JP2009215624A - 成膜方法及び電気光学装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】物理蒸着法による薄膜の形成時において、処理室内に堆積する膜のクラックの発生を防止し生産性を向上させることが可能な成膜方法及び電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、物理蒸着法により処理室内において被蒸着物上に薄膜を形成する成膜方法において、内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明は、物理蒸着法により処理室内において被蒸着物上に薄膜を形成する成膜方法において、内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、処理室内において物理蒸着法により薄膜を形成する成膜方法及び電気光学装置の製造方法に関する。
従来より、電気光学装置を構成する部材や光学部材等に薄膜を形成する方法として物理蒸着法が知られている。物理蒸着法は、物理気相成長法又はPVD(Physical Vapor Deposition)法とも称され、減圧された処理室中において蒸着材料を蒸発させ、被蒸着物上に蒸気を付着させることにより薄膜を形成する方法である。物理蒸着法としては、例えば真空蒸着法、イオンビーム蒸着法又はスパッタ法等が知られている。
物理蒸着法では、被蒸着物以外に処理室内の蒸着材料の蒸気が付着する箇所にも薄膜が形成されてしまう。このような、本来必要の無い箇所に形成されてしまう膜の除去を容易とするために、一般に物理蒸着を行う処理室内には、処理室の内壁面や処理室内の可動部等を覆い、かつ着脱可能に配設された防着板が設けられる。
この防着板上に堆積する膜は、防着板から剥がれることにより、処理室内を汚染する異物(パーティクル、フレークとも称する)となり成膜の不良を引き起こす原因となる。そこで、防着板上に堆積する膜の剥離を防止するために、例えば特開2001−247957号公報に開示されているように、所定の表面粗さを有する溶射膜を防着板上に形成する技術が知られている。
特開2001−247957号公報
しかしながら、防着板上に溶射膜を形成し防着板と膜との密着性を向上させたとしても、防着板上に堆積する膜の膜厚が増大すれば、膜が有する内部応力によって膜にクラック(割れ)が発生するため、やはり異物が発生してしまう。
この問題に対し、防着板上に堆積した膜の膜厚が、内部応力によってクラックが生じる膜厚に達する前に、定期的に防着板上に堆積した膜を除去する作業を行うことによって異物の発生を防止する方法が考えられる。しかし、この方法では、定期的に防着板を処理室内から取り出す作業を行うたびに処理室内を大気開放しなければならず、生産性が低下してしまうという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、物理蒸着法による薄膜の形成時において、処理室内に堆積する膜のクラックの発生を防止し生産性を向上させることが可能な成膜方法及び電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る成膜方法は、物理蒸着法により処理室内において被蒸着物上に薄膜を形成する成膜方法であって、内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を有し、前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とを、同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする。
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、物理蒸着法により処理室内において基板上に薄膜を形成する電気光学装置の製造方法であって、内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を有し、前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とを、同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする。
本発明のこのような構成によれば、処理室内に、それぞれの内部応力を緩和する第1の膜及び第2の膜が交互に形成されることにより、処理室内に堆積される膜の内部応力を従来より大幅に低下させることができ、クラックの発生を防止することができる。
また、処理室内に堆積される膜が従来よりもより厚くなるまでクラックの発生を防止することができることから、処理室を大気開放して堆積した膜を除去する作業を実施する周期を従来よりも長くすることができ、生産性を向上させることができる。
また、本発明は、前記第2の成膜工程において形成される前記第2の膜の膜厚は、直前の前記第1の成膜工程において形成された前記第1の膜の膜厚に基づいて決定されることが好ましい。
本発明のこのような構成によれば、第1の膜の内部応力を、第2の膜の内部応力によってより効果的に緩和することができ、生産性をより向上させることが可能となる。
また、本発明は、前記第1の成膜工程は、前記被蒸着物が前記処理室内に配置された状態において実施され、前記第2の成膜工程は、前記被蒸着物が前記処理室内から搬出された状態において実施されることが好ましい。
本発明のこのような構成によれば、いわゆるダミー成膜を実施することにより、単一の材料からなる膜のみを成膜する成膜装置にも本発明を適用することが可能となる。
また、本発明は、前記第1の膜は、液晶を配向規制するための無機配向膜であることが好ましい。
本発明のこのような構成によれば、無機配向膜の形成工程における異物の発生に起因する不良の発生を防止することができ、かつ電気光学装置の生産性を向上させることが可能となる。
また、本発明は、前記無機配向膜は、二酸化珪素からなり、かつ前記第2の膜は酸化アルミニウムからなることが好ましい。
また、本発明は、前記処理室内に防着板が配設されており、該防着板上には酸化アルミニウムを溶射することにより形成された溶射膜が形成されていることが好ましい。
本発明のこのような構成によれば、成膜装置内の汚染を防止することができ、電気光学装置の不良発生を防止することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、一例として本発明を電気光学装置用の基板の無機配向膜を蒸着により形成する方法に適用したものである。
なお、以下の説明に用いた各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
図1は、TFTアレイ基板を、その上に構成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図である。図2は、図1のH−H’断面図である。図3は、電気光学装置の製造方法を示すフローチャートである。図4は、蒸着装置の概略的構成を説明する図である。図5は、第2の成膜工程における蒸着装置の状態を説明する図である。図6は、無機配向膜形成工程を実施する際の蒸着装置の動作を示すフローチャートである。図7は、防着板上に堆積された膜の構成を説明する図である。
まず、電気光学装置100の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1はTFTアレイ基板を、その上に構成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図である。図2は、図1のH−H’断面図である。本実施形態では、一例として電気光学装置100に駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示装置を適用する。
電気光学装置100は、ガラス又は石英等からなるTFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50を挟持してなり、液晶層50の配向状態を変化させることにより、画像表示領域10aに対向基板20側から入射する光を変調しTFTアレイ基板10側から出射することで、画像表示領域10aにおいて画像を表示するものである。
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置100では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されており、TFTアレイ基板10と対向基板20との間には液晶層50が封入されている。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔を所定値とするためのグラスファイバあるいはガラスビーズ等のギャップ材が散らばって配設されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。なお、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
また、本実施形態においては、前記の画像表示領域10aの周辺に位置する非表示領域が存在する。非表示領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び実装端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。図示しないが、TFTアレイ基板10の表面に露出して設けられた実装端子102にフレキシブルプリント基板等を接続することにより、電気光学装置100と例えば電子機器の制御装置等の外部との電気的接続が行われる。
また、走査線駆動回路104は、データ線駆動回路101及び実装端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿い、かつ額縁遮光膜53に覆われるように設けられている。また、TFTアレイ基板10の残る一辺、すなわちデータ線駆動回路101及び実装端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に対向する辺に沿って設けられ、額縁遮光膜53に覆われるように設けられた複数の配線105によって、二つの走査線駆動回路104は互いに電気的に接続されている。
また、対向基板20のコーナー部の少なくとも一箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との電気的接続を行う上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらの上下導通材106に対応する領域において上下導通端子が設けられている。上下導通材106と上下導通端子を介して、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な接続が行われる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、無機配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に無機配向膜22が形成されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20のそれぞれ液晶層50と接する面に形成された無機配向膜16及び22は、二酸化珪素(SiO2)によって構成された薄膜である。
本実施形態において、無機配向膜16及び22は、詳しくは後述するが、それぞれTFTアレイ基板10及び対向基板20の基板表面に対して所定の角度をもって二酸化珪素を蒸着することによって形成されるものである。液晶層50は、例えば一種又は数種類の液晶を混合したものであり、一対の無機配向膜16及び22の間で、所定の配向状態をとる。なお、無機配向膜は、TFTアレイ基板10及び対向基板20のいずれか一方のみに形成される形態であってもよい。
また、対向基板20の入射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(ダブル−STN)モード、VA(垂直配向)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
上述した構成を有する電気光学装置100においては、液晶分子を配向規制するための配向膜を、無機材料である二酸化珪素により構成している。無機材料によって構成される無機配向膜は、例えばポリイミド等の有機材料によって構成される配向膜に対して耐光性や耐熱性に優れるため、経年劣化がなく表示品位が低下することのない電気光学装置を実現できる。
次に、図3から図7を参照して、上述した電気光学装置の製造方法について、具体的には、電気光学装置100の無機配向膜16及び22を形成する成膜方法について主に説明する。なお、無機配向膜16及び22を形成する工程を除く電気光学装置の製造方法については、周知であるため、その説明は省略するか、簡単に説明する。
まず、ステップS11において、TFTアレイ基板10上に、例えばCVD法やスパッタリング等による成膜、フォトグラフィ等によるパターニング、熱処理などによって、データ線や走査線、TFT等を形成し、さらにその最上層に、ITOからなる画素電極9aを形成する。
次に、ステップS12において、無機配向膜形成工程によって、詳しくは後述する真空蒸着法を用い、画素電極9a上に二酸化珪素からなる無機配向膜16を形成する。
次に、ステップS13において、洗浄工程において、TFTアレイ基板10上に形成された無機配向膜16の表面を洗浄する。
一方、ステップS21において、対向基板20に、例えばCVD法やスパッタリング等による成膜、フォトグラフィ等によるパターニング等によって、遮光膜23及び対向電極21を形成する。
次に、ステップS22及びステップS23において、対向基板20に対して、上述したステップS12及びステップS13と同様の工程を実施する。すなわち、対向電極21上に、真空蒸着法により二酸化珪素からなる無機配向膜22を形成する。そして次に無機配向膜22の表面を洗浄する。
そして、TFTアレイ基板10及び対向基板20の前工程が終了した後、ステップS31の貼り合せ工程において、TFTアレイ基板10と対向基板20とを枠状のシール材52を介して、所定にアライメントした状態で貼り合わせる。このとき、シール材52には一部を切り欠いた開口部である注入口が形成される。
続いて、ステップS32の液晶注入工程において、シール材52を介して貼り合わされたTFTアレイ基板10と対向基板20とで形成された領域に注入口から液晶50を注入し封止する。
なお、本実施形態では、液晶注入方式により液晶50を注入しているが、液晶滴下方式によりTFTアレイ基板10及び対向基板20の間に液晶50を介在させる方法であってもよい。液晶滴下方式は、TFTアレイ基板10と対向基板20を貼り合わせる前に、一方の基板上に液晶50を滴下し、シール材52を介してTFTアレイ基板10と対向基板20を貼り合わせることで液晶を封止するものであるので、この場合、ステップS31(貼り合わせ工程)とステップS32(液晶注入工程)とは逆となる。
以上により、本実施形態の電気光学装置100が完成する。
以下に、上述した電気光学装置100の製造工程における、ステップS12及びステップS22の無機配向膜形成工程について、詳細に説明する。無機配向膜16及び22は、図4に示す蒸着装置200を用いて形成される。
蒸着装置200は、いわゆる真空蒸着法を用いて二酸化珪素を被蒸着物であるTFTアレイ基板10又は対向基板20上に蒸着する装置である。
蒸着装置200は、演算装置、記憶装置及び入出力装置等からなる制御装置209と、内部を気密に保つことが可能な処理室201とを具備し、該処理室201内に、防着板202と、第1の蒸着源210と、第2の蒸着源220とが配設されて構成されている。
また、蒸着装置200は、処理室201の内部に連結された真空ポンプ204を有し、該真空ポンプ204により処理室201内の気体を排出することにより、処理室201内を真空(減圧状態)に保つことが可能に構成されている。
制御装置209は、蒸着装置200の動作を制御する装置であり、後述する各構成の動作を有線又は無線による通信手段を介して制御する。
防着板202は、処理室201の内壁面を覆うように配設された金属、樹脂、セラミック等からなる板状の部材であり、処理室201内に着脱自在に配設されている。本実施形態の防着板202はステンレス鋼板製であって、表面に酸化アルミニウム(Al2O3)からなる溶射膜が形成されている。
なお、防着板202の表面は、溶射膜が形成されない形態であってもよいし、他の材料からなる溶射膜により被覆される形態であってもよいし、またその他の表面処理が施される形態であってもよい。
第1の蒸着源210は、二酸化珪素からなる第1の膜を蒸着するための第1の蒸着材料211を収容するるつぼ212と、第1の蒸着材料211を加熱するための電子銃213と、るつぼ212を開閉するためのシャッタ214とを具備して構成されている。第1の蒸着源210は、真空中において電子銃213が発生する電子ビームを第1の蒸着材料211に照射することにより、第1の蒸着材料211を加熱して蒸発させ、第1の蒸着材料211の蒸気を生成する装置である。
なお、一般に物理蒸着法により成膜された二酸化珪素からなる第1の膜は、内部応力として圧縮応力を示すものである。
また、第2の蒸着源220は、酸化アルミニウムからなる第2の膜を蒸着するための第2の蒸着材料221を収容するるつぼ222と、第2の蒸着材料221を加熱するための電子銃223と、るつぼ222を開閉するためのシャッタ224とを具備して構成されている。第2の蒸着源220は、真空中において電子銃223が発生する電子ビームを第2の蒸着材料221に照射することにより、第2の蒸着材料221を加熱して蒸発させ、第2の蒸着材料221の蒸気を生成する装置である。
なお、一般に物理蒸着法により成膜された酸化アルミニウムからなる第2の膜は、内部応力として引張応力を示すものである。
真空蒸着法を実施するための蒸着装置は公知の技術であるため、蒸着装置200の構成の詳細については説明を省略するが、蒸着装置200には、処理室内に酸素等の所定の気体を供給する装置、被蒸着物であるTFTアレイ基板10又は対向基板20を処理室内において保持する基板保持装置、及び処理室201内を真空に保ったままTFTアレイ基板10又は対向基板20を処理室201に搬入又は処理室201から搬出する基板搬送装置が配設されている。また、図示しないが、処理室201内には、蒸着膜の膜厚を計測する膜厚計や、るつぼ212及び222に第1の蒸着材料211及び第2の蒸着材料221を供給する装置も配設されている。
上述した構成を有する蒸着装置200の動作は、制御装置209により制御される。
次に、蒸着装置200を用いて実施される、本実施形態の成膜方法及び電気光学装置の製造方法である無機配向膜形成工程について、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS51において、制御装置209の内部変数である第1のカウンタ値n及び第2のカウンタ値mをリセットし、それぞれの値を0とする。なお、この状態において、防着板202の表面は、酸化アルミニウムからなる溶射膜が露出している状態とする。
次に、ステップS52において、真空ポンプ204を作動させて処理室201内を所定の真空度まで減圧し、真空状態とする。
次に、ステップS53において、処理室201内の真空度を保持したまま、基板搬送装置を用いて被蒸着物である一つ又は複数のTFTアレイ基板10を処理室201内に搬入する。搬入されたTFTアレイ基板10は、該TFTアレイ基板10の法線が、第1の蒸着材料211に対して所定の角度θpをなすように基板保持装置により保持される。
次に、ステップS54において、図4に示すように、第1の蒸着源210のシャッタ214を開放位置に移動させ、かつ第2の蒸着源220のシャッタ224を閉塞位置に移動させた状態として、第1の蒸着材料211の蒸気をTFTアレイ基板10に到達させて第1の膜を所定の膜厚で形成する第1の成膜工程を実施する。本実施形態における、第1の膜は二酸化珪素により構成される。
すなわち、ステップS54において、TFTアレイ基板10上に対して所定の角度から蒸着を行う、いわゆる斜方蒸着法により二酸化珪素の膜を形成することで、無機配向膜16が形成される。
次に、ステップS55において、処理室201内の真空度を保持したまま、無機配向膜16が形成された一つ又は複数のTFTアレイ基板10を処理室201から搬出する。
次に、ステップS56において、制御装置209の第1のカウンタ値nに1を加算する。そして、ステップS57において、第1のカウンタ値nが、所定の1以上の整数値Nmaxに達したか否かを判定する。
第1のカウンタ値nが、所定の整数値Nmaxに達していなければ、ステップS53へ戻り、上記工程を繰り返す。一方、第1のカウンタ値nが、所定の整数値Nmaxに達している場合には、ステップS55へ移行して第1のカウンタ値nを0とする。
すなわち、第1のカウンタ値nは、ステップS54の第1の成膜工程を連続して実施した回数を計数する値であり、本実施形態では、第1の成膜工程を連続してNmax回だけ実施した後に、ステップS59へ移行する。
言い換えれば、第1のカウンタ値nは、処理室201内において連続して形成された第1の膜の膜厚を積算した膜厚に比例して増加する値であり、本実施形態では、処理室201内における第1の膜厚の積算量が所定の値t1に達した場合にステップS59へ移行する。
ここで、防着板202の表面には、第1の成膜工程をNmax回だけ繰り返すことにより形成された膜厚t1の二酸化珪素からなる第1の膜が形成されている。
次に、ステップS59において、制御装置209の内部変数である第2のカウンタ値mが、所定の1以上の整数値Mmaxに達したか否かを判定する。
第2のカウンタ値mが、所定の整数値Mmaxに達していなければ、ステップS60へ移行し、第2のカウンタ値mが、所定の整数値Mmaxに達している場合には、ステップS62へ移行する。
ステップS60において、図5に示すように、第2の蒸着源220のシャッタ224を開放位置に移動させ、かつ第1の蒸着源210のシャッタ214を閉塞位置に移動させた状態として、第2の蒸着材料221の蒸気を処理室201内に拡散させ第2の膜を所定の膜厚t2だけ防着板202上に形成する第2の成膜工程を実施する。本実施形態における、第2の膜は酸化アルミニウムにより構成される。
すなわち、ステップS60では、被蒸着物であるTFTアレイ基板10が処理室201内に存在しない状態において、第2の蒸着源220を用いて第2の膜を形成するダミー成膜を行う。これにより、防着板202上には、上記第1の成膜工程をNmax回繰り返すことにより形成された所定の膜厚t1を有する二酸化珪素からなる第1の膜上に、所定の膜厚t2を有する酸化アルミニウムからなる第2の膜が形成される。
そして、ステップS61において、制御装置209の第2のカウンタ値mに1を加算した後に、ステップS53へ戻り、上記第1の成膜工程を再び実施する。
一方、ステップS59の判定において、第2のカウンタ値mが、所定の整数値Mmaxに達していると判定した場合には、ステップS62へ移行して、処理室201内を大気開放して、防着板202に堆積した膜を除去するよう要求する信号を出力する。
以上が、本実施形態の成膜方法及び電気光学装置の製造方法における、蒸着装置200の動作である。なお、対向基板20に無機配向膜22を形成する無機配向膜形成工程は、上述した工程と同様であるため説明を省略する。
本実施形態の無機配向膜形成工程において使用される蒸着装置200に着目した場合、図7に示すように、防着板202を被覆する酸化アルミニウムの溶射膜202a上には、二酸化珪素からなる膜厚t1の第1の膜301と、酸化アルミニウムからなる膜厚t2の第2の膜302とが交互に形成される。
すなわち、図6に示したフローチャートが終了した時点において、防着板202上には、二酸化珪素からなる膜厚t1の第1の膜301が所定の値Mmax回だけ繰り返されて形成されており、かつそれぞれの第1の膜301の間には、酸化アルミニウムからなる厚さt2の第2の膜302が介装された状態となる。
ここで、物理蒸着法により形成された二酸化珪素からなる第1の膜301の内部応力は圧縮応力を示し、一方、物理蒸着法により形成された酸化アルミニウムからなる第2の膜302の内部応力は引張応力を示すものである。
このため、本実施形態においては、防着板202上に、内部応力が圧縮応力を示す第1の膜301と、内部応力が引張応力を示す第2の膜302とが交互に形成されることにより、第1の膜301及び第2の膜302のそれぞれの内部応力が他方の膜の内部応力を緩和するように作用する。
したがって、本実施形態では、単一の蒸着装置において単一の材料からなる蒸着膜を形成する従来の成膜方法及び電気光学装置の製造方法に比して、防着板202上に堆積される膜の内部応力を大幅に低下させることができるため、防着板202上に堆積する膜の膜厚が、従来よりもより厚くなるまでクラックの発生を防止することができる。
また、本実施形態によれば、防着板202上に堆積される膜が従来よりもより厚くなるまでクラックの発生を防止することができることから、処理室を大気開放して防着板202上の膜を除去する作業を実施する周期を従来よりも長くすることができ、生産性を向上させることが可能である。
また、上述した実施形態において、引張応力を示す第2の膜302の膜厚t2は、圧縮応力を示す第1の膜301の膜厚t1に基づいて算出されるものであり、膜厚t2は、膜厚t1の第1の膜301が示す引張応力を打ち消す値とされることが好ましい。
このように、第2の膜302の膜厚t2を、第1の膜302の膜厚t1に基づいて決定することにより、第1の膜301の内部応力を、第2の膜302の内部応力によってより効果的に緩和することができ、蒸着装置200の生産性をより向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、二酸化珪素からなる第1の膜301の応力を緩和するための第2の膜302を、防着板202上を被覆する溶射膜202aと同じ材料である酸化アルミニウムにより構成している。
蒸着装置において、防着板202と蒸着膜との密着性を向上させるために、防着板202上に酸化アルミニウムからなる溶射膜202aを形成することは一般的に行われるものである。ここで、本実施形態では、第2の膜302を溶射膜202aと同一の材料により構成することにより、処理室202内の汚染を抑制することができる。
なお、本実施形態では膜厚t1及び膜厚t2の値と、これらの形成を繰り返す回数を規定する値Nmax及びMmaxとは、事前の実験によって適宜に決定されるものであるが、これらの決定方法はこの形態のみに限られるものではない。
例えば、防着板202に歪ゲージを配設し、防着板202の歪量が所定の値を超えないようにフィードバック制御することで膜厚t1と膜厚t2を決定しても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
また、上述した実施形態では、引張応力を示す第2の膜302を酸化アルミニウムにより構成しているが、第2の膜302は、物理蒸着された際に内部応力が引張応力を示す他の材料、例えば酸化ジルコニウム(ZrO2)や二酸化チタン(TiO2)により構成されてもよい。
また、上述した実施形態においては、成膜方法として真空蒸着法を用いているが、これは他の物理蒸着法、例えばイオンビーム蒸着法やスパッタ法であっても同様の作用及び効果が得られることは言うまでもない。また、化学気相成長法(CVD法)を用いた成膜方法及び電気光学装置の製造方法にも、本発明を適用することは可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う成膜方法及び電気光学装置の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
例えば、上述した実施形態では、本発明を透過型の液晶表示装置の配向膜の形成工程に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、LCOS等の反射型の液晶表示装置や、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)等の他の電気光学装置の製造方法や、光学部材上への成膜方法にも適用可能である。
10 TFTアレイ基板、 20 対向基板、 200 蒸着装置、 201 処理室、 202 防着板、 204 真空ポンプ、 209 制御装置、 210 第1の蒸着源、 211 第1の蒸着材料、 212 るつぼ、 213 電子銃、 214 シャッタ、 220 第2の蒸着源、 221 第2の蒸着材料、 222 るつぼ、 223 電子銃、 224 シャッタ、 301 第1の膜、 302 第2の膜
Claims (9)
- 物理蒸着法により処理室内において被蒸着物上に薄膜を形成する成膜方法であって、
内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、
内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を有し、
前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とを、同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする成膜方法。 - 前記第2の成膜工程において形成される前記第2の膜の膜厚は、直前の前記第1の成膜工程において形成された前記第1の膜の膜厚に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 前記第1の成膜工程は、前記被蒸着物が前記処理室内に配置された状態において実施され、前記第2の成膜工程は、前記被蒸着物が前記処理室内から搬出された状態において実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜方法。
- 物理蒸着法により処理室内において基板上に薄膜を形成する電気光学装置の製造方法であって、
内部応力が引張応力及び圧縮応力のうちのいずれか一方を示す第1の膜を形成する第1の成膜工程と、
内部応力が、引張応力及び圧縮応力のうちの前記第1の膜が示す方とは異なる方を示す第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を有し、
前記第1の成膜工程と前記第2の成膜工程とを、同一の前記処理室内において交互に実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 前記第2の成膜工程において形成される前記第2の膜の膜厚は、直前の前記第1の成膜工程において形成された前記第1の膜の膜厚に基づいて決定されることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記第1の成膜工程は、前記基板が前記処理室内に配置された状態において実施され、前記第2の成膜工程は、前記基板が前記処理室内から搬出された状態において実施されることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記第1の膜は、液晶を配向規制するための無機配向膜であることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記無機配向膜は、二酸化珪素からなり、かつ前記第2の膜は酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置の製造方法。
- 前記処理室内には防着板が配設されており、該防着板上には酸化アルミニウムを溶射することにより形成された溶射膜が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
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-
2008
- 2008-03-12 JP JP2008062223A patent/JP2009215624A/ja not_active Withdrawn
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WO2013146182A1 (ja) * | 2012-03-29 | 2013-10-03 | 東レ株式会社 | 真空成膜装置および真空成膜方法 |
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