JP2009197247A - セルロースエステルドープ組成物、セルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム及びそれを用いた偏光板 - Google Patents

セルロースエステルドープ組成物、セルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム及びそれを用いた偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】欠陥を生じにくく、生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法、歩留まりのよい、優れた紫外線吸収性を有し、かつ、高温多湿の環境下でも伸縮性の非常に小さく、保留性もよく、液晶画像表示装置の品質を劣化させない偏光板用保護フィルムを提供する。
【解決手段】溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを形成する際に用いるセルロースエステルドープ組成物において、ビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるモノマーを主とするエチレン性不飽和モノマーを重合したポリマーを含有することを特徴とするセルロースエステルドープ組成物、セルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム及びそれを用いた偏光板。
【選択図】なし

Description

本発明は液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして有用なセルロースエステルフィルムの形成に用いるセルロースエステルドープ組成物、セルロースエステルフィルム、及びその製造方法に関し、更にこのセルロースエステルフィルムを使用した偏光板に関する。
本発明は液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして有用なセルロースエステルフィルムの形成に用いるセルロースエステルドープ組成物、セルロースエステルフィルム、及びその製造方法に関し、更にこのセルロースエステルフィルムを使用した偏光板に関する。
セルローストリアセテートフィルムは透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来から写真フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。液晶画像表示装置素子の偏光板に使用されるセルローストリアセテートフィルムには、優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光膜との良好な接着性、優れた平面性及び紫外線吸収性等の性質が要求されている。紫外線吸収性については、セルローストリアセテートフィルムには紫外線を吸収する性質はなく、液晶画像表示装置の紫外線による劣化を防止するために、セルローストリアセテートフィルム中に紫外線吸収剤が含有されている。また、セルローストリアセテートフィルムの可塑性と耐水性の向上のために、可塑剤が含有されている。何れもドープを調製する段階で添加されている。
近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルム中には欠陥や異物の存在は許されず、そのために厳密に検査が行われ偏光板用保護フィルム、あるいは偏光板の収率の低下の大きな原因となっている。欠陥または異物の中には、セルローストリアセテートフィルム中に含まれている添加剤、例えばフィルム製造中に可塑剤や紫外線吸収剤が析出したり、あるいは揮発したりしてフィルム表面に付着する汚れがあり、これらを除去することが重要な問題となっている。
従来、ドープ中に添加される添加剤には、可塑剤として、リン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、グリコール酸エステル系化合物等、また紫外線吸収剤として、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等、更に酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系の化合物、ヒドラジン系の金属不活性剤、リン系加工安定剤等がある。これらの添加剤は、無限移行する無端の金属支持体(以降、単に金属支持体ということがある)上にドープを流延してから、有機溶媒の蒸発と共にウェブの表面に移行し始め、乾燥が終了するまでの間のあらゆるところで、ウェブ表面に析出して接触するロールに転写したり、またウェブから揮発して、乾燥装置の壁などにコンデンスして蓄積し、そこからたれ落ちウェブを汚染する。可塑剤はセルロースエステルフィルムの可塑剤として役に立っているばかりでなく、耐水性を付与している。特にリン酸エステル系化合物はその傾向がある。
このような析出や揮発の現象は、これらの可塑剤や紫外線吸収剤が低分子化合物のために移動し易いと考えられており、これらが起こり難い高分子化合物を可塑剤として使用した例が記載されて(例えば、特許文献1〜7参照)いる。これらの高分子可塑剤としてのポリエステルエーテル、ポリエステルウレタン及びポリエステル等は、特許文献5にあるように、セルロースエステルフィルムに可塑性を付与という機能はほぼ達成されるが、ポリマー自体が長期保存下で、劣化し、着色したりするという欠点がある。これらを予防するために、特許文献5では、劣化防止剤として、過酸化物分解剤、ラジカル連鎖禁止剤、金属不活性化剤、酸捕捉剤から選ばれる少なくとも1種をセルロースエステルフィルム、下引層、バック層、現像処理液、後処理液に含有させる技術が記載されている。しかしながら、これらのものをセルロースエステルドープに添加することにより、新たにこれらが揮散して汚染の原因となり易い。特許文献7にはポリメチルアクリレートあるいはメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて溶解性、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術が記載されている。別に、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術等が公開されているが(例えば、特許文献8参照)、イオン化照射をすることにより、分子の切断などが起こり不必要なあるいは有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。
また、フィルム中あるいは表面にある欠陥や異物の存在は収率の低下を来す。これらはフィルム製造中あるいは製造後の取り扱い中に起こる帯電によりゴミが付着するケースもある。このような帯電を防止するためには、一般に、ハロゲン化銀写真感光材料においては、セルロースエステルフィルム表面に帯電防止層を塗設することが行われているが、偏光板用保護フィルムの場合には、後でフィルム表面をアルカリ鹸化したり、その上に偏光膜を貼り合わせるため、帯電防止層を直接設けることは出来ない。
最近、液晶画像表示装置はカーナビゲーションのように車両の中、あるいは小型液晶テレビのように屋外でも使用されるようになって来た。そのため今まで要求されていない性質、例えば、夏の日中閉じられた車内での高温多湿に耐える性質、また液晶の劣化を助長する紫外線に対して更なる紫外線を吸収する性質等が要求されている。
特公昭47−760号公報 特公昭43−16305号公報 特公昭44−32672号公報 特開平2−292342号公報 特開平5−197073号公報 米国特許第3,054,673号明細書 米国特許第3,277,031号明細書 米国特許第3,738,924号明細書
上記のような欠陥を引き起こすコンデンスを排除するためには、フィルム製造ラインを止めて時間をかけて清掃しなければならいため、生産性が低下するばかりでなく、またフィルムに付着した汚れ等欠陥をチェックする検査をしたり、欠陥のある箇所を切除する等の作業増、欠陥個所を切除することによる歩留まりの低下等、これら全てコストアップの要因となる。また、高温多湿の条件下ではフィルムの劣化はもとより、特に熱及び湿度に対してフィルムが収縮したり延びたり、フィルム内の有効成分が減少(このことを保留性という)したり、更に液晶画像表示装置が高温多湿の状態で放置された場合、現在のドープ組成で形成したセルロースエステルフィルムから作製した偏光板は縁の部分から犯され縁の白抜けという現象が起こる可能性があり、液晶画像表示装置の品質が問題となる虞がある。
本発明は、上記の如き課題に対してなされたものであって、第一の目的は、セルロースエステルフィルムの製造中にウェブから析出物または揮発物が発生しにくいセルロースエステルドープ組成物を提供することにある。第二の目的は、欠陥を生じにくく、品質的にまた生産性に優れ歩留まりの良いセルロースエステルフィルムの製造方法、第三の目的は、吸水性が小さく、高温多湿の環境下でも伸縮性の非常に小さく、保留性に優れ、紫外線吸収性が劣化し難く、更に異物や欠陥の殆どない偏光板用保護フィルムを提供することにある。そして第四の目的は、高温多湿の状態でも縁の白抜けが起こり難く耐久性に優れ、異物や欠陥がほとんどない良質の偏光板を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを形成する際に用いるセルロースエステルドープ組成物において、ビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるモノマーを主とするエチレン性不飽和モノマーを重合したポリマーを含有することを特徴とするセルロースエステルドープ組成物。
2.官能基が紫外線吸収性基及び/または帯電防止性基であることを特徴とする前記1に記載のセルロースエステルドープ組成物。
3.微粒子を含有することを特徴とする前記1または2に記載のセルロースエステルドープ組成物。
4.該微粒子が、表面にメチル基を有する酸化ケイ素を含有する化合物からなることを特徴とする前記3に記載のセルロースエステルドープ組成物。
5.前記1乃至4の何れか1項に記載のセルロースエステルドープ組成物を溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを形成することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
6.前記5に記載の製造方法で形成したことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
7.前記6に記載のセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
製造工程を汚さず、フィルム自体の汚れや異物が少なく、高温高湿したでも安定な、且つ歩留まりに優れたセルロースエステルフィルムを開発し、液晶表示装置用のセルロースエステルフィルム、特に偏光板用保護フィルムに有用なセルロースエステルフィルムを提供出来る。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
始めに、本発明に係る溶液流延製膜方法によるセルロースエステルフィルムの製造方法を説明する。
本発明に係るセルロースエステルはアシル基の置換度が2.5〜3.0のもので、アシル基がアセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選ばれる少なくとも一つのものである。具体的にはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等を挙げることが出来、本発明においては、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。アセチル基を含む場合は機械的性質を維持するために、アセチル基の置換度が1.4以上であることが好ましい。セルロースエステルはその原料となるセルロースは特に限定はなく、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを用いることが出来る。これらを混合して使用してもよい。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には、単独で使用することが最も好ましい。セルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96により測定することが出来る。セルロースエステルの数平均分子量は、偏光板用保護フィルムとして好ましい機械的強度を得るためには、70000〜300000が好ましく、更に80000〜200000が好ましい。
本発明のセルロースエステルドープ中には従来から使用されている低分子の可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を本質的に含まず、ポリマーを含有するセルロースエステルドープまたはウェブ中で光重合して形成するポリマーを含有するようなドープ組成物を製膜する。従って、本発明の特徴は、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等がウェブからの析出や揮発は起こらないことである。しかし若干の量であれば、低分子の可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を析出しない程度に補助的に添加してもかまわない。本発明において補助的に添加出来る低分子可塑剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系可塑剤として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤として、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、グリコレート系可塑剤として、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を好ましく用いることができる。これらの可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることが出来る。また本発明において、補助的に添加出来る紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。光に対しする安定性を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のTINUVIN109(UV−1とする)、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328等を好ましく用いることが出来るが、低分子の紫外線吸収剤は使用量によっては可塑剤同様に製膜中にウェブに析出したり、揮発する虞があるので、その添加量は3〜10質量%程度である。
本発明に係るセルロースエステルドープの調製方法は、セルロースエステルを溶解し得る有機溶媒(良溶媒)に溶解してドープを形成する。セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来る。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%が好ましい。
本発明において、ドープ組成物を形成する際に用いるセルロースエステルの良溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、塩化メチレン等を挙げることが出来る。中でも酢酸メチル、エチレンクロリドが好ましく使用し出来る。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。また上記のセルロースエステルを溶解し得る有機溶媒に、上記の低級アルコールやシクロヘキサンのセルロースエステルに対する貧溶媒を5〜30質量%混合して用いることによって金属支持体上に流延した後にドープ膜をゲル化(固化)することが出来、早く金属支持体から剥離出来、製膜速度を速めることが出来る。
本発明のセルロースエステルドープ組成物は、大きく分けて三つある。その一つは、エチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するエチレン性不飽和モノマー及び光重合開始剤を含有するセルロースエステルドープ組成物である。二つ目は、エポキシ基を有する化合物及び/またはエポキシ基と官能基を有する化合物及び光重合開始剤を含有するセルロースエステルドープ組成物である。上記二つのドープ組成物を無限移行する無端の金属支持体上に流延し、その流延直後から乾燥終了までの間でウェブに紫外線照射により光重合させウェブ中にポリマーを形成させることの出来るドープ組成物である。他の一つのドープ組成物は、ビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるモノマーを主とするエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマーを予め重合しておいたポリマーをセルロースエステルと共に有機溶媒に溶解したポリマーを含有しているセルロースエステルドープ組成物である。
本発明のセルロースエステルドープ組成物に用いられるポリマー、またはウェブ中に光重合して形成するポリマーは、ウェブまたはフィルム中で、凝集したり、海島構造のような相分離状態とはなりにくく、元のセルロースエステルフィルムと同等またはそれ以上の機械的性質や光学的性質を有するようなものなら制限なく使用出来る。本発明のセルロースエステルフィルム中に含有されるポリマーのガラス転移点(以降Tgとする場合がある)は50℃以下のものが好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルム中に含有されるポリマーはセルロースエステルとかなり相溶性がよいもので、セルロースエステルフィルムに対して耐水性や耐透湿性等を発現させるものが好ましい。本発明に有用なポリマーは、数平均分子量が1000〜300000、好ましくは1500〜250000、より好ましくは2000〜100000であり、分子量の小さい方はブリードアウトしにくい程度の分子量範囲を持つのものが好ましい。
本発明において、セルロースエステルドープ組成物にエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するエチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を含有させ、流延後ウェブ内でエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するエチレン性不飽和モノマーが光重合してポリマーを生成し、そのポリマーが出来上がったセルロースエステルフィルムに耐水性を付与することも出来る。有用な光重合ポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエステル類として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル等、アクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類(以降、アクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類を、(メタ)アクリル酸エステル類のように略して記載することがある)として、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等、ビニルエーテル類として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等、スチレン類として、スチレン、4−〔(2−ブトキシエトキシ)メチル〕スチレン、4−ブトキシメトキシスチレン、4−ブチルスチレン、4−デシルスチレン、4−(2−エトキシメチル)スチレン、4−(1−エチルヘキシルオキシメチル)スチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−ヘキシルスチレン、4−ノニルスチレン、4−オクチルオキシメチルスチレン、2−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、4−プロポキシメチルスチレン、マレイン酸類として、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、ジプロピルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、ジシクロヘキシルマレイン酸、ジ−2−エチルヘキシルマレイン酸、ジノニルマレイン酸、ジベンジルマレイン酸等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
上記モノマーの他にも、エチレン、プロピレン、ブタジエン、1−ブチレン、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、無水マレイン酸、アクリル酸、上記以外のビニルモノマーとして、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を10質量%以下で上記モノマーとコポリマーを形成してもよい。これらのモノマーのうち、そのホモポリマーのTgが50℃以下のものはセルロースエステルに対して可塑性を付与し得るが、それ以上のTgを有するホモポリマーを形成するモノマーの場合には、コポリマーのTgが50℃以下になるようにコモノマーを選択してコポリマーを形成させればよい。また、そのTg以下のモノマーでも任意の割合でコポリマーを形成するのが好ましい。
ポリマーのTgは、種々な方法で測定出来るが、POLYMER HANDBOOK(THIRD EDITION)J.BRANDRUOP & E.H.IMMERGUT編集(JHON WILEY & SONS発行)のVI−209頁に掲載されているホモポリマーのTgにより知ることが出来、更にコポリマーのTgは、J.BRANDRUOPら編集、POLYMER HANDBOOK(1966)III−139〜179頁、(JHON WILEY & SONS発行)に記載の方法で求めたものである。コポリマーのTg(°Kで表される)は下記の式でも求められる。
Tg(コポリマー)=vTg+vTg+……+vTg
式中、v、v……vはコポリマー中の各モノマーの質量分率を表し、Tg,Tg……Tgはコポリマー中の各モノマーのホモポリマーのTgを表す。
本発明においてより好ましいモノマーとしては、ビニルエステルであり、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ソルビン酸ビニルであり、また、その他メチルルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、プロピルマレイン酸、ブチルマレイン酸も好ましいモノマーである。本発明の構成(8)でいうビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマーを主とするというのは、ビニルエステル及び/またはアクリル酸エステルが全体のエチレン性不飽和モノマー中40質量%以上を占めることで、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。ここでいうビニルエステルは上記の他、下記紫外線吸収性基あるいは下記帯電防止性基を有するビニルエステル及び/またはアクリル酸エステルも含む。
本発明に有用な官能基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、ポリマーの側鎖に紫外線吸収性基や帯電防止性基を有しているものが好ましい。コポリマーとしてTgが50℃以下になるような基であれば制限なく用いられる。官能基を有するエチレン性不飽和モノマーのエチレン性基としては、ビニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基で、これらは好ましく用いられる。
本発明に有用な紫外線吸収性基を有するエチレン性不飽和モノマーの紫外線吸収性基としては、ベンゾトリアゾール基、サリチル酸エステル基、ベンゾフェノン基、オキシベンゾフェノン基、シアノアクリレート基等を挙げることが出来、本発明においては何れも好ましく用いることが出来る。特に光反応性が少なく、且つ殆ど着色のないベンゾトリアゾール基を有するモノマーが好ましい。
下記に本発明に有用な紫外線吸収性基を有するエチレン性不飽和モノマーを例示する。この他に、本発明において、特開平6−148430号公報に記載の紫外線吸収性ポリマーを構成する紫外線吸収性モノマーも好ましく用いることが出来る。
Figure 2009197247
Figure 2009197247
Figure 2009197247
本発明において、紫外線吸収性基を有するエチレン性不飽和モノマーの市販品を用いてもよいし、合成をして得てもよい。市販品としては、例えば、上記UVM−1は、1−ヒドロオキシ−2−(2−ベンゾトリアゾール)−4−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンであり、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93として市販されている。また、1−ヒドロオキシ−2−(2−ベンゾトリアゾール)−4−(2−アクリロイルオキシエチル)ベンゼンも同様に本発明で好ましく用いることが出来る。
本発明に有用な紫外線吸収性基を有するエチレン性不飽和モノマーについて下記に合成例を示す。
合成例
(UVM−1の合成)
トルエン800ml中に1−ヒドロオキシ−2−(2−ベンゾトリアゾール)−4−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン(化合物A)25.5g(0.1mol)とピリジン17ml(0.21mol)を加え、そこへトルエン10mlに溶かしたメタクロイルクロリド13ml(0.128mol)を約30分かけて滴下した。室温で約1時間撹拌後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで反応液を乾燥させた後、濾別して、減圧濃縮した。残査をメタノールとメチレンクロリドの混合溶媒から再結晶し、UVM−1を22.3gを得た。目的物の構造はH−NMR及びIRで確認した。
(UVM−6の合成)
トルエン中に1−ヒドロオキシ−2−(2−ベンゾトリアゾール)−4−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)ベンゼン(化合物B)28.3g(0.1mol)とジメチルホルムアミド0.2mlを加えた。次いでオキザリルクロリド13.0ml(0.15mol)を室温で滴下した。約1時間撹拌した後、減圧濃縮を行い、白色固体を得た。この白色固体をピリジン8.9ml(0.11mol)とテトラヒドロフラン200mlに溶解し、そこへテトラヒドロフラン50mlに溶解させた4−ヒドロキシ安息香酸ビニルエステル18.0g(0.11mol)を約30分かけて滴下した。約1時間ご撹拌した後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾別して、減圧濃縮を行いシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、UVM−6を21.8gを得た。目的物の構造はH−NMR及びIRで確認した。
本発明における光重合したポリマーを構成する紫外線吸収性基を有するモノマー単位の割合は、ポリマーのセルロースエステルとの相溶性、セルロースエステルフィルムの機械的性質または物理的性質が同等またはそれ以上の性質、あるいは十分な紫外線吸収性能を有するのであれば、如何なるものであってもよく(1〜100質量%の範囲でよく)、ホモポリマーでもコポリマーであってもよい。
本発明に有用な帯電防止性基を有するエチレン性不飽和モノマーの帯電防止性基としては、4級アンモニウム基、スルホン酸塩の基、ポリエチレンオキサイド基等を挙げることが出来るが、溶解性や帯電性能の観点から4級アンモニウム基が好ましい。
下記に本発明に有用な帯電防止性基を有するエチレン性不飽和モノマーを例示する。
Figure 2009197247
Figure 2009197247
下記に本発明に有用な帯電防止性基を有するエチレン性不飽和モノマーの合成例を例示する。
合成例
(ASM−1の合成)
封管中にトルエン50mlと4−ビニルベンジリルクロリド14.2ml(0.1mol)とトリメチルアミン9.0ml(0.1mol)とt−ブチルカテコール1.7g(0.01mol)を入れ、約70℃で48時間加熱した。固体を濾過して取り出し、アセトンで洗浄し、ASM−1を12.1gを得た。目的物の構造はH−NMR及びIRで確認した。
(ASM−2の合成)
封管中にトルエン50mlとトリエチレンジアミン(DABCO)11.2g(0.1mol)とエチルクロリド7.2ml(0.1mol)を入れ、約70℃で72時間加熱した。固体を濾過し、エチルエーテルで洗浄し、N−エチルトリエチレンジアミン・モノアンモニウムクロリド(化合物C)を得た。エタノール50ml中に4−ビニルベンジルクロリド7.1ml(0.05mol)と化合物C10.6g(0.05mol)とt−ブチルカテコール0.9g(0.005mol)を加え、48時間加熱環流した。固体を濾過し、アセトンで洗浄し、ASM−2を7.3g得た。目的物構造はH−NMR及びIRで確認した。
(ASM−4の合成)
テトラヒドロフラン200ml中に2−クロロエタノール6.7ml(0.1mol)とピリジン8.9ml(0.2mol)を加え、そこへテトラヒドロフラン50mlに溶かしたメタクリルクロリド10.7ml(0.11mol)を約30分かけて滴下した。室温で約1時間撹拌した後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出した。濾別し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮を行い、2−クロロエチルメタクリレートを得た。一方、エタノール100mlにDABCO11.2g(0.1mol)とベンジルクロリド11.5ml(10.1mol)を加え24時間加熱環流した。固体を濾過し、アセトンで洗浄し、N−エチル−DABCO・モノアンモニウムクロリド(化合物D)を得た。エタノール中に化合物D11.9g(0.05mol)と2−クロロエチルメタクリレート7.4g(0.05mol)とt−ブチルカテコール0.9g(0.005mol)を加え、48時間加熱環流した。固体を濾過し、アセトンで洗浄し、ASM−4を10.5が得た。目的物の構造はH−NMR及びIRで確認した。
本発明における光重合して得られるポリマーに対する帯電防止性基を有するエチレン性不飽和モノマーの割合は、セルロースエステルフィルムの吸水性、耐久性、可塑性、必要な帯電防止性等から40質量%以下でよく、好ましくは5〜30質量%である。
本発明に有用な光重合開始剤としては、エチレン性不飽和モノマーがウェブ中で光重合し得る開始剤であれば制限なく使用できるが、これらの光重合開始剤は公知のものを使用し得る。また光増感剤も使用出来る。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインシリルエーテル、メチルベンゾインホルメート、ベンジル、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、アセトフェノン、ミヒラーズケトン、α,α′−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジアセチル、エオシン、チオニン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロペン、ジクロロチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、フェニルジスルフィド−2−ニトロソフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルチアゾリルスルフィド、α−アミロキシムエステル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることが出来る。本発明において、セルロースエステルドープ組成物中にエチレン性不飽和モノマーと共に光重合開始剤を混合するが、セルロースエステルに対してエチレン性不飽和モノマーを5〜30質量%、また光重合開始剤をエチレン性不飽和モノマーに対して1〜30質量%程度加えるのがよい。本発明においては、光重合性のエチレン性不飽和モノマーをセルロースエステルドープ組成物流延後、有機溶媒を多く含むウェブにおいても、またかなり乾燥が進んでいてもウェブ内で光重合を起こさせることが出来るが、金属支持体上で、紫外線を照射して重合させるのが好ましい。
本発明において、エチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を含有するセルロースエステルドープ組成物に二つのエチレン性不飽和基を有する架橋性モノマーを含有させることにより、光重合後、しなやかさと強靱性を兼ね備えたセルロースエステルフィルムを得ることも出来る。この二つのエチレン性不飽和基を有する架橋性モノマーとしては、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート等を挙げることが出来る。市販品として、東亜合成社製のウレタンアクリレート(商品名、M−1310)があり、このものを好ましく用いることが出来る。以下にこれらの化合物を例示する。
Figure 2009197247
Figure 2009197247
これらのポリエステルまたはポリウレタンのジ(メタ)アクリレートは、数平均分子量として、6000〜100000、好ましくは1000〜80000のものである。ここでnは繰り返し単位の繰り返し数である。
セルロースエステルドープ組成物がエポキシ基を有する化合物及び光重合開始剤を含有し、これらのエポキシ基を有する化合物をウェブ内で光重合させることが出来、出来上がったフィルムに可塑性を付与することも出来る。エポキシ基を有する化合物としては、通常接着剤等に使用し得るものを使用することが出来る。本発明に有用なエポキシ基を有する化合物を例示すると、芳香族エポキシ化合物(多価フェノールのポリグリシジルエーテル)としては、水素添加ビスフェノールAまたはビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物のグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂(例えば、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル)、レゾールエポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル等、脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどがあり、その代表例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、脂環式エポキシ化合物、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3′,4′−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3′,4′−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、ポリグリシジルアクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートと他のモノマーとの共重合物、ポリ−2−グリシジルオキシエチルアクリレート、ポリ−2−グリシジルオキシエチルメタクリレート、2−グリシジルオキシエチルアクリレート、2−グリシジルオキシエチルアクリレートまたは2−グリシジルオキシエチルメタクリレートと他のモノマーとの共重合物、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等を挙げることが出来、2種以上組み合わせて使用することが出来る。本発明においては、上記の化合物に限定せず、これらから類推される化合物も含むものである。
また、本発明において、エポキシ基を分子内に2つ以上有するもの以外に、モノエポキサイドも所望の性能に応じて配合して使用することが出来る。
本発明における紫外線重合性のエポキシ基を有する化合物は、ラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合物、架橋構造物または網目構造物を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため誘導期間がなく重合を速く行うことが出来る。
本発明に有用なエポキシ基を有する化合物は、紫外線照射によりカチオン重合を開始する物質を放出する化合物が触媒になってイオン重合反応が進行する。紫外線照射によりカチオン重合を開始するものとしてはルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
かかる代表的なものは下記一般式(I)で表される化合物である。
一般式(I)
〔(R(R(R(RZ〕+w〔MeXv+w−w
ここで、式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えばI、Br、Cl)、またはN=N(ジアゾ)であり、R 、R 、R 、R は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。
上記一般式(I)の陰イオン〔MeXv+w−wの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF )、ヘキサフルオロアルセネート(AsF )、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl )等を挙げることが出来る。
更に一般式MX(OH)の陰イオンも用いることが出来る。また、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO )、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO )、フルオロスルホン酸イオン(FSO )、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼン酸陰イオン等を挙げることが出来る。
このようなオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが、特に有効であり、中でも特開昭50−151996号、同50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、同52−30899号、同59−55420号、同55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、同56−149402号、同57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特公昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書等に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることが出来る。上記カチオン重合開始剤と、前記ベンゾフェノン及びその誘導体、前記ベンゾイン及びその誘導体、前記チオキサントン及びその誘導体等の光増感剤を併用することが出来る。この増感剤は近紫外線領域から可視光線領域に吸収極大のあるものが好ましい。
セルロースエステルドープ中にエポキシ基を有する化合物と共に光重合開始剤及び/または光増感剤を混合することもできるが、セルロースエステルに対してエポキシ基を有する化合物が5〜30質量%、また光重合開始剤がエポキシ基を有する化合物に対して1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%である。
本発明において、有用なエポキシ基と紫外線吸収剤を有する化合物を光重合開始剤と混合してドープとしてもよいし、エポキシ基を有する化合物と共に混合してドープとしてもよい。
本発明に有用なエポキシ基と紫外線吸収性基を有する化合物の紫外線吸収性基としては、ベンゾトリアゾール基、サリチル酸エステル基、ベンゾフェノン基、オキシベンゾフェノン基、シアノアクリレート基等を挙げることが出来、本発明においては何れも好ましく用いることが出来る。特に光反応性が少なく、且つ殆ど着色のないベンゾトリアゾール基が好ましい。
下記に本発明に有用なエポキシ基と紫外線吸収性基を有する化合物を例示する。
Figure 2009197247
本発明において、エポキシ基と紫外線吸収性基を有する化合物を含有するセルロースエステルドープを溶液流延製膜過程において製膜し、紫外線照射したウェブからは、紫外線吸収剤が析出あるいは揮発することがないため生産性よく、品質に優れた液晶画像表示装置用の偏光板用保護フィルムを得ることも出来る。また、このエポキシ基と紫外線吸収性基を有する化合物のポリマーが前記の如くセルロースエステルに対して耐水性を合わせ持つことがより好ましく、ポリマーのTgを50℃以下とすることが好ましい。
本発明における光重合したポリマーを構成する紫外線吸収性基を有する化合物単位の割合は、ポリマーのセルロースエステルとの相溶性、セルロースエステルフィルムの機械的性質または物理的性質が同等またはそれ以上の性質、あるいは十分な紫外線吸収性能を有するのであれば、如何なるものであってもよい(1〜100質量%の範囲でよい)。
本発明において、紫外線吸収性基を有しエポキシ基を有する化合物の合成例について下記に例示する。
合成例
(UVE−1の合成)
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(化合物C)30.2g(0.1mol)、化合物A12.8g(0.05mol)及びテトラメチルアンモニウムクロリド0.24g(2.5mol)をトルエン50mlに溶かし、約2時間加熱環流を行った。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出を行った。この液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮を行い、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、UVE−1を得た。目的物の構造はH−NMR及びIRで確認した。
本発明において、セルロースエステルドープ中にエポキシ基を有する化合物と共に光重合開始剤(場合によっては光増感剤も)を混合する場合は、セルロースエステルに対してエポキシ基を有する化合物が5〜30質量%、また光重合開始剤がエポキシ基を有する化合物に対して1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%である。
ここで、本発明のセルロースエステルフィルムを溶液流延製膜装置により製膜する方法、特に製膜中に紫外線を照射する方法について説明する。
上記の如きエチレン性不飽和モノマーまたはエポキシ基を有する化合物を含有するセルロースエステルドープ組成物をダイから金属支持体表面にドープ膜として流延して、金属支持体上で有機溶媒を蒸発させてウェブ(流延以降をドープ膜をウェブという)とし、ウェブを金属支持体が流延から1周する前(残留溶媒量として30〜150質量%の時)で剥離する。金属支持体は、研磨された鏡面を有するステンレスベルトまたはドラムである。金属支持体上でのウェブの加熱は、ウェブの表面に熱風を与えたり、金属支持体裏面から気体伝熱また金属支持体の裏面からの液体伝熱によって行われる。また、金属支持体を20℃以下に冷却してドープ膜を固化してあまり乾燥させずに金属支持体から剥離する方法もある。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
ウェブを剥離後、千鳥状に配置したロールにウェブを通して搬送する乾燥機及び/またはウェブの両端をクリッピングして搬送する乾燥機でウェブを乾燥してセルロースエステルフィルムを作製する。乾燥装置内でのウェブの乾燥温度は80〜150℃で行うが、ウェブの収縮などからその時点での剥離残留溶媒量が少なくなるのに応じて高くするのがよい。加熱方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線照射、加熱ロール接触、マイクロ波照射等を挙げることが出来、適宜使い分ければよい。剥離後にロール乾燥装置ばかりでなく、ウェブの両端を把持するテンター乾燥装置でウェブを幅方向を縮まないように保持するか、若干延伸してもよい。テンター乾燥装置としては、ピンテンター方式またはクリップテンター方式のいずれでもよく、液晶表示装置用のセルロースエステルフィルムとしては、テンター乾燥装置を使用して、0.5〜5%程度横方向に延伸するのが好ましい。本発明の光重合用の紫外線照射は、ドープを流延してから、ウェブの乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよく、特にウェブが金属支持体上にある時に照射することが好ましく、有機溶媒がウェブ中に適度に存在することにより分子の移動が容易で、重合がスムースに進行し易い。
本発明に係るエチレン性不飽和モノマー及びエポキシ基を有する化合物を光重合させる紫外線照射源は低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光線等を挙げることが出来る。紫外線を照射による光重合は、空気または不活性気体中で行うことが出来るが、エチレン性不飽和モノマーを使用する場合には、空気中でもよいが、重合の誘導期を短くするために出来るだけ酸素濃度が少ない気体が好ましい。照射する紫外線の照射強度は0.1〜100mW/cm程度が良く、照射量は100〜20000mJ/cm程度が好ましい。
本発明の予めエチレン性不飽和モノマーを重合して得たポリマーを含有するセルロースエステルドープ組成について述べる。
これらのポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマーとしては、前記のエチレン性モノマーと同様なものを挙げることが出来る。これらのうち特にビニルエステルを主とするモノマーが好ましい。エチレン性不飽和モノマーとしては、前記と同様であるが、アクリルエステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステルを使用することが出来るが、特にはビニルエステルを主とするものが好ましい。ポリマーをセルロースエステルドープに添加混合する際、ポリマーがセルロースエステルドープ中に均一に混合することが出来、セルロースエステルフィルムとなった後においても相溶性がよく、相分離しにくいものが好ましい。これらのエチレン性不飽和モノマーの重合方法としては、通常のラジカル重合あるいはカチオン重合による溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の方法で行うことが出来る。また重合後、何れの重合方法も一旦はポリマーを沈殿させて精製した後に溶液にしてドープに添加してもよいが、溶液重合の場合は、重合溶液をそのままドープに添加して用いることが出来る。ポリマーはセルロースエステルドープ組成物に使用する有機溶媒に溶解することが必要である。そのような有機溶媒としては、メチレンクロリド、エチレンクロリド、クロロホルム、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、フルオロアルコール等を挙げることが出来る。特にメチレンクロリド及び酢酸メチルが好ましい。
本発明に有用なポリマーのラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、t−ブチルヒドロキシペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム−と亜硫酸水素ナトリウム、ベンゾイルペルオキシド−硫酸第一鉄アンモニウム、過硫酸アンモニウム−メタ亜硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム−チオ硫酸ナトリウム等通常用いられる開始剤を用いることが出来る。また、カチオン重合開始剤としては、BF、AlCl、TiCl、SnCl、SnCl等のルイス酸と水、アルコール、カルボン酸、エーテル、ハロゲン化炭化水素等の不対電子を有する共触媒、硫酸、リン酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸、あるいは、I、BFO(C、AgClO<(CCCl等のカチオンを生成し易い物質を挙げることが出来る。
溶液重合の場合の有機溶媒としては、連鎖移動を起こし難いものであれば何れも用いることが出来る。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチレンクロリド等を挙げることが出来る。乳化重合の場合には、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤何れも使用出来、またポリビニルアルコールのような水溶性ポリマー等も使用出来る。
重合容器は耐圧性のもので、撹拌機、滴下ロート、窒素気流導入管等が付いているものがよい。重合条件は、窒素により空気を置換した系で行うのがよく、重合温度は重合様式により異なるが、ラジカル重合では−10〜100℃の範囲が適切である。カチオン重合では、重合反応が激しいため、極低温例えば−150〜−50℃で行うことが多い。
下記に本発明に有用なポリマーを示すが、これらに限定されない。
Figure 2009197247
Figure 2009197247
Figure 2009197247
ここで、x、y、zは1〜100の正の整数であり、x+y+z=100である。但しP−4〜8及びUVP−7のyは1〜50である。
本発明においては、上記の紫外線吸収性基を有するポリマー(UVP−1〜7)の他に特開平6−148430号公報に記載のものも本発明において好ましく用いられる。
(重合例)
(P−1の重合)
酢酸ビニルモノマー36gとラウリン酸ビニルモノマー4gを100mlの三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を3回行った。窒素下脱水テトラヒドロフラン60mlに溶解し、加熱環流した。この溶液にα,α′アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)30mgのテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱環流し重合を行った。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、最小のテトラヒドロフランに溶解し、水で再沈殿した。析出物を濾取し、P−1を得た。P−1の各モノマー単位の質量比(酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル)は90/10であった。またP−1の重量平均分子量をGPCにより測定した結果16800であった。
(UVP−1の重合)
酢酸ビニルモノマー16g、ラウリン酸ビニルモノマー8g及び16gのUVM−1モノマーを100mlの三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を3回行った。窒素下脱水テトラヒドロフラン60mlに溶解し、加熱環流した。この溶液にAIBN30mgのテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱環流し重合を行った。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、最小のテトラヒドロフランに溶解し、水で再沈殿した。析出物を濾取し、UVP−1を得た。UVP−1のモノマー単位の質量比(x/y/z)は40/20/40であった。UVP−1の重量平均分子量をGPCにより測定した結果24400であった。
(ASP−1の重合)
酢酸ビニルモノマー24g、16gのASM−1モノマーを100mlの三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を3回行った。窒素下脱水テトラヒドロフラン60mlに溶解し、加熱環流した。この溶液にAIBN30mgのテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱環流し重合を行った。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、最小のテトラヒドロフランに溶解し、水で再沈殿した。析出物を濾取し、ASP−1を得た。ASP−1のモノマー単位の質量比(x、y)は60/40であった。ASP−1の重量平均分子量をGPCにより測定した結果32000であった。
本発明のセルロースエステルフィルムは、低分子可塑剤や紫外線吸収剤を実質的に含有しないため、製造中のウェブから析出または揮発するものがないので、ウェブを汚すこともなく、また液晶表示装置となった後、密閉された自動車内の高温多湿状態においてもほとんどフィルムから析出または揮発することもないので、理想的なフィルムといえる。
高温多湿条件でフィルムから物質が析出や揮発することによる質量の変化を示す保留性は、ほとんど零であることが好ましいが、フィルム中に残留溶媒があるため、若干の質量の減少はやむを得ない。本発明における保留性は1.0%以下が良く、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。
また、高温多湿に対するセルロースエステルフィルムの寸法安定性も改良され、発明のポリマーを含有しないセルロースエステルフィルムより寸法変化率が小さくなっている。本発明のセルロースエステルフィルムの寸法変化率は80℃、90%RHの高温高湿下、50時間の処理において、±1.0%以内であることが好ましく、より好ましくは±0.5%以内、更に好ましくは±0.4%以内であり、特に好ましくは±0.3%以内であることが特に好ましい。
上記のような高温高湿の性質は、基本的には、それが全てではないが、吸水性に左右される場合が多い。本発明のポリマーを含有するセルロースエステルフィルムはそれらを含まないフィルムより吸水性が小さく優れた性質を有している。一般にセルロースエステルフィルムの吸水率は高湿下で約3質量%弱であるに対して、本発明のセルロースエステルフィルムは2質量%以下が好ましい。
紫外線吸収基を有するポリマーを含有する本発明のセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収性物質の減少がなく、有効に紫外線をカット出来る。また高温高湿下においても紫外線吸収性能の劣化のない。
また、本発明のセルロースエステルフィルムが帯電防止基を有するポリマーを含有することによって、製造中または取り扱い中におけるゴミなどの異物を吸着し難く、歩留まりのよいフィルムを提供出来る。
本発明のセルロースエステルフィルムがポリマーを含有することによって、フィルムの厚さを増すことなくレターデーションが改良され、優れたレターデーションを示すこともわかった。
更に、セルロースエステルフィルム製造過程において、従来の製造中における可塑剤のフィルムの厚み方向への移動が起因しているフィルムのカールも、本発明のポリマーを含有するセルロースエステルフィルムは、移動がないためカールも発現しにくく、良好な平面性を持つことが出来る。
本発明のポリマーを含有するセルロースエステルフィルムは、上記の他、ポリマーを含有しない通常のセルロースエステルフィルムと物理的、機械的または化学的な性質が同等またはそれ以上の性質を有している。
本発明のセルロースエステルドープ組成物は、微粒子のマット剤を含有させることが好ましく、製膜した後の偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムに、微粒子のマット剤が存在することによって、適度の滑りと耐擦り傷が付与させる。微粒子のマット剤はセルロースエステルドープ中に混合・分散して用いる。微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物、特にメチル基を有する化合物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため本発明においては好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメトキシシラン)、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばAEROSIL 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
更に、本発明のセルロースエステルフィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
本発明に係る偏光膜は、例えばポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系ポリマーの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させてヨウ素や二色性色素で染色したものを更に一軸延伸してから、ホウ素化合物のような架橋剤で耐水性処理を行ったものである。
本発明の偏光板は、前述のように、表面を鹸化した本発明のセルロースエステルフィルムを前記偏光膜の少なくとも片面に張り合わせたものである。
本発明に係る偏光膜の作製と偏光膜への張り合わせ方の1例を示すと、2枚の鹸化処理したセルロースエステルフィルムの各々の片面に接着剤液としてのポリビニルアルコール水溶液を塗布して、その面に、一軸延伸ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬してから更に一軸延伸した偏光膜をサンドウィッチして貼り合わせる。接着剤液としては、ポリビニルアルコール水溶液、ポリビニルブチラール溶液等のポリビニルアルコール系の接着剤液やブチルアクリレートなどのビニル重合系ラテックス等を挙げることが出来るが、好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液である。セルロースエステルフィルムと延伸されたポリビニルアルコールとを貼り合わせた偏光板において、ゴミがあることによって、歩留まりが低下するが、偏光クロスニコルの暗視野状態で異物は光って観察されるので、異物の存在が明確になり、このような状態は偏光板としては好ましくない。偏光板中に異物が実質的に全くないことが好ましいが、面積250mm当たり、実質的には5〜50μmの大きさの異物が200個以下で50μm、以上の異物が零個であることが許容範囲であり、好ましく5〜50μmの異物が100個以下、より好ましくは50個以下である。フィルムに存在する異物の一部は製膜する前のドープの濾過精度にも依存する。
また、偏光板を高温高湿の状態に曝した場合、偏光板の縁から白くなることがあるが、本発明においてはほとんどこのような現象が起こらない。
本発明のセルロースエステルフィルムの厚さは、液晶画像表示装置に用いられる偏光板の薄膜化、軽量化等の要望から、30〜150μmで、好ましくは35〜85μmである。本発明のセルロースエステルフィルムは液晶画像表示装置に使用される部材、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等である。その中でも寸法安定性に対して厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、視野角向上フィルムに適している。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
〔参考例1〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 5質量部
ラウリン酸ビニル 5質量部
ベンゾイン 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例2〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 4質量部
ステアリン酸ビニル 5質量部
UVM−1 3質量部
ジエトキシベンゾフェノン 1質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例3〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
UVM−5 7質量部
UVM−1 3質量部
ベンゾイン 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例4〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
メチルアクリレート 5質量部
酪酸ビニル 2質量部
ASM−2 3質量部
ベンゾイン 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例5〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 4質量部
ステアリン酸ビニル 3質量部
ベンジルアクリレート 2質量部
メチルアクリレート 1質量部
ジエトキシベンゾフェノン 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例6〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 5質量部
ASM−4 3質量部
ASM−1 2質量部
ベンジルアクリレート 0.5質量部
ジエトキシベンゾフェノン 1質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例7〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 4質量部
ステアリン酸ビニル 3質量部
UVM−1 3質量部
M−1310(ウレタンアクリレート、東亜合成社製) 1質量部
メチルアクリレート 0.5質量部
ジエトキシベンゾフェノン 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例8〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
7質量部
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル 5質量部
4,4′−ビス(ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ)
フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 1質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例9〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル 7質量部
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
4質量部
UVE−1 2質量部
4,4′−ビス(ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ)
フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 3質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例10〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル 5質量部
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
4質量部
UVE−1 3質量部
4,4′−ビス(ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ)
フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 3質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
〔参考例11〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
UVE−1 8質量部
4,4′−ビス(ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ)
フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 3質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例12〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
P−1 10質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例13〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
UVP−1 10質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例14〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
ASP−1 10質量部
AEOSIL R−972 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例15〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
P−3(質量比x/y=80/20)(重量平均分子量56000)
4質量部
UVP−3(質量比x/y=60/40)(重量平均分子量35000)
4質量部
ASP−2(質量比x/y=60/40)(重量平均分子量21000)
3質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例16〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
P−3(質量比x/y=80/20)(重量平均分子量56000)
7質量部
ASP−1 3質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例17〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
P−11(重量平均分子量54000) 10質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔実施例18〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
P−12(重量平均分子量38500) 10質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔比較例1〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
トリフェニルホスフェート 10質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔比較例2〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
トリフェニルホスフェート 10質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
トリメチルセチルアンモニウムクロリド 8質量部
AEROSIL 200V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔比較例3〕
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150
000) 100質量部
酢酸ビニル 5質量部
ラウリン酸ビニル 5質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
メチレンクロリド 475質量部
エタノール 25質量部。
〔比較例4〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
8質量部
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル 6質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
〔比較例5〕
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分
子量100000のセルロースアセテートプロピオネート 100質量部
トリフェニルホスフェート 10質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド 1質量部
AEROSIL R972V 0.1質量部
酢酸メチル 475質量部
エタノール 25質量部。
(製膜)
参考例1〜11、実施例12〜18及び比較例1〜5の処方のドープ組成物を下記のように調製した。各々を加圧密閉容器に投入し、45℃に加温して容器内圧力を1.2気圧とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させドープ組成物(以降ドープとする)を得た。ドープ温度を35℃まで下げて一晩静置し、このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、更に一晩静置し脱泡した。次いで日本精線(株)製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力1.0×10Paで濾過し製膜に供した。濾過して得られた35℃のドープを用いてハンガータイプのダイから22℃の無限移行する無端のステンレスベルト上に流延して製膜した。参考例1〜11については、ステンレスベルト上でウェブに、40℃の風を当てながら、8個の2kWの高圧水銀灯を15cm離れた距離から照射し、光重合を起こさせウェブ中にポリマーを生成させた。この高圧水銀灯には、反射板及び冷却装置が付いている。ステンレスベルト上でのウェブの任意の位置の全照射量を300mj/cmとした。実施例12〜18、及び比較例1〜5については、ステンレスベルト上のダイがある側の空気側から40℃、風速10m/秒を風を進行方向に向けて斜め40°の角度で当てた。全てのウェブについて、残留溶媒量25質量%でウェブを剥離後、3本のロールを通した後、特開昭62−115035号公報に記載されているようなピンクリップでウェブの両端を把持するテンター乾燥装置にウェブを導入して90〜115℃で乾燥し、次にロール乾燥装置で110〜130℃で乾燥し、乾燥されたウェブを残留溶媒量を0.2質量%で巻き取り、60μmのセルロースエステルフィルムを得た。
(偏光板の作製)
製膜した全てのセルロースエステルフィルムを、40℃の2.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で60秒間表面鹸化処理を行い、3分間水洗して乾燥させた。別に120μmの厚さのポリビニルアルコールをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に立て方向に延伸した偏光膜を用意した。この偏光膜の両面に上記表面鹸化処理したセルロースエステルフィルムを完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として貼り合わせ偏光板を作製した。
〔評価〕
(寸法安定性の測定)
鹸化前のセルロースエステルフィルムを23℃、55%RHの部屋で24時間調湿後、同部屋で、セルロースエステルフィルム表面にフィルムの長手方向及びび幅手方向に100mm間隔で2個の十文字の印を付けその寸法を正確に計りその距離をaとし、80℃、90%RHで50時間の熱処理を行い、再び23℃、55%RHの部屋で24時間調湿して2個の印の間の距離をカセトメーターで測定しその値をbとして、下記式により寸法安定性を寸法変化率として求めた。
寸法変化率(%)=〔(b−a)/a〕×100。
(吸水率)
鹸化前のセルロースエステルフィルムを30℃、85%RHの雰囲気に3時間調湿した後にその雰囲気で秤量した質量をdとし、その試料を110℃で3時間加熱して水分をすわないようにして冷却してから秤量した質量をcとして下記式により水分率を求めた。
水分率(質量%)=〔(d−c)/c〕×100。
(レターデーションの測定)
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、縦、横、厚さの各方向の屈折率nx、ny、nzを求める。下記式
Rt値(nm)={(nx+ny)/2−nz}×d
に従って、レターデーション値(Rt値)を算出する。ここで、nxはフィルムの製膜方向に平行な方向での屈折率、nyは製膜方向に対して幅方向に水平な方向での屈折率、nzはフィルムの厚さ方向での屈折率を表す。
(紫外線吸収性能)
製膜したセルロースエステルフィルムの350nmの波長の吸収率を100として、それに対する80℃、90%RHの雰囲気に50時間曝したセルロースエステルフィルムの同様な吸収率の比を%で示し、紫外線吸収性能を評価した。なお、表1において、紫外線吸収基または紫外線吸収剤を含有していないセルロースエステルフィルムについては評価しなかった。
(異物・汚れの観察)
セルロースエステルフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0
〜10個観察された
B:50μm以上の大きさの異物・汚れはなく、50μm未満のものが11
〜30個観察された
C:50μm以上の大きさの異物・汚れが1〜10個観察され、50μm以
下のものが31〜50個観察された
D:50μm以上の大きさの異物・汚れが11〜30個観察され、50μm
以下のものが51〜99個観察された
E:50μm以上の大きさの異物・汚れが31個以上観察され、50μm以
下のものが、100個以上観察された。
(偏光板耐久性)
各々の偏光板から100mm×100mmの大きさの試料を2枚切り出し、80℃、90%RHの雰囲気に50時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
A:白抜け部分が全くなかった
B:白抜けが全体の面積に対して2%未満
C:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上5%未満
D:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満
E:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
(偏光板の異物・欠陥)
25cm×25cmの大きさに切りだした試料を1試料につき5枚準備し、30cm×30cmの大きさのクロスニコルを用意して、異物等による暗黒面に現れる輝きスポット数を観察し、5枚の異物の数の平均を下記のレベルで評価した。
A:全く輝きスポットがなかった
B:小さな輝きスポットが1〜5個観察された
C:小さな輝きスポットが6〜50個観察された
D:輝きスポットが51〜99個観察された
E:輝きスポットが100個以上観察された。
上記各評価の結果を表1に示す。
Figure 2009197247
(結果)
本発明の予め重合してあるポリマーを含有したドープ組成物を流延して乾燥させたセルロースエステルフィルムは、ポリマーを含有することによりリターデーションが優れ、高湿下での吸収した水分率が小さく、寸法安定性において収縮率が小さく、偏光板とした時の高温高湿に曝した状態での耐久性に優れていることがわかった。また、低分子の可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤を含まないため、それらが析出したり、揮発して引き起こす汚れや異物についても、本発明の紫外線吸収性ポリマー、帯電防止性ポリマーはフィルム外への移動はなく、汚れや異物は極端に少ないことがわかった。紫外線吸収性については、低分子のそれよりも少ない分子で同等あるいはそれ以上の性質を示すこともわかった。帯電防止性については、吸湿性の基を含有するため若干水分率は高めになるが、低分子のものより吸水性は小さい。また帯電防止性能は、低分子のそれよりも効果的で、異物や欠陥を非常に低減出来ることもわかった。ポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマーの種類としては、アクリル系よりもビニルエステル系の方が、若干いろいろな性質がよいことがわかった。

Claims (7)

  1. 溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを形成する際に用いるセルロースエステルドープ組成物において、ビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマー及び/または官能基を有するビニルエステル及びアクリル酸エステルから選ばれるモノマーを主とするエチレン性不飽和モノマーを重合したポリマーを含有することを特徴とするセルロースエステルドープ組成物。
  2. 官能基が紫外線吸収性基及び/または帯電防止性基であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルドープ組成物。
  3. 微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルドープ組成物。
  4. 該微粒子が、表面にメチル基を有する酸化ケイ素を含有する化合物からなることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルドープ組成物。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のセルロースエステルドープ組成物を溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを形成することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法で形成したことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  7. 請求項6に記載のセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
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