ところで、PCVバルブが凍結や異物の詰まりなどにより固着状態となるといった異常が生じる場合がある。また、特許文献1に記載のPCVバルブでは、通常ステッピングモータにPCVバルブの目標開度に対応したステップ数のパルス信号を入力することによりその開度を目標開度とする制御を行っているが、モータに上記ステップ数のパルス信号を入力してもPCVバルブの開度が目標開度と一致しないといった異常、すなわち脱調が生じることがある。PCVバルブにこれらの異常が生じているとクランクース内の換気が適切に行われないため、PCVバルブにおいて生じうるこれらの異常を検知することが要求される。
なお、上記PCVバルブの異常検知として、例えばPCVバルブの開度を検知するセンサを設け、このセンサの出力値に基づいてPCVバルブに異常が生じているか否かを判定することも考えられるが、この場合には、専用のセンサが別途必要となる。
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、PCVバルブの開度を検知するセンサを用いることなく、PCVバルブの異常を検知することのできる異常検知装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、吸気通路に設けられて吸気量を調整する吸気量調整手段と、前記吸気通路における前記吸気量調整手段の下流側にブローバイガスを導入するPCV通路と、同PCV通路におけるブローバイガスの流量を調整するPCVバルブと、同PCVバルブを電気的に駆動する駆動手段とを備えた内燃機関において、前記PCVバルブの異常を検知する異常検知装置であって、前記機関は、同機関が所定運転状態にあるときに、前記PCVバルブの開度を前記所定運転状態に対応した所定開度とすべく前記駆動手段を制御するとともに、機関負荷に相関する所定の機関制御量を前記所定運転状態に対応した目標制御量とすべく前記吸気量調整手段のフィードバック制御を行うものであり、前記機関が前記所定運転状態にあるときに前記フィードバック制御により調整される前記吸気量が想定される上限量よりも多いことを条件に前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することを要旨とする。
上記の構成では、内燃機関が所定運転状態にあるときに、ブローバイガスと吸気量調整手段により調整された吸気(新気)とで、機関負荷に相関する所定の機関制御量を同所定運転状態に対応した目標制御量とするために必要な空気量となるように同吸気量調整手段が制御される。なお、機関運転状態によってはこのブローバイガスを空気とみなすことができる。ここで、PCVバルブが正常であれば上記所定開度によって規定される量のブローバイガスが吸気通路に導入されることとなり、上記必要な空気量からブローバイガス量を減算した量に調整される吸気はある程度限られた範囲で変化するため、吸気量調整手段により調整される吸気量には上限量が想定される。一方、上記所定運転状態にあるときにPCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じていると、内燃機関の吸気通路に導入されるブローバイガスはPCVバルブの開度が所定開度であるときよりも少なくなるため、必要な空気量からブローバイガス量を減算した量に調整される吸気は上記想定される上限量よりも多くなる。したがって上記構成によれば、このような知見に基づいて、PCVバルブの開度を検知する専用のセンサを用いることなくPCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
請求項2に記載の発明は、吸気通路に設けられて吸気量を調整する吸気量調整手段と、前記吸気通路における前記吸気量調整手段の下流側にブローバイガスを導入するPCV通路と、同PCV通路におけるブローバイガスの流量を調整するPCVバルブと、同PCVバルブを電気的に駆動する駆動手段とを備えた内燃機関において、前記PCVバルブの異常を検知する異常検知装置であって、前記機関は、同機関が所定運転状態にあるときに、前記PCVバルブの開度を前記所定運転状態に対応した所定開度とすべく前記駆動手段を制御するとともに、前記吸気量を前記所定運転状態に対応した所定量とすべく前記吸気量調整手段を制御するものであり、前記機関が前記所定運転状態にあるときに機関負荷に相関する所定の機関制御量が目標制御量よりも小さいことを条件に前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することを要旨とする。
上記の構成では、内燃機関が所定運転状態にあるときには、PCVバルブが正常な場合はその開度が同所定運転状態に対応した所定開度となるため、吸気量調整手段により所定量に調整される吸気(新気)と同所定開度によって規定される量のブローバイガスとが吸気通路において混合される。ここで、上記所定運転状態にあるときにPCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じていると、吸気通路に供給されるブローバイガスはPCVバルブの開度が所定開度であるときよりも少なくなるため、吸気とブローバイガスとを加算した空気の総量がPCVバルブの正常時よりも少なくなる。したがって、内燃機関ではPCVバルブの正常時よりも燃料に対して空気が不足した状態で燃焼が行われることとなるため、機関出力が低下して機関負荷に相関する機関制御量が目標制御量よりも小さくなる。上記構成によれば、このような知見に基づいて、PCVバルブの開度を検知する専用のセンサを用いることなくPCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記機関は、気筒内に供給される空気の量に対する燃料の量である空燃比が所定空燃比となるように制御されるものであり、前記機関が前記所定運転状態にあるときに、前記吸気量が想定される下限量よりも少ないことを条件に前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも大きい状態である異常が生じている旨を検知することを要旨とする。
上述したように、PCVバルブが正常であれば上記所定開度によって規定される量のブローバイガスが吸気通路に導入されることとなり、上記所定の機関制御量を目標制御量とするために必要な空気量からブローバイガス量を減算した量に調整される吸気はある程度限られた範囲で変化する。したがって、吸気量調整手段により調整される吸気の量には下限量が想定される。ここで内燃機関が所定運転状態にあるときにPCVバルブの開度が所定開度よりも大きい状態である異常が生じていると、内燃機関に供給されるブローバイガスはPCVバルブの開度が所定開度であるときよりも多くなるため、仮に吸気量がPCVバルブの正常時に変化する範囲で調整されているとすれば、内燃機関に供給される空気の総量が多くなる。そして上記構成では内燃機関において空燃比制御が行われているため、このように内燃機関に供給される空気の総量が増大すると、それに伴って燃料の量も多くなり、これにより機関出力もPCVバルブが正常なときよりも増大して機関負荷に相関する機関制御量が目標制御量を上回ることとなる。ここで、上記構成では機関制御量を所定運転状態に対応した目標制御量とすべく吸気量調整手段により吸気量が調整されるため、このような場合、機関制御量を低下させて目標制御量とすべく吸気量はPCVバルブが所定開度であるときに想定される下限量よりも少なくなるように調整される。上記構成によれば、このような知見に基づいて、PCVバルブの開度を検知する専用のセンサを用いることなく前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも大きい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
なお、上記の構成では、PCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じている場合には、吸気通路に供給されるブローバイガスの減少によって内燃機関に供給される空気量の総量が低下し、これに伴い内燃機関に供給される燃料の量も減少することとなるため、機関制御量もPCVバルブが所定開度の場合よりも低くなる。したがって同機関制御量を目標制御量とすべく調整される吸気量はPCVバルブが所定開度であるときに想定される上限量よりも多くなり、請求項1に記載した態様で前記PCVバルブの開度が所定開度よりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
このように空燃比制御が行われる内燃機関では、PCVバルブの開度が所定開度よりも大きい状態の異常及び小さい状態の異常の双方を検知することができる。
請求項3に記載の発明は、さらに請求項4に記載の発明によるように、前記機関が前記所定運転状態にあるときに、前記吸気量が前記上限量あるいは前記下限量から乖離する度合に応じて前記異常における前記所定開度からの乖離度合の大小を判別するようにしてもよい。
請求項3に記載の発明において、前記機関が前記所定運転状態にあるときに前記吸気量が前記上限量から下限量までの範囲を含む所定調整範囲で変化するように前記吸気量調整手段が制御されるものである場合には、請求項5に記載の発明によるように、前記機関が前記所定運転状態にあるときに、前記所定の機関制御量と前記目標制御量との乖離度合に応じて前記異常における前記所定開度からの乖離度合の大小を判別するといった態様を採用することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、前記機関が前記所定運転状態にあるときに前記異常における前記所定開度からの乖離度合が小さいと判別されると、前記PCVバルブの開度を前記所定開度とすべく前記駆動手段の制御量を補正することを要旨とする。
内燃機関が所定運転状態にあるときにPCVバルブの開度が前記所定開度とさほど乖離していない場合には、同バルブを所定開度とするための駆動手段の制御量(入力されるパルス信号のステップ数や印加電圧)とPCVバルブの開度との間に軽微なずれが生じている可能性が高い。したがって、このような軽微なずれが生じている異常の場合には、前記PCVバルブの開度を前記所定開度とすべく前記駆動手段の制御量を補正することにより、PCVバルブの開度を所定開度とすることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5において、前記異常において前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも小さい状態であり且つ前記所定開度からの乖離度合が大きいと判別されると、同PCVバルブの開度を全開とすべく前記駆動手段を制御することを要旨とする。
上記構成において、PCVバルブを所定開度とすべく駆動手段が制御されているにも拘わらず、PCVバルブが前記所定開度よりも小さく且つ前記所定開度からの乖離度合が大きい状態である異常が生じているときには、PCVバルブが全閉固着している可能性が高い。この点、上記の構成によれば、PCVバルブが全開となるように駆動手段を制御するため、例えばPCVバルブが異物の噛み込みや凍結などで全閉固着している場合にこれらの異常を解消することができる。したがって、PCVバルブの全閉固着といった異常を早期に解消することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記駆動手段により前記PCVバルブの開度を全開とする制御は、前記機関の高負荷運転時に実行されることを要旨とする。
機関の高負荷運転時には気筒内に多量の空気が供給されるため、PCVバルブの開度を全開とする制御が行われたとしても、気筒内に供給される空気量にはさほど影響がない。したがって、上記の構成によれば、PCVバルブの全開制御が機関運転状態に及ぼす影響を最小限に抑制することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、前記異常において前記PCVバルブの開度が前記所定開度よりも大きい状態であり且つ前記所定開度からの乖離度合が大きいと判別されると、同PCVバルブの開度を全閉とすべく前記駆動手段を制御することを要旨とする。
上記構成において、PCVバルブを所定開度とすべく駆動手段が制御されているにも拘わらず、PCVバルブが前記所定開度よりも大きく且つ前記所定開度からの乖離度合が大きい状態である異常が生じているときには、PCVバルブが全開固着している可能性が高い。この点、上記の構成によれば、PCVバルブが全閉となるように駆動手段を制御するため、例えばPCVバルブが異物の噛み込みや凍結などで全開固着している場合にこれらの異常を解消することができる。したがって、PCVバルブの全開固着といった異常を早期に解消することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9の何れかに記載の発明において、前記PCVバルブの開度を全開あるいは全閉とすべく前記駆動手段を制御するときに同駆動手段の制御量を学習することを要旨とする。
上記構成によれば、固着を解消するための全開又は全閉への制御と併せて駆動手段の制御量を学習することができるため、学習された駆動手段の制御量に基づいて、その後のPCVバルブの開度制御を適切に行うことができる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10の何れかに記載の発明において、前記機関の前記所定運転状態はアイドル運転状態であることを要旨とする。
内燃機関がアイドル運転状態にあるときには目標制御量の変動が少なく同機関は安定した状態にあるため、PCVバルブの異常検知を好適に行うことができる。
請求項1〜11の何れかの発明は、具体的には請求項12に記載の発明によるように、 前記所定の機関制御量は機関回転速度であるといった態様を採用することができる。
以下、本発明にかかるPCVバルブの異常検知装置の一実施の形態について図1〜図5に基づいて説明する。
図1に、本発明の異常検知装置が適用される車両用筒内噴射式の内燃機関10を示す。この図1に示すように内燃機関10には、その燃焼室12内に燃料を直接噴射するインジェクタ14と、インジェクタ14により噴射された燃料と空気との混合気に点火する点火プラグ16とがそれぞれ設けられている。
燃焼室12に接続される吸気通路22には、スロットルモータ24によって開閉駆動されるスロットルバルブ26が吸気量調整手段として設けられている。吸気通路22においてスロットルバルブ26の吸気下流側には、サージタンク28が設けられている。吸気通路22を通じて燃焼室12に供給される吸入空気の量(GA)はこのスロットルバルブ26の開度に基づいて調整される。また、燃焼室12に接続される排気通路18には、排気に含まれるHC及びCO及びNOxを浄化する触媒装置20が設けられている。
また内燃機関10には、吸気通路22におけるスロットルバルブ26の吸気上流側からクランクケース40内に空気を導入する導入通路32と、クランクケース40内から吸気通路22におけるスロットルバルブ26の吸気下流側にブローバイガスを導入するPCV通路34とが設けられている。このPCV通路34には、同PCV通路34を流れるブローバイガスの流量を調整するPCVバルブ36が設けられている。このPCVバルブ36は、開度調整が自在の電子制御式のバルブであり、より詳細には同バルブ36の駆動手段としてのステッピングモータ37にPCVバルブ36の目標開度に対応したステップ数のパルス信号が入力されることにより、同PCVバルブ36を目標開度とする開度調整がなされる。
こうした内燃機関10の各種制御は、車両に搭載された電子制御装置60によって行われる。電子制御装置60は、内燃機関10の制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置60の入力ポートには、各種センサからの検出信号が入力される。すなわち内燃機関10には、その運転状態を検出するための各種センサが設けられている。具体的には、クランクシャフト42の近傍には機関回転速度NEを検出する回転速度センサ51が、またアクセルペダル44の近傍にはその操作量を検出するアクセルセンサ52が設けられている。また、スロットルバルブ26の近傍には、その開度を検出するスロットルセンサ53が設けられている。また、このスロットルバルブ26の吸気上流側には、吸気通路22を通過する吸入空気の質量流量(吸気量GA)を検出するエアフローメータ54が設けられている。また、内燃機関10のシリンダブロック11には、機関冷却水温を検出する水温センサ55が設けられている。更に、触媒装置20の排気上流側には、排気の酸素濃度を検出する酸素センサ56が設けられている。そして、これら各センサ51〜56の検出信号が電子制御装置60の入力ポートに入力される。
また電子制御装置60の出力ポートには、インジェクタ14、各種バルブ26,36を駆動する各モータ24,37などの駆動回路が接続されている。電子制御装置60は、上記各種センサから入力した検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を把握し、その把握した運転状態に応じて上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうしてインジェクタ14による燃料噴射量の制御、スロットルバルブ26の開度制御、PCVバルブ36の開度制御などが行われる。
具体的に電子制御装置60は、酸素センサ56によって検出された排気の酸素濃度に基づいて燃焼室12において燃焼する空気と燃料との質量比である空燃比を理論空燃比(14.7)とする空燃比制御を行うようにしている。本実施形態では、このように燃焼室12での燃焼を理論空燃比で行うことにより、排気通路18に設けられる触媒装置20においてHC、CO及びNOxの3つの成分を同時に低減するようにしている。
また、電子制御装置60は、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときに、機関負荷に相関した制御量である機関回転速度をアイドル運転状態に対応した目標回転速度に維持するアイドルスピードコントロール制御、いわゆるISC制御を行うようにしている。さらに、電子制御装置60は、こうした制御の一つとしてPCVバルブ36の開度を運転状態に応じて調整するようにしており、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときには同PCVバルブ36の開度をアイドル運転状態に対応した所定開度Oiに維持するようにしている。
ここで、このように電子制御装置60はPCVバルブ36の開度制御を行うようにしているものの、PCVバルブ36の凍結や異物の噛み込みに起因した同バルブ36の固着やステッピングモータ37の脱調といった異常が生じている場合がある。そしてこのような場合、PCVバルブ36の開度制御を適切に行うことができないため、クランクケース40内の換気が適切に行われない。そこで本実施形態では、電子制御装置60が、PCVバルブ36の異常検知装置として、上記各制御に加えPCVバルブ36の異常を検知するようにしている。なお、本実施形態において電子制御装置60によるPCVバルブ36の異常検知は、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときに行われる。
以下、電子制御装置60によるPCVバルブ36の異常検知について説明する。まずPCVバルブ36の異常検知の前提となる制御として、PCVバルブ36の開度制御及び内燃機関10のアイドル運転状態における制御について説明する。
図2は、ステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数とPCVバルブ36の開度との関係を示している。この図2においてPCVバルブ36が正常である場合は、同PCVバルブ36の開度は線Aに示す態様で変化する。すなわち、ステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数が「−200」であればPCVバルブ36の開度は全閉となり、ステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数が「200」であればPCVバルブ36の開度は全開となる。ここでアイドル運転状態においては、例えばPCVバルブ36の開度が所定開度Oiとなるようにステッピングモータ37が制御される。したがって、アイドル運手状態のときには、PCVバルブ36の所定開度Oiをこの線Aに適用し、同開度Oiに対応するステップ数(例えば「−50」)のパルス信号がステッピングモータ37入力されることにより、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiに制御される。
次に内燃機関10のアイドル運転状態におけるISC制御について説明する。図1に示すように内燃機関10において、筒内に供給される総空気量GSUMは、下式に示されるように、スロットルバルブ26を通過する吸気(新気)の量GAとPCVバルブ36を通過するブローバイガスの量GPとを加算した量となる。なお、このブローバイガスは運転状態によっては空気とみなすことができる。
GSUM = GA + GP … (式)
そして内燃機関10がアイドル運転状態にあるときには、PCVバルブ36の開度によって規定されるブローバイガス量GPとスロットルバルブ26により調整された吸気量GAとで筒内に供給される総空気量GSUMが機関回転速度を目標回転速度と維持するために必要な空気量GNとなるようにスロットルバルブ26のフィードバック制御が行われる。すなわち、アイドル運転状態において、実際の機関回転速度が目標回転速度よりも低い場合には、スロットルバルブ26を通過する吸気の量GAを増加させる制御が行われ、実際の機関回転速度が目標回転速度よりも高い場合には、スロットルバルブ26を通過する吸気の量GAを減少させる制御が行われる。
一方、上述したように内燃機関10がアイドル運転状態にあるときには、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiとなるようにステッピングモータ37が制御されるため、PCVバルブ36が正常であれば、吸気通路22に導入されるブローバイガスの量GPは開度Oiによって規定される略一定量となる。また、内燃機関10のアイドル運転状態において、機関回転速度を目標回転速度とするために必要な空気量GNも略一定である。したがって、アイドル運転状態においてPCVバルブが所定開度Oiであれば、ISC制御によって制御される吸気量GAは、必要な空気量GNからブローバイガス量GPを減算した値として導出され、同吸気量GAはある程度限られた範囲で変化することとなり、この吸気量GAの上限量GU及び下限量GLが想定される。
ここで、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにおいてPCVバルブ36の開度が所定開度Oiと異なるといった異常が生じている場合、吸気通路22に導入されるブローバイガスの量GPはPCVバルブ36の開度が所定開度Oiである状態よりも増減する。そのため、ISC制御により調整される吸気量GAも上記上限量GUを上回ったり上記下限量GLを下回ったりすることとなる。
すなわち、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である場合、吸気通路22に導入されるブローバイガスの量GPはPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも少なくなる。したがって仮にスロットルバルブ26により調整される吸気量GAが上記上限量GU以下であるとすれば、筒内に供給される総空気量GSUMもPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも少なくなり、総空気量GSUMは目標回転速度に維持するために必要な空気量GNよりも少なくなる。さらに、本実施形態では空燃比制御が行われているため、上記総空気量GSUMの減少に伴いインジェクタ14によって噴射される燃料の量も少なくなる。したがってPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい異常が生じている状態で吸気量GAが上記上限量GU以下であると、機関出力もPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも低くなり、機関回転速度が目標回転速度を下回ることとなる。そのためISC制御により機関回転速度を目標回転速度まで上昇させるべく吸気量GAが増加するようにスロットルバルブ26が制御され、結果的に吸気量GAが上記上限量GUを上回るように調整されることとなる。
一方、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態では、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりもブローバイガスの量GPが多くなっている。したがって仮にスロットルバルブ26により調整される吸気量GAが上記下限量GL以上であるとすれば、気筒内に供給される総空気量GSUMもPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも多くなり、同総空気量GSUMは目標回転速度に維持するために必要な空気量GNよりも多くなる。そして、本実施形態では空燃比制御が行われているため、上記総空気量GSUMの増大に伴いインジェクタ14によって噴射される燃料の量も多くなる。したがってPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい異常が生じている状態で吸気量GAが上記下限量GU以上であると、機関出力もPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも高くなり、機関回転速度が目標回転速度を上回ることとなる。そのためISC制御により機関回転速度を目標回転速度まで低下させるべく吸気量GAが減少するようにスロットルバルブ26が制御され、結果的に吸気量GAが上記下限量GLを下回る量に調整されることとなる。
したがって、本実施形態はこれらの知見に基づき、ISC制御中にスロットルバルブ26の開度制御により調整される吸気量GAが上記下限量GLから上限量GUまでの範囲にない場合、PCVバルブ36が所定開度Oiよりも大きい状態である異常又は小さい状態である異常が発生している旨を検知するようにしている。
なおISC制御においては、スロットルバルブ26が全閉から全開までの全開度域において可変に制御されるというわけではなく、全閉から全開までよりも小さい制御可能な開度範囲が設定されている。そのため、PCVバルブ36に異常が生じていたとしても、吸気量GAが「0」からスロットルバルブ26が全開の状態に対応する量にまで調整されて機関回転速度を必ず目標回転速度にすることができるというわけではなく、同吸気量GAはあくまでスロットルバルブ26の制御可能な開度範囲に対応した所定調整範囲において調整される。このように吸気量GAの調整範囲が設定されているのは、通常内燃機関10のアイドル運転状態においては車両走行状態よりも吸気量GAが少なく、調整される吸気量GAはある程度限られた範囲で変化するためである。なお、内燃機関10が吸気通路22とは別にISC通路を備える構成でもあってもよく、この場合もアイドル運転状態において吸気量GAがある程度限られた範囲で調整されることとなる。また、この所定調整範囲は、上記下限量GLから上記上限量GUまでを含むものとなっている。このように吸気量GAには調整範囲が設定されているため、仮に吸気量GAを調整範囲の限界値まで変化させた場合であっても、機関回転速度が目標回転速度と乖離する場合がある。そこで、本実施形態では、PCVバルブの36異常が検知された場合、実際の機関回転速度と目標回転速度との乖離度合に基づいてPCVバルブ36の実際の開度と所定開度Oiとの乖離度合の大小を判別し、この結果に基づき検知された異常がステッピングモータ37による脱調であるのかPCVバルブ36の固着であるのかを判定するようにしている。
以下に電子制御装置60により実行される異常検知の具体的な処理手順について図3〜図5のフローチャート及び先の図2を参照して説明する。この図3に示される一連の処理は機関運転中に繰り返し実行される。
PCVバルブ36の異常検知ルーチンがスタートすると、まずステップS11において、現在が内燃機関10のアイドル運転状態か否かを判定する。すなわち、上述したように本実施形態ではPCVバルブ36の異常検知をアイドル運転状態において実行するようにしているため、このステップS11ではPCVバルブ36の異常検知の前提条件が成立しているかを判定する。そして、ステップS11において現在がアイドル運転状態でないと判定されるとエンドに移りこの処理を一旦終了し、現在がアイドル運転状態であると判定されるとステップS12に移る。
ステップS12においては、ISC制御においてスロットルバルブ26により調整される吸気量GAが上記下限量GL以上且つ上記上限量GU以下の範囲にあるか否かが判定される。そして、吸気量GAがこの範囲にある場合には、PCVバルブ36の開度はアイドル運転状態に対応した所定開度Oiであり同PCVバルブ36が正常であると判定されてエンドに移り、この処理を終了する。
一方、ステップS12において吸気量GAが上限量GUよりも多いと判定されると、ステップS13に移りPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じていると検知される。すなわち、上述したようにPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さくブローバイガス量GPが少ないため吸気量GAが上記上限量GUよりも多くなる事態が生じていると考えられることから、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態(例えば図2の点X1、X2)である異常が生じていると検知される。
ステップS13に移ってPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じていると検知されると、ステップS14に移り、実際の回転速度NEと目標回転速度NEtrgとの乖離度合が判定値ΔN以上か否かが判定される。ここで、この乖離度合が判定値ΔN以上であれば、PCVバルブ36の開度は所定開度Oiよりも小さく且つ所定開度Oiから大きく乖離していることがわかる。そしてステッピングモータ37に所定開度Oiに対応したステップ数のパルス信号が入力されるにも拘わらず、PCVバルブ36が所定開度Oiよりも小さく且つ所定開度Oiからの乖離度合が大きい状態である場合はPCVバルブ36が全閉固着している(図2の点X2)可能性が高い。したがってステップS15に移り、PCVバルブ36の異常は全閉固着であると判定される。
そして、ステップS15の判定後ステップS16に移り、PCVバルブ36の全開制御及び全開学習が行われる。このステップS16の制御は具体的には図4のフローチャートに基づいて行われる。
ステップS15においてPCVバルブ36が全閉固着(図2の点X2)していると判定されると、図4に示すステップS31おいて、まず内燃機関10が高負荷運転状態であるか否かが判定される。すなわち、例えば内燃機関10の負荷が比較的低いアイドル運転状態においてPCVバルブ36の全開制御を行うと、吸気通路22に供給されるブローバイガス量GPの増加に伴って気筒内に供給される総空気量GSUMが必要な空気量GNを大幅に超えてラフアイドルを起こすなど、機関運転状態が不安定となる虞がある。一方、内燃機関10が高負荷運転状態にあるときには気筒内に多量の空気が供給する必要があるため、PCVバルブ36の開度が全開となって気筒内に供給される空気量GSUMが増大してもさほど影響がない。したがって、内燃機関10が高負荷運転状態にあるときにはPCVバルブ36の全開制御が機関運転状態に及ぼす影響を最小限に抑制することができる。そこで、このステップS31では、現在が高負荷運転状態であるか否かを判定する。なお、PCVバルブ36の異常検知はアイドル運転状態において行われている。したがって現在も未だアイドル運転状態である可能性が高く、現在もアイドル運転状態であれば、このステップS31において否定判定されてこの処理を一旦終了する。
内燃機関10の運転状態が変わり、図4に示すフローチャートにおけるステップS31において内燃機関10の現在の運転状態が高負荷運転状態であると判定されると、ステップS32に移り、PCVバルブ36を全開とすべくステッピングモータ37にPCVバルブ36を全開とするのに充分なステップ数のパルス信号が入力される。すなわち、図2に示すように例えばPCVバルブ36が正常であれば、同バルブ36の全開に対応するステップ数は「200」であるが、ここでは例えばステップ数を「500」増加させるパルス信号がステッピングモータ37に入力され、PCVバルブの開度は図2の矢印Bに示すように変化して全開状態(点X3)とすることができる。このようにPCVバルブ36を全開とすることができるため、異物の噛み込みや凍結などにより全閉固着していた場合に、噛み込まれていた異物の除去や生成された氷の粉砕を行うことができ、これらの異常を早期に解消することができる。そして、このようにPCVバルブ36が全開となると、ステップS33において現在のステップ数を全開に対応した「200」に更新する。このようにして、PCVバルブ36の全閉固着を解消する全開制御と併せてステッピングモータ37の制御量であるパルス信号のステップ数を学習することができる。その後、この制御ルーチンとは異なる制御としてPCVバルブ36の開度を内燃機関の運転状態に対応した開度に制御する。なお、図4に示すPCVバルブの全開制御及び全開学習ルーチンは、上記ステップ数の学習が行われるまで繰り返し行われる。
一方、図3に示すフローチャートのステップS14において、実際の機関回転速度NEと目標回転速度NEtrgとの乖離度合が判定値ΔN未満であると判定されると、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい異常が生じているものの所定開度Oiからの乖離度合が小さい異常(図2の点X1)であることがわかる。したがってこの場合、PCVバルブ36のステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数と実際の開度との間に軽微なずれが生じている脱調が生じている可能性が高いため、ステップS17に移りPCVバルブ36の異常が脱調であると判定される。なお図2には、現在のアイドル運転状態となる前において既にステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数とPCVバルブ36の開度(点X0)との関係が線Aに示す状態にないため、アイドル運転状態においてPCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべく制御しても同開度が所定開度Oiとならなかったという例を示している。そして、PCVバルブ36の異常が脱調といった軽微な異常であるため、ステップS18に移り、PCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべくステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数を補正することにより、PCVバルブ36の開度を図2の矢印Cに示すように変化させて所定開度Oiとする。
一方、先のステップS12において吸気量GAが上記下限量GL未満であると判定されると、ステップS19に移ってPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常が生じていると検知される。すなわち、上述したように、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きくブローバイガス量GPが多いため吸気量GAが上記下限量GLよりも少なくなる事態が生じていると考えられることから、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態(例えば図2の点Y1,Y2)である異常が生じていると検知される。
ステップS19においてPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常が生じていると検知されると、ステップS20に移り、実際の回転速度NEと目標回転速度NEtrgとの乖離度合が判定値ΔN以上か否かが判定される。そして、この乖離度合が判定値ΔN未満であれば、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい異常が生じているものの所定開度Oiからの乖離度合が小さい軽微な異常(図2の点Y1)であることがわかる。このような軽微な異常の場合は上述したように脱調が生じている可能性が高いため、ステップS17に移ってPCVバルブ36の異常が脱調であると判定する。なお図2には、現在のアイドル運転状態となる前にはステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数とPCVバルブ36の開度(点Y0)との関係が線Aに示す状態にあったにも拘わらず、アイドル運転状態においてPCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべく制御した際に同開度が所定開度Oiとならなかったという例を示している。そして、ステップS18においてPCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべくステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数が補正されることにより、図2の矢印Dに示すようにPCVバルブ36の開度を所定開度Oiとする。
一方、ステップS20において、実際の回転速度NEと目標回転速度NEtrgとの乖離度合が判定値ΔN以上であると判定されると、PCVバルブ36の開度は所定開度Oiよりも大きく且つ所定開度Oiから大きく乖離している異常が生じていることがわかる。そして、ステッピングモータ37にステップ数「−50」のパルスを入力しているにも拘わらずPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きく且つ所定開度Oiから大きく乖離している場合には同バルブ36が全開固着している可能性が高いため、ステップS21に移り、PCVバルブ36の異常は全開固着である(図2の点Y2)旨が判定される。
そして、ステップS22において、PCVバルブ36の全閉制御及び全閉学習が行われる。このステップS22で行われる全閉制御及び全閉学習を図5のフローチャートを参照して説明する。
ステップS41においてPCVバルブ36が全開固着していると判定されると、ステップS41において、PCVバルブ36を全閉とすべくステッピングモータ37にPCVバルブ36を全閉とするのに充分なステップ数のパルス信号が入力される。具体的には、例えばPCVバルブ36の全閉に対応するステップ数は通常「−200」であるが、例えばステップ数を「500」減少させるパルスが入力される。これにより、PCVバルブ36は、開度が図2の矢印Eに示すように変化しPCVバルブ36を全閉状態(点Y3)とすることができるため、異物の噛み込みや凍結などにより全開固着していた場合に、噛み込まれていた異物の除去や生成された氷の粉砕を行うことができ、これらの異常を早期に解消することができる。そして、このようにPCVバルブ36が全閉となると、ステップS42において現在のステップ数を全閉に対応した「−200」に更新する。このようにして、全開固着を解消する全閉制御と併せてステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数を学習する。そしてその後、この制御ルーチンとは別の制御としてPCVバルブ36の開度を内燃機関の運転状態に対応した開度に制御する。
以上詳述した上記実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態の内燃機関10では、同機関10がアイドル運転状態にあるときPCVバルブ36の開度をアイドル運転状態に対応した所定開度Oiとするようにステッピングモータ37を制御するとともに、機関回転速度が目標回転速度となるようにスロットルバルブ26をフィードバック制御して吸気量GAを調整するようにしている。そして、電子制御装置60は、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにフィードバック制御により調整される吸気量GAが、想定される上限量GUよりも多いことを条件にPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じている旨を検知するようにしている。
すなわち、PCVバルブ36が正常であれば所定開度Oiによって規定される量のブローバイガスが吸気通路22に導入されることとなる。そして、目標回転速度に維持するための必要な空気量GNからブローバイガス量GPを減算した量に調整される吸気はある程度限られた範囲で変化するため、同吸気量GAには上限量GUが想定される。ここで、アイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じていると、内燃機関10の吸気通路22に導入されるブローバイガスはPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも少なくなる。したがって、目標回転速度に維持すべく必要な空気量GNからブローバイガス量GPを減算した量に調整される吸気量GAは上記上限量GUよりも多くなる。したがって、このような知見に基づいて、PCVバルブ36の開度を検知する専用のセンサを用いることなくPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
なお、本実施形態の内燃機関10では、燃焼室12内おける空気に対する燃料の比である空燃比を理論空燃比とする空燃比制御を行うようにしている。したがって上記構成では、PCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じていると、ブローバイガスの減少に伴って内燃機関に供給される燃料の量も減少することとなることから、この燃料量の減少によってもPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも回転速度が低下することとなる。したがって、このことによっても機関回転速度を目標回転速度すべく調整される吸気量GAはPCVバルブが所定開度Oiであるときの上限量GUよりも多くなり、上述した態様でPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
(2)本実施形態では、電子制御装置60が内燃機関10において燃焼室12内において理論空燃比で燃焼が行われるよう空燃比制御を行い、同機関10がアイドル運転状態にあるときに吸気量GAが上記下限量GLよりも少ないことを条件にPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常が生じている旨を検知するようにしている。
すなわち、PCVバルブ36が正常であれば、アイドル運転状態においてスロットルバルブ26を通過する吸気はある程度限られた範囲で変化することから、同吸気量GAには下限量GLが想定される。ここで内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常が生じている場合、内燃機関10に供給されるブローバイガスはPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも多くなり、筒内空気量GSUMが多くなる。そして、本実施形態の内燃機関10では空燃比制御が行われるため、筒内空気量GSUMの多くなると燃料の量も多くなり、これにより機関出力がPCVバルブ36の開度が所定開度Oiであるときよりも大きくなり回転速度が目標回転速度を上回ることとなる。そのため、機関回転速度を目標回転速度に維持するISC制御により、吸気量GAはPCVバルブ36が所定開度Oiであるときに想定される下限量GLよりも少なくなるよう調整される。したがって、このような知見に基づいて、PCVバルブ36の開度を検知する専用のセンサを用いることなくPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常が生じている旨を検知することができる。
(3)本実施形態の内燃機関10では、アイドル運転状態にあるときに吸気量GAが上限量GUから下限量GLまでの範囲を含む所定調整範囲で変化するようにスロットルバルブ26が制御される。このようにアイドル運転状態において吸気量GAの調整範囲が設けられているため、回転速度と目標回転速度との乖離度合に応じてPCVバルブ36の開度の所定開度Oiからの乖離度合の大小を判別することができる。したがって、PCVバルブ36の開度における所定開度Oiからの乖離度合に応じて、適切な対策を講じることができる。
(4)本実施形態では電子制御装置60が、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の異常を検知し、この異常がPCVバルブ36の実際の開度における所定開度Oiとの乖離度合が小さい状態である異常であると判別されると、この異常がステッピングモータ37の脱調によるものである判定するようにしている。そしてこの場合、PCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべくステッピングモータ37に入力するパルス信号のステップ数を補正するようにしている。
すなわち内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の開度が所定開度Oiとさほど乖離していない場合には、同バルブ36を所定開度Oiとすべくステッピングモータ37に入力されるパルス信号とPCVバルブ36の開度との間に軽微なずれが生じている可能性が高く、この場合は脱調によるものである可能性が高い。したがって、このような軽微なずれが生じている異常の場合には、PCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすべくステッピングモータ37に入力するパルスのステップ数を補正することにより、PCVバルブ36の開度を所定開度Oiとすることができる。
(5)本実施形態では電子制御装置60が、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の異常を検知し、この異常がPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態であり且つ所定開度Oiからの乖離度合が大きい異常であると判別されると、PCVバルブ36の全閉固着であると判定するようにしている。そして、PCVバルブ36の開度を全開とすべく、ステッピングモータ37にPCVバルブ36が全開となるのに充分なステップ数のパルス信号を入力する(例えばステップ数を「500」増加させる)ようにしている。したがって例えばPCVバルブ36が異物の噛み込みや凍結などで全閉固着している場合に、これらの異常を早期に解消することができる。
(6)本実施形態では、内燃機関10が高負荷運転状態にあるときに上記(5)に記載したPCVバルブ36全開制御を実行するようにしている。すなわち機関の高負荷運転時には気筒内に多量の空気が供給されるため、PCVバルブ36の開度を全開とする制御が行われたとしても、気筒内に供給される空気の量にはさほど影響がない。したがって、PCVバルブ36の全開制御が内燃機関10の運転状態に及ぼす影響を最小限に抑制することができる。
(7)本実施形態では電子制御装置60が、内燃機関10がアイドル運転状態にあるときにPCVバルブ36の異常を検知し、この異常がPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態であり且つ所定開度Oiからの乖離度合が大きい異常であると判別されると、PCVバルブ36の全開固着であると判定するようにしている。そして、PCVバルブ36の開度を全閉とすべく、ステッピングモータ37にPCVバルブ36が全閉となるのに充分なステップ数のパルス信号を入力する(例えばステップ数を「500」減少させる)ようにしている。したがって例えばPCVバルブ36が異物の噛み込みや凍結などで全開固着している場合に、これらの異常を早期に解消することができる。
(8)本実施形態の内燃機関10では、PCVバルブ36の全開制御あるいは全閉制御を行う際に、ステッピングモータ37に入力されるパルス信号のステップ数を更新することにより同ステップ数を学習するようにしている。すなわち、全開制御を行う際には、ステッピングモータ37に入力したパルス信号のステップ数を「200」に更新し、全閉制御を行う際には、ステッピングモータ37に入力したパルス信号のステップ数を「−200」に更新するようにしている。このように本実施形態においては、固着を解消するための全開又は全閉への制御と併せてステッピングモータ37に入力したパルス信号のステップ数を学習することができるため、このように学習されたステップ数に基づいてその後のPCVバルブ36の開度制御を適切に行うことができる。
(9)本実施形態では、PCVバルブ36の異常検知を内燃機関10がアイドル運転状態にあるときに行うようにしている。すなわちアイドル運転状態においては目標回転速度の変動が少なく同機関10は安定した状態にあるため、PCVバルブ36の異常検知を好適に行うことができる。
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は以下のように適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、PCVバルブ36の異常を脱調や全開・全閉固着と判定し、判定された異常に応じて全閉・全開制御及び学習とステップ数の補正といった対策を講じるようにしている。しかしながら、電子制御装置60は異常の検知のみを行って各異常に対する対策を講じない構成であってもよい。
・上記各実施形態では、ISC制御におけるスロットルバルブ26の開度が全閉から全開までの全開度域よりも小さい範囲で制御されるため、吸気量GAはスロットルバルブ26が全閉から全開に対応した吸気量の範囲よりも小さく且つPCVバルブ36が正常な場合の吸気量の下限量から上限量を含む範囲に調整される。しかしながら、ISC制御においてスロットルバルブ26を全閉から全開までの任意の開度に制御可能としてもよい。そしてこのように吸気量の調整範囲が特に設定されていない場合には、例えばISC制御によって調整される吸気量がPCVバルブ36の開度が正常である場合の吸気量の上限量及び下限量からどの程度乖離しているかによって、PCVバルブの開度における所定開度との乖離度合の大小を判別するようにしてもよい。
・上記各実施形態ではPCVバルブ36の異常検知にあたり同バルブ36の開度の所定開度からの乖離度合の大小をも判別するようにしている。しかしながら、PCVバルブ36の開度が所定開度よりも大きいか小さいかのみを判定するようにしてもよい。さらに、内燃機関10において空燃比制御が行われない場合には、PCVバルブ36の開度が所定開度よりも小さい異常のみを判定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、機関負荷に相関する所定の機関制御量として機関回転速度を用い、同回転速度を目標回転速度とすべくスロットルバルブ26のフィードバック制御を行うことにより、調整される吸気量に基づいてPCVバルブ36の異常を判定するようにしている。しかしながら、機関負荷に相関する所定の機関制御量として、例えば筒内空気量GSUMやインジェクタ14によって噴射される燃料の量を用い、これらを目標値とすべくスロットルバルブ26を制御するようにしてもよい。また、機関制御量として機関回転速度を用いる場合には、目標回転速度を補機類の負荷によって補正した上で設定するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、アイドル運転状態において機関制御量を目標制御量とすべく吸気量を可変に調整するようにしている。しかしながら内燃機関10がアイドル運転状態にあるときには、スロットルバルブ26を通過する吸気量をアイドル運転状態に対応した固定の所定量となるように同スロットルバルブ26を制御するようにしてもよい。この場合、機関制御量が目標制御量よりも小さいことを条件にPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも小さい状態である異常を検知することができ、さらに内燃機関10が空燃比制御を行う場合は、機関制御量が目標制御量よりも大きいことを条件にPCVバルブ36の開度が所定開度Oiよりも大きい状態である異常を検知することができる。
・上記各実施形態では、PCVバルブ36をステッピングモータ37により駆動するようにしている。しかしながら、PCVバルブ36を例えば直流モータなどの駆動手段により駆動するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、PCVバルブ36の異常検知を内燃機関10がアイドル運転状態にあるときに行うようにしているが、他の運転状態のときにPCVバルブ36の異常検知を行うようにしてもよい。
10…内燃機関、11…シリンダブロック、12…燃焼室、14…インジェクタ、16…点火プラグ、18…排気通路、20…触媒装置、22…吸気通路、24…スロットルモータ、26…スロットルバルブ、28…サージタンク、32…導入通路、34…PCV通路、36…PCVバルブ、37…ステッピングモータ、40…クランクケース、42…クランクシャフト、44…アクセルペダル、51…回転速度センサ、52…アクセルセンサ、53…スロットルセンサ、54…エアフローメータ、55…水温センサ、56…酸素センサ、60…電子制御装置。