JP2010269237A - 酸素水製造装置および酸素水の製造方法 - Google Patents

酸素水製造装置および酸素水の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な構造で高濃度の酸素を生成させ、容易に高濃度の酸素水を製造することができる酸素水製造装置を提供すること。また、そのような装置を用いて高濃度酸素水を製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明により提供される酸素水製造装置100は、酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜22と、該酸素分離膜22を支持する多孔質基材24とを備える酸素水製造用膜エレメント20を備える。そして、酸素水製造装置100は、酸素水製造用膜エレメント20により選択的に分離された酸素が水蒸気と混合される反応部50と、上記酸素と上記水蒸気との混合により生成した酸素水を回収する酸素水回収部64とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜を具備する酸素水製造用膜エレメントを備えた酸素水製造装置、および該酸素水製造装置を用いた酸素水の製造方法に関する。
近年、美容や健康への意識の高まる世相を反映して、通常の水(例えば水道水や市販のミネラルウォーター)に溶解している量(例えば凡そ7mg/L)よりも多い溶解量で人為的に酸素を含有させた高濃度酸素水(以下、単に「酸素水」ということもある。)が注目を集めている。かかる酸素水(例えば通常の2〜30倍の酸素溶存量の水)は、体内に吸収される酸素量の増加が人体に与え得る優れた効果が期待され、例えば飲料水や化粧品として普及してきている。
酸素水の製造方法としては、一般的には、酸素ボンベに充填されている酸素を用いる方法が一般的であった。例えば、酸素ガスと水との接触面積を増大させるためにバブリングまたはミキシングにより酸素ガスを微細気泡として水に溶解させる方法(例えば特許文献1および2)、または酸素ガスの圧力を高めて水に溶解させる加圧方法、あるいは、エジェクターの原理を利用して酸素ガスを流動する水に引き込む分散方法等が挙げられる。また、上記以外の製造方法としては、例えば特許文献3および4に示されるように、気体分離膜(例えば高分子製の気体分離膜)を用いて空気から取り出された酸素を利用する方法が提案されている。なお、酸素供給装置については例えば特許文献5に記載の装置等が挙げられる。
特開2004−237268号公報 特開2008−114134号公報 特開2004−351294号公報 特開2007−21472号公報 特開平6−159715号公報
上記のような酸素ボンベを用いる従来の酸素水の製造方法では、酸素自体を製造する際に電力等の大量のエネルギーを要するため、酸素水の製造プロセス全体のエネルギー効率がよくないという問題点がある。すなわち、市販の酸素ボンベには、典型的には、沸点の差を利用した深冷分離法によって空気中の窒素から分離された酸素が充填されているので、酸素や窒素を液化するために極めて低い温度条件が必要であることや、酸素の分離には大型のプラントが必要であるという問題がある。また、高分子製の気体分離膜を用いて酸素を分離することにより酸素を水に溶解させる際には、かかる分離膜の耐久温度以下の温度条件下でしか酸素を分離することができず、使用環境が限定されてしまう問題があった。またかかる分離膜では酸素の濃縮化に限界があり、高濃度の酸素を得ることが困難であった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、簡便な構造で高濃度の酸素を生成させ、容易に高濃度の酸素水を製造することができる酸素水製造装置を提供することである。また、そのような装置を用いて高濃度酸素水を製造する方法を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明により提供される酸素水製造装置は、酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。以下同じ。)伝導性酸化物からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備える酸素水製造用膜エレメントを備える。そして、かかる酸素水製造装置は、上記酸素水製造用膜エレメントにより選択的に分離された酸素が水蒸気と混合される反応部と、上記酸素と上記水蒸気との混合により生成した酸素水を回収する酸素水回収部とを備える。
本発明に係る酸素水製造装置は、酸素イオン伝導性酸化物から構成される酸素分離膜と多孔質支持体とを備えた酸素水製造用膜エレメントを具備する。かかる構成の結果、該膜エレメントの一方の面(例えば多孔質基材側)から酸素含有ガス(例えば空気)を供給すると、酸素イオン伝導性によって上記膜エレメントに係る酸素分離膜は、一方の面から供給された酸素含有ガスから酸素を他方の面に選択的に透過させ、容易に分離させることができる。
また、上記酸素水製造用膜エレメントの他方の面(例えば酸素分離膜側)に水蒸気を供給し、上記のようにして分離された酸素と混合させる。このようにして得られた水蒸気と酸素との混合物を(典型的には冷却した後に)回収することにより、通常の水より多くの酸素を含む酸素水(高濃度の酸素が溶存している状態および/またはより多くの酸素が混入している状態の水)を容易に得ることができる。
したがって、本発明に係る酸素水製造装置によると、酸素イオン伝導性酸化物から構成される酸素分離膜を備えた簡便な構造の酸素水製造用膜エレメントにより、高濃度の酸素を効率よく生成させることができるとともに、該酸素を水蒸気と混合させることで高濃度の酸素水を容易に製造することができる。
なお、本明細書中で「膜」とは特定の厚みに限定されず、上記酸素分離膜は、酸素水製造用膜エレメントにおいて少なくとも「酸素イオン伝導体」として機能する膜状若しくは層状の部分をいう。
ここで開示される酸素水製造装置の好ましい一態様では、上記酸素イオン伝導性酸化物は、一般式:
Ln1−x1−yFe3−δ (1)
(ただし、Lnは、ランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)およびCa(カルシウム)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0<y≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物である。
より好ましくは、上記酸素イオン伝導性酸化物は、上記一般式(1)のBを構成する元素としてTi(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Co(コバルト)およびGa(ガリウム)からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
かかる構成の酸素水製造装置では、上記酸素水製造膜用膜エレメントの酸素分離膜が上記組成のペロブスカイト型酸化物から構成されていることにより、かかる酸素分離膜はより優れた酸素イオン伝導性を有する。また、上記ペロブスカイト型酸化物のBサイトにFe(鉄)元素が必須構成元素として含まれることにより、かかる酸素分離膜には良好な電子伝導性が付与される。このため、上記酸素分離膜の両面を短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく、該酸素分離膜の一方の面から他方の面に連続して酸素イオンを透過させることができる。したがって、上記組成のペロブスカイト型酸化物から構成される酸素分離膜は酸素イオン−電子混合伝導性に優れ、より高効率で酸素含有ガスから酸素を選択的に分離し得る酸素水製造用膜エレメントを備える優れた酸素水製造装置が提供される。
また、好ましくは、上記ペロブスカイト型酸化物のBサイトにTi、Zr、Co、Gaのうちの1種または2種以上を含むことにより、該ペロブスカイト型酸化物から構成される酸素分離膜は耐水蒸気性に優れ、長期にわたり良好な酸素分離性能を維持し得る高耐久性の酸素水製造用膜エレメントを備える優れた酸素水製造装置が提供される。
ここで開示される酸素水製造装置の別の好ましい一態様では、上記酸素水製造用膜エレメントを500℃以上に加熱する加熱手段をさらに備える。
かかる構成の酸素水製造装置では、上記酸素水製造装置が備える酸素水製造用膜エレメントを500℃以上に加熱することにより、該エレメントが備える酸素分離膜は良好な酸素イオン伝導性を有し、優れた酸素分離性能を発揮することができる。
また、本発明は、他の側面として、ここで開示される酸素水を製造する装置に具備される酸素水製造用膜エレメントを提供する。この酸素水製造用膜エレメントは、酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備えている。そして、上記酸素イオン伝導性酸化物が、一般式:
Ln1−x1−yFe3−δ (1)
(ただし、Lnは、ランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0<y≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物である。より好ましくは、上記酸素イオン伝導性酸化物が、上記一般式(1)のBを構成する元素としてTi、Zr、Co、およびGaからなる群から選択される1種または2種以上を含む。
本発明に係る酸素水製造用膜エレメントでは、該膜エレメントが備える酸素分離膜が上記組成のペロブスカイト型酸化物から構成されるので、良好な酸素イオン−電子混合伝導性を有する。したがって、かかる酸素水製造用膜エレメントによると、優れた酸素分離性能を有する酸素水製造装置が提供される。また、好ましくは、上記ペロブスカイト型酸化物のBサイトにTi、Zr、Co、Gaのうちの1種または2種以上を含む。このことから、かかる酸素水製造用膜エレメントにより、耐水蒸気性に優れた高耐久性の酸素水製造装置が提供される。
また、本発明は、他の側面として、ここで開示される酸素水製造装置を用いて酸素水を製造する方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する。すなわち、かかる酸素水の製造方法は、(1)ここで開示される酸素水製造装置を用意すること、(2)上記酸素水製造用膜エレメントの一方の側に酸素含有ガスを供給し、該膜エレメントの他方の側に水蒸気を供給すること、(3)上記酸素水製造用膜エレメントの一方側から他方側に向けて上記酸素含有ガスを透過させ、選択的に分離した酸素と上記水蒸気とを混合させること、(4)上記酸素と上記水蒸気との混合物を冷却し、酸素水として回収すること、を包含する。
より好ましくは、上記酸素水製造用膜エレメントによる酸素の分離を500℃以上の温度域下で行う。
本発明に係る酸素水の製造方法によると、酸素水製造装置における酸素水製造用膜エレメントの一方の側に酸素含有ガスを供給し、他方の側に水蒸気を供給することにより、高濃度の酸素を効率よく生成させることができるとともに、該酸素を上記水蒸気と混合させることで高濃度の酸素水を容易に得ることができる。
また、上記酸素水製造用膜エレメントを加熱して酸素分離を500℃以上(例えば500℃〜1000℃、典型的には800℃〜1000℃)の高温下で行うことにより、上記酸素水製造用膜エレメントの酸素分離性能を向上させ、より一層高効率に酸素含有ガスから酸素を分離させることができる。
さらに、かかる酸素水製造装置は上記のような高温で好ましく用いることができるので、例えば、発電や焼却等により排熱を生じる発電所や製鉄所、または工場等の施設(プラント)に付設すれば、該施設からの排熱を利用することで上記酸素水製造装置を駆動させ、容易に酸素水を製造することができる。
酸素水製造装置の構成の一好適例を模式的に示す図である。 酸素水製造装置の一好適例に係る酸素水製造用モジュールの構成を模式的に示す断面図である。 酸素水製造装置の別の好適例に係る酸素水製造用モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、酸素水製造装置に具備される酸素水製造用膜エレメントの構成)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、酸素水製造装置を構成する部材の接続方法またはガスの配管方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明によって提供される酸素水製造装置は、酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備えた酸素水製造用膜エレメントを備えており、当該酸素水製造用膜エレメントにより選択的に分離された酸素が水蒸気と混合される反応部と、この酸素と水蒸気との混合により生成した酸素水を回収する酸素水回収部とを備えていることを特徴としており、特に、上記酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜を備えた酸素水製造用膜エレメントを用いることによって特徴付けられるものである。したがって、上記目的を達成し得る限りにおいて、その他の構成成分の内容や組成については、種々の基準に照らして任意に決定することができる。
ここで開示される酸素水製造装置は、以下のような構成の酸素水製造用膜エレメントを備えている。すなわち、かかる酸素水製造用膜エレメントは、酸素イオン伝導性(酸素イオンを選択的に透過させる性質)を有する酸化物セラミック体(酸素イオン伝導性酸化物)を緻密な膜状に形成してなる酸素分離膜を備える。また、かかる酸素水製造用膜エレメントは、上記酸素分離膜の一方の面側を支持する多孔質支持体を備える。
かかる酸素水製造用膜エレメントは、板状(平面状および曲面状等を含む。)、管状(両端が開口した開管状のもの、一端が開口しており他端が閉じている閉管状のもの等を含む。)、ハニカム状、あるいはこれらが組み合わさった形状等の多孔質基材を備えることができる。かかる形状を呈する多孔質基材の一方の表面(典型的には、多孔質基材の厚み方向と直交する表面)に酸素分離膜が形成(積層)された構成の酸素水製造用膜エレメントを用いることができる。板状、管状等の膜状(層状)の多孔質基材(多孔質支持層)の一方の表面に酸素分離膜が形成された構成の積層型の酸素水製造用膜エレメントを用いることが好ましい。ここで開示される酸素水製造装置の一好適例では、かかる積層型の酸素水製造用膜エレメントがケーシング内に収容され、該膜エレメントは、多孔質基材を酸素含有ガスが供給される側(酸素含有ガス供給部側)に向き、酸素分離膜を水蒸気が供給される側(水蒸気供給部側、すなわち、分離された酸素と水蒸気とが混合される反応部側)に向くように配置されている。酸素分離膜における多孔質基材との対向面(接触面)とは反対側の表面が水蒸気供給側(上記反応部側)に露出していることが好ましい。
酸素水製造用膜エレメントについて説明する。かかる酸素水製造用膜エレメントを構成する酸素分離膜は、少なくとも酸素イオン伝導性を示す酸化物セラミック体から形成される。好ましくは、該酸素分離膜は、酸素イオン−電子混合伝導性の(すなわち、酸素イオン伝導性および電子伝導性を共に示す)酸化物セラミック体(混合伝導体)から形成される。かかる混合伝導体から形成される酸素分離膜は、該酸素分離膜の一方の面側(酸素含有ガスが供給される側)と他方の側(水蒸気が供給される側)とを短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく、一方から他方へと連続的に酸素イオンを透過させることができるとともに、酸素イオンの透過速度を上げることができるため好ましい。したがって、かかる酸素分離膜を備える酸素水製造用膜エレメントを用いて構築される酸素水製造装置は、上記酸素分離膜の両面を短絡させる外部電極や外部回路を用いない構成とすることができる。また、外部電極や外部回路を用いた構成であってもよい。
上記酸素分離膜としては、一般式:
Ln1−x1−yFe3−δ (1)
で表わされるペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。ここで、一般式(1)中のLnは、ランタノイドから選択される少なくとも1種の元素(例えば、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)であり、好ましくは、La(ランタン)である。上記一般式(1)中のAは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)およびCa(カルシウム)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、好ましくはSrである。また、上記一般式(1)における「x」は、このペロブスカイト型構造においてLnがAによって置き換えられた割合を示す値である。このxの取り得る範囲は0≦x≦1(好ましくは0.1≦x<1、例えば0.1≦x≦0.9)である。xがかかる範囲であることにより、酸素分離膜に酸素イオン伝導性と耐久性とをバランスさせて付与することができる。ここで、上記δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。上記一般式(1)における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類および置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、酸素原子の数を3−δと表示するのが妥当であるが、以下では便宜的に3と表示することとする。ただし、該酸素原子の数を便宜的に3として表示しても、異なる化合物を表しているわけではない。
上記のように、一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物は、そのBサイトにFe(鉄)を必須構成元素として含有する。Feを含有することにより、かかるペロブスカイト型酸化物からなる酸素分離膜の導電性(電子伝導性)が向上するので好ましい。また、上記一般式(1)中のBは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、好ましくは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Co(コバルト)、Ga(ガリウム)のうちの1種または2種以上として規定される。このような元素を含有することにより、上記ペロブスカイト型酸化物からなる酸素分離膜は耐水蒸気性を有し、長期にわたって良好な酸素分離能を維持し得る高耐久性の酸素分離膜を得ることができるので好ましい。より好ましくは、上記一般式(1)中のBは、Tiおよび/またはZrとして規定される。かかる金属元素は、上記元素の中でも耐水蒸気性が特に高く、またペロブスカイト型結晶構造の機械的強度を向上させ酸素分離膜の両側で酸素分圧差が生じても応力によるクラック発生等を抑制し得る。
上記ペロブスカイト型酸化物において、上記一般式(1)における「y」は、このペロブスカイト型構造においてB(すなわちTi、Zr、Co、Gaのうちの1種または2種以上として規定される金属元素)がFeによって置き換えられた割合を示す値である。ここで上記BおよびFeのモル比率を(1−y):yとすると、yの取り得る範囲は、0<y≦1(好ましくは0.1≦y<1、例えば0.1≦y≦0.9)である。yがかかる範囲であることにより、酸素分離膜に酸素イオン−電子混合伝導性と耐久性とをバランスさせて付与することができる。
上記酸素分離膜は、緻密であって(例えば、理論密度に対する相対密度が95%以上であり)、実質的にガス不透性であることが好ましい。この酸素分離膜の厚さ寸法としては、凡そ1000μm以下が適当であり、好ましくは200μm以下(典型的には、凡そ5
μm〜200μm)の範囲であり、より好ましい態様では凡そ100μm以下(典型的には、凡そ5μm〜100μm)の範囲である。酸素分離膜の厚みを小さく(薄く)すると、酸素イオンの透過距離が短縮されることにより、酸素透過量(酸素分離能)を向上させることができる。また、上記のように、ここで開示される酸素水製造用膜エレメントは、酸素分離膜の一方の面側が多孔質基材によって支持され得る。このことにより、この酸素分離膜を比較的薄くし、かつ水蒸気に接触する条件で使用した場合にも、酸素イオン透過性(伝導性)等の性能と酸素分離膜の機械的強度(例えば酸素分離膜の両側に生じる酸素分圧差によるクラックが発生しにくい等の耐久性)とを高い次元でバランスさせることができる。
ここで開示される酸素水製造用膜エレメントは、上記酸素分離膜が多孔質基材の表面に設けられた構成であり、かかる酸素分離膜の一方の側の表面の一部または全体が多孔質基材によって支持されている。この多孔質基材が設けられた構成であっても、該多孔質基材の内部を気体(典型的には酸素含有ガスあるいは水蒸気)が容易に透過し得るので、酸素透過速度を低下させることなく酸素水製造用膜エレメント全体の機械的強度を増すことができる。
多孔質基材としては、従来のこの種の膜エレメント(例えば酸素分離膜エレメント)で採用されている種々の性状のセラミック多孔質体を使用することができる。上記酸素水製造用膜エレメントの使用温度域(典型的には500℃以上、好ましくは800〜1000℃)において安定な耐熱性を有する材質からなるものが好ましく用いられる。例えば、ペロブスカイト型構造の上記酸素分離膜と同様の組成を有するセラミック多孔質体、あるいはマグネシア(酸化マグネシウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を主体とするセラミック多孔質体を用いることができる。あるいは、金属材料を主体とする金属質多孔体を用いてもよい。
ここで開示される酸素水製造用膜エレメントに係る多孔質基材の気孔率(水銀圧入法に基づく)は特に限定されないが、例えば凡そ80体積%以下(典型的には凡そ5体積%〜80体積%)が適当である。上記酸素水製造用膜エレメントの機械的強度や製造容易性(例えば多孔質基材の表面への酸素分離膜の付与し易さ等をいう。)の観点からは、上記多孔質基材の気孔率は60体積%以下(典型的には50体積%〜60体積%)が好ましい。また、かかる多孔質基材の平均細孔径(水銀圧入法に基づく)として、例えば20μm以下(典型的には0.1〜20μm)であるものを用いることができる。平均細孔径が3μm以下(典型的には0.5〜3μm)の多孔質基材を用いることが好ましい。このような気孔率および平均細孔径を有する多孔質基材は、酸素含有ガス等の気体の透過を妨げることがなく、またその表面により薄い酸素分離膜を適切に形成することができる。
上記多孔質基材の厚さ寸法は特に限定されない。例えば、平板状あるいは管状の多孔質基材では、その厚さを凡そ0.5mm〜50mmの範囲とすることができ、好ましい範囲は凡そ1mm〜20mm、より好ましい範囲は凡そ2mm〜10mm、さらに好ましい範囲は凡そ2mm〜5mmである。多孔質基材の厚さを上記範囲内とすることにより、特に機械的強度に優れ、酸素分離膜と酸素含有ガスとの接触効率のよい酸素水製造用膜エレメントを得ることができる。
上記のような構成の酸素水製造用膜エレメントの製造方法は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、製造したい多孔質基材の製造方法について説明する。多孔質基材を構成する金属元素を含む化合物の粉末(原料粉末)を、所望の多孔質基材の組成比で混合し、当該混合物を成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気で焼成することにより、多孔質基材として所望する組成の焼成物を得る。これを解砕して多孔質基材形成用粉末を得る。このとき、解砕条件を調節したり、必要に応じて篩い分け(分級)等を行ったりすることにより、所望の粒径を有する多孔質基材形成用粉末を調製することができる。この多孔質基材形成用粉末の平均粒径によって、最終的に得られる多孔質基材の気孔率および/または平均細孔径を制御することができる。通常は、多孔質基材形成用粉末の平均粒径を凡そ1μm〜150μmの範囲とすることが適当であり、好ましい範囲は凡そ20μm〜100μm、より好ましい範囲は凡そ40μm〜100μmである。かかる平均粒径を有する多孔質基材形成用粉末は、本発明に係る酸素水製造装置の構成要素として好適な酸素水製造用膜エレメント用の多孔質基材を容易に製造することができる。
上記多孔質基材の原料粉末としては、セラミック体を構成する金属元素を含む酸化物あるいは加熱により酸化物となり得る化合物(当該金属元素の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、オキシハロゲン化物等)の1種以上を含有するものを用いることができる。原料粉末は、上記多孔質基材を構成する金属元素のうち2種以上の金属元素を含む化合物(複合金属酸化物、複合金属炭酸塩等)を含有してもよい。上記各原料粉末の平均粒径は、例えば0.5μm〜3μm(好ましくは凡そ1μm〜2μm)である。ここで平均粒径とは、原料粉末の粒度分布におけるD50(メジアン径)をいう。
また、上記多孔質基材の組成を有する市販のセラミック粉末をそのまま多孔質基材形成用粉末として用いてもよい。あるいは、そのようなセラミック粉末を造粒し、仮焼して所望の粒径に成長させたものを用いてもよい。例えば、原料粉末を仮焼し、湿式ボールミル等を用いて粉砕することにより、仮焼粉末(本焼成用原料粉末)を得ることができる。さらに原料粉末(または仮焼粉末)に、水、有機バインダ等の成形助剤、及び分散剤を添加・混合してスラリーを調製し、スプレードライヤー等の造粒機を用いて所望する粒径(例えば平均粒径が10μm〜100μm)に造粒することができる。
上記のようにして得られた多孔質基材形成用粉末を所定形状の成形体に成形する。成形方法としては、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出成形等の従来公知の種々の方法を採用することができる。また、従来公知のバインダ、分散剤等を使用して上記粉末を含むスラリーまたは可塑性固形物を調製し、それを鋳込み法、押出し成形法、射出成形法等により成形することもできる。
上記成形体を焼成して多孔質基材を得る際の適切な焼成温度としては、多孔質基材の組成等によっても異なるが、典型的には1200℃〜1800℃(好ましくは1400℃〜1600℃)である。好適な焼成時間は成形体の性状等に応じて異なり得るが、通常の焼成時間としては、1時間〜15時間程度が適当であり、好ましくは3時間〜10時間(例えば3時間〜5時間)である。また、この焼成工程は、有機物添加剤(例えばバインダ、分散剤等)を予め分解除去して均一な細孔を得るために、例えば一回以上の仮焼工程と、その後に行われる本焼成工程とを包含することができる。この場合、本焼成工程を上記のような焼成温度で行い、仮焼工程については本焼成工程よりも低い焼成温度(例えば800℃〜1500℃、好ましくは1000〜1300℃)で行うことが好ましい。
上記の方法で作られた多孔質基材の表面に、ペロブスカイト型酸化物の酸素分離膜を形成する。この膜形成方法については特に限定されず、従来公知の種々の手法を採用することができる。例えば、上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物(例えばLa1−xSrTi1−yFeで表わされるLSTF酸化物)を構成する金属元素を含む原料粉末を、所望するペロブスカイト型酸化物の組成比で混合する。この混合物を成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気で焼成し、上記一般式(1)で表わされる焼成物(ペロブスカイト型酸化物)を得る。これを解砕して酸素分離膜形成用粉末を得る。ここで、この酸素分離膜形成用粉末の平均粒径を凡そ1μm〜30μmの範囲とすることが適当であり、好ましくは1μm〜15μmの範囲である。かかる範囲の平均粒径を有する酸素分離膜形成用粉末は、多孔質基材の表面に緻密な酸素分離膜を形成するのに好適である。なお、上記多孔質基材を製造する場合と同様に、原料粉末の代わりに、上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物粉末の市販品を酸素分離膜形成用粉末として使用しても良い。また、上記ペロブスカイト型酸化物粉末の粒径を調節したもの(例えば所定の粒径に成長させたもの、あるいは所定の粒径に粉砕したもの)等を用いてもよい。
次いで、上記のようにして得られた酸素分離膜形成用粉末を多孔質基材に付与する。付与する方法の一例としては、上記酸素分離膜形成用粉末を適当なバインダ、分散剤、可塑剤、溶媒等と混合してスラリーを調製し、一般的なディップコーティング等の手法によって該スラリーを多孔質基材表面に付与(塗布)する。形成する酸素分離膜の厚さは、コーティング液における酸素分離膜形成用粉末の濃度、分散剤、分散媒、可塑剤等の添加剤の種類、コーティング液の粘度、製膜条件、乾燥条件等を適宜調節することにより制御することが可能である。このようにして得られた多孔質基材上の塗布物(皮膜)を適当な温度(典型的には60〜100℃)で乾燥させ、次いで、例えば1200℃〜1800℃のような温度域(上述した多孔質基材の焼成温度と同等以下の温度で焼成することが好ましい。)で酸化性雰囲気または不活性ガス雰囲気下で焼成することによって、多孔質基材の表面に一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物からなる酸素分離膜を形成することができる。以上のようにして、酸素水製造用膜エレメントを製造することができる。
上記のようにして得られた酸素水製造用膜エレメントは、酸素イオンの透過を促進する触媒(酸素イオン透過促進触媒)および/または酸素イオンから酸素(分子)への酸化反応を促進する触媒(酸化反応促進触媒)が付与された構成であってもよい。これらの触媒としては、上記触媒機能を発揮する従来公知の触媒材料を特に制限なく用いることができる。例えば、ペロブスカイト型酸化物等の従来公知の酸素イオン伝導性セラミック体を好ましく用いることができる。また、これらの触媒は、酸素分離膜の酸素含有ガス供給部側の面、および/または該酸素分離膜の水蒸気供給部側の面、および/または多孔質基材等から選択される任意の箇所に配置することができる。ここで開示される酸素水製造装置の構成が、多孔質基材を酸素含有ガス供給部側に対向させ、酸素分離膜を水蒸気供給部側に対向させるように酸素水製造用膜エレメントを配置した構成である場合には、酸素イオン透過促進触媒は酸素分離膜の酸素含有ガス供給部側の表面に粒状または塊状に付着されるか、もしくは層状または膜状に付着(被覆)されることが好ましい。あるいは、上記酸素イオン透過促進触媒は多孔質基材の酸素含有ガス供給部側の表面、または該多孔質基材の細孔内に付着されることが好ましい。一方、上記酸化反応促進触媒は、酸素分離膜の水蒸気供給部側の表面(全面または一部)に付着されることが好ましく、あるいは、酸素分離膜の表面のほぼ全面を覆うように層状または膜状に付着(被覆)されることが特に好ましい。これらの触媒を付着させる方法は特に限定されない。例えば、触媒粉末を含むスラリーを調製し、該スラリーを酸素分離膜表面に塗布して乾燥させることにより目的の触媒を付着(コート)させることができる。その後、付着した触媒粉末をさらに焼成してもよい。
次に、上記のような酸素水製造用膜エレメントを備えた酸素水製造装置について説明する。かかる酸素水製造装置の構成は、上記酸素水製造用膜エレメントと、該膜エレメントにより選択的に分離された酸素が水蒸気と混合される反応部と、上記酸素と水蒸気との混合により生成した酸素水を回収する酸素水回収部とを備えた構成である。このような酸素水製造装置の一好適例としては、上記酸素水製造用膜エレメントがケーシングに収容されてなる酸素水製造用モジュールを備えた構成であって上記ケーシング内に上記酸素水製造用膜エレメントの酸素分離膜を介して互いに気密に区画されて隣接する酸素含有ガス供給部と反応部とが設けられた構成である。かかる酸素水製造装置は、上記酸素水製造用モジュールを一つまたは二つ以上備えていてもよい。また、一つのモジュールに収容される酸素水製造用膜エレメントの数は一つでもよいし、二つ以上でもよい。また、一つのモジュールに設けられる酸素含有ガス供給部と反応部の数は一つでもよいし、二つ以上でもよい。
上記酸素水製造装置は、上記酸素含有ガス供給部に酸素含有ガスを供給して上記酸素水製造用膜エレメントの酸素分離膜の酸素含有ガス供給部側の表面に接触させるための酸素含有ガス供給手段を備えることができる。また、かかる酸素水製造装置は、上記反応部に水蒸気を供給して該水蒸気を上記酸素分離膜の反応部側の表面から発生する酸素と接触、混合させるための水蒸気供給手段を備えることができる。さらに、かかる酸素水製造装置は、上記反応部の下流に酸素水回収部を設けることができる。
以下、特に限定することを意図しないが、本発明により提供される酸素水製造装置について、図1および図2を参照しつつ、酸素含有ガス供給部と反応部とを一つずつ備えた平板状の酸素水製造用膜エレメントを一つ有する酸素水製造用モジュールを一つ備えた場合を例として説明する。図1は、酸素水製造装置の構成の一好適例を模式的に示す図である。図2は、酸素水製造装置の一好適例に係る酸素水製造用モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、ここで例示される酸素水製造装置100は、酸素水製造用モジュール10を含む構成である。該酸素水製造用モジュール10は、平板状の酸素水製造用膜エレメント20と、該膜エレメント20を収容するケーシング30と、該ケーシング30内に形成された酸素含有ガス供給部40および反応部50とを備えている。また、かかる酸素水製造用モジュール10は、図1および図2には図示しないが、酸素水製造用膜エレメント20を加熱するための加熱手段であって該膜エレメント20が酸素分離能を良好に発揮し得るのに好適な温度(例えば500℃以上)まで加熱するための加熱手段を備える。なお、かかる加熱手段はケーシング30の内部に配置される構成であっても外部に配置される構成であってもよい。かかる加熱手段については、酸素水製造装置100を発電所や製鉄所、または工場等の施設に付設すれる場合には、該施設からの排熱を利用可能な構成とすることができる。また、酸素含有ガス供給部40と反応部50は、ケーシング30内において、酸素水製造用膜エレメント20を介して互いに気密に区画されて隣接するように配置されている。また、図2に示されるように、酸素水製造用膜エレメント20は、平板状の多孔質基材24と、該多孔質基材24の表面に形成された酸素分離膜22とを備えており、多孔質基材24が上記酸素含有ガス供給部40に対向し、酸素分離膜22が反応部50に対向するようにケーシング30内に配置されている。また、酸素分離膜22における反応部50側の表面(すなわち多孔質基材24との界面とは反対側の表面)には酸素イオンから酸素(分子)への酸化反応を促進する酸化反応促進触媒が触媒層26として付与されている。なお、図示しないが多孔質基材24の表面または細孔内、あるいは酸素分離膜22における多孔質基材24との界面上に酸素イオン透過促進触媒を付与した構成であってもよい。
ケーシング30には、酸素含有ガスを酸素含有ガス供給部40に供給するための酸素含有ガス供給手段42と、水蒸気を反応部50に供給するための水蒸気供給手段52とが接続されている。また、該ケーシング30は、反応部50の下流にある酸素水回収手段62に接続されており、該酸素水回収手段62を構成する酸素水回収部64であって反応部50から排出される水蒸気と酸素との混合物(混合ガス)を酸素水として回収するための酸素水回収部64に接続されている。上記酸素含有ガス供給手段42は、酸素含有ガス供給源(典型的には酸素含有ガスが充填されたガスボンベ)43、および該酸素含有ガス供給源43とケーシング30内の酸素含有ガス供給部40とを連結させて酸素含有ガスを酸素含有ガス供給部40内へ流通させるための(典型的には管状の)酸素含有ガス用流路45を含む構成である。水蒸気供給手段52は、水蒸気供給源53、および該水蒸気供給源53と反応部50とを連結させて水蒸気を反応部50内に流通させるための(典型的には管状の)水蒸気用流路55を含む構成である。上記水蒸気供給源53としては、従来公知の水蒸気製造装置を好ましく用いることができる。また、水蒸気供給手段52は、後述の不活性ガス(例えばヘリウム(He)ガス)を水蒸気とともに反応部50に流通させるために不活性ガス供給源(例えば不活性ガスが充填されたガスボンベ)57を備えた構成であってもよい。かかる不活性ガスは、図1に示されるように、不活性ガス供給源57が上記水蒸気用流路55に接続されることにより、水蒸気との混合ガスとして反応部50内に供給される。なお、図示しないが、不活性ガス供給源57が水蒸気用流路55とは異なる不活性ガス用の流路に接続されることにより、上記不活性ガスが水蒸気とは別々に反応部50に供給されるような構成であってもよい。
反応部50において酸素水製造用膜エレメント20により分離された酸素と上記水蒸気供給手段52により供給された水蒸気とが混合されて得られた混合ガスは、酸素水回収手段62により酸素水回収部64において回収される。酸素水回収手段62は、酸素水回収部64と、該酸素水回収部64と反応部50とを連結する酸素水用流路65とを備える。酸素水回収部64としては、水蒸気を含む複数のガスが混合された混合ガス中から液化した水を回収するための従来公知の装置(手段)を特に制限なく好適に用いることができる。上記酸素水用流路65は、例えば反応部50から酸素水回収部64までの長さを十分に設けることにより、該流路65を流通する過程で上記酸素と水蒸気の混合ガスを空冷させて該混合ガス中の水蒸気を液化させ、酸素水回収部64で酸素水として回収できるような構成であることが好ましい。このような構成では、上記混合ガスを冷却する手段を別途設ける必要がないので好ましい。なお、酸素水用流路65に上述の混合ガス用の冷却手段を設けた構成であってもよく、あるいは酸素水回収部64に冷却手段(例えば冷却トラップ)を設け、上記混合ガスを気体状態で該酸素水回収部64に流入させて、該酸素水回収部64において冷却して酸素水として回収するような構成であってもよい。なお、反応部50に水蒸気とともに不活性ガスが供給される場合には、該不活性ガスは、反応部50から上記混合ガスとともに酸素水回収部64に流入し、該酸素水回収部64では回収されず排出される。排出された不活性ガスは再利用されるべく別途回収されて不活性ガス供給源57に戻るような配管構成であってもよい。また、かかる不活性ガスは、酸素水製造とは異なる用途で利用されるために別途回収される構成であってもよい。
次に、上記のような構成を有する酸素水製造装置を用いて酸素水を製造する方法について説明する。ここでは、図1および図2に示されるような酸素水製造用モジュール10を備えた酸素水製造装置100を用意し、かかる酸素水製造装置100を用いて酸素水を製造する場合を例として説明する。
まず、図1および図2に示されるような酸素水製造装置100を用意する。ここで、かかる酸素水製造装置100における酸素水製造用膜エレメント20を加熱し、該膜エレメント20を使用温度(すなわち該膜エレメント20に係る酸素分離膜22が酸素分離能を良好に発揮し得る温度)下にしておくことが好ましい。かかる膜エレメントの使用温度は、好ましくは500℃以上(典型的には500℃〜1500℃)、より好ましくは800℃以上(典型的には800℃〜1200℃)である。このように高温条件下で酸素水製造用膜エレメント20を使用することから、酸素水製造装置100を発電所や製鉄所、または工場等の施設に付設してかかる施設の排熱を利用することにより、上記酸素水製造用膜エレメント20を上記温度域まで容易に加熱させることができ、結果、製造コストおよび環境への負荷を低減させて酸素水を製造することができる。
次に、酸素含有ガス供給手段42により酸素含有ガス供給部40に酸素含有ガス(特に酸素濃度を指定しない限りにおいて酸素含有ガスには100%酸素分子からなるガスも包含される。)を供給する。酸素含有ガスとしては、典型的には5体積%〜100体積%の酸素を含有する。また、より好ましい酸素含有率としては、凡そ5体積%〜80体積%(さらに好ましくは凡そ5体積%〜50体積%、特に好ましくは凡そ10体積%〜30体積%)である。かかる組成の酸素含有ガスを供給することにより、本発明に係る酸素水を好適に製造し得る。かかる酸素含有ガスの好適例としては空気(酸素含有率凡そ20体積%の割合で含まれる酸素と窒素との混合ガス)である。なお、酸素含有ガス供給部40に供給する酸素含有ガスの組成は上記範囲に限定されるものではなく、例えば、実質的に酸素のみからなるガス(純酸素)を供給してもよい。
酸素水製造装置100使用時における酸素含有ガス供給部40内の雰囲気(酸素含有ガスの圧力)としては、典型的には常圧または加圧が好ましい。また、酸素イオンが酸素水製造用膜エレメント20内を酸素含有ガス供給部40側から反応部50側の方向に沿って移動し得るように、酸素含有ガス供給部40側が反応部50側よりも酸素分圧が高くなる雰囲気であって酸素水製造用膜エレメント20の両側で酸素分圧差が生じるような雰囲気にしておくことが好ましい。このような雰囲気を実現するために、例えば酸素含有ガスの圧力雰囲気を2×10Pa〜2×10Pa(より好ましくは2×10Pa〜2×10Pa)としておくことが好ましい。
酸素含有ガス供給手段42によって酸素含有ガス供給部40に供給される酸素含有ガスの流量は、例えば凡そ10mL/分〜300L/分(好ましくは凡そ50mL/分〜
200L/分)の範囲とすることができる。酸素含有ガス供給部40に供給される酸素含有ガスのうち酸素の流量(酸素供給流量)を凡そ10mL/分〜150L/分(好ましくは50mL/分〜100L/分)の範囲とすることが好ましい。
上記のようにして酸素含有ガス供給手段42により酸素含有ガス供給源43から酸素含有ガス供給部40に供給された酸素含有ガスは、酸素水製造用膜エレメント20の一方側の酸素含有ガス供給部40の酸素分圧が他方側の反応部50の酸素分圧より高いことにより、かかる酸素水製造用膜エレメント20に接触した酸素含有ガスは、(好ましくは酸素水製造用膜エレメント20の該酸素含有ガス供給部40側に付与された酸素イオン透過促進触媒の作用により)イオン化され、酸素イオンとして上記酸素含有ガス供給部40から反応部50の方向に向けて酸素水製造用膜エレメント20(厳密には酸素分離膜22)内を選択的に透過する。かかる酸素イオンが酸素水製造用膜エレメント20の反応部50と対向する側にまで到達すると、かかる側の酸素分離膜22表面上に形成されている酸化反応促進触媒からなる触媒層26により、上記酸素イオンは酸素分子に酸化される。このようにして、酸素水製造用膜エレメント20の反応部50側の表面から酸素分子が発生する。
以上のような条件で酸素水製造用膜エレメント20に酸素含有ガスを供給することにより、例えば900℃において酸素分離膜22の単位面積(cm)あたり毎分10mL以上(より好ましくは20mL/分/cm以上)の酸素(標準状態における酸素分子としての換算量)を、酸素含有ガス供給部40側から反応部50へと透過させることができる。
一方、酸素水製造用モジュール10に係る反応部50には、水蒸気供給手段52により水蒸気供給源53から水蒸気が供給される。ここで、上記酸素含有ガス供給部40と反応部50との間の酸素分圧差を駆動力として、供給された酸素含有ガス中の酸素を酸素イオンとして効率よく酸素含有ガス供給部40側から反応部50側に向けて酸素水製造用膜エレメント20内を移動させるために、上記反応部50には、水蒸気とともに不活性ガスを供給してもよい。以下に示すような不活性ガスを水蒸気とともに供給することのみで、容易に酸素含有ガス供給部40と反応部50との間の酸素分圧差を生じさせることができる。不活性ガスとしては、従来公知のキャリアガスとして用いられ得るガスを用いることができ、例えばヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N)等が挙げられる。上記例示されたガスの中では、Heの供給は、例えばNやArを同量供給した場合と比べて、酸素含有ガス供給部40と反応部50との間の酸素分圧差をより大きく生じさせ、上記酸素イオンをより一層高効率で移動させ得ることが可能である。したがって、かかる不活性ガスとしてHeを好ましく用いることができる。このような不活性ガスおよび水蒸気を反応部50に供給する場合は、例えば5体積%以上〜95体積%の割合で水蒸気を含有する混合ガスとして供給することが好ましい。より好ましくは水蒸気含有率が10体積%〜90体積%であり、さらに好ましくは20体積%以上〜80体積%である。また、酸素水製造装置100使用時における反応部50内の雰囲気は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよく、例えば、上記範囲にある酸素含有ガス供給部40内の雰囲気に対して、反応部50内の雰囲気としては、1×10−18Pa〜1×10Pa(より好ましくは1×10−18Pa〜1×10−5Pa)とすることが好ましい。
また、水蒸気供給手段52によって反応部50に供給される水蒸気の流量は、該水蒸気と上記不活性ガス(例えばHe)との混合ガス全体の流量としては、例えば10mL/分〜300L/分(好ましくは10mL/分〜200L/分)とすることができる。また、反応部50に供給される水蒸気の流量としては、5mL/分〜150L/分(より好ましくは5mL/分〜100L/分)の範囲とすることが好ましい。
上記のようにして供給された水蒸気と酸素水製造用膜エレメント20から透過してきた酸素は、反応部50において混合される。かかる混合ガス(混合物)は(典型的には水蒸気とともに供給された不活性ガスとともに)反応部50に設けられている酸素水回収手段62における酸素水用流路65を通って酸素水回収部64に流入する。上記混合ガスは上記酸素水用流路65を流通する過程で空冷(または冷却手段により冷却)されるか、あるいは酸素水回収部64において冷却されることにより、上記混合ガス中の水蒸気は液化し、酸素水として該酸素水回収部64で回収される。ここで、かかる酸素水は、上記液化した水に通常の水よりも高濃度で酸素が溶解している酸素含有水であり、かかる酸素水製造装置100によると、得られる酸素水(酸素含有水)は、例えば通常の水よりも凡そ2倍〜4倍の高濃度の酸素(例えば隔膜電極法による溶存酸素量として10mg/L〜40mg/L、好ましくは14mg〜35mg/L、例えば16mg/L〜32mg/L)が溶解し得るものである。なお、かかる酸素水は、酸素が酸素分子(気体)として水と混合した状態で水中に含まれているものも包含し得る。
以上、酸素水製造装置100を用いて酸素水を製造する方法の好適例を説明したが、このような酸素水は、例えば図1および図2に示される酸素水製造装置100において、酸素水製造用膜エレメント20の配置を図2に示される配置とは上下反転させた配置、すなわち酸素分離膜22を酸素含有ガス供給部40に対向させるとともに、多孔質基材24を反応部50に対向させるような配置にしても好ましく製造することができる。このような配置で酸素水製造用膜エレメント20を設ける場合には、酸素分離膜22における酸素含有ガス供給部40との対向面上に酸素イオン透過促進触媒を(典型的には触媒層として)付与することが好ましい。また、酸化反応促進触媒については、酸素分離膜22における反応部50側の表面(すなわち酸素分離膜22と多孔質基材24との界面)に触媒層として付与するか、あるいは多孔質基材24の細孔内に付与することが好ましい。
また、上記のような酸素水を製造する酸素水製造装置としては、例えば図3に示すような円筒状の酸素水製造用モジュール210を備えた製造装置でもよい。かかる酸素水製造用モジュール210の構成としては、平板状の酸素水製造用膜エレメント220を収容するケーシング230と、酸素水製造用膜エレメント220を所定の使用温度に維持するための加熱手段270とを備える。ケーシング230は、酸素水製造用膜エレメント220の一方の面側に接続された酸素含有ガス供給側の外管232と、酸素含有ガス供給側外管232の内部に挿入された酸素含有ガス供給側内管234と、酸素水製造用膜エレメント220の他方の面側に接続された水蒸気供給側(すなわち反応部側)の外管236と、水蒸気供給側外管236の内部に挿入された水蒸気供給側内管238とを有する。また、酸素水製造用膜エレメント220はその外周部に例えばガラスシール235がリング状に形成されている。このガラスシール235は、外管232,236の一端を酸素水製造用膜エレメント220に気密に接合するとともに、酸素水製造用膜エレメント220の外周端部を気密にシールしている。酸素水製造用膜エレメント220の上記一方の面側には、該酸素水製造用膜エレメント220および酸素含有ガス供給側外管232によって酸素含有ガス供給部240が形成されている。また、酸素水製造用膜エレメント20の上記他方の面側には、該酸素水製造用膜エレメント220および水蒸気供給側外管236によって反応部250が形成されている。
上記酸素水製造用モジュール210は、上記酸素含有ガス供給側内管234が図示しない酸素含有ガス供給手段に接続されており、酸素含有ガスは該酸素含有ガス供給側内管234を通じて酸素含有ガス供給部240に供給されるように構成されている。また、上記水蒸気供給側内管238が図示しない水蒸気供給手段に接続されており、水蒸気は該水蒸気供給側内管238を通じて反応部250に供給されるように構成されている。かかる水蒸気供給手段は水蒸気と不活性ガスとの混合ガスとして反応部250に供給し得る構成であることが好ましい。
このような構成の酸素水製造用モジュール210では、酸素含有ガス供給側内管234から酸素含有ガス供給部240に酸素含有ガスが供給され、酸素水製造用膜エレメント220により選択的に分離されて反応部250側に酸素が透過し、かかる酸素が、水蒸気供給側内管238から反応部250に供給された水蒸気と接触、混合することができる。かかる混合ガス(混合物)は、水蒸気供給側外管236を通って、図示しない酸素水回収部に流入する。このようにして酸素水を製造、回収することができる。
また、上述した酸素水製造用モジュール10,210では、酸素水製造用膜エレメント20,220として平板状のもの(すなわち平板状の多孔質基材の表面に酸素分離膜を形成して得られたもの)を用いたが、それ以外の形状の膜エレメントを用いたモジュールを備えた酸素水製造装置であってもよい。例えば、円筒状(管状)の多孔質基材と、該多孔質基材の外周側面を覆うように形成された酸素分離膜とを備えた構成の酸素水製造用膜エレメントを好ましく用いることができる。かかる酸素水製造用膜エレメントを用いる場合には、上記円筒状の多孔質基材の管内(内周側面から構成される空洞内)に酸素含有ガスを流し、上記多孔質基材の外周側面(すなわち酸素分離膜)と接する外側の空間には水蒸気を流すことにより、酸素イオンが上記円筒状の膜エレメント内をその内周面側から外周面側に向けて移動することができる。このことにより、上記円筒状の膜エレメントの外周側面に透過してきた酸素を上記水蒸気と混合させて酸素水を得ることができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1:酸素分離膜の作製>
市販の酸化ランタン(La)粉末(平均粒径約2μm)、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末(平均粒径約2μm)、酸化チタン(TiO)粉末(平均粒径約1μm)および酸化鉄(Fe)粉末(平均粒径約2μm)を、焼成後に得られる焼成体の組成の化学量論比で混合した。すなわち、Laは0.6、Srは0.4、Tiは0.1、Feは0.9モルとなるように配合して、ボールミルを用いて混合した。これにより得られた混合粉末を1200℃の焼成温度で6時間仮焼した。このようにして得られた仮焼物を湿式ボールミルにより粉砕して、平均粒径約1μmの酸素分離膜の原料粉末(La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9)を得た。
次に、この原料粉末に対して、所定のバインダ、分散剤、溶媒を混合し、100MPaでのプレス成形により直径約30mmの円板状に成形した。この成形体を大気中で1400℃〜1600℃まで昇温して6時間保持して焼成し、その後研磨することにより、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9からなる膜厚0.5μmの酸素分離膜を得た。これをサンプル(1)とする。
次に、上記サンプル(1)の製造方法において、TiO粉末を酸化ジルコニウム(ZrO)粉末(平均粒径約1μm)に変更し、Zrは0.2、Feは0.8モルとなるようにZrO粉末およびFe粉末を配合する以外は上記サンプル(1)と同様にして、(La0.6Sr0.4Zr0.2Fe0.8)からなる膜厚0.5μmの酸素分離膜を得た。これをサンプル(2)とする。
また、上記サンプル(1)の製造方法において、TiO粉末を酸化ガリウム(Ga)粉末(平均粒径約1μm)に変更し、Laは0.7、Srは0.3、Gaは0.6、Feを0.4モルとなるようにLa粉末、SrCO粉末、Ga粉末およびFe粉末を配合する以外は上記サンプル(1)と同様にして、(La0.7Sr0.3Ga0.6Fe0.4)からなる膜厚0.5μmの酸素分離膜を得た。これをサンプル(3)とする。
さらに、上記サンプル(1)の製造方法において、TiO粉末を酸化コバルト(Co)粉末(平均粒径約1μm)に変更し、Laは0.1、Srは0.9、Coを0.9、Feを0.1モルとなるようにLa粉末、SrCO粉末、Co粉末およびFe粉末を配合する以外は上記サンプル(1)と同様にして、(La0.1Sr0.9Co0.9Fe0.1)からなる膜厚0.5μmの酸素分離膜を得た。これをサンプル(4)とする。
また、高分子化合物からなる酸素分離膜として、シリコン系の酸素分離膜(シリコン系高分子膜)を用意した。これをサンプル(5)とする。
<例2:酸素分離膜の酸素透過性能評価>
上記のようにして得られた酸素分離膜としてのサンプル(1)〜(5)における酸素透過性能を以下のようにして評価した。かかる評価には、図3に示される酸素水製造用モジュール210と同様の構成の評価装置を用いた。以下、かかる評価方法を、図3を参照しつつ、酸素水製造用モジュール210を評価装置として用いたこととして説明する。
まず、サンプル(1)を評価装置(すなわち酸素水製造用モジュール210)にセットした。ここで、サンプル(1)のセットされた位置は、図3における酸素水製造用膜エレメント220の位置と同一である。次いで、酸素含有ガス供給部240に、空気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))を100mL/分の流量で供給した。また、反応部250には、水蒸気および不活性ガスのHeガスの混合ガスを100mL/分の流量で供給した。かかる混合ガスの水蒸気含有率は凡そ30体積%であった。この状態で酸素水製造用モジュール210の温度を1000℃にして(すなわちサンプル(1)を1000度に加熱して)、反応部250から水蒸気供給側外管236を通って排出されるガスの組成をガスクロマトグラフにより測定し、酸素含有ガス供給部240に供給された空気の構成成分である酸素(O)ガスが含まれるか否か(酸素透過性、すなわちOガスが反応部250側に透過しているか否か)を酸素透過速度として測定した。
また、上記酸素水製造用モジュール210を1000℃に維持し、空気、および水蒸気とHeガスの混合ガスの供給を8時間継続することにより、酸素水製造用モジュール210を8時間稼働させた。その後、反応部250から排出されるガスの組成を再び測定した。酸素水製造用モジュール210の稼働直後と8時間の稼働後における透過したOガスの速度の差を酸素透過性能維持率(8時間稼働後のOガス透過速度の稼働直後の透過速度に対する割合)として算出した。
サンプル(2)〜(5)についても上記と同様にして、酸素透過性能を評価した。これらの結果を表1に示した。
表1に示されるように、サンプル(1)〜(4)については、いずれも1.5mL/分/cm以上の酸素透過速度を有していた。また、8時間後の酸素透過性能維持率についても、サンプル(1)〜(4)のいずれも70%以上を示していた。特に、サンプル(1)および(2)については、かかる性能維持率が95%以上を示しており、TiおよびZrを含むことにより極めて良好な耐久性を有する酸素分離膜を実現可能であることが示唆された。ここで、サンプル(3)および(4)については、酸素水製造用モジュール210の稼働直後と8時間稼働後におけるEDXによる組成変化を測定したところ、かかる8時間の稼働後ではサンプル(3)ではGa、およびサンプル(4)ではCoの組成比が若干減少していた。GaまたはCoをBサイトに含む組成のペロブスカイト型酸化物であるサンプル(3)および(4)については、モジュール稼働により性能維持率は70%以上を有して使用には問題ないが、酸素分離膜の組成が若干変化し得ることがわかった。
以上より、一般式:La1−xSr1−yFe(Bは、Ti、Zr、Co、Gaのうちの1種)で表わされるペロブスカイト型酸化物は、酸素分離膜として有効であり、酸素水製造装置に具備される酸素水製造用膜エレメントの構成要素として好適に機能し得ることが分かった。
一方、サンプル(5)については、500℃に加熱した時点で燃えてしまい使用できなかった。このことにより、高分子製の酸素分離膜を備える酸素水製造装置では、例えば600℃以上の排熱であって例えば発電所や製鉄所等から発生される排熱を利用して酸素水製造装置を稼働することは困難であることが分かった。
Figure 2010269237
<例3:酸素水の酸素溶存濃度評価>
次に、サンプル(1)と同じ組成の酸素分離膜を例1と同様にして、膜厚を変えたものを5種類用意した。この用意した5種類の酸素分離膜の膜厚は、50μm、100μm、200μm、300μmおよび500μmである。この用意された膜厚50μmの酸素分離膜について、上記例2と同様の測定を行うことにより反応部250から排出された混合ガス(すなわち、水蒸気、Heガス、およびサンプル(1)を透過した酸素を含む混合ガス)を冷却トラップで冷却し、酸素水(酸素溶存水)として捕集した。次いで、かかる酸素水を大気中に曝すことにより、該酸素水からHeガス成分を除去した。次に、溶存酸素計(飯島電子工業株式会社製BOD測定用DOメータ(型式B−100Z)を用いて上記酸素水の酸素溶存量(Dissolved Oxygen;DO)を室温で測定した。
その他の4種類の膜厚の酸素分離膜についても、上記と同様にして酸素溶存量を測定した。上記5種類の酸素分離膜の膜厚に対する得られた酸素水の酸素溶存量との関係について、その測定結果を表2に示す。なお、上記測定に用いた水蒸気(すなわち、酸素分離膜未使用の場合の水蒸気)を上記と同様にして冷却することにより得られた水の酸素溶存量を測定したところ、7mg/Lであった。
Figure 2010269237
表2に示されるように、酸素分離膜を用いて得られた酸素水の酸素溶存量は、酸素分離膜を用いない場合の水よりも大きくなることが確認された。また、かかる酸素分離膜の膜厚が小さくなるにつれて酸素水の酸素溶存量が増大しており、特に、膜厚が100μm以下の酸素分離膜では、酸素溶存量が20mg/L以上の高濃度の酸素水が得られた。
また、表1に示されるように、上記サンプル(2)〜(4)においても、サンプル(1)と同様に十分な酸素透過速度が得られていることから、サンプル(2)〜(4)のそれぞれと同組成の酸素分離膜を用いることによっても、表2に示されるような上記サンプル(1)と同様の酸素溶存量の酸素水が得られ得る。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、さらに別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えうるものである。
10 酸素水製造用モジュール
20 酸素水製造用膜エレメント
22 酸素分離膜
24 多孔質基材
26 触媒層
30 ケーシング
40 酸素含有ガス供給部
42 酸素含有ガス供給手段
43 酸素含有ガス供給源
45 酸素含有ガス用流路
50 反応部
52 水蒸気供給手段
53 水蒸気供給源
55 水蒸気用流路
57 不活性ガス供給源
62 酸素水回収手段
64 酸素水回収部
65 酸素水用流路
100 酸素水製造装置
210 酸素水製造用モジュール
220 酸素水製造用膜エレメント
230 ケーシング
232 酸素含有ガス供給側外管
234 酸素含有ガス供給側内管
235 ガラスシール
236 水蒸気供給側外管
238 水蒸気供給側内管
240 酸素含有ガス供給部
250 反応部
270 加熱手段

Claims (8)

  1. 酸素水を製造する装置であって、
    酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備える酸素水製造用膜エレメントと、
    前記酸素水製造用膜エレメントにより選択的に分離された酸素が水蒸気と混合される反応部と、
    前記酸素と前記水蒸気との混合により生成した酸素水を回収する酸素水回収部と、
    を備える酸素水製造装置。
  2. 前記酸素イオン伝導性酸化物は、一般式:
    Ln1−x1−yFe3−δ (1)
    (ただし、Lnは、ランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0<y≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物である、請求項1に記載の酸素水製造装置。
  3. 前記酸素イオン伝導性酸化物は、前記一般式(1)のBを構成する元素としてTi、Zr、Co、およびGaからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項2に記載の酸素水製造装置。
  4. 前記酸素水製造用膜エレメントを500℃以上に加熱する加熱手段をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素水製造装置。
  5. 酸素水を製造する装置に具備される酸素水製造用膜エレメントであって、
    酸素イオン伝導性酸化物からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備えており、
    前記酸素イオン伝導性酸化物が、一般式:
    Ln1−x1−yFe3−δ (1)
    (ただし、Lnは、ランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0<y≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物である、酸素水製造用膜エレメント。
  6. 前記酸素イオン伝導性酸化物が、前記一般式(1)のBを構成する元素としてTi、Zr、Co、およびGaからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項5に記載の酸素水製造用膜エレメント。
  7. 酸素水を製造する方法であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載の酸素水製造装置を用意すること、
    前記酸素水製造用膜エレメントの一方の側に酸素含有ガスを供給し、該膜エレメントの他方の側に水蒸気を供給すること、
    前記酸素水製造用膜エレメントの一方側から他方側に向けて前記酸素含有ガスを透過させ、選択的に分離された酸素と前記水蒸気とを混合させること、
    前記酸素と前記水蒸気との混合物を冷却し、酸素水として回収すること、
    を包含する、酸素水の製造方法。
  8. 前記酸素水製造用膜エレメントによる酸素の分離を500℃以上の温度域下で行う、請求項7に記載の酸素水の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014146583A (ja) * 2013-01-30 2014-08-14 Noritake Co Ltd ペースト組成物と太陽電池
KR102232678B1 (ko) * 2020-01-22 2021-03-25 강법식 사용이 편리한 산소수 제조장치

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