やプロトン導電性)が好適な状態を維持できるため、初期から高い性能を得ることができる。なお、上記機構は推定であり、本発明が上記機構によって限定されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、以下では、カソード触媒層及びアノード触媒層双方を本発明に係る方法で作製する形態を説明する。しかし、本発明は、カソード触媒層及びアノード触媒層の少なくとも一方の触媒層が本発明に係る方法で作製されればよい。本発明に係る方法で触媒層を作製しない場合には、その触媒層は、公知の方法と同様にして作製できるため、ここではその説明は省略する。例えば、本発明に係るMEAを燃料電池に使用する場合には、少なくともカソード触媒層が本発明に係る方法で作製されることが好ましい。より好ましくは、カソード触媒層及びアノード触媒層双方が本発明に係る方法で作製される。
本発明の方法において、まず、水に分散されたプロトン伝導性高分子電解質(以下、単に「高分子電解質」とも称する)と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒とを混合して、触媒インクを作製する(工程(i))。
ここで、有機溶媒は、水と均一に混合されかつ水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低いアルコールである。ここで、「水に分散されたプロトン伝導性高分子電解質」は、プロトン伝導性高分子電解質が他の有機溶媒を含まずに実質的に水にのみ分散されている。なお、本明細書中で、「プロトン伝導性高分子電解質が他の有機溶媒を含まずに実質的に水にのみ分散されている」とは、有機溶媒の水中の含量が好ましくは50質量%以下を意味する。好ましくは、プロトン伝導性高分子電解質は、水にのみ分散されており、他の有機溶媒を含まない。また、「水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低い」とは、工程(i)により作製された触媒インクを構成する水及び有機溶媒からなる混合物(水−有機溶媒混合物)の沸点が水より低い(100℃未満である)ことを意味する。これにより、低い温度で混合物を蒸発・除去することができるため、含水性やプロトン導電性をはじめとする電解質の特性を、下記工程(iii)の触媒層形成中であっても高レベルに維持できる。ゆえに、本発明に係るMEAは初期から高い発電性能を発揮することができる。
本発明では、水−有機溶媒混合物が、気液平衡(蒸発平衡)組成を形成することが好ましい。これにより、触媒インク調製から触媒層形成に至るまでの全工程にわたって、水−有機溶媒混合物の溶媒組成が実質的に変化しない。このため、溶媒を蒸発除去させる触媒層形成過程でも、イオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散できる。また、高分子電解質と触媒とを十分かつ均一に接触でき、イオノマー分散状態を最適な状態に維持した均一な触媒層を形成することができる。このため、本発明に係るMEAは、電極触媒の反応効率の改善や利用率を向上できる。
このような有機溶媒としては、水と均一に混合されかつ水−有機溶媒混合物とした時の沸点が水の沸点より低いアルコールであれば特に制限されないが、沸点が100℃未満の低級アルコールであることが好ましい。ここで、有機溶媒の疎水基部分が、イオノマーの骨格部分や側鎖の疎水基部分にファンデルワールス力で配位して安定化し、溶媒化合物を形成する。このため、有機溶媒は、疎水基と親水基の両方を併せ持つものが好ましい。この観点から、有機溶媒にはアルコール類が選択され、また、アルコール類の中でも、混合物(気液平衡(蒸発平衡)組成)の沸点の観点から、低分子量のアルコールが望ましい。より具体的には、メタノール(MeOH;沸点=64.6℃)、エタノール(EtOH;沸点=78.3℃)、1−プロパノール(1−PrOH;沸点=97.4℃)、2−プロパノール(2−PrOH;沸点=82.7℃)などが好ましく挙げられる。ここで、イオノマー抵抗や性能などを考慮すると、有機溶媒は、水と均一に混合され混合物(気液平衡(蒸発平衡)組成)を形成し、溶媒化合物が形成しやすく、また、水−有機溶媒混合物の沸点が低いものほど好ましい。ゆえに、MeOH>EtOH>2−PrOH>1−PrOHの順で好ましい。また、本工程(i)では、有機溶媒に加えて、水を添加してもよい。この場合の水の添加量は、下記工程(iii)で、90℃以下の温度で、触媒インクの塗布層を十分乾燥できる量であれば特に制限されない。好ましくは、水は、下記に詳述される水と有機溶媒との混合比(質量比)になるような量で添加される。
本工程(i)では、高分子電解質を水に分散した状態で、有機溶媒(および必要であれば水;以下、同様)と混合する。水に分散された高分子電解質は、いくつかの高分子鎖が絡み合い凝集し、疎水基主鎖部分を内側に、親水基(パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質の場合には、スルホン酸基)を外側にして、比較的大きな凝集体として存在する。ここに、有機溶媒(例えば、メタノール)を添加すると、凝集したイオノマーが解膠して比較的伸びた状態で分散する。さらに、イオノマーの骨格部分や側鎖の疎水基部分に有機溶媒の疎水基部分がファンデルワールス力で配位して安定化し、イオノマーが擬似的に親水化(溶媒化合物を形成)する。また、水−アルコール系の混合分散媒では、その混合比によって、プロトン導電性に寄与する(プロトン導電性の経路となる)親水基(例えばスルホン酸基)の配向性が変化すると考えられる。即ち、水の方が多く存在する場合には、疎水基主鎖部分を内側に、親水基を外側にして、存在する。これに対して、有機溶媒の量が多くなるに従って、疎水基主鎖部分を外側に、親水基を内側にして比較的小さな凝集体としてする。このように、水−有機溶媒混合物の混合比を変化することによって、当該混合液の沸点および親水基の配向性を適宜調節できる。
本発明では、水−有機溶媒混合物の混合比は、特に制限されない。しかし、下記工程(ii)に示されるように、触媒インクの塗布層を90℃以下の温度で乾燥することを考慮すると、水−有機溶媒混合物の沸点も90℃以下であることが好ましい。また、以下に詳述される触媒インクの塗布層の乾燥温度を考慮すると、水−有機溶媒混合物の沸点は、より好ましくは60〜90℃である。また、水−有機溶媒混合物の沸点および気液平衡(蒸発平衡)組成を考慮すると、水と有機溶媒との混合比(質量比)は、8:2〜2:8であることが好ましい。なお、図1に、本発明の好ましい形態による、水−有機溶媒混合物の溶媒組成と沸点との関係を示す。図1において、横軸は、水−有機溶媒混合物中の有機溶媒が占める割合(質量%)であり、縦軸は、水−有機溶媒混合物の沸点である。また、図1中の各シンボルは下記のとおりである:黒丸は、水−メタノール混合物(図1中の「MeOH」)であり、黒四角は、水−エタノール混合物(図1中の「EtOH」)であり、黒菱形は、水−1−プロパノール混合物(図1中の「1−PrOH」)であり、黒三角は、水−2−プロパノール混合物(図1中の「2−PrOH」)である。
また、本工程(i)において、触媒インクの調製方法は、特に制限されない。例えば、水に分散された高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒と混合順序は、特に制限されない。具体的には、下記(i−1)〜(i−3)が挙げられる。
(i−1)前記プロトン伝導性高分子電解質を水に分散してイオノマー溶液を調製し、前記イオノマー溶液を、貴金属を担持した導電性カーボン粉末と混合する。その後、水−有機溶媒混合物の沸点が90℃以下になるような溶媒組成になるように、有機溶媒をさらに添加して、触媒インクを調製する;
(i−2)前記プロトン伝導性高分子電解質を水に分散してイオノマー溶液を調製し、水−有機溶媒混合物の沸点が90℃以下になるような溶媒組成になるように、前記イオノマー溶液に有機溶媒を添加する。その後、貴金属を担持した導電性カーボン粉末をさらに混合(添加)して、触媒インクを調製する;および
(i−3)貴金属を担持した導電性カーボン粉末と有機溶媒とを混合する。次に、別途プロトン伝導性高分子電解質を水に分散して調製したイオノマー溶液を、水−有機溶媒混合物の沸点が90℃以下になるような溶媒組成になるように、さらに添加して、触媒インクを調製する。
上記方法のうち、(i−1)及び(i−2)の方法が好ましい。これにより、水と有機溶媒が均一に混合され、混合物と気液平衡(蒸発平衡)を形成し、溶媒化合物が形成しやすいため、イオノマー抵抗の低下および性能向上が達成できる。また、高分子電解質と触媒とを十分かつ均一に接触することができる。発火防止という観点から、触媒と有機溶媒との接触を避けることが好ましい。この点を考慮すると、上記(i−1)の方法がより好ましい。
上記工程(i)に使用されるプロトン伝導性高分子電解質(高分子電解質)は、プロトン伝導性であれば特に制限されず、公知のものが使用できる。具体的には、高分子電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
固体高分子電解質は、耐久性、機械強度などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。また、スルホン酸基を有する高分子電解質を用いた場合には、カソード側電極触媒層に達したプロトンは、水分子を伴って、このスルホン酸基を渡って移動する。すなわち、スルホン酸基は、プロトンの通路となっている。このため、プロトン伝導性向上の点で、高分子電解質はスルホン酸基を有することが好ましい。ゆえに、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質が好ましく使用される。なお、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質は、疎水性の骨格を構成する主鎖部分と、親水性のクラスター領域を形成する側鎖部分から構成され、側鎖部分にイオン交換基としてのスルホン酸基が存在する。特に、本発明において、高分子電解質としてパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質を使用する場合には、EWが、600〜1500g/eq.、より好ましくは600〜1100g/eq.程度のものを使用することが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、スルホン酸基1モル当たりの乾燥膜重量を表わし、小さいほどスルホン酸基の比重が大きいことを意味する。
また、高分子電解質の量は、特に制限されない。以下に詳述する導電性カーボンの質量(C)に対する前記高分子電解質の質量(I)の比(Ionomer/Carbon;I/C)が、0.5/1〜2.0/1、より好ましくは0.7/1〜1.6/1となるような量であることが好ましい。このような範囲であると、十分なプロトン伝導性およびガス拡散性が達成しうる。なお、上記I/C比は、工程(i)で触媒インク(スラリー)を作製する際に予め混合する触媒層中に含まれる導電性カーボン質量および電解質固形分を測定しておき、これらの混合比を調整することにより、算出され、また、制御できる。また、電極触媒層を分析して、前記I/Cを求める際の、導電性カーボンの質量(C)とは、電極触媒の質量から触媒成分の質量を差し引いたものとする。触媒成分の質量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって定量することができる。電極触媒層を分析して、前記I/Cを求める際の、触媒層中の高分子電解質質量(I)は、19F NMRによる高分子電解質の構造解析、および、電量滴定によるS原子の定量、の2つを組合わせることで定量することができる。
また、上記工程(i)では、高分子電解質は、水中に分散しているが、この際の高分子電解質の水中での含有率は、特に制限されないが、固形分量が好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%である。このような含有率であれば、高分子電解質が適切に水中に分散しうる。
本発明において、カソード触媒層及びアノード触媒層の形成には、貴金属を担持した導電性カーボンが使用される。ここで、カソード触媒層に用いられる貴金属は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の貴金属成分が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる貴金属もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の貴金属成分が同様にして使用できる。具体的には、貴金属としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウムなどが挙げられる。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。また、本発明では、上記貴金属に加えて、他の触媒成分が使用されてもよい。この際、他の触媒成分は、カソード触媒層では酸素の還元反応に触媒作用を有する、また、アノード触媒層では水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく、公知の触媒成分が同様にして使用できる。具体的には、他の触媒成分としては、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属などが挙げられる。この際、上記貴金属は、単独で使用されてももしくは2種以上組み合わせて使用されても、または1種もしくは2種以上の上記他の触媒成分と組み合わせて使用されてもよい。また、2種以上の金属を組み合わせる場合には、各金属成分を混合物の形態で使用してもあるいは合金の形態で使用してもよい。後者の場合において、合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できる。好ましくは、合金の組成は、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が70〜10原子%とすることが好ましい。また、前者の場合であっても、各金属成分の組成(混合比)は、上記合金と同様の組成が適用できる。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる貴金属及び必要であれば他の触媒成分、ならびにアノード触媒層に用いられる貴金属及び必要であれば他の触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の貴金属及び必要であれば他の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
カソード触媒層及びアノード触媒層に用いられる触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。また、触媒成分の大きさ(平均粒径)は、1〜10nm、より好ましくは1〜5nmであることが好ましい。ここで、触媒成分の平均粒径が1nm未満であると、触媒成分の表面積が大きくなるものの、電位の変化で溶出しやすくなり、経時的な性能低下が大きい可能性がある。また、触媒成分の平均粒径が10nmを超えると、触媒成分の表面積が小さくなりすぎて、3相界面を十分確保することが難しく、また、発電性能が低下する可能性がある。特に、触媒成分の大きさ(平均粒径)が2nmである場合には、触媒成分による活性が高いため好ましい。なお、カソード触媒層及びアノード触媒層の触媒成分の大きさ(平均粒径)は、同一であってもあるいは異なるものであってもよく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。また、本発明における「触媒成分の平均粒径」は、X線回折における当該物質の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる粒子径の平均値により測定することができる。
本発明では、上記触媒成分を導電性カーボン(本明細書では、「担体」とも称する)に担持して、電極触媒となる。ここで、担体としては、導電性を有するものであれば特に制限されず、公知の担体が使用できる。このような導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよい。導電性カーボンとは、主成分がカーボンである。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が上記範囲であれば、前記導電性担体への触媒成分および高分子電解質の分散性が良好であり、十分な発電性能が達成でき、また、十分な触媒成分および高分子電解質の有効利用率が達成できる。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。担持量が前記範囲であれば、十分な触媒成分の導電性担体上での分散度、発電性能の向上、経済上での利点、単位質量あたりの触媒活性が達成できるため好ましい。なお、触媒成分の担持量は、カソード触媒層及びアノード触媒層で、同じであってもあるいは異なる量であってもよい。また、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
また、担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。
または、本発明において、電極触媒は市販品を使用してもよい。このような市販品としては、例えば、田中貴金属工業製、エヌ・イー・ケムキャット製、E−TEK製、ジョンソンマッセイ製などの電極触媒が使用できる。これらの電極触媒は、カーボン担体に、白金や白金合金を担持(触媒種の担持濃度、20〜70質量%)したものである。上記において、カーボン担体としては、ケッチェンブラック、バルカン、アセチレンブラック、ブラックパール、予め高温で熱処理した黒鉛化処理カーボン担体(例えば、黒鉛化処理ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、メソポーラスカーボンなどがある。
工程(i)において、触媒インク中の電極触媒濃度は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%となるような量で存在することが好ましい。
工程(i)において、触媒インクは、電極触媒、高分子電解質、水及び有機溶媒に加えて、撥水性高分子などを含んでもよい。撥水性高分子の使用は、触媒インクの塗布性を向上する場合などに有効である。この際使用できる撥水性高分子は、特に制限されず、公知の撥水性高分子が使用できる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。また、撥水性高分子を使用する際の、撥水性高分子の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは0.1〜20質量%である。
上記に代えてまたは上記に加えて、触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクの塗布性を向上する場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できる。例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。
また、工程(i)において、水に分散された高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒とを混合した後は、良好に混合するために、別途混合工程を設けてもよい。このような混合工程としては、特に制限されないが、触媒インクを超音波ホモジナイザーでよく分散する、あるいは、この混合スラリーをサンドグラインダー、循環式ボールミル、循環式ビーズミルなどの装置でよく粉砕させた後、減圧脱泡操作を加えることなどが好ましく挙げられる。
次に、上記工程(i)で作製した触媒インクを、高分子電解質膜の表面に塗布する(工程(ii))。
工程(ii)において使用できる高分子電解質膜としては、特に限定されないが、上記工程(i)で列挙した高分子電解質が同様にして使用できる。その例としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)に代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている固体高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各電極触媒層と電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
また、高分子電解質膜の厚みは、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、燃料電池作動時の出力特性の観点からは300μm以下であることが好ましい。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
また、触媒インクの高分子電解質膜の表面への塗布方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。具体的には、スプレー(スプレー塗布)法、ガリバー印刷法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など、公知の方法を用いて行うことができる。また、触媒インクの高分子電解質膜の表面への塗布に使用される装置もまた、特に制限されず、公知の装置が使用できる。具体的には、スクリーンプリンター、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いることができる。これらのうち、スプレー(スプレー塗布)法が好ましく使用される。このような方法は、塗布工程中の、触媒インクの水−有機溶媒混合物組成の変化を抑制・防止することができる。ゆえに、スプレー(スプレー塗布)法を用いると、水−有機溶媒混合物組成が実質的に変化しないので、電極触媒と高分子電解質との十分かつ均一な接触状態を維持したまま、高分子電解質膜の表面に触媒層を形成することができる。
また、工程(ii)において、触媒インクの塗布条件は、特に制限されず、公知の方法が使用できるが、高分子電解質と電極触媒との良好な接触状態を維持できる条件が好ましい。例えば、スプレー塗布(スプレー塗布)法の場合には、温度(吸着板温度)が、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃である。なお、塗布工程は、1回行ってもあるいは複数回繰り返し行ってもよく、下記に詳述される電極触媒の含有量(担持量)が達成されるまで、適宜行うことが好ましい。カソード触媒層及びアノード触媒層の形成条件(塗布条件)は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
工程(ii)で形成される触媒層中に電極触媒が存在する量(電極触媒の含有量/担持量)は、特に制限されず、上記した所望の効果によって適宜選択される。具体的には、カソード触媒層では、電極触媒が、カソード触媒層の単位面積(1cm)当たり、0.01〜1.0mg/cm、より好ましくは0.05〜0.5mg/cm、含まれることが好ましい。また、アノード触媒層では、電極触媒が、アノード触媒層の単位面積(1cm)当たり、0.01〜1.0mg/cm、より好ましくは0.05〜0.5mg/cm、含まれることが好ましい。このような量であれば、十分な発電性能が達成できる。
次に、上記工程(ii)で形成された触媒インクの塗布層(膜)を、空気雰囲気下あるいは不活性ガス雰囲気下で、90℃以下の温度で乾燥する(工程(iii))。本工程によると、水−有機溶媒の混合物の沸点が低いため、90℃以下という低温で触媒インクの塗布層(膜)を乾燥することができる。また、ホットプレス法による場合と異なり、温度や圧力の影響を受けないので、高分子電解質の特性(例えば、含水率やプロトン伝導性)の低下を抑制・防止でき、初期から高い性能を達成しうる。
工程(iii)において、触媒インクの塗布層(膜)の乾燥温度は、90℃以下であるが、好ましくは40〜90℃、より好ましくは60〜90℃である。このような温度範囲であれば、高分子電解質の特性(例えば、含水率やプロトン伝導性)の低下をさらに抑制・防止でき、初期から高い性能を達成しうる。また、触媒インクの塗布層(膜)の乾燥時間は、特に制限されないが、乾燥(水/有機溶媒除去)効率を考慮すると、好ましくは5〜120分、より好ましくは10〜60分である。
また、工程(iii)では、触媒インクの塗布層(膜)の乾燥を、空気雰囲気下あるいは不活性ガス雰囲気下で行う。この際の不活性ガスとしては、触媒インク中に含まれる水や有機溶媒を十分蒸発できるものであれば特に制限されないが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスなどが挙げられる。また、乾燥(水/有機溶媒除去)効率を上げるためには、空気や不活性ガスを、予め乾燥することが好ましい。なお、空気及び不活性ガスを、単独で使用してもよいが、組み合わせて使用してもよい。
工程(iii)により形成される触媒層(乾燥後)の厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。なお、上記厚みは、カソード触媒層及びアノード触媒層双方に適用される。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の厚みは、同じであってもあるいは異なってもよい。
このようにして、高分子電解質膜上に、カソード触媒層及びアノード触媒層が形成された接合体が製造できる。
本発明において、上記カソード触媒層及びアノード触媒層の構造は、上記特性を有するものであれば特に制限されない。しかし、本発明の方法によると、カソード触媒層及びアノード触媒層は、高分子電解質と電極触媒との良好な接触を維持し、また、イオノマーが再凝集することなく高分子電解質のネットワーク構造が発達している。即ち、カソード触媒層及びアノード触媒層は、水銀圧入法で得られる最頻空孔径のピークが20nm〜50nmであり、かつ空孔総容積が0.15〜0.45cm/gである空孔構造を有することが好ましい。より好ましくは、カソード触媒層及びアノード触媒層は、水銀圧入法で得られる最頻空孔径のピークが30〜50nmであり、かつ空孔総容積が0.2〜0.4cm/gである空孔構造を有する。上記したように、最頻空孔径及び空孔総容積の好ましい範囲は、カソード触媒層及びアノード触媒層双方に適用される。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の最頻空孔径及び空孔総容積は、同じであってもあるいは異なってもよい。
ここで、空孔径及び空孔量は、水銀ポシトメトリ法を用いて測定される。水銀ポシトメトリ法は、どれくらいの圧力をかけたときに、どれくらいの大きさの孔に水銀が入っていくかを、理論的に計算する方法である。ここで、かける圧力を連続的に増加させながら、水銀液面の表面の変化(つまり細孔への水銀侵入量)を検出することにより、試料表面の細孔の大きさとその体積とを測定する方法である。具体的には、高分子電解質膜の両面に本発明に係る触媒層を形成し、CCM(catalyst coated membrane)を作製する。このCCMを測定セルに投入し、この試料が投入された測定セルに水銀を充填し、セル内部を加圧し、その過程での水銀侵入容積(W1(cm))を静電容量検出器で検知する。別途、CCMの代わりに、触媒層を形成する前の電解質膜単独について同様の操作を行ない、水銀侵入容積(W0(cm))を検知する。このCCMの水銀侵入量と電解質膜の水銀侵入量との差(W1−W0)が電極触媒層の空孔容積であり、この空孔容積を触媒層に使用される触媒金属の質量(g)で除した値が、電極触媒層の空孔量である。また、空孔径が既知のものを用いて、検量線を別途作成し、電極触媒体の空孔量から空孔径が求められる。より具体的には、最頻空孔径、空孔容積は、下記実施例1 5.触媒層空孔構造の評価によって求められる。
また、上述したように、本発明の方法によると、分散溶媒の除去過程においてイオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散な状態が維持できる。ゆえに、本発明のMEAは、イオノマー抵抗に起因する抵抗損失が小さい発電性能を発揮できる。この効果は、特に低加湿条件下で顕著である。具体的には、アノード触媒層及びカソード触媒層の相対湿度(RHa/RHc)が40%/40%でのイオノマー抵抗値(R)が1000mohm・cm以下であることが好ましい。また、アノード触媒層及びカソード触媒層の相対湿度(RHa/RHc)が100%/100%でのイオノマー抵抗値(R)は、100mohm・cm以下であることが好ましい。なお、上記相対湿度は、所望のセル温度、例えば、80℃での相対湿度を意味する。また、上記イオノマー抵抗値は、電極触媒層の電解質抵抗値の測定は、M. Lefebvre et al,Elec. & Solid State Letters,2(6) p.259〜261(1999)に記載の方法に準じて測定した値である。より具体的には、イオノマー抵抗値は、下記実施例1 4.MEAの特性評価によって求められる。
なお、本発明のMEAは、下記に詳述されるようにガス拡散層をさらに有している。この際、ガス拡散層は、上記工程(i)〜(iii)で作製された接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、さらに各電極触媒層に接合することが好ましい。または、電極触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して電極触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記したのと同様にして、この電極触媒層−ガス拡散層接合体で電解質膜をホットプレスなどにより挟持・接合してもよい。
この際、MEAに用いられるガス拡散層(GDL)としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用できる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
本発明において、アノード側のガス拡散層が、カソード側のガス拡散層よりも、低いガス透過性、低い透水性、高い保水性、および高い保湿性からなる群より選択される少なくとも一の特性を有することが好ましい。これにより、触媒層内の保湿性が向上するため、低加湿条件下でも水素酸化活性/酸素還元活性の改善が図れる。なお、当該特性は、下記に記載される撥水剤の種類、カーボン粒子と撥水剤との混合比などを適宜選択することによって、調節できる。
電極触媒層をガス拡散層表面上に形成する方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、スプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、電極触媒層のガス拡散層表面上への形成条件は、特に制限されず、上記したような具体的な形成方法によって従来と同様の条件が適用できる。
前記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記カーボン粒子層における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
前記カーボン粒子層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ガス拡散層に撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
ガス拡散層において基材上にカーボン粒子層を形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、溶媒中に分散させることによりスラリーを調製する。次に、前記スラリーを基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。上記方法において、スラリーの調製に使用される溶媒としては、特に制限されない。例えば、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒が好ましく使用できる。
上述したように、本発明のMEAは、製造工程中も高分子電解質と電極触媒との良好な接触状態(高分子電解質と触媒との十分かつ均一な接触)を維持できる。また、本発明に係るカソード触媒層および/またはアノード触媒層は、イオノマーを再凝集させることなく、炭素粒子表面や炭素粒子アグロメレート構造内の細孔に高分散している。このため、本発明の方法によって得られる電解質膜−電極接合体は、反応面積が増大し(触媒利用効率を向上でき)、発電性能および耐久性、特に発電性能に優れる。
ゆえに、本発明のMEAを用いることにより、発電性能及び耐久性にも優れる信頼性の高い燃料電池を提供することができる。したがって、本発明はまた、本発明の電解質膜−電極接合体を用いてなる燃料電池を提供するものである。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。
特に、前記高分子電解質形燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体や触媒金属(Ptなど)の腐食が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例及び比較例において、「部」や「%」などについて特記されていない場合には、質量基準で表される。
実施例1
1.触媒インクの調製
イオノマー分散液 24.3gに、純水27.6g、メタノール(純度99.8%)49.5gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A1)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A1)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B1)を調製した。
こうして得た触媒インク(B1)は、固形分濃度 7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=5/5(質量比:以下、同様))であった。
2.膜−電極接合体の形成
1辺が80mmの正方形で厚さ25μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NRE211CS)の片面に、スプレー塗布法(ノードソン製パルススプレー装置)により触媒インク(B1)を塗布(電極面積:5.0cm×5.0cm)した。これにより、片面に触媒層を塗布した電解質膜(塗布シート(C1))を得た。なお、上記スプレー塗布は、吸着板温度70℃であり、この操作を5回繰り返し、電解質膜上の塗布層のPt量が0.4mg/cmとなるように調整した。
次に、この塗布シート(C1)を、空気雰囲気下80℃で30分間乾燥し、残留溶媒を除去した。この際、アノード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであり、アノード触媒層の厚みは、15μmであった。
次に、上記アノード触媒層が形成された塗布シート(C1)の電極面のもう一方に上記アノード触媒層の形成と同様にして触媒インク(B1)を塗布し、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した積層体を得た。この積層体を、空気雰囲気下80℃で30分間乾燥し、残留溶媒を除去して、電解質膜(膜−電極接合体(D1))を得た。この際、カソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであり、カソード触媒層の厚みは、15μmであった。
3.膜−電極接合体の性能評価
得られた膜−電極接合体の性能を以下のように評価した。
上記膜−電極接合体(D1)の両面側(電極面積:5.0cm×5.0cm、大きさ6.0cm×5.5cm)に、ガス拡散層として市販のミル層付きカーボンペーパを各々配置した。次に、ガス流路(ストレート流路)付きガスセパレータを各々配置し、さらに金メッキしたステンレス製集電板により挟持して、評価用単位セルとした。なお、上記カーボンペーパは、SGLカーボン社製24BCであり、大きさ6.0cm×5.5cmに切り出し、カーボンペーパ厚さ200μmである。
評価用単位セルの、アノード側に燃料として水素を、カソード側には酸化剤として空気を、それぞれ毎分4Lの流量で供給した。両ガスとも供給圧力は大気圧とした。水素は相対湿度40%(58.9℃)、空気は相対湿度70%(71.4℃)、セル温度は80℃に設定した。また、水素利用率は67%、空気利用率は40%とした。
この条件下で、電流密度1.0A/cmで発電させた際のセル電圧を初期セル電圧(V@1A・CM−2)として測定した。
4.膜−電極接合体の特性評価
両ガスとも供給圧力は大気圧とし、アノード側に水素を供給し、カソード側には窒素を供給した。水素および窒素の流量はそれぞれ500NmL/minとした。アノード側およびカソード側の相対湿度はそれぞれ100%、セル温度は30℃に設定し、電位を0.04〜0.9Vまで操作して、電流を取り出しCV曲線を得た。このCV曲線から電気化学的な触媒表面積(ECA(m・g−1))を算出した。
また、アノード側およびカソード側の相対湿度を30〜100%、セル温度を80℃に設定し、各種特性を評価した。具体的には、下記方法によって、アノード触媒層及びカソード触媒層の相対湿度(RHa/RHc)が100%/100%(R)及び40%/40%(R)である際のイオノマー抵抗値を測定した。
上記2.で作製した膜−電極接合体の両面に、ガス流路付きガスセパレータを配置し所定の面圧になるように締め付け評価用単セルとした。ここで、相対湿度40%(80℃)または相対湿度100%(80℃)、セル温度80℃に設定した。
内部抵抗測定は、ポテンショガルバノスタット(北斗電工株式会社製、HZ−3000)を使用し、印加電圧を340mV、電位振幅10mVとし、周波数15kHzから0.1Hzへと徐々に低周波側に挿引していった。ここで、インピーダンス測定装置(株式会社エヌエフ回路設計ブロック社製、FRA5020)を用いて各周波数における交流インピーダンスをナイキストプロットした。具体的には、図2に示す等価回路を仮定し、等価回路の交流インピーダンスの測定により得られた結果をナイキストプロット(X軸に実数部の抵抗(Zreal)、Y軸に虚数部の抵抗(−Zimag)をプロットした図)した。なお、図2において、電解質膜の抵抗をRmeとし、電極触媒層中の電解質抵抗をRioとし、電荷移動抵抗をRelとし、コンデンサー成分をCとし、コンデンサー成分Cは均一と仮定した。
ナイキストプロットの結果を図3に示す。交流インピーダンスの測定結果において、得られた曲線とX軸との交点を電解質膜抵抗(Rme)とした。低周波領域で直線近似した直線とX軸との交点と、電解質膜抵抗(Rme)と、の差を3で除して算出することによりカソード側電極触媒層の電解質抵抗(Rio)を求めた。
5.触媒層空孔構造の評価
触媒層空孔構造(最頻空孔径、空孔容積)の評価は水銀圧入法により実施した。上記1.の触媒インク調製に記載の手順で得られた触媒インクを、80mm四方の正方形で厚さ25μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NRE211CS)の両面に、それぞれ0.4mg/cmとなるように塗布・乾燥した。塗布条件は、2.膜−電極接合体形成に記載の手順とした。得られた触媒層−電解質膜接合体を20cm(5cm×4cm)の大きさに切り出し、これを測定用セル内に導入した。
水銀圧入法の測定は、セル容積約6cm、ステム容積約0.39cmのオートポアIV 9510型(マイクロメリティクス製)を用いて実施し、10nm〜400μmの空孔径範囲の最頻空孔径、積算空孔容積および微分空孔容積を得た。なお、本明細書における「空孔容積」は、本手法で求められる「積算空孔容積」である。
本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。下記表1において、メタノールの分子式は、CHOHであり、エタノールの分子式は、CHCHOHであり、1−プロパノールの分子式は、CH(CHOHであり、2−プロパノールの分子式は、CHCHOHCHである。
また、本実施例では、上記4.において、相対湿度 40%、70%及び100%でのイオノマー抵抗値を同様にして測定した。その結果を図4に示す。なお、図4中、黒丸が本実施例1の結果である。
実施例2
イオノマー分散液 24.3gに、純水57.1g、メタノール(純度:99.8%)19.8gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A2)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A2)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B2)を調製した。
こうして得た触媒インク(B2)は、固形分濃度=7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=8/2)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B2)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D2))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D2)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
実施例3
イオノマー分散液 24.3gに、純水37.4g、メタノール(純度:99.8%)39.6gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A3)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A3)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B3)を調製した。
こうして得た触媒インク(B3)は、固形分濃度=7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=6/4)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B3)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D3))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D3)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
実施例4
イオノマー分散液 24.3gに、純水17.6g、メタノール(純度:99.8%)59.4gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A4)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A4)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B4)を調製した。
こうして得た触媒インク(B4)は、固形分濃度=7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=4/6)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B4)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D4))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D4)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
実施例5
イオノマー分散液 24.3gに、メタノール(純度99.8%)87.5gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A5)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A5)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B5)を調製した。
こうして得た触媒インク(B5)は、固形分濃度=6.4質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=2/8)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B5)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D5))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D5)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
実施例6〜10
実施例1〜5において、メタノールの代わりにエタノールを用いた以外は、それぞれ、実施例1〜5に準じて、実施例6〜10の膜−電極接合体(膜−電極接合体(D6)〜(D10))を、それぞれ、得た。この際、膜−電極接合体(D6)〜(D10)は、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜の構造を有し、アノード触媒層及びカソード触媒層のPt担持量は、いずれも0.4mg−Pt/cmであった。
また、得られた膜−電極接合体(D6)〜(D10)の性能及び特性を、それぞれ、実施例1 3.〜5.と同様にして評価した。本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
実施例11〜15
実施例1〜5において、メタノールの代わりに1−プロパノールを用いた以外は、それぞれ、実施例1〜5に準じて、実施例11〜15の膜−電極接合体(膜−電極接合体(D11)〜(D15))を、それぞれ、得た。この際、膜−電極接合体(D11)〜(D15)は、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜の構造を有し、アノード触媒層及びカソード触媒層のPt担持量は、いずれも0.4mg−Pt/cmであった。
また、得られた膜−電極接合体(D11)〜(D15)の性能及び特性を、それぞれ、実施例1 3.〜5.と同様にして評価した。本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
また、実施例13では、上記実施例1と同様にして、相対湿度 40%、70%及び100%でのイオノマー抵抗値を同様にして測定した。その結果を図4に示す。なお、図4中、黒四角が本実施例13の結果である。
実施例16〜20
実施例1〜5において、メタノールの代わりに2−プロパノールを用いた以外は、それぞれ、実施例1〜5に準じて、実施例16〜20の膜−電極接合体(膜−電極接合体(D16)〜(D20))を、それぞれ、得た。この際、膜−電極接合体(D16)〜(D20)は、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜の構造を有し、アノード触媒層及びカソード触媒層のPt担持量は、いずれも0.4mg−Pt/cmであった。
また、得られた膜−電極接合体(D16)〜(D20)の性能及び特性を、それぞれ、実施例1 3.〜5.と同様にして評価した。本実施例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表1に示す。
比較例1
イオノマー分散液 24.3gに、純水84.3gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A41)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A41)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B41)を調製した。
こうして得た触媒インク(B41)は、固形分濃度 7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B41)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D41))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D41)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本比較例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表2に示す。下記表2において、グリセリンの分子式は、HOCHCHOHCHOHであり、プロピレングリコールの分子式は、CHCH(OH)CHOHである。
また、本比較例では、上記実施例1と同様にして、相対湿度 40%、70%、及び100%でのイオノマー抵抗値を同様にして測定した。その結果を図4に示す。なお、図4中、黒三角が本比較例1の結果である。
図4の結果から、本発明に係るMEAは、有機溶媒を使用せずに水のみでイオノマー分散液を調製した比較例1に比して、有意に低いイオノマー抵抗を発揮することが示される。
比較例2
イオノマー分散液 12.1gに、純水96.5gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A42)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水及び1−プロパノールにイオノマーが分散した分散液(Dupont製(DE2020))である。また、上記イオノマー分散液は、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量):20質量%、水含有率:35質量%、1−プロパノール含有率:45質量%である。
このイオノマー分散液(A42)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B42)を調製した。
こうして得た触媒インク(B42)は、固形分濃度 7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/1−プロパノール=9.5/0.5)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B42)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D42))を得た。さらに、実施例1 3.〜5.と同様にして、得られた膜−電極接合体(D42)の性能及び特性を評価した。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
本比較例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表2に示す。
比較例3
イオノマー分散液 24.3gに、グリセリン(沸点:290℃)84.3gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A43)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
このイオノマー分散液(A43)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B43)を調製した。
こうして得た触媒インク(B43)は、固形分濃度 7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=1/1、溶媒組成(HO/グリセリン=3.4/7.6)であった。
この触媒インク(B43)をポリテトラフルオロエチレンシートの片面にスクリーン印刷法によって、所望の量の触媒インクを塗布した後、空気雰囲気下オーブンで、130℃で30分間乾燥させた。この操作を4回繰り返し、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層のPt量が0.4mg/cmとなるように調整した。触媒層のサイズは、5cm×5cmとなるようにした。こうして触媒塗布シート(C43)を得た。
固体高分子電解質膜の両面に、先に作製したポリテトラフルオロエチレンシート上に触媒層を形成した塗布シート(アノード側とカソード側に、それぞれ触媒塗布シート(C43))とを重ね合わせた。なお、上記固体高分子電解質膜は、DuPont社製、NAFION NRE211CSであり、80mm四方の正方形で厚さ25μmの固体高分子電解質膜である。また、上記工程において、アノード触媒層、固体高分子電解質膜、カソード触媒層を、この順序で積層させた。その後、130℃、2.0MPaで、10分間ホットプレスし、ポリテトラフルオロエチレンシートのみを剥がして触媒層−電解質膜接合体(膜−電極接合体(D43))を得た。
得られた触媒層−電解質膜接合体(D43)を20cm(5cm×4cm)の大きさに切り出し、これを評価用単位セルとするあるいは測定用セル内に導入する以外は、実施例1 3.〜5.と同様にして、膜−電極接合体(D43)の性能及び特性を評価した。
本比較例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表2に示す。
本比較例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表2に示す。
比較例4
イオノマー分散液 12.1gに、純水17.6g、プロピレングリコール(沸点187℃)27.4gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A44)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製(DE−2020))であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量):20質量%、水含有率:35質量%、1−プロパノール含有率:45質量%である。
このイオノマー分散液(A44)に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率:46質量%)5gを加えて混合した。この混合物を、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B44)を調製した。
こうして得た触媒インク(B44)は、固形分濃度 12質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/1−プロパノール/プロピレングリコール=4/1/5)であった。
この触媒インク(B44)をポリテトラフルオロエチレンシートの片面にスクリーン印刷法によって、所望の量の触媒インクを塗布した後、空気雰囲気下オーブンで、130℃で30分間乾燥させた。この操作を4回繰り返し、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層のPt量が0.4mg/cmとなるように調整した。触媒層のサイズは、5cm×5cmとなるようにした。こうして触媒塗布シート(C44)を得た。
固体高分子電解質膜の両面に、先に作製したポリテトラフルオロエチレンシート上に触媒層を形成した塗布シート(アノード側とカソード側に、それぞれ触媒塗布シート(C44))とを重ね合わせた。なお、上記固体高分子電解質膜は、DuPont社製、NAFION NRE211CSであり、80mm四方の正方形で厚さ25μmの固体高分子電解質膜である。また、上記工程において、アノード触媒層、固体高分子電解質膜、カソード触媒層を、この順序で積層させた。その後、130℃、2.0MPaで、10分間ホットプレスし、ポリテトラフルオロエチレンシートのみを剥がして触媒層−電解質膜接合体(膜−電極接合体(D44))を得た。
得られた触媒層−電解質膜接合体(D44)を20cm(5cm×4cm)の大きさに切り出し、これを評価用単位セルとするあるいは測定用セル内に導入する以外は、実施例1 3.〜5.と同様にして、膜−電極接合体(D44)の性能及び特性を評価した。
本比較例のアノード及びカソード触媒層の組成ならびに上記性能試験の結果を下記表2に示す。
Figure 2009218006
Figure 2009218006
上記表1及び表2から、本発明に係るMEAは、下記効果を有する:
(i)本発明に係るMEAは、比較例1〜4のMEAに比して、触媒表面積が有意に大きく、初期セル電圧もまた有意に向上しうる;
(ii)本発明に係るMEAによると、イオノマー抵抗を、相対湿度が100%のみならず、40%という低加湿条件下であっても、有意に低く抑えることができる。これは、触媒インク作製中で得られた高分子電解質と電極触媒との十分かつ均一な接触状態を、触媒層の形成終了まで十分維持し、さらに低温で触媒を形成しているため、電解質の特性(含水性やプロトン導電性)の低下を抑制できたためと考えられる。
ゆえに、本発明に係るMEAは、イオノマー抵抗に起因する抵抗損失を小さく抑えることができ、発電性能に優れる。
また、上記表1及び2から、上記効果は、全体的にみると、メタノール及びエタノールを有機溶媒として使用した場合に最も有効に示され、2−プロパノール及び1−プロパノールの順である。
実施例21〜30
下記表2に示されるように、上記実施例に記載のアノード触媒層及びカソード触媒層の組み合わせを変更して、膜−電極接合体(D21)〜(D30)を得た。具体的には、アノード触媒層に実施例1の触媒層を、カソード触媒層に実施例6、11、16の触媒層を、それぞれ、配置した膜−電極接合体(D21)〜(D23)を得た。アノード触媒層に実施例6の触媒層を、カソード触媒層に実施例2、12、17の触媒層を、それぞれ、配置した膜−電極接合体(D24)〜(D26)を得た。アノード触媒層に実施例11の触媒層を、カソード触媒層に実施例5、10、20の触媒層を、それぞれ、配置した膜−電極接合体(D27)〜(D29)を得た。アノード触媒層に実施例16の触媒層をカソード触媒層に実施例5の触媒層を配置した膜−電極接合体(D30)を得た。
このようにして得られた膜−電極接合体(D21)〜(D30)の性能及び特性を、それぞれ、実施例1 3.〜5.と同様にして評価し、その結果を下記表3に示す。
Figure 2009218006
上記表3の結果から、本発明に係るMEAは、高い初期セル電圧を示し、相対湿度が100%のみならず、40%という低加湿条件下であっても、低いイオノマー抵抗を示すことが分かる。これは、触媒インク作製中で得られた高分子電解質と電極触媒との十分かつ均一な接触状態を、触媒層の形成終了まで十分維持し、さらに低温で触媒を形成しているため、電解質の特性(含水性やプロトン導電性)の低下を抑制できたためと考えられる。ゆえに、本発明に係るMEAは、イオノマー抵抗に起因する抵抗損失を小さく抑えることができ、発電性能に優れることが考察される。
実施例31
イオノマー分散液 24.3gに、メタノール(純度99.8%)49.5gを加えて、スターラーで攪拌混合した後、イオノマー分散液(A31)を調製した。なお、上記イオノマー分散液は、水にイオノマーが分散した分散液(Dupont製DE−1020)であり、イオン交換容量が1.0mmol/g(EW=1,000)、電解質含有率(固形分量)が10質量%、水含有率が90質量%である。
別途、純水27.5gにカーボンブラック(ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m/g)に白金を担持した電極触媒(白金含有率46質量%)5gを加えて混合した。これに、イオノマー分散液(A31)を加えて混合し、サンドミル(ビーズ径1.5mm、1,500回転、15分間)を用いて混合分散し、減圧脱泡操作を加えることによって、触媒インク(B31)を調製した。
こうして得た触媒インク(B31)は、固形分濃度=7質量%、Ionomer/Carbon(I/C)=0.9/1、溶媒組成(HO/MeOH=5/5)であった。
以下では、実施例1 2.において、触媒インクとして触媒インク(B31)を使用する以外は、実施例1 2.と同様にして、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜(膜−電極接合体(D31))を得た。この際、アノード触媒層およびカソード触媒層のPt担持量は、0.4mg−Pt/cmであった。
このようにして得られた膜−電極接合体(D31)の性能及び特性を、実施例1 3.〜5.と同様にして評価し、その結果を下記表4に示す。
実施例32〜34
実施例31において、メタノールの代わりにエタノール、1−プロパノール、2−プロパノールを用いた以外は、それぞれ、実施例31に準じて、実施例32〜34の膜−電極接合体(膜−電極接合体(D32)〜(D34))を、それぞれ、得た。この際、膜−電極接合体(D32)〜(D34)は、両面に触媒層(電極面積:5.0cm×5.0cm)を塗布した電解質膜の構造を有し、アノード触媒層及びカソード触媒層のPt担持量は、いずれも0.4mg−Pt/cmであった。
また、得られた膜−電極接合体(D32)〜(D34)の性能及び特性を、それぞれ、実施例1 3.〜5.と同様にして評価し、その結果を下記表4に示す。
Figure 2009218006
上記表4の結果から、本発明に係るMEAは、高い初期セル電圧を示し、相対湿度が100%のみならず、40%という低加湿条件下であっても、低いイオノマー抵抗を示すことが分かる。これは、触媒インク作製中で得られた高分子電解質と電極触媒との十分かつ均一な接触状態を、触媒層の形成終了まで十分維持し、さらに低温で触媒を形成しているため、電解質の特性(含水性やプロトン導電性)の低下を抑制できたためと考えられる。ゆえに、本発明に係るMEAは、イオノマー抵抗に起因する抵抗損失を小さく抑えることができ、発電性能に優れることが考察される。
本発明の好ましい水−有機溶媒混合物の溶媒組成と沸点との関係を示すグラフである。 実施例1 4.で作製したセルの等価回路図を示す。 実施例1 4.で作製したセルの交流インピーダンス測定結果を示す。 実施例1及び14並びに比較例1において、相対湿度 40%、70%及び100%でのイオノマー抵抗値を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に順次配置された、カソード触媒層およびカソード側ガス拡散層と、前記高分子電解質膜の他方の側に順次配置された、アノード触媒層およびアノード側ガス拡散層と、を有する電解質膜−電極接合体の製造方法であって、
    前記カソード触媒層またはアノード触媒層は、(i)水に分散されたプロトン伝導性高分子電解質と、貴金属を担持した導電性カーボンと、有機溶媒とを混合して、触媒インクを作製し、(ii)前記高分子電解質膜の表面に前記(i)で作製された触媒インクを塗布し、さらに(iii)前記高分子電解質膜の表面に塗布した触媒インクを、空気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、90℃以下の温度で、乾燥する工程を有し、
    前記有機溶媒は、水と均一に混合されかつ水−有機溶媒混合物の沸点が水の沸点より低いアルコールである、電解質膜−電極接合体の製造方法。
  2. 前記有機溶媒は、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、1−プロパノール(1−PrOH)及び2−プロパノール(2−PrOH)からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  3. 前記(i)において、水と有機溶媒との混合比(質量比)は、8:2〜2:8である、請求項1または2に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  4. 前記(i)において、前記触媒インクは、
    (i−1)前記プロトン伝導性高分子電解質を水に分散してイオノマー溶液を調製し、前記イオノマー溶液を、貴金属を担持した導電性カーボン粉末と混合した後、水−有機溶媒混合物の沸点が90℃以下になるような溶媒組成になるように、有機溶媒をさらに添加することによって、
    または
    (i−2)前記プロトン伝導性高分子電解質を水に分散してイオノマー溶液を調製し、水−有機溶媒混合物の沸点が90℃以下になるような溶媒組成になるように、前記イオノマー溶液に有機溶媒を添加した後、貴金属を担持した導電性カーボン粉末をさらに混合することによって、
    調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  5. 前記(i)において、前記プロトン伝導性高分子電解質は、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  6. アノード触媒層及びカソード触媒層の相対湿度(RHa/RHc)が40%/40%である際のイオノマー抵抗値が、1000mohm・cm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって製造される電解質膜−電極接合体を用いてなる燃料電池。
  8. 請求項7に記載の燃料電池を搭載した車両。
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