JP4156858B2 - シランカップリング剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、末端にトリアルコキシシリル基、クロロジメチルシリル基、ジクロロメチルシリル基、トリクロロシリル基を有し、他の末端にo−ニトロベンジルオキシ基(ベンゼン環がメトキシ基で置換されていてもよい。)又はメチレンの一つの水素が置換されたo−ニトロベンジルオキシ基を有するエーテル化合物又はエステル化合物であって、シランカップリング剤等として利用できる化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルボキシル基やヒドロキシル基を有するシランカップリング剤は、ケイ素に結合する塩素基やメトキシ基がカルボキシル基やヒドロキシル基に反応するため、知られていなかった。最近、山口らは、シランカップリング剤として、トリメトキシシリル基を有するo−ニトロベンジルエステル誘導体である下記式で表される化合物等(山口ら、Chem. Lett., 228-229, (2000))、及びトリメトキシシリル基を有するo−ニトロベンジルエーテルである下記式で表される化合物等(山口ら、Polym. Prep. Jpn., 48, 2247-2248, (1999))を合成し発表した。
【化3】
Figure 0004156858
(上式中、GがCOOのときk=4であり、GがOのときk=3である。)
この化合物は、トリメトキシシリル基がシリカゲル等の表面に存するヒドロキシル基と反応し、表面上に付着する。その後、光を照射するとo−ニトロベンジルアルコール誘導体とのエステル結合が切れて当該表面にカルボキシル基を残し、あるいはエーテル結合が切れて当該表面にヒドロキシル基を残す。結果として、シリカゲル等の表面にカルボキシル基やヒドロキシル基を導入することができる。
【0003】
また、山口らは、トリメトキシシリル基に代えて、トリクロロシリル基やクロロジメチルシリル基を用いると反応性を高めることを下記の化合物について見出し報告した(山口ら、Polym. Prep. Jpn., 49, 709, (2000))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
光酸発生剤を必要せず、複雑な合成法も必要としないポジ型の画像形成等に応用できる、シランカップリング剤を反応させて得られる材料を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
下記一般式(1)で表される化合物、又は下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物をヒドロキシル基含有ポリマー等のヒドロキシル基を有する材料と反応させ、光照射することを特徴するヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有するポリマー等の材料の製造方法を提供する。参考例として、下記一般式(2)で表される化合物をヒドロキシル基含有ポリマー等のヒドロキシル基を有する材料と反応させ、光照射することを特徴するヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有するポリマー等の材料の製造方法を提供する。
【化4】
Figure 0004156858
(上式中、G1はO又はCOOを表し、R1とR2は独立して水素原子又はメトキシ基を表すが、いずれも水素原子であることはなく、R1とR2は結合して環を形成してもよく、R3は炭化水素基の側鎖を有してもよいm個のメチレン基を表し、ここでmは3以上の整数であり、X1はトリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基を表す。G2はO又はCOOを表し、R4は水素原子又は直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R5は炭化水素基の側鎖を有してもよいn個のメチレン基を表し、ここでnは3以上の整数であり、X2はトリメトキシシリル基とトリエトキシシリル基とクロロジメチルシリル基とジクロロメチルシリル基とトリクロロシリル基からなる一群から選ばれる。)
なお、一般式(1)の化合物は新規な化合物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
一般式(1)と(2)の化合物は、好ましくは、下記一般式(3ET)、(3ES)、(4ET)及び(4ES)で表される化合物である。
【化5】
Figure 0004156858
(上式中、mとnは独立して3以上の整数を表す。)
なお、m個のメチレン基又はn個のメチレン基は、一以上の炭化水素基の側鎖を有していてもよく、側鎖の位置は、合成的にはX1又はX2に結合する炭素原子からメチレン鎖上を二つ離れた炭素原子以降が好ましい。炭化水素基の大きさは、好ましくは、3〜15であり、より好ましくは3〜10の整数である。
【0007】
一般式(3ET)と一般式(3ES)の化合物において、R1とR2は、独立して水素原子又はメトキシ基を表すが、いずれも水素原子であることはなく、R1とR2は結合して環を形成してもよい。m個のメチレンは、一以上の炭化水素基の側鎖を有していてもよい。mは、3以上の整数を表し、好ましくは3〜15であり、より好ましくは3〜10の整数である。一般式(1)の化合物のようにベンゼン環に置換基を有する場合、沸点が高くなるため蒸留方法を用いて分離することが困難である。カラムクロマトグラフィーを用いて分離する方法も、一般式(1)の化合物は加水分解しやすい性質を有すため適用困難である。本発明者らは、トリメトキシシリル基含有化合物をトリクロロアセチルクロリドと反応させトリクロロシリル基含有化合物を得る反応について報告するY. BarnessらLangmuir, 16, 247 (2000)の文献に着目した。Barnessらは、トリクロロシリル基含有化合物の純度を高めるため、数段の合成により得られたトリメトキシシリル基含有化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分離しているが、その溶出液として0.5〜1.0重量%のテトラメトキシシランを加えたものを使用している。本発明者らは、鋭意検討した結果、テトラメトキシシランを加えた溶出液を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー法が、一般式(1)の化合物の分離に適用できることを見出した。X1はトリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基を表す。
【0008】
一般式(3ET)の化合物としては、好ましくは、2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、4−メトキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4−メトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4−メトキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、5−メトキシ−2−ニトロベンジル3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、5−メトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、5−メトキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテルが挙げられる。より好ましくは、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテルが挙げられる。
【0009】
一般式(3ET)の化合物において、R1とR2が環を形成する例としては、アルキレンジオキシ基が挙げられ、好ましい例として、下記に示す4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリエトキシシリル)プロピルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリエトキシシリル)ヘキシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテル、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリエトキシシリル)プロピルエーテル等が挙げられる。
【化6】
Figure 0004156858
【0010】
一般式(4ET)の化合物としては、特に好ましくは、3−(クロロジメチルシリル)プロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、3−(ジクロロメチルシリル)プロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、3−(トリクロロシリル)プロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、6−(クロロジメチルシリル)ヘキシル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、6−(ジクロロメチルシリル)ヘキシル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、6−(トリクロロシリル)ヘキシル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、3−(クロロジメチルシリル)プロピルo−ニトロベンジルエーテル、3−(ジクロロメチルシリル)プロピルo−ニトロベンジルエーテル、3−(トリクロロシリル)プロピルo−ニトロベンジルエーテル、6−(クロロジメチルシリル)ヘキシルo−ニトロベンジルエーテル、6−(ジクロロメチルシリル)ヘキシルo−ニトロベンジルエーテル、6−(トリクロロシリル)ヘキシルo−ニトロベンジルエーテル、3−(トリメトキシシリル)プロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、3−(トリエトキシシリル)プロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、6−(トリメトキシシリル)ヘキシル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、6−(トリエトキシシリル)ヘキシル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテル、3−(トリメトキシ)プロピルo−ニトロベンジルエーテル、3−(トリエトキシシリル)プロピルo−ニトロベンジルエーテル、6−(トリメトキシシリル)ヘキシルo−ニトロベンジルエーテル、6−(トリエトキシシリル)ヘキシルo−ニトロベンジルエーテル、が挙げられる。
【0011】
一般式(3ET)と一般式(4ET)の化合物の製造方法の一例を以下に示す。
【化7】
Figure 0004156858
【0012】
一般式(3ET)の化合物は、例えば、4位と5位にR1とR2を有する2−ニトロベンズアルデヒド(5)をヒドラジンと反応させ、二酸化マンガンで酸化してジアゾ化合物(7)とし、過塩素酸の存在下、二重結合を有するアルコール(8)と反応させてエーテル(9)を得た後、エーテル(9)の二重結合を塩化白金(IV)酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)を触媒として、トリメトキシシラン又はトリエトキシシランと反応させることにより得られる。一般式(4ET)の化合物も同様にして得られ、クロロジメチルシリル基とジクロロメチルシリル基とトリクロロシリル基の導入には、各々対応するクロロジメチルシランとジクロロメチルシランとトリクロロシランを使用することができる。
一般式(3ET)と一般式(4ET)の化合物の製造方法は、これに限らず、後述する一般式(4ET)のエーテル化合物の製造方法を利用したり、他の公知の方法を利用できる。また、m個のメチレン基が炭化水素基の側鎖を有する一般式(1)のエーテル化合物(1ET)と一般式(2)エーテル化合物(2ET)は、対応するアルコールを用いて合成することができる。
【0013】
一般式(4ET)と一般式(4ES)の化合物において、R4は、水素原子または直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくはエステル化合物(4ES)では光分解速度の点からメチル基でありエーテル化合物(4ET)では合成面から水素原子である。R4は特に限定されないが、炭素数が多くなると減圧蒸留が困難となり、その他の分離方法を用いる必要が生ずる。この場合、一般式(4ET)と一般式(4ES)の化合物は加水分解しやすい性質を有すため、加水分解を避けるための工夫が必要となる。また、R4が大きいと材料表面にカップリングした場合、分子間の立体的な反撥が大きくなることに留意する必要がある。
2は、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、クロロジメチルシリル基、ジクロロメチルシリル基及びトリクロロシリル基からなる一群から選ばれる。
n個のメチレンは、一以上の炭化水素基の側鎖を有していてもよい。nは、3以上の整数を表し、好ましくは3〜15であり、より好ましくは3〜10の整数である。nは特に限定されないが、nが大きくなるとR3の場合と同様に減圧蒸留が困難となる等の問題が生ずる。
【0014】
一般式(3ES)の化合物としては、特に好ましくは、5−(トリメトキシシリル)−ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチル、5−(トリエトキシシリル)−ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチル、5−(トリメトキシシリル)−ウンデカン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチル、5−(トリエトキシシリル)−ウンデカン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルが挙げられる。
【0015】
一般式(4ES)の化合物としては、特に好ましくは、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(ジクロロメチルシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(トリクロロシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、11−(クロロジメチルシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、11−(ジクロロメチルシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、11−(トリクロロシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸o−ニトロベンジル、5−(ジクロロメチルシリル)ペンタン酸o−ニトロベンジル、5−(トリクロロシリル)ペンタン酸o−ニトロベンジル、11−(クロロジメチルシリル)ウンデカン酸o−ニトロベンジル、11−(ジクロロメチルシリル)ウンデカン酸o−ニトロベンジル、11−(トリクロロシリル)ウンデカン酸o−ニトロベンジル、5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(トリエトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、11−(トリメトキシシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、11−(トリエトキシシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸o−ニトロベンジル、5−(トリエトキシシリル)ペンタン酸o−ニトロベンジル、11−(トリメトキシシリル)ウンデカン酸o−ニトロベンジル、11−(トリエトキシシリル)ウンデカン酸o−ニトロベンジルが挙げられる。
【0016】
一般式(3ES)の製造方法の一例を以下に示す。
【化8】
Figure 0004156858
【0017】
一般式(3ES)の化合物は、例えば、二重結合を有するカルボン酸(10)と、o−ニトロベンジルアルコール誘導体(11)を反応させエステル(12)を生成し、該二重結合を塩化白金(IV)酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)を触媒として、トリメトキシシランとクロロジメチルシランとジクロロメチルシランとトリクロロシランから選ばれる化合物と反応させることにより得られる。エステルの生成は、例えば、WSC・HCl[WSCは水溶性カルボジイミドの略であり、WSC・HClとしては1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドハイドロクロライドが挙げられる。]と、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で行われる。また、エステル(12)は、二重結合を有するカルボン酸(10)を塩化チオニル(SOCl2)等を用いる公知の方法で酸塩化物とし、o−ニトロベンジルアルコール誘導体(11)とDMAPのような第三級アミンの存在下反応させることによって得ることもできる。
一般式(11)の化合物は、例えば、市販されている4位と5位にアルコキシ基を有する2−ニトロベンズアルデヒドのカルボニル基を水素化ホウ素ナトリウムで還元する等の公知の方法で合成できる。
一般式(4ES)の化合物も同様な方法で合成でき、クロロジメチルシリル基とジクロロメチルシリル基とトリクロロシリル基の導入には、各々対応するクロロジメチルシランとジクロロメチルシランとトリクロロシランを使用することができる。
一般式(3ES)と一般式(4ES)のエステル化合物の製造方法は、これに限らず、公知の方法が利用できる。また、n個のメチレン基が炭化水素基の側鎖を有する一般式(1)のエステル化合物(1ES)と一般式(2)のエステル化合物(2ES)は、対応するアルコールを用いて合成することができる。
【0018】
一般式(4ET)の化合物の他の製造方法の一例を以下に示す。
【化9】
Figure 0004156858
【0019】
一般式(4ET)の化合物は、例えばウィリアムソンのエーテル合成法を用いて、二重結合を有するアルコール(13)と、置換又は非置換o−ニトロベンジルハライド(例えばブロミド)(14)を反応させエーテル(15)を生成し、該二重結合を塩化白金(IV)酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)を触媒として、トリメトキシシランとクロロジメチルシランとジクロロメチルシランとトリクロロシランと反応させることにより得られる。非置換o−ニトロベンジルハライドは市販されており、置換o−ニトロベンジルハライドは、例えば、対応するアルコールから公知のハロゲン化(例えばブロモ化)で合成できる。
【0020】
式(4ET)の合成に用いるエーテル(15)は、o−ニトロベンズアルデヒド又はアルキルo−ニトロフェニルケトン(16)をヒドラジンと反応させ、二酸化マンガンで酸化してジアゾ化合物(18)とし、過塩素酸の存在下二重結合を有するアルコール(13)と反応させることによっても得られる。
【0021】
【化10】
Figure 0004156858
【0022】
ヒドロキシル基を有する材料は、反応できるヒドロキシル基が存在すれば特に限定されないが、ガラス、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、タルク、クレー、アルミニウム、鉄、マイカ、アスベスト、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられ、好ましくは、ガラス、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、アルミニウム、鉄、マイカ、特に好ましくは、ガラス、シリカ、アルミナである。詳しくは、エヌ・ティー・エヌ社「表面処理技術ハンドブック」等を参照されたい。これらの材料の形状は、特に限定されず、シリカ粉等の粉状物、シリコンウェハ等の板状物であってもよい。
【0023】
ヒドロキシル基を有する材料としてシリコンウェハを例にとれば、一般式(1)と(2)の化合物は、以下に示すように、シリコンウェハ表面のヒドロキシル基と反応して付着し、UV照射によりカルボン酸又はアルコールに変換される。
【0024】
【化11】
Figure 0004156858
【0025】
【化12】
Figure 0004156858
【0026】
一般式(1)と(2)のシランカップリング剤を材料表面に付着させる手段は、特に限定されず、通常のシランカップリング剤による表面処理と同様である。例えば、材料が粉体の場合には、一般式(1)及び/又は一般式(2)の化合物をベンゼン等の溶媒に溶解し、撹拌された粉状のシリカ表面等に噴射したり、溶液中にシリカ等を入れ処理する方法が用いられる。材料がシリコンウェハ等の一定の形状を有する場合には、一般式(1)及び/又は一般式(2)の化合物をベンゼン等の溶媒に溶解した溶液にシリコンウェハ等を投入し、還流又は室温での振動撹拌を行ったり、又は溶液を材料表面に薄く塗布することにより表面修飾を行うことができる。
【0027】
材料表面に付着した一般式(1)及び/又は一般式(2)の化合物は、UV照射により、そのエステル結合が切れて材料表面にカルボキシル基を存在させたり、又はそのエーテル結合が切れて材料表面にヒドロキシル基を存在させることとなる。これは、エタノール等の溶媒中に分散させた粉体にUV照射したり、又はシリコンウェハ表面に直接UV照射すること等により行うことができる。材料表面での反応(表面修飾)と光照射を同時に行うと、光照射により生じたカルボキシル基やヒドロキシル基がシリル基と反応することとなり不都合である。
UV照射は、通常の方法が用いられるが、一例を挙げれば、超高圧水銀ランプ(USH−500等)を光源とし、300nm以下の波長はパイレックス製ガラスフィルターでカットして5〜10秒照射する。
なお、UV照射による材料表面から置換又は非置換o−ニトロベンジル基の消失は、FT−IRやXPS等を用い、トリメトキシシリル基を有するo−ニトロベンジルエステル誘導体やo−ニトロベンジルエーテル誘導体を光照射した場合と同一の結果が得られることより確認される。詳しくは、前述の山口らの著である Chem. Lett., 228-229, (2000) 及び Polym. Prep. Jpn., 48, 2247-2248, (1999))を参照されたい。
【0028】
本発明によれば、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物をヒドロキシル基含有ポリマーと反応させ、光照射することによりヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基をポリマーに導入することができる。これを用いると、従来のような光酸発生剤を必要とせず、複雑な合成法も必要としないポジ型の画像を形成できる。また、酸素阻害も受けず、この感光性組成物が有機−無機複合体を形成していることから高い耐熱性も期待される。
【0029】
一般式(1)の化合物は、ベンゼン環上の置換基を選択することにより、ベンゼン環上に置換基を有しない化合物と比較して光の吸収ピークを長波長側にシフトさせることができる。例えば、ベンゼン環上に置換基を有しない化合物の吸収ピークが243nmであるとき、ベンゼン環上に二つのメトキシ基を有する化合物の吸収ピークが345nmとなる場合が挙げられる。この結果として、一般式(1)の化合物は、ベンゼン環上に置換基を有しない化合物より短時間の光照射により反応を完了するができる。
【0030】
一般式(1)及び/又は一般式(2)の化合物を付加できるポリマーとしては、ヒドロキシル基を有するポリマーが挙げられる。ヒドロキシル基の存在位置は、特に限定されず、側鎖の一部であってもよい。具体的には、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p− クレゾールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−とp−の混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−とp−の混合、又はm−とo −の混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂などのクレゾールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。その他、レゾール型フェノール樹脂類、ポリビニルフェノール、t−ブチル置換ポリビニルフェノール樹脂、HEMA ( 2−ヒドロキシエチルメタクリレート )と他のモノマーとの共重合体、ヒドロキシル基を有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等である。
【0031】
一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物をヒドロキシル基含有ポリマーと反応させ、光照射することによりヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基をポリマーに導入する反応スキームを以下に示す。なお、pとqは、モル分率を示す。
【0032】
【化13】
Figure 0004156858
【0033】
【化14】
Figure 0004156858
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[合成例1]
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾンの合成
50mlナスフラスコに、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンズアルデヒド0.93g(4.4mmol)、ヒドラジン一水和物0.52g(10.4mmol)、エタノール30ml、回転子を加え3時間還流した。50℃程で結晶が析出し回転子が回らなくなるが、温度上昇するにつれ一部溶けた。反応溶液を室温に戻し、析出結晶を自然ろ過した。得られた黄色結晶をエタノールで軽く洗い、真空乾燥すると目的物0.89g(4.0mmol)を得た。収量0.89g、収率91%。Rf値(クロロホルム)0.3。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ8.44 (s, 1H, -CH), 7.57 (s, 1H, Ar), 7.49 (s, 1H, Ar), 5.84 (br, 2H, -NH 2), 4.00 (s, 3H, -OCH 3), 3.95 (s, 3H, -OCH 3)。 FT−IR (KBr disk): 3413-3227 cm-1 (NH2), 1513 (NO2), 1328 (NO2), 1268 (C-O-C)。
【0035】
アリル 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテルの合成
300mlナスフラスコに4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン1.1g(5mmol)、回転子、ドライ塩化メチレン70mlを加え撹拌した。均一溶液になったら、二酸化マンガン3.52g(40.5mmol)を少しずつ加えた。室温で10分程撹拌した後二酸化マンガンをろ過により除去した。0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液(50mlx2)で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した(溶液A)。
一方、氷浴上で300mlナスフラスコにアリルアルコール0.37g(6.4mmol)、回転子を加えHClO4(70%)3滴を加えた。溶液Aをろ過して無水硫酸マグネシウムを除去した。200ml滴下ロートに溶液Aを加え、300mlナスフラスコに45分で滴下した。氷浴を除去し、室温で一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20ml、蒸留水30mlを加え洗浄した。水相を塩化メチレンで抽出し(100mlx2)、有機相を合わせ無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を溶出液クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的物(橙色結晶)0.43g(1.69mmol)を得た。収量0.43g、収率34%。Rf値(クロロホルム)0.57。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.72 (s, 1H, Ar), 7,33 (s, 1H, Ar), 6.0 (m, 1H, -CH=CH2), 5.37 (m, 1H, Jtrans=16Hz, -CH=CH 2), 5.25 (m, 1H, Jcis=12Hz, -CH=CH 2), 4.92 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 4.16 (dt, J=1.4Hz, 5.5Hz, 2H, CH 2-CH=CH2), 4.00 (s, 3H, -OCH 3) 3.95 (s, 3H, -OCH 3)。 FT−IR (KBr disk): 2938 cm-1 (C-H), 2850 (C-H), 1515 (NO2), 1325 (NO2), 1277 (C-O-C)。
【0036】
5−ヘキセニル 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテルの合成
200mlナスフラスコに4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン0.88g(3.9mmol)、回転子、ドライ塩化メチレン60mlを加え撹拌した。均一溶液になったら、二酸化マンガン2.8g(32mmol)を少しずつ加えた。室温で10分程撹拌した後、二酸化マンガンをろ過により除去した。0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液(50mlx2)で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した(溶液A)。
一方、氷浴上で300mlナスフラスコに5−ヘキセン−1−オール0.5g(5.0mmol)、回転子を加えHClO4(70%)2滴を加えた。溶液Aをろ過して無水硫酸マグネシウムを除去した。100ml滴下ロートに溶液Aを加え、300mlナスフラスコに30分で滴下した。氷浴を除去し、室温で一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20ml、蒸留水30mlを加え洗浄した。水相を塩化メチレンで抽出し(100mlx2)、有機相を合わせ無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後濃縮し、粗生成物を1.4g得た。粗生成物を溶出液クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的物(橙色結晶)0.48g(1.6mmol)を得た。収量0.48g、収率41%。Rf値(クロロホルム)0.5。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7,31 (s, 1H, Ar), 5.77-5.87 (m, 1H, -CH=CH2), 5.00-5.04 (s, 1H, Jtrans=16Hz, -CH=CH 2), 4.95-4.98 (s, 1H, Jcis=8Hz, -CH=CH 2), 4.89 (s, 1H, Ar-CH 2-O-), 3.99 (s, 3H, -OCH 3) 3.95 (s, 3H, -OCH 3), 3.60-3.63 (t, 2H, -O-CH 2-CH2), 2.09-2.15 (m, 2H, -CH 2-CH=CH2), 1.68-1.75 (m, 2H, -O-CH2-CH 2-), 1.50-1.58 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-CH=CH2)。 FT−IR (KBr disk): 2934 cm-1 (C-H), 2858 (C-H), 1514 (NO2), 1322 (NO2), 1267 (C-O-C)。
【0037】
9−デセニル 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテルの合成
500mlナスフラスコに4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン4.33g(19.2mmol)、回転子、ドライ塩化メチレン300mlを加え撹拌した。均一溶液になったら、二酸化マンガン13.9g(158.7mmol)を少しずつ加えた。室温で10分程撹拌した後、二酸化マンガンをろ過により除去した。0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液(50mlx2)で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した(溶液A)。
一方、氷浴上で500mlナスフラスコに9−デセン−1−オール3.8g(24.6mmol)、回転子を加えHClO4(70%)10滴を加えた。溶液Aをろ過して無水硫酸マグネシウムを除去した。200ml滴下ロートに溶液Aを加え、500mlナスフラスコに45分で滴下した。氷浴を除去し、室温で一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20ml、蒸留水30mlを加え洗浄した。水相を塩化メチレンで抽出し(100mlx2)、有機相を合わせ無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を溶出液クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的物(橙色結晶)2.85g(8.1mmol)を得た。収量2.85g、収率42%。Rf値(クロロホルム)0.3。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7,32 (s, 1H, Ar), 5.78-5.84 (m, 1H, -CH=CH2), 4.98-5.00 (s, 1H, Jtrans=8Hz, -CH=CH 2), 4.92-4.94 (s, 1H, Jcis=8Hz, -CH=CH 2), 4.89 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 4.00 (s, 3H, -OCH 3) 3.95 (s, 3H, -OCH 3), 3.58-3.61 (t, 2H, -O-CH 2-CH2), 2.01-2.06 (m, 2H, -CH 2-CH=CH2), 1.66-1.69 (m, 2H, -O-CH2-CH 2-), 1.31-1.38 (m, 10H, -CH2-(CH 2)5-CH2-CH=CH2)。 FT−IR (KBr disk): 2925 cm-1 (C-H), 2850 (C-H), 1518 (NO2), 1323 (NO2), 1272 (C-O-C)。
【0038】
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル)プロピルエーテルの合成
30mlナスフラスコを窒素置換し、アリル4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル1.5g(5.9mmol)、トリメトキシシラン0.865g(7.1mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物(H2PtCl6・6H2O)を極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:20:1(体積比)を用い、目的物を0.95g(2.53mmol)得た。収量0.95g、収率43%。Rf値(上記溶出液)0.19。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7,33 (s, 1H, Ar),4.90 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.95-4.00 (s, 6H, Ar-OCH 3), 3.58-3.63 (s, 2H, -O-CH 2-CH2-), 3.57 (s, 9H, -Si-(OCH 3)3), 1.6-1.8 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 0.72-0.76 (m, 2H, -CH 2-Si-)。 FT−IR (NaCl): 2941 cm-1 (C-H), 2843 (C-H), 1520 (NO2), 1328 (NO2), 1275 (C-O-C)。
【0039】
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテルの合成
20mlナスフラスコを窒素置換し、5−ヘキセニル4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル 2.95g(10.0mmol)、トリメトキシシラン1.47g(12mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物H2PtCl6・6H2Oを極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:20:1(体積比)を用い、目的物を1.4g(3.35mmol)得た。収量1.4g、収率34%。Rf値(上記溶出液)0.1。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7,31 (s, 1H, Ar), 4.89 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.96-3.99 (s, 6H, Ar-OCH 3) 3.58-3.61 (s, 2H, -O-CH 2-CH2-), 3.57 (s, 9H, -Si(OCH 3)3), 1.4-1.7 (m, 8H, -CH2-(CH 2)4-CH2-), 0.63-0.67 (m, 2H, -CH 2-Si-)。 FT−IR (NaCl): 2936 cm-1 (C-H), 2843 (C-H), 1520 (NO2), 1328 (NO2), 1276 (C-O-C)。
【0040】
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 10−(トリメトキシシリル)デシルエーテルの合成
30mlナスフラスコを窒素置換し、アリル4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル2.0g(5.7mmol)、トリメトキシシラン0.84g(6.9mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物H2PtCl6・6H2Oを極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:20:1(体積比)を用い、目的物を1.5g(3.2mmol)得た。収量1.5g、収率56%。Rf値(上記溶出液)0.29。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7,32 (s, 1H, Ar), 4.90 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.95-4.00 (s, 6H, Ar-OCH 3) 3.58-3.61 (s, 2H, -O-CH 2-CH2-), 3.57 (s, 9H, -Si-(OCH 3)3), 1.65-1.72 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 0.62-0.66 (m, 2H, -CH 2-Si-)。 FT−IR (NaCl): 2928 cm-1 (C-H), 2849 (C-H), 1518 (NO2), 1329 (NO2), 1274 (C-O-C)。
【0041】
[合成例2]
3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾンの合成
100mlナスフラスコに、3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンズアルデヒド0.98g(5.0mmol)、ヒドラジン一水和物0.61g(12.2mmol)、エタノール40ml、回転子を加え3時間還流した。50℃程で結晶が析出し回転子が回らなくなるが、温度上昇するにつれ一部溶けた。反応溶液を室温に戻し、析出結晶を自然ろ過した。得られた黄色結晶をエタノールで軽く洗い、真空乾燥すると目的物0.92g(4.4mmol)を得た。収量0.92g、収率88%。Rf値(クロロホルム)0.3。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ8.32 (s, 1H, -CH), 7.48 (s, 1H, Ar), 7.45 (s, 1H, Ar), 6.11 (s, 2H, -CH 2-), 5.81 (br, 2H, -NH 2)。
FT−IR (KBr disk): 3421 cm-1 (NH2), 1514 (NO2), 1336 (NO2), 1268 (C-O-C)。
【0042】
アリル 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンジルエーテルの合成
100mlナスフラスコに、アリル 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン 1.04g(5.0mmol)、ドライ塩化メチレン 70mlを加え、10分ほど室温攪拌を行った。次に、二酸化マンガン3.52g(40.5mmol)を加え同様に攪拌した。ろ過後、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した(溶液A)。一方、氷浴上で300mlナスフラスコにアリルアルコール0.37g(6.4mmol)、回転子を加えHClO4(70%)3滴を加えた。溶液Aをろ過して無水硫酸マグネシウムを除去した。200ml滴下ロートに溶液Aを加え、300mlナスフラスコに45分間で滴下した。氷浴を除去し、室温で一晩攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20ml、蒸留水30mlを加え洗浄した。水相を塩化メチレンで抽出し(100ml×2)、有機相を合わせ無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を溶出液クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的物(黄白色)0.4g(1.69mmol)を得た。収量0.4g、収率34%。Rf値(クロロホルム)0.5。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.62 (s, 1H, Ar), 7.30 (s, 1H, Ar), 6.12 (s, 2H, -O-CH 2-O-), 5.92-6.02 (m, 1H,-CH=CH2-), 5.33 (m, 1H, Jtrans=18Hz,-CH=CH 2), 5.35 (m, 1H, Jcis=10Hz, -CH=CH 2), 4.86 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 4.13 (dt, J=1.2Hz, 4Hz, 2H, CH 2-CH=CH2)。
FT−IR (KBr disk): 2917 cm-1 (C-H), 2870 (C-H), 1512 (NO2), 1316 (NO2), 1258 (C-O-C)。
【0043】
4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリメトキシシリル) プロピルエーテルの合成
10mlナスフラスコを窒素置換し、アリル 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンジルエーテル 1.0g(4.2mmol)、トリメトキシシラン0.616g(5mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物(H2PtCl6・6H2O)を極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:20:1(体積比)を用い、目的物を0.80g(2.2mmol)得た。収量0.80g、収率52%。Rf値(上記溶出液)0.1。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.61 (s, 1H, Ar), 7.29 (s, 1H, Ar), 6.14 (s, 2H, −O-CH 2-O-), 4.83 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.51-3.65 (m, 2H, -O-CH 2-CH2-), 3.58 (s, 9H, Si-(OCH 3)3), 1.75-1.83 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 0.70-0.77 (m, 2H, -CH 2-Si-)。
FT−IR (NaCl): 2941 cm-1 (C-H), 2842 (C-H), 1522 (NO2), 1324 (NO2), 1260 (C-O-C)。
【0044】
4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリエトキシシリル)プロピルエーテルの合成
10mlナスフラスコを窒素置換し、アリル 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロベンジルエーテル1.0g(4.2mmol)、トリエトキシシラン0.828g(5mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物(H2PtCl6・6H2O)を極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:10:1.1(体積比)を用い、目的物を0.42g(0.87mmol)得た。収量0.42g、収率21%。Rf値(上記溶出液)0.1。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.62 (s, 1H, Ar), 7.29 (s, 1H, Ar), 6.11 (s, 2H, −O-CH 2-O-), 4.83 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.84 (q, 6H, Si-(O-CH 2CH3)3), 3.56 (t, 2H, -O-CH 2-CH2-), 1.77-1.83 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 1.24 (t, 9H, Si-(O-CH2CH 3)3), 0.68-0.73 (m, 2H, -CH 2-Si-)。
FT−IR (NaCl): 2975 cm-1 (C-H), 2886 (C-H), 1523 (NO2), 1324 (NO2), 1260 (C-O-C)。
【0045】
[合成例3]
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 3−(トリエトキシシリル)プロピルエーテルの合成
10mlナスフラスコを窒素置換し、アリル 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル1.06g(4.2mmol)、トリエトキシシラン0.828g(5mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物(H2PtCl6・6H2O)を極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=100:10:1.1(体積比)を用い、目的物を0.84g(2.0mmol)得た。収量0.84g、収率50%。Rf値(上記溶出液)0.1。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.71 (s, 1H, Ar), 7.33 (s, 1H, Ar), 4.90 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.99 (s, 3H, Ar-OCH 3),3.95 (s, 3H, Ar-OCH 3), 3.83 (q, 6H, Si-(O-CH 2CH3)3), 3.56 (t, 2H, -O-CH 2-CH2-), 1.77-1.85 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 1.23 (t, 9H, Si-(O-CH2CH 3)3), 0.69-0.74 (m, 2H, -CH 2-Si-)。
FT−IR (NaCl): 2974 cm-1 (C-H), 2930 (C-H), 1521 (NO2), 1328 (NO2), 1276 (C-O-C)。
【0046】
[合成例4]
4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルアルコールの合成
300mlナスフラスコに、アリル 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒド2.48g(11.7mmol)、メタノール150mlを加え溶解させた。これに、氷浴上でNaBH41.37g(36.2mmol)を少しずつ加えた後、室温で2.5時間攪拌した。濃縮後、水75mlを加え、縣濁液を室温で30分間攪拌した。クロロホルムで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。これに、エタノール50mlを加え超音波で溶かし吸引ろ過した(数回)。真空乾燥し、黄色結晶2.32g(10.9mmol)を得た。収量2.32g、収率93%。Rf値(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)0.7。
1HNMR (90MHz, CDCl3/TMS): δ7.7 (s, 1H, Ar), 7.2 (s, 1H, Ar), 4.90 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 4.0 (s, 3H, Ar-OCH 3),3.96 (s, 3H, Ar-OCH 3), 2.4-2.6 (m, 1H, OH)。
FT−IR (KBr): 3497 (OH) cm-1 1515 (NO2) cm-1
【0047】
4−ペンテン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルの合成100mlナスフラスコに、WSC・HCl 3.06g(16.0mmol)、ドライTHF20mlを入れ、滴下ロートに4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルアルコール2.13g(9.99mmol)、4−ペンテン酸1.22g(12.2mmol)、DMAP1.50g(12.3mmol)、ドライTHF10mlを加え、窒素雰囲気下、氷浴上で滴下し、一晩攪拌し濃縮した。これに、水50ml、2M HCl6mlを入れ、30分程攪拌した。クロロホルムで抽出し、濃縮した。その後、水25ml、5%炭酸水素ナトリウム水溶液20mlを入れ、30分程攪拌した。酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、濃縮した。真空乾燥し、黄色結晶2.80g(9.48mmol)を得た。収量2.80g、収率95%。Rf値(クロロホルム)0.6。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.72 (s, 1H, Ar), 6.99 (s, 1H, Ar), 5.81-5.88 (m, 1H, -CH=CH2), 5.52 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 5.01-5.10 (m, 2H, -CH=CH 2), 3.98 (s, 3H, Ar-OCH 3),3.96 (s, 3H, Ar-OCH 3), 2.42-2.55 (m, 4H, -CH2-CH2-)。
【0048】
5−(トリメトキシシリル)−ペンタン酸 1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルの合成
20mlナスフラスコを窒素置換し、4−ペンテン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチル 2.0g(6.7mmol)、トリメトキシシラン5.54g(45.3mmol)、ハイドロゲンヘキサクロロプラチナート(IV)六水和物(H2PtCl6・6H2O)を極少量加え、37℃で30分間撹拌し、その後100℃までバス温を上げ、2時間で反応を終了した。中圧カラムを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。溶出液としてヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=200:100:3(体積比)を用い、目的物を0.93g(2.23mmol)得た。収量0.93g、収率33%。Rf値(上記溶出液)0.2。
1HNMR (400MHz, CDCl3/TMS): δ7.72 (s, 1H, Ar), 7.00 (s, 1H, Ar), 5.51 (s, 2H, Ar-CH 2-O-), 3.99 (s, 3H, Ar-OCH 3), 3.96 (s, 3H, Ar-OCH 3), 3.57 (s, 9H, Si-(OCH 3)3), 2.41-2.45 (t, 2H, J=15Hz, -CO-CH 2-), 1.69-1.76 (m, 2H, -CO-CH2-CH 2-), 1.44-1.52 (m, 2H, -CH2-CH 2-CH2-), 0.64-0.68 (m, 2H, -CH 2-Si-)。
FT−IR (NaCl): 1523 (NO2), 1278 (NO2), 1740 cm-1 (C=O)
【0049】
参考合成例5]
1−(2−ニトロフェニル)エタノールの合成
500mlナスフラスコに2−ニトロアセトフェノン15.0g(91.0mmol)、メタノール250mlを入れ氷浴中で撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム10.4g(274mmol)を少しずつ加えた。そのまま氷浴中で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌した。これをエバポレーターで濃縮し、水200mlを加え30分撹拌した後、クロロホルム(200ml×5)で抽出し、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮し、減圧蒸留(90℃/0.5mmHg)により黄色粘性液体13.9g(83.2mmol)を得た。収率91%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.3-7.9 (m, 4H, Ar), 5.4 (m, 1H, メチン), 2.4(d, 1H, ヒドロキシル), 1.6 (d, 3H, メチル)。 IR (NaCl): 3375cm-1 (OH), 1524 (NO2), 1349 (NO2)。
【0050】
4−ペンテン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成
窒素置換した100mlナスフラスコに1−(2−ニトロフェニル)エタノール11.8g(70.4mmol)、4−ペンテン酸7.74g(77.3mmol)、DMAP9.40g(76.9mmol)、無水THF10mlを入れ、これをWSC・HCl14.8g(76.9mmol)、無水THF100mlの混合溶液に窒素気流下、氷浴中で滴下した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を確認しながら、室温で2日撹拌した。これをエバポレーターで濃縮し、水100mlと2N塩酸20mlを入れ撹拌し、ヘキサン(200ml×5)で抽出し、ヘキサン相をエバポレーターで濃縮した。これに水100ml、5%炭酸水素ナトリウム100mlを入れ撹拌し、酢酸エチル(200ml×3)で抽出し、酢酸エチル相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これをエバポレーターで濃縮し、湯せん(〜50℃)しながら真空乾燥を2時間行い、黄色の油状液体16.4g(65.9mmol)を得た。収率94%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.3-8.0 (m,4H, Ar), 6.3 (q, 1H, メチン)、5.7-5.9 (m, 1H, メチン)、4.9-5.1 (dd, 2H, メチレン)、2.4(s, 4H, メチレン), 1.6 (d, 3H, メチル)。 IR (NaCl): 1737 cm-1 (C=O), 1527 (NO2), 1351 (NO2)。 EA(元素分析): C16H25N17に対する理論値 C 62.24, H 6.07, N 5.62; 実測値 C 62.60, H 6.15, N 5.42。
【0051】
10−ウンデセン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成
窒素置換した100mlナスフラスコに10−ウンデセン酸クロライド10.0g(49.4mmol)、無水THF20mlを入れ、これに1−(2−ニトロフェニル)エタノール8.01g(47.9mmol)、DMAP6.05g(49.5mmol)、無水THF40mlの混合溶液を窒素気流下、氷浴中で滴下した。氷浴中で1時間、室温で21時間撹拌しTLCで1−(2−ニトロフェニル)エタノールのスポットがなくなったことを確認した。これをエバポレーターで濃縮し、水90mlと2N塩酸10mlを入れ撹拌し、ヘキサン(100ml×3)で抽出し、ヘキサン相をエバポレーターで濃縮した。これに水50ml、5%炭酸水素ナトリウム50mlを入れ撹拌し、ヘキサン(100ml×3)で抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮し、湯せん(〜50℃)しながら真空乾燥を2時間行い、黄色の油状液体15.5g(46.5mmol)を得た。収率97%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.3-8.0 (m, 4H, Ar), 6.3 (q, 1H, メチン), 5.6-6.0 (m, 1H, メチン), 4.9-5.1 (dd, 2H, メチレン), 2.3 (t, 2H, メチレン), 2.0 (m, 2H, メチレン), 1.6 (d, 3H, メチル), 1.6 (m,2H, メチレン), 1.4 (m, 2H, メチレン), 1.3 (s, 8H, メチレン)。 IR (NaCl): 1739 cm-1 (C=O), 1528 (NO2), 1351 (NO2)。
【0052】
5−(クロロジメチルシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成
窒素置換した10mlナスフラスコに4−ペンテン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル2.03g(8.14mmol)とクロロジメチルシラン1.24g(13.1mmol)と極少量のH2PtCl6・6H2Oを入れ、窒素気流下で2時間撹拌した。その後、減圧蒸留を行い精製した。沸点156〜170℃/0.25mmHg、収量2.22g(6.46mmol)、収率79%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.0 (m,4H, Ar), 6.3 (q, 1H, メチン), 2.3(t, 2H, メチレン), 1.6 (d, 3H, メチル), 1.2-1.5 (m, 4H, メチレン), 0.9 (t, 2H, メチレン), 0.4 (s, 6H, メチル)。 IR (NaCl): 1738 cm-1 (C=O), 1528 (NO2), 1350 (NO2)。 EA: C15H22N14に対する理論値 C 52.39, H 6.45, N 4.07; 実測値 C 52.09, H 6.43, N 3.94。
【0053】
5−(トリクロロシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成
窒素置換した10mlナスフラスコに4−ペンテン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル2.60g(10.4mmol)とトリクロロシラン1.71g(12.6mmol)と極少量のH2PtCl6・6H2Oを入れ、窒素気流下で1時間撹拌した。その後、減圧蒸留を行い精製した。沸点140〜165℃/0.3mmHg、収量3.41g(8.27mmol)、収率79%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.0 (m, 4H, Ar), 6.3 (q, 1H, メチン), 2.4(t, 2H, メチレン), 1.6 (d, 3H, メチル), 1.5-1.8 (m, 4H, メチレン), 1.4 (t, 2H, メチレン)。 IR (NaCl): 1738 cm-1 (C=O), 1528 (NO2), 1351 (NO2)。 EA: C13H16N14に対する理論値 C 40.59, H 4.19, N 3.64; 実測値 C 40.17, H 4.01, N 3.49。
【0054】
4−ペンテン酸クロリドの合成
100mlナスフラスコに、4−ペンテン酸3.76g(37.6mmol)、塩化チオニル4.00ml(55.6mmol)を入れ、窒素気流下で3.5時間還流した。蒸留(b.p.118℃)により精製し、無色の液体3.42g(28.9mmol)を得た。収率77%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ5.6-6.0 (m, 1H, メチン), 5.1 (dd, 2H,メチレン), 3.0 (t, 2H, メチレン), 2.5 (q, 2H, メチレン)。
【0055】
4−ペンテン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルの合成(酸化クロリド経由)
窒素置換した100mlナスフラスコに1−(2−ニトロフェニル)エタノール3.30g(19.7mmol)、無水THF10ml、DMAP2.47g(20.2mmol)を入れた。これに4−ペンテン酸クロリド2.03g(20.3mmol)、無水THF15mlを氷浴中で滴下した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を確認しながら室温で7日間撹拌した。これをエバポレーターで濃縮し、水100mlを加え30分間撹拌し、酢酸エチル(100ml×5回)で抽出し、酢酸エチル相をエバポレーターで濃縮した。5%炭酸水素ナトリウム100mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し黄色液体3.14g(12.6mmol)を得た。Rf=0.45、収率64%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.3-8.0 (m, 4H, Ar), 6.3 (q, 1H, メチン), 5.7-5.8 (m, 1H, メチン), 5.0 (dd, 2H, メチレン), 2.4-2.6 (m, 4H, メチレン), 1.6 (d, 3H, メチル)。
【0056】
参考合成例6]
アリル 2−ニトロベンジルエーテルの合成
窒素置換したナスフラスコ中で60%水素化ナトリウム(50.0mmol)を無水ヘキサンで洗浄し油分を取り除いた。氷浴中、窒素気流下でアリルアルコールを滴下し、さらにアリルアルコールに溶解した2−ニトロベンジルブロミド(32.4mmol)の溶液を滴下し、室温で一晩撹拌した。アリルアルコールは合計で1860mmol用いた。エバポレーターで濃縮し、2規定の塩酸で洗浄し、クロロホルムで抽出し、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。減圧蒸留により精製を行った。沸点72℃/0.2mmHg、収量21.2mmol、収率66%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 5.9-6.0 (m, 1H,メチン), 5.2-5.4 (dd, 2H, メチレン), 4.9 (s, 2H, メチレン), 4.1 (d, 2H,メチレン)。 IR (NaCl): 1526 cm-1 (NO2), 1344 (NO2)。EA: C10H11N13に対する理論値 C 62.17, H 5.74, N 7.25; 実測値 C 61.63, H 5.63, N 7.27。
【0057】
5−ヘキセニル 2−ニトロベンジルエーテルの合成
5−ヘキセン−1−オール(138mmol)、2−ニトロベンジルブロミド(5.0mmol)、60%水素化ナトリウム(7.7mmol)を使用し、アリル2−ニトロベンジルエーテルの合成と同様の方法で、5−ヘキセニル2−ニトロベンジルエーテルを合成した。なお、過剰なアルコールを減圧留去により取り除きシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)による精製を行った。Rf値0.46、収量3.2mmol、収率64%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 5.8-5.9 (m, 1H,メチン), 5.0-5.1 (dd, 2H, メチレン), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H,メチレン), 2.1 (m, 2H, メチレン), 1.7 (m, 2H, メチレン), 1.5 (m, 2H, メチレン)。 IR (NaCl): 1526 cm-1 (NO2), 1344 (NO2), 1112 (COC)。
【0058】
9−デセニル 2−ニトロベンジルエーテルの合成
9−デセン−1−オール(861mmol)、2−ニトロベンジルブロミド(32.4mmol)、60%水素化ナトリウム(50.0mmol)を使用し、アリル2−ニトロベンジルエーテルの合成と同様の方法で、9−デセニル2−ニトロベンジルエーテルを合成した。なお、過剰なアルコールを減圧留去により取り除きシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)による精製を行った。Rf値0.42、収量11.2mmol、収率34%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 5.7-5.9 (m, 1H, メチン), 5.0-5.1 (dd, 2H, メチレン), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H, メチレン), 1.5-2.1 (m, 14H, メチレン)。
【0059】
2−ニトロアセトフェノンのヒドラゾンの合成
J.W. Walkerらの方法に従って合成した。
200mlナスフラスコに2−ニトロアセトフェノン5.0g(30mmol)、ヒドラジン一水和物3.4g(69mmol)、氷酢酸2.0ml(35mmol)、エタノール60mlをいれ、3時間還流した。エバポレーターで濃縮し、水30mlを加えた後、クロロホルム(30ml×4)で抽出し、水(30ml×3)で洗浄した。クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮し、減圧蒸留により黄色油状の2−ニトロアセトフェノンのヒドラゾン4.3g(24mmol)を得た。収率78%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.3-8.2 (m, 4H, Ar), 5.4及び4.8 (3.3:1, br, 2H, アミン), 2.2及び2.1(3.3:1, s, 3H, メチル)。IR (NaCl): 1525 cm-1 (NO2), 1349 (NO2)。
【0060】
1−(2−ニトロフェニル)ジアゾメタンの合成
J.W. Walkerらの方法に従って合成した。
100mlナスフラスコに2−ニトロアセトフェノンのヒドラゾン0.73g(3.1mmol)、クロロホルム40mlをいれた。ドラフト内で二酸化マンガン2.2g(24mmol)をいれ、室温で15分間撹拌した。濾過し二酸化マンガンを取り除いた後、0.1M炭酸水素ナトリウム100mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して、0.08Mクロロホルム溶液として1−(2−ニトロフェニル)ジアゾメタン約40ml(3.1mmol)を得た。濃度は、反応が100%進行していると仮定して計算した。単利はせず、溶液のまま次の反応に用いた。
【0061】
5−ヘキセニル 1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテルの合成
氷浴中で500mlナスフラスコに5−ヘキセン−1−オール4.00g(40.0mmol)と70%過塩素酸を触媒量(10滴)加え撹拌した。1−(2−ニトロフェニル)ジアゾメタン(30.3mmol)の0.2Mクロロホルム溶液150mlを滴下し、室温で一晩撹拌した。エバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製し、真空乾燥して5−ヘキセニル1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテルを得た。収量3.51g(14.1mmol)、収率47%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ7.6-7.9 (m, 4H, Ar), 5.6-5.8 (m, 1H,メチン), 4.9 (dd, 2H, メチレン) , 4.9 (q, 1H, メチン), 3.3 (t, 2H, メチレン), 2.0 (q, 2H, メチレン), 1.5 (d, 3H, メチル), 1.2-1.7 (m, 4H, メチレン)。
【0062】
2−ニトロベンジル 3−(トリクロロシリル)プロピルエーテルの合成
窒素置換した10mlナスフラスコにアリル2−ニトロベンジルエーテル(8.9mmol)を入れ、トリクロロシラン(9.8mmol)、極少量のH2PtCl6・6H2Oを入れた。窒素気流下、室温で15〜30分間撹拌し、その後80〜100℃で加熱撹拌した。減圧蒸留を行い精製した。沸点108℃/0.15mmHg、収量4.3mmol、収率49%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H, メチレン) , 2.0 (m, 2H, メチレン) , 1.6 (t, 2H, メチレン)。 IR (NaCl): 1527 cm-1 (NO2), 1343 (NO2)。 EA:C10H12N13Si1Cl1に対する理論値 C 36.55, H 3.68, N 4.26; 実測値 C 36.15, H 3.81, N 3.84。
【0063】
2−ニトロベンジル 6−(トリクロロシリル)ヘキシルエーテルの合成
5−ヘキセニル2−ニトロベンジルエーテル(5.9mmol)とトリクロロシラン(7.1mmol)を使用して、2−ニトロベンジル3−(トリクロロシリル)プロピルエーテルの合成と同様の方法により2−ニトロベンジル6−(トリクロロシリル)ヘキシルエーテルを合成した。沸点145〜150℃/0.2mmHg、収量3.6mmol、収率65%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H, メチレン), 1.4-1.7 (m, 10H, メチレン)。 IR (NaCl): 1526 cm-1 (NO2), 1344 (NO2)。 EA: C13H18N13Si1Cl3に対する理論値 C 42.12, H 5.65, N 3.75; 実測値 C 42.82, H 5.65, N 3.75。
【0064】
2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾンの合成
J.W.Walker, G.P.Reid, J.A.McCray and D.R.Trentham, J. Am. Chem. Soc., 110, 7170 (1988)に報告された方法、及び J.F.Wooton and D.R.Trentham, "Photochemical Probes in Biochemistry", ed. P.E.Nielsen, Kluwer Academic Publishers, p.277 (1989)に報告された方法を参考にして合成した。300mlナスフラスコに2−ニトロベンズアルデヒド12.1g(80.1mmol)、ヒドラジン一水和物8ml(156mmol)、エタノール160mlを入れ3時間還流した。エバポレーターで濃縮し、水100mlを加えた後、クロロホルム(100ml×4)で抽出し、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで濃縮し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶して黄色結晶の2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン10.5g(63.6mmol)を得た。収率79%。
1HNMR (90 MHz, CDCl3/TMS): δ8.3 (s, 1H, メチン), 7.4-8.1(m, 4H, Ar), 5.9 (br, 2H, アミン)。
【0065】
(2−ニトロフェニル)ジアゾメタンの合成
J.W.Walker, G.P.Reid, J.A.McCray and D.R.Trentham, J. Am. Chem. Soc., 110, 7170 (1988)に報告された方法を参考にして合成した。500mlナスフラスコに2−ニトロベンズアルデヒドのヒドラゾン7.00g(42.4mmol)、無水塩化メチレンを205mlを入れた。ドラフト内で二酸化マンガンを27.8g(281mmol)を入れ、室温で10分間撹拌した。濾過し二酸化マンガンを除いた後、0.1M炭酸水素ナトリウム200mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して0.2M塩化メチレン溶液として(2−ニトロフェニル)ジアゾメタン約205ml(42.4mmol)を得た。濃度は、反応が100%進行していると仮定して計算した。単離はせず、溶液のまま次の反応に用いた。
【0066】
(2−ニトロフェニル)ジアゾメタンを用いた5−ヘキセニル2−ニトロベンジルエーテルの合成
氷浴中で1000mlナスフラスコに5−ヘキセン−1−オール(55.5mmol)と70%過塩素酸を触媒量(18滴)加え撹拌した。(2−ニトロフェニル)ジアゾメタン(42.4mmol)の0.1〜0.2Mクロロホルム溶液を滴下し、室温で一晩撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、塩化メチレンで抽出し、塩化メチレン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製し、真空乾燥して5−ヘキセニル2−ニトロベンジルエーテルを得た。Rf0.42、収量15.3mmol、収率36%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 5.8-5.9 (m, 1H,メチン), 5.0 (dd, 2H, メチレン), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H, メチレン), 2.1 (m, 2H, メチレン), 1.7 (m, 2H, メチレン), 1.5 (m, 2H, メチレン)。 IR (NaCl): 1526 cm-1 (NO2), 1344 (NO2), 1112 (COC)。 EA: C13H17N13に対する理論値 C 66.36, H 7.28, N 5.95; 実測値 C 66.16, H 7.35, N 5.78。
【0067】
(2−ニトロフェニル)ジアゾメタンを用いた9−デセニル 2−ニトロベンジルエーテルの合成
9−デセン−1−オール(24.6mmol)、70%過塩素酸2滴、(2−ニトロフェニル)ジアゾメタン(12.5mmol)を使用し、(2−ニトロフェニル)ジアゾメタンを用いた5−ヘキセニル2−ニトロベンジルエーテルの合成と同様な方法を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により精製し、真空乾燥して9−デセニル2−ニトロベンジルエーテルを合成した。Rf0.42、収量1.8mmol、収率15%。
1HNMR (400 MHz, CDCl3/TMS): δ7.4-8.1 (m, 4H, Ar), 5.7-5.9 (m, 1H,メチン), 4.9-5.0 (dd, 2H, メチレン), 4.9 (s, 2H, メチレン), 3.6 (t, 2H,メチレン), 2.0-2.1 (m, 2H, メチレン), 1.6-1.7 (m, 2H, メチレン), 1.3-1.4 (m, 10H, メチレン)。 IR (NaCl): 1527 cm-1 (NO2), 1343 (NO2)。 EA: C17H25N13に対する理論値 C 70.07, H 8.65, N 4.81; 実測値 C 69.02, H 8.58, N 4.57。
【0068】
[応用例1]
シランカップリング剤(一般式 (2) )のアルカリ可溶性樹脂への導入
ビニルフェノールとスチレンの共重合体であるCST−70(丸善石油化学社製)(2.0g)、CST−15(丸善石油化学社製)(2.0g)、シランカップリング剤として、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 6−(トリメトキシシリル)ヘキシルエーテル(0.35g)、ベンゼン(20ml)を70℃で一時間加熱した。ベンゼン濃縮後、PSF2803(群栄化学工業社製)(5.0g)、PSF2807(群栄化学工業社製)(3.0g)、オイルブルー613(0.1g)、MEK(160ml)を加え、室温撹拌した。ろ過後、親水化処理したアルミ板に回転塗布し、その後70℃で一時間乾燥機で乾燥させた。露光には超高圧水銀ランプ(500W)を用いて、365nm、100mW/cm2の条件で約5〜10秒間程照射した。その後、アルカリ現像液にて現像をし、ポジ型の画像を得た。
【0069】
これにより、従来のような光酸発生剤を必要とせず、複雑な合成法も必要としないポジ型の画像を形成できた。また、酸素阻害も受けず、この感光性組成物が有機−無機複合体を形成していることから高い耐熱性も期待される。
【0070】
[応用及び参考応用例3]
4,5‐ジメトキシ−2−ニトロベンジル6−(トリメトキシシリル)へキシルエーテルと2−ニトロベンジル6−(トリメトキシシリル)へキシルエーテルを用いたシリコンウェハの表面修飾
得られた4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル6−(トリメトキシシリル)へキシルエーテルの無水ベンゼン溶液に、シリコンウェハを投入し、窒素雰囲気下で還流(1時間)又は室温で振動撹拌(30分間)して、表面修飾を行った。得られた修飾ウェハをクロロホルムで10分間超音波洗浄し、超高圧水銀灯(500W)を光源としてパイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)フィルターを通して光照射し表面をヒドロキシル基に変換した。接触角計(協和界面科学社製CA−A)を用い、液滴法(静的接触角)、JIS R3257:99に基づき、それぞれのウェハの接触角を測定し、表面状態の変化を評価すると、光照射時間10秒でヒドロキシル基への変換を終了したことがわかった。光照射の時間と接触角との関係を図1に示す。
2−ニトロベンジル3−(トリメトキシシリル)へキシルエーテルを用い、同様にしてシリコンウェハの表面修飾を行うと、この場合は、変換の終了まで20分程度を要した。
【0071】
[応用例4及び参考応用例5]
5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルと5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルを用いたシリコンウェハの表面修飾
得られた5−(トリメトキシシリル)−ペンタン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルの無水ベンゼン溶液に、シリコンウェハを投入し、窒素雰囲気下で還流(1時間)又は室温で振動撹拌(1時間)して、表面修飾を行った。得られた修飾ウェハをクロロホルムで10分間超音波洗浄し、超高圧水銀灯(500W)を光源としてパイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)フィルターを通して光照射し表面をカルボキシル基に変換した。接触角計(協和界面科学社製CA−A)を用い、液滴法(静的接触角)、JIS R3257:99に基づき、それぞれのウェハの接触角を測定し、表面状態の変化を評価すると、30秒で変換が終了したことがわかった。光照射の時間と接触角との関係を図2に示す。
5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸 1−(2−ニトロフェニル)エチルを用い、同様にしてシリコンウェハの表面修飾を行うと、この場合は、変換の終了まで20分程度を要した。
【0072】
【発明の効果】
末端にトリメトキシシリル基等を有し、他の末端にベンゼン核が置換されていてもよいo−ニトロベンジルオキシ基を有する化合物であるシランカップリング剤は、ヒドロキシル基を有するポリマーに反応できることから、多様なポリマーへ容易に導入が可能である。光酸発生剤を使用しない事から、耐酸性ポリマーである必要もない。また、この化合物は光感光性であるため、マスクすることにより、特定部位への親水基(ヒドロキシル基、カルボキシル基)の導入を可能とする。例えば、ポジ型の画像を形成できるし、あるいはシリコンウェハのような平面上の基板には、マスクをかけて光照射すれば、特定の部位だけを親水化できる。さらに、酸素による影響や経時変化もない安定な化合物である。また、化合物が有機−無機複合体より有機ポリマーだけの物よりも高い耐熱性が充分に期待される。
クロロジメチルシリル基、ジクロロメチルシリル基、トリクロロシリル基とクロロ基の数の異なるカップリング剤を選択することにより、材料表面に付着できる面積をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル6−(トリメトキシシリル)へキシルエーテルについて、照射時間と接触角の関係を示す。
【図2】5−(トリメトキシシリル)−ペンタン酸1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)メチルについて、照射時間と接触角の関係を示す。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    Figure 0004156858
    (上式中、GはO又はCOOを表し、RとRは独立して水素原子又はメトキシ基を表すが、いずれも水素原子であることはなく、RとRは結合して環を形成してもよく、Rは炭化水素基の側鎖を有してもよいm個のメチレン基を表し、ここでmは3以上の整数であり、X1はトリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基を表す。)
  2. 請求項1に記載の化合物とヒドロキシル基を有する材料を反応させ、光照射することを特徴する材料表面にヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有する材料の製造方法。
  3. 請求項1に記載の化合物をヒドロキシル基含有ポリマーと反応させ、光照射することを特徴するヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有するポリマーの製造方法。
  4. 下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物をヒドロキシル基含有ポリマーと反応させ、光照射することを特徴するヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有するポリマーの製造方法。
    Figure 0004156858
    (上式中、GはO又はCOOを表し、RとRは独立して水素原子又はメトキシ基を表すが、いずれも水素原子であることはなく、RとRは結合して環を形成してもよく、Rは炭化水素基の側鎖を有してもよいm個のメチレン基を表し、ここでmは3以上の整数であり、Xはトリメトキシシリル基又はエトキシシリル基を表し、GはO又はCOOを表し、Rは水素原子又は直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは炭化水素基の側鎖を有してもよいn個のメチレン基を表し、ここでnは3以上の整数であり、Xはトリメトキシシリル基とトリエトキシシリル基とクロロジメチルシリル基とジクロロメチルシリル基とトリクロロシリル基からなる一群から選ばれる。)
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