以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
以下の実施形態は、ピストンが往復運動するシリンダ内の空間であって、燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼空間と、前記燃焼空間に接続されて開口する第1の吸気通路及び第2の吸気通路とを備える内燃機関において、前記燃焼空間へ排ガスを再循環させる際には、前記第1の吸気通路から前記燃焼空間へ前記排ガスを導入し、前記第2の吸気通路から前記燃焼空間へ前記燃料及び前記空気を導入して、前記燃焼空間内に、前記排ガスの層と前記燃料及び前記空気が混合した混合気の層とを形成する点に特徴がある。
(実施形態1)
実施形態1は、内燃機関において、1個のシリンダ内の燃焼空間へ接続される第1の吸気通路及び第2の吸気通路へそれぞれ燃料供給手段を設け、仕切り部材によって第1の吸気通路をシリンダの内面側と中心軸側とに仕切り、この仕切り部材によって仕切られたシリンダの内面側における前記第1の吸気通路へ開口する排ガス導入口を設けて、この排ガス導入口から、燃焼空間から排出された燃焼後の混合気である排ガスを、第1の吸気通路へ導入する点に特徴がある。ここで、燃料供給手段から内燃機関の吸気通路へ燃料を供給するということは、内燃機関へ燃料を供給することと同義である。
図1は、実施形態1に係る内燃機関を示す説明図である。図2は、実施形態1に係る内燃機関をシリンダヘッド側から見た状態を示す平面図である。図3は、図2のX−X断面図である。図4は、実施形態1に係る内燃機関をシリンダヘッド側から見た状態を示す平面図である。図5は、実施形態1に係る内燃機関において、排ガス再循環を実行した状態を示す模式図である。実施形態1では、内燃機関1が備える単一の気筒を取り出して説明するが、本発明は多気筒の内燃機関、単気筒の内燃機関を問わずに適用できる。内燃機関1は、ピストン5がシリンダ1Sの内部を往復運動する、いわゆるレシプロ式の内燃機関である。
内燃機関1は、機関ECU(Electronic Control Unit)50によって制御される。内燃機関1のシリンダ1Sは、円筒状の構造体であって、一端部がシリンダヘッド1Hに取り付けられ、他端部がクランクケース1Cに取り付けられる。シリンダ1Sの内面1SWと、ピストン5の頂面と、シリンダヘッド1Hの内面とで囲まれる空間1Bが、内燃機関1へ供給される燃料Fが燃焼する空間となる。この空間1Bを、燃焼空間1Bという。内燃機関1へ供給される燃料Fは、炭化水素を含む燃料であり、例えばガソリンが用いられる。
シリンダ1Sには、ウォータージャケットWJが形成される。内燃機関1の運転中には、ウォータージャケットWJに内燃機関1を冷却するための水(冷却水)が流されて、内燃機関1を冷却する。冷却水の温度は、冷却水温度センサ42によって検出され、機関ECU50に取り込まれ、内燃機関1の制御に用いられる。
シリンダヘッド1Hには、燃料Fの燃焼に供する空気(燃焼用空気)Aを燃焼空間1Bへ導入するための第1の吸気通路である第1吸気ポート4A及び第2の吸気通路である第2吸気ポート4Bが形成される。また、シリンダヘッド1Hには、燃焼空間1Bで燃料Fが燃焼した後の燃焼ガス(排ガス)Exを燃焼空間1Bの外部へ排出する排気通路である排気ポート9が形成される。
第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4B及び排気ポート9は、それぞれ燃焼空間1Bに接続されるとともに、それぞれの一方の端部が燃焼空間1Bに開口して開口部を形成し、他方の端部は、吸気通路である吸気導入通路8に接続される。燃焼空間1Bに開口する第1吸気ポート4Aの開口部4Ao、第2吸気ポート4Bの開口部4Boには、それぞれ第1吸気弁10A、第2吸気弁10Bが配置され、燃焼空間1Bに開口する排気ポート9の開口部9oには排気弁15が配置される。第1吸気弁10A、第2吸気弁10Bは、燃焼空間1Bに開口する第1吸気ポート4Aの開口部4Ao、第2吸気ポート4Bの開口部4Boを開閉し、排気弁15は、燃焼空間1Bに開口する排気ポート9の開口部9oを開閉する。
内燃機関1は、第1吸気ポート4A内へ燃料Fを噴射して内燃機関1へ供給する第1の燃料供給手段として、第1ポート噴射弁2Aを備え、第2吸気ポート4B内へ燃料Fを噴射して内燃機関1へ供給する第2の燃料供給手段として、第2ポート噴射弁2Bを備える。本実施形態において、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bは、シリンダヘッド1Hへ取り付けられる。また、内燃機関1のシリンダヘッド1Hには、燃焼空間1B内に形成される、燃料と空気Aとの混合気に点火する点火手段として、点火プラグ7が取り付けられる。燃焼空間1B内の混合気は、点火プラグ7からの放電によって点火され、燃焼する。このように、内燃機関1は、いわゆる火花点火式の内燃機関である。なお、吸気通路である吸気ポートの本数は2本に限定されるものではなく、燃料供給手段であるポート噴射弁の個数も2個に限定されるものではない。
内燃機関1が備える第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bは、ポート噴射弁用燃料分配管20に取り付けられており、機関ECU50の機関制御部54によって動作が制御される。そして、第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bは、ポート噴射弁用燃料分配管20から燃料が供給されて、内燃機関1の第1吸気ポート4A内の空気A、第2吸気ポート4B内の空気Aへ燃料Fを噴射し、供給する。これによって、燃料Fと空気Aとを十分に混合させた混合気を形成する。
第1吸気ポート4A、第2吸気ポート4Bと接続される吸気導入通路8には、スロットル弁14が取り付けられる。スロットル弁14は、弁体14Vと、弁体14Vに取り付けられてこれを動作させるスロットル弁用アクチュエータ14Aとで構成される。弁体14Vの開度を調整することにより、吸気通路の通路断面積が変化して、燃焼空間1Bへ導入される空気Aの量が調整される。スロットル弁14の弁体14Vよりも空気Aの流れ方向の上流側には、エアフローセンサ40が配置されており、吸気通路を流れる空気Aの流量(質量流量)、すなわち、燃焼空間1Bへ流入する空気Aの流量が計測される。エアフローセンサ40が計測した空気Aの流量は、機関ECU50に取り込まれ、内燃機関1の制御に用いられる。エアフローセンサ40よりも空気Aの流れ方向の上流側には、エアクリーナー70が配置されており、吸気導入通路8へ流入し、内燃機関1の燃焼空間1Bへ流入する空気Aから塵やごみ等が取り除かれる。
第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bから第1吸気ポート4A内、第2吸気ポート4B内へ供給される燃料Fは、燃料タンク13内へ貯留される。燃料タンク13の内部にはフィードポンプ13Pが配置されている。フィードポンプ13Pとポート噴射弁用燃料分配管20とは、燃料配管18で接続されており、フィードポンプ13Pが吐出する燃料タンク13内の燃料Fは、燃料配管18を通ってポート噴射弁用燃料分配管20へ送られる。フィードポンプ13Pの動作は、機関ECU50の機関制御部54によって制御される。
第1吸気弁10A、第2吸気弁10Bが開き、ピストン5が下死点へ向かうと、第1吸気ポート4Aの開口部4Ao、第2吸気ポート4Bの開口部4Boから燃焼空間1Bへ向かって、空気Aと燃料Fとの混合気が流入する(吸気行程)。ここで、燃料Fは、吸気行程の前に、第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bから第1吸気ポート4A、第2吸気ポート4Bへ供給されたものである。ピストン5が下死点を通過し、第1吸気弁10A、第2吸気弁10B及び排気弁15が閉じた状態でピストン5が上死点(すなわちシリンダヘッド1Hの方向)へ向かうと、燃焼空間1B内に形成される、燃料Fと空気Aとの混合気が圧縮される(圧縮行程)。
ピストン5が上死点に到達する前に、点火プラグ7が放電して圧縮された前記混合気へ点火する。これによって、燃焼空間1B内の前記混合気が燃焼する。ここで、点火プラグ7の点火タイミングは、機関ECU50の機関制御部54によって制御される。
前記混合気が燃焼したときの燃焼圧力によりピストン5が下死点へ向かって移動する(膨張行程)。下死点を通過したピストン5は、再び上死点へ向かって移動するが、このとき排気弁15が開いて、燃焼空間1B内の燃焼ガス(排ガスEx)が開口部9oを通って排気ポート9へ排出される(排気行程)。これによって、内燃機関の1サイクルが終了する。なお、例えば、排気行程中に第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bから第1吸気ポート4A、第2吸気ポート4B内へ、次のサイクルの燃料Fが供給される。
ピストン5が上死点の近傍にくると、第1吸気弁10A、第2吸気弁10Bが開き、排気弁15は閉じて、内燃機関1の次のサイクルが開始する。このように、内燃機関1は、ピストン5がシリンダ1S内を2往復する間に1サイクルが終了する、4ストローク1サイクルの内燃機関である。ピストン5の往復運動は、コネクティングロッド3を介してクランクケース1C内のクランクシャフト6へ伝達され、回転運動へ変換される。
クランクシャフト6の回転角度は、クランク角センサ41によって検出される。機関ECU50の機関制御部54は、クランク角センサ41が検出したクランクシャフト6の回転角度を取り込み、これに基づいてクランクシャフト6の回転数(機関回転数)を演算する。ここで、機関回転数は、単位時間あたりにおけるクランクシャフト6の回転数である。
排ガスExは、排気ポート9に接続される排気通路9Mを通って浄化触媒へ導かれ、ここで浄化されてから大気中へ排出される。図1、図2に示すように、排気通路9Mと第1吸気ポート4Aとは、排ガス再循環通路16で接続される。排気通路9Mには排ガス入口16Iが開口する。排ガス入口16Iは、排ガス再循環通路16が排気通路9Mに開口する開口部であり、排気通路9M内の排ガスを排ガス再循環通路16へ導入する。
排ガス再循環通路16には、機関ECU50で制御される弁装置17が設けられる。弁装置17は、排ガス再循環通路16の通路断面積(排ガス再循環通路16を流れる排ガスExの流れ方向に直交する断面の面積)を変更する機能を有する。これによって、排気通路9Mと第1吸気ポート4Aとを排ガス再循環通路16で連通したり、排気通路9Mと第1吸気ポート4Aとの連通を遮断したりする。その結果、排気通路9Mの排ガスExを、第1吸気ポート4Aへ導入したり、第1吸気ポート4Aへの排ガスExの導入を停止したりすることができる。
弁装置17は、ON−OFF弁を用いたり、流量調整弁を用いたりすることができる。弁装置17にON−OFF弁を用いる場合、開時間と閉時間との比率を変更することにより、排ガス再循環通路16を流れる排ガスExの量を調整できる。弁装置17に流量調整弁を用いる場合、弁装置17の開度を調整することにより、すなわち、弁装置17によって排ガス再循環通路16の通路断面積を変更することによって、排ガス再循環通路16を流れる排ガスExの量を調整できる。
内燃機関1の運転中に排ガス再循環(以下EGRという)を実行する際には弁装置17が開かれ、排ガス再循環通路16は、第1吸気ポート4Aを介して燃焼空間1Bから排出された排ガスExを燃焼空間1Bへ戻す。そして、排ガスExが燃焼空間1Bに存在する状態で、燃料Fと空気Aとの混合気を燃焼させる。これによって、窒素酸化物の発生を抑制し、また燃料消費量を低減する。
図2、図3に示すように、第1吸気ポート4Aの内部には、仕切り部材30が設けられる。仕切り部材30は、第1吸気ポート4Aをシリンダ1Sの内面1SW側とシリンダ1Sの中心軸Z側とに仕切る。第1ポート噴射弁2Aは、仕切り部材30によって仕切られた、シリンダ1Sの中心軸Z側における第1吸気ポート4Aに燃料Fを供給する。仕切り部材30によって仕切られた、シリンダ1Sの中心軸Z側における第1吸気ポート4Aを、空気通路32という。
仕切り部材30によって仕切られた、シリンダ1Sの内面1SW側における第1吸気ポート4Aには、排ガス導入口16Eが開口する。排ガス導入口16Eは、排ガス再循環通路16が第1吸気ポート4Aに開口する開口部であり、EGR時においては、排ガス再循環通路16を通過した排ガスExを、第1吸気ポート4Aへ導入する。ここで、仕切り部材30と、シリンダ1Sの内面1SW側における第1吸気ポート4Aとで囲まれる空間を、空気/排ガス通路31という。
空気/排ガス通路31の上流側(すなわち、第1吸気ポート4内を流れる空気Aの流れ方向上流側)は、空気/排ガス通路入口31iが開口している。また、空気/排ガス通路入口31iの上流側には、通路切換手段である通路切換弁19が設けられている。通路切換弁19は、図1に示す通路切換弁駆動用アクチュエータ19Aで駆動されて、第1吸気ポート4Aを開閉する。通路切換弁駆動用アクチュエータ19Aは、機関ECU50で制御される。
通路切換弁19が閉じられると、第1吸気ポート4Aが遮断され、通路切換弁19よりも下流、すなわち燃焼空間1Bへ空気Aは流れない。この場合、排ガスExは、空気/排ガス通路31を通って燃焼空間1Bへ流れる。通路切換弁19が開かれると、通路切換弁19の上流側と下流側とが通じるので、通路切換弁19よりも下流に空気Aが流れ、燃焼空間1Bへ空気Aが流入する。この場合、空気Aは、空気/排ガス通路31及び空気通路32、すなわち、第1吸気ポート4A全体を通って燃焼空間1Bへ流れる。
本実施形態においては、EGRを実行する場合としない場合とで、通路切換弁19の開又は閉を切り替える。EGRを実行しない場合、図2に示すように、通路切換弁19は開となり、第1吸気ポート4A内全体、すなわち、空気/排ガス通路31及び空気通路32の両方を空気Aが流れる。この場合、空気Aが流れる際の抵抗をできるだけ低減するため、通路切換弁19が空気Aの流れ方向と平行になるようにすることが好ましい。
本実施形態でEGRを実行しない場合、図2に示すように、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bの両方から燃焼空間1Bへ空気Aを導入する。そして、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方で、内燃機関1へ燃料Fを供給する。この場合、図2に示すように、第1吸気ポート4Aの燃料噴射孔2o及び第2吸気ポート4Bの燃料噴射孔2oから燃料噴霧Fmが噴射される。
EGRを実行する場合、図4に示すように、通路切換弁19は閉じられて、通路切換弁19よりも下流側には空気Aは流れない状態となる。この状態で弁装置17が開かれると、排気通路9Mの排ガスExは、排ガス再循環通路16を通り、排ガス導入口16Eから空気/排ガス通路31へ流入する。上述したように、空気/排ガス通路31は、第1吸気ポート4Aのシリンダ1Sの内面1SW側に形成されている。したがって、空気/排ガス通路31を流れる排ガスExは、図2に示すように、第1吸気弁10Aと第1吸気ポート4Aの開口部4Ao(図1)との間から燃焼空間1B内へ流入し、シリンダ1Sの内面1SWに沿って流れる。
本実施形態でEGRを実行する場合、図4に示すように、第1吸気ポート4Aの空気/排ガス通路31から排ガスExを燃焼空間1Bへ導入し、第2吸気ポート4Bから空気Aを燃焼空間1Bへ導入する。そして、第1ポート噴射弁2Aの動作を停止させ、第2ポート噴射弁2Bのみを用いて内燃機関1へ燃料Fを供給する。この場合、図4に示すように、第2吸気ポート4Bの燃料噴射孔2oからのみ、燃料噴霧Fmが噴射される。したがって、本実施形態において、EGRを実行する場合には、EGRを実行しない場合と比較して、第2ポート噴射弁2Bからはおよそ2倍の燃料Fが供給される。
本実施形態においてEGRを実行すると、図4、図5に示すように、空気/排ガス通路31内の排ガスExは、シリンダ1Sの内面1SWに沿って流れて(図5の矢印R方向)、シリンダ1Sの内面1SWの近傍に排ガスExの層(排ガス層)Ex_Rを形成する。そして、第2吸気ポート4Bからは、第2ポート噴射弁2Bから供給された燃料Fと第2吸気ポート4Bを流れる空気Aとの混合気が燃焼空間1B内へ流入し、図5に示すように、排ガスExの層が形成されていないシリンダ1S内の中央部分に、混合気の層(混合気層)Gm_Rが形成される。
本実施形態では、EGR時においては、図5に示すように、シリンダ1Sの内面1SWの近傍に排ガス層Ex_Rを形成し、その内側に混合気層Gm_Rを形成した状態で、混合気を燃焼させる。これによって、良好な燃焼状態が得られる。また、本実施形態では、シリンダ1Sの内面1SWの近傍に存在する排ガス層Ex_Rによる断熱効果が得られるので、冷却損失が低減され、また、シリンダ1Sの内面1SWの近傍での消炎が抑制される。その結果、燃料消費が抑制されるとともに、未燃成分が低減される。ここで、冷却損失とは、混合気の燃焼により発生する燃焼ガスがシリンダ1Sの内面1SWに接触して、燃焼ガスの熱がシリンダ1Sへ奪われることをいう。
内燃機関1は、図4に示すように、第1ポート噴射弁2Aの燃料噴射孔2oが、空気通路32へ開口している。EGRを実行する場合、排ガスExは、空気/排ガス通路31を通過するので、第1ポート噴射弁2Aの燃料噴射孔2oと排ガスExとが直接接触することを回避できる。これによって、第1ポート噴射弁2Aの燃料噴射孔2oへカーボンや燃焼かすが堆積することを抑制できる。
EGRを実行する場合、空気/排ガス通路入口31iから空気/排ガス通路31内の排ガスExが漏れると、シリンダ1Sの内面1SWに沿って流れる排ガスExの量が低減し、排ガス層Ex_Rによる断熱効果が低下するおそれがある。このため、通路切換弁19を閉じたときに、通路切換弁19によって空気/排ガス通路入口31iが閉じられるようにすることが好ましい。これによって、排ガス層Ex_Rによる断熱効果が低下するおそれを低減できる。
第2ポート噴射弁2Bから燃料Fを供給する場合、第2吸気弁10Bの中心、すなわちステム11に向かって燃料噴霧Fmを形成すると、第2吸気弁10Bの傘部12で燃料噴霧Fmが分散され、シリンダ1Sの内面1SWの近傍に形成される排ガス層Ex_Rにも燃料Fが拡散する。排ガス層Ex_Rは燃焼に供する酸素が少ないため、排ガス層Ex_Rに拡散した燃料Fは燃焼せずに燃焼空間1Bから排出される。その結果、未燃のHCの増加、燃料消費量の増加といった問題が発生することがある。
このため、第2ポート噴射弁2Bから燃料Fを供給する場合、図4に示すように、第2ポート噴射弁2Bから供給される燃料Fの燃料噴霧Fmを、シリンダ1Sの中心軸Zに向けることが好ましい。すなわち、第2ポート噴射弁2Bから供給される燃料Fの燃料噴霧Fmを第1ポート噴射弁2A側に偏向させることが好ましい。より具体的には、第1吸気弁10Aのステム11と第2吸気弁10Bのステム11との間に向かって燃料噴霧Fmを形成する。これにより、シリンダ1S内における混合気層Gm_Rは、図4に示すようにシリンダ1Sの中心軸Zの周囲に形成されるので、シリンダ1Sの内面1SWの近傍に形成される排ガス層Ex_Rへの燃料Fの拡散を抑制できる。その結果、燃焼に供されない燃料Fの量を低減できるので、未燃のHCの増加及び燃料消費量を抑制できる。
少なくとも第2ポート噴射弁2Bによって形成される燃料噴霧Fmが、シリンダ1Sの中心軸Zに向いていればよい。しかし、EGRを実行しない場合においてシリンダ1S内に形成される混合気の分布を考慮すると、図2に示すように、第1ポート噴射弁2Aによって形成される燃料噴霧Fmも、シリンダ1Sの中心軸Zに向いていることが好ましい。これによって、EGRを実行しない場合においても、図4に示すようにシリンダ1Sの中心軸Zの周囲に混合気層を形成できるので、良好な燃焼が実現できる。また、シリンダ1Sの内面1SWに付着する燃料Fの量も低減できるので、未燃のHCの増加及び燃料消費量を抑制でき、また、内燃機関1の摺動部を潤滑する潤滑油の燃料希釈も抑制できる。
図1、図5に示すように、内燃機関1のピストン5の頂部5Tは、凸形状に形成される。これによって、シリンダ1Sの内面1SWの排ガス層Ex_Rを保持させ、排ガス層Ex_Rと混合気層Gm_Rとの混合を抑制する。その結果、燃焼に供されない燃料Fの量を低減できるので、未燃のHCの増加及び燃料消費量を抑制できる。
上述した例では、通路切換弁19を用いるが、通路切換弁19は必ずしも用いる必要はない。第1吸気ポート4Aに通路切換弁19を設けず、EGR時には弁装置17の操作のみで空気/排ガス通路入口31iへ排ガスExを導入し、燃焼空間1Bへ排ガスExを流入させてもよい。このようにしても、シリンダ1Sの内面1SWに沿った排ガス層Ex_Rを形成できる。なお、通路切換弁19を用いた方が、シリンダ1Sの内面1SWに沿った排ガス層Ex_Rを確実に形成できるので、より好ましい。
次に、機関ECU50について説明する。機関ECU50は、入出力部50IOと、処理部50Pと、内燃機関1の制御に用いる各種マップ等を格納する記憶部50Mとを有する。入出力部50IOには、エアフローセンサ40、クランク角センサ41、冷却水温度センサ42、アクセル開度センサ43、第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2B、点火プラグ7、フィードポンプ13P、スロットル弁用アクチュエータ14A、通路切換弁駆動用アクチュエータ19Aが接続される。そして、入出力部50IOは、エアフローセンサ40やクランク角センサ41等からの入力信号や、第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bや通路切換弁駆動用アクチュエータ19A等への出力信号の入出力を行う。
処理部50Pは、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)により構成されている。処理部50Pは、制御条件判定部51と、EGR制御部52と、燃料供給制御部53と、機関制御部54とを有している。記憶部50Mは、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。記憶部50Mには、内燃機関1を制御する際に用いる制御プログラムや制御用データマップ等が格納してある。次に、本実施形態に係る内燃機関の運転方法を説明する。この内燃機関の運転方法は、EGRに関するものである。
図6は、実施形態1に係る内燃機関の運転方法の手順を示すフローチャートである。図7は、EGR率が記述されたEGR率設定マップの模式図である。本実施形態に係る内燃機関の運転方法を実行するにあたり、ステップS101において、機関ECU50の処理部50Pを構成する制御条件判定部51は、冷却水温度センサ42から内燃機関1の冷却水温度Twを取得する。
内燃機関1が十分に暖機されていない場合、EGRは実行しないため、次に、ステップS102へ進み、制御条件判定部51は、ステップS101で取得した冷却水温度Twと、冷却水温度閾値Tcとを比較する。冷却水温度閾値Tcは、EGRを実行できる条件にあるか否かを判定するための冷却水温度の閾値である。ステップS102でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がTw≦Twcであると判定した場合、EGRを実行しないで内燃機関1が運転されるので、ステップS103へ進む。
ステップS103において、機関ECU50の処理部50Pを構成するEGR制御部52は、EGR率を0に設定する。Tw≦Twcであるため、EGRを実行できる条件ではないからである。ここで、EGR率は、燃焼空間1B内へ導入される排ガスExの量をQe、燃焼空間1B内へ導入される空気Aの量(吸入空気量)をQaとすると、Qe/(Qe+Qa)×100(%)となる。
次に、ステップS104へ進み、EGR制御部52は、図2に示すように通路切換弁19を開き、ステップS105で、機関ECU50の処理部50Pを構成する燃料供給制御部53は、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方で、内燃機関1へ燃料Fを供給する。ここで、内燃機関1の運転条件によって定まる全燃料供給量をτaとすると、第1ポート噴射弁2A、第2ポート噴射弁2Bは、それぞれτa/2ずつ燃料Fを供給する。機関制御部54は、内燃機関1の運転条件に応じて、適切な点火時期を設定し、点火プラグ7から放電させて燃焼空間1B内の混合気に点火する。
次に、ステップS102へ戻って説明する。ステップS102でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がTw>Twcであると判定した場合、EGRを実行できる条件となる。この場合、ステップS106へ進む。アクセル開度OPが大きい場合、EGRは実行しないため、ステップS106ではアクセル開度OPに基づいてEGRを実行できる条件にあるか否かを判定する。ステップS106において、制御条件判定部51は、アクセル開度センサ43からアクセル開度OPを取得し、予め定めたアクセル開度閾値OPcと比較する。
ステップS106でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がOP≧OPcであると判定した場合、EGRを実行できる条件ではないと判定される。この場合、EGRを実行しないで内燃機関1が運転されるので、ステップS103〜ステップS105が実行される。
ステップS106でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がOP<OPcであると判定した場合、ステップS107へ進む。ステップS107において、制御条件判定部51は、EGRを実行する領域で内燃機関1が運転されているか否かを判定する。EGRを実行する領域は、内燃機関1の負荷率KLと機関回転数Neとで判定される。
図7に示すEGR率設定マップ60は、内燃機関1の負荷率KLと機関回転数Neとに応じてEGR率が記述されている。EGR率が0%よりも外の領域は、EGRを実行しない領域、すなわち、EGR率=0である。制御条件判定部51は、図1に示すクランク角センサ41が検出したクランクシャフト6の信号に基づいて機関回転数Neを求め、エアフローセンサ40が検出した信号から得られる内燃機関1の吸入空気量Qaに基づいて負荷率KLを求める。負荷率KL及び機関回転数Neが得られたら、制御条件判定部51は、図7に示すEGR率設定マップ60に負荷率KL及び機関回転数Neを与えて、EGRを実行する領域で内燃機関1が運転されているか否かを判定する。
ステップS107でNoと判定された場合、EGRを実行する領域で内燃機関1が運転されていないと判定される。例えば、制御条件判定部51がEGR率設定マップ60に負荷率KL及び機関回転数Neを与えた結果、EGR率=0%の結果が得られた場合は、EGRを実行する領域で内燃機関1が運転されていないと判定される。この場合、EGRを実行しないで内燃機関1が運転されるので、ステップS103〜ステップS105が実行される。ステップS107でYesと判定された場合、すなわち、EGRを実行する領域で内燃機関1が運転されていると制御条件判定部51が判定した場合、EGRを実行する。この場合、ステップS108へ進む。
ステップS108において、EGR制御部52は、必要なEGR率を求める。例えば、EGR制御部52は、ステップS107の判定において、内燃機関1の負荷率KL及び機関回転数Neを図7に示すEGR率設定マップ60に与えて得られたEGR率を取得して、必要なEGR率とする。
必要なEGR率が得られたら、ステップS109へ進み、EGR制御部52は、図4に示すように通路切換弁19を閉じる。そして、ステップS110において、燃料供給制御部53は、第1ポート噴射弁2Aの動作を停止し、第2ポート噴射弁2Bのみで内燃機関1へ燃料Fを供給する。ここで、内燃機関1の運転条件によって定まる全燃料供給量をτaとすると、第2ポート噴射弁2Bがτaの燃料Fを供給する。機関制御部54は、内燃機関1の運転条件に応じて、適切な点火時期を設定し、点火プラグ7から放電させて燃焼空間1B内の混合気に点火する。
以上、本実施形態では、EGRを実行する際には、第1吸気ポートから燃焼空間へ排ガスを導入し、第2吸気ポートから燃焼空間へ燃料及び空気を導入して、燃焼空間内へ排ガスの層と、燃料及び空気が混合した混合気の層とを形成する。これを実現するため、本実施形態では、1個のシリンダ内の燃焼空間へ接続される第1吸気ポート、第2吸気ポートへ、それぞれ第1ポート噴射弁、第2ポート噴射弁を設ける。また、仕切り部材によって第1の吸気通路をシリンダの内面側と中心軸側とに仕切り、この仕切り部材によって仕切られたシリンダの内面側における第1吸気ポートへ開口する排ガス導入口を設ける。そして、この排ガス導入口から、燃焼空間から排出された排ガス(燃焼後の混合気)を、第1吸気ポートへ導入する。
これによって、シリンダの内面の近傍には排ガスの層が形成され、その内側に混合気の層が形成され、この状態で混合気に点火され、混合気が燃焼する。その結果、シリンダの内面近傍の排ガスによる断熱作用により、冷却損失の低減、シリンダの内面近傍における消炎の抑制といった効果が得られる。このため、EGRによるNOx低減、ポンプ損失の低減、燃料消費量の低減といった効果が得られることに加え、燃料消費が抑制されるとともに、未燃成分が低減されるという効果が得られる。
また、シリンダの内面の近傍には排ガスの層が形成され、その内側に混合気の層が形成されるので、EGRによって燃焼空間へ導入された排ガスと混合気とが混ざり合うことによる燃焼悪化が抑制される。これによって、良好な燃焼状態が得られるので、燃焼空間へより多くの排ガスを導入しても、燃焼状態が悪化しにくくなる。その結果、燃焼空間へより多くの排ガスを導入して、さらにNOxの低減、ポンプ損失の低減、燃料消費量の低減を図ることができる。
(実施形態2)
実施形態2は、燃焼空間内へタンブル流が形成され、かつ燃焼空間に2本の吸気通路(吸気ポート)が接続されて開口するとともに、それぞれの吸気通路へ燃料供給手段(ポート噴射弁)を備える内燃機関において、燃焼空間へ排ガスを導入するための排ガス導入通路を両方の吸気通路へ設けるとともに、一方の吸気通路には排ガス導入口よりも排ガスの流れ方向上流側に空気通路切換手段を配置する点に特徴がある。
図8は、実施形態2に係る内燃機関を示す説明図である。図9、図10は、実施形態2に係る内燃機関をシリンダヘッド側から見た状態を示す平面図である。図11は、実施形態2に係る内燃機関において、排ガス再循環を実行した状態を示す模式図である。内燃機関1aは、実施形態1で説明した内燃機関1と略同様の構成なので、共通する構成の説明は省略する。図8に示すように、第1吸気弁10A及び第2吸気弁10Bが開いたときには、第1吸気ポート4Aの開口部4Ao、第2吸気ポート4Bの開口部4Boから空気A及び燃料Fが流入する。この空気A及び燃料Fは、燃焼空間1B内でタンブル流(縦渦)Tを形成する。このタンブル流Tは、シリンダヘッド1H側において、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bから排気ポート9へ向かい、ピストン5の頂部5T近傍では、排気ポート9から第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bへ向かう流れである。なお、タンブル流Tの方向はこれに限定されるものではなく、反対方向でもよい。
図9〜図11に示すように、内燃機関1aは、点火手段として第1点火プラグ7A及び第2点火プラグ7Bを備える。第1点火プラグ7Aは、シリンダ1Sの中心軸Zの近傍、すなわちシリンダ1Sの中央部分に配置され、第2点火プラグ7Bは、第2吸気ポート4B側におけるシリンダ1Sの内面1SW側に配置される。
図8〜図10に示すように、排気通路9Mと第1吸気ポート4Aとは、第1排ガス再循環通路16Aで接続される。第1吸気ポート4Aには、第1排ガス導入口16EAが開口する。第1排ガス導入口16EAは、第1排ガス再循環通路16Aが第1吸気ポート4Aに開口する開口部であり、EGR時においては、第1排ガス再循環通路16Aを通過した排ガスExを、第1吸気ポート4Aへ導入する。また、第2吸気ポート4Bには、第2排ガス導入口16EBが開口する。第2排ガス導入口16EBは、第2排ガス再循環通路16Bが第2吸気ポート4Bに開口する開口部であり、EGR時においては、第2排ガス再循環通路16Bを通過した排ガスExを、第2吸気ポート4Bへ導入する。
第1排ガス再循環通路16Aには、機関ECU50で制御される第1弁装置17Aが設けられる。同様に、排気通路9Mと第2吸気ポート4Bとは、第2排ガス再循環通路16Bで接続される。第2排ガス再循環通路16Bには、機関ECU50で制御される第2弁装置17Bが設けられる。第1弁装置17A及び第2弁装置17Bは、実施形態1で説明した弁装置17と同様であり、第1弁装置17A及び第2弁装置17Bは、機関ECU50により制御される。内燃機関1aは、第1弁装置17Aの開度、第2弁装置17Bの開度を調整することにより、第1吸気ポート4Aと第2吸気ポート4Bとの少なくとも一方を介して燃焼空間1B内へ排ガスExを導入できる。
第1排ガス導入口16EAの上流側には、通路切換手段である通路切換弁19aが設けられている。通路切換弁19aは、図8に示す通路切換弁駆動用アクチュエータ19Aaで駆動されて、第1吸気ポート4Aを開閉する。通路切換弁駆動用アクチュエータ19Aaは、機関ECU50で制御される。
通路切換弁19aが閉じられると、第1吸気ポート4Aが遮断され、通路切換弁19aよりも下流、すなわち燃焼空間1Bへ空気Aは流れない。この場合、排ガスExは、第1排ガス導入口16EAから第1吸気ポート4Aを通って燃焼空間1Bへ流れる。通路切換弁19aが開かれると、通路切換弁19aの上流側と下流側とが通じるので、通路切換弁19aよりも下流に空気Aが流れ、燃焼空間1Bへ空気Aが流入する。この場合、空気Aは、第1吸気ポート4A全体を通って燃焼空間1Bへ流れる。
本実施形態においては、EGRを実行する場合としない場合とで、通路切換弁19aの開又は閉を切り替える。また、EGRを実行する場合でも、シリンダ1S内に排ガスExと混合気とが混じり合った状態とする場合(均質EGRという)と、排ガスExの層と混合気の層とをシリンダ1S内に形成する場合(成層EGRという)とを使い分けるため、通路切換弁19aの開又は閉を切り替える。
まず、本実施形態でEGRを実行しない場合、図9に示すように、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bの両方から燃焼空間1Bへ空気Aを導入する。そして、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方で、内燃機関1へ燃料Fを供給する。この場合、図9に示すように、第1吸気ポート4Aの燃料噴射孔2o及び第2吸気ポート4Bの燃料噴射孔2oから燃料が供給され、燃料噴霧Fmが形成される。EGRを実行しない場合には、第1点火プラグ7Aを用いて、シリンダ1S内の混合気に点火する。
EGRを実行しない場合、図9に示すように、通路切換弁19aは開となり、第1吸気ポート4A内全体を空気Aが流れる。この場合、空気Aが流れる際の抵抗をできるだけ低減するため、通路切換弁19aが空気Aの流れ方向と平行になるようにすることが好ましい。
シリンダ1S内に排ガスExと混合気とが混じり合った状態とする場合、すなわち均質EGRを実行する場合、図9に示すように、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bの両方から燃焼空間1Bへ空気Aを導入する。そして、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方で、内燃機関1へ燃料Fを供給する。この状態で、第1弁装置17A及び第2弁装置17Bを開き、第1排ガス再循環通路16A及び第2排ガス再循環通路16Bを介して、第1吸気ポート4A内及び第2吸気ポート4B内へ排ガスExを導入する。この場合、図9に示すように、第1吸気ポート4Aの燃料噴射孔2o及び第2吸気ポート4Bの燃料噴射孔2oから燃料が供給され、燃料噴霧Fmが形成される。
均質EGR時には、第1点火プラグ7Aを用いて、シリンダ1S内に存在する混合気に点火する。なお、均質EGRを実行する際には、吸気行程前に第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bから燃料Fを供給して、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bの熱による燃料Fの気化及び小バルブリフトでの混合により、燃焼空間1B内の均質化を促進する。
排ガスExの層と混合気の層とをシリンダ1S内に形成する場合、すなわち成層EGRを実行する場合、図10に示すように、通路切換弁19aは閉じられて、通路切換弁19aよりも下流側には空気Aは流れない状態とする。この状態で第1弁装置17Aが開かれると、排気通路9Mの排ガスExは、第1排ガス再循環通路16Aを通り、第1排ガス導入口16EAから第1吸気ポート4A内へ流入する。この排ガスExは、第1吸気弁10Aと第1吸気ポート4Aの開口部4Ao(図8)との間から燃焼空間1B内へ流入し、シリンダ1Sの第1吸気ポート4A側に排ガスExの層(排ガス層)Ex_Rを形成する。
成層EGRを実行する場合、図10に示すように、第1吸気ポート4Aから排ガスExを燃焼空間1Bへ導入し、第2吸気ポート4Bから空気Aを燃焼空間1Bへ導入する。そして、第1ポート噴射弁2Aの動作を停止させ、第2ポート噴射弁2Bのみを用いて内燃機関1へ燃料Fを供給する。この場合、図10に示すように、第2吸気ポート4Bの燃料噴射孔2oからのみ、燃料が供給されて燃料噴霧Fmが噴射形成される。したがって、本実施形態において、成層EGRを実行する場合には、成層EGRを実行しない場合と比較して、第2ポート噴射弁2Bからはおよそ2倍の燃料Fが供給される。
成層EGRを実行すると、図10、図11に示すように、排ガスExは、シリンダ1S内の第1吸気ポート4A側に排ガス層Ex_Rを形成する。そして、第2吸気ポート4Bからは、第2ポート噴射弁2Bから供給された燃料Fと第2吸気ポート4Bを流れる空気Aとの混合気が燃焼空間1B内へ流入し、図11に示すように、シリンダ1S内の第2吸気ポート4B側に、混合気層Gm_Rが形成される。なお、成層EGRを実行する際には、吸気行程前に同期させて第2ポート噴射弁2Bのみから燃料Fを供給する。
内燃機関1aは、シリンダ1S内にタンブル流が形成される。第1吸気ポート4Aからシリンダ1S内へ流入した排ガスExは、シリンダ1S内で第1タンブル流TAを形成し、第2吸気ポート4Bからシリンダ1S内へ流入した燃料Fと空気Aとはシリンダ1S内で第2タンブル流TBを形成する。これによって、排ガス層Ex_Rは第1タンブル流TAとなり、混合気層Gm_Rは第2タンブル流TBとなるので、両者の混合が抑制される。また、ピストン5aの頂部5Taには、第1吸気ポート4A及び第2吸気ポート4Bから排気ポート9へ向かって延びる2個の凹部5Uが形成される。これによって、排ガス層Ex_Rと混合気層Gm_Rとの混合がさらに抑制される。
成層EGR時には、第2点火プラグ7Bを用いて、シリンダ1S内の第2吸気ポート4B側に偏在する、ほとんど排ガスExが混入していない混合気層Gm_Rに点火する。これによって、確実に混合気に点火できるとともに、混合気を良好に燃焼させることができる。その結果、成層EGRでは、均質EGRよりも高いEGR率で、同等以上の燃焼を確保できる。次に、本実施形態に係る内燃機関の運転方法を説明する。この内燃機関の運転方法は、EGRに関するものである。
図12は、実施形態2に係る内燃機関の運転方法の手順を示すフローチャートである。図13〜図16は、実施形態2に係る内燃機関の運転方法に用いる制御データが記述されたデータマップの模式図である。本実施形態に係る内燃機関の運転方法のステップS201、ステップS202は、実施形態1に係る内燃機関の運転方法のステップS101、ステップS102と同様なので、説明を省略する。ステップS202でNoと判定された場合、すなわち、図8に示す制御条件判定部51がTw≦Twcであると判定した場合、EGRを実行しないで内燃機関1aが運転されるので、ステップS203へ進む。
ステップS203において、図8に示すEGR制御部52は、EGR率を0に設定する。すなわち、EGRは実行しない。次に、ステップS204へ進み、EGR制御部52は、図9に示すように通路切換弁19aを開く。そして、ステップS205で、図8に示す燃料供給制御部53は、燃料供給量及び燃料供給時期を決定する。
本実施形態において、EGRを実行しない場合、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方を用いて内燃機関1aへ燃料Fを供給する。したがって、内燃機関1aの運転条件によって定まる全燃料供給量をτaとすると、燃料供給制御部53は、第1ポート噴射弁2Aと第2ポート噴射弁2Bとがそれぞれτa/2ずつ燃料Fを供給するように、それぞれの燃料供給量を設定する。また、燃料供給制御部53は、燃料供給時期を決定する。EGRを実行しない場合、吸気行程の前に第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bから燃料Fを供給するように、燃料供給時期が決定される。
燃料供給量及び燃料供給時期が決定されたら、ステップS206に進み、燃料供給制御部53は、第1ポート噴射弁2A及び第2ポート噴射弁2Bの両方で、内燃機関1aへ燃料Fを供給する。なお、EGRを実行しない場合、第1弁装置17A及び第2弁装置17Bは閉じられている。そして、ステップS207において、機関制御部54は、内燃機関1aの運転条件に応じて、適切な点火時期を設定し、第1点火プラグ(中央点火プラグ)7Aから放電させて燃焼空間1B内の混合気に点火する。
次に、ステップS202へ戻って説明する。ステップS202でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がTw>Twcであると判定した場合、EGRを実行できる条件となる。この場合、ステップS208へ進む。ステップS208は、実施形態1に係る内燃機関の運転方法のステップS106と同様なので、説明を省略する。
ステップS208でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がOP≧OPcであると判定した場合、EGRを実行できる条件ではないと判定される。この場合、EGRを実行しないで内燃機関1aが運転されるので、ステップS203〜ステップS207が実行される。
ステップS208でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部51がOP<OPcであると判定した場合、ステップS209へ進む。ステップS209において、制御条件判定部51は、成層EGRを実行する領域で内燃機関1aが運転されているか否かを判定する。成層EGRを実行する領域は、内燃機関1aの負荷率KLと機関回転数Neとで判定される。
図13に示す判定マップ61は、成層EGRの領域Lと均質EGRの領域Nとが記述されている。判定マップ61の領域Lにおける負荷率KL及び機関回転数Neで内燃機関1aが運転されている場合、成層EGRを実行する。また、判定マップ61の領域Nにおける負荷率KL及び機関回転数Neで内燃機関1aが運転されている場合、均質EGRを実行する。
制御条件判定部51は、図8に示すクランク角センサ41が検出したクランクシャフト6の信号に基づいて機関回転数Neを求め、エアフローセンサ40が検出した信号から得られる内燃機関1aの吸入空気量Qaに基づいて負荷率KLを求める。負荷率KL及び機関回転数Neが得られたら、制御条件判定部51は、図13に示す判定マップ61に負荷率KL及び機関回転数Neを与えて、成層EGRを実行する領域で内燃機関1aが運転されているか否かを判定する。
ステップS209でNoと判定された場合、均質EGRを実行する領域で内燃機関1aが運転されていると判定される。この場合、ステップS210に進み、EGR制御部52は、均質EGRに必要なEGR率を求める。例えば、EGR制御部52は、ステップS209の判定において得られた内燃機関1aの負荷率KL及び機関回転数Neを、図14に示す均質EGR率設定マップ63に与えて得られたEGR率を取得して、均質EGRに必要なEGR率とする。次に、ステップS204〜ステップS207が実行される。この場合、ステップS206において、EGR制御部52は、ステップS210で求めたEGR率が実現できる開度に第1弁装置17A及び第2弁装置17Bを開く。
次に、ステップS209へ戻って説明する。ステップS209においてYesと判定された場合、成層EGRを実行する領域で内燃機関1aが運転されていると判定される。この場合、ステップS211に進み、EGR制御部52は、成層EGRに必要なEGR率を求める。例えば、EGR制御部52は、ステップS209の判定において得られた内燃機関1aの負荷率KL及び機関回転数Neを、図15に示す成層EGR率設定マップ62に与えて得られたEGR率を取得して、成層EGRに必要なEGR率とする。
次にステップS212へ進み、EGR制御部52は、図10に示すように通路切換弁19aを閉じる。そして、ステップS213に進み、燃料供給制御部53は、燃料供給量及び燃料供給時期を決定する。本実施形態において、成層EGRを実行する場合、第1ポート噴射弁2Aを停止して、第2ポート噴射弁2Bのみを用いて内燃機関1aへ燃料Fを供給する。したがって、内燃機関1aの運転条件によって定まる全燃料供給量をτaとすると、燃料供給制御部53は、第2ポート噴射弁2B単独でτaの燃料Fを供給するように設定する。
また、燃料供給制御部53は、燃料供給時期を決定する。成層EGRを実行する場合、吸気行程と同期させて第2ポート噴射弁2Bから燃料Fを供給する。本実施形態では、図16に示す成層EGR時燃料供給時期マップ64によって、燃料供給時期を決定する。例えば、燃料供給制御部53は、ステップS209の判定において得られた内燃機関1aの負荷率KL及び機関回転数Neを、成層EGR時燃料供給時期マップ64に与え、対応する燃料供給時期ITを設定する。ここで、燃料供給時期IT2は、燃料供給時期IT1よりも進角側である。
燃料供給量及び燃料供給時期が決定されたら、ステップS214に進み、燃料供給制御部53は、第1ポート噴射弁2Aの動作を停止し、第2ポート噴射弁2Bのみを用いて、ステップS213で決定した燃料供給量及び燃料供給時期で、内燃機関1aへ燃料Fを供給する。そして、ステップS215において、機関制御部54は、内燃機関1aの運転条件に応じて適切な点火時期を設定し、第2点火プラグ7B(サイド点火プラグ)から放電させて燃焼空間1B内の混合気に点火する。
以上、本実施形態では、EGRを実行する際には、第1吸気ポートから燃焼空間へ排ガスを導入し、第2吸気ポートから燃焼空間へ燃料及び空気を導入して、燃焼空間内へ排ガスの層と、燃料及び空気が混合した混合気の層とを形成する。これを実現するため、本実施形態では、シリンダ内にタンブル流が形成されるように構成するとともに、1個のシリンダ内の燃焼空間へ接続される第1吸気ポート、第2吸気ポートへ、それぞれ第1ポート噴射弁、第2ポート噴射弁を設ける。また、第1吸気ポートへ開口する第1排ガス導入口、及び第2吸気ポートへ開口する第2排ガス導入口を設けるとともに、第1排ガス導入口の上流側に、空気通路切換弁を設ける。そして、EGRを実行する際には、第1排ガス導入口から、燃焼空間から排出された排ガス(燃焼後の混合気)を、第1吸気ポートへ導入するとともに、第2吸気ポートからは空気と燃料とを燃焼空間へ導入する。
これによって、シリンダ内は、第1吸気ポート側に排ガス層が形成され、第2吸気ポート側に混合気層が形成される。そして、第2吸気ポート側に配置した第2点火プラグにより、ほとんど排ガスExが混入していない混合気層に点火する。その結果、確実に混合気に点火できるとともに、混合気を良好に燃焼させることができる。このように、本実施形態では、成層EGRによって良好な燃焼状態が得られるので、燃焼空間へより多くの排ガスを導入しても、燃焼状態が悪化しにくくなる。その結果、燃焼空間へより多くの排ガスを導入して、さらにNOxの低減、ポンプ損失の低減、燃料消費量の低減を図ることができる。
また、本実施形態では、内燃機関の運転条件に応じて均質EGRと成層EGRとを切り替える。これによって、例えば、低負荷時に成層EGRを用いることにより、より多くの排ガスを燃焼空間へ導入して運転できるので、燃料消費をより低減できる。また、成層EGRにより、燃焼の悪化が抑制されるので、これまではEGRを実行できなかった運転条件でもEGRを実行できる。
さらに、上述した実施形態1、実施形態2からは、次の発明が把握される。第1の本発明は、ピストンが往復運動するシリンダ内の空間であって、燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼空間と、前記燃焼空間に接続されて開口する第1の吸気通路及び第2の吸気通路とを備える内燃機関の前記燃焼空間へ、前記燃焼空間から排出された排ガスを再循環させる際に、前記第1の吸気通路から前記燃焼空間へ前記排ガスを導入し、前記第2の吸気通路から前記燃焼空間へ前記燃料と前記空気とを導入して、前記燃焼空間へ前記排ガスの層と、前記燃料及び前記空気が混合した混合気の層とを形成することを特徴とする内燃機関の運転方法である。
これによって、シリンダ内は、第1の吸気通路側に排ガス層が形成され、第2の吸気通路側に混合気層が形成される。そして、第2の吸気通路側に配置した点火手段により、ほとんど排ガスが混入していない混合気層に点火する。その結果、確実に混合気に点火できるとともに、混合気を良好に燃焼させることができる。
本発明の好ましい態様としては、第1の本発明において、前記シリンダの内面に沿って前記排ガスの層を形成し、前記排ガスの層の内側に、前記混合気の層を形成することを特徴とする内燃機関の運転方法である(第2の本発明)。第2の本発明では、シリンダの内面の近傍には排ガスの層が形成され、その内側に混合気の層が形成され、この状態で混合気に点火され、混合気が燃焼する。これによって、シリンダの内面近傍の排ガスによる断熱作用により、冷却損失の低減、シリンダの内面近傍における消炎の抑制といった効果が得られる。