JP2009204609A - 石炭の膨張性試験方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定のための石炭装入容器を大型化、特に径方向に拡大し、これにより室炉式コークス炉内の石炭の膨張挙動を再現することで、石炭の膨張挙動を精度よく測定することができる、新しい膨張性測定試験方法を提供すること。
【解決手段】測定石炭装入容器9に石炭を装入し、測定石炭装入容器9を装入した外容器11を加熱炉に収容し、前記石炭を加熱したときの該石炭の膨張性を測定する石炭の膨張性試験であって、マイクロ波を用いて前記石炭を加熱することを特徴とする、石炭の膨張性試験方法を用いる。測定石炭装入容器9の内径が12mm超えであること、測定石炭装入容器9を、膨張性を測定する石炭と同じ石炭が充填された断熱用容器10内に装入し、断熱容器10を外容器11に装入すること、無煙炭を充填した外容器11内に測定石炭装入容器9を装入すること、測定石炭上部に上下面に貫通経路を有する材料を配置することが好ましい。
【選択図】図2

Description

この発明はコークス製造用石炭の品質評価法の一つとしての、石炭乾留時の膨張性を測定する石炭の膨張性試験方法に関するものである。
石炭は乾留することによりコークスとなる。石炭は300℃を過ぎると熱分解してガスや液状物質を発生し、軟化溶融し、膨張する。膨張と同時に粒子同士が接着、さらに脱ガスして収縮し、コークスとなる。
室炉式コークス炉内でのコークス化メカニズムについて以下に記述する。室炉式コークス炉内では、石炭は炉壁側から加熱される。これは石炭の熱伝導率が低いためであり、例えば、炉壁側はコークス化していても、炉内中心部は未加熱の石炭という場合もある。従って、乾留途中のコークス炉内における石炭は、炉壁側からコークス層、軟化溶融層、石炭層と状態が異なり、厚み約10mmと言われている軟化溶融層が、炉壁側から中心側へ移動し、乾留が進行して行く。軟化溶融時に発生したガス、軟化溶融物は、軟化溶融層を膨張させる因子として働き、軟化溶融層は隣接するコークス層、石炭層に拘束されつつ膨張する。軟化溶融層から発生したガス、軟化溶融物は、より通気性の高い石炭層、コークス層に浸透し、その一部は系外へ排出される。
コークス化の過程の中で、軟化溶融時の石炭の挙動はコークスの特性に非常に重要な影響を及ぼす。中でも石炭の膨張性はコークス層を押し付けて圧縮させる働きがあり、高炉内での過酷な使用に耐えうる堅牢なコークスを製造する際の重要なパラメータである。また、膨張性は乾留後コークスを押出機により排出する際の押出負荷にも影響を及ぼしており、押出性判定のためにも重要な因子である。
従来、膨張率を測定する方法として広く普及しているのはJISM8801に規定されているジラトメーター法である。ジラトメーター法は、金属製の細長い円筒管内に加圧成型した石炭を装入し、該石炭に垂直に金属製ピストンを設置し、該金属製円筒管を一定の加熱速度で加熱し、加熱中のピストンの変位で膨張率を検出する方法である。ジラトメーター法では石炭は金属製容器内に装入されており、該石炭の上部にはピストンが配置されている。ピストンの重量は、軟化溶融層を拘束するために十分であるが、ピストンの直径は金属製容器の内径とほぼ等しい。このため加熱時に石炭から発生したガスと液状物質は、ピストンと金属製容器の隙間しか排出経路がなく、石炭から発生したガスと軟化溶融物の大部分がピストンを押し上げる力として働くことになる。このため、ジラトメーター法での膨張挙動はコークス炉内とは大きく異なっている。
上記の問題を解決する方法として、ガスの透過挙動を改善し、石炭層とピストンの間、もしくは石炭層とピストンの間と石炭層の下部に透過性材料を配置し、ガスと液状物質の透過経路を増やすことで、よりコークス炉内の膨張挙動に近づけた石炭の膨張性試験方法が知られている。そして、金属製容器の内径は8mm程度であれば、容器の中心部と周辺部の温度差は小さくほぼ均一と見なせるとした膨張性試験が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
また、ジラトメーター法の改良法で、測定時間を短縮し、かつ測定精度と再現性を保つことを目的とした迅速な方法も存在する(例えば、特許文献2参照)。この方法では石炭の膨張率が加熱速度に依存することを利用している。特徴として、急速加熱に伴い石炭装入容器内の温度分布が不均一になる恐れがあるため、石炭装入用容器の内径を5〜12mmと細くしていること、また、再現性を保つため測定石炭の粉砕粒度を250〜840μmとしていることが上げられる。
一方で、石炭の加熱にマイクロ波を用いることができることが知られている。石炭のマイクロ波加熱については従来様々な検討が行われている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。特許文献4ではマイクロ波加熱の加熱対象物の温度不均一性を改善する提案をしている。
特許2855728号公報 特公平4−69749号公報 特公昭52−44322号公報 特開平9−176656号公報
ジラトメーター法で使用する金属製容器の内径は8mm、外径は20mmと細い。このように細いものを用いるのは、石炭の熱伝導率が低く、径を太くすると石炭層の温度分布が不均一になるためである。また、ジラトメーター法では石炭を粒径252μm以下に粉砕し、加圧成型して測定しており、実際のコークス炉で使用されている石炭の粒度(3mm以下、約80mass%)と大きく異なり、膨張挙動も異なる。もちろん、ジラトメーター法で粒度3mm以下、80mass%程度に粉砕した石炭の膨張率を測定することは可能である。しかし、容器の径が8mmであることから、粒径252μmの場合と異なり、膨張時に金属製容器の壁に接触する粒子の割合が高くなるため、石炭が膨張により粒子間空隙を埋める挙動をコークス炉内と同じく再現できるとは言いがたい。また一般にジラトメーター装置のような小容器内で熱処理したコークスは室炉式コークスに比べ気孔率が大きく、膨張率も大きいといわれている(例えば、鈴木喜夫、板垣省三、「石炭の膨張性に関する一考察」鉄と鋼、vol.72、No.4、1986年、pp.S29.参照。)。従って室炉コークス炉内での膨張挙動を精度よく測定するためには、容器の大型化と均一加熱を同時達成できる技術が必要であるといえる。
また、前述したようにジラトメーター法では石炭から発生したガスと液状物質の大部分がピストンを押し上げる力として働くことになる。この点でもジラトメーター法は室炉式コークス炉内の膨張挙動を再現しているとはいえない。このガスの通気性を改善するための透過性材料を使用する特許文献1に記載の方法についても、均一加熱の問題から小容器内で加熱することしかできず、ここでも容器の大型化と均一加熱技術が必要であるといえる。
さらに、特許文献2に記載の迅速測定法についてであるが、この方法では、容器の内径が5〜12mm、測定石炭の粉砕粒度が250〜840μmと規定されている。前述したように、実操業で使用されている粒度(3mm以下、約80mass%)で測定する場合、内径の大きさが不十分なため膨張挙動が異なってしまう。また、特許文献2によれば、測定石炭の粉砕粒度を840μm以上とすると再現性が大きく低下すると記載されており、実操業で使用されている粒度(3mm以下、約80mass%)で測定することは実用的といえない。
従って本発明の目的は、測定のための石炭装入容器を大型化、特に径方向に拡大し、これにより室炉式コークス炉内の石炭の膨張挙動を再現することで、石炭の膨張挙動を精度よく測定することができる、新しい膨張性測定試験方法を提供することにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)測定石炭装入容器に石炭を装入し、該測定石炭装入容器を装入した外容器を加熱炉に収容し、前記石炭を加熱したときの該石炭の膨張性を測定する石炭の膨張性試験であって、マイクロ波を用いて前記石炭を加熱することを特徴とする、石炭の膨張性試験方法。
(2)測定石炭装入容器の内径が12mm超えであることを特徴とする、(1)に記載の石炭の膨張性試験方法。
(3)測定石炭装入容器を、膨張性を測定する石炭と同じ石炭が充填された断熱用容器内に装入し、該断熱用容器を外容器に装入することを特徴とする、(1)または(2)に記載の石炭の膨張性試験方法。
(4)無煙炭を充填した外容器内に測定石炭装入容器を装入することを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の石炭の膨張性試験方法。
(5)測定石炭上部に上下面に貫通経路を有する材料を配置し、該材料を介して荷重を付加して膨張性を測定することを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の石炭の膨張性測定方法。
本発明によれば、石炭乾留時の膨張性測定試験について、加熱をマイクロ波により行うことで、測定のための石炭装入容器の容量を増加しても均一に加熱することができ、また、透過性を持つ材料または充填層を介して荷重を付加した条件で測定できるので、実際の室炉式コークス炉内での石炭の膨張挙動を再現して精度よく測定することができる。さらに、石炭装入容器を大型化することができるため、装入石炭量の増加や粗粒の石炭(粒径840μm以上)の使用など、測定石炭調整条件の自由度を高めることができる。
本発明方法を用いた石炭の膨張性試験の測定結果は、高炉内での過酷な使用に耐えうる堅牢なコークスを製造する際の指標として、また乾留後コークスを押出機により排出する際の押出性判定の指標として、従来法以上に役立と考えられ、コークスの製造を効率的に行うことができる。
本発明で使用するマイクロ波加熱装置の一例である。 本発明で使用する膨張性測定装置の一実施形態の側面図である。 本発明で使用する膨張性測定装置の一実施形態の熱電対が装入されている高さの平面図である。 実施例1で使用した膨張性測定装置の側面図である。 実施例1、2で使用した膨張性測定装置の熱電対が装入されている高さの平面図である。 実施例1で測定した石炭の膨張率の測定結果である。 実施例2で使用した膨張性測定装置の側面図である。 実施例2で測定した0.4mmガラスビーズを用いたときのF炭膨張率測定結果である。 実施例2で測定した2.0mmガラスビーズを用いたときのF炭膨張率測定結果である。 実施例2で測定した0.4mmガラスビーズを用いたときのG炭膨張率測定結果である。 実施例2で測定した2.0mmガラスビーズを用いたときのG炭膨張率測定結果である。
通常の石炭の膨張性試験は、電気炉等を用いて装入容器内の石炭を加熱して行うものであるが、本発明では石炭の加熱にマイクロ波を使用する。マイクロ波を用いることで、測定のための装入容器を大きくしても石炭を均一に加熱することができる。装入容器を大きくできれば、実際にコークス炉に装入する石炭と同じ粒度の石炭を用いて膨張性を測定することが可能となる。マイクロ波の加熱方式は内部加熱であり、対象物質自体を発熱させることができるのだが、雰囲気温度は室温に近いため、対象物質最外部の断熱を行わないと加熱にムラが生じ、膨張性を精度良く測定できない恐れがある。よって測定対象の石炭の断熱対策を施した測定装置を考案する必要がある。
本発明では、測定石炭装入容器に石炭を装入し、測定石炭装入容器をさらに外容器に装入して加熱炉に収容し、915MHzまたは2450MHzに調整したマイクロ波を用いて石炭を加熱したときの石炭の膨張性を測定する。測定石炭装入容器を、膨張性を測定する石炭と同じ石炭が充填された断熱用容器内に装入し、該断熱容器を外容器に装入することが好ましい。また、外容器内に無煙炭等の石炭を充填して、測定石炭装入容器、または測定石炭装入容器の入った断熱用容器を装入することが好ましい。本発明の一実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
本発明で使用するのに好適なマイクロ波加熱装置の一例を図1に示す。図1の装置では、マイクロ波はマイクロ波発生器1から発信され、導波管3を通り、アプリケータ5内に照射される構造である。マイクロ波加熱装置21に求められる構造は、下記に説明する膨張率測定装置を設置するのに十分な広さのアプリケータ5を備え、マイクロ波がアプリケータ5内をムラ無く照射できることである。また、加熱速度を制御するため、マイクロ波発生器1は出力を自由に変更できる必要がある。
石炭の膨張率の測定は、膨張率測定装置をアプリケータ5内に設置して行う。膨張率測定装置の一実施形態を図2(側面図)、図3(制御用熱電対の高さの平面図)に示す。膨張率測定装置22は、複数の容器が入れ子構造になっており、外側から順に、外容器11、断熱用石炭8、断熱用容器10、断熱用測定石炭7、測定石炭装入容器9となっている。測定石炭6以外にも石炭を装入しているが、これは断熱、保温のためであり、測定石炭6と同じ程度マイクロ波を吸収させ同じ温度を保たせるためである。さらに、断熱効果を均一にするために、それぞれの容器は外側の容器内の中心に位置するように配置する。
測定石炭6は、所定の粒度、水分に調整した後、所定の嵩密度で測定石炭装入容器9に装入する。測定石炭装入容器9の材質は、マイクロ波吸収性が石炭よりも低い材質、すなわち誘電率が石炭よりも低い材質を用いればよい。また、石炭の膨張は400〜500℃で起こることから、該温度域での耐熱性を持つ必要もある。これらの条件を満たすため、測定石炭装入容器9には石英を使用することが望ましい。
この測定石炭装入容器9は、断熱用容器10の中心に、周囲を断熱用測定石炭7で充填しつつ入れられる。これはさらに温度分布を均一化するための工夫である。断熱用石炭8に測定石炭6と異なる石炭を用いる場合、マイクロ波吸収特性が異なるため、昇温速度に差が生じる可能性が考えられる。これを防ぐため、断熱用石炭8の中にさらに断熱用容器10と断熱用測定石炭7とを入れている。また、断熱用測定石炭7中には制御用の熱電対17が設置される。膨張率を測定する際、加熱速度は非常に重要な条件であるため、測定石炭6の加熱をコントロールする必要がある。熱電対17を測定石炭装入容器9中に入れると膨張率測定結果に影響を与える恐れがあり、また、熱電対のような金属で先端がとがっているものには電界が集中しやすく、先端周辺部の温度が急激に上昇する可能性があるため、制御用熱電対17を断熱用測定石炭7中に設置している。断熱用測定石炭7は測定石炭6とマイクロ波吸収を等しくするため、測定石炭6と同じ粒度、嵩密度、水分に調整し装入する。
断熱用容器10の素材は測定石炭装入容器9と同じく低誘電率、耐熱性を持つことが望ましいため、石英でもよい。しかし、マイクロ波を石炭と同じ程度吸収し、それ自体が発熱することで断熱効果を高めることができるような素材の方がさらに好ましい。例えば、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素などが考えられる。加熱物が石炭であることから、石炭と化学組成の近い材料として黒鉛が特に望ましい。
断熱用容器10の周囲には断熱用石炭8を装入する。マイクロ波吸収性の石炭銘柄依存性を考慮すると、断熱用石炭8は測定石炭6と同じ銘柄が望ましいが、測定石炭6の膨張率が大きい場合、該測定石炭6の膨張により内部の断熱用容器10を動かし測定に影響を及ぼす可能性が考えられる。また、断熱用石炭8量は断熱用測定石炭7、測定石炭6に比較して量が多くなるため、測定石炭6の炭化度が低い場合、脱ガス量、脱液状物質量が多くなり実験処理上手間がかかる。よって、断熱用石炭8としては、軟化溶融せず、脱ガス量、脱液状物質量の少ない石炭、例えば無煙炭が好ましい。ただし、断熱用石炭8が無くても測定石炭の断熱性、温度分布の均一性が保てる場合には、断熱用石炭8は装入しなくて良い。
外容器11の材質は、内部の石炭、容器類の保温と断熱効果、耐熱性、マイクロ波吸収性の低さが重要である。よって外容器11には石英の使用が望ましい。外容器11には、石炭乾留のため窒素を入れる必要があり、窒素導入口14を備える必要がある。また、発生ガスの排気のため、ガス排出口15を備える必要がある。外容器11の大きさは、測定石炭装入容器9と断熱用容器10を収納でき、かつ、測定石炭を十分断熱可能な大きさであればよい。
膨張率の測定は、予め石炭の膨張前の充填高さを求めておき、加熱時における石炭の高さ方向の変位を測定することで行う。測定方法は、例えば、測定石炭6の上に検出円盤12を設置し、その上に検出棒13を設置し、検出棒13の高さ方向への移動量を検出することで行う。検出棒13を使用する場合、外容器11に検出棒を通す穴(検出棒用口16)が必要となる。ただし、検出棒用口16から排ガスが排出される恐れがあるため、穴の径を検出棒13とほぼ等しくしてガスが出ないような工夫をするか、もしくは穴を設けずレーザー変位計のような非接触の変位計で検出棒13の変位を測定するとよい。さらに、検出棒13と検出円盤12の素材であるが、これらに求められるのは耐熱性とマイクロ波吸収性の低さの他に、熱膨張率の低さも必要である。検出円盤12と検出棒13の熱膨張率が高いと膨張率測定の誤差を大きくするからである。よって石英を素材とすることが望ましい。
測定石炭6の処理条件について、粉砕粒度は装置の構成上とくに制限はない。任意の粒度の石炭について測定することができる。嵩密度についても同様に制限はなく、加圧成型した試料でも測定は可能である。
加熱速度の制御については、断熱用測定石炭7内に設置された熱電対を制御用熱電対17とし、制御用熱電対17の温度が設定温度となるように、マイクロ波出力を調整する。マイクロ波出力の調整は手動でもできるが、実験効率と正確性を考えると、精度の良い出力制御装置を備えることが望ましい。
本発明と特許文献2とを比較した場合、簡便さの点では特許文献2の方が優れていると言える。しかし、特許文献2によると、測定石炭装入容器の内径が12mmを超える大きなものになると測定石炭の温度分布が不均一になるとあり、このような条件では膨張性を精度よく測定することは不可能である。したがって、内径が12mmを超える測定石炭装入容器9を用いる場合には、本発明を用いることが好ましい。また、内径が12mmを超える測定において、膨張挙動、温度分布等が実操業に近似でき、室炉式コークス炉内の石炭の膨張挙動を再現した測定を精度良く実現できる。
マイクロ波による均一加熱を行う場合には、マイクロ波が物体内部へ浸透する深さが問題となる。マイクロ波は物体内部に浸透するに伴い減衰するため、均一加熱を実現しつつ測定石炭装入容器の径を大きくすることに限界が生じる。本発明装置において、測定石炭装入容器の径を50mmまで変化させた結果、中心と周囲の温度差が5℃以内であり、均一加熱が可能なことを確認した。よって、本発明で用いる測定石炭装入容器の内径は、12mmから50mmが特に望ましい。
コークス炉内では、膨張を示す軟化溶融層はコークス層と石炭層に拘束され、ガスや軟化溶融物を浸透させつつ膨張する。検出円盤12に透過性を持たない素材を用いた場合、加熱時に石炭から発生したガスと軟化溶融物の排出経路は測定石炭装入容器9と検出円盤12との隙間のみとなり、発生したガスと軟化溶融物の大部分が測定石炭中に留まり検出円盤12を押し上げる力として働く。このため、検出円盤12の透過性がない場合、石炭の膨張挙動はコークス炉内とは大きく異なることが予想される。したがって、測定石炭上部に上下面に貫通経路を有する材料を配置し、貫通経路を有する材料を介して荷重を付加して膨張性を測定することが好ましい。
コークス炉での膨張条件を適切に反映させるため、測定石炭6のガスの抜けを考慮した測定を実施するには、検出円盤12の下に、測定したいコークス層、または石炭層の所定の透過係数に応じた貫通経路を有する材料を配置すればよい。貫通経路を有する材料としては、透過性材料、または充填層を用いることが好ましい。透過性材料は一般的に細孔径の小さいものが多いため、透過性の低い層の模擬に適している。また、充填層は用いる粒子の径や形状により空隙径を変化させることができるため、透過性の低い層から高い層の模擬に適している。従来の方法では、測定石炭装入容器の内径が小さく、内径に応じた粒子による充填層しか構成できなかったが、本発明では測定石炭装入容器の径が従来と比較して大きくできるため、充填層に用いる粒子の径の自由度を高め、大きな粒子による粗大な空隙径をもつ充填層を構成することができる。透過性材料に求められる条件として、耐熱性、マイクロ波吸収性の低さ、熱膨張率の低さが重要である。よって、石英フィルター、ガラスフィルター、セラミックフィルター、セラミックファイバー、濾紙、また、石英ビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズなどの球形粒子による充填層、さらには、粉コークス、石英、ガラス、セラミックを不規則に破砕した粒子など非球形粒子による充填層を用いることが望ましい。粒子を用いる場合は、粒子径が全て均一なものを用いる方法と、径の異なる粒子を混合して用いる方法があると考えられるが、模擬したい層の透過係数、空隙径などに応じ、適切な方法を決定すればよい。
検出円盤12の下に透過性材料、または充填層を配置する場合は、検出円盤12により透過性が妨げられる恐れがある。従って、検出円盤12にも同様に透過性材料、例えば細孔を多く含む石英フィルター、ガラスフィルター、セラミックフィルターなどを用いることがさらに望ましい。
コークス炉内で石炭が軟化溶融し膨張する際、石炭は、隣接する石炭層、コークス層に拘束されている。本発明では、拘束を模擬するため上部から荷重を付加することとした。測定石炭6に荷重をかけたときの膨張率を測定する場合には、検出棒13の素材が石英だと重りとしては不十分である。比重の高い材料は主に金属であるが、金属はマイクロ波吸収性が高く、アプリケータ5内に入れると石炭の加熱効率が下がってしまう。よって、アプリケータ5の外に検出棒13を延長し、アプリケータ5外からは比重の高い別の素材、例えば鉄などと接続するか、鉄に重りをつければよい。
測定石炭として、通常コークス製造用に用いられる石炭から5種類の銘柄(A炭〜E炭)を選択して膨張率の測定試験を行った。試験に用いた石炭の工業分析値を、参考のためにジラトメーター法により測定した全膨張率と併せて表1に示す。
Figure 2009204609
石炭の処理条件としては、粉砕粒度を2mm以下、100mass%、水分3mass%とした。本実施例の膨張率測定装置概略図を図4(側面図)、図5(制御用熱電対の高さの平面図)に示す。測定石炭装入容器9は内径20mm、容器外高さ50mm、厚さ1.5mmの石英製のものを用いた。測定石炭6を測定石炭装入容器9に、嵩密度800kg/m、充填高さ15mmで装入した。断熱用測定石炭7は、測定石炭6と同じく粉砕粒度2mm以下、100mass%、水分3mass%とした。また、嵩密度800kg/m、充填高さは30mmとした。断熱用容器18は、内径50mm、容器内高さ50mm、厚さ10mmの円筒状黒鉛製のものを用いた。また、断熱用容器の下に黒鉛製土台23を配置した。黒鉛製土台23は、高さ30mm、厚さ10mmのものを用いた。土台を設置した理由は、断熱用石炭8の量を少なくすることにより系外へ排出される断熱用石炭由来のタール量、ガス量を削減するためであり、測定結果には特に影響を及ぼさない。断熱用石炭8は表2に示す性状の無煙炭を用いた。断熱用石炭8の処理条件は、測定石炭6と同じく粉砕粒度2mm以下、100mass%、水分6mass%、嵩密度800kg/mとし、断熱用容器18と同じ高さまで充填した。
Figure 2009204609
外容器19には石英製のセパラブルフラスコを用いた。下部フラスコは、内径145mm、容器内高さ85mm、厚さ5mmの円筒型、上部フラスコは、内径145mm、容器外高さ80mm、厚さ5mmの半球型のものを用いた。検出円盤12は直径18mm、高さ3mmの円柱型で石英製のものを用いた。検出棒13は、直径6mm、長さ350mmの石英製のもので、測定石炭6の膨張検出のため、測定石炭6と反対側の端をアプリケータ5上部から出し、鉄製の棒と接続した。鉄製の棒は重りである。測定石炭の膨張量として、測定石炭の膨張による検出棒の高さ方向への移動量を、アプリケータ上部側からレーザー変位計20により測定した。測定石炭6は加熱速度3℃/minで、0℃から600℃まで加熱し、そのときの膨張量を測定した。ここでの膨張率は、充填高さ15mmに対する膨張による高さ方向への変位の割合であり、350〜550℃の範囲での最大膨張率を測定銘柄の膨張率と定義した。
まず、再現性を検討するため、銘柄Aについて2回膨張率を測定した。図6に銘柄Aの加熱温度と膨張率の測定結果を、また、表3に膨張率の平均値と測定誤差を示す。
Figure 2009204609
1回目と2回目の膨張挙動を比較すると、膨張開始温度、膨張速度に少し差が確認されたが、最大膨張率はほぼ等しい値となった。JISM8801のジラトメーター法の許容誤差は、膨張率が170%の場合18.9%であり、本発明の膨張性試験方法で測定した最大膨張率は、従来技術と比較しても精度に問題はないといえる。
上記の結果から本発明の膨張性試験方法は石炭の膨張挙動を精度よく測定することができるものである。表4に5種類の銘柄の膨張率を本発明の膨張性試験方法で測定したときの結果を示す。
Figure 2009204609
表4に示す結果は、各銘柄の特徴的な膨張率を示すものである。
本発明方法を用い、透過性材料を介し荷重を付加して拘束した状態での膨張率の測定試験を行った。コークス炉内での石炭層、コークス層の通気条件、拘束条件は、コークス炉の操業状態、石炭配合の組合せなどによって変化するため、様々な条件で測定可能であることが重要と考えられる。本検討では、通気条件、拘束条件をそれぞれ2水準変化させたときの膨張率測定試験を実施した。
測定石炭として、通常コークス製造用に用いられる石炭から2種類の銘柄(F炭、G炭)を選択した。試験に用いた石炭の工業分析値を、参考のためにジラトメーター法により測定した全膨張率と併せて表5に示す。
Figure 2009204609
測定石炭の処理条件は、粉砕粒度を2mm以下、100mass%、水分3mass%とした。本実施例の膨張率測定装置概略図を図7(側面図)、図5(制御用熱電対の高さの平面図)に示す。測定石炭装入容器9は内径20mm、容器外高さ100mm、厚さ1.5mmの石英製のものを用いた。測定石炭6を測定石炭装入容器9に、嵩密度800kg/m3、充填高さ10mmで装入した。断熱用測定石炭7は、測定石炭6と同じく粉砕粒度2mm以下、100mass%、水分3mass%とした。また、嵩密度800kg/m3、充填高さは30mmとした。断熱用容器18は、内径50mm、容器内高さ50mm、厚さ10mmの円筒状黒鉛製のものを用いた。断熱用容器18の下には黒鉛製土台23を配置した。黒鉛製土台23は、高さ30mm、厚さ10mmのものを用いた。断熱用石炭8は表2に示す性状の無煙炭を用いた。断熱用石炭8の処理条件は、測定石炭6と同じく粉砕粒度2mm以下、100mass%、水分6mass%、嵩密度800kg/m3とし、断熱用容器18と同じ高さまで充填した。外容器19には石英製のセパラブルフラスコを用いた。下部フラスコは、内径145mm、容器内高さ85mm、厚さ5mmの円筒型、上部フラスコは、内径145mm、容器外高さ80mm、厚さ5mmの半球型のものを用いた。
透過性材料としてガラスビーズ充填層を用いることとした。測定石炭装入容器内に充填した石炭の上に、ガラスビーズ24を22.5g装入し、そのガラスビーズの上に、直径19mm、細孔径が100〜160μmの石英製フィルター25を配置した。この石英製フィルターは膨張検出用円盤の代替である。検出棒13は、直径6mm、長さ350mmの石英製のもので、測定石炭6の膨張検出のため、測定石炭6と反対側の端をアプリケータ5上部から出し、鉄製の棒と接続した。
石炭拘束条件として、石炭層上部から荷重を付加することとした。鉄製の棒の上部に重り26を取り付け、石英フィルター25とガラスビーズ24を介して測定石炭に所定の荷重を付加できるようにした。
膨張率の測定はレーザー変位計を用いて行った。検出棒の高さ方向への移動量を、アプリケータ上部側からレーザー変位計20により測定し、その変位量を充填高さ10mmで割った結果を膨張率とした。
以上の条件の下、測定石炭6を窒素流量2.5L/min、加熱速度3℃/minで0℃から550℃まで加熱し、そのときの膨張率を測定した。ガラスビーズは直径0.4mm、直径2mmのものを用い、それぞれの場合について膨張率を測定した。また、荷重については2kPa、50kPaを付加した場合について、それぞれ膨張率を測定した。
測定結果を図8から図11に示す。図8は0.4mmガラスビーズを用いたときのF炭の、図9は2.0mmガラスビーズを用いたときのF炭の、図10は0.4mmガラスビーズを用いたときのG炭の、図11は2.0mmガラスビーズを用いたときのG炭の測定結果である。図8から図11に示すように、ガラスビーズ径、荷重を変化させると膨張挙動が異なることが確認できた。特に、図9に示される、F炭に対し2.0mmガラスビーズ、荷重50kPaで測定した結果については、一度膨張を示し、その後収縮するという興味深い挙動を測定できた。コークス層は亀裂も多く含んでおり、2.0mmガラスビーズ充填層に存在する粗大な空隙がコークス層にも存在する可能性も考えられる。本発明方法を用いて膨張率を測定することで、実炉の膨張挙動を適切に再現することができ、本発明方法を用いて測定した膨張率は、強度の高いコークスを製造するためのパラメータとして、また、コークス押出し性の指標として適用できると考えられる。
1 マイクロ波発生器
2 アイソレータ
3 導波管
4 パワーモニタ
5 アプリケータ
6 測定石炭
7 断熱用測定石炭
8 断熱用石炭
9 測定石炭装入容器
10 断熱用容器
11 外容器
12 検出円盤
13 検出棒
14 窒素導入口
15 ガス排出口
16 検出棒用口
17 制御用熱電対
18 断熱用黒鉛容器
19 石英製セパラブルフラスコ
20 レーザー変位計
21 マイクロ波加熱装置
22 膨張率測定装置
23 黒鉛製土台
24 ガラスビーズ
25 石英製フィルター
26 重り

Claims (5)

  1. 測定石炭装入容器に石炭を装入し、該測定石炭装入容器を装入した外容器を加熱炉に収容し、前記石炭を加熱したときの該石炭の膨張性を測定する石炭の膨張性試験であって、マイクロ波を用いて前記石炭を加熱することを特徴とする、石炭の膨張性試験方法。
  2. 測定石炭装入容器の内径が12mm超えであることを特徴とする、請求項1に記載の石炭の膨張性試験方法。
  3. 測定石炭装入容器を、膨張性を測定する石炭と同じ石炭が充填された断熱用容器内に装入し、該断熱用容器を外容器に装入することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の石炭の膨張性試験方法。
  4. 無煙炭を充填した外容器内に測定石炭装入容器を装入することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の石炭の膨張性試験方法。
  5. 測定石炭上部に上下面に貫通経路を有する材料を配置し、該材料を介して荷重を付加して膨張性を測定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の石炭の膨張性測定方法。
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