JP2009195865A - 酸素分離材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明により提供される酸素分離材製造方法は、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る酸素分離材1を製造する方法であって、複合酸化物から成る原料粉末を用意する工程と、当該原料粉末を用いて所定形状の成形体を加圧成形する工程と、空気若しくは不活性ガスに酸素を供給して調製された高濃度酸素含有混合ガスの雰囲気中または酸素ガス雰囲気中において上記成形体を焼成する工程とを包含する。
【選択図】図1
Description
或いはまた、かかる構成の酸素分離材は、一方の面から他方の面に供給された酸素イオンによって当該他方の面に供給された炭化水素(メタンガス等)を酸化させて合成液体燃料(メタノール等)を製造するGTL(Gas To Liquid)技術、或いは燃料電池分野で好適に使用することができる。
この種の従来技術として、特許文献1〜13には、混合伝導体である種々の組成のペロブスカイト型酸化物及びその製造方法が記載されている。
このことによって本発明の製造方法では、製造されるペロブスカイト構造焼結体の機械的強度を向上させることができる。従って、上述のような高い酸素透過性能を有する一方で還元膨張率も高いために従来は還元耐久性が低いと認識されていた組成と同じ組成のペロブスカイト構造体であって、従来製法で得られるものよりも機械的強度が向上した(即ち高い酸素透過性能はそのまま維持された)ペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る酸素分離材を製造することができる。
このようなガスを雰囲気ガスとすることによって、該雰囲気中で焼成される酸素分離材の機械的強度を特に良く向上させることができる。
本発明により提供される酸素分離材の好適な一態様として、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る酸素分離材であって、ここで開示されるいずれかの態様の製造方法によって製造され、厚さ1mm以下の膜状に形成された酸素分離材が挙げられる。このような厚さ(膜厚)の酸素分離材によると、高い還元耐久性を維持し且つ高い酸素透過性能を実現することができる。例えば、本発明によって機械的強度を向上させ、還元膨張率が0.1%以上(典型的には0.1〜0.3%)であるような高い酸素透過性能を有する組成の酸素分離材を実用に供することができる。
尚、本明細書において、還元膨張率(%)とは、25℃から1000℃の間での還元雰囲気中(例えば水素4vol%及び窒素96vol%の混合ガス雰囲気中)における熱膨張率(%)をEred、空気(大気)中における熱膨張率(%)をEairとしたとき、以下の式より求められる値である。
還元膨張率(%)=[{(1+Ered/100)−(1+Eair/100)}/(1+Eair/100)]×100
酸素分離材の形状(外形)は特に限定されない。ペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックス(酸素イオン伝導体)から成る酸素分離材として種々の形状のものを製造することができる。例えば、平面状、曲面状、管状(両端が開口した開管状のもの、一端が開口しており一端が閉じている閉管状のもの等を含む)、ハニカム状、あるいはこれらが組み合わさった形状等とすることができる。
例えば、燃料電池やGTLに好適に使用し得る板状や膜状のものが特に好適な形状の例として挙げられる。厚さ10mm以下、特に5mm以下、さらに1mm以下の酸素分離膜は、高い酸素透過性能を発揮し易く好ましい。この膜の両側で酸素分圧を異ならせることにより、膜の一方の面から他方の面へと酸素イオンを効率よく透過させることができる。製造される酸素分離膜は緻密であって(例えばアルキメデス法に基づく相対密度が95%以上)、実質的にガス不透性であることが好ましい。
好ましくは、一般式:Ln1−xAexMO3で表される組成の複合酸化物が挙げられる。ここで式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種(典型的にはLa)であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種(典型的にはSr)であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。これらのペロブスカイト構造酸化物から成る還元耐久性に優れる酸素分離材(典型例として膜厚10mm以下、より好ましくは膜厚1mm以下の酸素分離膜)を製造することができる。
さらに原料粉末(又は仮焼粉末)に、水等の分散媒、有機バインダ、分散剤等の成形助剤を添加・混合してスラリーを調製し、スプレードライヤー等の造粒機を用いて所望する粒径(例えば平均粒径が10〜100μm)に造粒することができる。
このような二段階の焼成を行うことによって、より高強度で還元耐久性が高く緻密な酸素分離材を製造することができる。
例えば、酸素分離材の空気を送り込む側(以下「空気側」という。)の表面に、酸素イオンの透過を促進する触媒が付着した構成とすることができる。かかる酸素イオン透過促進触媒としては、(LaxSr1−x)M’O3(ただし、0.1≦x<1であり、M’はCo,Cu,Fe,Mnから選択される一種以上である。)を含むものが好ましく用いられる。M’がCoであるLaSrCo酸化物が好ましく使用される。このような酸素イオン透過促進触媒を含む酸素分離材は、酸素分離装置や種々の酸化対象ガスを酸化するための酸化用反応装置(例えば炭化水素部分酸化用反応装置)等に好ましく使用することができる。
La0.6Sr0.4Al0.1Fe0.9O3(LSAF)粉末を1200℃で6時間の仮焼を行った。得られた仮焼粉末を水とともに湿式ボールミルで粉砕し、次いで有機バインダ(ここではPVA(ポリビニルアルコール)を使用した。)を添加して混合し、粒径が約60μmの粒子に造粒した。かかる原料粒子を用いて50MPaの圧力でプレス成形し、直径約30mm、厚さ約4mmの円板形状のプレス成形体ならびに10mm×6mm×50mmの直方体形状のプレス成形体を得た。各成形体を更に150MPaのCIP成形に供した。
次に、得られたCIP成形体をアルゴンガス70vol%及び酸素ガス30vol%から成る高濃度酸素含有混合ガス雰囲気中において焼成した。具体的には、室温から500℃まで昇温して10時間保持し、有機物(バインダ等)を分解・除去した。引き続き同じ雰囲気中において1500℃まで昇温し、当該最高焼成温度で6時間保持することにより上記成形体を焼成した。こうして本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
なお、上記LSAF粉末から得られた本実施例に係る焼結体について、水素4vol%及び窒素96vol%の混合ガスから成る還元雰囲気での25℃から1000℃の間での還元膨張率は0.37%であった。
実施例1で得られた焼結体を更に加圧焼成(二次焼成)した。具体的には、市販のHIP焼結装置を用いて、アルゴンガス80vol%及び酸素ガス20vol%から成る高濃度酸素含有混合ガス雰囲気中に上記焼結体を配置し、ガス圧150MPaの加圧条件下で1400℃、1時間の加圧焼成(二次焼成)を行った。こうして本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)としてアルゴンガス75vol%及び酸素ガス25vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)としてアルゴンガス50vol%及び酸素ガス50vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)としてアルゴンガス30vol%及び酸素ガス70vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)として窒素ガス70vol%及び酸素ガス30vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)として窒素ガス75vol%及び酸素ガス25vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
焼成時の雰囲気ガスとして酸素ガス(100vol%)を使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
焼成時の雰囲気ガスとして空気を使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本比較例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
焼成時の雰囲気ガスとしてアルゴンガス(100vol%)を使用した以外は、実施例1と同じ材料・プロセスによって本比較例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
La0.6Sr0.4Ti0.2Fe0.8O3(LSTF)粉末を1200℃で6時間の仮焼を行った。得られた仮焼粉末を水とともに湿式ボールミルで粉砕し、次いで有機バインダ(ここではPVA(ポリビニルアルコール)を使用した。)を添加して混合し、粒径が約60μmの粒子に造粒した。かかる原料粒子を用いて50MPaの圧力でプレス成形し、直径約30mm、厚さ約4mmの円板形状のプレス成形体ならびに10mm×6mm×50mmの直方体形状のプレス成形体を得た。各成形体を更に150MPaのCIP成形に供した。
次に、得られたCIP成形体をアルゴンガス70vol%及び酸素ガス30vol%から成る高濃度酸素含有混合ガス雰囲気中において焼成した。具体的には、室温から500℃まで昇温して10時間保持し、有機物(バインダ等)を分解・除去した。引き続き同じ雰囲気中において1500℃まで昇温し、当該最高焼成温度で6時間保持することにより上記成形体を焼成した。こうして本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
なお、上記LSTF粉末から得られた本実施例に係る焼結体について、水素4vol%及び窒素96vol%の混合ガスから成る還元雰囲気での25℃から1000℃の間での還元膨張率は0.32%であった。
高濃度酸素含有混合ガス(雰囲気ガス)として窒素ガス70vol%及び酸素ガス30vol%から成る高濃度酸素含有混合ガスを使用した以外は、実施例9と同じ材料・プロセスによって本実施例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
焼成時の雰囲気ガスとして空気を使用した以外は、実施例9と同じ材料・プロセスによって本比較例に係る酸素分離材(焼結体)を得た。
上記実施例1〜10および比較例1〜3に係る上記直方体形状の焼結体を利用してテストピースを作製し、JISR1601に従い三点曲げ強度を測定した。結果を表1〜表2の該当欄に示す。
表に示すように、各実施例の焼結体では190MPa以上の三点曲げ強度が認められた。他方、各比較例の焼結体では、そのような高い強度は認められなかった。特に比較例2の焼結体では、十分な緻密化が認められず三点曲げ強度が測定できなかった。
上記実施例1〜10および比較例1〜3に係る上記直方体形状の焼結体を利用し、アルキメデス法に基づいて相対密度を測定した。結果を表1〜表2の該当欄に示す。
表に示すように、各実施例の焼結体では97.5%以上の相対密度(即ち高い緻密性)が認められた。特に酸素ガス濃度30vol%以上で焼成したものについては相対密度98.5%以上の緻密な酸素分離材が得られた。なかでも残部がArである場合及び酸素ガス100vol%である場合には相対密度99%以上の緻密な酸素分離材が得られた。
実施例1〜10及び比較例1〜3に係る上記円板形状の焼結体を使用して酸素イオン伝導性評価用モジュール50を作製した。
即ち、上記円板形状の焼結体を機械研磨して厚みが0.5mmの薄膜状酸素分離材(直径約30mm)1を作製した。次いで、得られた薄膜状酸素分離材(以下「酸素分離膜1」という。)1の一方の面(反応側)の表面1aには、酸化反応促進触媒としてNi酸化物をコーティングした。更に、他方の面(空気側)の表面1bには、酸素イオン透過促進触媒としてLaSrCo酸化物をコーティングした。
而して、図1に模式的に示すように、触媒付き酸素分離膜1を、一方の面1aが反応側(図の上側)、他方の面が空気側(図の下側)となるようにして、当該反応(燃料)側のアルミナ製円筒管12及び空気側のアルミナ製円筒管14の間に挟んで配置した。これらアルミナ製円筒管12,14と酸素分離材(薄膜状円板)1との接触部分はガラス系シール材15によって密閉した。また、反応側及び空気側のアルミナ製円筒管12,14の内部には、それぞれ、燃料ガス(ここではCH4ガス)供給用のアルミナ内管20及び空気(Air)供給用のアルミナ内管30を設置した。また、アルミナ製円筒管12,14の外方にはヒータ10を設置した。
結果を表1及び表2の該当欄に示す。この結果から明らかなように、各実施例の酸素分離膜は、上述の高い三点曲げ強度及び高密度とともに、高い還元耐久性を備えていることが確認された。他方、各比較例の酸素分離膜はいずれもガスリークが5%を越えており、各実施例の酸素分離膜のような耐久性は得られなかった。
また、実施例1、実施例2及び比較例1に係る酸素分離膜の表面のSEM像を、それぞれ、図2,3及び4として示す。これらSEM像から明らかなように、実施例の酸素分離膜は緻密な表面構造である一方、比較例の酸素分離膜の表面には多数の細孔が存在していることが確認された。
なお、本発明によって提供される酸素分離材の一形態として、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る膜状の酸素分離材の少なくとも一方の面側に、この複合酸化物セラミックス(酸素分離膜)を機械的に支持する多孔質支持体を備える構成としてもよい。
10 ヒータ
12 反応側円筒管
14 空気側円筒管
15 シール材
20 燃料ガス供給用内管
30 空気供給用内管
50 酸素イオン伝導性評価用モジュール
Claims (6)
- 酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る酸素分離材を製造する方法であって、
前記複合酸化物から成る原料粉末を用意する工程と、
前記原料粉末を用いて所定形状の成形体を加圧成形する工程と、
空気若しくは不活性ガスに酸素を供給して調製された高濃度酸素含有混合ガスの雰囲気中または酸素ガス雰囲気中において、前記成形体を焼成する工程と、
を包含する、酸素分離材製造方法。 - 前記原料粉末は、一般式:Ln1−xAexMO3(但し、式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。)で表される組成のペロブスカイト構造を有する複合酸化物により構成されている、請求項1に記載の製造方法。
- 前記高濃度酸素含有混合ガスとして、酸素ガス濃度が30vol%以上となるように調製された混合ガスを使用する、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記焼成工程において、前記成形体の加圧焼成が行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって製造された、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の複合酸化物セラミックスから成る酸素分離材であって、厚さ1mm以下の膜状に形成された酸素分離材。
- 還元膨張率が0.1%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の酸素分離材。
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