JP2009210128A - 電磁式ローラクラッチ - Google Patents

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良則 山田
Shigetaka Nagamatsu
茂隆 永松
Takashi Nozaki
孝志 野▲崎▼
Takahide Saito
隆英 齋藤
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Abstract

【課題】 電磁式クラッチにおいて、非係合状態における引きずりトルクの低減を図るとともに、動作の安定化を図る。
【解決手段】 回転軸中心から内軸、中間軸、外軸を配置する。内軸と中間軸との間、中間軸と外軸との間にそれぞれ電磁式ローラクラッチを組み付ける。各クラッチは、電磁力の作用によってローラを周方向に移動させて係合および切り離しを行う。非係合時にローラに遠心力が作用して回転軸に接触する際に、ローラと回転軸との間に生じる摩擦力を低減する構成を適用することにより、引きずりトルクの低減、動作の安定化を図ることができる。かかる構成としては、ローラの軽量化、ローラと回転軸との接触面での摩擦係数を低減する表面処理、回転軸との接触時におけるローラの転動を確保可能にローラと保持器との間に軸支された小ローラが適用できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は電磁力の作用により、2つの回転軸間の動力の伝達状態を切り替える電磁式ローラクラッチに関する。
2つの回転軸間で動力の伝達を断続する機構としてクラッチがある。クラッチは種々の装置に適用されているが、例えば車両に適用されたクラッチなどでは走行中に動力の伝達経路を速やかに切り替えられることが要求される。また、車両の走行状態に応じて適切な切り替えを行うために制御ユニットからの制御信号により切断および結合を制御できることが望ましい。かかる要求に応えたクラッチとしては、例えば、特開平10−59011に記載の回転伝達装置が挙げられる。この回転伝達装置は、ローラを利用して2つの回転軸間で動力の伝達を電磁的に切断・結合する電磁式ローラクラッチである。従来技術として、この電磁式ローラクラッチの概略構成を説明する。
特開平10−59011号公報
図13は従来技術としての回転伝達装置の回転軸を含む断面の断面図である。図14は従来技術としての回転伝達装置の回転軸に直交する断面の断面図である。図15は従来技術としての回転伝達装置について保持器の組み付け状態を示す断面図である。特開平10−59011に記載の装置を示した。この回転伝達装置は、従動部材となる外輪2と、入力軸4とを切断・結合する2方向クラッチである。このクラッチは、図14に示す通り、外輪2の内側が円形になっており、入力軸4は断面が正八角形の角を丸めた形状をなしており、正八角形の各辺が8つのカム面となる。このカム面は、外輪2の内面との間で円周方向の両側が狭幅になる楔状空間を形成している。
入力軸4には外周に環状の保持器8が設けられている。保持器8には周方向に8つのポケットが形成され、各ポケット9に係合子としてのローラ10が組込まれている。保持器8は周方向に回動可能になっており、図14中に矢印で示す通り、保持器8の回動に伴ってローラ10の位置も周方向に移動する。ローラ10がカム面の中央付近にある場合(図14の状態)では、ローラ10と外輪2との間には隙間があり、入力軸4と外輪2とは非係合状態にある。ローラ10がカム面の狭幅部分に移動すると外輪2と係合し、外輪2と入力軸4を一体化する。
図15に示す通り、保持器8と入力軸4の両者には、周方向の一部に切り欠き1があり、弾性部材であるスイッチバネ13が組み付けられている。保持器8に外力が作用していない状態では、スイッチバネ13の弾性力が周方向に作用し、ローラ10が非係合位置になるよう保持器8を保持する。
回転伝達装置には図13に示す通り、入力軸4と外輪2の間に電磁クラッチが組込まれている。この電磁クラッチは、ケース等に固定された電磁石16と、外輪2に固定されたロータ18と、アーマチュア21とからなる。アーマチュア21はロータ18と保持器8の間に設けられており、保持器8に対して回転不能で軸方向の移動は可能となっている。電磁石16に通電するとアーマチュア21が引きつけられ、アーマチュア21とロータ18とが摩擦力で結合した状態となる。この結果、保持器8は外輪2から回転方向の外力を受ける。この外力によって保持器8はスイッチバネ13の弾性力に抗じて周方向に移動し、ローラ10を係合位置に移動させる。こうして回転伝達装置は入力軸4と外輪2とが係合する。
電磁石16に通電しない状態では、アーマチュア21とロータ18との間に十分な摩擦力が働かないため、保持器8およびローラ10はスイッチバネ13の弾性力によって非係合位置に保持される。こうして回転伝達装置は非係合状態となる。かかる回転伝達装置は、電磁石16への通電により係合状態と非係合状態を速やかに切り替え可能である利点がある。
従来の電磁式ローラクラッチでは、非係合状態、即ち動力の伝達が行われないはずの状態において、ローラと回転軸との接触が生じ、若干の動力伝達が生じる場合があった。この接触で生じる摩擦力は、回転軸の回転を阻害するトルク、いわゆる引きずりトルクとなり、動力の損失を招いていた。製造上のばらつきによって、スイッチバネの弾性力が本来の設計値よりも弱い場合には、上記摩擦力によって、ローラが係合位置に移動することもあり、電磁式ローラクラッチの動作が不安定になることもあった。本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、電磁式ローラクラッチにおいて、非係合時の引きずりトルクを低減することを第1の目的とする。また、電磁式ローラクラッチの係合および切り離しの動作の安定化を図ることを第2の目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明では以下の構成を適用した。
本発明は、第1の回転軸と第2の回転軸の結合および切り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッチ、即ち、
前記第1の回転軸に固定された内側回転部材と、
前記第2の回転軸に、前記内側回転部材と同心円状に固定された中空の部材であって、 前記内側回転部材との間で、径方向の間隔が周方向の位置によって変動する擬楔状空間を形成する外輪と、
前記第1の回転軸と相対的に回動可能に備えられた第1の摩擦係合器と、
前記第2の回転軸と相対的に回転不能に備えられた第2の摩擦係合器と、
前記径方向の間隔の最小値と最大値の間の径を有し、前記2軸の間に備えられたローラと、
前記第1の回転軸に相対的に回動可能、かつ、前記第1の摩擦係合器に相対的に回転不能に連結され、前記ローラを保持する保持器と、
前記第1の摩擦係合器と第2の摩擦係合器とを吸着する電磁力を作用させる電磁石とを備える電磁式ローラクラッチにおいて、
第1の構成として、さらに、前記外輪、ローラ、保持器の少なくとも一カ所には、前記外輪とローラとの接触面に作用する摩擦力を抑制する摩擦力低減機構を備えるものとした。ここで、回転可能とはある軸周りの位置関係が360度いかなる範囲にも変えられる状態をいう。回動可能とはある軸周りの位置関係が360度よりも小さい所定の範囲内でのみ変えられる状態をいう。回動可能とは、同時に回転は不能であることを意味する。
本発明の作用を説明するに当たり、非係合状態で引きずりトルクが発生するメカニズムについて説明する。非係合時には、ローラは擬楔状空間の間隔が広い部位に保持されているが、この状態で保持器が結合された第1の回転軸が回転すると、ローラも第1の回転軸とともに回転するため、ローラには遠心力が作用する。この遠心力によって、ローラは外輪に押しつけられ、ローラと外輪との間に摩擦力が生じる。かかる摩擦力は、保持器を介して第1の回転軸に引きずりトルクとして伝達されることになる。従来、ローラと外輪との接触は、製造上のばらつき等によるものと考えられていたが、本発明者は、精緻な検討の結果、ローラと外輪との接触および引きずりトルク発生のメカニズムが上述の点にあることを見いだした。
本発明では、外輪とローラとの接触面における摩擦力を抑制する機構を備えているため、非係合時に外輪とローラとが接触しても、両者間に生じる摩擦力を抑制することができ、引きずりトルクを低減することができる。どの程度、摩擦力を抑制すればよいかという点については、電磁式ローラクラッチの回転数や引きずりトルクの低減に対する目標値に応じて定まる。例えば、クラッチが運用される回転数が非常に高い場合には、大きな遠心力が作用し、結果として大きな摩擦力、大きな引きずりトルクを生じるから、摩擦力は十分に小さい値に抑制する必要がある。
なお、引きずりトルク低減のためには、遠心力によってローラが外輪に接触しない構成の保持器を用いることも可能ではあるが、かかる構成は非常に複雑に成りがちである。ローラと外輪との隙間を大きくする本発明によれば、保持器の構成を複雑化することなく、比較的簡単な構成によって引きずりトルクを低減できる利点がある。
摩擦力低減機構には、種々の構成を適用可能である。遠心力が作用する際に、外輪とローラとの間の摩擦力を直接的に抑制する機構としては、例えば、前記第1の回転軸の回転中に前記ローラに作用する遠心力を抑制する機構を適用したり、前記外輪の内面と前記ローラとの摩擦係数を抑制する表面処理を適用することができる。
前者によれば、ローラに作用する遠心力を抑制することができるから、結果として遠心力に起因する摩擦力を低減することができる。かかる構成は、例えば、ローラを中空にしたり、セラミックスなど軽量の材料で構成して慣性能率を低減することによって実現される。
摩擦係数は接触する部材の表面粗さによる影響が大きいから、後者の表面処理としては、表面粗さを抑制する処理一般が含まれる。例えば、亜鉛メッキ、硬質クロムメッキ、ニッケルメッキなどの電気メッキを外輪の内面、ローラの表面の少なくとも一方に施せばよい。また、窒化や浸硫と呼ばれる処理、いわゆる強度や耐摩耗性を確保できる熱処理なども該当する。
摩擦力低減機構は、前記外輪とローラの接触時に該ローラが転動可能な程度に前記ローラと前記保持器との間の摩擦力を低減する機構としてもよい。周知の通り、ローラが静止している状態で外輪とローラとの間に働く摩擦力よりも、ローラが転動している状態で働く転がり摩擦力の方が小さい。ローラと保持器の摩擦力を低減する機構を備えれば、ローラの転動を確保することができる。この結果、ローラと外輪との摩擦力を低減することができ、引きずりトルクを低減することができる。
ローラと保持器との間の摩擦力を低減する機構を例示する。
第1の機構は、前記ローラと前記保持器との間に設けられたベアリングである。ベアリングとしては、例えば、ローラを両端から保持する状態で保持器側に固定された2つのローラを適用することができる。
第2の機構は、前記ローラと前記保持器との間の摩擦係数を抑制する表面処理である。この表面処理は、ローラと外輪との摩擦係数を抑制する表面処理と同様の処理を適用できる。
その他の態様は次の通りである。
第3の機構は、前記ローラの軸方向全長に亘る領域の少なくとも一部で該ローラと前記保持器との接触を回避する状態で、前記保持器および前記ローラの少なくとも一方に設けられた凹部である。つまり、ローラと保持器の接触面積を抑制する態様である。ローラ側に凹部を設けた態様とは、例えば両端で径が大きく、中央部で径の小さいローラを用いた態様が挙げられる。
第4の機構は、前記ローラ部分に供給された潤滑油を、前記第1の回転軸の回転中に該潤滑油から前記ローラに作用する遠心力を抑制可能な部位に排出する排出機構である。潤滑油にも遠心力は作用するため、潤滑油がローラに付着していると、ローラの重量を見かけ上増やしたのと同等の効果を生じ、ローラと外輪との間の摩擦力増大を招く。上記態様によれば、潤滑油を排出できるため、かかる弊害を回避できる。ローラに作用する遠心力を抑制する部位への排出としては、例えば、ローラよりも外部に潤滑油を排出する態様が挙げられる。かかる排出は、前述した第3の機構を適用することにより容易に実現することができる。つまり、ローラと保持器との間に非接触の部位を設けておけば、潤滑油に働く遠心力によって、ローラよりも外部に潤滑油を容易に排出することができる。第4の機構は、かかる部位に限られるものではない。ローラの内側以外の部分に潤滑油を排出する態様一般が含まれ、例えば、保持器側に潤滑油を排出するものとしてもよい。
上述した種々の機構は、例示に過ぎず、ローラと外輪との摩擦力を低減する機構は、この他にも種々の機構が適用可能であることはいうまでもない。また、上述した種々の機構を組み合わせて適用することも可能である。
本発明は、第2の構成として、
前記第1の回転軸に固定された内側回転部材と、
前記第2の回転軸に、前記内側回転部材と同心円状に固定された中空の部材であって、前記内側回転部材との間で、径方向の間隔が周方向の位置によって変動する擬楔状空間を形成する外輪と、
前記第1の回転軸と相対的に回動可能に備えられた第1の摩擦係合器と、
前記第2の回転軸と相対的に回転不能に備えられた第2の摩擦係合器と、
前記径方向の間隔の最小値と最大値の間の径を有し、前記2軸の間に備えられたローラと、
前記第1の回転軸に相対的に回動可能、かつ、前記第1の摩擦係合器に相対的に回転不能に連結され、前記ローラを保持する保持器と、
前記第1の摩擦係合器と第2の摩擦係合器とを吸着する電磁力を作用させる電磁石とを備える電磁式ローラクラッチに、
前記電磁力が作用していない状態において、前記ローラが非係合状態となるように前記保持器に弾性力を付加する部材として、所定厚さの板材をくりぬいて形成された弾性部材を備えるものとした。
また、第3の構成として、電磁式ローラクラッチにおいて、
保持器を、前記ローラを軸方向の両側から保持する構成にするとともに、
前記電磁力が作用していない状態において、前記ローラが非係合状態となるように前記保持器に弾性力を付加する弾性部材を、前記ローラの軸方向両側に備えるものとした。
第2の構成は、非係合時に保持器に作用する弾性力を安定させるための構成である。第3の構成は、保持器に作用する弾性力を強化するための構成である。ローラを中立状態に維持する弾性力が弱い場合には、ローラと外輪との間に作用する摩擦力によって、非係合位置に保持されるべきローラが係合位置に移行する可能性がある。保持器に作用する弾性力を本来の設計値に安定させることができる。また、外輪とローラとの摩擦力では係合位置に移行しない程度に弾性力を強化すれば、電磁式ローラクラッチの動作を安定させることができる。
第2の構成は、板材をくりぬいて弾性部材を形成することによって、弾性力の安定化を図っている。通常、弾性部材はピアノ線など、弾性力のある線材の曲げ加工で形成される。曲げ加工は、比較的製造上のばらつきが生じやすい短所がある。板材をくりぬいて弾性部材を形成すれば、かかる弊害なく、所定の弾性力を生じる弾性部材を安定して製造することができる。板材は、周知の種々の方法で加工可能であり、例えば、レーザ溶断を用いることができる。
第3の構成は、弾性部材の数を増やすことによって、弾性力の強化を図っている。ここで、保持器の両側に弾性部材を備えた点に特徴がある。こうすることによって、弾性力を強化しつつ、保持器にバランス良く弾性力を付与することができる利点がある。つまり、揺動を生じることなく、保持器およびローラを回動させることができる。特に、高速回転時の係合および切り離しの動作を安定化することができる利点がある。
本発明は、2つの回転軸の係合および切り離しを行う機構として構成する他、第1ないし第3の回転軸と、該第1の回転軸と第2の回転軸との係合および切り離しを行う第1の電磁式ローラクラッチ機構と、該第2の回転軸と第3の回転軸との係合および切り離しを行う第2の電磁式ローラクラッチ機構とを備える電磁式2段クラッチとして構成することも可能である。かかる場合には、前記第1および第2の電磁式ローラクラッチとして、上述した本発明の電磁式ローラクラッチを適用すればよい。また、該第1および第2の電磁式ローラクラッチを、同心円状に配置することが好ましい。いわゆる2段クラッチとしての構成である。
実施例としての電磁式2段クラッチの概略構成を示す説明図である。 内側回転部100の構成を示す説明図である。 内側回転部100についてカム102、保持器105を含む断面を示す断面図である。 内側回転部100についてスイッチバネを含む断面における断面図である。 スイッチバネ103の形状を示す説明図である。 外側回転部300の構成を示す説明図である。 中間回転部200の構成を示す説明図である。 引きずりトルクが発生する原因を示す説明図である。 第2の変形例としての保持器105Aを示す説明図である。 第3の変形例としての保持器105Bを示す説明図である。 第2実施例としての電磁式2段クラッチの概略構成を示す説明図である。 スイッチバネの組み付け状態を示す説明図である。 従来技術としての回転伝達装置の回転軸を含む断面の断面図である。 従来技術としての回転伝達装置の回転軸に直交する断面の断面図である。 従来技術としての回転伝達装置について保持器の組み付け状態を示す断面図である。
本発明の実施の形態について実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.全体構成
B.内側回転部の構成
C.外側回転部の構成
D.中間回転部の構成
E.電磁式2段クラッチの動作
F.引きずりトルク抑制機構
G.変形例
H.第2実施例
I.電磁式2段クラッチの適用例
A.全体構成:
図1は実施例としての電磁式2段クラッチの概略構成を示す説明図である。回転軸を含む断面の上半分を示した。実施例のクラッチは、3つの回転ユニットと1つの固定ユニットから構成される。回転ユニットは回転軸中心から内側回転部100、中間回転部200、外側回転部300の順に配置され、それぞれ軸受501〜504により相対的に回転可能に組み付けられている。本実施例では、軸受501,502として針状ころ軸受を適用して径方向の小型化を図った。軸受503、504は玉軸受を適用した。各回転部の構成は後で詳述する。
固定ユニット400は磁性体で形成され、電磁石を形成するコイル401,403を収納するコア402,404を有している。固定ユニット400はボルト405によりクラッチの収納ケース等に固定されている。
B.内側回転部の構成:
図2は内側回転部100の構成を示す説明図である。実線で示した部分が内側回転部100に相当する。内側回転部100の動力伝達軸は内軸101である。内軸101の外周にはカム102が固定されている。図3は内側回転部100についてカム102、保持器105を含む断面を示す断面図である。図示する通り、カム102は正十角形の断面形状をなしている。中間回転部200の動力伝達軸となる中間軸201の内周は円形断面であるため、この内周面とカム102の外周面との間隔は正十角形の頂点近傍で狭く、各辺の中央近傍で広い擬楔状空間を形成している。なお、カム102は内軸101と一体形成しても構わない。
カム102の外周には保持器105およびローラ104が周方向に回動可能に組み付けられている。図3に示す通り、保持器105は周方向に10カ所のポケットがあり、10個のローラ104が保持器105の各ポケットに入っている。ローラ104の径は中間軸201とカム102との間隔の最大値よりも小さく、最小値よりも大きい値である。つまり、ローラ104が擬楔状空間の中央付近にある場合には、カム102、ローラ104、中間軸201の間に隙間が生じ、内軸101と中間軸201の間で動力の伝達はできない。本実施例では、ローラ104はセラミックスを用いて中空に形成されている。この理由については、後述する。
ローラが図3中に矢印で示す通り、周方向に移動し、擬楔状空間の両端WRまたはWL近傍に来ると、カム102、ローラ104、中間軸201が一体的に係合し、内軸101と中間軸201の間で動力の伝達が可能となる。内軸101が右側に回転している場合にはローラ104がWL部で係合することにより、中間軸201に動力を伝達することができる。左側に回転している場合にはローラ104がWR部で係合することにより、中間軸201に動力を伝達することができる。
このように本実施例のクラッチは、ローラ104の位置によって内軸101と中間軸201との結合・切り離しを行うことができる。続いて、ローラ104の位置を制御するための機構について説明する。図2に示す通り、保持器105およびカム102には一端にスイッチバネ103が取り付けられている。図4は内側回転部100についてスイッチバネを含む断面における断面図である。カム102および保持器105はそれぞれ一部に切り欠きが設けてあり、そこにスイッチバネ103がセットされている。スイッチバネ103は図4中に矢印で示す方向に弾性力を作用させ、外力が働かない状態では保持器105を図示する位置、即ちニュートラル状態に保つ。
図5はスイッチバネ103の形状を示す説明図である。組み付けていない状態での形状を示した。左側には、スイッチバネ103を回転軸方向から見た正面図を示した。図示する通り、スイッチバネ103は組み付け時に弾性力を生じるリング部103rと、弾性力を保持器105に伝達する役割を果たすつば部103tとから構成される。スイッチバネ103は、ピアノ線など弾性を有する線材や板材の曲げ加工によって形成することも可能ではあるが、本実施例では、板材から図示する形状にレーザ溶断によってくりぬいて形成するものとした。図中の右側には、スイッチバネ103のA−A断面における断面図を示した。板材からのくりぬき加工であるため、スイッチバネ103は、図示する通り、長方形の断面をなしている。板材からのくりぬきによって形成することによって、図示する形状に精度良く加工できる利点がある。従って、曲げ加工で形成されたスイッチバネに比して、本実施例のスイッチバネ103は、製造上のばらつきが非常に小さく、弾性力のばらつきが非常に小さい利点がある。もちろん、弾性力のばらつきを十分に抑制可能であれば、スイッチバネを曲げ加工によって形成しても構わない。
図2に示す通り、保持器105にはスイッチバネ103が突起106を設けたスイッチバネ押えによって組み付けられている。また、この突起106には円盤状のアマチュア107がはめ込まれている。アマチュア107は突起106があるため、保持器105と一体的に回転する。しかしながら、アマチュア107は突起106に固定されている訳ではなく、若干の隙間をもってはめ込まれており、回転軸方向に移動可能になっている。アマチュア107には離反バネ108が設けられており、この離反バネ108によりアマチュア107は中間軸201の径方向側面210から離反する方向に付勢されている。
本実施例では、カム102、ローラ104、保持器105および突起106、アマチュア107および離反バネ108、スイッチバネ103、コイル403、径方向側面210が内側クラッチユニットを構成する。内側クラッチユニットについては、内軸101が第1の回転軸、中間軸201が第2の回転軸、アマチュア107が第1の摩擦係合器、径方向側面210が第2の摩擦係合器に相当する。
コイル403に通電すると、中間軸201の径方向側面210およびアマチュア107を貫通する磁気回路が形成される。この結果、アマチュア107が離反バネ108に抗して中間軸201の径方向側面210側に引き寄せられ、それに応じて径方向側面210およびアマチュア107が互いに接触する。接触面では摩擦力が作用し、中間軸201と内軸101とは一体となって回転しようとする。この摩擦力は磁気回路の強さに応じて変化する。摩擦力によるトルク(以下、「摩擦トルク」と呼ぶ)が十分に高い場合には、スイッチバネ103の弾性力によるトルク(以下、「ローラ噛み込みトルク」と呼ぶ)に逆らって保持器105が周方向に移動することによって、ローラ104が係合位置に移動し、先に図3で説明した通り、内軸101と中間軸201とが係合状態となる。ローラ噛み込みトルクよりも摩擦トルクが低い場合には、中間軸201と内軸101との間では摩擦トルクに相当するトルク伝達が行われる。
C.外側回転部の構成:
図6は外側回転部300の構成を示す説明図である。実線で示した部分が外側回転部300に相当する。外側回転部300の動力伝達軸は外軸301である。外軸301にはコイル401に対向する部位にロータ302がはめ込まれている。ロータ302は磁性体で形成されており、リング形状をなしており、外軸301と一体的に回転するように固定されている。ロータ302の回転を妨げないよう、ロータ302とコイル401との間にはわずかの隙間が設けてある。外側電磁クラッチユニットについては、中間軸201が第1の回転軸、外軸301が第2の回転軸、後述する中間軸201に設けられているアマチュア207が第1の摩擦係合器、ロータ302が第2の摩擦係合器となる。
コイル401に通電して電磁力を作用させると、内側クラッチユニットについて説明したと同様、アマチュア207がロータ302側に吸引され、両者の間で摩擦力が作用し、クラッチを係合することができる。アマチュア207を吸着する磁気回路の形成を助けるスリット311a,311bが設けられている。なお、外側クラッチユニットについても外軸301はその動力をチェーンベルトで抽出できるよう、一部がスプロケット303となっている。
D.中間回転部の構成:
図7は中間回転部200の構成を示す説明図である。実線で示した部分が中間回転部200に相当する。中間回転部200の動力伝達軸は中間軸201である。中間軸201は鋼で形成されており、図示する通り、円盤状の径方向側面210を挟んで太径部と細径部とを有している。太径部の外周と、外軸301との間には外側電磁クラッチユニットが備えられている。外側電磁クラッチユニットの構成は、内側電磁クラッチユニットとほぼ同じである。即ち、中間軸201の太径部の外周にカム202が固定されている。カム202の外周にはローラ204と保持器205設けられるとともに、スイッチバネ203が、突起206を有するスイッチバネ押えによって組み付けられている。突起206には、アマチュア207が挿入されている。このアマチュア207には、ロータ302から離反させる方向に付勢している離反バネ208が設けられている。ローラ204は、内側電磁クラッチユニットのローラ104と同様、セラミックスで中空状に形成されている。これらの各要素、およびロータ302、コイル401が外側電磁クラッチユニットを構成する。その動作は、内側電磁クラッチユニットと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、中間軸201には、内側電磁クラッチユニットが動作する際に磁気回路の形成を助けるスリット211a,211bが径方向側面210に設けられている。
E.電磁式2段クラッチの動作:
以上で説明した本実施例の電磁式2段クラッチの動作について説明する。コイル401、403に通電していない状態では、外側クラッチユニットおよび内側クラッチユニットの第1および第2の摩擦係合器は、それぞれ接触していない状態にあり、内軸101、中間軸201、外軸301は互いに切り離された状態となる。コイル401に通電すると、外側電磁クラッチユニットのアマチュア207がロータ302側に吸引され両者の間に摩擦力が生じる。コイル403に通電すると、内側電磁クラッチユニットのアマチュア107が径方向側面210側に吸引され両者の間に摩擦力が生じる。
これらの摩擦力が小さい間は、スイッチバネ103,203の弾性力に逆らってローラを係合させることができない。従って、トルクは摩擦力によってのみ伝達される。十分な摩擦力が作用すると、摩擦力によるトルクがスイッチバネ103,203の弾性力にうち勝つようになり、ローラを係合位置に移動させる。この結果、電磁クラッチユニットは、係合状態となり、ローラを介してトルクが伝達される。コイル401,403への通電制御は、種々の方法で実現可能である。例えば、トランジスタやサイリスタ等のスイッチング素子を用いることができる。この場合には、スイッチング素子がオンとなっているデューティを制御することにより、コイル401,403の電圧を制御することができる。
F.引きずりトルク抑制機構:
本実施例のクラッチは、コイル401,403に通電していない状態では、ローラが非係合位置に保持され、クラッチが切り離された状態となる。かかる状態において、本来トルク伝達が生じ得ない内軸101、中間軸201、外軸301の間でトルクの伝達が生じれば、各回転軸の回転動力を失わせる引きずりトルクを生じることになる。本実施例のクラッチは、引きずりトルクを低減するための構成を適用している。以下、引きずりトルクが生じる原因について説明し、引きずりトルクを抑制するための構成について説明する。
図8は引きずりトルクが発生する原因を示す説明図である。内側電磁クラッチユニットを構成するローラ104近傍の拡大図を示した。下側には、回転軸側から見た正面図を示し、上側には、回転軸に直交する方向から見た平面図を示した。ここでは、ローラ104が非係合位置に保持されている状態を示した。本来、ローラ104は保持器105によって、実線で示した位置、即ち、内軸101に固定されたカム102と中間軸201との間に形成された擬楔状空間の間隔が広い位置に保持される。この状態では、ローラ104は中間軸201と接触しないため、内軸101と中間軸201の間でトルク伝達は起こらない。
図示した非係合状態において、内軸101が回転している状態を考える。このとき、保持器105で保持されたローラ104も内軸101と一体的に回転している。ローラ104は保持器105によって周方向の位置が規制されているに過ぎないため、図中の矢印方向に作用する遠心力Fによってローラ104は外周方向にとばされる。この結果、ローラ104は図中の破線で示す位置に移動し、中間軸201と接触する。非係合状態では、内軸101と中間軸201との間には回転速度差があるため、ローラ104と中間軸201との間に摩擦力が作用する。この摩擦力は、内軸101にとって、引きずりトルクを生じさせる。この引きずりトルクが非常に大きい場合には、スイッチバネの力に抵抗して保持器105およびローラ104を係合位置に移動させる可能性もある。
本実施例では、先に説明した通り、ローラ104を軽量のセラミックスで製造するとともに、中空状に形成している。ローラ104は、金属棒で形成した場合に比較して非常に軽量に作られている。一般に遠心力は、回転中心からの重量に比例するから、本実施例のローラ104は、図8に示した遠心力Fの大きさを抑制することができる。摩擦力はローラ104と中間軸201との接触面に作用する反力、即ち、遠心力に比例するため、本実施例のローラ104は、この摩擦力を低減でき、引きずりトルクを低減することができる。ここでは、内側クラッチユニットを例にとって説明したが、外側クラッチユニットについても同様である。
ローラ104の材料および中空にした場合の肉厚は、例えば、次の方法で設定可能である。まず、非係合状態における引きずりトルクの許容範囲を設定する。引きずりトルクは値0となることが望ましいのは当然であるが、スイッチバネの弾性力を超えない範囲、クラッチを適用した装置の運転効率に大きな影響を与えない範囲などの条件に基づいて現実的に許容可能な目標値を設定すればよい。これと並行して、非係合状態における各回転軸の最大回転数を設定する。
次に、上述の最大回転数において、引きずりトルクを許容範囲に抑えるという条件に基づいて、ローラ104に作用する遠心力の上限値を求める。遠心力は、回転中心からの距離、回転数、ローラ104の重量の関数であるから、最大回転数で遠心力をこの上限値以下に抑え得る重量の上限値を求めることができる。こうして求められた重量の上限値を満足するように、ローラ104の材質および肉厚等を設定すればよい。本実施例では、遠心力を極力抑制する観点から、軽量のセラミックスを用いたが、必ずしもセラミックスを材料とする必要はなく金属で形成しても構わない。
以上で説明した本実施例の電磁式ローラクラッチによれば、ローラに働く遠心力を抑制することによって、非係合時における引きずりトルクを低減することができる。従って、引きずりトルクによる回転動力の損失を低減することができる。また、非係合状態にあるにも関わらず、引きずりトルクによってローラが係合位置に移動することを回避することができ、電磁式ローラクラッチの動作を安定させることができる。
さらに、本実施例の電磁式ローラクラッチでは、スイッチバネを板材のくりぬき加工によって形成している。このことにより、製造上のばらつきなく、保持器およびローラを中立位置に保持するための弾性力を安定して付加することができる。かかる構成を適用することにより、本実施例の電磁式ローラクラッチは、個体差なく係合および切り離しの動作を安定して行うことができる。
G.変形例:
本実施例の電磁式ローラクラッチでは、ローラの軽量化を図ることによって、非係合時に作用する摩擦力の低減、ひいては引きずりトルクの低減を図った。引きずりトルクの低減を図る構成としては、この他にも種々の変形例が適用可能である。
第1の変形例として、ローラと回転軸との摩擦係数を低減する構成を適用することができる。例えば、ローラの表面および回転軸の内面の少なくとも一方に摩擦係数を低減するための表面処理を施すものとすればよい。かかる表面処理としては、亜鉛メッキ、硬質クロムメッキ、ニッケルメッキなどの電気メッキや、窒化処理、浸硫処理などの熱処理を適用することができる。
第2の変形例として、ローラと保持器との摩擦力を低減する構成を適用することもできる。図9は第2の変形例としての保持器105Aを示す説明図である。内側電磁クラッチユニットを構成するローラ104近傍の拡大図を示した。下側には回転軸方向から見た正面図、上側には回転軸に直交する方向から見た平面図を示した。図示する通り、第2変形例では、保持器105Aにおいて、ローラ104との接触部に、小ローラ104a,104bが軸支されている。
小ローラ104a,104bの作用は次の通りである。非係合時に遠心力によってローラ104が中間軸201の内面と接触した場合を考える。このとき、既に説明した通り、ローラ104と中間軸201との間には摩擦力が作用する。先に説明した第1実施例では、保持器105とローラ104との間の接触部における摩擦力が比較的大きいため、ローラ104は保持器105に対して静止した状態で中間軸と接する。これに対し、第2変形例の構成によれば、小ローラ104a,104bの働きによって、ローラ104は保持器105Aおよび中間軸201に対して転動した状態で接触する。一般に転がり摩擦係数は、静止時の摩擦係数よりも小さいため、第2の変形例によれば、結果としてローラ104と中間軸201との間の摩擦係数を低減することができ、引きずりトルクを低減することができる。
なお、第2の変形例では、保持器105Aに小ローラ104a,104bを設けることにより、ローラ104の転動を確保する態様を例示した。同様の原理に従い、保持器とローラとの接触部に摩擦係数を低減する表面処理を施す態様を採ることもできる。かかる表面処理としては、第1の変形例で説明した種々の処理を適用可能である。
第3の変形例として、潤滑油の排出を促すことにより摩擦力を低減する構成を適用することもできる。図10は第3の変形例としての保持器105Bを示す説明図である。内側電磁クラッチユニットを構成するローラ104近傍の拡大図を示した。上側には回転軸に直交する方向から見た平面図を示した。下側にはB−B断面における断面図を示した。図示する通り、第3変形例では、保持器105Bにおいて、ローラ104との接触部に、孔c1,c2が設けられている。この結果、保持器105Bとローラ104とは、図中に破線で示した4カ所、即ち、ローラ104の軸方向両端付近でのみ接触する。
上述の構成では、ローラ104と保持器105Bとの接触領域を低減させることができるため、両者間に作用する摩擦力を低減することができ、第2の変形例と同じくローラ104の転動を確保することができる利点もある。それに加えて、第3の変形例では、次に示す通り、孔c1.c2が潤滑油の排出を促すことができ、ローラ104に作用する遠心力を抑制することもできる。
クラッチの回転部には潤滑油が供給されるのが通常であり、本実施例のクラッチにおいても、ローラ104には潤滑油が供給される。潤滑油は、図10中の領域OILに示す通り、ローラ104の内径側にたまる。この状態で内軸101が回転すれば、潤滑油OILにも遠心力が作用し、この遠心力はローラ104を中間軸201に押しつける作用を奏するから、潤滑油OILはローラ104の重量が増大したのと同じ効果をもたらす。第3変形例では、孔c1,c2が設けられているため、潤滑油OILは遠心力によってこの孔c1,c2から外部に排出される。従って、第3変形例によれば、潤滑油OILに遠心力が作用することによって、ローラ104の重量が増大したのと同様の弊害を招くことを回避でき、引きずりトルクを低減することができる。
以上の各変形例は、内側電磁クラッチユニットについて例示したが、外側電磁クラッチユニットにも同様の構成を適用可能である。また、各変形例で例示した構成を適宜、組み合わせて適用するものとしてもよい。
H.第2実施例:
図11は第2実施例としての電磁式2段クラッチの概略構成を示す説明図である。第2実施例のクラッチは、第1実施例と同様、内側電磁クラッチユニット、外側電磁クラッチユニットから構成される。第1実施例では、内側電磁クラッチユニット、外側電磁クラッチユニットのそれぞれに、スイッチバネが一つずつ設けられていた。これに対し、第2実施例では、内側電磁クラッチユニット、外側電磁クラッチユニットのそれぞれに、スイッチバネが2カ所ずつ設けられている点で相違する。
内側電磁クラッチユニットについては、ローラ104の軸方向両端から保持器105に弾性力を付加するように、スイッチバネ103A、103Bが備えられている。外側電磁クラッチユニットについては、ローラ204の軸方向両端から保持器205に弾性力を付加するように、スイッチバネ203A、203Bが備えられている。各スイッチバネの形状は、第1実施例と同様である(図5参照)。第2実施例においても、スイッチバネは、板材のくりぬき加工により形成するものとした。線材または板材の曲げ加工によって形成しても構わない。
図12はスイッチバネの組み付け状態を示す説明図である。内側電磁クラッチユニットのローラ104近傍を模式的に示した。上側には側面図を示し、下側には、スイッチバネ103A,103Bについて回転軸方向から見た状態を示した。図示する通り、ローラ104および保持器105に両端から弾性力を付加するスイッチバネ103A,103Bは、それぞれつば部103At,103Btが180度対向するように、この例では、上下逆方向となるように組み付けられている。ここでは、内側電磁クラッチユニットについて例示したが、外側電磁クラッチユニットについても同様である。
第2実施例の電磁式2段クラッチによれば、各電磁クラッチユニットについて、スイッチバネを2カ所設けることにより、非係合状態においてローラを中立位置に保持する弾性力を強化することができる。従って、非係合状態において、遠心力の作用により、ローラが回転軸と接触した場合であっても、接触面で生じる摩擦力によってローラが係合位置に移動することを回避できる。この結果、第2実施例の電磁式2段クラッチでは、係合および切り離しの動作を安定して行うことができる。
第2実施例では、スイッチバネをローラおよび保持器の両端に設けたことにより、次に示す利点もある。単一のスイッチバネによって弾性力を強化しする場合には、スイッチバネの加工および精度保持が困難になりやすく、保持器への組み付けも困難になるという弊害があるが、複数のスイッチバネを用いることにより、かかる弊害を回避できる。複数のスイッチバネをローラおよび保持器の一方に設けるものとすれば、保持器の構造が複雑になり、スイッチバネの組み付けも困難になるが、両端に設けるものとすれば、かかる弊害を回避できる。
さらに、スイッチバネを両端に設けることにより、ローラおよび保持器の軸方向両側からバランスよく弾性力を付加することができる。この結果、不要な揺動モーメントを生じることなく、ローラおよび保持器を安定して回動させることができ、クラッチの動作をより安定させることができる。特に、この作用は、遠心力の作用によって、ローラおよび保持器の動きが不安定になり易い高速回転時に有効である。
第2実施例では、図12に示す通り、両端に設けたスイッチバネのつば部が180度対向するように組み付けられている。スイッチバネが完全な環状であれば、遠心力は周方向のいずれの部位でも均一に作用するが、実際には、つば部が設けられているため、この部分に作用する遠心力はその他の部分よりも大きくなる。遠心力の偏りは、特に高速回転時に電磁クラッチユニットの円滑な回転を損ねる可能性がある。第2実施例では、両端に位置するスイッチバネのつば部を180度対向させているため、遠心力の偏りを相殺することができ、円滑な回転を確保することができる。
第2実施例の電磁式2段クラッチにおいても、第1実施例およびその変形例で説明した引きずりトルク低減のための種々の構成を適用可能である。第2実施例では、ローラおよび保持器の両端にスイッチバネを一つずつ設ける構成を例示したが、片側に二つ以上設けるものとしても構わない。また、両端に設けられたスイッチバネの個数が必ずしも一致している必要はない。
I.電磁式2段クラッチの適用例:
実施例の電磁式2段クラッチは、一つの回転軸と他の2つの回転軸との結合状態を切り替える必要がある種々の装置に適用することができる。例えば、車両に適用することにより、駆動軸を自在に切り替えることが可能となる。この場合は、エンジンを中間軸201に結合し、前車軸を内軸101、後車軸を外軸301に結合すればよい。中間軸201と内軸101とを結合すれば、前輪駆動車両となる。中間軸201と外軸301とを結合すれば、後輪駆動車両となる。中間軸201を内軸101、外軸301の双方に結合すれば、四輪駆動車両となる。また、同様にモータとエンジンと動力源として備えるハイブリッド車両に適用することもできる。
このように本実施例の電磁式2段クラッチは、3つの回転軸のうち2つの回転軸の結合状態の切り替えが要求される種々の装置において有効に適用することができる。上述の例では、車両およびハイブリッド車両への適用を挙げたが、これらに限定されるものではない。
また、以上の説明では、電磁式2段クラッチおよびその適用例を例示した。本実施例は、必ずしも2段クラッチとして構成する必要はなく、2軸の係合および切り離しを行う機構、即ち、通常のクラッチ機構として構成してもよい。かかる構成は、例えば、実施例の2段クラッチにおける内側クラッチユニットまたは外側クラッチユニットのいずれか一方を用いることにより容易に実現可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
100…内側回転部
101…内軸
102…カム
103,103A,103B…スイッチバネ
103r…リング部
103t…つば部
103At,103Bt…つば部
104…ローラ
104a,104b…小ローラ
105,105A,105B…保持器
106…突起
107…アマチュア
108…離反バネ
200…中間回転部
201…中間軸
202…カム
203,203A,203B…スイッチバネ
204…ローラ
205…保持器
206…突起
207…アマチュア
208…離反バネ
210…径方向側面
211a,211b…スリット
300…外側回転部
301…外軸
302…ロータ
303…スプロケット
311a,311b…スリット
400…固定ユニット
401,403…コイル
402,404…コア
405…ボルト
501〜504…軸受

Claims (2)

  1. 第1の回転軸と第2の回転軸の結合および切り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッチであって、
    前記第1の回転軸に固定された内側回転部材と、
    前記第2の回転軸に、前記内側回転部材と同心円状に固定された中空の部材であって、前記内側回転部材との間で、径方向の間隔が周方向の位置によって変動する擬楔状空間を形成する外輪と、
    前記第1の回転軸と相対的に回動可能に備えられた第1の摩擦係合器と、
    前記第2の回転軸と相対的に回転不能に備えられた第2の摩擦係合器と、
    前記径方向の間隔の最小値と最大値の間の径を有し、前記2軸の間に備えられたローラと、
    前記第1の回転軸に相対的に回動可能、かつ、前記第1の摩擦係合器に相対的に回転不能に連結され、前記ローラを保持する保持器と、
    前記第1の摩擦係合器と第2の摩擦係合器とを吸着する電磁力を作用させる電磁石と、
    前記電磁力が作用していない状態において、前記ローラが非係合状態となるように前記保持器に弾性力を付加する部材として、所定厚さの板材をくりぬいて形成された弾性部材を備える電磁式ローラクラッチ。
  2. 第1の回転軸と第2の回転軸の結合および切り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッチであって、
    前記第1の回転軸に固定された内側回転部材と、
    前記第2の回転軸に、前記内側回転部材と同心円状に固定された中空の部材であって、前記内側回転部材との間で、径方向の間隔が周方向の位置によって変動する擬楔状空間を形成する外輪と、
    前記第1の回転軸と相対的に回動可能に備えられた第1の摩擦係合器と、
    前記第2の回転軸と相対的に回転不能に備えられた第2の摩擦係合器と、
    前記径方向の間隔の最小値と最大値の間の径を有し、前記2軸の間に備えられたローラと、
    前記第1の回転軸に相対的に回動可能、かつ、前記第1の摩擦係合器に相対的に回転不能に連結され、前記ローラを軸方向の両側から保持する保持器と、
    前記第1の摩擦係合器と第2の摩擦係合器とを吸着する電磁力を作用させる電磁石と、
    前記電磁力が作用していない状態において、前記ローラが非係合状態となるように前記保持器に弾性力を付加する弾性部材を、前記ローラの軸方向両側に備える電磁式ローラクラッチ。
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