JP2009212008A - 燃料電池用複合触媒、燃料電池用複合触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒層の製造方法及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用複合触媒、燃料電池用複合触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒層の製造方法及び燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒金属の利用率が高く、且つ、プロトン伝導性、電子伝導性及び物質拡散(反応ガスの拡散性)に優れた触媒層を形成可能な燃料電池用複合触媒の製造方法及び燃料電池用複合触媒、さらには、該複合触媒を含有する触媒層の製造方法及び該触媒層を備えた燃料電池を提供する。
【解決手段】イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池用複合触媒の製造方法、並びに、燃料電池用複合触媒、触媒層の製造方法及び該触媒層を備える燃料電池。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池用複合触媒、燃料電池用複合触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒層の製造方法及び燃料電池に関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料と酸化剤を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
水素を燃料、酸素を酸化剤とする固体高分子電解質型燃料電池において、通常発電時、燃料極(アノード)では(1)式の反応が進行する。
2H2 → 4H+ + 4e- ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、酸化剤極(カソード)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、プロトン伝導性高分子膜(固体高分子電解質膜)内を燃料極から酸化剤極側に移動する。
一方、酸化剤極では(2)式の反応が進行する。
4H+ + O2 + 4e- → 2H2O ・・・(2)
すなわち、電池全体としては、
2H2 + O2 → 2H2O・・・・(3)
の反応が進行している。
上記式(1)又は(2)の反応を促進させるため、各電極(燃料極、酸化剤極)には、それぞれ電極触媒が備えられる。電極触媒としては、白金や白金合金のような触媒金属微粒子等の触媒活性物質を炭素粒子等の導電性材料に担持させたものが一般的である。電極触媒に用いられている白金等の触媒金属は非常に高価な材料であるため、燃料電池の実用化にあたり、利用率を向上させ、少ない使用量でも優れた触媒活性を示すことが望まれている。
触媒金属の利用率を向上させる方法としては、例えば、触媒金属微粒子の微粒子化が挙げられる。触媒金属微粒子の粒径を小さくすることによって、触媒金属の使用量は同じでも触媒金属の露出表面積が大きくなり、触媒金属の利用率を高めることができる。しかしながら、微細な触媒金属微粒子は分散させることが難しく、非常に凝集しやすいため、微粒子化しても露出表面積を効果的に大きくすることが困難である。カーボン粒子に担持された白金粒子の粒径は、一般的に2〜3nm程度であることが知られている。
上記(1)、(2)の反応は、反応ガス(燃料又は酸化剤)の他、プロトン(H+)及び電子(e-)の授受を行うことができる三相界面において進行する。すなわち、三相界面付近に触媒活性物質を配置させることが、触媒利用率を向上させる上で重要となってくる。ゆえに、触媒層における反応ガスの輸送性の確保、電子伝導チャンネル及びプロトン伝導チャンネルの確保が、触媒利用率向上のため、ひいては燃料電池の性能向上を実現させるために求められている。
従来、触媒利用率の向上を目指して数多くの技術が提案されている(特許文献1〜5等)。
例えば、特許文献1には、網目模様の構造の触媒を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極触媒層が開示されており、具体的な製造方法として、反応性真空蒸着法によって白金とセリウムの複合酸化物からなる薄膜を形成する工程、該薄膜を還元処理して白金と酸化セリウムの混合物からなる網目模様の構造の触媒を得る工程を有する方法が記載されている。特許文献1において、網目模様の構造の触媒は、PTFEとナフィオン(商品名)の混合懸濁液を含浸させることによって触媒表面に電解質チャンネルを形成すると共に撥水処理が施されている。
また、特許文献4には、プロトン伝導性高分子の有機溶液中で触媒金属塩を還元して該プロトン伝導性高分子中に触媒金属を析出させ、溶液中の溶媒を揮発除去し、この触媒金属が分散されたプロトン伝導性高分子を所定形状に成形してカソード及び/又はアノードを形成する燃料電池の製造方法が開示されている。特許文献4の実施例においては、プロトン伝導性高分子(パーフルオロカーボンスルホン酸)のブタノール溶液と、塩化白金アンミン水溶液とを混合した混合液中において、ヒドラジンヒドラートで還元処理を行った後、ブタノールを蒸発させ、該溶液をカーボンペーパーに塗布、乾燥することで、アノード及びカソードを形成している。
さらに、特許文献5には、粒状触媒物質と、この粒状触媒物質の表面上に形成されたプロトン伝導性を有する導電性高分子物質と、該導電性高分子物質を被覆する高分子保護層と、からなる触媒粒子が開示されており、高分子物質により触媒粒子の形状保持性が向上し、且つ触媒粒子同士が凝集してチェーン構造を形成し易くなり、電極内において触媒層の保持性と触媒反応性及び電子伝導性が充分なものとなる旨の記載がされている。
特開2007−123196号公報 特開2006−185855号公報 特開2002−151088号公報 特開平5−258755号公報 特開2003−282078公報
特許文献1においては、網目構造を有する触媒を、プロトン伝導性高分子溶液に浸漬することで、触媒表面にプロトン伝導性高分子を付着させており、網目構造の内部の触媒表面にプロトン伝導性高分子を付着させられないおそれがある。すなわち、触媒層におけるプロトン伝導チャンネルが確保されにくい。
また、特許文献4の製造方法では、プロトン伝導性高分子溶液中にナノサイズの触媒金属微粒子が単分散された溶液を用いて電極が形成されるため、得られる電極は、密な多孔質構造を有することとなり、電極における反応ガスの拡散性が低下するおそれがある。
また、特許文献5において、触媒粒子同士が凝集することにより形成されるチェーン構造とは、高分子物質が触媒粒子を相互に結着させるバインダーとして機能するという記載から、触媒粒子の分散液を乾燥させることにより形成される電極において、触媒粒子が高分子物質のバインダー作用により連続するというものであり、触媒粒子の分散液においては触媒粒子のチェーン構造は形成されていないと推測される。また、特許文献5において、触媒粒子を含有する電極は、触媒粒子分散液から溶媒を乾燥させて触媒粒子を粉末として回収し、再度溶媒に分散させた触媒粒子溶液をカーボンシートに塗布、乾燥して形成しており、触媒粒子が凝集するおそれがある。すなわち、形成される電極は密な多孔質構造を有することにより、電極における反応ガスの拡散性が低下するおそれがある。
一方、上述したように、白金等の触媒金属は、通常、炭素粒子のような炭素質担体等の導電性粒子に担持させて用いられているが、このような触媒担持炭素粒子は、触媒層の電子伝導性を高めるという機能を有する一方、腐食されやすく、触媒層の構造を変化させ、発電性能低下の原因となるといわれている。さらには、炭素粒子は過酸化水素生成反応に対する触媒活性を有しており、電極で生成した過酸化水素により、イオン交換性高分子膜等が劣化するという問題がある。
そこで、触媒金属微粒子を炭素粒子等の担体に担持させることなく、そのまま用いることも提案されている。しかしながら、このような担体レスの触媒金属微粒子は、その粒径にもよるが、非常に凝集しやすいため、触媒金属微粒子が高分散した触媒層を形成することは非常に難しい。
また、触媒層は、通常、触媒金属微粒子を、イオン交換性高分子を溶解したイオン交換性高分子溶液と混合して得られる触媒インクを用いて形成されるが、粉末状の触媒金属微粒子とイオン交換性高分子溶液との混合性は低い。従って、イオン交換性高分子溶液中に触媒金属微粒子を充分に分散させるためには、時間と手間を要し、製造工程の煩雑化を招いている。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、触媒金属の利用率が高く、且つ、プロトン伝導性、電子伝導性及び物質拡散(反応ガスの拡散性)に優れた触媒層を形成可能な燃料電池用複合触媒の製造方法及び燃料電池用複合触媒、さらには、該複合触媒を含有する触媒層の製造方法及び該触媒層を備えた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用複合触媒の製造方法は、イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、を備えることを特徴とする。
上記のような本発明の製造方法によれば、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着している、前記複合触媒粒子が連結し、網目状高次構造を形成している複合触媒を得ることができる。該網目状高次構造を有する複合触媒は、複合触媒粒子が鎖状に連結しているため、複合触媒粒子の表面積が保持されていると共に、網目状高次構造により、多孔質構造が形成され易く、反応ガスの拡散性等、物質拡散性に優れた触媒層を形成することができる。また、網目状高次構造により、電子伝導チャンネル及びイオン伝導チャンネルが効率良く形成される。従って、本発明によれば、イオン伝導性、電子伝導性、反応ガス拡散性に優れた燃料電池触媒層を形成することが可能である。また、このような三相界面の効率的な形成と共に、上記複合触媒粒子の表面積の確保により、触媒金属の使用量の低減が可能である。
また、本発明の燃料電池用触媒層の製造方法は、イオン交換性高分子膜の表面に設けられ、少なくとも触媒金属とイオン交換性高分子とを含有する燃料電池用触媒層の製造方法であって、イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、前記高濃度複合触媒粒子含有溶液を塗布、乾燥することによって前記触媒層を形成する工程と、を備えることを特徴とするものである。
上記複合触媒粒子が鎖状に連結し、網目状の高次構造を有する複合触媒が分散された高濃度複合触媒含有溶液を塗布、乾燥して得られる触媒層は、三相界面が効率よく形成されているため、電極性能が高い。また、該複合触媒の触媒金属利用率が高いことから、触媒金属の使用量を低減することが可能である。ゆえに、該触媒層を備える燃料電池は、優れた発電性能を発現すると共に、コスト削減が可能である。
さらには、前記燃料電池用複合触媒は、触媒金属微粒子の凝集が抑制されていることから、炭素質担体に担持させなくても、該触媒金属微粒子を高分散状態で触媒層中に存在させることが可能である。本発明の燃料電池用複合触媒を用いることによって、炭素質担体の腐食による発電性能の低下や、炭素質担体の触媒作用による過酸化水素の生成を抑制することができる。
尚、複合触媒粒子含有溶液を濃縮する方法は限外濾過に限定されないが、特に限外濾過が好ましい。
本発明により提供される燃料電池用複合触媒は、触媒金属の利用率に優れるため、本発明の燃料電池用複合触媒を用いることによって、触媒金属の使用量を低減しつつ、同等又はそれ以上の触媒性能を有する燃料電池用触媒層を得ることが可能である。従って、本発明によれば、優れた発電性能を有し、且つ、低コストな燃料電池を提供することができる。
本発明者らは、燃料電池用触媒として一般的に使用されている白金が非常に高価であること、枯渇資源であることを鑑み、その利用率を向上させるべく、白金触媒の微粒子化及び燃料電池の触媒層における白金微粒子の分散性向上を目指し、鋭意検討してきた。その結果、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含む溶液中で、金属塩や金属錯体等の金属前駆物質を還元し、0価の金属原子を析出させることで、微細且つ均一な粒径を有する金属微粒子が分散した分散液が得られるという知見を得た。そして、金属微粒子の凝集を抑制し、安定な微粒子状態を保持する水溶性高分子として、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなイオン交換性高分子を用いることが可能であり、これによってイオン交換性高分子で被覆された金属微粒子が得られることを見出した。
本発明者らは、さらに研究開発を進めたところ、イオン交換性高分子を含む溶液中で上記金属微粒子を析出させることによって得られる、イオン交換性高分子で被覆された金属微粒子(複合触媒粒子)の分散液を、限外濾過膜を用いて濾過、濃縮することで、該イオン交換性高分子で被覆された金属微粒子が鎖状に連結し、網目状の高次構造を形成することを発見した。
まず、本発明の燃料電池用複合触媒の製造方法により提供される燃料電池用複合触媒(以下、単に複合触媒ということがある)について説明する。本発明の燃料電池用複合触媒は、触媒金属微粒子(A)と、該触媒金属微粒子(A)の表面に付着したイオン交換性高分子(B)とから構成された複合触媒粒子(C)(図1参照)が、鎖状に連結し、さらに、網目状高次構造を形成している(図3、図4、図6参照)。
ここで、複合触媒粒子(C)が鎖状に連結しているとは、複合触媒粒子(C)が直鎖状の他、数珠状、分岐状又は環状に連続して連なっている状態を示し、また、複合触媒粒子(C)が2つの隣接する他の複合触媒粒子と連結し一列に連なっている状態の他、複合触媒粒子(C)が3つ以上の他の複合触媒粒子と連結し複数列をなして連結した状態も含む。また、網目状高次構造とは、鎖状に連結した複合触媒粒子(C)が、格子状、らせん状等の三次元以上の構造を形成している状態を示す。尚、網目状高次構造は、規則的な構造でも、不規則的な構造でもよい。
複合触媒粒子(C)が鎖状の連結し、網目状高次構造を形成していることは、SEM観察、TEM観察等により確認することができる。
触媒金属微粒子(A)は、図1に示すように、核(コア)となる金属微粒子(図1の1−AにおいてはAu)の表面に触媒金属(図1の1−AにおいてはPt)の殻(シェル)が形成されたコア・シェル構造を有するもの(図1の1−A)であっても、触媒金属微粒子(触媒金属は合金も含む)からなる単層構造を有するもの(図1の1−B)であってもよい。触媒金属の使用量削減という観点からは、上記コア・シェル型が好ましいといえる。尚、コアは、複数種の金属から構成されていてもよい。また、触媒金属は合金でもよい。
本発明の複合触媒は、触媒金属微粒子(A)を含有する複合触媒粒子(C)が鎖状に連結しているため、電子伝導チャンネルが確保されており、本発明の複合触媒を用いることで触媒層における電子伝導チャンネルを効率良く形成することができる。また、複合触媒を構成する複合触媒粒子(C)は、触媒金属微粒子(A)の表面に、イオン交換性高分子(B)が付着していることから、イオン伝導チャンネルも確保されており、本発明の複合触媒を用いることによって、触媒層におけるイオン伝導チャンネルも効率良く形成することができる。さらには、本発明の複合触媒は、複合触媒粒子(C)の連結による網目状高次構造の形成により、触媒層の多孔質構造が確保され、触媒層の物質拡散性を向上させることができる。複合触媒粒子(C)の網目状高次構造により、複合触媒粒子(C)同士が互いに密着し、多孔質構造が密になるのを抑制することができるからである。
ゆえに、本発明の複合触媒を用いて触媒層を形成することによって、三相界面を効率良く形成することができ、その結果、電極反応に寄与する触媒金属が増加し、触媒金属の利用率が高まるため、燃料電池の発電性能を向上させると共に触媒使用量を削減することができる。
さらに、本発明の複合触媒において、触媒金属微粒子(A)の表面に付着したイオン交換性高分子(B)がいわゆる保護剤として作用することにより、触媒金属微粒子(A)の凝集が抑制され、安定した分散状態が維持される。すなわち、触媒金属微粒子が凝集し、触媒金属の比表面積(触媒金属微粒子を構成する触媒金属の単位重量当りの露出表面積)が小さくなることによる触媒金属の利用率低下が抑えられる。
ゆえに、本発明の複合触媒によれば、触媒金属微粒子(A)の微粒子化による触媒金属の比表面積の増大により触媒金属の使用量を低下させ、さらなる触媒金属の利用率向上が可能である。
また、本発明の複合触媒は、安定した分散性を有することから、炭素粒子等の担体に担持させなくても、凝集せずに高分散状態を保持することができる。そのため、燃料電池の触媒層において一般的な触媒担体として知られている炭素粒子や炭素繊維等の炭素質担体を用いずに、発電性能を確保した触媒層を形成することが可能である。
ゆえに、本発明の複合触媒を用いることによって、炭素質担体を含有する触媒層を備えた燃料電池において懸念されている問題、例えば、炭素質担体による過酸化水素生成反応の促進や、高電位状態における炭素質担体の腐食による触媒層の多孔質構造の変化及び触媒粒子の脱落等を抑制することが可能である。過酸化水素の生成は、過酸化水素や過酸化水素から生じるラジカル種等によるイオン交換性高分子の劣化を招き、また、触媒層の多孔質構造の変化や触媒粒子の脱落は、触媒層の発電性能の低下を招く。すなわち、本発明によれば、これら炭素質担体の使用に起因する燃料電池の構成部材の劣化や性能低下等が発生せず、耐久性に優れた燃料電池を提供することが可能となる。
次に、本発明の複合触媒の製造方法について説明する。本発明の燃料電池用複合触媒の製造方法は、イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程とを備えるものである。
以下、各工程について詳しく説明していく。
[複合触媒粒子含有溶液調製工程]
上記複合触媒粒子含有溶液を調製する工程は、イオン交換性高分子含有溶液中で、金属塩や金属錯体等、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元する工程であり、イオン交換性高分子を保護剤(安定化剤)として0価の触媒金属原子を析出させ、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子を含有する溶液(複合触媒粒子含有溶液)を得る工程である。
上記したように、触媒金属微粒子は、コア・シェル構造を有するものであっても、単層構造を有するものであってもよい。ここでは、単層構造を有する触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子(以下、単層型複合触媒粒子ということがある)を含有する複合触媒粒子含有溶液の調製と、コア・シェル型の触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子(以下、コア・シェル型複合触媒粒子ということがある)を含有する複合触媒粒子含有溶液の調製とに分けて説明する。
(1)単層型複合触媒粒子含有溶液の調製
単層型複合触媒粒子含有溶液は、イオン交換性高分子及び触媒金属前駆物質を溶解した混合溶液に対して、還元処理を施すことによって、触媒金属前駆物質に由来する金属イオンを還元し、該混合溶液中に触媒金属微粒子を析出させることで得ることができる。
具体的には、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有し、還元により触媒金属原子となる触媒金属前駆物質(a)と、イオン交換性高分子(b)と、触媒金属前駆物質(a)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c)と、を混合した混合溶液を調製し、該混合溶液中の触媒金属前駆物質(a)に由来する触媒金属イオンを還元し、触媒金属微粒子を析出させることによって、イオン交換性高分子が該触媒金属微粒子の表面に付着した複合触媒粒子が、溶媒(c)に分散した単層型複合触媒粒子含有溶液を調製することができる。
水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有する触媒金属前駆物質(a)としては、触媒金属種の塩及び/又は錯体が挙げられる。触媒金属としては、燃料電池の電極反応に対して触媒活性を有しているものであれば特に限定されず、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられる。中でもPt,Pd,Ir,Rh,Au等の貴金属が好適に用いられ、その触媒活性の高さからPtが特に好ましく用いられる。触媒金属種の塩、錯体としては、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩或いはこれらの錯体を挙げることができる。後述するように、触媒金属前駆物質(a)の還元は、水溶液中にて行うことが好ましいことから、触媒金属前駆物質(a)は水溶性を有していることが好ましい。
イオン交換性高分子(b)としては、カチオン交換性又はアニオン交換性を有するものであれば特に限定されず、例えば、カチオン交換性高分子膜やアニオン交換性高分子膜を備える固体高分子型燃料電池において電解質膜を構成するカチオン交換性高分子又はアニオン交換性高分子として使用可能なものを用いることができる。イオン交換性高分子は、イオン交換基、具体的には、プロトン解離性基である酸基のようなカチオン交換基、又は、アニオン交換基を有している。イオン交換性高分子は、イオン交換基が触媒金属微粒子の表面に吸着し、触媒金属微粒子の分散性を安定に維持する保護剤として作用すると共に、イオン交換性高分子の溶媒に対する溶解性によりミクロ相分離が生じ、複合触媒粒子の網目状構造が形成されると考えられる。また、イオン交換基によりイオン交換性高分子は、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を示す。
カチオン交換基であるプロトン解離性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基等が挙げられ、アニオン交換基としてはテトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。保護剤としての作用が高いこと、触媒金属微粒子の製造工程において、その粒径の制御に対して有効であることから、イオン交換基としてスルホン酸基を備えるイオン交換性高分子が好適に用いられる。さらに、イオン交換基としてスルホン酸基を備えるイオン交換性高分子、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなフッ素系高分子は、全体としては水溶性であるが、親水基部と疎水基部とをもち、それぞれが一定の大きさの相を作り、ちょうど親水部と疎水部よりなるブロック共重合体がミクロ相分離を起こして三次元網目構造を形成するように、ネットワークを形成することからも好適に使用できる。
イオン交換性高分子(b)の具体例としては、上記したようなプロトン解離性基を有するもの、例えば、Nafion(商品名)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなフッ素系高分子の他、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンスルフィド等の炭化水素系高分子にプロトン解離性基等のイオン交換基を導入したものが挙げられ、中でも、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が好適に用いられる。
上記したように、触媒金属前駆物質(a)の還元は、水溶液中にて行うことが好ましいことから、イオン交換性高分子(b)も水溶性を有していることが好ましい。
イオン交換性高分子(b)の仕込み量としては、保護安定化と立体障害のバランス、触媒層を形成した際のプロトン伝導、電子伝導及び物質拡散のバランスの観点から、触媒金属前駆物質(a)に含まれる全金属に対する高分子モノマーユニットのモル比で、0.0001〜10であることが好ましく、特に0.001〜1であることが好ましい。このとき、イオン交換性高分子(b)のモル比は、イオン交換性高分子(b)を構成するモノマーユニットを1モルとして換算する。
触媒金属前駆物質(a)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c)としては、特に限定されず、また、1種のみからなるものでも、2種以上の混合物でもよい。例えば、水、アルコール、又は水やアルコールと混和性のある有機溶剤を挙げることができる。具体的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、アミルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。溶媒(c)の種類は、還元処理の方法に応じて選択することが好ましい。
水溶液中で触媒金属前駆物質(a)の還元を行うことによって、触媒金属微粒子の粒径の制御が容易となり、且つ、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着してなる複合触媒粒子の分散安定性、粒径の均一性、分散均一性等が向上することから、溶媒(c)としては水又は水と有機溶媒との混合物が好ましく、特に、水であることが好ましい。
溶媒(c)の使用量は特に限定されず、各成分(a)及び(b)の溶解性に合わせて適宜決めればよいが、触媒金属前駆物質(a)に由来する金属イオンの濃度が触媒金属微粒子の粒子径に影響を与えることを考慮して、一般的には、前記金属イオン濃度を1×10-5mol/l〜1×10-2mol/lとすることが好ましい。
触媒金属前駆物質(a)及びイオン交換性高分子(b)を溶媒(c)に溶解する方法は特に限定されず、一般的な混合攪拌方法を利用することができる。溶媒(c)に各成分(a)及び(b)を同時に添加し、混合してもよいし、予め、各成分(a)及び(b)を溶媒に溶解し、各溶液を混合してもよい。また、触媒金属前駆物質(a)及びイオン交換性高分子(b)の組み合わせは特に限定されない。
触媒金属前駆物質(a)及びイオン交換性高分子(b)を溶媒(c)に溶解して調製した混合溶液において、触媒金属前駆物質(a)の溶解により生じた触媒金属イオンを還元して金属元素を析出させる方法(還元処理)としては、特に限定されず、例えば、水素ガスや水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ジボラン、ヒドラジン、アルコール、アルコールアミン等の還元剤を用いる方法の他、光還元(UV光、可視光、放射光など)、超音波還元、マイクロ波還元等が挙げられる。還元処理は複数組み合わせてもよい。また、還元剤存在下、加熱還流してもよい。還元処理は、窒素ガス雰囲気等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
中でも、エタノール等のアルコールやNaBH4等の水素化ホウ素アルカリ金属塩を還元剤として用いる場合、触媒金属微粒子の粒径の制御が容易となる。一方、水溶液中での還元処理によって触媒金属微粒子の粒径の制御が容易になると共に、複合触媒粒子の高い分散安定性が得られることから、NaBH4を還元剤として用い、溶媒(c)として水を用いることが特に好ましい。
NaBH4を還元剤とする場合、還元処理温度を−5℃〜80℃、特に0〜30℃とすることが好ましく、滴下するNaBH4溶液の濃度を当量で0.001mmol/l〜0.1mmol/lとすることが好ましい。また、溶液中におけるNaBH4の濃度の急激な上昇を防ぐため、ゆっくりと滴下することが好ましく、具体的には、5ml/15分程度の速度で滴下することが好ましい。
上記溶液中における還元処理によって、析出した触媒金属微粒子に、保護剤であるイオン交換性高分子が化学的及び/又は物理的に吸着した複合触媒粒子を含有する溶液が得られる。
尚、合金触媒微粒子にイオン交換性高分子が付着した単層型複合触媒粒子を含有する溶液は、後述のコア・シェル型複合触媒粒子含有溶液の調製における同時還元法において、金属前駆物質及び触媒金属前駆物質の金属種の選択を適当なものにすれば、得ることができる。
(2)コア・シェル型複合触媒粒子含有溶液の調製
コア・シェル型複合触媒粒子含有溶液は、金属コアを形成する金属前駆物質と触媒金属シェルを形成する触媒金属前駆物質とが共存するイオン交換性高分子溶液中で各前駆物質を還元する同時還元法と、金属コアを形成する金属前駆物質をイオン交換性高分子溶液中で還元して金属微粒子を生成させた後、該金属微粒子と触媒金属前駆物質を含むイオン交換性高分子溶液中で該触媒金属前駆物質を還元させ、金属微粒子表面に触媒金属を析出させる逐次還元法によって得ることができる。
(2−1)同時還元法
同時還元法は、イオン交換性高分子(b)、金属前駆物質(a2)及び触媒金属前駆物質(a1)を溶解した混合溶液に対して、還元処理を施すことによって、金属前駆物質(a2)に由来する金属イオン及び触媒金属前駆物質(a1)に由来する触媒金属イオンを還元し、金属コアの表面に触媒金属シェルが形成されたコア・シェル型触媒金属微粒子を析出させる方法である。
具体的には、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有し、還元により触媒金属シェルを形成する触媒金属前駆物質(a1)と、触媒金属と異なる金属種を含み、且つ、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有し、還元により金属コアを形成する金属前駆物質(a2)と、イオン交換性高分子(b)と、触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c)と、を混合した第一の混合溶液を調製し、第一の混合溶液中の触媒金属前駆物質(a1)及び金属前駆物質(a2)を還元し、触媒金属シェルと金属コアとを有するコア・シェル型触媒金属微粒子を析出させることによって、イオン交換性高分子(b)が該触媒金属微粒子の表面に付着した複合触媒粒子が、溶媒(c)に分散したコア・シェル型複合触媒粒子含有溶液を調製することができる。
触媒金属前駆物質(a1)としては、触媒金属シェルを形成する触媒金属種の塩及び/又は錯体、具体的には、上記(1)単層型複合触媒粒子含有溶液の調製にて、触媒金属前駆物質(a)として例示したものが挙げられる。
金属前駆物質(a2)としては、金属コアを形成する金属種の塩及び/又は錯体が挙げられる。触媒金属微粒子において、コアを形成する金属としては、シェルを形成する触媒金属とは異なる金属種であれば特に限定されず、例えば、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられる。具体的には、これら金属種の酢酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩或いはこれらの錯体を挙げることができる。
組み合わせて使用する触媒金属前駆物質(a1)と金属前駆物質(a2)は、可溶性を有する溶媒が互いに異なっていてもよく、例えば、一方は水溶性を有し他方は有機溶媒可溶性を有していてもよい。後述するように、触媒金属前駆物質(a1)及び金属前駆物質(a2)の還元は、水溶液中にて行うことが好ましいことから、触媒金属前駆物質(a1)及び金属前駆物質(a2)が共に水溶性を有していることが好ましい。
触媒金属前駆物質(a1)と金属前駆物質(a2)の比(仕込み量)は特に限定されないが、この仕込み量によってコア・シェル型触媒金属微粒子(A)における触媒金属シェルと金属コアの比率が制御されるため、適宜設定すればよい。一般的には、触媒金属前駆物質(a1)の触媒金属元素に対する金属前駆物質(a2)の金属元素の比率(金属元素/触媒金属元素)が1/10〜1/0.01となるように、特に、1/4〜1/0.2となるように、各前駆物質を仕込むことが好ましい。
イオン交換性高分子(b)としては、上記(1)単層型複合触媒粒子含有溶液の調製にて例示したものが挙げられる。イオン交換性高分子(b)の仕込み量としては、保護安定化と立体障害のバランス、触媒層を形成した際のプロトン伝導、電子伝導及び物質拡散のバランスの観点から、触媒金属前駆物質(a1)と金属前駆物質(a2)に含まれる全金属に対する高分子モノマーユニットのモル比で、0.0001〜10であることが好ましく、特に0.001〜1であることが好ましい。このとき、イオン交換性高分子(b)のモル比は、イオン交換性高分子(b)を構成するモノマーユニットを1モルとして換算する。
触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c)としては、特に限定されず、また、1種のみからなるものでも、2種以上の混合物でもよい。具体例としては、上記(1)単層型複合触媒粒子含有溶液の調製において溶媒(c)として例示したものが挙げられる。
水溶液中で触媒金属前駆物質(a1)及び金属前駆物質(a2)の還元を行うことによって、触媒金属微粒子(A)の粒径の制御が容易となり、且つ、触媒金属微粒子(A)の表面にイオン交換性高分子(B)が付着してなる複合触媒の分散安定性、粒径の均一性、分散均一性等が向上することから、溶媒(c)としては水又は水と有機溶媒との混合物が好ましく、特に、水であることが好ましい。
溶媒(c)の使用量は特に限定されず、各成分(a1)、(a2)及び(b)の溶解性に合わせて適宜決めればよいが、金属イオン濃度[(a1)及び(a2)に由来する金属イオンの合計]が触媒金属微粒子(A)の粒子径に影響を与えることを考慮して、一般的には、前記金属イオン濃度を1×10-5mol/l〜1×10-2mol/lとすることが好ましい。
触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶媒(c)に溶解する方法は特に限定されず、一般的な混合攪拌方法を利用することができる。
触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)の組み合わせは特に限定されないが、触媒金属前駆物質(a1)の溶解により生じる触媒金属イオンと金属前駆物質(a2)の溶解により生じる金属イオンとを、溶媒(c)中で還元し、析出させる際、どの金属種がコアを形成するかは、その金属種の組み合わせ(標準電極電位の大小関係)の他、各金属種とイオン交換性高分子(b)との相互作用の大きさ等に依存する。
例えば、パラジウムイオンと金イオンを含有する水溶液において、イオン交換性高分子(b)であるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、金よりもパラジウムと強い相互作用を持つと考えられ、まず、金原子が還元され、凝集し、その後、パラジウム原子が金クラスターを核としてその周囲に堆積する。
一方、以上のようなイオン交換性高分子(b)と触媒金属及び金属の相互作用の強さに大きな差がない場合には、標準電極電位が卑な金属種がコアを形成し、標準電極電位が貴な金属種がシェルを形成することになる。つまり、触媒金属よりも標準電極電位が卑な金属種を組み合わせることになる。具体的には、金イオンと白金イオンが共存する溶液に対して、還元処理を行う場合、まず金が還元されてコアを形成し、その後、白金が該コアの周囲に堆積する。
以上のように、各成分の組み合わせは、触媒金属微粒子(A)のコア・シェル構造に応じて、適宜決定することになる。具体的な組み合わせ(a1、a2、bの順で記載)としては、白金塩及び/又は白金錯体と金塩及び/又は金錯体とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の組み合わせ、パラジウム塩及び/又はパラジウム錯体と金塩及び/又は金錯体とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体と金塩及び/又は金錯体とポリエーテルケトンスルホン酸樹脂の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体とイリジウム塩及び/又はイリジウム錯体とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の組み合わせ等が挙げられる。
その他組み合わせとして、白金塩及び/又は白金錯体と金塩及び/又は金錯体とパーフルオロカーボンテトラアルキルアンモニウム塩樹脂の組み合わせ、パラジウム塩及び/又はパラジウム錯体と金塩及び/又は金錯体とパーフルオロカーボンテトラアルキルアンモニウム塩樹脂の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体とイリジウム塩及び/又はイリジウム錯体とパーフルオロカーボンテトラアルキルアンモニウム塩樹脂の組み合わせ等も挙げられる。
触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶媒(c)に溶解して調製した第一の混合溶液は、触媒金属前駆物質(a1)の溶解により生じた触媒金属イオンと、金属前駆物質(a2)の溶解により生じた金属イオンとが共存している。これらのイオンを還元して金属元素を析出させる方法(還元処理)としては、特に限定されず、上記(1)単層型複合触媒粒子含有溶液の調製と同様に行うことができる。
上記溶液中における還元処理によって、析出したコア・シェル型触媒金属微粒子に、保護剤であるイオン交換性高分子が化学的及び/又は物理的に吸着した複合触媒粒子を含有する溶液が得られる。
(2−2)逐次還元法
逐次還元法は、まず、イオン交換性高分子(b)及び金属前駆物質(a2)を溶解した混合溶液に対して還元処理を施し、金属前駆物質(a2)に由来する金属イオンを還元して金属コアとなる金属微粒子を形成する。続いて、該金属微粒子が分散し且つイオン交換性高分子(b)が溶解している溶液に、触媒金属前駆物質(a1)を添加し、該溶液に対して還元処理を施し、触媒金属前駆物質(a1)に由来する触媒金属イオンを還元することで、金属コアの表面に触媒金属シェルが形成されたコア・シェル型触媒金属微粒子を析出させる方法である。
具体的には、まず、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有し、還元により金属コアを形成する金属前駆物質(a2)と、イオン交換性高分子(b)と、前記金属前駆物質(a2)及び前記イオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c1)と、を混合した第二の混合溶液を調製し、該第二の混合溶液中の前記金属前駆物質(a2)を還元して金属微粒子を析出させる。次に、水溶性及び/又は有機溶媒可溶性を有し、還元により触媒金属シェルを形成する触媒金属前駆物質(a1)を、該触媒金属前駆物質(a1)及び前記イオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c2)と、該イオン交換性高分子(b)と、前記金属微粒子と混合して第三の混合溶液を調製し、該第三の混合溶液中の触媒金属前駆物質(a1)を還元して前記金属微粒子の表面に触媒金属を析出させることによって、イオン交換性高分子(b)が該触媒金属微粒子の表面に付着した複合触媒粒子が、溶媒(c)に分散したコア・シェル型複合触媒粒子含有溶液を調製することができる。
触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)、イオン交換性高分子(b)としては、上記同時還元法において例示したものと同様であり、また、これらの仕込み量も、触媒金属前駆物質(a1)の添加時期が異なるだけで同時還元法と同様でよい。
また、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c1)、触媒金属前駆物質(a1)及びイオン交換性高分子(b)を溶解可能な溶媒(c2)としても、同時還元法同様、1種のみからなるものでも、2種以上の混合物でもよく、同時還元法において例示したような溶剤から選択して用いることができるが、中でも水溶液、特に水が好ましい。溶媒(c1)及び(c2)の種類は、それぞれ、金属前駆物質(a2)の還元処理方法、触媒金属前駆物質(a1)還元処理方法に応じて選択することが好ましい。
溶媒(c1)及び(c2)の使用量は特に限定されず、各成分(a1)、(a2)及び(b)の溶解性に合わせて適宜決めればよいが、金属イオン濃度[(a1)及び(a2)に由来する金属イオンの合計]が触媒金属微粒子(A)の粒子径に影響を与えることを考慮して、一般的には、金属イオン濃度を1×10-5mol/l〜1×10-2mol/lとすることが好ましい。
金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)を溶媒(c1)に溶解する方法、触媒金属前駆物質(a1)、イオン交換性高分子(b)、及び金属前駆物質(a2)の還元により得られる金属微粒子を溶媒(c2)に溶解、分散する方法は特に限定されず、一般的な混合攪拌方法を利用することができる。各成分と各溶媒を同時に混合してもよいし、予め、各成分を溶媒に溶解及び/又は分散させ、得られた各溶液を混合してもよい。
さらに、触媒金属前駆物質(a1)及び金属前駆物質(a2)それぞれの還元方法も同時還元法と同様とすることができる。
金属前駆物質(a2)と、イオン交換性高分子(b)と、溶媒(c1)とを混合した第二の混合溶液中には、金属前駆物質(a2)の溶解により金属イオンが生じており、還元処理を施すことによって、金属元素が析出、凝集し、金属微粒子が得られる。このとき、イオン交換性高分子(b)が保護剤として作用するため、金属微粒子の粒径が制御され、且つ、金属微粒子の凝集が抑制される。得られる金属微粒子の表面にはイオン交換性高分子(b)が化学的及び/又は物理的に付着している。
イオン交換性高分子(b)が付着した金属微粒子は、溶媒(c1)中に分散した状態で得られる。この金属微粒子が分散した溶液に、触媒金属前駆物質(a1)を添加、還元してもよいが、金属前駆物質(a2)の還元処理の残留した還元剤、未反応原料や副生成物の除去等のため、必要に応じて、ウルトラフィルター等を用いて該金属微粒子をろ過、洗浄し、溶媒置換[好ましくは、イオン交換性高分子(b)と触媒金属前駆物質(a1)を溶解可能な溶媒(c2)に置換]を行ってもよい。
このように溶媒置換を行う場合、溶媒(c1)は触媒金属前駆物質(a1)に対して可溶性を有していなくてもよいが、溶媒置換を行わない場合には、溶媒(c1)として触媒金属前駆物質(a1)を溶解可能な溶剤、すなわち、金属前駆物質(a2)、イオン交換性高分子(b)及び触媒金属前駆物質(a1)を溶解可能であり、溶媒(c1)及び溶媒(c2)として利用可能な溶剤を用いることが好ましい。ただし、触媒金属前駆物質(a1)と共に、該触媒金属前駆物質(a1)を溶解可能な溶剤を添加することで、溶媒(c2)としてもよい。
次に、イオン交換性高分子(b)が付着した金属微粒子と、溶媒(c2)と、触媒金属前駆物質(a1)を混合した第三の混合溶液を調製し、該第三の混合溶液中の触媒金属前駆物質(a1)を還元する。その結果、前記金属微粒子の表面に触媒金属が析出し、該金属微粒子をコア、触媒金属をシェルとしたコア・シェル型金属触媒微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子が、溶媒に分散したコア・シェル型複合触媒粒子含有溶液を得ることすることができる。
上記のように、逐次還元法においては、コアとなる金属微粒子を形成させたのち、該金属微粒子が分散した溶液に、触媒金属シェルを形成する触媒金属前駆物質を添加、還元することで、金属コアとなる該金属微粒子表面に触媒金属を析出させる。従って、逐次還元法においては、イオン交換性高分子(b)と各金属前駆物質との相互作用の強弱や、各金属前駆物質の金属種の標準電極電位の貴・卑等を必ずしも考慮する必要はない。ゆえに、逐次還元法は、同時還元法に比べて、触媒金属前駆物質(a1)、金属前駆物質(a2)及びイオン交換性高分子(b)の組み合わせの自由度が高いといえる。
例えば、触媒金属前駆物質(a1)と金属前駆物質(a2)の具体的な組み合わせ(a1、a2の順で記載)としては、白金塩及び/又は白金錯体と金塩及び/又は金錯体の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体とルテニウム塩及び/又はルテニウム錯体の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体とパラジウム塩及び/又はパラジウム錯体の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体と銀塩及び/又は銀錯体の組み合わせ、白金塩及び/又は白金錯体と銅塩及び/又は銅錯体の組み合わせ等が挙げられる。
コア・シェル型触媒金属微粒子において、金属コアを構成する金属種と触媒金属シェルを構成する触媒金属種のモル比(金属種/触媒金属種)は、特に限定されず、下記のような金属コアの粒径や触媒金属シェルの厚さ等によるが、一般的には、1/4〜1/0.2程度が好ましい。
金属コアの粒径及び触媒金属シェルの厚さは特に限定されず、触媒金属の利用率の他、複合触媒粒子の分散性、電子的効果、立体的効果等を考慮して適宜設定すればよい。コア・シェル構造の安定性や触媒金属の利用率の観点からは、金属コアの粒子径が1〜50nmであることが好ましく、特に1〜10nmであることが好ましい。また、触媒金属シェルの厚さは触媒金属1原子分以上であればよく、触媒金属の利用率の観点からは、触媒金属シェルの厚さが0.3〜5nmであることが好ましく、特に0.3〜1nmであることが好ましい。尚、金属触媒シェルの厚さによっては、コア・シェル型触媒金属微粒子は、コアを形成する金属種とシェルを形成する触媒金属種との合金のような特性を呈する場合もある。
尚、コア・シェル型触媒金属微粒子のコア・シェル構造は、金属コアの表面が触媒金属によって完全に被覆されている状態の他、金属コアの表面の一部が露出したような状態も含まれる。また、金属コアや触媒金属シェルを構成する金属は酸化されていてもよい場合もある。
上記のように、攪拌・対流が可能な溶液中で金属を還元、析出させる場合、溶液全体で均一に反応が進行するため、微細で、均一な触媒金属微粒子が得られる。つまり、過剰な前駆物質を用いずに、且つ、均一な粒度分布を有する触媒金属微粒子を効率良く作製することができる。具体的には、1〜10nmの粒径を有する触媒金属微粒子を得ることが可能であり、さらには2〜10nmの触媒金属微粒子を得ることができる。また、上記粒径を有する一次粒子が、均一な二次粒子を形成した状態で、或いは、単分散した状態で得ることができる。尚、各微粒子の粒径は、TEM、XRD、CO吸着、小角X線等により測定することができる。
複合触媒粒子におけるイオン交換性高分子の触媒金属微粒子表面への付着は、触媒金属微粒子表面の少なくとも一部においてイオン交換性高分子が付着していればよいが、上記したような、イオン交換性高分子溶液中において触媒金属を析出させる製造方法においては、原理的には触媒金属微粒子の表面がイオン交換性高分子に覆われた状態となる。
イオン交換性高分子が触媒金属微粒子の表面に付着しているかどうかは、TEM、元素分析、TG、IR等によって確認することが可能である。
本発明の複合触媒の構成する複合触媒粒子におけるイオン交換性高分子の割合は、保護安定化と立体障害のバランス、触媒層を形成した際のプロトン伝導、電子伝導及び物質拡散のバランスの観点から、触媒金属微粒子を構成する全金属(コア・シェル型の場合、金属コアと触媒金属シェルを構成する全金属)に対する高分子モノマーユニットのモル比で、0.0001〜10であることが好ましく、特に0.001〜1であることが好ましい。このとき、イオン交換性高分子のモル比は、イオン交換性高分子を構成するモノマーユニットを1モルとして換算する。
[高濃度複合触媒粒子含有溶液調製工程]
上記複合触媒粒子含有溶液調製工程において得られた複合触媒粒子含有溶液は、高濃度複合触媒粒子含有溶液調製工程において、限外濾過により濃縮される。この複合触媒粒子含有溶液を限外濾過により濃縮する工程が、本発明の大きな特徴のひとつである。
複合触媒粒子含有溶液において、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子は、凝集することなく、高分散状態で含有されている(図3の3−A参照)。しかしながら、複合触媒粒子含有溶液に対して、限外濾過による複合触媒粒子の濃縮処理を行うことによって、複合触媒粒子同士が鎖状に連結し、網目状の高次構造を形成することがわかった(図3の3−B、3−C及び3−D参照)。
複合触媒粒子含有溶液は、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子や触媒金属微粒子表面に付着していないイオン交換性高分子の他に、触媒金属となる触媒金属前駆物質に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩や、未反応分の還元剤等の不要成分を含む。また、触媒金属前駆物質、金属前駆物質及びイオン交換性高分子に対して溶解性を有する溶媒も含有されている。
以上のような複合触媒粒子含有溶液に対して、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子は通過させないが、上記不要成分や溶媒は通過させることが可能な限外濾過膜を用いて限外濾過(Ultrafiltration:UF)を行うと、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子は限外濾過膜を通過せずに該溶液中に残留するが、溶媒の他、溶媒に可溶な雑イオン、塩等の不要成分は、限外濾過膜を通過し、該溶液から除去される。その結果、複合触媒粒子含有溶液は濃縮され、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子の濃度が高くなる(高濃度複合触媒粒子含有溶液)。限外濾過処理によって、複合触媒粒子含有溶液は、溶媒が除去されることによる濃縮と同時に、余分な不要成分が除去される洗浄化も行われる。
上記のような限外濾過による複合触媒粒子含有溶液の濃縮処理によって、複合触媒粒子が鎖状に連結し、網目状の高次構造を形成するメカニズムは、解明できていないが、濃縮することによって、イオン交換性高分子と溶媒との相互作用によりミクロ相分離を引き起こし、それに沿って、複合触媒粒子が鎖状に連結し、網目状高次構造を形成すると推測される。
限外濾過処理の対象となる複合触媒粒子含有溶液は、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子からなる固形分が、0.001〜10wt%であることが好ましい。固形分が0.001wt%以下であると濃縮が非効率的であり、複合触媒粒子の網状高次構造の形成が不十分となるおそれがある。一方、上記固形分が10wt%以上であると複合触媒粒子が団子状に固化凝集するおそれがある。上記固形分中の金属濃度は5wt%以上であることが好ましい。
限外濾過膜は、特定のサイズ以上の物質は透過させないが、それより小さい物質は選択的に透過させるような孔径を有している。すなわち、本発明において使用する限外濾過膜は、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子は透過できないが、溶媒や、雑イオン、塩等は透過可能な孔径を有するものである。このような限外濾過膜に複合触媒粒子含有溶液を接触させることによって、溶媒及びイオン等の不要成分は限外濾過膜を透過して溶液から除去され、複合触媒粒子やイオン交換性高分子は溶液中に残留する。
具体的には、限外濾過膜としては、分画分子量が5,000〜50,000、特に、10,000〜20,000のものが好ましい。分画分子量が5,000以下であると、濾過速度が遅くなり、目詰まりを起こしやすく、50,000以上であると、複合触媒粒子が濾液に抜け出て限外濾過として有効でなくなるおそれがある。
限外濾過膜として、適切な分画分子量のものを用いることにより、複合触媒粒子及びイオン交換性高分子は残留させつつ、上記不要な雑イオン、塩等と共に、溶媒を除去し、複合触媒粒子含有溶液を濃縮すると共に、複合触媒粒子を網目状高次構造にすることができる。
限外濾過膜の素材としては特に限定されないが、通常、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂製のものが用いられる。これらのうち、ポリサルフォンが好ましい。限外濾過膜は、限外濾過終了後に通常行われる濾過膜の洗浄を効率よく行う点から、逆洗浄が可能な濾過膜を用いることが好ましい。
限外濾過による溶媒及び不要成分の除去は、限外濾過膜に対する複合触媒粒子含有溶液の圧力を推進力として行われる。すなわち、限外濾過膜の溶液供給側と透過側との圧力差(膜間圧力差)が生じるように複合触媒粒子含有溶液を該限外濾過膜と接触させる。
本発明において、限外濾過膜に接触する複合触媒粒子含有溶液の圧力は特に限定されないが、通常、1.2〜1.01kg/cm2であることが好ましい。また、限外濾過膜の膜間圧力差は特に限定されないが、通常、0.2〜0.01kg/cm2であることが好ましい。複合触媒粒子含有溶液の粘度の他、限外濾過装置及び限外濾過膜の構造等に応じてこれらの圧力は調整することが好ましい。
限外濾過の具体的な方法は特に限定されず、従来公知の方法等が用いることができる。例えば、濾過の種類としては、濾過膜面に対して液の流れが垂直であるデッドエンド濾過、及び濾過膜面に対して液の流れが平行であるクロスフロー濾過に大別されるが、どちらを採用してもよい。また、限外濾過は、限外濾過が進んだ分、処理対象である複合触媒粒子含有溶液を加えていくいわゆるバッチ方式で行うことができる。
また、限外濾過膜を透過しなかった残留溶液(高濃度複合触媒粒子含有溶液)を還流させ、再び限外濾過を行い、濃縮度及び洗浄度を高めてもよい。さらには、限外濾過モジュールを直列に連結し、前段のモジュールからの残留溶液を次のモジュールに供給し、連続的に限外濾過が行われるようにしてもよい。このとき、残留溶液に溶剤を添加し希釈して限外濾過を行うことによって、洗浄効果を高めることができるし、残留溶液に溶剤を添加しない若しくは溶剤の添加量を調節することによって、濃縮効果を高めることができる。また、その後の高濃度複合触媒粒子含有溶液の使用目的に応じた溶剤を添加することで、該溶液の溶剤を置換することが可能である。
本発明においては、複合触媒粒子含有溶液中の溶媒が限外濾過膜を通過することによって、上記複合触媒粒子の網目状高次構造が形成されると考えられるため、限外濾過後における高濃度複合触媒粒子含有溶液の具体的な濃縮度や不要成分濃度等に特に限定されない。限外濾過処理の対象である複合触媒粒子含有溶液の組成や粘度、使用する限外濾過膜等によっても異なるが、複合触媒粒子の網目状高次構造を確実に形成させるためには、通常、限外濾過処理前の複合触媒粒子含有溶液における金属濃度(仕込み時の濃度)に対して、限外濾過処理後の高濃度複合触媒粒子含有溶液の金属濃度が、2倍以上、特に4倍以上、さらに20倍以上であることが好ましく、100倍以下、特に50倍以下であることが好ましい。
限外濾過処理前の複合触媒粒子含有溶液における金属濃度(仕込み時の濃度)の具体的な値としては、1×10-5M〜1×10-2M、特に1×10-4M〜1×10-3Mの範囲であることが好ましく、限外濾過処理後の高濃度複合触媒粒子含有溶液の金属濃度の具体的な値としては、2×10-5M〜1M、特に4×10-4M〜5×10-2Mの範囲であることが好ましい。
複合触媒粒子含有溶液の限外濾過処理は、濾液の上記雑イオン等の不要成分が所望の濃度以下に除去されるまで繰り返し行うことが好ましく、さらには触媒金属前駆物質の金属イオンの対イオン濃度がゼロになるまで繰り返し行うことが好ましい。
限外濾過の濾過モジュールの形態としては特に限定されず、例えば、濾過膜の形態によって中空糸型モジュール、スパイラルモジュール、チューブラーモジュール、プレート型モジュール等が挙げられる。これらのうち、定常流の観点から、プレート型が好適に用いられる。
限外濾過処理によって得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液は、必要に応じて、溶剤を添加し、所望の濃度に希釈してもよい。このとき、その後の高濃度複合触媒粒子含有溶液の使用目的に応じた溶剤を添加することで、該溶液の溶剤を置換することが可能である。また、高濃度複合触媒粒子含有溶液は、必要に応じて、乾燥することによって粉末状とすることもできる。また、複合触媒の分散液は、適宜、減圧蒸留や溶剤の添加により固形分や粘度の調整を行ってよい。
本発明の複合触媒は、燃料電池の触媒層に好適に用いることができる。以下、本発明の複合触媒を含有する触媒層を備えた燃料電池について説明する。尚、ここではカチオン交換性高分子膜であるプロトン伝導性高分子膜を備えた燃料電池を例に説明するが、本発明の燃料電池は、アニオン交換性高分子膜を備えた構成とすることもできる。
燃料電池に備えられる単セルの一例(断面図)を図2に示す。図2において、単セル100は、プロトン伝導性高分子膜(以下、単に電解質膜ということがある)1の一面側に燃料極(アノード)2、及び酸化剤極(カソード)3が設けられた膜・電極接合体6を有している。燃料極2は電解質膜1に近い側から燃料極側触媒層4a、燃料極側ガス拡散層5aがこの順序で積層して構成されている。酸化剤極3も同様に電解質膜1に近い側から酸化剤極側触媒層4b、酸化剤極側ガス拡散層5bがこの順序で積層して構成されている。
尚、本実施形態において、各電極(燃料極、酸化剤極)は、共に、触媒層とガス拡散層とが積層した構造を有しているが、触媒層のみからなる単層構造であってもよいし、触媒層とガス拡散層の他に機能層を設けた構造でもよい。
この膜・電極接合体6は、二つのセパレータ7a、7bで狭持され、単セル100が構成される。各セパレータ7a、7bの片面には、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)の流路を形成する溝が設けられており、これらの溝と燃料極2、酸化剤極3の外面とで燃料ガス流路8a、酸化剤ガス流路8bが画成されている。燃料ガス流路8aは、燃料極2に燃料ガス(水素を含む又は水素を発生させる気体)を供給するための流路であり、酸化剤ガス流路8bは、酸化剤極3に酸化剤ガス(酸素を含む又は酸素を発生させる気体)を供給するための流路である。
燃料電池には、複数の単セルが直列及び/又は並列接続されて搭載される。
本発明の複合触媒は、触媒層に含有させて電極触媒として好適に使用することができる。既述したように、本発明の複合触媒は、触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子が、鎖状に連結し、網目状高次構造を形成していることから、三相界面を効率よく形成することができる。
また、本発明の複合触媒は溶媒に分散した状態(高濃度複合触媒粒子含有溶液)で得ることができる。この高濃度複合触媒粒子含有溶液は、従来の触媒インクと同様にして用いることが可能であるため、従来のように、イオン交換性高分子溶液に、粉末状の触媒粒子を分散させる手間を省くことができ、且つ、イオン交換性高分子と触媒微粒子との分散性に優れた触媒層を形成することが可能である。
すなわち、本発明により得られる高濃度複合触媒粒子含有溶液を用いることによって、触媒層の製造工程の簡易化と共に、触媒層の性能向上が可能である。高濃度複合触媒粒子含有溶液を塗布、乾燥してなる塗膜においても、高濃度複合触媒粒子含有溶液における上記複合触媒粒子の網目状高次構造が保持されることは確認されている(図5参照)。
尚、上記したように高濃度複合触媒粒子含有溶液は適宜、希釈又は濃縮して使用することができる。また、高濃度複合触媒粒子含有溶液は、必要に応じて、プロトン伝導性高分子(イオン交換性高分子)の他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂、導電性粒子等を加えてもよい。但し、既述したが、導電性粒子として炭素粒子や炭素繊維等の炭素質粒子を用いる場合、炭素質粒子の腐食による発電性能低下や過酸化水素生成による電解質膜の劣化等の問題が発生しやすい。本発明の複合触媒は、複合触媒粒子の分散性が高く、担体に担持させなくても凝集せずにその分散性を維持することが可能であることから、炭素質担体に担持させずに触媒層を形成することが好ましい。炭素質担体に担持させずに触媒層に含有させることによって燃料電池の耐久性を向上させることが可能である。
高濃度複合触媒粒子含有溶液は、上記したように、そのまま、或いは、必要に応じて、減圧蒸留や溶液添加による固形分や粘度の調整、成分の添加を行い、触媒インクとして用いることができる。このような触媒インクによる触媒層の形成は、一般的な方法に準じて行うことができる。例えば、触媒インクを電解質膜又はガス拡散層シートに塗布、乾燥することで、電解質膜表面又はガス拡散層表面に触媒層を形成することができる。或いは、転写基材表面に触媒インクを塗布、乾燥して触媒転写シートを作製し、電解質膜表面又はガス拡散層表面に触媒層を転写する方法でもよい。
触媒インクの塗布方法は、特に限定されず、インクジェット法やスプレー法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法、スクリーン印刷法、電気泳動法等、一般的な方法を用いることができる。
触媒インクの乾燥方法は特に限定されず、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥と加熱乾燥の併用等が挙げられる。加熱温度は、触媒インクの溶媒に応じて調節すればよい。尚、触媒インクの塗布対象(電解質膜、ガス拡散層シート、転写基材等)を加熱しながら、触媒インクを塗布することで、触媒インクの塗布と乾燥を同時に行ってもよい。
また、触媒インクにガス発泡性の造孔剤を添加し、触媒インク塗布後、熱処理又はpH処理等により造孔剤を発泡させることによって、多孔質構造の触媒層を形成することができる。ガス発泡性の造孔剤としては、触媒層の造孔剤として一般的なもの、例えば、CeCO3等を用いることができる。
さらには、本発明の複合触媒は、触媒金属微粒子とイオン交換性高分子を高分散状態で含有する分散液として得ることができることから、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、導電性高分子等、適度な空孔をもつナノスケールの導電性担体に塗布して使用することも可能である。カーボンナノチューブやカーボンナノホーンは炭素質材料であり、触媒層に含有させることによって上記したような炭素質担体による問題が生じるものの、触媒層のガス拡散性向上効果等を有しているため、触媒微粒子の担体として注目されている。しかしながら、従来は、触媒粒子を高分散させた溶液の調製が困難であったため、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンに触媒微粒子を高分散状態で担持させることが難しかった。これに対して、本発明によれば、触媒微粒子が凝集せずに安定に分散した分散液を得ることができるため、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンに触媒微粒子を高分散状態で担持させることが可能である。
本発明の燃料電池の触媒層においては、上記触媒金属微粒子の触媒金属種の種類又はコアを形成する金属種の種類、触媒金属微粒子の粒径、複合触媒粒子におけるイオン交換性高分子と触媒金属微粒子の比率等を、触媒層の厚さ方向及び/又は触媒層の面方向で変化させた形態とすることもできる。
本発明の燃料電池において、電解質膜(プロトン伝導性高分子膜)としては、一般的に燃料電池の電解質膜として用いられているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ナフィオン(商品名、デュポン社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂に代表されるフッ素系高分子電解質を含むものや、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の炭化水素系高分子にプロトン解離性基を導入した炭化水素系高分子電解質を含むもの等が挙げられる。
ガス拡散層シートとしては、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体を用いることができる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
ガス拡散層シートは、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
撥水層を導電性多孔質体上に形成する方法は特に限定されない。例えば、炭素粒子等の導電性粉粒体と撥水性樹脂、及び必要に応じてその他の成分を、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等の有機溶剤、水又はこれらの混合物等の溶剤と混合した撥水層インクを、導電性多孔質体の少なくとも触媒層に面する側に塗布し、その後、乾燥及び/又は焼成すればよい。撥水層インクを導電性多孔質体に塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スプレー法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等が挙げられる。
また、導電性多孔質体は、触媒層と面する側に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂をバーコーター等によって含浸塗布することによって、触媒層内の水分がガス拡散層の外へ効率良く排出されるように加工してもよい。
電解質膜、触媒層及びガス拡散層の積層は、例えば、上記したように触媒層を形成した電解質膜とガス拡散層とを、触媒層を挟みこむようにして重ねあわせ、加熱圧着する方法や、触媒層を形成したガス拡散層と高分子電解質膜とを、触媒層を挟みこむようにして重ね合わせ、加熱圧着する方法、等が挙げられる。電解質膜‐触媒層間、触媒層‐ガス拡散層シート間の加熱圧着による接合は、一般的な方法に準じて行うことができる。
上記のようにして電解質膜に一対の電極(触媒層とガス拡散層)を設けた膜・電極接合体は、さらにセパレータで挟持され単セル(図2参照)を形成することができる。セパレータとしては、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。
[実施例1:複合触媒の製造]
(複合触媒粒子含有溶液の調製)
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の水溶液(商品名Nafion。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂濃度11.4wt%)0.006gと、超純水187mlとを混合し、0.5時間攪拌した。続いて、H2PtCl6・6H2O水溶液(1.66×10-2M)6mlを添加し、反応容器内を窒素置換して2時間攪拌し、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と白金イオンをよく馴染ませた。その後、攪拌下、NaBH40.013モルを含有する超純水5mlをゆっくりと滴下し、白金イオンを還元させ白金微粒子(Nafion−白金微粒子)を析出させた。NaBH4水溶液の滴下後、さらに90分間攪拌し、複合触媒粒子含有溶液(Pt濃度:0.66×10-3M)200mlを得た。
(高濃度触媒粒子含有溶液の調製)
得られた複合触媒粒子含有溶液は、まず、容量300mlの下記限外濾過膜を備える限外濾過器に、200mlの該複合触媒粒子含有溶液を入れ、0.1MPaを加え、100mlになった時点で、超純水100mlを加え、再び加圧して100mlとした。これを繰り返し、複合触媒粒子含有溶液を、塩化物イオンが検出されなくなるまで洗浄すると共に、2倍に濃縮した(Pt濃度1.32×10-3M)。
また、別途、上記にて得られた複合触媒粒子含有溶液を容量300mlの下記限外濾過膜を備える限外濾過器に200ml入れ、0.1MPaを加え、50mlになった時点で、超純水150mlを加え、再び加圧して50mlとした。これを繰り返し、複合触媒粒子含有溶液を、塩化物イオンが検出されなくなるまで洗浄すると共に、4倍に濃縮した(Pt濃度2.64×10-3M)。
また、別途、上記にて得られた複合触媒粒子含有溶液を容量300mlの下記限外濾過膜を備える限外濾過器に200ml入れ、0.1MPaを加え、5mlになった時点で、超純水195mlを加え、再び加圧して5mlとした。これを繰り返し、複合触媒粒子含有溶液を、塩化物イオンが検出されなくなるまで洗浄すると共に、40倍に濃縮した(Pt濃度2.64×10-2M)。
<限外濾過処理>
・限外濾過膜:Advantec製、分画分子量10,000、濾過面積45.4cm2
・濾過圧力:0.1MPa
(高濃度複合触媒粒子含有溶液の観察)
上記限外濾過処理により洗浄及び濃縮を行った各高濃度複合触媒粒子含有溶液(濃縮倍率2倍、4倍及び40倍)は、直接、試料グリットに滴下、室温で乾燥させた後、TEM観察を行った。結果を図3の3−B〜3−Dに示す。
また、上記にて調製した複合触媒粒子含有溶液のTEM観察の結果も併せて図3の3−Aに示す。
図3の3−Aに示すように、限外濾過による濃縮処理を行う前の複合触媒粒子含有溶液から得られる塗膜において、複合触媒粒子は無秩序に分散した状態であるのに対して、図3の3−B〜3−Dに示すように、限外濾過により濃縮処理を行った後の高濃度複合触媒含有溶液から得られる塗膜においては、複合触媒粒子は、鎖状に連結し網目状構造を形成した。この網目状構造は、濃縮倍率が高いほど、空間部が小さくなり、緻密なものであった。
[実施例2]
(複合触媒の製造)
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の水溶液(商品名Nafion。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂濃度11.4wt%)0.006gと、超純水187mlとを混合し、0.5時間攪拌した。続いて、H2PtCl6・6H2O水溶液(1.66×10-2M)6mlを添加し、反応容器内を窒素置換して2時間攪拌し、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と白金イオンをよく馴染ませた。その後、攪拌下、NaBH40.013モルを含有する超純水5mlをゆっくりと滴下し、白金イオンを還元させ白金微粒子(Nafion−白金微粒子)を析出させた。NaBH4水溶液の滴下後、さらに90分間攪拌し、複合触媒粒子含有溶液(Pt濃度:0.66×10-3M)200mlを得た。
次に、得られた複合触媒粒子含有溶液を、実施例1と同様にして、Pt濃度が2倍(1.32×10-3M)となるまで濃縮を行った。
(複合触媒のTEM観察)
上記限外濾過処理により洗浄及び濃縮を行った高濃度複合触媒粒子含有溶液を、直接、試料グリットに滴下、室温で乾燥させた後、TEM観察を行った。結果を図4に示す。図4より、実施例2の複合触媒は、複合触媒粒子が鎖状に連結し、網目状高次構造を形成していることが確認された。
(触媒活性の評価)
得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液中の複合触媒について、以下のようにして回転電極法により触媒活性を評価した。すなわち、図8に示すような回転ディスク電極装置のディスク電極(グラッシーカーボンディスク。表面積0.196cm2)表面に、Pt濃度を1.32×10-3Mに調整した上記高濃度複合触媒粒子含有溶液15.1μlを、20μg‐Pt/cm2−GC(グラッシーカーボンの単位面積あたりの白金担持量が20μg)となるように、塗布、乾燥して固定し、下記条件下、電気化学測定を行った。0.9V時の電流値及びディスク電極に固定したPt重量から、複合触媒のPtの単位重量当りの活性を求めた。結果を表1に示す。
また、作製した回転ディスク電極の表面をSEM観察した。結果を図5に示す。図5より、複合触媒粒子が鎖状に連結した網目状高次構造は、高濃度複合触媒粒子含有溶液を塗布、乾燥して得られる塗膜においても保持されていることが確認された。
<回転電極法条件>
・電解液:酸素飽和0.1M過塩素酸溶液
・電極回転数:900rpm
・電位掃引範囲:0.35V→1.2V(掃引速度10mV/s)
[実施例3]
(複合触媒の製造)
下記方法により複合触媒粒子を製造した。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の水溶液(商品名Nafion。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂濃度11.4wt%)0.006gと、超純水187mlとを混合し、0.5時間攪拌した。続いて、HAuCl4・4H2O水溶液(1.66×10-2M)3mlとH2PtCl6・6H2O水溶液(1.66×10-2M)3mlとを添加し、反応容器内を窒素置換して1時間攪拌し、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と金イオン及び白金イオンをよく馴染ませた。
その後、攪拌下、NaBH40.013モルを含有する超純水5mlをゆっくりと滴下し、さらに1時間攪拌し、金イオン及び白金イオンを還元させ、コア(金)・シェル(白金)型触媒金属微粒子の表面にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が付着した複合触媒粒子含有溶液(合計金属濃度:0.66×10-3M)を得た。
次に、得られた複合触媒粒子含有溶液を、実施例2と同様にして、限外濾過により洗浄及び濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を得た。
(複合触媒のTEM観察)
上記限外濾過処理により洗浄及び濃縮を行った高濃度複合触媒粒子含有溶液を、直接、試料グリットに滴下、室温で乾燥させた後、TEM観察を行った。結果を図6に示す。図6より、実施例3の複合触媒は、複合触媒粒子が鎖状に連結し、網状構造を形成していることが確認された。
(触媒活性の評価)
得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液中の複合触媒について、実施例2と同様にして、触媒活性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
白金を担持したカーボンブラック(Pt/C触媒、Pt担持率:50wt%)について、J.Electrochem.Soc,145 (1998)2354を参考に評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
(複合触媒粒子含有溶液の調製)
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の水溶液(商品名Nafion。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂濃度11.4wt%)0.006gと、超純水187mlとを混合し、0.5時間攪拌した。続いて、H2PtCl6・6H2O水溶液(1.66×10-2M)6mlを添加し、反応容器内を窒素置換して2時間攪拌し、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と白金イオンをよく馴染ませた。その後、攪拌下、NaBH40.013モルを含有する超純水5mlをゆっくりと滴下し、白金イオンを還元させ白金微粒子(Nafion−白金微粒子)を析出させた。NaBH4水溶液の滴下後、さらに90分間攪拌し、複合触媒粒子含有溶液(Pt濃度:0.66×10-3M)を得た。
得られた複合触媒粒子含有溶液を、高濃度複合触媒粒子含有溶液の希釈溶液の代わりに用いたこと以外は実施例2と同様にして、該複合触媒粒子含有溶液に含有される複合触媒粒子の触媒活性を評価、並びに、SEM観察を行った。結果を表1及び図7に示す。
図7より、限外濾過処理を行っていない複合触媒粒子含有溶液を塗布、乾燥して得られる塗膜内には、複合触媒粒子が連結した網目状構造は確認されなかった。また、上述したように、図3−AのTEM写真からも、限外濾過処理を行っていない複合触媒粒子含有溶液の塗膜には、網目状構造は確認されていない。
[触媒活性の評価結果]
表1から、実施例2及び実施例3の複合触媒は、比較例1の触媒と比較して、Ptの単位重量当りの活性が高いことがわかった。複合触媒粒子が鎖状に連結した実施例2及び実施例3の複合触媒は、比較例1と比較して、三相界面が効率よく形成されたこと、並びに、白金の微粒子化による白金の単位重量当りの露出表面積の増大によって、触媒利用率が高まったためである。
また、複合触媒粒子含有溶液に対して限外濾過処理を行わなかった比較例2の複合触媒と比較すると、実施例1及び実施例2の複合触媒は、4倍弱〜4倍強の触媒活性を示した。この実施例2及び実施例3の複合触媒の触媒活性向上は、その網目状構造により、触媒微粒子への物質拡散性が向上し、電解液中の酸素の白金粒子表面への拡散速度が高まったことが、特に大きな要因であると考えられる。また、実施例3の複合触媒は、電極反応に寄与しない触媒金属微粒子のコアが金からなり、白金の使用量が削減されていること、及び、金と白金の接触による金のリガンド効果(電子的効果)により、白金の電子状態が白金のみの場合の状態から変化したことによって、白金からなる触媒金属微粒子を用いた実施例2と比較して、高活性化したと考えられる。
本発明の複合触媒を構成する複合触媒粒子の構造を示す概念図である。 本発明の燃料電池に備えられる単セルの一例を示す断面図である。 実施例1で得られた複合触媒粒子含有溶液及び高濃度複合触媒粒子含有溶液のTEM写真である。 実施例2で得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液のTEM写真である。 実施例2で得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液を用いて形成した乾燥塗膜のSEM写真である。 実施例3で得られた高濃度複合触媒粒子含有溶液のTEM写真である。 比較例2の複合触媒粒子含有溶液を用いて形成した乾燥塗膜のSEM写真である。 実施例にて使用した回転電極装置の一部を示す模式図である。
符号の説明
1…電解質膜
2…燃料極
3…酸化剤極
4…触媒層(4a:燃料極側触媒層、4b:酸化剤極側触媒層)
5…ガス拡散層(5a:燃料極側ガス拡散層、5b:酸化剤極側ガス拡散層)
6…膜・電極接合体
7…セパレータ(7a:燃料極側セパレータ、7b:酸化剤極側セパレータ)
8…反応ガス流路(8a:燃料ガス流路、8b:酸化剤ガス流路)
100…単セル

Claims (5)

  1. イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、
    前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池用複合触媒の製造方法。
  2. 触媒金属微粒子の表面にイオン交換性高分子が付着している複合触媒粒子が、連結し、網目状高次構造を形成していることを特徴とする、燃料電池用複合触媒。
  3. イオン交換性高分子膜の表面に設けられ、少なくとも触媒金属とイオン交換性高分子とを含有する燃料電池用触媒層の製造方法であって、
    イオン交換性高分子を含有する溶液中で、還元により触媒金属となる触媒金属前駆物質を還元し、触媒金属微粒子を析出させ、該触媒金属微粒子の表面に前記イオン交換性高分子が付着した複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、
    前記複合触媒粒子含有溶液を、限外濾過により濃縮し、高濃度複合触媒粒子含有溶液を調製する工程と、
    前記高濃度複合触媒粒子含有溶液を塗布、乾燥することによって前記触媒層を形成する工程と、
    を備えることを特徴とする、燃料電池用触媒層の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法により得られる燃料電池用触媒層を備える、燃料電池。
  5. 前記燃料電池用複合触媒が炭素質担体に担持されていない、請求項4に記載の燃料電池。
JP2008055394A 2008-03-05 2008-03-05 燃料電池用複合触媒、燃料電池用複合触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒層の製造方法及び燃料電池 Pending JP2009212008A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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