以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるスプリングシートラバー1が組み付けられたサスペンション機構100の部分断面図である。なお、図1では、図面の簡素化のため、カラー23に取着されるショックアブソーバーの図示とコイルスプリング3の一部の図示とを省略している。また、スプリングシートラバー1は、ストラットマウント2とコイルスプリング3とにより変形された状態にて図示されている。
まず、図1を参照してサスペンション機構100の構成について説明する。サスペンション機構100は、車輪(図示せず)と車体(図示せず)との相対移動により生じる変位を吸収して、車体の安定性を保つための機構であり、図1に示すように、スプリングシートラバー1と、ストラットマウント2と、コイルスプリング3とを主に備えて構成されている。
スプリングシートラバー1は、コイルスプリング3を介して車輪側から車体側へ伝達される振動を低減するための部材であり、軸心Oを有する略円環状に形成されたフランジ部11と、そのフランジ部11の下端部(図1下側端部)から立設する略円筒形状に構成された嵌合筒部10とを備えている。これら嵌合筒部10とフランジ部11とはゴム状弾性体から一体に加硫成形されている。
フランジ部11は、図1に示すように、嵌合筒部10に連成される平坦面として構成されたコイル当接面11aと、そのコイル当接面11aに対向して配設される面である金具当接面11bと、内側の側面である内周面11dとを備えている。なお、フランジ部11の詳細な構成については、図2及び図3を参照して後述する。
フランジ部11の内径形状は、後述するストラットマウント2の内嵌部21a(図5参照)の外径形状に対応した形状とされている。そして、フランジ部11の軸心Oを内嵌部21aの軸心Oの延長上に一致させて、スプリングシートラバー1を内嵌部21a側からフランジ部21b側に向かって移動させると、そのスプリングシートラバー1がストラットマウント2に外嵌される。
また、フランジ部11の内周面11dには、図1に示すように、内側凹部12が凹設されており、その内側凹部12は、後述する金具当接面11bに連成されリング13側へ向かって延設されている。
嵌合筒部10の内部には、金属材料にて構成されると共に上方(図1上方)が拡径されたテーパ状の筒状に形成されるリング13が埋設されている。
また、フランジ部11に凹設される内側凹部12は、上端側(図1上端側)が開口され下端側(図1下端側)がリング13と嵌合筒部10とにより閉封されている。
ストラットマウント2は、図1に示すように、スプリングシートラバー1が外嵌される略筒状に構成された取り付け金具20と、その取り付け金具20の内部に収容されるカラー23と、そのカラー23と取り付け金具20の内周面とに加硫接着される防振基体24と、取り付け金具20から突出される取り付けボルト25とを主に備えている。
取り付け金具20は、略円筒形状に構成される基体部21と、その基体部21の上部(図1上部)に配設される上部プレート22とを備えている。
基体部21は、軸心Oを有する略円筒状に形成された内嵌部21aと、その内嵌部21aの上端部(図1上側)から径方向外側(図1左右方向外側)へ向けて張り出すリング形状のフランジ部21bと、内嵌部21aの内周面から径方向内側(図1左右方向内側)へ向けて張り出すリング形状の仕切部21cとを備えており、これら内嵌部21aとフランジ部21bと仕切部21cとは金属材料から一体に成形されている。
基体部21のフランジ部21bの外径は、スプリングシートラバー1のフランジ部11の内径より大きな寸法に設定され、基体部21の内嵌部21aの外径は、スプリングシートラバー1のフランジ部11の内径より大きく(フランジ部11が弾性変形して、フランジ部11のコイル当接面11d(図3参照)が基体部21の内嵌部21aに密着する程度に大きく)設定されている。
そこで、嵌合筒部10の軸心Oを内嵌部21aの軸心Oの延長上に一致させて、スプリングシートラバー1を内嵌部21a側からフランジ部21b側に向かって移動させるとフランジ部21bにフランジ部11の金具当接面11bが当接されて、スプリングシートラバー1をフランジ部21bの下面(図2下面)で係止することができると共にフランジ部11のコイル当接面11d(図3参照)が基体部21の内嵌部21aに密着されるので、スプリングシートラバー1が基体部21から抜け落ちること防止することができる。
上部プレート22は、図1に示すように、軸心Oを有し上面視(図1上側から下側方向視)リング状の平板形状に構成されており、メカニカルクリンチ26が形成されることで前述したフランジ部21bと一体とされている。なお、メカニカルクリンチ26の構成については、図4及び図5を参照して後述する。
カラー23は、軸心Oと異なる軸心を有する略円筒状に形成されたカラー筒部23aと、そのカラー筒部23aの上端部(図1上側)から径方向外側(図1左右方向外側)へ向けて張り出すカラーフランジ部23bとを備えており、これらカラー筒部23aとカラーフランジ部23bとは金属材料から一体に成形されている。
防振基体24は、ゴム状弾性体からリング状に加硫成形され内嵌部21aの内側であって仕切部21cと上部プレート22との間に配設されており、カラーフランジ部23bに加硫接着されている。
取り付けボルト25は、取り付け金具20を車体側に取り付けるための部材であり、上部プレート22とフランジ部21bとに挿通されており、セレーションにてフランジ部21bと回動不能に係合されている。
図1に示すように、コイルスプリング3は、軸心Oを有すると共に金属線から螺旋状に構成されており、フランジ部11の外径より小さく嵌合筒部10の外径より大きな内径を有している。
そのため、嵌合筒部10の軸心Oにコイルスプリング3の軸心Oを一致させて配置すると、フランジ部11のコイル当接面11aにコイルスプリング3の軸心O方向(図1上下方向)の端の部位である一対の端部3aの内の一方が当接される。なお、コイルスプリング3の他方は車輪側に当接されている。
前述したように、サスペンション機構100は、取り付け金具20が車体側に取り付けボルト25を介して取り付けられ、そのストラットマウント2の取り付け金具20にカラー23が防振基体24を介して取着されている。そのカラー23には、他端側が車輪側に取着されたショックアブソーバ(図示せず)の一端側が取り付けられる。また、取り付け金具20の内嵌部21aは、スプリングシートラバー1の嵌合筒部10に内嵌されており、そのスプリングシートラバー1の金具当接面11bが取り付け金具20のフランジ部21bに当接されている。また、スプリングシートラバー1のコイル当接面11aには、コイルスプリング3の一対の端部3aの内の一方が当接されており、他方は車輪側に当接されている。
そして、スプリングシートラバー1は、取り付け金具20のフランジ部21bとコイルスプリング3の端部3aとによって狭持され車体(図示せず)からの荷重により押圧される。その結果、コイルスプリング3の端部3aがスプリングシートラバー1を変形させつつスプリングシートラバー1のコイル当接面11aを金具当接面11b側に沈み込ませる。
一方、コイルスプリング3は、金属線から螺旋状に構成されており、コイルスプリング3の軸心O方向(図1上下方向)の端部3aには、金属線の切断面である端面3b(図6参照)が形成されている。そのため、コイルスプリング3の端部3aがスプリングシートラバー1のコイル当接面11aを沈み込ませると(図7(a)参照)、端面3bを境にせん断力が生じる。その結果、端面3bが当接されるコイル当接面11a上の部位を起点として亀裂が発生し、フランジ部11が破断される場合がある。
また、内側凹部12と内嵌部21aとの間に形成される空間である空間Sに変形されたスプリングシートラバー1の一部を収容することで、スプリングシートラバー1の全体を一様に変形させて、スプリングシートラバー1に大きなせん断力が生じることを防ぎ、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
次に、図2及び図3を参照して、スプリングシートラバー1の詳細な構成について説明する。図2は、スプリングシートラバー1の上面図であり、図3は、図2のIII−III線におけるスプリングシートラバー1の断面図である。
図2及び図3に示すように、スプリングシートラバー1は、軸心Oを有する略円筒状に形成された嵌合筒部10と、その嵌合筒部10の上端部(図1上側)から径方向外側(図1左右方向外側)へ向けて張り出すフランジ部11とを備えている。これら嵌合筒部10とフランジ部11とはゴム状弾性体から一体に加硫成形されている。
前述したように、フランジ部11の内周面11dには、内側凹部12が凹設されており、その内側凹部12は、図2に示すように、金具当接面11b側からリング13側向かって延設されている。
また、内周面11dは、内周面11dの金具当接面11b側(図3上側)の面である上内周面11d1と、内周面11dのリング13側(図3下側)の面である下内周面11d2とを備えている。
図2及び図3に示すように、内側凹部12は、底面12aと、一対の壁面12bと、連接面12cとを備えている。
図3に示すように、底面12aは、金具当接面11bに連成される曲面であり、軸心Oに直角に配設される金具当接面11bから軸心Oに沿った方向に湾曲しており、リング13側へ延設されている。
底面12aは、底面12aのリング13側(図3下側)の面である下底面12a2と、底面12aの金具当接面11b側(図3上側)の面である上底面12a1とを備えている。
図2及び図3に示すように、一対の壁面12bは、平坦面として構成されると共にスプリングシートラバー1の円周方向における底面12aの両側からそれぞれ立設され、それら一対の壁面12bは互いに平行に配設されている。また、連接面12cは、平坦面として構成されると共に一対の壁面12bのそれぞれに連成されている。
また、図2に示すように、底面12aと壁面12bとの連接面である曲面12f、壁面12bと連接面12cとの連接面である曲面12gは、湾曲した面として構成されている。よって、スプリングシートラバー1が変形した際に生じる力の集中を防いで曲面12fおよび曲面12gの耐久性の向上を図ることができる。その結果、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
また、図3に示すように、下底面12a2は、軸心Oを含む平面で切った断面線が軸心Oに沿う方向(図3上下方向)と平行に構成されており、下内周面11d2は、軸心Oと壁面12bとを含む平面で切った断面線がリング13側に向かうほど軸心Oに近接して構成されている。よって、リング13側に近いほど内側凹部12の深さ(図3左右方向寸法)が深くなる。
また、上底面12a1は、軸心Oを含む断面線が金具当接面11bへ向かうほど軸心Oから離間する方向(図3左方向)に曲がっており、その断面線の曲率は半径R1に設定されている。
また、図3に示すように、上内周面11d1は、軸心Oと壁面12bとを含む平面で切った断面線が金具当接面11bへ向かうほど軸心Oから離間する方向(図3左右外方向)に曲がっており、その断面線の曲率は半径R2に設定されている。
それら上内周面11d1及び上底面12a1は、軸心Oを中心とした円の径方向において金具当接面11b上で軸心Oからの距離が同じ距離の位置に連接されている。また、上内周面11d1の断面線の半径R2が上底面12a1の断面線の半径R1より大きな値に設定されている(R2>R1)。よって、リング13側へ向かうほど上内周面11d1の断面線が上底面12a1の断面線より軸心O側に近接する。
よって、壁面12bの形状が正面視(図3紙面垂直方向視)三角形形状であって、その三角形形状の鋭角部分の先端がスプリングシートラバー1の外側(図3左右方向外側)に曲がって構成される。即ち、内側凹部12の上面側(図3上側)の深さ寸法T1より下面側(図3下側)の深さ寸法T2の方が大きな寸法値となる(T2>T1)。また、図2に示すように、互いに対向する壁面12bの寸法値が幅寸法W2に設定されている。
図2に示すように、フランジ部11は、軸心Oを中心とする半径R1の仮想の円である仮想円Rより軸心Oの径方向外側に張り出した部位である張り出し部14を複数(本実施の形態では3個)備え、それら複数の張り出し部14は、軸心Oを中心とする円周方向に等間隔(中心角度にて120度間隔)に配設されている。
図2に示すように、張り出し部14は、一対の側面14aと、連接面14bと、一対の上面14cとを備えている。
側面14aは、軸心Oの延長方向に沿う平坦面であり、上面視(図2紙面垂直方向視)において、仮想円Rに接している。連接面14bは、それら一対の側面14aの間に連成される曲面である。
即ち、張り出し部14は、上面視(図2紙面垂直方向視)において、仮想円Rと、側面14aと、連接面14bとによって囲まれており、上面視(図2紙面垂直方向視)略二等辺三角形形状でその二等辺三角形の底辺が対向する頂点側に凹んだ曲線形状に構成されている。
よって、後述するボルトヘッド用凹部16から仮想円Rの円周方向に離間するに従って張り出し部14の仮想円Rの径方向寸法値(請求項1に記載の「張り出し量」に対応する。)が小さくなる。
上面14cは、後述するボルトヘッド用凹部16の両側に配設されると共に仮想円Rの外側に配設される面である。なお、張り出し部14の仮想円Rの円周方向の幅は、幅寸法W3に設定されており、後述する壁面12bの対向間隔である幅寸法W2及び壁面16bの対向間隔である幅寸法W1より大きな値に設定されている。
図2に示すように、フランジ部11の金具当接面11bには、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ用凹部15と、複数(本実施の形態では3個)のボルトヘッド用凹部16とが凹設されている。
図2及び図3に示すように、複数(本実施の形態では3個)のボルトヘッド用凹部16は、軸心S1を有すると共に仮想円Rの円周方向に等間隔(中心角度にて120度間隔)の位置であってボルトヘッド用凹部16の軸心S1を仮想円Rの円周上に位置するように配設されている。
同様に、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ用凹部15は、軸心S2を有すると共に仮想円Rの円周方向に等間隔(中心角度にて120度間隔)の位置であって且つメカニカルクリンチ用凹部15の軸心S2を軸心Oからメカニカルクリンチ用凹部15の軸心S2まで距離が半径R2となる円周上に位置するように配設されている。そして、これらボルトヘッド用凹部16とメカニカルクリンチ用凹部15とは交互(中心角度にて60度間隔)に配置されている。
図2及び図3に示すように、メカニカルクリンチ用凹部15は、上面視(図2紙面垂直方向視)長円の一方の円弧側(フランジ部11の外側)を開放した形状に構成されると共に、底面15aと、一対の壁面15bと、連接面15cとを備えている。
底面15aは、平坦面として構成されると共に軸心Oに対して直交して配設され、一対の壁面15bは、平坦面として構成されると共にスプリングシートラバー1の円周方向における底面15aの両側からそれぞれ立設されている。
また、図2に示すように、一対の壁面15bは、互いに平行に配設されそれぞれが連接面15cにより連成されており、連接面15cは、軸心S2を中心とした曲面として構成されている。また、壁面15b及び連接面15cの立設高さ(図3上下方向寸法値)は、高さ寸法H3に設定されている。
また、図3に示すように、底面15aと壁面15bとの連接面である曲面15dおよび底面15aと連接面15cとの連接面である曲面15eは、湾曲した面として構成されている。
よって、スプリングシートラバー1が変形した際に力が一箇所に集中することを防いで曲面15dおよび曲面15eの耐久性の向上を図ることができる。その結果、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
図2及び図3に示すように、ボルトヘッド用凹部16は、上面視(図2紙面垂直方向視)長円の一方の円弧側(フランジ部11の外側)を開放した形状に構成されると共に、底面16aと、一対の壁面16bと、連接面16cとを備えている。
図3に示すように、底面16aは、平坦面として構成されると共に軸心Oに対して直交して配設されている。図2に示すように、一対の壁面16bは、平坦面として構成されると共にスプリングシートラバー1の円周方向における底面16aの両側からそれぞれ立設されている。
また、図3に示すように、一対の壁面16bは、互いに平行に配設され、それら一対の壁面16bが連接面16cにより連成されている。その連接面16cは、底面16aから立設されると共に軸心S1を中心とした曲面として構成されている。また、壁面16b及び連接面16cの立設高さ(図3上下方向寸法値)は、高さ寸法H2に設定されている。
また、図3に示すように、底面16aと壁面16bとの連接面である曲面16dおよび底面16aと連接面16cとの連接面である曲面16eは、湾曲した面として構成されている。よって、スプリングシートラバー1が変形した際に力が一箇所に集中することを防いで曲面16dおよび曲面16eの耐久性の向上を図ることができる。その結果、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
また、図3に示すように、ボルトヘッド用凹部16の底面16aは、メカニカルクリンチ用凹部15の底面15aより高さ寸法H1だけリング13側(図3下側)に配設されている。
ここで、スプリングシートラバー1をストラットマウント2(図1参照)と組み合わせると、ボルトヘッド用凹部16の底面16aにボルトヘッド25a(図1参照)が当接され、底面16aはリング13側(図3下側)に変形される。
そのため、メカニカルクリンチ用凹部15の底面15aがボルトヘッド用凹部16の底面16aの変形によりリング13側(図3下側)へ引っ張られる。よって、ボルトヘッド用凹部16の底面16aとメカニカルクリンチ用凹部15の底面15aとの間の部位に引っ張り力が生じる。
その結果、コイルスプリング3(図1参照)がスプリングシートラバー1を押圧することでスプリングシートラバー1に作用する圧縮力と引っ張り力とのバランスが保たれて、スプリングシートラバー1の内部に局所的に大きな力が生じることを防いで、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
図2に示すように、張り出し部14は、上面視(図2紙面垂直方向視)において、内側凹部12の一対の壁面12bの延長線上に配設されている。即ち、張り出し部14がフランジ部11の外周に配設されるので、軸心O及び壁面12bを含む平面によって切り取られるスプリングシートラバー1の断面積が増加する。
よって、断面積が増加した分、スプリングシートラバー1に作用する力を分散して受け止めることができるので、スプリングシートラバー1の強度が向上され、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
図2に示すように、ボルトヘッド用凹部16の互いに対向する壁面16bの対向間隔が幅寸法W1に設定され、その幅寸法W1は、前述した内側凹部12の一対の壁面12bの対向間隔である幅寸法W2より小さな値に設定されている(W1<W2)。
また、ボルトヘッド用凹部16は、それら一対の壁面12bの延長線の間に配置されており、軸心Oを中心とする仮想円Rの径方向において、内側凹部12の一部がボルトヘッド用凹部16全体と重なりあっている。
例えば、幅寸法W1が前述した一対の壁面12bの対向間隔である幅寸法W2より大きな値に設定され(W1>W2)、軸心Oを中心とする仮想円Rの円周方向において、内側凹部12全体がボルトヘッド用凹部16に重なりあっている場合には、軸心Oと壁面12bとを含む平面上には、必ずボルトヘッド用凹部16が含まれている。
そして、ボルトヘッド用凹部16は凹んだ形状とされているので、フランジ部11の断面であって軸心Oと壁面12bとを含む断面の面積がボルトヘッド用凹部16の断面積分だけ減少する。
その分、軸心Oと壁面12bとを含むフランジ部11の断面の面積が小さくなり、フランジ部11に作用する力が分散され難くなる。その結果、フランジ部11の断面であって軸心Oと壁面12bとを含む断面において、フランジ部11の強度が向上され難く、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることが難しくなる。
ここで、本発明では、幅寸法W1が幅寸法W2より小さな値に設定されており(W1<W2)、軸心Oを中心とする仮想円Rの円周方向において、ボルトヘッド用凹部16全体が内側凹部12と重なり合いっている。
即ち、軸心Oと壁面12bとを含む断面上には、ボルトヘッド用凹部16が配設されていない。よって、フランジ部11の断面であって軸心Oと壁面12bとを含む断面の面積がボルトヘッド用凹部16の断面積分だけ減少することを防ぐことができる。
その結果、フランジ部11の断面であって軸心Oと壁面12bとを含む断面におけるフランジ部11の強度の低下が防止され、スプリングシートラバー1の耐久性を確保することができる。
また、図3に示すように、リング13の内側の面である内周面13aの軸心Oに対するテーパ角度A1は、リング13の内側に形成される内周面10aの軸心Oに対するテーパ角度A2と同等に設定されている。
即ち、内周面10aとリング13の内周面13aとの軸心Oを含んだ断面における断面線が互いに平行となる。よって、内周面10aに力が作用すると嵌合筒部10の部位であってリング13の内側の部位は、リング13の内周面13aにて均等に押圧される。その結果、フランジ部11の内部に局所的に大きな力が発生することを防いで、嵌合筒部10の耐久性を向上させることができる。
次に、図4及び図5を参照して、ストラットマウント2の構成について説明する。図4は、ストラットマウント2の上面図であり、図5は、図4のV−V線におけるストラットマウント2の断面図である。
図4及び図5に示すように、ストラットマウント2は、軸心Oを有しスプリングシートラバー1が外嵌される略筒状に構成された取り付け金具20と、その取り付け金具20の内部に収容されるカラー23と、そのカラー23と取り付け金具20の内周面とに加硫接着される防振基体24と、取り付け金具20から突出される取り付けボルト25とを主に備えている。
取り付け金具20は、軸心Oを有し略円筒形状に構成される基体部21と、その基体部21の上部(図1上部)に配設される軸心Oを有する上部プレート22とを備えている。また、基体部21は、内嵌部21aと、フランジ部21bとを備えている。
図4及び図5に示すように、上部プレート22と基体部21のフランジ部21bとは、軸心Oが一致するように、重ね合わせられており、その重ね合わせられた上部プレート22の上面側(図5上面側)から軸心S3を有する複数(本実施の形態では3個)の取り付けボルト25が突出されている。
図4に示すように、複数(本実施の形態では3個)の取り付けボルト25は、軸心Oを中心とする円周方向に等間隔(中心角度にて120度間隔)で、且つ軸心Oから取り付けボルト25の軸心S3まで距離が半径R3となる円周上に配設されている。
同様に、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ26は、軸心S4を有すると共に軸心Oを中心とする円周方向に等間隔(中心角度にて120度間隔)で且つ軸心Oからメカニカルクリンチ26の軸心S4まで距離が半径R4となる円周上に配設されている。そして、これら取り付けボルト25とメカニカルクリンチ26とは交互(中心角度にて60度間隔)に配置されている。
図5に示すように、取り付けボルト25は、取り付け金具20を車体側に取り付けるための部材であり、取り付けボルト25の外周面にセレーション(図示せず)が形成されている。
同様に、フランジ部21bの貫通孔(図示せず)にも取り付けボルト25に形成されたセレーションに対応したセレーションが形成されている。よって、取り付けボルト25がフランジ部21bに回動不能に係合される。
そのため、取り付けボルト25を車体側に締結する際に、取り付けボルト25を治具にて固定する必要がなく、ボルトヘッド25aの形状をドライバーなどの締結工具に対応した形状とする必要がない。そのため、ボルトヘッド25aが正面視(図4紙面垂直方向視)円形の平板状に構成することができる。
また、ボルトヘッド25aは、外周面と正面視(図4紙面垂直方向視)円形の面とのつながりがなめらかな曲面にて構成されている。よって、ボルトヘッド25aがボルトヘッド用凹部16(図3参照)に当接した場合でも、ボルトヘッド用凹部16の底面16aに局所的に大きな力が生じることを防いで、底面16aの耐久性を向上させ、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。なお、ボルトヘッド25aの厚さは、高さ寸法H5の寸法値に設定されている。
また、図5に示すように、メカニカルクリンチ26は、2本の棒状のピン(図示せず)が上部プレート22とフランジ部21bとを両側から挟んで押し付けられることで上部プレート22とフランジ部21bとを陥没させて形成される部位である。そのため、フランジ部21bの下面側(図5下面側)には、陥没によって変形された部位の駄肉が隆起したメカニカルクリンチ突起部26aが形成される。
そのメカニカルクリンチ突起部26aは、取り付け金具20とフランジ部21bとが円形のピン(図示せず)にて押し付けられて形成されているので、その円形形状が転写され下面視(図5下面視)リング形状に構成されると共に高さ寸法H4の寸法値で上部プレート22側(図5上側)から取り付け金具20側(図5下側)に向かって凸設されている。
なお、前述したメカニカルクリンチ用凹部15の高さ寸法H3(図3参照)は、メカニカルクリンチ突起部26aの高さ寸法H4の4倍より大きな値に設定されている(H4>H3×4)。
よって、スプリングシートラバー1(図1参照)が経年変化により厚み(図1上下方向寸法値)が潰れた場合でも、メカニカルクリンチ突起部26aがメカニカルクリンチ用凹部15(図3参照)に接触することを防止することができる。その結果、スプリングシートラバー1(図1参照)の使用寿命を延ばすことができる。
または、スプリングシートラバー1の寿命を一定に設定すれば、スプリングシートラバー1を構成するゴム状弾性体をコストが安い材料に変更することもできる。その結果、スプリングシートラバー1の製品コストの削減を図ることができる。
また、上部プレート22とフランジ部21bとの厚さ方向(図5上下方向)の寸法値であって、取り付けボルト25が圧入される部位の厚さ寸法T3は、メカニカルクリンチ26が形成される部位の厚さ寸法T4より大きな寸法値に設定されている(T3>T4)。
よって、厚さ寸法T4の部位に取り付けボルト25を圧入する場合に比べて、取り付けボルト25の圧入締め代を十分に確保することができる。また、厚さ寸法T3の部位にメカニカルクリンチ26を形成する場合に比べて、メカニカルクリンチ26が形成される部位の強度を低くしてメカニカルクリンチ26の形成を容易とすることができる。このように、取り付け金具20と上部プレート22とは、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ26によって一体とされている。
次に、図6から図8を参照して、スプリングシートラバー1のボルトヘッド用凹部16と取り付けボルト25のボルトヘッド25aとの位置関係について説明する。図6は、ボルトヘッド用凹部16が配設されるサスペンション機構100の部位をコイルスプリング3側からストラットマウント2側に向けて見た部分底面図であり、コイルスプリング3の端面3bがボルトヘッド用凹部16の背面上に配設された状態を示している。
なお、図6では、図面の理解を容易とするために、コイルスプリング3の端部3aにハッチングを施している。
図7(a)は、図6のVIIa−VIIa線におけるサスペンション機構100の部分断面図であり、図7(b)は、図7(a)のコイルスプリング3がストラットマウント2に押圧される前の状態を示したサスペンション機構100の部分断面図であり、図7(a)に対応する。また、図7(c)は、図6のVIIc−VIIc線におけるサスペンション機構100の部分断面図である。
図6に示すように、スプリングシートラバー1とストラットマウント2とは、お互いの軸心Oを一致させて重ね合わせられており、ボルトヘッド用凹部16の連接面16cの軸心S1から軸心Oまでの距離である半径R1と、取り付けボルト25の軸心S3から軸心Oまでの距離である半径R3とが同一距離とされている(R1=R3)。
そのため、軸心Oを中心とする円周方向におけるスプリングシートラバー1とストラットマウント2との軸心Oを中心とする円の円周方向の位置(請求項1に記載の「位相」に対応する。)(以下、「配設角度」と称す。)を合わせれば、スプリングシートラバー1のボルトヘッド用凹部16にストラットマウント2の取り付けボルト25が収容される。
加えて、複数(本実施の形態では3個)のボルトヘッド用凹部16及び複数(本実施の形態では3個)の取り付けボルト25は、軸心Oを中心とする取り付け金具20の円周方向に所定の角度(中心角度にて120度)の間隔で配設されている。
即ち、スプリングシートラバー1とストラットマウント2とを重ね合わせる場合に、1つのボルトヘッド用凹部16の配設角度と1つの取り付けボルト25の配設角度が一致するように調節して配設することで、複数(本実施の形態では3個)のボルトヘッド用凹部16と複数(本実施の形態では3個)の取り付けボルト25とを互いに重なり合わせることができる。
また、ボルトヘッド25aの高さ寸法H5とボルトヘッド用凹部16の壁面16bの高さ寸法H2は、ほぼ同一とされているので、かかるボルトヘッド用凹部16にボルトヘッド25aが受け入れられコイルスプリング3により押圧されることで、スプリングシートラバー1のコイル当接面11aをストラットマウント2のフランジ部21bへ均一に当接させることができる。
なお、スプリングシートラバー1は、ゴム状弾性体にて構成されているので、ボルトヘッド25aにボルトヘッド用凹部16の底面16aが当設した場合であっても、底面16aが金具当接面11b側へ変形されることで、スプリングシートラバー1のコイル当接面11aをストラットマウント2のフランジ部21bへ均一に当接させることができる。
加えて、この場合には、ボルトヘッド用凹部16の底面16aもコイルスプリング3とボルトヘッド25aとで押圧されるので、スプリングシートラバー1を全体的に変形させることができ、フランジ部11に局所的に大きな力が生じるのを防いで、スプリングシートラバー1の破損を防止することができる。
図6に示すように、コイルスプリング3は、スプリングシートラバー1の上に配設される場合、コイルスプリング3の円周方向には、配設角度が規制されておらず、コイルスプリング3の端面3bがスプリングシートラバー1の円周上の任意の位置に配設される。
またコイルスプリング3は、金属線を螺旋上に巻いて作られたコイルばねとして構成されているので、コイルスプリング3の端面3bでスプリングシートラバー1に接する部位が途切れてコイルスプリング3による押圧が不連続となり段差が生じる。
そのため、コイルスプリング3をスプリングシートラバー1上に配設してスプリングシートラバー1を押圧するとコイルスプリング3の端面3bを境にスプリングシートラバー1に作用する力が大きく変化する。
また、コイルスプリング3の配設角度は規制されておらず、端面3bがスプリングシートラバー1の円周上の任意の位置に配設されるので、図6に示すように、端面3bの配設角度が底面視(図6紙面垂直方向視)においてボルトヘッド用凹部16とボルトヘッド25aとの間となる場合がある。
この場合、図7(b)に示すように、スプリングシートラバー1にコイルスプリング3が当接され、図7(a)に示すように、コイルスプリング3に荷重が掛けられることで、コイルスプリング3がスプリングシートラバー1に埋没される。
そのため、端面3bを境界としてコイルスプリング3側(図7(a)右側)には、圧縮力(図7(a)下方向に作用する力)が働き、取り付けボルト25側(図7(b)左側)には、圧縮力に対抗する復元力(図7(a)上方向に作用する力)が働く。即ち、端面3bを境としてスプリングシートラバー1にせん断力が生じる。
図7(a)に示すように、フランジ部11の部位であってボルトヘッド用凹部16の背面の部位であってコイル当接面11a側に位置する部位である薄肉部11cは、ボルトヘッド用凹部16の深さ(図7(a)上下方向寸法値)分、厚さ(図7(a)上下方向寸法値)が薄くなっており、スプリングシートラバー1のフランジ部11であってコイルスプリング3が当接される部位の中でも、最も厚さが薄くなっている。
そのため、薄肉部11cは、フランジ部11であってコイルスプリング3が当接される部位の中でせん断力に対する強度が最も低下している部位とされる。その結果、コイルスプリング3の端面3bを境に生じるせん断力によって薄肉部11cに亀裂が発生して破断される場合がある。
例えば、薄肉部11cの破断を防止するためにフランジ部11全体を厚くした場合には、サスペンション機構100の長さ方向の寸法値が嵩み自動車へのレイアウトの自由度が悪くなる。加えて、全体の厚さを増加させるので、スプリングシートラバー1の材料代が嵩むという不具合が生じる。
ここで、本実施の形態では、図6および図7(c)に示すように、フランジ部11外周には、複数(本実施の形態では3個)の張り出し部14が形成されると共に、フランジ部11の上面(図5紙面垂直方向紙面側の面)である金具当接面11b及び張り出し部14の上面(図5紙面垂直方向紙面側の面)である上面14c上にボルトヘッド用凹部16が凹設されている。
即ち、スプリングシートラバー1には、ボルトヘッド用凹部16の一部が凹設された張り出し部14がフランジ部11の径方向外側(図6上側)に設けられており、スプリングシートラバー1の厚さ(図7(c)上下方向寸法値)を増加させることなく、薄肉部11cの強度を向上させることができる。その結果、コイルスプリング3の端面3bを境に生じるせん断力によって薄肉部11cに亀裂が発生して破断されることを防止することができる。
また、張り出し部14は、上面視(図2紙面垂直方向視)略二等辺三角形形状でその二等辺三角形の底辺が対向する頂点側に凹んだ曲線形状に構成されており、ボルトヘッド用凹部16から仮想円Rの円周方向に離間するに従って張り出し部14の仮想円Rの径方向寸法値(請求項1に記載の「張り出し量」に対応する。)が小さくなるように構成されている。
そのため、ボルトヘッド用凹部16の壁面16bとコイルスプリング3の端面3bと配設角度が一致または近接した場合に、コイルスプリング3の端面3bで押圧されたフランジ部11のひずみの分布を、そのコイルスプリング3に沿って一様とすることができる。
即ち、コイルスプリング3の端部3aからフランジ部11が受ける応力(以下、「受圧応力」と称す。)は、コイルスプリング3の端面3bで最大となり、端面3bからコイルスプリング3に沿って離れるに従って漸減するため、張り出し部14の張り出し量が仮想円Rの円周方向(コイルスプリングに沿う方向)に一定であると、コイルスプリング3の端部3aに押圧されたフランジ部11のひずみの分布が一様でなくなる。そのため、フランジ部11の全体を変形させることができず、コイルスプリング3の端面3bに押圧された部位の逃げ場がなくなる。
これに対し、本実施の形態では、張り出し部14の張り出し量が小さくなるように構成されているので、コイルスプリング3の端部3aで押圧されたフランジ部11のひずみの分布を、そのコイルスプリング3に沿って一様とすることができる。そのため、フランジ部11の全体を変形させることができる。
これにより、ボルトヘッド用凹部16の壁面16bとコイルスプリング3の端面3bと配設角度が一致または近接した場合でも、そのコイルスプリング3の端面3bに押圧された部位の逃げ場を確保して、受圧応力が集中することを抑制することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
また、図7(a)に示すように、スプリングシートラバー1がコイルスプリング3によって押圧されることで変形されると、コイルスプリング3とフランジ部21bとの間の部位は変形される。それに伴いボルトヘッド用凹部16もフランジ部21b側に変形されてつぶされる。
ここで、ボルトヘッド25aの上面(図7(a)上面)は、平坦面として構成されると共に、その上面は、取り付けボルト25aの外周面と曲面で連接されている。加えて、図7(b)に示すように、スプリングシートラバー1が変形されていない状態において、平坦面として構成される底面16aと隙間なく接触している。
そのため、スプリングシートラバー1がコイルスプリング3によって押圧されて変形されるとボルトヘッド用凹部16のボルトヘッド用凹部16aは、取り付けボルト25aの形状にならって変形される。その場合でも、薄肉部11cに局所的に大きな力が生じることを防止して、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
また、底面16aと壁面16bとの連接面である曲面16dおよび底面16aと連接面16cとの連接面である曲面16eは、湾曲した面として構成されているので、取り付けボルト25aの上面および外周面に曲面16d及び曲面16eが当接された場合であっても、曲面16d及び曲面16eに生じる圧力が局所的に大きくなることを防止して、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
次に、図8を参照してスプリングシートラバー1の変形状態について説明する。図8は、スプリングシートラバー1の変形状態の違いを示すサスペンション機構100の部分断面図である。図8(a)は、図6のVIIIa−VIIIa線におけるサスペンション機構100のスプリングシートラバー1の変形状態を示した部分断面図である。また、図8(b)は、内側凹部12と張り出し部14とを備えていないスプリングシートラバー201の変形状態を示したサスペンション機構200の部分断面図であり、図8(c)は、内側凹部12を備えていないスプリングシートラバー301の変形状態を示したサスペンション機構300の部分断面図である。なお、図8(b)及び図8(c)は、図8(a)の部分断面図に対応する。
図8(b)に示すように、内側凹部12と張り出し部14とを備えていないスプリングシートラバー201は、取り付け金具20とコイルスプリング3とに挟持されコイルスプリング3がスプリングシートラバー1に埋没することで変形されている。
また、スプリングシートラバー201を構成するゴム状弾性体は非圧縮性の材料であるため、コイルスプリング3によって押し込められた分、外形の一部が飛び出た形状に変形される。
スプリングシートラバー201の場合は、コイルスプリング3によって押し込められたことで、嵌合筒部10が嵌合筒部10の径方向外側(図8左右方向外側)に反り返っている。そのため、嵌合筒部10の部位であってリング13の内周面と内嵌部21aの外周面との間の部位に局所的に大きな力が生じることとなる。
また、図8(b)に示すように、フランジ部11が嵌合筒部10の径方向外側の下方(図8左右方向外側の下方)に飛び出しているので、コイルスプリング3より外側(図8左右方向外側)のフランジ部11の部位に局所的に大きな力が生じることとなる。
また、コイルスプリング3の端部3aが金具当接面11bから軸心Oに沿う方向(図8上下方向)に距離T5まで近接している。距離T5は、後述する距離T6及び距離T7より小さな値であり、フランジ部21bとコイルスプリング3との間のスプリングシートラバー1がスプリングシートラバー201及びスプリングシートラバー301より薄くなっていることを示している。よって、コイルスプリング3を介して車体側から伝達される振動の低減の割合が低下する。
図8(c)に示すように、内側凹部12を備えていないスプリングシートラバー301は、スプリングシートラバー201と同様に取り付け金具20とコイルスプリング3とに挟持され、そのコイルスプリング3の端部3aがスプリングシートラバー301に埋没することで変形されている。
また、スプリングシートラバー201と同様に、スプリングシートラバー301を構成するゴム状弾性体は非圧縮性の材料であるため、コイルスプリング3の端部3aによって押し込められた分、外形の一部が飛び出た形状に変形される。
スプリングシートラバー301の場合も、スプリングシートラバー201と同様に嵌合筒部10が嵌合筒部10の径方向外側(図8左右方向外側)に反り返っているので、嵌合筒部10の部位であって、リング13の内周面と内嵌部21aの外周面との間の部位に局所的に大きな力が生じることとなる。
また、スプリングシートラバー201と同様にフランジ部11が嵌合筒部10の径方向外側の下方(図8左右方向外側の下方)に飛び出している。しかし、張り出し部14が配設されている分、スプリングシートラバー201に比べてフランジ部11のコイルスプリング3より外側(図8左右方向外側)部位の断面積が増加している。
そのため、取り付け金具20とコイルスプリング3とにスプリングシートラバー301が挟持されることにより生じる力が分散される。その結果、スプリングシートラバー201に比べて、端面3bを境に生じるせん断力が低減されるので、スプリングシートラバー301の破損を防止することができる。
また、図8(b)及び図8(c)に示すように、取り付け金具20とコイルスプリング3とにスプリングシートラバー301が挟持されることにより生じる力(コイルスプリング3がスプリングシートラバー301を押圧する力)が分散されるので、コイルスプリング3の端部3aのスプリングシートラバー301への埋没量がスプリングシートラバー201に比べて減少する。よって、コイルスプリング3の端面3bと金具当接面11bとの軸心Oに沿う方向(図8上下方向)の距離が距離T5より大きい距離T6となる(T6>T5)。その分、コイルスプリング3を介して車体側から伝達される振動の低減の割合が向上される。
即ち、張り出し部14が配設される分、スプリングシートラバー301は、スプリングシートラバー201に比べてフランジ部21bとコイルスプリング3とに挟持されることにより生じる力(コイルスプリング3がスプリングシートラバー301を押圧する力)が分散され、距離T6が距離T5より大きくなり(T6>T5)、フランジ部21bとコイルスプリング3との間のスプリングシートラバー301がスプリングシートラバー201より厚くなっており、その分、コイルスプリング3を介して車体側から伝達される振動の低減の割合が向上される。
ここで、本実施の形態では、図8(a)に示すように、内側凹部12と張り出し部14とを備えているので、スプリングシートラバー301の効果に加えて、嵌合筒部10の径方向外側(図8左右方向外側)への反り返りと、フランジ部11の嵌合筒部10の径方向外側の下方(図8左右方向外側の下方)への飛び出しとを防止することができる。
即ち、スプリングシートラバー1は、内側凹部12を備えているので、コイルスプリング3の端部3aがスプリングシートラバー1に埋設されることで生じる外形の飛び出し部分を内側凹部12と基体部21との間に形成される空間Sに収容することができる。
よって、外形の飛び出し部分である嵌合筒部10の径方向外側(図8左右方向外側)への反り返りと、フランジ部11の嵌合筒部10の径方向外側の下方(図8左右方向外側の下方)への飛び出しとを防止することができるので、フランジ部11と嵌合筒部10とに局所的に大きな力が生じることを防いで、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
また、スプリングシートラバー301と同様に、張り出し部14を備えているので、スプリングシートラバー201に比べてフランジ部11のコイルスプリング3より外側(図8左右方向外側)部位の断面積が増加している。
そのため、取り付け金具20とコイルスプリング3とにスプリングシートラバー1が挟持されることにより生じる力(コイルスプリング3がスプリングシートラバー301を押圧する力)が分散される。その結果、スプリングシートラバー301に比べて、端面3bを境に生じるせん断力が低減されるので、スプリングシートラバー1の破損を防止することができる。
また、図8(a)及び図8(b)に示すように、取り付け金具20とコイルスプリング3とにスプリングシートラバー1が挟持されることにより生じる力(コイルスプリング3がスプリングシートラバー301を押圧する力)が分散されるので、コイルスプリング3のスプリングシートラバー1への埋没量がスプリングシートラバー201に比べて減少する。よって、コイルスプリング3の端面3bと金具当接面11bとの軸心Oに沿う方向(図8上下方向)の距離が距離T6より大きい距離T7となる(T7>T5)。その分、コイルスプリング3を介して車体側から伝達される振動の低減の割合が向上される。
即ち、張り出し部14が配設される分、スプリングシートラバー1は、スプリングシートラバー201に比べてフランジ部21bとコイルスプリング3とに挟持されることにより生じる力(コイルスプリング3がスプリングシートラバー301を押圧する力)が分散され、距離T7が距離T5より大きくなり(T7>T5)、フランジ部21bとコイルスプリング3との間のスプリングシートラバー1がスプリングシートラバー201より厚くなっており、その分、コイルスプリング3を介して車体側から伝達される振動の低減の割合が向上される。
また、ストラットマウント2の内嵌部21aがフランジ部11の内周面11dに内嵌される構成であるので、ストラットマウント2のフランジ部11とコイルスプリング3の端部3aとの間でフランジ部11が挟圧される場合には、そのフランジ部11の内周面11dがストラットマウント2の内嵌部21aとの摩擦力により係止されることで、フランジ部11の過大な変形(ひずみの発生)を抑制して、フランジ部11の耐久性の向上を図ることができる。
この場合、本実施の形態によれば、フランジ部11の内周面11dに内側凹部12が凹設され、内側凹部12の配設角度が張り出し部14の配設角度に一致する構成であるので、前述したように、フランジ部11の内周面11dがストラットマウント2の内嵌部21aに係止される構成であっても、ボルトヘッド用凹部16の壁面16bの配設角度とコイルスプリング3の端部3aの配設角度とが一致した場合には、そのコイルスプリング3の端部3aにより押圧された部位の逃げ場を内側凹部12によって確保して、フランジ部11に局所的に大きな力が生じることを防止することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
ここで、本実施の形態によれば、内側凹部12の幅寸法W2をボルトヘッド用凹部16の幅寸法W1よりも大きくする構成であるので、ボルトヘッド用凹部16の壁面16bの配設角度とコイルスプリング3の端部3aの配設角度とが一致した場合に、そのコイルスプリング3の端部3aにより押圧された部位を内側凹部12へ逃がし易くして、フランジ部11に局所的に大きな力が生じることを防止することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
一方、本実施の形態によれば、内側凹部12の幅寸法W2を張り出し部14の幅寸法W3よりも小さくする構成であるので、ボルトヘッド用凹部16の壁面16bの配設角度とコイルスプリング3の端部3aの配設角度とが一致した場合でも、コイルスプリング3の端部3aで押圧されたフランジ部11のひずみの分布を、そのコイルスプリング3に沿って一様とすることができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
即ち、内側凹部12の幅寸法W2が張り出し部14の幅寸法W3よりも大きい場合には、コイルスプリング3の端部3aに押圧された部位だけでなく、その近傍の部位全体が内側凹部12側へ逃げてしまうため、前述したように張り出し部14の張り出し量を変化させても、ひずみの分布を一様とすることができなくなる。
これに対し、内側凹部12の幅寸法W2を張り出し部14の幅寸法W3よりも小さくすることで、コイルスプリング3の端部3aに押圧されたフランジ部11の部位を内側凹部12へ逃がすと共に、その近傍の部位はストラットマウント2の内嵌部21aで係止して、フランジ部11に生じるひずみの分布を一様とすることができる。
即ち、受圧応力が集中することを抑制することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
また、本実施の形態では、ストラットマウント2の内嵌部21aが内嵌される嵌合筒部10を備え、その嵌合筒部10をフランジ部11のコイル当接面11a側に連設することで、フランジ部11のコイル当接面11a側における内側凹部12の開口を閉封する構成であるので、ストラットマウント2のフランジ部11とコイルスプリング3の端部3aとの間でフランジ部11が挟圧された場合に、フランジ部11が傾いた状態で変形することを抑制して、フランジ部11を厚み方向(図1上下方向)へ均等に変形させ易くすることができる。
その結果、フランジ部11に生じるひずみの分布を一様とすることができ、受圧応力が集中することを抑制することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
即ち、嵌合筒部10を備えず、内側凹部12が金具当接面11bおよびコイル当接面11aの両面側で開口される構成では、ストラットマウント2のフランジ部11とコイルスプリング3の端部3aとの間でフランジ部11が挟圧された場合に、そのフランジ部11の内側凹部12近傍におけるコイル当接面11a側がストラットマウント2の内嵌部21a側へ変位し易いため、フランジ部11が傾いた状態で変形し、フランジ部11の一部に受圧応力が集中して、亀裂の発生に伴うフランジ部11の破断を招く。
これに対し、本実施の形態によれば、フランジ部11のコイル当接面11a側では内側凹部12を開口させることで、前述したようにコイルスプリング3の端面3bで押圧された部位を内側凹部12へ逃げ易くしつつ、フランジ部11のコイル当接面11a側では内側凹部12の開口を嵌合筒部10によって閉封することで、ストラットマウント2のフランジ部21bとコイルスプリング3の端部3aとの間でフランジ部11が挟圧された場合には、そのフランジ部11の内側凹部12近傍におけるコイル当接面11a側がストラットマウント2の内嵌部21a側へ変位することを、嵌合筒部10によって受け止めて抑制することができる。
そのため、フランジ部11が傾いた状態で変形することを抑制して、フランジ部11を厚み方向へ均等に変形させ易くすることができるので、受圧応力が集中することを抑制することができる。その結果、フランジ部11の亀裂の発生を防止して破断を抑制することができる。
次に、図9及び図10を参照して、スプリングシートラバー1のメカニカルクリンチ用凹部15と取り付け金具20のメカニカルクリンチ26との位置関係について説明する。
図9は、メカニカルクリンチ用凹部15が配設されるサスペンション機構100の部位をコイルスプリング3側からストラットマウント2側に向けて見た部分底面図である。なお、図9では、図面の理解を容易とするために、コイルスプリング3の端部3aにハッチングを施している。
図10(a)は、図9のXa‐Xa線におけるサスペンション機構100の断面図であり、図10(b)は、図9のXb‐Xb線におけるサスペンション機構100の断面図である。
図9に示すように、スプリングシートラバー1とストラットマウント2とは、お互いの軸心Oを一致させて重ね合わせられており、メカニカルクリンチ用凹部15の連接面15cの軸心S2から軸心Oまでの距離である半径R2と、メカニカルクリンチ26の軸心S4から軸心Oまでの距離である半径R4とが同一距離とされている(R2=R4)。
そのため、スプリングシートラバー1とストラットマウント2との配設角度を合わせれば、スプリングシートラバー1のメカニカルクリンチ用凹部15にストラットマウント2のメカニカルクリンチ26が収容される。
加えて、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ用凹部15及び複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ26は、軸心Oを中心とする取り付け金具20の円周方向に所定の角度(中心角度にて120度)の間隔で配設されている。
即ち、スプリングシートラバー1とストラットマウント2とを重ね合わせる場合に、軸心Oを中心とする円周方向の取り付け角度を1つのメカニカルクリンチ用凹部15と1つのメカニカルクリンチ26が重なり合うように調節することで、複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ用凹部15と複数(本実施の形態では3個)のメカニカルクリンチ26とを互いに重なり合わせることができる。
図10(a)に示すように、メカニカルクリンチ突起部26aの上方(図10(a)上方)には、コイルスプリング3が配置されており、コイルスプリング3の端部3aとストラットマウント2のフランジ部21bとでスプリングシートラバー1が狭圧されている。そのため、メカニカルクリンチ用凹部15が変形され、メカニカルクリンチ用凹部15の高さ寸法H3(図3参照)が高さ寸法H31とされる(H3>H31)。
また、メカニカルクリンチ用凹部15の高さ(図10(b)上下方向寸法)は高さ寸法H31に設定され、メカニカルクリンチ突起部26aの高さ(図10(b)下方向寸法)は高さ寸法H4に設定されている。また、メカニカルクリンチ用凹部15の変形前の高さ寸法である高さ寸法H3は、高さ寸法H4の4倍に設定されている(H3=4×H4)。
よって、変形されたメカニカルクリンチ用凹部15の高さ寸法H31は、メカニカルクリンチ突起部26aの高さ寸法H4より高い寸法値(図10(b)上下方向寸法)に保たれる(H31>H4)。
そのため、メカニカルクリンチ突起部26aがメカニカルクリンチ用凹部15の底面15aに当設することを防いで、フランジ部11に局所的に大きな力が生じることを防止することができる。その結果、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
また、図10(b)に示すように、底面15aと壁面15bとの連接面である曲面15dは、湾曲した面として構成されているので、メカニカルクリンチ用凹部15が変形された場合でも、曲面15d上に局所的に大きな力が生じることを防ぐことができる。その結果、曲面15dの耐久性の向上を図ることができ、スプリングシートラバー1の耐久性の向上を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。
本実施の形態では、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15の形状を一方向が開いている開口形状に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ボルトヘッド25a及びメカニカルクリンチ突起部26aに対応した大きさの円形形状に構成しても良い。
この場合、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15の周囲に肉盛りされた部位が増えるので、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15に働く力が分散される。
よって、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15に生じるせん断力の最大値を小さくすることができる。その結果、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15に亀裂が発生して破断することを防いで、スプリングシートラバー1の耐久性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15の形状を一方向が開いている開口形状に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ボルトヘッド25a及びメカニカルクリンチ突起部26aに対応した大きさの三角形状、四角形状および五角形形状に構成しても良い。
即ち、ボルトヘッド用凹部16及びメカニカルクリンチ用凹部15にボルトヘッド25a及びメカニカルクリンチ突起部26aが収容されれば良い。