JP2008111710A - 表面修飾剤及びそれにより表面修飾された固相の製造方法 - Google Patents

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Koji Suzuki
鈴木  孝治
Kenichi Maruyama
健一 丸山
Yasuhiro Kobayashi
康宏 小林
Akio Ueda
晃生 上田
Toshiharu Saiki
敏治 斎木
Masaru Sakai
優 酒井
Koji Yamada
幸司 山田
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Abstract

【課題】生体分子の機能を損なうことなく、かつ、生体分子を固相上の所望の領域に精度良く固定化することができる手段を提供すること。
【解決手段】末端に光開裂性の構造を有する化合物であって、光照射により開裂を起こしてカルボキシル基を生じる化合物を用いて、アレイ基板等の固相表面を修飾することにより、光照射した部位にのみカルボキシル基を形成させることができること、そのようにして形成させたカルボキシル基に生体分子を結合させることにより、固相上の所望の部位にのみ生体分子を結合させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、固相表面にカルボキシル基を結合させるための表面修飾剤及び該表面修飾剤により表面修飾された固相の製造方法に関する。
近年、遺伝子多型の検出によるオーダーメイド医療や創薬研究等のため、生体分子を基板上に固定化したアレイやチップが注目されている。固定化される生体分子として代表的なものとしては、核酸、タンパク質、抗体等が挙げられる。特に、核酸を固定化したマイクロアレイは、既に種々の製品が市販されており、様々な分野で活用されている。また、特定の生体分子を検出するために、抗体やレセプター等を固定化したバイオチップも開発されている。
アレイやチップを用いた研究のハイスループット化等の観点から、アレイやチップの微細化、集積度の向上が望まれている。従って、基板上の所望の領域に生体分子を高精度に固定化し、かつ、固定化後も生体分子の結合特異性等の機能が保持されている固定化方法が求められている。
現在までのところ、基板上に生体分子を固定化する方法として、基板と生体分子との間の結合を架橋する化学物質を用いる方法が知られている(特許文献1、2)。特許文献1には、基板表面に存在する官能基と結合する官能基、及び、生体分子と結合する官能基を分子内に有する架橋剤が記載されており、基板表面に該架橋剤を結合させ、これを介して基板上に核酸やタンパク質等の生体分子を固定化する方法が記載されている。特許文献2には、ポリアミド固相のアミド基にイソシアン酸エステル化合物を結合させ、該化合物を介して固相表面に核酸やタンパク質等を固定化する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1にも2にも、所望の微細領域にのみ生体分子を固定化する方法については全く記載されていない。
特開2004−264027号公報 特開2006−177795号公報
従って、本発明の目的は、生体分子の機能を損なうことなく、かつ、生体分子を固相上の所望の領域に精度良く固定化することができる手段を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、末端に光開裂性の構造を有する化合物であって、光照射により開裂を起こしてカルボキシル基を生じる化合物を用いて、アレイ基板等の固相表面を修飾することにより、光照射した部位にのみカルボキシル基を形成させることができること、そのようにして形成させたカルボキシル基に生体分子を結合させることにより、固相上の所望の部位にのみ生体分子を結合させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式[I]
Figure 2008111710
(ただし、式中、Xは固相表面と共有結合し得る構造、Yは存在していてもしていなくてもよく、存在する場合には任意のスペーサー構造、Zは光照射により隣接する酸素原子との結合が開裂する光開裂性構造を示す)
で表される構造を有する、固相表面にカルボキシル基を結合させるための表面修飾剤を提供する。また、本発明は、上記本発明の表面修飾剤を固相と反応させて該表面修飾剤を固相表面に結合させる工程と、固相に光を照射して一般式[I]中のO-Z間を開裂させてカルボキシル基を生成させる工程を含む、表面にカルボキシル基が結合された固相の製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の表面修飾剤を表面に結合させた固相を提供する。
本発明によれば、基板等の固相表面の所望の領域にのみカルボキシル基を生成することができる。このカルボキシル基を、タンパク質や核酸等のような生体分子との結合に用いれば、所望の領域に所望の生体分子を結合させた基板を作製することが可能となる。従って、本発明によれば、精度良く基板の加工を行うことができ、生体分子を結合させたアレイやチップの集積度を高めることができる。従って、本発明は、生体分子を用いたアレイ等の加工技術の開発に貢献するものと期待される。
本発明の表面修飾剤は、上記一般式[I]で表されるものである。一般式[I]において、Xは固相表面と共有結合し得る構造を示し、該構造により本発明の表面修飾剤が固相表面に固定される。Xとしては、固相表面に存在する官能基と反応して共有結合し得る官能基であれば、いかなる官能基であってもよい。なお、「固相表面と共有結合する」とは、固相を構成する材質自身が有する官能基と直接共有結合することのみならず、固相表面に結合させた少なくとも1種類の物質が有する官能基と共有結合することも意味する。後者の場合、少なくとも1種類の物質を介して固相と本発明の表面修飾剤とが結合されることになる。
例えば、固相表面に存在する官能基が−NH基、−SH基、−COOH基、−OH基、−CHO基等である場合、これと共有結合し得るXの例としては、SCN−、ClOS−、
Figure 2008111710
(ただし、式中、R1ないしR3は互いに独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示し、これらのうちの少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシル基である)
Figure 2008111710
Figure 2008111710
BrHC−、ClOC−、−NH、−NHNH、−CHI、-CH2ONH2(-HCl)(塩酸塩であってもなくてもよい)、
Figure 2008111710
Figure 2008111710
を挙げることができる。
Xが上記一般式[II]の場合、固相表面に存在する−OH基との間で、下記スキーム1に示すように結合を形成する。なお、下記式中、Xが一般式[II]である表面修飾剤の例として記載される化合物は、後述する本発明の好ましい表面修飾剤の1つである4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエートである。
Figure 2008111710
スキーム1
上記に例示した、一般式[II]以外のXについて、これらのXと反応する固相表面の官能基(R') 及び両者の間で形成される結合を下記表1に示す(なお、Xが−NHの場合は、表1に示される、固相表面の官能基(R')が−NHの場合のXと表1に記載のように結合できる)。
Figure 2008111710
アレイやチップの基板としては、ガラスや石英などのSiO系の素材から成る基板が用いられることが多いが、そのような基板の場合、表面には−OH基が存在する。従って、Xとしては−OH基に共有結合し得る官能基が好ましく、特に上記一般式[II]が好ましい。
一般式[I]中、Yは存在していてもしていなくてもよい構造であり、存在する場合には任意のスペーサー構造を示す。スペーサー構造としては、Xと固相表面との結合を妨げず、かつ、Zと隣接する酸素原子との間の結合を光開裂させる条件で開裂することのない構造であれば、いかなる構造であってもよい。そのようなYとしては、炭素数1〜6程度のアルキレン基が最も単純な構造のものとして例示できるが、これに限定されず、上記条件を満たす限りにおいて、例えば分枝する構造、環状構造、置換基を有する構造など、より複雑な構造のものであってもよい。具体的には、例えば直鎖アルキレン基のみならず分枝アルキレン基のような分枝する構造であっても良い。また、アルキレン基の主鎖の炭素原子に結合する1以上の水素原子がハロゲン、ニトロ基、スルホニル基、アルキル基、アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよく、また、アルキレン基の主鎖の炭素原子が酸素原子、窒素原子等で置換されていてもよい。
一般式[I]中、Zは光開裂性構造を示し、光照射によりO−Z間の結合が開裂する。そのようなZの好ましい例として、
Figure 2008111710
(ただし、式中、R4、R5及びR6は互いに独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシル基を表す)
を挙げることができる。一般式[III]で表される構造の中でも、R4、R5及びR6のうちの2個が炭素数1〜6のアルコキシル基であり、残りが水素であるものが好ましい。
その他、Zの例としては、以下のようなものが挙げられる。
−NH基、−SH基、−COOH基
好ましい表面修飾剤の一例である、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエートの構造を以下に示す。下記式中、Meはメチル基を表す。
Figure 2008111710
一般式[I]において、X、Y、Zはそれぞれ上記した通りの構造である。これらの各構造はそれ自体公知であり、従って、一般式[I]に示す構造を有する本発明の表面修飾剤は、当業者であれば、有機合成化学の技術常識に基づき、容易に合成することができる。例えば、上記した[VII]の表面修飾剤であれば、下記実施例に記載するように、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルアルコールと4−ペンテン酸とを適当な反応条件下で結合させ、次いで、得られた4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 4−ペンテノエートと、トリメトキシシランとを、適当な反応条件下で結合させることにより合成することができる。もっとも、下記実施例は単なる例示であり、合成方法はこれに限定されるものではない。なお、R3Si-CH2-の構造(Rはアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基)を有する公知の化合物として、シランカップリング剤がある。従って、下記実施例において、上記[VII]の化合物を「光開裂性シランカップリング剤」といい、[VII]の化合物を固相に結合させる処理を「シランカップリング処理」ということがある。
本発明の表面修飾剤が結合される固相としては、その表面に構造Xとの間で共有結合を形成し得る官能基を保持できるものであれば特に限定されない。そのような固相のうち、好ましい例としては、ガラス又は石英から成る固相を挙げることができる。ガラスや石英は、上記した通り、アレイの基板材料として頻繁に用いられているものである。
本発明の表面修飾剤を固相表面に結合させる反応は、表面修飾剤中の構造Xと、固相上に存在する、Xと結合させるべき官能基の種類に応じて、公知の技術に基づき適宜の条件で行うことができる。下記実施例にも、好ましい表面修飾剤の一例である上記式[VII]の化合物と固相との結合反応の条件が具体的に記載されている。
X及び該Xと結合する固相表面の官能基(R’)の上記した具体的な組合せのそれぞれについて、具体的な結合反応条件の例を以下に記載する。もっとも、これらは単なる例示であり、他の反応条件でもこれらの官能基同士を結合させることは可能であるので、結合反応条件が下記のものに限定されるものではないことは当業者にとって明らかである。また、ここに記載されていないXについても、当業者が化学常識に従って容易に結合反応を行うことができる。
(1) XがSCN−、R’が−NHの場合
固相に(エタノール : 水 :トリエチルアミン = 2 : 2 : 1 v/v)の溶液を加えて乾燥させた後、(エタノール : 水 :トリエチルアミン : 表面修飾剤 = 7 : 7 : 1 : 1 v/v)の溶液を加え室温で20分間反応させ、溶媒を乾燥させる(B. A. Bidlingmeyer, et al, J. Chromatogr., 336, 93 (1984)参照)。
(2) XがClOS−で、R’が−NHの場合
固相に(1M NaHCO3水溶液:1 mg / mL表面修飾剤/アセトン溶液=5:2)の溶液を加え、60℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる(Meffin, P. J., et al, J. Pharm. Sci., 66, 583 (1977)参照)。
(3) Xが
Figure 2008111710
で、R’が−NHの場合
固相にTHFを加え、次いで表面修飾剤を加え、60℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる(Jupill, T. H., Am. Lab., 8 (5), 85-92 (1976)参照)。
(4) Xが
Figure 2008111710
で、R’が−SHの場合
固相に水を加えた後、1 mg / mL表面修飾剤/アセトニトリル溶液を加え、60℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる(Nakashima K., et al, Talanta., 32, 167 (1985)参照)。
(5) XがBrHC−又はIHC−で、R’が−COOHの場合
固相にアセトンを加え、次いで1 mg / mL表面修飾剤/アセトン溶液およびK2CO3を加え(K2CO3の添加量は、固相に加えたアセトン + 表面修飾剤/アセトン溶液の合計量700μLに対し1 mg)、60℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる(Dunges, W., Anal. Chem., 49, 442 (1977)参照)。
(6) XがClOC−で、R’が−OHの場合
固相にピリジンを加えた後、1 mg / mL表面修飾剤/ピリジン溶液を加え、40℃で1時間加熱する。溶媒を乾燥させる(Suzuki, A., et al., J. Biochem., 82, 1185 (1977)参照)。
(7) Xが
Figure 2008111710
で、R’が−CHOの場合
固相に(メタノール:酢酸:1 mg / mL表面修飾剤/メタノール溶液=1 : 0.1 : 0.2)の溶液を加え、40℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる。
(8) Xが
Figure 2008111710
で、R’が−NHの場合
固相にエタノールを加え、次いで10 mg / mLの表面修飾剤/エタノール溶液を加え、室温で5分間〜10分間撹拌する。溶媒を乾燥させる(Roth, M., Anal. Chem., 43, 880 (1971)参照)。
(9) Xが−CHONH・HClでR’が
Figure 2008111710
の場合
固相、トリエチルアミン数滴、表面修飾剤を50℃で30分間加熱する。溶媒を乾燥させる(Jupille, T. H., Am. Lab., 8 (5), 85-92 (1976)参照)。
(10) Xが−NHNH、R’が−CHOの場合
固相に水を加え、30%HClO4水溶液に20mg/mLの割合で表面修飾剤を溶かした溶液を加え、室温で10分間撹拌する。溶媒を乾燥させる(Newberg, C., et al., Anal. Chim. Acta, 7, 238 (1952)参照)。
一般式[I]中のO-Z間を開裂させるための光照射の条件は、適用される光開裂性構造の種類に応じて適宜決定される。例えば上記した一般式[III]を適用する場合、照射する光の波長は320nm〜390nm、好ましくは350nm程度の近紫外光を照射することにより、一般式[III]とそれに隣接する酸素原子との間の結合を開裂させることができる。照射時間及び照射強度は特に限定されないが、通常5秒間〜120秒間程度であり、強度は1μW〜100μW程度である。
下記実施例に記載される本発明の表面修飾剤の一例を用いて、光照射による開裂反応の機構を示すと、次のスキーム2のようになる。
Figure 2008111710
スキーム2
上記スキーム2に示すとおり、本発明の表面修飾剤は、光開裂により末端にカルボキシル基を生じる。従って、まず本発明の表面修飾剤を固相表面に結合させ、次いで、固相表面に結合した表面修飾剤に光照射することにより、固相表面にカルボキシル基を生成させることができる。
すなわち、本発明は、上記本発明の表面修飾剤を固相と反応させて該表面修飾剤を固相表面に結合させる工程(工程1)と、固相に光を照射して一般式[I]中のO-Z間を開裂させてカルボキシル基を生成させる工程(工程2)を含む、表面にカルボキシル基が結合された固相の製造方法をも提供する。工程1において表面修飾剤を固相表面に結合させる方法、及び工程2においてO−Z間を開裂させる光照射の条件については、上記したとおりである。
上記した好ましい表面修飾剤の一例である、[VII]の光開裂性シランカップリング剤を例に用いて、工程1と工程2を説明する。
(工程1) 公知のシランカップリング剤は、通常、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒などで0.2〜2%の希薄溶液にして用いられるが、上記光開裂性シランカップリング剤も同様の方法で用いることができる。ガラス基板のように表面に−OH基を有する固相を、上記光開裂性シランカップリング剤溶液に浸漬すると、上記したスキーム1のような反応を起こし、固相上に光開裂性シランカップリング剤が固定化される。
(工程2) 次いで、固相上に固定化された光開裂性シランカップリング剤にUVを照射すると、固相表面において上記スキーム2のような開裂反応が起こり、次のスキーム3に示すように固相表面にカルボキシル基が形成される。
Figure 2008111710
スキーム3
このように、この光開裂性シランカップリング剤を用いれば、UV照射するだけで容易に固相表面にカルボキシル基を生成させることができる。
表面修飾剤を結合させた固相上の領域のうち、一部にのみ光照射すれば、その領域のみにカルボキシル基を生成することができる。光を照射する領域を厳密にコントロールすれば、固相上の微細な領域にのみカルボキシル基を生成することが可能となる。後述するとおり、該カルボキシル基を利用して固相上に所望の物質を結合させることができるが、カルボキシル基を生成させる領域を微細にすれば、所望の物質を微細領域にのみ結合させることができる。従って、本発明の表面修飾剤を用いて、微細領域にのみカルボキシル基を生成させた固相を調製し、これをアレイ基板として用いれば、アレイの集積度を高めることが可能となる。また、固相に結合させる物質量も微量で済むため、貴重なサンプルを節約することができる。
光照射部位を制御する方法としては、例えば、レンズや光ファイバーを用いて集光し、所望の部位にのみ照射する方法が挙げられる。レンズを用いて集光する場合には、例えば図1に示す構成の装置を用いることができる。該装置では、レーザー光源1から発した光は、フィルター4により所望の波長に調節され、対物レンズ6により集光されて固相上の表面修飾剤に照射される。焦点の調節は、固相表面で反射した光をCCD7で観察することによって行い、ピエゾにてステージ8を走査して、所望の領域への光照射を行う。下記実施例にある通り、コリメータレンズ3を用いてレーザー光を平行光に調整するとともにレーザー径を拡大させた場合には、対物レンズ6により集光される光の焦点の幅をより一層絞り込むことができる。また、下記実施例にある通り、該装置にシャッターをさらに加え、ピエゾの走査とシャッターを連動させることにより、文字や模様を描くことも可能となる。ピエゾとシャッターの制御はプログラムにより行うことができるので、様々な形状加工を反復して行うことができ、操作性にも優れる。このような装置を用いて固相上に線図を描写する場合には、集光させた光の移動速度、すなわちピエゾの走査速度は、特に限定されないが、通常、蛍光強度10μW〜200μWの場合には0.1μm/秒〜1μm/秒程度、蛍光強度1000μWの場合は4μm/秒〜16μm/秒程度である。
光をレンズにより集めた場合、光は無限小の一点には集まらず、光の回折現象によりある有限の大きさまでしか集光できない。このことを回折限界といい、この有限の大きさの円盤をエアリーディスクという。すなわち、レンズを用いて集光することにより、固相表面に結合させた表面修飾剤のカルボキシル化加工を行う場合、加工分解能はエアリーディスク半径に依存することになる。
この回折限界は光の波動性に由来しており、半径方向にガウス分布した光についてマクスウェルの方程式に基づいた解析を行うことでエアリーディスクの大きさを求めることができる。このように求められたエアリーディスクの半径は、次の式(1)のように表せる。
ε= 0.61λ/ NA (1)
ε: エアリーディスク半径
NA : 開口数
NAは一般的に倍率の高いレンズほど大きくなるので、エアリーディスクの半径を小さくし分解能を上げるためには、波長λを小さくし、倍率の高いレンズを用いればよいといえる。また、開口数NAはレンズから光軸上の結像点に向う光束の角度をθとしたとき、次の(2)式のように表すことができる。
NA = n sinθ (2)
n : 屈折率
通常、100倍の対物レンズを用いた場合NAは0.9程度の値をとり、油浸対物レンズを用いてレンズと試料の間に屈折率1.5程度の油などで充填した場合NAは1.4程度の値をとる。
下記実施例では、100倍の対物レンズを用いており、照射光の波長は351.1nmであるため、NA=0.9、λ=350として上式(1)によりエアリーディスク半径εを計算すると、ε=474となり、理論加工分解能は474nmとなる。実際の加工分解能は、コリメートを行わなかった場合には1100nm、コリメートを行った場合は600nmであった。コリメートにより加工分解能の値が減少し、加工分解能が向上しているが、この原因としては次のことが考えられる。すなわち、平行光にして集光位置を焦点にし、ビーム径を広げてレンズに入る光束を最大にしたときに、光束の集まる角度θが最大となり、(2)式よりN.A.が最大となる。よって、コリメートによりN.A.がレンズ本来の性能である0.9により近くなり、エアリーディスクが縮小する。このことから、コリメートにより加工分解能の値が減少したのではないかといえる。
また、集光の手段としては、走査型近接場光学顕微鏡(NSOM)に用いられているような光ファイバープローブを利用することもできる。NSOMに用いられる光ファイバープローブは、光ファイバーの先端をエッチングして先鋭化した後に、金などの金属膜で覆い、先端のみを開口させたものであり、近接場光を発生させることができる。近接場光は回折限界を超える分解能を有し、その分解能は開口径に依存する。通常のNSOMに用いられている光ファイバープローブは先端開口径が約100nmであるが、それを用いた場合には理論上は約100nmの加工分解能が期待されるので、対物レンズで集光する場合よりも微細な加工を行うことができる。もちろん、より分解能の高い光ファイバープローブを用いれば、より微細な加工が可能となる。そのような光ファイバープローブはNSOMの分野で周知である。
上記のようにして固相上に形成されたカルボキシル基は、固相上に所望の物質を結合させる手段として用いることができる。上記カルボキシル基に結合させる物質としては、カルボキシル基と結合可能な構造を有する物質であれば特に限定されないが、抗体やレセプターなどのような、特定の物質に対する結合特異性を有する物質(本願明細書において「特異結合性物質」という)を結合させれば、該固相を特定の物質を測定する手段として利用することが可能となる。特異結合性物質の例としては、抗原、抗体及びその抗原結合性断片、MutSタンパク、レセプター及びそのリガンド、核酸、アプタマー、RNA等が挙げられる。ここで、「抗原結合性断片」とは、対応する抗原との結合性を有した、Fab断片やF(ab')2断片のような抗体断片をいい、さらに、例えば抗体のL鎖及びH鎖それぞれの可変領域をつないで構築した、ScFV (single chain Fragment of variable region)等の人工的な一本鎖抗体をも包含する。抗体や抗原結合性断片の作製方法自体は周知である。抗体や抗原結合性断片(または抗原)を結合させた固相は、対応抗原(または対応抗体)の免疫測定に用いることができる。免疫測定自体はこの分野において周知であり、反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法等があり、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定、ビオチン免疫測定等がある。本発明の固相に抗体、抗原結合性断片又は抗原を結合させた固相は、これらのいずれの免疫測定にも用いることができる。上記MutSタンパクとは、DNA修復酵素の1種であり、C-C以外の全ての一塩基ミスマッチ及び1〜4塩基の短い欠失・挿入を認識し、2量体で結合するタンパク質である。MutSタンパク質を結合させた固相は、試料核酸中のミスマッチ点変異の検出に用いることができ、例えば癌の検出等に有用である。また、レセプター(またはリガンド)を結合させた固相は、試料中の対応リガンド(または対応レセプター)を測定するためのチップ等として用いることができる。核酸を結合させた固相は、核酸アレイの基板として用いることができ、固相上の核酸とハイブリダイズする試料中の核酸の測定に用いることができる。アプタマーとは、特定のタンパク質と特異的に強い親和性を示すオリゴヌクレオチドであり、これを結合させた固相は、試料中の特定のタンパク質の測定に用いることができる。いずれの場合であっても、固相表面に結合させる物質の量及び分析に供する試料の量を節約することができる。さらに、例えば免疫測定の場合は検出に標識二次抗体等の試薬が必要となるが、そのような試薬の使用量も抑えることができる。また、アレイ基板、チップ等の固相の小型化、集積度の向上も可能となり、分析機器の小型化等にも貢献できる。
特異結合性物質等の所望の物質と固相上に形成されたカルボキシル基との結合は、直接又は間接的に行うことができる。例えば、抗体やレセプター等のペプチド性物質を結合させる場合には、該ペプチド性物質自体が−NH基を有するため、この−NH基と固相表面のカルボキシル基との間でペプチド結合を形成させることにより、固相上への該ペプチド性物質の不動化を行うことができる。また、前記所望の物質と前記カルボキシル基との少なくとも一方に化学的修飾を施し、修飾により導入された構造体を介して、所望の物質とカルボキシル基とを結合させてもよい。例えば、核酸を結合させる場合、核酸にアミノ基を導入し、該アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって、固相上への核酸の不動化を行うことができる。核酸へのアミノ基の導入方法は周知であり(特公平3-74239号公報、米国特許4,667,025号、米国特許4,789,737号、Nucleic Acids Res.,11(18),6513-(1983)等)、アミノ基導入用試薬も市販されているので(例えば、アミノリンクII(商標名);PEバイオシステムズジャパン社、Amino Modifiers(商標名);クロンテック社)、容易に行うことができる。
また、周知のビオチン−アビジンの系を利用することにより、種々の物質を固相上のカルボキシル基に間接的に結合させることもできる。例えば、固相上のカルボキシル基にアビジンを結合させれば、ビオチン標識した種々の物質を、ビオチン−アビジン間の特異的結合によって固相上に不動化することができる。また、下記実施例に詳述するように、固相上のカルボキシル基と抗体等の所望の物質との双方にビオチンを結合させ、アビジンを介して両ビオチンを結合させることによっても、固相上に所望の物質を不動化することができる。タンパク質や核酸等にビオチン標識を施す方法はこの分野で周知であり、そのためのビオチン化試薬も種々のものが市販されているため、それらを用いれば容易に所望の物質をビオチン標識することができる。また、ビオチン標識された物質自体も種々の市販品が存在する。アビジンはタンパク質であるから、例えば上記した通り、アビジン分子が有する−NH基を用いて、固相上のカルボキシル基とのペプチド結合により、固相上に結合させることができる。固相上にアビジンを結合させておけば、ビオチン標識されたいずれの物質をも自由に固相上に不動化できる。従って、固相上にアビジンを結合させた状態で市販すれば、購入者それぞれが、ビオチン−アビジンの結合を利用して、自由に所望の物質を固相上に不動化することができるので、購入者の自由な基板設計が可能となる。
以下、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.光開裂性シランカップリング剤の合成
(1) 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 4−ペンテノエート[2]の合成
Figure 2008111710
N2置換した300 mlナスフラスコに1−エチルー3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(9.18 g、48.0 mmol、1.6当量)及びテトラヒドロフラン(THF) (20 ml)を入れた。系に4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジルアルコール (6.39 g、30.0 mmol、1.0当量)、4-ペンテン酸(3.60 g、36.0 mmol、1.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP) (4.40 g、12.0 mmol、1.2当量)のTHF (70 ml)溶液を氷浴上で滴下し、22時間攪拌した。反応系に0.2 M HCl (150 ml)を加え、クロロホルムで抽出、濃縮し、次いで2 % NaHCO3水溶液 (150 ml)を加え、酢酸エチルで抽出した。Na2SO4で乾燥、ろ過し、濃縮することで化合物2 (7.615 g、86.0 %)を黄色固体として得た。
1H-NMR (300 MHz,CDCl3,TMS,r.t.)
δ(ppm) = 7.72 (s,1H,Ar),7.00 (s,1H,Ar),5.78-5.91 (m,1H,−CH=CH2),5.52 (s,2H,Ar−CH 2−O−),5.00-5.12 (m,2H,−CH=CH 2),3.98 (s,3H,Ar−OCH 3),3.96 (s,3H,Ar−OCH 3),2.40-2.57 (m,4H,−CH2−CH2−)
(2) 4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエート[3]の合成
Figure 2008111710
N2置換した50mlナスフラスコに化合物2 (4.0 g、13.5 mmol,1.0当量)、トリメトキシシラン (11.1 g、91.0 mmol、6.7当量)及びH2PtCl6・6H2O (極少量)を入れ、37℃で30分攪拌した後、100℃で2時間攪拌した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液 ; ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン = 200 : 100 : 3 [体積比])で分離精製し、光開裂性シランカップリング剤である化合物3 (2.95 g、52.7%)を褐色液体として得た。
TLC ; Rf = 0.24 (ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン = 200 : 100 : 3 [体積比])
1H-NMR (300 MHz,CDCl3,TMS,r.t.)
δ(ppm) = 7.72 (s,1H,Ar),7.00 (s,1H,Ar), 5.51 (s,2H,Ar−CH 2−O−),3.99 (s,3H,Ar−OCH 3),3.96 (s,3H,Ar−OCH 3),3.57 (s,9H,Si−(OCH 3)3),2.40-2.45 (t,2H,−CO−CH 2−),1.68-1.77 (m,2H,−CO−CH2−CH 2−),1.43-1.53 (m,2H,−CH2−CH 2−CH2−),0.64-0.69 (m,2H,−CH 2−Si−)
MS (ESI-TOF)
[M + Na]+ = 440.17
2.光開裂性の評価
上記で得られた光開裂性シランカップリング剤の褐色液体に、350nmの紫外線を強度300mW/cm2で照射した。照射後の光開裂性シランカップリング剤をメタノールの希薄溶液とし、ESI-TOF MSにて質量を分析した。
UV照射後のESI-TOF MSのスペクトルでは、245.12と196.08のピークが認められ、次のように開裂反応が起こっていることが確認された。
Figure 2008111710
3.光開裂性シランカップリング剤による基板の表面処理
(1) 基板処理
石英基板に次のような操作でシランカップリング処理を施した。
[1] 2 N NaOHに2時間浸漬した。
[2] 純水、1 N HCl、純水の順ですすいだ。
[3] 5 % HF水溶液で30秒間、表面をエッチングした。
[4] 純水ですすぎ、ピランハ (H2SO4 : H2O2 = 3 : 1)に1時間浸漬した。
[5] 純水ですすぎ、乾燥させた後、光開裂性シランカップリング剤 (化合物3)の0.2 % ベンゼン溶液に入れ、2日間振動攪拌した。
[6] クロロホルム中で超音波洗浄し、110℃で5分間乾燥させた。
[7] 80℃の温水中で4時間振動攪拌した。
[8] 純水ですすぎ、110℃で5分間乾燥させた。
(2) 基板上におけるUV開裂の確認
X線光電子分光分析法(XPS)により、シランカップリング処理後の基板表面の分析を行なった。PHI社製のQuantum-2000を用い、次のような条件でXPSを行った。
X線源 : Monochromated-Al-Kα線(1486.6 eV) 40 W
光電子取り出し角度 : 45゜(測定深さ : 約4 nm)
測定エリア : φ 200 μm 楕円形
Pass Energy : 58.70eV
Energy Step : 0.125eV
Ag3d5/2 FWHM(半値幅): 1.00eV
XPSによる測定を行った基板サンプルは、以下の4種類である。
(サンプル1) シランカップリング処理 : 前記基板処理工程の[1]〜[6]を行った基板
(サンプル2) シランカップリング処理 + UV照射 : 前記基板処理工程の[1]〜[6]を行った後、UV照射を行った基板
(サンプル3) シランカップリング処理 + 温水処理 : 前記基板処理工程の[1]〜[8]を行った基板
(サンプル4) リファレンス : 前記基板処理工程の[1]〜[4]を行った基板
なお、サンプル2のUV照射は前記の「2.光開裂性の評価」と同様に行った。
各基板サンプルについての、C1sの状態分析結果を図2に、N1sの状態分析結果を図3に示す。図2によると、UV照射を行ったサンプル2では、UV照射を行っていないサンプル1及びサンプル3と比較して、−(CH2)n−、−C−O−のピークが低下していた。しかしながら、O−C=Oのピークは、サンプル2においてもサンプル1及び3と同様に認められた。また、図3によると、サンプル1及びサンプル3ではNO2に由来するNOxのピークが明確に認められるのに対し、UV照射したサンプル2ではNOxのピークが完全に消失していた。すなわち、UV照射したサンプル2では、基板表面上にO−C=Oの状態のCは保持されているものの、−(CH2)n−、−C−O−の状態のCが減少し、光開裂構造にのみ存在するNOxが全て消失していた。このことは、基板上に固定された光開裂性シランカップリング剤は、UV照射を受けて開裂し、その光開裂性部位が離脱した状態になることを示している。この光開裂反応(上記スキーム2及びスキーム3)により基板上にカルボキシル基が形成されるが、当該カルボキシル基の存在は、後述する「4.フォトナノリソグラフィーと加工分解能評価」において、カルボキシル基を蛍光標識することにより確認されているとおりである。なお、温水処理を行なったサンプル3では、温水処理を行なわないサンプル1と比較して、−C−O−のピークが低下していたが(図2)、これは、未反応のSi(OMe)n基がH2Oとの反応により、より反応性の高いSi(OH)n基になり、基板もしくは隣のシランカップリング剤と結合したためであると推測される。
4.フォトナノリソグラフィーと加工分解能評価
(1) 光開裂性シランカップリング剤を固定化した基板の加工方法
図1に示す構成の装置を用いて、光開裂性シランカップリング剤を固定化した基板の加工を行った。加工に用いた基板は、上記した基板処理工程を行ってシランカップリング処理を行なった基板とした。該装置において、レーザー光源としては、COHERENT社製の水冷アルゴンイオンレーザー Innova 300を用いた。使用したUV波長は351.1nmであった。対物レンズにはNIKON社製の100倍対物レンズ LU Plan Fluor EPI 100xを用いた。N.A.は0.9であった。ピエゾステージにはNanonics社製の3D Flatscanner SC-50を用いた。ピエゾコントローラーにはSII社製のプローブステーションSPI3800Nを用いた。
基板加工(フォトナノリソグラフィー)の手順は以下のとおりである。
[1] Arレーザーより発振されたUVレーザー(波長351 nm)をコリメートすることにより、平行光にし、ビーム径を広げた。
[2] レンズで集光したレーザーをサンプルに照射し、サンプル表面で反射した光をCCDで観察しながら焦点を合わせた。
[3] CCDによる観察で焦点を調節しながら、ピエゾにてステージを走査し基板のUV照射部位にカルボキシル基を生成させた。
[4] 加工した基板を200mM EDCを含む100mM MES緩衝液 pH 5.0に浸漬し、24時間インキュベーションした。
[5] 0.1mg/ml Alexa Fluor(登録商標) 488 hydrazide(アルドリッチ社)を含む100mM MES 緩衝液pH 5.0で、30秒間インキュベーションすることで、カルボキシル基を蛍光標識した。
(2) 加工分解能の評価
(i) 使用機器
蛍光顕微鏡及びNSOMを用いて、加工後の基板表面の観察を行った。蛍光顕微鏡にはOLYMPUS社製の倒立型リサーチ顕微鏡IX71を用いた。ただし、対物レンズにはOLYMPUS社製の100倍対物レンズUM Plan Fl 100x (N.A. = 0.95)を用いた。NSOMにはSII社製のプローブステーションSPI4000を用いた。ただし、測定モードはi-mode(登録商標)であり、NSOMプローブにはSII社製のAlコートベントプローブ、対物レンズにはNIKON社製の油浸100倍対物レンズ Plan Fluor 100x (N.A. = 1.30)、フォトン数計測にはPerkin Elmer社製のAPD (Avalanche Photodiode : アバランシェフォトダイオード) SPCM-AQR-16を用いた。
(ii) NSOMの分解能
まず、NSOMプローブの分解能を調べるため、100nm蛍光ビーズの測定を行った。その結果を図4に示す。図4より最小のもので幅が270 nmと測定された。測定した蛍光ビーズの大きさは100 nmであったため、使用したNSOMプローブの開口径は170 nmであり、NSOMイメージがその開口径の分だけ実際の大きさよりも大きくなっていると考えられる。従って、NSOMイメージで測定される線幅から170nmを差し引いた値を、フォトナノリソグラフィーの加工分解能として評価することとした。
(iii) イメージング結果(その1)
上記(1)の方法でフォトナノリソグラフィーを行った基板の蛍光顕微鏡イメージ及びNSOMイメージを図5に示す。加工の際のUV強度は10μW、走査速度は0.1μm/秒(図5(a)中の1)、0.2μm/秒(図5(a)中の2)又は0.4μm/秒(図5(a)中の3)であった。ただし、NSOMイメージは蛍光顕微鏡イメージの白抜きの四角の中をイメージングしたものである。図5(c)より、測定された線幅は770 nmであった。従って、フォトナノリソグラフィーの加工分解能は、測定された線幅から170nmを差し引いた値、すなわち600nmであった。走査速度が速くなるほど蛍光強度が低下していたが、線幅はいずれの走査速度でも差がなかった。
(iv) イメージング結果(その2:コリメートの影響)
コリメートを行わなかった他は上記(1)の方法と同様にしてフォトナノリソグラフィーを行った基板の蛍光顕微鏡イメージ及びNSOMイメージを図6に示す。加工の際のUV強度は10μW、走査速度は0.1μm/秒(図6(a)中の1)、0.2μm/秒(図6(a)中の2)又は0.4μm/秒(図6(a)中の3)であった。測定された線幅は約1270nmであった。従って、この場合のフォトナノリソグラフィーの加工分解能は1100nmであった。コリメートによって加工分解能が向上することが示された。
(v) イメージング結果(その3:走査速度及びUV強度の影響)
上記(1)の方法に従い、UV強度200μW、走査速度1μm/秒の条件でフォトナノリソグラフィーを行った基板の蛍光顕微鏡イメージを図7に示す。図5(a)と図7を比較しても最も細いところの線幅はほとんど変わっていないといえる。図7の左下で線が太くなっているなど、線幅にむらがあるのは、焦点合わせを手動で行っているため、走査速度1μm/秒では手動で焦点を合わせるには速度が速かったためと考えられる。このように、加工分解能は走査速度、UV強度には依存性がなく、焦点方向のずれに対する依存性が高いと考えられる。
(vi) イメージング結果(その4)
図1の装置構成にシャッターも加え、ピエゾの走査とシャッターを連動させることにより、文字や模様を描いた。それらの蛍光顕微鏡像を図8に示す。ピエゾとシャッターをプログラムで制御するだけで、様々な形状の加工を同じ装置構成にて行うことができることが示された。このことから、本発明におけるフォトナノリソグラフィーは優れた操作性を有しているといえる。
5.IgG抗体を用いたバイオリソグラフィー
(1) 抗体修飾
基板表面に形成させたカルボキシル基に、図9に示す抗体修飾を施し、蛍光イメージの測定を行った。抗体修飾の手順は以下のとおりである。
[1] 上記したフォトナノリソグラフィー工程[1]〜[4]に従って、基板表面にカルボキシル基を生成させた。UV強度は1000μW、走査速度は4μm/秒、8μm/秒又は16μm/秒とした。
[2] 5mM Biotin EZ-link(シグマ社)を含む100mM MES緩衝液 pH 5.0で1分間インキュベーションした。
[3] 0.1mg/ml ストレプトアビジンを含む1M Tris-HCl緩衝液 pH 7.5で15分間インキュベーションした。
[4] 0.1mg/ml ビオチン修飾ウサギIgGを含むPBS溶液 pH 7.4で1時間インキュベーションした。
[5] 0.1mg/ml Alexa(登録商標) 633標識ヤギ抗ウサギIgG(シグマ社)を含むPBS溶液 pH 7.4で1時間インキュベーションした。
(2) イメージング結果
上記手順でバイオリソグラフィーを行ったを基板の蛍光イメージング結果を図10に示す。図10(a)中、1が走査速度4μm/秒、2が8μm/秒、3が16μm/秒である。イメージングに用いた蛍光顕微鏡及びNSOMは上記と同様である。また、NSOMイメージは蛍光顕微鏡イメージの白抜きの四角の中をイメージングしたものである。
図5と図10を比較すると、若干加工分解能はバイオリソグラフィーの方が大きくなってしまっているものの、ほぼ同じようなイメージング結果を得た。加工分解能の値の増加については、焦点方向のずれから生じているものであると考えられるため、焦点をさらに厳密に合わせることでバイオリソグラフィーの系でも図5と同様な分解能を得ることができると考えられる。
実施例で用いたフォトナノリソグラフィー装置の構成図である。 実施例においてXPS分析を行った各基板サンプルの、C1sの状態分析結果を示すグラフである。縦軸はSi2pに対する相対強度であり、帯電補正はSi2pのピークトップを103.2eVとして行った。 実施例においてXPS分析を行った各基板サンプルの、N1sの状態分析結果を示すグラフである。縦軸はSi2pに対する相対強度であり、帯電補正はSi2pのピークトップを103.2eVとして行った。 実施例において加工分解能の評価に用いたNSOMにより、直径100nmの蛍光ビーズを観察した結果を示す図である。 実施例におけるフォトナノリソグラフィーのイメージング結果(その1)の、基板の蛍光顕微鏡イメージ及びNSOMイメージを示す図である。a)は蛍光顕微鏡イメージ、b)はNSOMイメージ(立体表示)、c)はNSOMイメージ(平均断面表示)である。a)中、1の部分は走査速度0.1μm/秒、2の部分は走査速度0.2μm/秒、3の部分は走査速度0.4μm/秒で加工を行った。 実施例におけるフォトナノリソグラフィーのイメージング結果(その2)の、基板の蛍光顕微鏡イメージ及びNSOMイメージを示す図である。a)は蛍光顕微鏡イメージ、b)はNSOMイメージ(立体表示)、c)はNSOMイメージ(平均断面表示)である。a)中、1の部分は走査速度0.1μm/秒、2の部分は走査速度0.2μm/秒、3の部分は走査速度0.4μm/秒で加工を行った。 実施例におけるフォトナノリソグラフィーのイメージング結果(その3)の、基板の蛍光顕微鏡イメージを示す図である。加工の際のUV強度は200μW、走査速度は1μm/秒である。 実施例におけるフォトナノリソグラフィーのイメージング結果(その4)の、基板の蛍光顕微鏡イメージを示す図である。加工の際のUV強度は10μW、走査速度は0.4μm/秒である。描いた図はそれぞれa)KEIO(全長30μm)、b)KEIO(全長15μm)、c)慶応大学の校章(全長10μm)である。 実施例における抗体修飾の概略を示す図である。 実施例において抗体修飾を行った基板の、蛍光顕微鏡イメージ及びNSOMイメージを示す図である。a)は蛍光顕微鏡イメージ、b)はNSOMイメージ(立体表示)、c)はNSOMイメージ(平均断面表示)である。a)中、1の部分は走査速度4μm/秒、2の部分は走査速度8μm/秒、3の部分は走査速度16μm/秒で加工を行った。
符号の説明
1 レーザー光源
2 反射鏡
3 コリメータレンズ
4 フィルター
5 ハーフプリズム
6 対物レンズ
7 CCD
8 ピエゾステージ
9 加工すべき固相

Claims (12)

  1. 下記一般式[I]
    Figure 2008111710
    (ただし、式中、Xは固相表面と共有結合し得る構造、Yは存在していてもしていなくてもよく、存在する場合には任意のスペーサー構造、Zは光照射により隣接する酸素原子との結合が開裂する光開裂性構造を示す)
    で表される構造を有する、固相表面にカルボキシル基を結合させるための表面修飾剤。
  2. 前記一般式[I]中のXが
    Figure 2008111710
    (ただし、式中、R1ないしR3は互いに独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示し、これらのうちの少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシル基である)
    で表される構造を有する請求項1記載の表面修飾剤。
  3. 前記一般式[I]中のZが、下記一般式[III]
    Figure 2008111710
    (ただし、式中、R4、R5及びR6は互いに独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシル基を表す)
    で示される構造を有する請求項1又は2記載の表面修飾剤。
  4. 前記一般式[III]中のR4、R5及びR6のうちの2個が炭素数1〜6のアルコキシル基であり、残りが水素である請求項3記載の表面修飾剤。
  5. 前記一般式[I]中のYが炭素数1〜6のアルキレン基である請求項1又は2記載の表面修飾剤。
  6. 前記固相がガラス又は石英から成る請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面修飾剤。
  7. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表面修飾剤を固相と反応させて該表面修飾剤を固相表面に結合させる工程と、固相に光を照射して一般式[I]中のO-Z間を開裂させてカルボキシル基を生成させる工程を含む、表面にカルボキシル基が結合された固相の製造方法。
  8. 前記表面修飾剤が請求項2記載の表面修飾剤であり、前記固相がガラスから成る固相である請求項7記載の方法。
  9. カルボキシル基を結合したい固相表面上の領域のみに選択的に光を照射する請求項7又は8記載の方法。
  10. 請求項7ないし9記載の方法を行い、次いで、固相表面のカルボキシル基に特異結合性物質を結合させることを含む、特異結合性物質を結合した固相の製造方法。
  11. 前記特異結合性物質が抗原、抗体及びその抗原結合性断片、MutSタンパク、レセプター及びそのリガンド、核酸、アプタマー、RNAから成る群より選ばれる請求項10記載の方法。
  12. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表面修飾剤を表面に結合させた固相。

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