JP2011117514A - 駆動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転バランスを向上し得るようにした駆動力伝達装置を提供する。
【解決手段】駆動力伝達装置は、外側回転部材10と、内側回転部材20と、メインクラッチ30と、パイロットクラッチ機構40と、カム機構50とを備える。内側回転部材20とカム機構50との間、カム機構50とパイロットクラッチ機構40との間、およびパイロットクラッチ機構40と外側回転部材10との間の少なくとも1箇所に、内側回転部材20および外側回転部材10に対するカム機構50およびパイロットクラッチ機構40の回転バランスを調整する弾性部材55を配設する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばエンジンの駆動力を後輪側へ分配し、その配分を制御する駆動力伝達装置に関する。
従来の駆動力伝達装置として、例えば、特開2001−132777号公報(特許文献1)に記載されているものが知られている。この駆動力伝達装置は、外側回転部材と、外側回転部材と同軸上に相対回転可能に支持された内側回転部材と、外側回転部材と内側回転部材の間でトルク伝達を行うメインクラッチと、電磁石を有し、該電磁石への通電電流に応じて前記メインクラッチの係合力を制御するパイロットクラッチ機構と、パイロットクラッチ機構に発生する作用力をメインクラッチに伝達するカム機構とを備えている。
特開2001−132777号公報
ところで、上記の駆動力伝達装置は、車両の駆動力伝達軸部に取り付けられて高速で回転させられる。そのため、外側回転部材や内側回転部材の回転バランスが悪いと、こもり音などの発生原因となるので、回転バランスを管理することが重要である。現状では、組み付けた状態で、アウタ側(外側回転部材)とインナ側(内側回転部材)のそれぞれのアンバランスを測定し、アンバランス量が規定以上の場合には、アウタ側のハウジングを切削して重量を調整し、バランス修正を行っている。
しかし、上記のアンバランス調整方法では、インナ側のアンバランス量が規定のアンバランス量よりも大きい場合には、組み付け後であるため、修正不能となる。よって、この場合には、廃却処分となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、回転バランスを向上し得るようにした駆動力伝達装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決する請求項1に係る発明の駆動力伝達装置の構成上の特徴は、
円筒部を有する外側回転部材と、
前記円筒部内にて前記外側回転部材と同軸上に相対回転可能に支持された内側回転部材と、
前記外側回転部材と前記内側回転部材の間でトルク伝達を行うメインクラッチと、
電磁石を有し、該電磁石への通電電流に応じて前記メインクラッチの係合力を制御するパイロットクラッチ機構と、
該パイロットクラッチ機構に発生する作用力を前記メインクラッチに伝達するカム機構と、を備え、
前記内側回転部材と前記カム機構との間、前記カム機構と前記パイロットクラッチ機構との間、および前記パイロットクラッチ機構と前記外側回転部材との間の少なくとも1箇所に、前記内側回転部材および前記外側回転部材に対する前記カム機構および前記パイロットクラッチ機構の回転バランスを調整する弾性部材が配設されていることである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の駆動力伝達装置において、前記カム機構は、前記内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたメインカムおよびパイロットカムを有し、前記弾性部材は、前記内側回転部材と前記メインカムとの間、および前記内側回転部材と前記パイロットカムとの間の少なくとも一方に配設されていることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2に記載の駆動力伝達装置において、前記カム機構は、前記内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたパイロットカムを有し、前記パイロットクラッチ機構は、前記外側回転部材と一体的に回転する機能部材を有し、前記弾性部材は、前記パイロットカムと前記外側回転部材または前記機能部材との間に配設されていることである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項に記載の駆動力伝達装置において、前記パイロットクラッチ機構は、前記外側回転部材の内周側に同軸的に配置されて前記電磁石と協働するアーマチャを有し、前記弾性部材は、前記アーマチャと前記外側回転部材との間に配設されていることである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか一項に記載の駆動力伝達装置において、前記弾性部材は、ゴム弾性体または樹脂弾性体により形成されていることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5の何れか一項に記載の駆動力伝達装置において、前記弾性部材は、リング状に形成されていることである。
請求項1に係る発明によれば、内側回転部材とカム機構との間、カム機構とパイロットクラッチ機構との間、およびパイロットクラッチ機構と外側回転部材との間の少なくとも1箇所に、内側回転部材および外側回転部材に対するカム機構およびパイロットクラッチ機構の回転バランスを調整する弾性部材が配設されている。
本発明において、弾性部材が、内側回転部材とカム機構との間に配設された場合には、内側回転部材に対してカム機構が調芯され、回転バランスが向上する。また、弾性部材が、カム機構とパイロットクラッチ機構との間に配設された場合には、通常、パイロットクラッチ機構は、外側回転部材と一体的に回転するように構成されていることから、パイロットクラッチ機構に対してカム機構が調芯され、回転バランスが向上する。また、弾性部材が、パイロットクラッチ機構と外側回転部材との間に配設された場合には、外側回転部材に対してパイロットクラッチ機構が調芯され、回転バランスが向上する。
本発明に係る駆動力伝達装置においては、内側回転部材や外側回転部材に対して、ガタを有する状態で配置されるカム機構およびパイロットクラッチ機構に回転アンバランスが発生し易い。そのため、本発明では、上記の所定箇所に弾性部材を配設することによって、内側回転部材および外側回転部材に対するカム機構およびパイロットクラッチ機構の回転バランスを調整するようにしている。
なお、弾性部材の配設箇所は、上記の3箇所のうちの少なくとも1箇所であり、複数箇所でもよい。弾性部材を、複数箇所に配設すれば相乗効果が期待できるので、回転バランスをより有利に向上させることが可能である。
請求項2に係る発明によれば、カム機構は、内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたメインカムおよびパイロットカムを有し、弾性部材は、内側回転部材とメインカムとの間、および内側回転部材とパイロットカムとの間の少なくとも一方に配設されている。
即ち、本発明では、弾性部材は、内側回転部材とメインカムとの間にのみ配設される場合と、内側回転部材とパイロットカムとの間にのみ配設される場合と、それらの両方に配設される場合とがある。
内側回転部材とメインカムとの間に弾性部材を配設した場合には、弾性部材により内側回転部材に対してメインカムが調芯される。このとき、メインカムには、カム機構を構成するカムフォロアやパイロットカムが連結しているので、これらの部材も内側回転部材に対して調芯される。これにより、内側回転部材、メインカム、カムフォロアおよびパイロットカムの重心が一致し、インナ側の回転バランスが安定する。メインカムは、内側回転部材に対して、軸方向に移動可能で、且つ回転方向に規制された状態に設けられる部材であり、カム機構による摩擦損失の拡大を生じない。そのため、弾性部材を、内側回転部材とメインカムとの間に配設した場合には、摩擦損失が小さく、悪影響を及ぼし難い。また、メインカムは、カム機構のうちで重量が大きいことから、調芯を行う上で有利となる。
また、内側回転部材とパイロットカムとの間に弾性部材を配設した場合には、弾性部材により、内側回転部材に対してパイロットカムが調芯される。この場合にも、パイロットカムは、カム機構を構成するカムフォロアやメインカムが連結しているので、これらの部材も内側回転部材に対して調芯される。これにより、内側回転部材、パイロットカム、カムフォロアおよびメインカムの重心が一致し、インナ側の回転バランスが安定する。
また、内側回転部材とメインカムとの間、および内側回転部材とパイロットカムとの間の両方の箇所に弾性部材を配設した場合には、上記の作用および効果を相乗的に得られることが期待できるので、回転バランスの向上をより有利に達成することが可能となる。
そして、内側回転部材とメインカムとの間、および内側回転部材とパイロットカムとの間の一方にのみ弾性部材を配設した場合でも、本発明では、内側回転部材に対してカム機構の回転バランスを調整することができるので、インナ側のアンバランス量を抑制することができる。そのため、全体のアンバランス量が従来よりも改善され、回転アンバランスの修正率が向上するので直行率も向上する。さらに、インナ側のアンバランスによる廃却処分を大幅に低減できるので、良品率も向上させることができる。
請求項3に係る発明によれば、カム機構は、内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたパイロットカムを有し、パイロットクラッチ機構は、外側回転部材と一体的に回転する機能部材を有し、弾性部材は、パイロットカムと外側回転部材または機能部材との間に配設されている。本発明においては、パイロットカムと外側回転部材または機能部材との間に弾性部材が配設されていることにより、外側回転部材または機能部材に対してパイロットカムが調芯される。これにより、回転バランスの向上を図ることができる。
請求項4に係る発明によれば、パイロットクラッチ機構は、外側回転部材の内周側に同軸的に配置されて電磁石と協働するアーマチャを有し、弾性部材は、アーマチャと外側回転部材との間に配設されている。
本発明においては、アーマチャと外側回転部材との間に弾性部材が配設されていることにより、外側回転部材に対してアーマチャが調芯される。アーマチャは、外側回転部材に対して、軸方向に移動可能で、且つ回転方向に規制された状態に設けられるものであり、軸方向への移動量も比較的少ない。そのため、弾性部材を、アーマチャと外側回転部材との間に配設した場合には、摩擦損失が小さく、悪影響を及ぼし難い。
請求項5に係る発明によれば、弾性部材は、ゴム弾性体または樹脂弾性体により形成されている。そのため、弾性部材が所定の箇所に配設されたときに、弾性部材の弾性力が発揮されることによって、内側回転部材および外側回転部材に対するカム機構およびパイロットクラッチ機構の回転バランスの調整が効果的に行われる。なお、ゴム弾性体としては、例えば、ニトリルゴムを採用することができる。また、樹脂弾性体としては、例えば、ウレタン樹脂を採用することができる。
請求項6に係る発明によれば、弾性部材は、リング状に形成されている。即ち、弾性部材は、周方向に連続しているものである。これにより、弾性部材が配設される箇所において周方向の全域に弾性部材を配置することができるので、回転部材の360°全方向に対して回転バランスを調整することができる。なお、弾性部材の断面形状は、例えば、円形や半円形、多角形、X字形、異形など任意の形状を選択することができる。
実施形態1に係る駆動力伝達装置の軸方向に沿う断面図である。 実施形態1に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。 実施形態2に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。 実施形態3に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。 図4のA−A線に相当する部位の断面図である。 実施形態4に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。 図6のB−B線に相当する部位の断面図である。 (a)は図7のC−C線矢視断面図であり、(b)は図7のD−D線矢視断面図である。
本発明の駆動力伝達装置を、四輪駆動車の駆動力分配装置に適用した場合について、図1〜図7を参照して、具体的に説明する。
まず、本発明の駆動力伝達装置を適用した四輪駆動車について簡単に説明する。当該四輪駆動車は、前輪駆動車(FF車)をベースとする車両であり、エンジンの片側に組み付けられたトランスアクスルには、一対のフロントアクスルが連結されている。さらに、トランスアクスルには、プロペラシャフトが連結されており、該プロペラシャフトは、駆動力伝達装置を介してドライブピニオンシャフトに連結されている。そして、ドライブピニオンシャフトは、リヤディファレンシャルを介して一対のリヤアクスルに連結されている。
つまり、エンジンの駆動力は、上記フロントアクスルを介して前輪に伝達される。一方、駆動力伝達装置によりプロペラシャフトとドライブピニオンシャフトとがトルク伝達可能に連結された場合には、エンジンの駆動力がドライブピニオンシャフトからリヤディファレンシャル及び各リヤアクスルを介して後輪に伝達される。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る駆動力伝達装置の軸方向に沿う断面図である。図2は、実施形態1に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。実施形態1の駆動力伝達装置は、外側回転部材10と、内側回転部材20と、メインクラッチ30と、パイロットクラッチ機構40と、カム機構50とを備えている。
外側回転部材10は、ハウジング11と、リヤカバー12とにより形成されている。ハウジング11は、非磁性材料であるアルミニウム合金からなり、有底円筒部11aを有する。有底円筒部11aの内周面には、スプラインが形成されている。そして、ハウジング11の有底円筒部11aの開口側が、車両後方(図1の右側)を向くように配置されている。
リヤカバー12は、環状に形成され、軸方向の中央に貫通孔を有する。そして、このリヤカバー12は、内周円筒部12aと、外周円筒部12bと、内周円筒部12aの前端側と外周円筒部12bの前端側とを連結する円盤部12cとから構成される。つまり、リヤカバー12は、内周円筒部12aと外周円筒部12bと円盤部12cとにより囲まれる部分に環状凹部12dを形成している。そして、外周円筒部12bの外周面が、ハウジング11の有底円筒部11aの後端開口部の内周側に嵌合螺着されており、ハウジング11の後端開口部を覆蓋している。さらに、リヤカバー12の円盤部12cの径方向ほぼ中央には、非磁性材料であるステンレス製からなる環状の非磁性部12eを埋設している。なお、リヤカバー12のうち非磁性部12e以外の部位は、磁性材料である鉄にて形成されている。
内側回転部材20は、軸状に形成され、軸方向中央の外周側にスプラインが設けられている。この内側回転部材20は、リヤカバー12の中央の貫通孔を液密的に貫通して、ハウジング11の有底円筒部11aおよびリヤカバー12の内周円筒部12aの内側に配置されている。そして、内側回転部材20は、外側回転部材10と同軸上に、外側回転部材10に対して相対回転可能となるように、且つ、外側回転部材10に対して軸方向位置を規制された状態で、ハウジング11の有底円筒部11aおよびリヤカバー12の内周円筒部12aに支持されている。この内側回転部材20の後端側は、ドライブピニオンシャフト(図示せず)の前端側に一体的に連結固定される。なお、外側回転部材10と内側回転部材20とにより液密的に区画される空間内には、潤滑油が充填されている。つまり、この潤滑油は、メインクラッチ30の各クラッチプレート間に介在している。
メインクラッチ30は、湿式多板式の摩擦クラッチである。このメインクラッチ30は、鉄製の多数のクラッチプレート(メイン内側クラッチプレート31、メイン外側クラッチプレート32)を備える。そして、このメインクラッチ30は、ハウジング11の内周側であって、内側回転部材20の外周側に配置されている。
メインクラッチ30を構成する各メイン内側クラッチプレート31は、円盤形状に形成され、内周側に軸方向に延びるスプラインを有する。そして、各メイン内側クラッチプレート31の内周側のスプラインが、内側回転部材20の外周側のスプラインに嵌合している。つまり、各メイン内側クラッチプレート31は、内側回転部材20に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。
また、メインクラッチ30を構成する各メイン外側クラッチプレート32は、円盤形状に形成され、外周側に軸方向に延びるスプラインを有する。そして、各メイン外側クラッチプレート32外周側のスプラインが、ハウジング11の内周側のスプラインに嵌合している。つまり、各メイン外側クラッチプレート32は、ハウジング11に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。
そして、各メイン外側クラッチプレート32は、各メイン内側クラッチプレート31の間に配置されている。つまり、各メイン内側クラッチプレート31と各メイン外側クラッチプレート32とが、相互に当接して摩擦係合したり、相互に離間して自由状態となったりする。従って、メインクラッチ30は、各メイン内側クラッチプレート31と各メイン外側クラッチプレート32との摩擦力に応じて、外側回転部材10と内側回転部材20との間でトルク伝達を行う。
パイロットクラッチ機構40は、メインクラッチ30よりも、車両後方に配置されている。このパイロットクラッチ機構40は、ヨーク41と、電磁石42と、アーマチュア43と、パイロットクラッチ44とにより構成されている。ヨーク41は、略円盤状に形成され、ディファレンシャルキャリヤ(図示せず)に固定されている。このヨーク41の内周側が、リヤカバー12の内周円筒部12aの外周面に軸受を介して回転可能に支持されている。
電磁石42は、環状に形成され、電磁コイルが巻回されている。そして、この電磁石42は、ヨーク41の前側に固定されて、環状凹部12d内に配置されている。この電磁石42は、通電電流に応じて、メインクラッチ30の係合力を制御することができる。
アーマチュア43は、磁性材料である鉄により円盤形状に形成され、外周側に軸方向に延びるスプラインを有する。このアーマチュア43は、メインクラッチ30の車両後側であって、リヤカバー12の円盤部12cの車両前側に配置されている。そして、アーマチュア43の外周側のスプラインが、ハウジング11の有底円筒部11aの内周側のスプラインに嵌合している。つまり、アーマチュア43は、ハウジング11に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。
パイロットクラッチ44は、湿式多板式の摩擦クラッチである。このパイロットクラッチ44は、鉄製の多数のクラッチプレート(パイロット内側クラッチプレート44a、パイロット外側クラッチプレート44b)を備える。このパイロットクラッチ44は、ハウジング11の有底円筒部11aの内周側であって、リヤカバー12の円盤部12cとアーマチュア43との間に配置されている。
パイロットクラッチ44を構成する各パイロット内側クラッチプレート44aは、円盤形状に形成され、内周側に軸方向に延びるスプラインを有する。そして、各パイロット内側クラッチプレート44aの内周側のスプラインが、後述するカム機構50のパイロットカム51の外周側のスプラインに嵌合している。つまり、各パイロット内側クラッチプレート44aは、カム機構50のパイロットカム51に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。
また、パイロットクラッチ44を構成するパイロット外側クラッチプレート44bは、円盤形状に形成され、外周側に軸方向に延びるスプラインを有する。そして、各パイロット外側クラッチプレート44bの内周側のスプラインが、ハウジング11の有底円筒部11aの内周側のスプラインに嵌合している。つまり、各パイロット外側クラッチプレート44bは、ハウジング11に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。
そして、各パイロット外側クラッチプレート44bは、パイロット内側クラッチプレート44aの両側に配置されている。つまり、各パイロット内側クラッチプレート44aと各パイロット外側クラッチプレート44bとが、相互に当接して摩擦係合したり、相互に離間して自由状態となったりする。なお、各パイロット内側クラッチプレート44aと各パイロット外側クラッチプレート44bとの間には、潤滑油が介在している。
カム機構50は、パイロットカム51と、メインカム52と、カムフォロアー53とから構成されている。パイロットカム51は、円盤形状に形成され、外周側に軸方向に延びるスプラインを有する。このパイロットカム51の車両前側の面には、カム溝(図示せず)が形成されている。そして、パイロットカム51は、内側回転部材20の外周面に回転可能に嵌合されており、リヤカバー12に回転可能に支承されている。さらに、パイロットカム51の外周側のスプラインは、パイロット内側クラッチプレート44aのスプラインに嵌合している。つまり、パイロットカム51は、パイロット内側クラッチプレート44aを軸方向へ移動可能に支持し、且つ、回転方向に規制している。
メインカム52は、略円盤形状に形成され、内周側に軸方向に延びるスプラインを有する。このメインカム52の車両後側の面には、カム溝(図示せず)が形成されている。そして、メインカム52のスプラインは、内側回転部材20の外周面のスプラインに嵌合している。つまり、メインカム52は、内側回転部材20に対して、軸方向へ移動可能であり、且つ、回転方向に規制されている。なお、メインカム52の作動時の軸方向への移動量は最大でも5mm程度で少ない。そして、メインカム52の車両前側の面が、メインクラッチ30を構成するメイン内側クラッチプレート31の車両後側の面に対向している。
図1および図2に示すように、メインカム52の内周面の軸方向ほぼ中央には、周方向に一周する凹溝54が設けられている。そして、この凹溝54には、ゴム製で断面円形のOリング(弾性部材)55が、内周側のほぼ1/3程度埋められた状態で配設されている。Oリング55のpの外周面は、メインカム52の外周面と対向する内側回転部材20の外周面と無圧状態で接触している。このOリング55により、駆動力伝達装置の作動時における、内側回転部材20に対するメインカム52の回転バランスを調整するようにされている。
そして、パイロットカム51とメインカム52の互いに対向するカム溝には、ボール状のカムフォロアー53が介在している。つまり、カムフォロアー53およびそれぞれのカム溝の作用により、パイロットカム51とメインカム52に相対回転が生じた際には、パイロットカム51とメインカム52とが軸方向に離間する方向へ移動する。
次に、上述した構成からなる駆動力伝達装置の動作について説明する。以下、パイロットクラッチ機構40を構成する電磁石42の電磁コイルに通電する場合と、通電しない場合について説明する。
まず、電磁石42の電磁コイルに通電する場合について説明する。駆動力伝達装置を構成する外側回転部材10は、プロペラシャフトに連結されているので、プロペラシャフトと共に回転する。そして、パイロットクラッチ機構40には、電磁石42の電磁コイルに通電されると、電磁石42を基点としてヨーク41、リヤカバー12、パイロットクラッチ44の各クラッチプレート44a、44b、及び、アーマチュア43を循環するループ状の循環磁路が形成される。
このように、循環磁路が形成されることで、アーマチュア43が電磁石42側、すなわちリヤカバー12側へ引き寄せられる。その結果、アーマチュア43は、パイロットクラッチ44を押圧して、パイロット内側クラッチプレート44aとパイロット外側クラッチプレート44bとが相互に当接して摩擦係合状態となる。そうすると、パイロット外側クラッチプレート44bに回転規制されている外側回転部材10の回転トルクが、パイロットクラッチ44を介して、パイロット内側クラッチプレート44aに回転規制されているパイロットカム51へ伝達されて、パイロットカム51が回転する。
パイロットカム51が回転すると、パイロットカム51とメインカム52とが相対回転するため、カムフォロアー53及びそれぞれのカム溝の作用により、パイロットカム51に対してメインカム52が車両前側へ移動する。つまり、メインカム52は、メインクラッチ30側へ移動するので、メインクラッチ30を車両前側へ押圧することになる。
その結果、メイン内側クラッチプレート31とメイン外側クラッチプレート32とが相互に当接して摩擦係合状態となる。そうすると、メイン外側クラッチプレート32に回転規制されている外側回転部材10の回転トルクが、メインクラッチ30を介して、メイン内側クラッチプレート31に回転規制されている内側回転部材20に伝達されて、内側回転部材20が回転する。そして、内側回転部材20の回転は、内側回転部材20に連結されているドライブピニオンシャフトに伝達される。
なお、制御部(図示せず)により、電磁石42の電磁コイルへの通電電流量を制御することで、メインクラッチ30の各クラッチプレートの摩擦係合力を制御することができる。つまり、制御部により電磁石42の電磁コイルへの通電電流量を制御することで、プロペラシャフトの回転トルクのうちドライブピニオンシャフトに伝達される回転トルクを制御できる。
次に、電磁石42の電磁コイルに通電しない場合について説明する。この場合には、パイロットクラッチ機構40に循環磁路が形成されない。従って、パイロット内側クラッチプレート44aとパイロット外側クラッチプレート44bとは非係合状態となるので、両者は相対的に回転する状態となる。つまり、パイロット内側クラッチプレート44aに回転規制されているパイロットカム51と、パイロット外側クラッチプレート44bに回転規制されている外側回転部材10とは、相対的に回転する状態となる。
従って、パイロットカム51とメインカム52とに相対回転は生じないため、パイロットカム51及びメインカム52の軸方向位置は変化しない。そのため、メイン内側クラッチプレート31とメイン外側クラッチプレート32とは非係合状態となるので、両者は相対的に回転する状態となる。従って、メイン外側クラッチプレート32に回転規制されている外側回転部材10と、メイン内側クラッチプレート31に回転規制されている内側回転部材20とが、相対的に回転する状態となる。つまり、プロペラシャフトの回転トルクは、ドライブピニオンシャフトに伝達されない。
以上のように構成された実施形態1の駆動力伝達装置によれば、カム機構50のメインカム52と内側回転部材20との間に、ゴム弾性体よりなるOリング55が配設されているので、内側回転部材20に対してメインカム52が調芯され、回転バランスを効果的に向上させることができる。この場合、メインカム52は、カム機構50を構成するカムフォロア53やパイロットカム51が連結しているので、これらの部材も内側回転部材20に対して調芯される。これにより、内側回転部材20、メインカム52、カムフォロア53およびパイロットカム51の重心が一致し、インナ側の回転バランスを安定させることができる。
特に、メインカム52は、軸方向に移動可能で、且つ回転方向に規制された状態に設けられる部材であり、軸方向への移動量も比較的少ないため、他の部材と干渉する恐れが少なく、悪影響を及ぼし難いので、回転バランスの向上を図るの好適となる。また、メインカムは、カム機構のうちで重量が大きいことから、調芯を有利に行うことができるので、回転バランスの向上を有利に達成することができる。さらに、実施形態1では、従来、組み付け後においては、アンバランスの修正が不可能であったインナ側に対して、回転バランスの向上が図られているいるので、廃却処分を大幅に低減することができ、良品率も向上させることができる。
〔実施形態2〕
実施形態2の駆動力伝達装置について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態2に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。
実施形態2の駆動力伝達装置は、実施形態1では、カム機構50のメインカム52と内側回転部材20との間にOリング(弾性部材)55を配設していたのに対して、実施形態2では、Oリング55Aを、カム機構50Aのパイロットカム51Aと内側回転部材20Aとの間に配設している点でのみ異なる。他の構成は実施形態1と同じであるので、詳しい説明は省略する。
実施形態2では、図3に示すように、パイロットカム51Aの内周面の軸方向ほぼ中央には、周方向に一周する凹溝54Aが設けられており、この凹溝54Aに、実施形態1と同様にゴム製のOリング55Aが配設されている。この場合にも、Oリング55Aが、内周側のほぼ1/3程度埋められた状態で配設されており、Oリング55Aの外周面は、パイロットカム51Aの外周面と対向する内側回転部材20Aの外周面と無圧状態で接触している。
以上のように構成された実施形態2の駆動力伝達装置によれば、内側回転部材20Aとパイロットカム51Aとの間にOリング55Aが配設されているので、内側回転部材20Aに対してパイロットカム51Aが調芯され、回転バランスを効果的に向上させることができる。実施形態2の場合にも、実施形態1と同様に、パイロットカム51Aは、カム機構50Aを構成するカムフォロア53Aやメインカム52Aが連結しているので、これらの部材も内側回転部材20Aに対して調芯させることができる。これにより、内側回転部材20A、メインカム52A、カムフォロア53Aおよびパイロットカム51Aの重心が一致し、インナ側の回転バランスを有利に安定させることができる。
また、実施形態2の場合にも、従来、組み付け後においては、アンバランスの修正が不可能であったインナ側に対して、回転バランスの向上が図られているいるので、廃却処分を大幅に低減することができ、良品率も向上させることができる。
〔実施形態3〕
実施形態3の駆動力伝達装置について、図4および図5を参照して説明する。図4は、実施形態3に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。図5は、図4のA−A線に相当する部位の断面図である。
実施形態3の駆動力伝達装置は、実施形態1および2では、カム機構50と内側回転部材20との間にOリング(弾性部材)55を配設していたのに対して、実施形態3では、Oリング55Bを、カム機構50Bのと外側回転部材10Bとの間に配設している点でのみ異なる。他の構成は実施形態1と同じであるので、詳しい説明は省略する。
実施形態3では、カム機構50Bを構成するパイロットカム51Bと外側回転部材10Bを構成するリヤカバー12Bとの間に、実施形態1および2と同様のOリング55Bが配設されている。そして、パイロットカム51Bの外周面の後端側に、周方向に一周する凹溝54Bが設けられており、この凹溝54Bに、実施形態1と同様にゴム製のOリング55Bが配設されている。この場合にも、Oリング55Bが、内周側のほぼ1/3程度埋められた状態で配設されており、Oリング55Bの外周面は、パイロットカム51Bの外周面と対向するリヤカバー12Bの内周面と無圧状態で接触している。
以上のように構成された実施形態3によれば、パイロットカム51Bとリヤカバー12B(外側回転部材10B)との間に、実施形態1および2と同様のOリング55Bが配設されているので、外側回転部材10Bに対してパイロットカム51Bが調芯され、回転バランスを効果的に向上させることができる。
〔実施形態4〕
実施形態4の駆動力伝達装置について、図6〜図8を参照して説明する。図6は、実施形態4に係る駆動力伝達装置の要部の断面図である。図7は、図6のB−B線に相当する部位の断面図である。図8(a)は、図7のC−C線矢視断面図であり、(b)は図7のD−D線矢視断面図である。
実施形態4の駆動力伝達装置は、実施形態1および2では、カム機構50と内側回転部材20との間にOリング55を配設していたのに対して、実施形態4では、Oリング55Cを、パイロットクラッチ機構40Cと外側回転部材10Cとの間に配設している点でのみ異なる。他の構成は実施形態1と同じであるので、詳しい説明は省略する。
即ち、実施形態4では、パイロットクラッチ機構40Cを構成するアーマチャ43Cと外側回転部材10Cを構成するハウジング11Cとの間に、実施形態1および2と同様のOリング55Cが配設されている。そして、アーマチャ43Cの外周面の軸方向ほぼ中央に、周方向に一周する凹溝54Cが設けられており、この凹溝54Cに、実施形態1と同様にゴム製のOリング55Cが配設されている。この場合にも、Oリング55Cが、内周側のほぼ1/3程度埋められた状態で配設されており、Oリング55Cの外周面は、パイロットカム51Cの外周面と対向するリヤカバー12Cの内周面と無圧状態で接触している。
以上のように構成された実施形態4によれば、アーマチャ43Cとハウジング11Cとの間に、Oリング55Cが配設されているので、外側回転部材10Cに対してアーマチャ43Cが調芯され、回転バランスを効果的に向上させることができる。
10:外側回転部材、 11:ハウジング、 12:リヤカバー、 20:内側回転部材、 30:メインクラッチ、 31:メイン内側クラッチプレート、 32:メイン外側クラッチプレート、 40:パイロットクラッチ機構、 41:ヨーク、 42:電磁石、 43:アーマチャ、 44:パイロットクラッチ、 44a:パイロット内側クラッチプレート、 44b:パイロット外側クラッチプレート、 50:カム機構、 51:パイロットカム、 52:メインカム、 53:カムフォロア、 54:凹溝、 55:Oリング(弾性部材)。

Claims (6)

  1. 円筒部を有する外側回転部材と、
    前記円筒部内にて前記外側回転部材と同軸上に相対回転可能に支持された内側回転部材と、
    前記外側回転部材と前記内側回転部材の間でトルク伝達を行うメインクラッチと、
    電磁石を有し、該電磁石への通電電流に応じて前記メインクラッチの係合力を制御するパイロットクラッチ機構と、
    該パイロットクラッチ機構に発生する作用力を前記メインクラッチに伝達するカム機構と、を備え、
    前記内側回転部材と前記カム機構との間、前記カム機構と前記パイロットクラッチ機構との間、および前記パイロットクラッチ機構と前記外側回転部材との間の少なくとも1箇所に、前記内側回転部材および前記外側回転部材に対する前記カム機構およびパイロットクラッチ機構の回転バランスを調整する弾性部材が配設されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
  2. 請求項1において、
    前記カム機構は、前記内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたメインカムおよびパイロットカムを有し、
    前記弾性部材は、前記内側回転部材と前記メインカムとの間、および前記内側回転部材と前記パイロットカムとの間の少なくとも一方に配設されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記カム機構は、前記内側回転部材の外周側に同軸的に配置されたパイロットカムを有し、
    前記パイロットクラッチ機構は、前記外側回転部材と一体的に回転する機能部材を有し、
    前記弾性部材は、前記パイロットカムと前記外側回転部材または前記機能部材との間に配設されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
  4. 請求項1〜3の何れか一項において、
    前記パイロットクラッチ機構は、前記外側回転部材の内周側に同軸的に配置されて前記電磁石と協働するアーマチャを有し、
    前記弾性部材は、前記アーマチャと前記外側回転部材との間に配設されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
  5. 請求項1〜4の何れか一項において、
    前記弾性部材は、ゴム弾性体または樹脂弾性体により形成されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
  6. 請求項1〜5において、
    前記弾性部材は、リング状に形成されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
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