JP2009215197A - o−ニトロベンジル基含有シラザン化合物、その製造方法及び用途 - Google Patents
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Abstract
Description
非特許文献1においては、式(6)で示される表面修飾剤のトリメトキシシリル基を有するo−ニトロベンジルエステル誘導体、及びトリメトキシシリル基を有するo−ニトロベンジルエーテル誘導体等が報告されている。
また、特許文献1には、上記カルボキシル基や水酸基の他に、アミノ基、スルホ基、チオール基を基体表面に導入する方法が提案されている。
以上のように、カルボニル基、水酸基、アミノ基、スルホ基、チオール基の極性官能基を、シリカゲルやシリコンウェハ等の基体表面に導入するための1つの手段としては、光で容易に分解する保護基で極性官能基を保護した表面修飾剤の使用が知られている。このような表面修飾剤を用いることによって、極性官能基の選択的発現が可能となり、インクジェットプロセスに利用可能な選択的極性変換材料や、生物分野における選択的に生体物質を固定する材料、化学分野においては特定の位置へ極性官能基を導入した材料の製造など、様々な分野で応用することができる。
上述のような、光分解性の保護基としてo−ニトロベンジル基を有し、カップリング基としてトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、アルコキシシラン等を有する光分解性の表面修飾剤は、これを用いた表面修飾材料の製造における生産性や経済性を更に向上させるために、基体表面に修飾後の光分解による極性の変換速度を改善する余地が残っている。
ところで、ウェット処理以外に材料表面をコロナ放電処理する方法等のドライ処理も知られている。近年では更に、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法(CVD)が注目を集めている。その大きな理由として、ウェット処理では溶媒を必要とするのに対し、CVDでは溶媒を必要としないため環境負荷が小さいこと、又、光ファイバーや電子機器等の工業部材への適用においては、使用済み溶媒の処理工程や乾燥工程が不要であることから環境性、生産性や経済性に優れていることが挙げられる。
しかし、このような、環境性、生産性、経済性に優れるCVDを用いた場合であっても、上記カップリング剤としてクロロシランを有する光分解性の表面修飾剤では、アウトガスとして腐食性の塩酸が生じるという問題があり、また、上記カップリング剤としてアルコキシシランを有する光分解性の表面修飾剤では、修飾の際に加水分解反応が必要であり、シラザンやクロロシランと比べ反応性が低いといった問題がある。
そこで、CVDを利用した表面修飾剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が用いられ、例えば、シリコーン基板表面の疎水化処理に利用されている。
そこで非特許文献2では、低分子量クロロジメチルシラン化合物と、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンとを反応させて、シラザン化合物を合成する方法が提案されている。この方法では、高分子量のシラザン化合物の製造においても、クロロジメチルシラン化合物の段階で蒸留により白金触媒を除去・精製することで、白金触媒を除去したシラザン化合物が製造可能である。
しかし、非特許文献2には、クロロジメチルシラン化合物と、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンとを反応させ、目的のシラザン化合物を選択的に製造する条件は示されていない。
本発明の他の課題は、白金触媒を含まない上記o−ニトロベンジル基含有シラザン化合物の製造方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、基体表面に極性官能基を効率良く、経済的に導入することができる表面修飾材料の製造方法並びに、基体表面に導入した極性官能基の極性の変換を速やかに実施でき、特定の極性官能基を所望箇所に発現させることができる表面修飾材料の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明によれば、式(1)で表されるo−ニトロベンジル基含有シラザン化合物(以下、化合物(1)という)が提供される。
更にまた本発明によれば、水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を表面に有する基体に、上記表面修飾剤を化学蒸着法等により反応させる工程(A)を含む表面修飾材料の製造方法が提供される。
また本発明によれば、上記工程(A)と、該工程(A)で表面修飾剤を反応させた表面の少なくとも一部に光を照射し、o−ニトロベンジル基を光分解させて、該光照射面に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を形成する工程(B)とを含む表面修飾材料の製造方法が提供される。
本発明の化合物(1)の製造方法では、白金触媒を含有しない化合物(1)を製造することができる。
本発明の表面修飾材料の製造方法は、上記工程(A)、若しくは工程(A)と工程(B)とを含むので、基体表面に極性官能基を、効率良く、経済的に導入した表面修飾材料を、また、基体表面に導入した極性官能基の極性を、選択的に変換した、特定の極性官能基を所望箇所に有する表面修飾材料を、効率良く、速やかに得ることができる。
本発明の表面修飾剤は、特定の極性官能基の選択的発現が可能となり、光ファイバーや粉末製造等の工業部材や複合材料への修飾のみならず、自己組織化単分子膜、メソポーラスシリカ、マイクロアレイ等、多くの分野における極性官能基の導入に有用である。また、本発明の表面修飾材料の製造方法では、工程(B)における光照射の方法によって、極性官能基のパターニングが可能となるため、生物分野では、細胞、糖、核酸、タンパク質等の生体物質を、基体上の特定の位置に固定した表面修飾材料を容易に得ることができ、化学分野では基体上の特定の位置に特定の極生官能基を発現させた表面修飾材料を容易に得ることができる。従って、本発明は、生物分野や化学分野をはじめとする様々な分野で応用が可能である。
本発明の化合物(1)は、上記式(1)で示される、o−ニトロベンジル基により、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基又はチオール基が保護された、o−ニトロベンジル基含有シラザン化合物である。
式(1)中において、R1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。R1〜R4で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、同一であっても異なってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられ、これらの中でも特にメチル基が好ましい。
式(1)中において、X1及びX2は上記式(2)で表される。X1及びX2は同一の構造であっても、異なる構造であってもよいが、合成の容易さから同一であることが好ましい。
式(2)中、mは3〜20の整数を表し、出発原料の入手のし易さから、3〜15の整数が好ましく、3〜10の整数がより好ましい。
式(2)中、R7は水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
式(2)中、Yは−O−、−COO−、−NHCOO−、−SO3−、又は−SCOO−を表す。
本発明の化合物(1)は、表面修飾剤としての利用のみならず、例えば高分子化合物の修飾剤などにも利用することが可能である。
式(3)中、R5〜R7、Y、mはそれぞれ式(1)、式(2)中の対応する記号と同様である。R8及びR9はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。該アルキル基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、同一であっても異なってもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
化合物(3)としては、合成の容易さから、例えば、3−クロロジメチルシリルプロピル− (2−ニトロベンジル)エーテル、クロロジメチルシリルペンチル−(2−ニトロベンジル)エーテル、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、4−(クロロジメチルシリル)ブタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル、 (3−クロロジメチルシリル)プロピル)カルバミン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチル、4−(クロロジメチルシリル)ブチル−1−スルホン酸 1−(2−ニトロベンジル)エステル、(3−クロロジメチルシリル)プロピル)チオカーボネート 1−(2−ニトロフェニル)エチルが好ましく挙げられる。
一方、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンは、市販されているものを用いることができる。
上記反応は、無溶媒反応でも何ら問題は無いが、化合物(3)や1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンに対して反応性をもたない溶媒であれば溶媒存在下に行うこともできる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ヘキサンが好ましく挙げられる。
溶媒を用いる場合の使用量は、化合物(3)100質量部に対して、通常0.1〜1000質量部程度である。
本発明の製造方法における上記反応により得られる反応物は、そのまま未精製で、もしくは減圧乾燥等の処理により単離、精製したのち、後述する表面修飾剤として用いることができる。
式(4)中、R5〜R7、Y、mはそれぞれ式(1)、式(2)中の対応する記号と同様である。
化合物(4)としては、合成の容易さから、例えば、アリル−2−ニトロベンジルエーテル、5−ヘキセニル−2−ニトロベンジルエーテル、4−ペンテン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチル、3−ブテン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチル、4−ペンテン酸−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル、3−ブテン酸−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル、アリルカルバミン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチル、2−ニトロベンジル−3−ブテンスルホネート、アリルチオカーボネート−1−(2−ニトロフェニル)エチルが好ましく挙げられる。
化合物(4)は、公知の様々な方法により製造可能である。例えば、特開2003−321479号公報、特開2002−80481号公報に記載の合成法等により合成できる。得られた反応物は、そのまま未精製で、もしくはシリカゲルクロマトグラフィーや蒸留等の操作により精製を行った後に用いてもよい。
用いる白金担持炭素粉末の使用量は化合物(5)の重量に対して、0.1〜1000ppmが好ましい。
上記反応は、無溶媒反応でも何ら問題は無いが、化合物(4)や1,1,3,3−テトラメチルジシラザンに対して反応性をもたない溶媒であれば溶媒存在下に行うこともできる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ヘキサンが好ましく挙げられる。
溶媒を用いる場合の使用量は、化合物(4)100質量部に対して、通常0.1〜1000質量部程度である。
本発明の製造方法における上記反応により得られる反応物は、ろ過及び減圧乾燥により白金触媒を除去した後、後述する表面修飾剤として用いることが好ましい。
上記基体の形態は特に制限されるものではなく、例えば、シート状、ハニカム状、ファイバー状、ビーズ状、発泡状やそれらが集積した形態であっても良い。
本発明の表面修飾剤に含まれる化合物(1)の純度は高い方が好ましい。例えば、化合物(1)の上記製造において、化合物(3)が残存した反応生成物をそのまま表面修飾剤に用いると、表面修飾した際に腐食性の塩素ガスが発生するおそれがある。又、化合物(1)において製造に用いる白金触媒が残存していると、表面修飾時に表面に白金触媒が付着し、表面状態や電気特性、生体物質などに悪影響を及ぼす可能性がある。
工程(A)を実施するにあたり、通常、基体に対して前処理工程を行うことができる。
前処理工程は、酸性溶液を基体表面にコーティングすることにより行うことができる。酸性溶液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、過酸化水素が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では硫酸及び過酸化水素を等量混合した混合液が特に好ましい。
酸性溶液のコーティングは、基体表面をコーティングできる方法であれば特に制限はなく、例えば、塗布、スプレー、ディッピングにより行うことができる。酸性溶液による処理時間は、1〜48時間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。処理時間が1時間より短い場合、表面修飾が不十分という可能性が有る。処理時間が48時間以上の場合は材料表面にそれ以上変化がおきないため、生産性の低下となる可能性がある。この前処理工程により、基体表面に親水性基(シラノール基)を形成することができる。
熱CVDを行う際の真空度と基体加熱温度は、本発明の表面修飾剤が気化すれば良く、真空度は1×10-5〜1×10-4Torrが好ましく、温度は50〜250℃が好ましい。
使用する表面修飾剤中の化合物(1)の量は、使用する基体の面積に応じて変化するが、非常に薄い膜を形成するため少量で問題ない。
基体を固定する位置は、気化した気体が接触する範囲なら問題なく、通常、表面修飾剤から1〜100mm離れた位置が好ましい。
反応時間は、使用する化合物(1)の種類によって異なるが、化合物(1)が気化した後その温度以上で1〜10分間保持することが好ましい。
工程(B)において、基体表面の表面修飾材料の全部又は一部に光を照射することにより、光照射部分の光分解性保護基を脱保護して極性官能基の露出した表面修飾材料を調製することができる。この際、特定の箇所のみに光照射することにより、その部分にのみ極性官能基を形成することができる。
光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、エキシマレーザー、電子線が挙げられる。照射光のエネルギーについては、照射箇所の保護基が脱保護されるエネルギーであれば問題なく、光源にもよるが、一般的には0.01〜5000J/cm2が好ましく、0.01〜1000J/cm2がより好ましい。
洗浄方法としては、浸漬−振動、スプレー、超音波が好ましく、スプレー、超音波がより好ましい。
図1は、基体として、シリカゲル、シリコンウェハ、ガラス等の無機材料を用い、表面修飾剤としての化合物(1)として化学構造式例1〜6を用いた例である。尚、図1中のMeはメチル基を示す。
合成例1
アリル−2−ニトロベンジルエーテルの合成(式(4)においてR5〜R7=H,Y=−O−,m=3)
窒素置換したナスフラスコにNaH 499mg(20.8mmol)を加え、ヘキサンで油分を洗浄した。洗浄後、0℃に冷却し、アリルアルコール1.21g(20.8mmol)を5分間かけて滴下し、1時間磁気撹拌した。1時間後、アリルアルコール5mLに溶解したニトロベンジルブロミド3.00g(13.9mmol)を15分間かけて滴下した。滴下終了後、反応系を徐々に室温へ昇温し、一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで希釈し、0.5N HClaqで2回、飽和食塩水で2回、有機層を洗浄・抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥・ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:0→50:1)で精製し、黄色粘性液体アリル−2−ニトロベンジルエーテルを577mg得た。収率は21%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ4.11−4.12 (d, O−CH 2 −CH,2H) 4.89 (s, Ar−CH 2 −O, 2H) 5.20−5.23 (d ,CH 2 =CH,1H) 5.30−5.36 (d ,CH 2 =CH,1H) 5.92−5.99 (m, CH,1H) 7.41−7.43 (t, Ar, 1H) 7.61−7.65 (t ,Ar, 1H) 7.80−7.82 (d, Ar, 1H) 8.03−8.06 (d, Ar, 1H)
3−クロロジメチルシリルプロピル−(2−ニトロベンジル)エーテルの合成 (式(3)においてR5〜R7=H,Y=−O−,m=3)
窒素置換したナスフラスコに、合成例1で合成したアリル−2−ニトロベンジルエーテル150mg(0.776 mmol)とH2PtCl6・6H2O極少量を加え、ジメチルクロロシラン431μL(3.88mmol)を滴下し、一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を蒸留精製(0.5 mmHg,180℃)して白金触媒を除去し、黄色粘性液体3−クロロジメチルシリルプロピル−(2−ニトロベンジル)エーテルを145mg得た。収率は65%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.43 (s, Si−CH 3 , 6H) 0.88−0.92 (t, Si−CH 2 , 2H) 1.74−1.81 (m, Si−CH2−CH 2 , 2H) 3.55-3.58 (t, O−CH 2 −CH2, 2H) 4.87 (d, Ar−CH 2 −O, 2H) 7.41−7.43 (t, Ar, 1H) 7.62−7.66 (t, Ar, 1H) 7.78−7.80 (d, Ar, 1H) 8.03−8.06 (d, Ar, 1H)
化学構造式例1の合成
窒素置換したナスフラスコに、合成例2で合成した3−クロロジメチルシリルプロピル−(2−ニトロベンジル)エーテル150mg(0.521mmol)とHMDS 164μL(0.782 mmol)を加え、70℃で一晩加熱還流した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮し、黄色粘性液体1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−(2−ニトロベンジルオキシ)プロピル)−ジシラザンを123mg得た。収率は91%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.06 (s, Si−CH 3 , 12H) 0.52−0.56 (t, Si−CH 2 , 4H) 1.64−1.70 (m, Si−CH2−CH 2 , 4H) 3.50-3.54 (t, O−CH 2 −CH2, 4H) 4.86 (s, Ar−CH 2 −O, 4H) 7.41−7.43 (t, Ar, 2H) 7.61−7.63 (t, Ar, 2H) 7.79−7.81 (d, Ar, 2H) 8.03−8.05 (d, Ar, 2H)
化学構造式例2の合成
窒素置換したナスフラスコに、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル150mg(0.436 mmol)とHMDS 137μL(0.654mmol)を加え、70℃で一晩加熱還流した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮し、黄色粘性液体1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを124mg得た。収率は90%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) −0.1−0.4ppm,m,Si−CH 3 (12H) 0.4−0.5ppm,m,Si−CH 2 (4H) 1.2−1.4ppm,m,Si−CH2−CH 2 (4H) 1.6−1.9ppm,m,OC−CH2−CH 2 ,CH−CH 3 (10H) 2.3−2.4ppm,m,OC−CH 2 (4H) 6.3−6.4ppm,q,Ar−CH(2H) 7.3−7.4ppm,m,Ar−H(2H) 7.5−7.6ppm,m,Ar−H(4H) 7.9−8.0ppm,m,Ar−H(2H)
4,5−ジメトキシ−2−ニトロ−アセトフェノンの合成
水浴につけたナスフラスコに61%硝酸100mLを加え、温度を15℃前後に保ちながら3',4'−ジメトキシアセトフェノン10.0g(55.5mmol)を少量ずつ加え、水浴上で3時間磁気撹拌した。反応溶液を氷水150mLに注ぎ、生じた沈殿をろ過した。得られた沈殿を水とエタノールで洗浄し、黄色固体4,5−ジメトキシ−2−ニトロ−アセトフェノンを6.73g得た。収率は54%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ2.48 (s, CH 3 , 3H) 3.97 (s, CH 3 −O, 6H) 6.74 (s, Ar, 1H) 7.60 (s, Ar, 1H)
1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成
氷浴につけたナスフラスコに、合成例3で合成した4,5−ジメトキシ−2−ニトロ−アセトフェノン3g(13.3mmol)を加え、メタノール150mLに溶解した。反応混合液に水素化ホウ素ナトリウム1.5g(40.0mmol)を少量ずつ加え、氷浴中で30分撹拌した。その後室温で1時間撹拌し、溶媒を減圧濃縮した。残渣に水150mLを加え、30分撹拌した。混合液をクロロホルムで5回抽出し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥・ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1→0:1)で精製し、黄色固体1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エタノールを1.78g得た。収率は59%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ1.50 (d, CH 3 , 3H) 2.24 (d, OH, 1H) 3.88−3.94 (s×2, CH 3 −O, 6H) 5.50−5.52 (m, CH, 1H) 7.24 (s, Ar, 1H) 7.50 (s, Ar, 1H)
4−ペンテン酸−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチルの合成 (式(4)においてR5,R6=OMe,R6=Me,Y=−COO−,m=4)
ナスフラスコに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC) 928mg (4.85mmol)を加え、テトラヒドロフラン(THF)8mLに溶解し、0℃に冷却した。反応混合液にTHF 2mLに溶解したペンテン酸459mg(4.85mmol)を加え1時間攪拌した。1時間後、THF 2mLに溶解した、合成例4で合成した1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エタノール1.00g(4.41mmol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP) 593mg(4.58mmol)を反応混合液に滴下し、滴下終了後室温へと昇温して一晩攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により原料の消失を確認後、反応混合液を減圧濃縮し残渣を酢酸エチルで希釈し、0.5N HClaqで2回、飽和重曹水で2回、飽和食塩水で2回、有機層を洗浄・抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥・ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:0)で精製し、黄色固体4−ペンテン酸−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチルを1.18g mg得た。収率は87%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ1.61 (d, CH 3 , 3H) 2.37−2.48 (m, CH 2 , 4H) 3.94−3.97 (s×2, CH 3 −O, 6H) 4.98−5.07 (m, CH 2 =CH, 2H) 5.77−5.81 (m, CH2=CH, 1H) 6.46−6.50 (m, CH, 1H) 7.01 (s, Ar, 1H) 7.58 (s, Ar, 1H)
5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチルの合成(式(3)においてR5,R6=OMe,R6=Me,Y=−COO−,m=4)
窒素置換したナスフラスコに、合成例5で合成した4−ペンテン酸−1 (4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル150mg(0.485mmol)とH2PtCl6・6H2O極少量を加え、ジメチルクロロシラン217μL(1.96mmol)を滴下し、一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を蒸留精製(0.5mmHg,200℃)して白金触媒を除去し、黄色粘性液体5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチルを137 mg得た。収率は70%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.37−0.38 (s×2, Si−CH 3 , 6H) 0.78−0.80 (t, Si−CH 2 , 2H) 1.37−1.46 (m, Si−CH2−CH 2 , 2H) 1.59−1.60 (d, CH 3 , 3H) 1.65−1.69 (m, Si−CH2−CH2−CH 2 , 2H) 2.32−2.35 (t, C=O−CH 2 , 2H) 3.96 (s×2, CH 3 −O, 6H) 6.46−6.48 (q, CH, 1H) 7.00 (s, Ar, 1H) 7.56 (t, Ar, 1H)
化学構造式例3の合成
窒素置換したナスフラスコに、合成例6で合成した5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル137mg(0.340mmol)とHMDS 107μL(0.509mmol)を加え、70℃で一晩加熱還流した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮し、黄色粘性液体1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−ジシラザンを113mg得た。収率は88%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.06 (s, Si−CH 3 , 12H) 0.44−0.50 (t, Si−CH 2 , 4H) 1.36−1.45 (m, Si−CH2−CH 2 , 4H) 1.57−1.58 (d, CH 3 , 6H) 1.64−1.68 (m, Si−CH2−CH2−CH 2 , 4H) 2.30-2.33 (t, C=O−CH 2 , 4H) 3.96 (s×2, CH 3 −O, 12H) 6.46−6.48 (q, CH, 2H) 7.00 (s, Ar, 2H) 7.56 (t, Ar, 2H)
1−(2−ニトロフェニル)エチル−N−ヒドロキシスクシイミジルカーボネートの合成
アルゴン置換したナスフラスコに1−(2−ニトロフェニル)エチルアルコール1.50g (8.97mmol)、N,N'−ジスクシイミジルカーボネート2.30g(8.97mmol)、トリエチルアミン1.49 mL(10.8mmol)を加え、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLに懸濁させ、室温で4時間攪拌した。4時間後、反応混合液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、飽和食塩水で2回、有機層を洗浄・抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥・ろ過し、減圧濃縮し、黄色固体1−(2−ニトロフェニル)エチル−N−ヒドロキシスクシイミジルカーボネートを2.74mg得た。収率は99%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ1.79 (d, CH 3 , 3H) 2.80 (s, CH 2 , 4H) 6.40 (q, CH, 1H) 7.51 (t, Ar, 1H) 7.73−7.75 (m, Ar, 2H) 8.02 (d, Ar, 1H)
アリルカルバミン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成(式(4)においてR5,R6=H,R7=Me,Y=−NHCOO−,m=3)
窒素置換したナスフラスコに、合成例7で合成した1−(2−ニトロフェニル)エチル−N−ヒドロキシスクシイミジルカーボネート2.74 g(8.89mmol)を加え、THF 20mLに溶解した。反応混合液を0℃に冷却し、THF 10 mLで希釈したアリルアミン816 mg (8.89mmol)を滴下し、滴下終了後室温へと昇温して3時間攪拌した。TLCにより原料の消失を確認後、反応混合液を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=30:1)で精製し、黄色粘性液体アリルカルバミン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチルを1.84mg得た。収率は83%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ1.63 (d, CH 3 , 3H) 3.76 (d, CH 2 , 2H) 4.80 (br, NH, 1H) 5.10−5.19 (m, CH 2 =CH, 2H) 5.78−5.84 (m, CH2=CH, 1H) 6.26 (d, CH, 1H) 7.39−7.44 (t, Ar, 1H) 7.59−7.64 (m, Ar, 2H) 7.93 (d, Ar, 1H)
(3−クロロジメチルシリル)プロピル)カルバミン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成(式(3)においてR5,R6=H,R7=Me,Y=−NHCOO−,m=3)
窒素置換したナスフラスコに、合成例8で合成したアリルカルバミン酸−1−(2−ニトロフェニル)エチル200mg(0.799mmol)とH2PtCl6・6H2O極少量を加え、ジメチルクロロシラン444μL(4.00 mmol)を滴下し、一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を蒸留精製(0.5mmHg,200℃)して白金触媒を除去し、黄色粘性液体(3−クロロジメチルシリル)プロピル)カルバミン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルを168mg得た。収率は61%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.39 (s×2, Si−CH 3 , 6H) 0.74−0.78 (t, Si−CH 2 , 2H) 1.54−1.65 (m, Si−CH2−CH 2 , CH 3 , 5H) 3.10−3.17 (t, O−CH 2 −CH2, 2H) 4.77 (br, NH, 1H) 6.23 (d, Ar−CH, 1H) 7.38−7.42 (t, Ar, 1H) 7.60−7.61 (m, Ar, 2H) 7.90−7.92 (d, Ar, 1H)
化学構造式例4の合成
窒素置換したナスフラスコに、合成例9で合成した(3−クロロジメチルシリル)プロピル)カルバミン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチル150mg(0.435mmol)とHMDS 137μL (0.652mmol)を加え、70℃で一晩加熱還流した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮し、黄色粘性液体1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニルアミノ)プロピル)ジシラザンを121mg得た。収率は88%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.04 (s, Si−CH 3 , 12H) 0.29−0.36 (t, Si−CH 2 , 4H) 1.43−1.65 (m, Si−CH2−CH 2 , CH 3 , 10H) 3.05−3.07 (m, O−CH 2 −CH2, 4H) 6.23 (d, Ar−CH, 2H) 7.37−7.42 (t, Ar, 2H) 7.59−7.61 (m, Ar, 4H) 7.90−7.94 (d, Ar, 2H)
2−ニトロベンジル−3−ブテンスルホネートの合成(式(4)においてR5〜R7=H,Y=−SO3−,m=4)
窒素置換したナスフラスコに2−ニトロベンジルアルコール1.60g(10.4mmol)、トリエチルアミン2.02g(20.0mmol)、ジクロロメタン30mLを加え、磁気攪拌した。滴下漏斗に3−ブテンスルホニルクロライド2.43g(15.7mmol)とジクロロメタン10mLを加え、氷浴下で30分かけて滴下した。30分後TLCで原料の消失を確認し、希塩酸及び、重曹水とクロロホルムによって分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1→トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製し、茶色粘性液体2−ニトロベンジル−3−ブテンスルホネートを2.55g得た。収率は90%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ2.61−2.66 (m, CH−CH 2 , 2H) 3.25−3.29 (m, SO3−CH 2 , 2H) 5.11−5.18 (m, CH 2 =CH, 2H) 5.64 (s, Ar−CH, 2H) 5.76−5.86 (m, CH2=CH, 1H) 7.55 (t, Ar, 1H) 7.59−7.66 (m, Ar, 2H) 8.16 (d, Ar, 1H)
化学構造式例5の合成
窒素置換したナスフラスコに、合成例10で合成した2−ニトロベンジル−3−ブテンスルホネート200mg(0.737mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン192μL (1.11mmol)と極少量のPt/Cを加え、100℃で一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液をトルエンに希釈してガラスフィルターろ過により白金触媒を除去し、ろ液を減圧濃縮して、黄色粘性液体1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−(2−ニトロベンジルスルホニル)ブチル)ジシラザンを209mg得た。収率は84%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.04 (s, Si−CH 3 , 12H) 0.50−0.55 (t, Si−CH 2 , 4H) 1.45−1.51 (m, Si−CH2−CH 2 , 4H) 1.90−1.94 (m, Si−CH2−CH2−CH 2 , 4H) 3.19-3.23 (t, S−CH 2 , 4H) 5.65 (s, Ar−CH 2 −O, 4H) 7.55−7.57 (t, Ar, 2H) 7.72−7.79 (m, Ar, 4H) 8.16−8.18 (d, Ar, 2H)
アリルチオカーボネート−1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成(式(4)においてR5,R6=H,R7=Me,Y=−SCOO−,m=3)
窒素置換した合成例7で合成した1−(2−ニトロフェニル)エチル−N−ヒドロキシスクシイミジルカーボネート1.76g(5.72mmol)を加え、THF 15mLに溶解した。混合液を0℃に冷却し、THF 5mLで希釈したアリルメルカプタン471μL(5.72mmol)を滴下した。滴下終了後室温へと昇温して3時間攪拌した。TLCにより原料の消失を確認後、反応混合液を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、黄色粘性液体アリルチオカーボネート−1−(2−ニトロフェニル)エチルを0.503g得た。収率は33%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ1.67 (d, CH 3 , 3H) 3.43−3.45 (m, CH 2 , 2H) 5.09 (d, CH 2 =CH, 1H) 5.21 (d, CH 2 =CH, 1H) 5.74−5.84 (m, CH2=CH, 1H) 6.45 (m, CH, 1H) 7.44 (t, Ar, 1H) 7.63 (m, Ar, 2H) 7.96 (d, Ar, 1H)
(3−クロロジメチルシリル)プロピル)チオカーボネート 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成(式(3)においてR5,R6=H,R7=Me,Y=−SCOO−,m=3)
窒素置換したナスフラスコに、合成例11で合成したアリルチオカーボネート−1−(2−ニトロフェニル)エチル150mg(0.561mmol)と極少量のcis-Cl2(Et2S)2Ptを加え、ジメチルクロロシラン249μL (2.24mmol)を滴下し、2日間磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を蒸留精製(0.5mmHg,200℃)して白金触媒を除去し、黄色粘性液体(3−クロロジメチルシリル)プロピル)チオカーボネート 1−(2−ニトロフェニル)エチルを104mg得た。収率は51%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.39 (s×2, Si−CH 3 , 6H) 0.86 (t, Si−CH 2 , 2H) 1.52−1.68 (m, Si−CH2−CH 2 , CH 3 , 5H) 2.81−2.86 (m, S−CH 2 , 2H) 6.44 (d, Ar−CH, 1H) 7.44 (t, Ar, 1H) 7.64−7.65 (m, Ar, 2H) 7.97 (d, Ar, 1H)
化学構造式例6の合成
窒素置換したナスフラスコに、合成例12で合成した(3−クロロジメチルシリル)プロピル)チオカーボネート 1−(2−ニトロフェニル)エチル100mg(0.362mmol)とHMDS 123μL(0.543mmol)を加え、70℃で一晩加熱還流した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液を減圧濃縮し、黄色粘性液体1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニルスルフィド)プロピル)ジシラザンを131mg得た。収率は54%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.11 (s×2, Si−CH 3 , 6H) 0.93 (t, Si−CH 2 , 2H) 1.52−1.67 (m, Si−CH2−CH 2 , CH 3 , 5H) 2.75−2.89 (m, S−CH 2 , 2H) 6.42 (d, Ar−CH, 1H) 7.42 (t, Ar, 1H) 7.62−7.64 (m, Ar, 2H) 7.96 (d, Ar, 1H)
白金担持炭素粉末触媒と1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを使用した、化学構造式例2の合成
窒素置換したナスフラスコに、4−ペンテン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル200mg (0.802mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン208μL(1.20mmol)及び極少量のPt/Cを加え、100℃で一晩磁気撹拌した。NMRにより反応の終了を確認し、反応混合液をトルエンに希釈してガラスフィルターろ過により白金触媒を除去し、ろ液を減圧濃縮して、黄色粘性液体1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを198mg得た。収率は78%であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) −0.1−0.4ppm,m,Si−CH 3 (12H) 0.4−0.5ppm,m,Si−CH 2 (4H) 1.2−1.4ppm,m,Si−CH2−CH 2 (4H) 1.6−1.9ppm,m,OC−CH2−CH 2 ,CH−CH 3 (10H) 2.3−2.4ppm,m,OC−CH 2 (4H) 6.3−6.4ppm,q,Ar−CH(2H) 7.3−7.4ppm,m,Ar−H(2H) 7.5−7.6ppm,m,Ar−H(4H) 7.9−8.0ppm,m,Ar−H(2H)
塩化白金酸触媒と1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを使用した、化学構造式例2の合成
10mlナスフラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン312μl(1.82mmol)、4−ペンテン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル1.0g(4.01mmol)及び極少量のシス−ジクロロビス(ジエチルスルフィド)プラチナ(II)触媒を加え、60℃で2時間反応させた。反応終了後、真空乾燥して褐色粘性液体1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを0.785g得た。収率は62%であった。得られた反応物について蒸留精製を試みたが、白金触媒を取り除くことは不可能であった。得られた化合物の1H NMR及び反応式を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) −0.1−0.4ppm,m,Si−CH 3 (12H) 0.4−0.5ppm,m,Si−CH 2 (4H) 1.2−1.4ppm,m,Si−CH2−CH 2 (4H) 1.6−1.9ppm,m,OC−CH2−CH 2 ,CH−CH 3 (10H) 2.3−2.4ppm,m,OC−CH 2 (4H) 6.3−6.4ppm,q,Ar−CH(2H) 7.3−7.4ppm,m,Ar−H(2H) 7.5−7.6ppm,m,Ar−H(4H) 7.9−8.0ppm,m,Ar−H(2H)
化学構造式例2の合成
1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンの使用量を54.6μL(0.262mmol)とした以外は実施例1−2と同様の操作を行い、黄色粘体0.83gを得た。1H−NMRを測定したところ、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルが15モル%残存しており、目的の1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの純度は75%であった。
50mlナスフラスコにおいて、濃硫酸14ml及び過酸化水素6mlを混合し、前処理溶液を調製した。この溶液にシリコンウェハ(有限会社エス・エヌ・ケー社製、φ4インチ、厚さ0.4mm)を入れて、1時間静置した。1時間後前処理溶液よりシリコンウェハを取り出して蒸留水で表面を洗い流し、蒸留水中で超音波を10分間当てて洗浄し、その後窒素ガスにより風乾させ、前処理基板を得た。接触角を以下の方法により測定したところ10°であった。
シリコンウェハ表面の接触角測定法
接触角の測定は、接触角測定装置、協和界面科学株式会社CA−DT・A型を用い、液適法(静的接触角)により測定した。即ち、接触角測定装置により、1μLの液滴を滴下し、10秒後の接触角をθ/2法により解析した。
ディッピング法によるシラザン型表面修飾材料の製造(サンプル1及び2)
50mlナスフラスコに実施例1−2で合成した化学構造式例2の1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン25mg又は実施例1−4で合成した化学構造式例4の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニルアミノ)プロピル)ジシラザン25mgと、活性化したモレキュラーシーブス3Aで脱水操作したドライトルエン20mlとを入れて、溶液を調製した。これに製造例1で製造した前処理を行ったシリコンウェハを入れ、100℃で3時間静置した。3時間後、シリコンウェハを取り出し、メタノール及びクロロホルムで表面を洗い流し、クロロホルム中で超音波を10分間当てた。その後、表面をメタノールで洗い流し、窒素ガスで風乾させ、各表面修飾シリコンウェハを得た(実施例1−2で合成した化合物を用いたものをサンプル1及び実施例1−4で合成した化合物を用いたものをサンプル2とする)。
得られた表面修飾シリコンウェハであるサンプル1及び2について上記と同様に接触角を測定した。その結果、サンプル1の接触角は75°、サンプル2の接触角は67°であった。いずれにおいても前処理後のシリコンウェハより接触角が上昇したことより、サンプル1及び2のいずれも目的の化合物で表面修飾されたシリコンウェハであることが確認できた。
CVD法によるシラザン型表面修飾材料の製造(サンプル3)
真空引き可能な処理装置(SAMCO社製、PLASMA POLYMERIZATION SYSTEM Model PD−2)内のヒーター上に、実施例1−2で合成した化学構造式例2の1,3−ビス(5−(1−(2−ニトロフェニル)エトキシ)−5−オキソペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン20mgを置き、その上部5cmの箇所に製造例1で製造した前処理を行ったシリコンウェハを固定した。真空度を真空度計(ULVAC社製 IONIZATION VACUUM GAUGECONTROL GI−TL3)により測定しながら1×10-5Torrとした。続いて、ヒーターを180℃に加熱して実施例1−2で合成した化合物を気化させてシリコンウェハと反応させることで表面修飾シリコンウェハ(サンプル3)を得た。
得られた表面修飾シリコンウェハであるサンプル3について上記と同様に接触角を測定した。その結果、サンプル3の接触角は77°であり、前処理後のシリコンウェハより接触角が上昇したことより、サンプル3は、目的の化合物で表面修飾されたシリコンウェハであることが確認できた。
ディッピング法によるクロロシラン型表面修飾材料の製造(比較サンプル)
50mlナスフラスコに5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチル20mgと、活性化したモレキュラーシーブス3Aで脱水操作したドライベンゼン20mlを入れて、溶液を調製した。これに製造例1で製造した前処理を行ったシリコンウェハを入れ、100℃で3時間静置した。3時間後、シリコンウェハを取り出し、メタノール及びクロロホルムで表面を洗い流し、クロロホルム中で超音波を10分間当てた。その後、表面をメタノールで洗い流し、窒素ガスで風乾させて、表面修飾シリコンウェハを得た(比較サンプル)。
得られた表面修飾シリコンウェハである比較サンプルについて上記と同様に接触角を測定した。その結果、比較サンプルの接触角は75°で、前処理後のシリコンウェハより接触角が上昇したことより、目的の化合物で表面修飾されたシリコンウェハであることが確認できた。
光照射による表面極性官能基を変換した表面修飾材料の製造
実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3及び比較例1で製造したサンプル1〜3及び比較サンプルの表面修飾シリコンウェハに、表1に示す一定時間(分)、紫外線(100mW/cm2、Xe−Hgランプ、λ=300〜400nm)を照射した。紫外線照射後に各シリコンウェハをメタノール及びクロロホルムで表面を洗い流し、クロロホルム中で超音波を10分間当てた。その後、表面をメタノールで洗い流し、窒素ガスで風乾させて、極性変換を行った紫外線照射時間の異なる各シリコンウェハを得た。
得られた各シリコンウェハについて上記と同様に接触角を測定した。結果を表1に示す。
表1より、各サンプルのシリコンウェハは、紫外線照射時間に応じて接触角が低下したので、紫外線照射により光分解性保護基が脱保護し、極性基が露出して親水性が上昇したことがわかった。また、サンプル1、3、及び比較サンプルのシリコンウェハでは、極性官能基であるカルボン酸が露出し、接触角が61〜63°となった。サンプル2のシリコンウェハでは、極性官能基であるアミノ基が露出し、接触角が50〜52°となった。このことから各サンプルは、いずれも目的の極性官能基が露出したことが明らかとなった。
一方、比較サンプル(クロロシラン型)ではサンプル1、サンプル3(シラザン型)と比較して、同程度の接触角になるために3〜4倍の紫外線照射時間(照射量)を要することから、極性変換速度が遅いことが明らかとなった。
Claims (7)
- 白金触媒の存在下に調製した式(3)で表されるo−ニトロベンジル基含有クロロジアルキルシラン化合物から、蒸留精製により白金触媒を除去し、得られた式(3)で表されるo−ニトロベンジル基含有クロロジアルキルシラン化合物と、該化合物に対してモル比で1.0倍量以上の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンとを反応させることを特徴とする、白金触媒を含有しない請求項1記載のo−ニトロベンジル基含有シラザン化合物の製造方法。
- 請求項1記載のo−ニトロベンジル基含有シラザン化合物を含有することを特徴とする、水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を表面に有する基体用の表面修飾剤。
- 水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を表面に有する基体に、請求項4記載の表面修飾剤を反応させる工程(A)を含む表面修飾材料の製造方法。
- 水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を表面に有する基体に、請求項4記載の表面修飾剤を反応させる工程(A)と、該工程(A)で表面修飾剤を反応させた表面の少なくとも一部に光を照射し、o−ニトロベンジル基を光分解させて、該光照射面に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性官能基を形成する工程(B)とを含む表面修飾材料の製造方法。
- 工程(A)における請求項4記載の表面修飾剤の反応を、化学蒸着法により行う請求項5又は6記載の製造方法。
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