JP2009173879A - インクジェットインク及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光感度が高く、高速化、または装置の小型化が可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも水、顔料分散体、エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性または架橋性物質、及び水溶性の光開始剤からなるインクジェットインクにおいて、該顔料分散体がアニオン性であり、かつ該光開始剤がベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性で開裂型の光開始剤であることを特徴とするインクジェットインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、UV感度が高く、さらにインク吸収性の少ない、またはインク吸収性のない記録媒体に対してビーディングやカラーブリードのない、UV硬化/架橋型のインクジェットインク及びこれを用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、比較的簡単な装置で高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また、使用される用途も多岐に亘り、それぞれの目的にあった記録媒体あるいはインクが使用される。特に、近年では記録速度の大幅な向上がみられ、軽印刷用途にも耐え得る性能を持つプリンターの開発も行われている。
しかしながら、インクジェット記録方法は、低粘度の液滴を出射して画像を形成するために直線を引いても数珠状の線になるビーディング、及び低粘度の色違いインクを同時に出射して画像を形成するために色混ざり(ブリードと呼ばれる)が発生する欠点を持っており、その解決方法が種々試みられている。
その一つとして色材、重合性材料及び光開始剤を用いたインクを出射し、紫外線を露光することにより硬化するインクジェットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この方式は、インクジェットプリンターによって形成された画像部に紫外光を当てて、画像部を極めて短い時間に硬化することで、ビーディング、ブリードが防止され、高速印刷が要求される軽印刷に期待されている。しかし、現在使われているUVインクジェットインクでは、硬化させるには極めて強い紫外光を当てる必要があり、装置も大型になって、広く普及するまでには至っておらず、光感度の高いUVインクジェットインクが求められていた。
一方、従来のUVインクジェットは、画質の面では、水系のインクジェットインクとインクジェット専用紙を用いて印刷する方式と比べると、インクの大部分を重合性または架橋性材料が占めているために、画像部は非画像部に比べて盛り上がり、光沢が画像部と非画像部で異なる欠点があった。
この光沢差を改良するために、顔料と重合性材料を有機溶剤に溶解させた溶剤系UVインク(例えば、特許文献2参照)、水溶性の重合性材料を用いて溶媒に水を用いた水系の紫外線重合モノマーが提案された(例えば、特許文献3参照)。しかし、重合性材料に低分子化合物を用いているため、出射性に影響を及ぼすほど多くの重合性材料を用いなければ硬化できないために、実用化には至らなかった。
この出射性と光沢差を改良し、光感度も高い水系UVインクとして、水溶性の架橋性ポリマーを用いた水系UVインクが提案されている(例えば、特許文献4参照)。このインクを用いると、少量の架橋性ポリマーを用いることで、出射性と光沢差が改善し、画像のブリードとビーディングの防止が飛躍的に向上した。しかし、光感度の点では、いまだにブラックインク等で不足しており、小さな光源でブリード、ビーディングを防止するには、さらなる光感度の向上が必要であった。
また、水溶性のアシルフォスフィンオキシド光開始剤と複数のアクリル基を有する水溶性重合性化合物を用いて、光感度を高め、ブリードを抑える試みがある(例えば、特許文献5参照)。確かに、アシルフォスフィンオキシドは420nmまで波長が伸びているために、400nm付近に吸収の少ないシアンインクに用いることで、ブリードを抑えられることが記載されている。しかしながら、全色領域で光吸収のあるブラックインクに単にアシルフォスフィンオキシドを用いただけでは、かなりの光感度の低下が起こり、ブリードとビーディングを防止するには不十分であった。
米国特許第4,228,438号明細書 特公平5−64667号公報 特開平7−224241号公報 国際公開第06/80139号パンフレット 特開2005−307199号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光感度が高く、高速化、または装置の小型化が可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.少なくとも水、顔料分散体、エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性または架橋性物質、及び水溶性の光開始剤からなるインクジェットインクにおいて、該顔料分散体がアニオン性であり、かつ該光開始剤がベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性で開裂型の光開始剤であることを特徴とするインクジェットインク。
2.前記光開始剤が、ベンジルケタール型光開始剤またはα−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットインク。
3.前記光開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェットインク。
一般式(1) A−(O−X−Y)
(式中、Aはベンジルケタール母核、ベンゾイン母核、α−ヒドロキシアセトフェノン母核またはオキシムエステル型母核を表し、XはC1からC4までのアルキレン基を表し、Yはカルボン酸、スルホン酸、硫酸またはそれらの塩を表す。nは1または2を表す。)
4.前記顔料分散体が、表面にアニオン基をペンダントした自己分散顔料分散体またはアニオン性高分子分散剤を用いた顔料分散体であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
5.前記自己分散顔料分散体のζ電位が−40〜−60mV、または前記アニオン性高分子分散剤を用いた顔料分散体のζ電位が−10〜−40mVであることを特徴とする前記4に記載のインクジェットインク。
6.1価の金属カチオンと1価の無機または有機のアンモニウムイオンの総和のインクに対する濃度が0.1〜5質量%であり、かつ前記無機または有機のアンモニウムイオンが、前記金属カチオンより多いことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
7.前記インクジェットインクがブラックインクであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
8.前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェットヘッドから記録媒体上に出射した後、紫外線を照射し、画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
9.前記紫外線の照射強度が75mJ/cm以下であることを特徴とする前記8に記載のインクジェット記録方法。
本発明により、光感度が高く、高速化、または装置の小型化が可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。特にブラックインクでこの効果を享受することができる。
顔料を含有するインクジェットインク(以下、単にインクともいう)と顔料の入っていないインクの硬化に必要な光量を測定すると、顔料の光吸収量を考慮しても、明らかに顔料の入っているインクの方が硬化が悪く、顔料の光吸収量を補正した量の数倍の光量を必要とすることが分かった。特にブラックインクでは顕著であった。この原因として、UV照射による光開始剤の分解によって生じたラジカルのかなりの量が、カーボンブラック等の顔料にトラップされているためと考え、それを回避するために、顔料分散体と光開始剤を同極性にすれば、静電反発でトラップされなくなるだろうと考えた。
しかしながら、カチオン顔料分散体とカチオン性水溶性光開始剤の組み合わせでは、光感度は向上せず、顔料分散体がアニオン性であり、かつ該光開始剤がベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性で開裂型の光開始剤の場合のみ、感度アップが図れることが分かった。この理由としては、カチオン顔料分散体の表面、及びカチオン性水溶性光開始剤には、3級、4級のアンモニウム塩が存在するために、光照射時に3級、4級のアンモニウムのアルキル基が反応を起こし、重合/架橋性物質の重合/架橋に悪影響を起こすためと考えている。アニオン性顔料分散体とベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性光開始剤の場合は、アニオン基で光で活性な基は存在しないので、光感度アップが図れたこと、アニオン性顔料分散剤の酸基と、ベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性光開始剤のアニオン基が互いに反発しあい、その結果、光開始剤のラジカル発生部が顔料に近づき難くなるために、水溶性の重合性もしくは架橋性物質へのラジカルの受け渡しがスムーズに進んだものと考えている。一方、アニオン性の水溶性のアシルフォスフィンオキシド光開始剤では感度アップが図れなかったが、その理由として、アシルホスフィン型光開始剤は酸素との親和性が高いために、顔料に吸着して存在している溶存酸素の影響で感度が上がらなかったのではないかと推測している。
アニオン性顔料分散体の中でも、顔料分散剤に一般に用いられる低分子の界面活性剤でも、もちろん本発明の効果は得られるが、アニオン性高分子分散剤と自己分散顔料分散体を特に好ましく用いることができる。その理由として、低分子の界面活性剤は顔料との吸脱着が頻繁に起きるために、光開始剤と顔料との反発効果が薄れるのに対し、顔料と吸着の強いアニオン性高分子分散剤、あるいは、顔料と化学的に結合している自己分散剤顔料分散体の場合は、アニオン基が固定されているために、光開始剤と顔料との反発効果が十分に得られるものと考えている。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《アニオン性の開裂型光開始剤》
本発明のインクは、水、顔料分散体、エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性または架橋性物質とともに、ベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性で開裂型の光開始剤を含有することが特徴である。
アニオン性で開裂型の光開始剤とは、光照射により分子内で開裂を起こして、ラジカルが生じる開裂型光開始剤母核に、アニオン基をペンダントした光開始剤を指す。
従来から光開始剤は、光照射により分子内で開裂を起こして、ラジカルが生じる開裂型光開始剤と、光照射により光開始剤が励起状態になり、アミン等の水素を引き抜いて、ラジカルが発生する水素引き抜き型の光開始剤、2分子がイオン対を形成し、電子移動によりラジカルが形成されるイオン対間電子移動型がある。水素引き抜き型光開始剤、イオン対間電子移動型開始剤を用いた場合は、他の分子、特に顔料の影響を大きく受け、全く硬化しないか、硬化しても光の吸収量から計算される光量よりも非常に多くの光照射をしなければ硬化せず、本発明の目的の効果を得ることができない。
水性インクの場合、これらの光開始剤の母核にアニオン基をペンダントした光開始剤を用いることにより、高い光感度を得ることができる。
これらの光開始剤の中でも、ベンジルケタール型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤はブラックインクでの光感度が高く、好ましく用いられる。この理由として、ベンジルケタール型光開始剤は、ベンゾイルラジカルの他に分子量が小さいアルキルラジカルが重合または架橋に寄与するために、また、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤のα位の水酸基も顔料分散体と水素結合するので、光開裂して活性種が生成するベンゾイルラジカルが、顔料分散体の外側を向きやすくなっているため、この分子量の小さく移動しやすいアルキルラジカルが、感度アップに寄与していると考えている。
アニオン基をペンダントする多くの場合、次の形態をとる。
アニオン基−ペンダント基−光開始剤母核
ここで光開始剤母核とは、光開始剤として機能する基本骨格であり、具体的には下記の骨格をいう。ここで、*は骨格には含めないが、価数を示すために示したものである。
Figure 2009173879
ペンダント基は2価の連結基を表し、例えば、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基等)、アルキレンチオ基(メチレンチオ基、エチレンチオ基、プロピレンチオ基等)を表す。また、ペンダント基には、国際公開第00/31030号パンフレットに記載されているようなベンゾフェノン骨格をペンダント基に加えてもよい。
アニオン基としては、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸またはそれらの塩が挙げられる。塩とは、アニオン基を中和するのに必要なカチオンであり、1価の金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム)、1価の無機アンモニウム塩(アンモニウム塩)が挙げられる。これらのアニオン基を用いれば、本発明の目的を達成することができるが、合成の容易性、インクの安定性、アニオン性分散剤との吸着による光感度の低下防止の観点から、カルボン酸、スルホン酸が特に好ましい。硫酸塩は水中で加水分解の危険があり、リン酸、ホウ酸はpKaが中性またはそれ以上にあるために、中性付近で光感度の低下を招く可能性がある。
その他、有機アンモニウム塩(N−メチルアンモニウムエタノール、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等)、2価金属塩(カルシウム、マグネシウム)が挙げられるが、溶解性の観点、pHが中性の方が好ましいことから、1価の金属塩、または1価のアンモニウム塩が好ましい。
特に好ましくは、
一般式 A−(O−X−Y)
で表される光開始剤が好ましい。ここで、Aはベンジルケタール母核、ベンゾイン母核、α−ヒドロキシアセトフェノン母核またはオキシムエステル型母核を表す。XはC1からC4までのアルキレン基を表し、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表す。Yはカルボン酸、スルホン酸、硫酸またはそれらの塩を表す。nは1または2を表す。一般式(1)で表される化合物が、感度が高くなる理由については、母核に対して、酸素原子とアルキル基を介して、アニオン基がペンダントしていると、その酸素原子が水と水素結合を作ろうとするために、母核の顔料粒子への吸着が阻害されているために、感度が高くなっていると考えている。さらに好ましくは、上記一般式で、Aがベンジルケタール母核、α−ヒドロキシアセトフェノン母核である光開始剤が好ましい。
具体的なアニオン性で開裂型の光開始剤の例を次に挙げるが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2009173879
Figure 2009173879
これらの光開始剤を得る方法は既存の合成方法を用いることができる。例えば、ベンジルケタール母核にカルボン酸をペンダントした光開始剤は、特願2007−087237号公報に記載されている。α−ヒドロキシアセトフェノン母核にカルボン酸をペンダントした開裂型の光開始剤は特開昭63−254105号公報に記載されている。
本発明のインクに用いる光開始剤の量は、インクの0.05〜10質量%の範囲で用いることができる。0.05質量%より少ないと硬化に必要な光量が多くなるために、経済的に不都合であり、10質量%以上では光開始剤が画像中に多くなりすぎて、得られた画像の耐久性に不都合が生じる。
《顔料》
本発明には顔料分散体として顔料が用いられる。
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが、アニオン性顔料が好ましい。
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
本発明のインクに用いる顔料の量は特に限定されないが、0.01〜20質量%の間で用いることができる。
《アニオン性顔料分散体》
本発明のインクは、水、エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性または架橋性物質、光開始剤とともに、アニオン性の顔料分散体を含有することが特徴である。
アニオン性顔料分散体とは、後述するアニオン性自己分散顔料、または、顔料をアニオン性の分散剤で分散された分散物をいう。アニオン性とは、顔料の分散剤がカルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホウ酸、またはそれらの塩を分子内に有する分散剤であり、塩とは、アニオン基を中和するのに必要なカチオンであり、1価の金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム)、1価の無機アンモニウム塩(アンモニウム塩)、有機アンモニウム塩(N−メチルアンモニウムエタノール、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等)、2価金属塩(カルシウム、マグネシウム)が挙げられる。溶解性の観点、pHが中性の方が好ましいことから、1価の無機または有機のアンモニウム塩が好ましい。
(アニオン性界面活性剤)
本発明に用いることのできるアニオン性の顔料分散体の分散剤には、アニオン性界面活性剤を用いることもできる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類を挙げることができる。
(アニオン性高分子分散剤)
アニオン性高分子分散剤とは、重量平均分子量が1000以上、200000以下のアニオン性分散剤をいう。重量平均分子量はGPCにより測定することができる。本発明に用いることのできるアニオン性の顔料分散体の分散剤は、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸や、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩等の共重合体あるいは樹脂が、例えば、カルボン酸、スルホン酸またはホスホン酸の官能性を持つホモポリマー、コポリマー、ターポリマーを含むものである。
酸の官能性を与えるモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、ビニル酢酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸及びビニルスルホン酸等である。
酸基を中和に必要な塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン類が挙げられるが、本発明においてはアミン類が特に好ましい。
これらのアニオン性高分子分散剤は、特に好ましく用いることができる。本発明におけるアニオン性高分子分散剤の量は、使用する顔料の5〜200質量%の間で用いることができる。少なすぎると顔料の分散安定性が悪化するためにインク保存性が悪くなり、多すぎると遊離の高分子分散剤が多くなり、出射性等に悪影響を及ぼす。
(アニオン性自己分散顔料)
本発明に用いることのできるアニオン性自己分散顔料とは、表面にアニオン性基を有し、分散剤なしで分散が可能な顔料を指す。アニオン性の自己分散顔料は顔料に酸性基が修飾されており、これを塩基性化合物により中和しアニオン性基として、分散剤がなくとも水への分散を可能とした顔料を指す。
表面に酸性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面を直接酸性基で修飾した顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で、直接またはジョイントを介して酸性基が結合しているものをいう。
酸性基(極性基ともいう)としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、さらに好ましくはスルホン酸基である。
酸性基の修飾剤としては、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸、スルホン化ピリジン塩、スルファミン酸等の硫黄原子を含有する処理剤、顔料粒子表面を酸化してカルボン酸基を導入する次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等のカルボキシル化剤が挙げられる。中でも、三酸化硫黄、スルホン化ピリジン塩またはスルファミン酸等のスルホン化剤、もしくはカルボキシル化剤が好ましい。
表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、例えば、国際公開第97/48769号パンフレット、特開平10−110129号、同11−246807号、同11−57458号、同11−189739号、同11−323232号、特開2000−265094号の各公報等に記載の顔料粒子表面を適当な酸化剤で酸化させることにより、顔料表面の少なくとも一部にスルホン酸基、もしくはその塩と言った極性基を導入する方法が挙げられる。
具体的にはカーボンブラックを濃硝酸で酸化したり、カラー顔料の場合はスルフォランやN−メチル−2−ピロリドン中で、スルファミン酸、スルホン化ピリジン塩、アミド硫酸等で酸化することにより調製することができる。これらの反応で酸化が進みすぎ、水溶性となってしまった物は除去、精製することにより、顔料分散体を得ることができる。また、酸化によりスルホン酸基を表面に導入した場合は、酸性基を必要に応じて塩基性化合物を用いて中和してもよい。
その他の方法としては、特開平11−49974号、特開2000−273383号、同2000−303014号の各公報等に記載の顔料誘導体をミリング等の処理で顔料粒子表面に吸着させる方法、特開2002−179977号、同2002−201401号の各公報に記載の顔料を顔料誘導体と共に溶媒で溶解した後、貧溶媒中で晶析させる方法等を挙げることができ、いずれの方法でも容易に表面に極性基を有する顔料粒子を得ることができる。
酸性基を中和する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン類が挙げられるが、本発明においてはアミン類が特に好ましい。
本発明のインクに用いる自己分散顔料の量は、特に限定されないが、0.01〜20質量%の間で用いることができる。
(ζ電位)
また、本発明のインクでは、インクの光感度、特にブラックインクの光感度をアップするためには、顔料分散体のζ電位を最適にする必要がある。ζ電位とは、分散体表面における電位を測定した値であり、極性の大きさを表す。すなわち、絶対値で大きいほど、同じ極性同士では反発力が強くなり、異なる極性同士では吸引力が強くなる。アニオン性開裂型光開始剤とアニオン性高分子分散剤で分散された顔料分散体を単に用いても、インクの光感度はある程度向上するが、水中でのζ電位が−10〜−40mVであるアニオン性高分子分散剤を用いれば、さらに感度は向上する。さらに好ましくは、水中でのζ電位が−15〜−40mVであるアニオン性高分子分散剤である。その理由として、ζ電位の絶対値が小さくなればなるほど電気的反発力が弱くなり、その結果、アニオン性光開始剤との反発力が得られなくなる。逆に絶対値が大きくなればなるほど顔料粒子同士の電気的反発力が強く、互いに離れようとする結果、アニオン性光開始剤があたかもミセルのように局部的に密集した状態になる。その密集したアニオン性光開始剤から光照射で生成したラジカルもまた密集してしまうために、重合性または架橋性化合物の重合または架橋が不均一に起こり、本発明の目的であるビーディング防止、ブリード防止は不十分になってしまうと考えている。
一方、顔料がアニオン性の自己分散顔料分散体の場合は、水中でのζ電位が−40〜−60mVのときに、光感度が高くなることを見出した。アニオン性高分子分散剤で分散した顔料分散体よりもζ電位の絶対値を大きくすることが必要な理由としては、自己分散顔料分散体の場合は高分子分子剤の取り巻きがないために、電気二重層の厚みが薄くなって、絶対値として大きな値を示したと考えている。
1価の金属カチオン、無機または有機アンモニウムの量も、分散体のζ電位に影響を及ぼすため、硬化に大きな影響を与える。好ましくは、1価の金属カチオンイオン量と1価のアンモニウムイオン量の総和が0.1〜5質量%であり、かつ1価の無機または有機アンモニウムイオンが1価の金属カチオンよりも多いことが好ましい。金属カチオンが全く入っていないと硬化が若干悪化する。その原因は、金属カチオンは無機または有機アンモニウムイオンよりも顔料分散体表面に近く存在しているために、電気二重層が薄くなり、光開始剤と顔料分散体との反発が弱くなるためと思われる。
本発明の範囲にζ電位を調整する方法は、界面化学でよく知られている手段を用いることができる。一つは、高分子分散剤のアニオン基の密度、自己分散顔料のアニオン基の密度を増減させる。具体的には、アニオン性高分子分散剤のアニオン基、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のアニオン基を変化させる方法がある。また、カウンター塩を変えて変化させることもできる。具体的には、ナトリウム塩等の無機塩の変わりに、ジエタノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩にすること、ゲル濾過、または無機塩、有機アンモニウム塩の添加により塩の含有量を変化させることにより、調整することもできる。
《顔料の分散方法》
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましい。顔料分散体の平均粒径が500nmを越えると、分散が不安定となり、また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
《エチレン性不飽和基を有する水溶性の重合性または架橋性物質》
エチレン性不飽和基を有する水溶性の重合性または架橋性物質とは、化合物中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ水中に0.1質量%以上溶解する化合物である。具体的には、エチレン性不飽和基として、スチレン基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、クロトン酸基、マレイン酸基、イタコン酸基を少なくとも1つ以上分子中に有し、水溶性基として、水酸基、エチレンオキシド基、アミド基、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホウ酸基またはそれらの塩化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基として好ましくは、アクリル基、メタクリル基を1つ以上分子中に有する化合物である。
具体的には、単量体、または、複数の単量体が重合したオリゴマー/ポリマーが挙げられる。単量体のみで構成される場合は、単量体の一部、または全部に水溶性基が結合していることが好ましい。また、オリゴマー、ポリマーの場合は、複数の単量体の一部ノニオン性の単量体が含まれていることが好ましい。これは、全てがノニオン性のエチレン性不飽和基を有する単量体で構成されると、インクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットヘッドから出射できないためであり、一部ノニオン性のエチレン不飽和基を有する単量体を含むことにより、画像形成が首尾よくできるようになるためである。
単量体の具体的な例としては、以下が挙げられる。
スチレン基を有する化合物の例としては、スチレンスルホン酸、スチレンカルボン酸、アクリル基、メタクリル基(以後、2つ併せて(メタ)アクリル基と記す)の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノまたはジ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールのモノ、ジまたはトリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有するポリオールポリ(メタ)アクリレート;エチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、及びプロピレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート。ヘキサンジオール、ノナンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリシクロデカンジメチロール及びジペンタエリスリトール、グリセリン等のポリオールのエチレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート、またはこれらの塩が挙げられる。
エチレン性不飽和基を有する化合物が、オリゴマーまたは重合体の場合は、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体であるカルボキシル基含有共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させて得られる重合体及びその塩、脂肪酸及びアルキレングリコールモノグリシジルエーテルのエステルに(メタ)アクリル酸を付加させたもの、末端にエチレン性二重結合を持ちアルコール部分にポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタ(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートを連結基で介して結合されたポリビニルアルコールポリマー等が挙げられる。
ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと多価イソシアネートの両末端に(メタ)アクリル基が結合したもので、多価アルコール成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、エチレングリコールアジペート、ブタンジオールアジペート、ブタンジオールフタレート及びヘキサンジオールフタレート等のポリエステルジオール、多価イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと脂肪酸の縮合物の末端に(メタ)アクリル基を有するものが挙げられる。ポリエステル型の多価アルコールとしては、ポリウレタン(メタ)アクリレートで提示した多価アルコールと同じであり、脂肪酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の多塩基酸、並びにその無水物等が挙げられる。
本発明に用いるエチレン性不飽和基を有する水溶性の重合性/架橋性物質として、光感度が高いことから、(メタ)アクリレートを連結基を介して結合されたポリビニルアルコールポリマーが特に好ましく用いられる。
この例としては、特開2000−181062号公報、特開2004−189841号公報記載のように、(メタ)アクリル基を末端に他の末端にアルデヒド基を持つ化合物をポリビニルアルコールの水酸基にアセタール化して結合したポリマーが挙げられる。例えば、特開2000−181062号公報、特開2004−189841号公報に示される下記一般式(2)で表される部分構造を有する樹脂(ノニオン性)が反応性の観点から好ましい。
Figure 2009173879
式中、Rはメチル基または水素原子を表し、nは1または2を表し、Xは−(CH−COO−または−O−、Yは芳香族環または単結合、mは0〜6までの整数を表す。
また、特開2004−161942号公報に記載されている光重合型の下記一般式(3)で表される変性基(ノニオン性)を、従来公知の水溶性樹脂に用いて合成して得られたエチレン性不飽和基を有する水溶性の重合性または架橋性物質も好ましく用いることができる。
Figure 2009173879
式中、Rはメチル基または水素原子を表し、Rは炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。
エチレン性不飽和基を有する化合物の分子量は、特に限定されず、100〜1000000ならば使用することができるが、好ましくは分子量6000〜200000であり、さらに好ましくは親水性主鎖に複数の側鎖を有し、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高分子で分子量6000以上のものが好ましい。分子量6000〜200000が好ましい理由としては、分子量が6000以上になるとビーディング、ブリードが効率的に防止できるからであり、200000以下であると出射性への影響が少ないためである。好ましくは、8000〜100000である。
そのメカニズムは推測の域を出ないが、分子量6000以上に大きくなると分子内にあるエチレン不飽和基が極一部重合/架橋しても、飛躍的に分子量が増大するために見かけの粘度が増大し、ビーディングやブリードが短時間で抑えられると考えている。また、200000以下であると、インク粘度があまり大きくならず、出射可能なインク粘度に収まっているためと考えている。
さらに好ましくは、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高分子である。その理由としては、側鎖に複数の架橋基があるため側鎖間で2箇所の結合が起きれば、立体的に固定されるため、さらに短時間で硬化できるためと考えている。
好ましくは、エチレン性不飽和結合を含有する重合/架橋性物質の一部にノニオン性のエチレン性不飽和結合を含有する重合/架橋性部を有することが好ましい。
本発明のインクに用いるエチレン性不飽和基を有する化合物の量は、硬化できる量であるならば、特に制限されない。
《併用できる光開始剤》
本発明においては、本発明に係る光開始剤の他に必要に応じて他の光開始剤を添加してもよい。
併用してもよい他の光開始剤としては下記が挙げられる。
1)ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、及びそれらの塩
2)チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、及びそれらの塩
3)エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類
4)アセトフェノン類
5)ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類
6)2,4,6−トリハロメチルトリアジン類
7)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類
8)ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類
9)9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体
10)ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
11)4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、及びこれらのエチレンオキシド付加物。
また、インクに加える形態は必要に応じて溶解物、または分散物として加えることができる。
《光増感剤》
本発明の光重合性組成物には光増感剤を用いることができる。光増感剤の例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等を挙げられる。
《水溶性溶媒》
本発明に係る溶媒としては水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒がさらに好ましく用いられる。
好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
本発明における水と水溶性溶媒の使用量は、特に限定されず、水はインクの30〜90質量%、水溶性溶媒はインクの70〜10質量%の範囲内で用いることができる。
《各種添加剤》
本発明のインクにおいては、その他に従来公知の添加剤を含有することができる。例えば、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等である。
《インクの物性》
本発明のインクのpHは3〜11が好ましく、より好ましくは4.0〜10.5である。粘度は、1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは、1.2〜50mPa・sである。表面張力は、18〜70mN/mが好ましく、より好ましくは、22〜60mN/mである。この範囲を超えるpH、粘度、表面張力の場合は、インクジェットヘッドに悪影響を及ぼすが、この範囲内ならば、支障なくヘッドから出射が可能である。
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェット記録方法は、上述したインクを、インクジェットヘッドから記録媒体上に出射した後、紫外線を照射し、画像を形成することを特徴とする。
〔インクジェット記録装置〕
本発明のインクを出射するためのインクジェットヘッドは特に制限を受けず、熱により液体の沸騰現象を利用するサーマル方式、電場による変形するピエゾ素子を利用するピエゾ型いずれでも使用することができる。
〔記録媒体〕
本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録媒体としては、記録用紙、各種フィルム、インクジェット用記録媒体が挙げられる。
(記録用紙)
紙には塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m当たりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m当たりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m当たりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙等を挙げることができる。
非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙等を挙げることができる。さらに詳しくは、「最新紙加工便覧」紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、「印刷工学便覧」日本印刷学会編、等に詳細に記載されている。
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。
上質紙及び色上質紙、再生紙、複写用紙・色もの、OCR用紙、ノーカーボン紙・色もの、ユポ60、80、110ミクロン、ユポコート70、90ミクロン等の合成紙、その他片面アート紙68kg、コート紙90kg、フォームマット紙70、90、110kg、発泡PET38ミクロン、みつおりくん(以上、小林記録紙製)、OK上質紙、ニューOK上質紙、サンフラワー、フェニックス、OKロイヤルホワイト、輸出上質紙(NPP、NCP、NWP、ロイヤルホワイト)、OK書籍用紙、OKクリーム書籍用紙、クリーム上質紙、OK地図用紙、OKいしかり、きゅうれい、OKフォーム、OKH、NIP−N(以上、新王子製紙製)、金王、東光、輸出上質紙、特需上質紙、書籍用紙、書籍用紙L、淡クリーム書籍用紙、小理教科書用紙、連続伝票用紙、上質NIP用紙、銀環、金陽、金陽(W)、ブリッジ、キャピタル、銀環書籍、ハープ、ハープクリーム、SKカラー、証券用紙、オペラクリーム、オペラ、KYPカルテ、シルビアHN、エクセレントフォーム、NPIフォームDX(以上、日本製紙製)、パール、金菱、ウスクリーム上質紙、特製書籍用紙、スーパー書籍用紙、書籍用紙、ダイヤフォーム、インクジェットフォーム(以上、三菱製紙製)、金毯V、金毯SW、白象、高級出版用紙、クリーム金毯、クリーム白象、証券・金券用紙、書籍用紙、地図用紙、複写用紙、HNF(以上、北越製紙製)、しおらい、電話帳表紙、書籍用紙、クリームしおらい、クリームしおらい中ラフ、クリームしおらい大ラフ、DSK(以上、大昭和製紙製)、せんだいMP上質紙、錦江、雷鳥上質、掛紙、色紙原紙、辞典用紙、クリーム書籍、白色書籍、クリーム上質紙、地図用紙、連続伝票用紙(以上、中越パルプ製)、OP金桜(チューエツ)、金砂、参考書用紙、交換証用紙(白)、フォーム印刷用紙、KRF、白フォーム、カラーフォーム、(K)NIP、ファインPPC、紀州インクジェット用紙(以上、紀州製紙製)、たいおう、ブライトフォーム、カント、カントホワイト、ダンテ、CM用紙、ダンテコミック、ハイネ、文庫本用紙、ハイネS、ニューAD用紙、ユトリロエクセル、エクセルスーパーA、カントエクセル、エクセルスーパーB、ダンテエクセル、ハイネエクセル、エクセルスーパーC、エクセルスーパーD、ADエクセル、エクセルスーパーE、ニューブライトフォーム、ニューブライトNIP(以上、大王製紙製)、日輪、月輪、雲嶺、銀河、白雲、ワイス、月輪エース、白雲エース、雲岑エース(以上、日本紙業製)、たいおう、ブライトフォーム、ブライトニップ(以上、名古屋パルプ製)、牡丹A、金鳩、特牡丹、白牡丹A、白牡丹C、銀鳩、スーパー白牡丹A、淡クリーム白牡丹、特中質紙、白鳩、スーパー中質紙、青鳩、赤鳩、金鳩Mスノービジョン、スノービジョン、金鳩スノービジョン、白鳩M、スーパーDX、はまなすO、赤鳩M、HKスーパー印刷紙(以上、本州製紙製)、スターリンデン(A・AW)、スターエルム、スターメイプル、スターローレル、スターポプラ、MOP、スターチェリーI、チェリーIスーパー、チェリーIIスーパー、スターチェリーIII、スターチェリーIV、チェリーIIIスーパー、チェリーIVスーパー(以上、丸住製紙製)、SHF(以上、東洋パルプ製)、TRP(以上、東海パルプ製)等が挙げられる。
(各種フィルム)
各種フィルムとしては、一般的に使用されているものは全て使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等がある。また、写真用印画紙であるレジンコートペーパーや合成紙であるユポ紙等も使用できる。
(各種インクジェット用記録媒体)
各種インクジェット用記録媒体としては、基材に吸収性支持体や非吸収性支持体を用いて、表面にインク受容層が形成されたものである。インク受容層としては、コート層、膨潤層、微細空隙層からなるものがある。膨潤層は水溶性ポリマーからなるインク受容層が膨潤することでインクを吸収する。微細空隙層は2次粒径が20〜200nm程度の無機あるいは有機微粒子とバインダーからなり、100nm程度の微細な空隙がインクを吸収する。
近年は、紙基材の両面をオレフィン樹脂で被覆したRCペーパーを用いて上記微細空隙層を設けたインクジェット記録媒体が、写真画像の記録媒体として好んで用いられている。
〔紫外線照射〕
紫外線光源としては、例えば0.1kPaから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等従来公知の光源が用いられる。
しかしながら、本発明に係る光開始剤の性能を最大限に発揮して、装置を小型化することを意図すれば、光波長310〜380nmに主波長を有するLEDを用いるのが推奨される。特に、発光波長365nmのLEDと本発明に係る光開始剤を用いたインクジェットインクを用いれば、最もよい効果を得ることができる。
紫外線の照射条件として、インク着弾後0.001〜1.0秒の間に紫外線を照射することが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
紫外線の照度は特に制限されないが、本発明の効果を最大限奏でるには、本発明のインクのうち、最も光感度の低いブラックインクでもビーディング、ブリードが防止できる紫外線照射強度75mJ/cm以下で照射するのが好ましい。
紫外線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによるとヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射はインク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。
米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
また、紫外線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で紫外線を照射し、さらに紫外線を照射する方法も好ましい態様の1つである。紫外線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例に用いるA−PVA(アクリル基含有ポリビニルアルコール)及びA−AP(アクリル基を側鎖に有するアクリルポリマー)を合成した。
(A−PVAの合成)
A−PVAは、エチレン不飽和結合を有する重合性または架橋性物質である。
グリシジルメタクリレート56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒド48g、ピリジン2g、及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩1gを反応容器に入れ、80℃の湯浴中で8時間攪拌した後、酢酸エチル可溶分を取り出し、カラムクロマトグラフィーで精製して、p−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドを92g得た。
次に、重合度300、ケン化率98%のポリ酢酸ビニルケン化物45gをイオン交換水225gに溶解した後、上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをPVAに対して変性率が3モル%になるように加え、さらに、リン酸4.5gを加え、90℃で6時間攪拌した。その後、塩基性イオン交換樹脂30gを加え中性に戻した後、イオン交換樹脂を濾別し、水で希釈して、10%のA−PVAを得た。
得られたA−PVAは、重合度300、変性率3%、濃度10%であった。
(A−APの合成)
A−APは、エチレン不飽和結合を有する重合性または架橋性物質である。
アクリル酸60g、メチルメタクリレート140gを酢酸エチル400gに加えた。80℃に加熱した後、アゾビスイソブチロニトリル2gを添加し、さらに5時間加熱撹拌を続けた。この溶液を60℃まで冷却した後、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)23g、ピリジン20g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1g入れ、24時間撹拌した。その後、減圧蒸留により溶媒を除去後、ジメチルアミノエタノール75g、イオン交換水1700gを加えて高分子化合物を溶解させ、重合性基の変性率が5モル%であり、A−APの15質量%水溶液を得た。なお、高分子化合物の重量平均分子量をGPCにより測定した所、32000であった。
〔ζ電位の異なる高分子分散剤の合成〕
(高分子分散剤1の合成)
2Lの4口フラスコのメタノール1000ml中にスチレン80g、n−ブチルアクリレート130g、メタクリル酸90gを加え、窒素で置換した。70℃に加温した後アゾイソブチロニトリル1.0gを加え、3時間加熱した。エバポレート後、ジメチルエタノールアミンを加え、中和した後、ゲル濾過を用いて精製後、濃縮し、高分子分散剤1を得た。高分子分散剤1の重量平均分子量をGPCにより測定した所、8000であった。酸価数は200であった。
(高分子分散剤2の合成)
高分子分散剤1の合成において、メタクリル酸90gをメタクリル酸50gに変更した他は同様にして高分子分散剤2を得た。下記インクNo.104に使用した。
(高分子分散剤3の合成)
高分子分散剤1の合成において、メタクリル酸90gをメタクリル酸30gに変更した他は同様にして高分子分散剤3を得た。下記インクNo.107に使用した。
(高分子分散剤4の合成)
高分子分散剤1の合成において、メタクリル酸90gをメタクリル酸110gに変更した他は同様にして高分子分散剤4を得た。下記インクNo.137に使用した。
同様にしてζ電位の異なる他の高分子分散剤を合成した。
実施例1
(ブラック顔料分散液1の調製)
高分子分散剤1はゲル濾過により十分に無機塩を除いた後に濃縮した。以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、水で希釈してブラック顔料の含有量が10質量%のブラック顔料分散液1を調製した。このブラック顔料分散液に含まれるブラック顔料粒子の平均粒径は128nmであり、水中でのζ電位は−38mVであった。なお、粒径測定はマルバーン製ゼータサイザ1000HSで行い、ζ電位は顔料インク液を水で1000倍に希釈した後、ELS−800(大塚電子(株)製)を用いて測定した。
〈ブラック顔料分散液1組成〉
カーボンブラック(三菱化成MA100、粒子径20μm、DBP吸油量100cm/100g)
10部
高分子分散剤1 5部
グリセリン 15部
イオン交換水 60部
(ブラック顔料分散液2の調製)
ブラック顔料分散液1のカーボンブラックの代わりに、三菱化成社製MA7(粒子径24nm、DBP吸油量66cm/100g)を用いた他は同様に行い、含有量が10質量%のブラック顔料分散液2を調製した。このブラック顔料分散液に含まれるブラック顔料粒子の平均粒径は108nmであった。
実施例1で作製するインクは下記3タイプである。
〔インク1−1タイプ〕
カーボンブラック(三菱化成MA100、粒子径20μm、DBP吸油量100cm/100g)
30部(固形分3部)
顔料分散剤 1.5部
重合/架橋性物質 3部
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表1のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表1の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク1−1タイプとする。
〔ブラックインク1−2タイプ〕
カーボンブラック(三菱化成MA7、粒子径24μm、DBP吸油量66cm/100g)
30部(固形分3部)
顔料分散剤 1.5部
重合性または架橋性物質 3部
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表1のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表1の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク1−2タイプとする。
〔インク1−3タイプ〕
カーボンブラック(三菱化成MA7、粒子径24μm、DBP吸油量66cm/100g)
30部(固形分3部)
顔料分散剤 1.5部
重合性または架橋性物質 3部
光開始剤 1部
ウレタンラテックス 1部
DEG(ジエチレングリコール) 1部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表1のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表1の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク1−3タイプとする。
《インク101の作製》
ブラック顔料分散液1(上記) 30部(固形分3部)
A−PVA(上記) 30部(固形分3部)
光開始剤1 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表1のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表1の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、インク101を作製した。
なお、インク101は、ナトリウム量をイオンクロマトグラフィーを用いて定量し、添加された通り、ナトリウムイオンを0.11%含有していること、ジメチルエタノールアミン量について、ガスクロマトグラフィーを用いて定量し、0.51%含有していることを確認した。
《インク102〜140の作製》
インク101と同様にして、表1に記載の素材を用いて、固形分が同量になるようにして、インク102〜140を作製した。ナトリウム量はイオンクロマトグラフィーの定量値、有機アンモニウム量については、ガスクロマトグファフィーまたは液体クロマトグラフィーで定量した。
なお、インク106及び126には、さらにウレタンラテックス分散液(粒径30nm、固形分濃度30%)を3部加えた。
表1の記号の詳細を次に示す。
MA7:カーボンブラックMA7 三菱化成社製
MA100:カーボンブラックMA100 三菱化成社製
A−PVA:アクリル基含有ポリビニルアルコール
A−AP:アクリル基を側鎖に有するアクリルポリマー
St−BA−MAA:スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸共重合体
St−BA−AA:スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体
St−BA−AAM:スチレン−ブチルアクリレート−N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩酸塩共重合体
αSt−MAA:α−メチルスチレン−メタクリル酸共重合体
PVA:ポリビニルアルコール(重合度300)
UA−W2A:ウレタンアクリルオリゴマー(MW20000) 新中村化学社製
NPE:C19O(EO)
NPS:C19O(EO)SONa、ノニルポリエチレンオキシド(n=9)硫酸ナトリウム
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
TO−1343:アクリロイル基を2個以上有する水溶性ポリステル系アクリルオリゴマー、東亞合成社製
A−400:ポリエチレングリコール(MW400)のジアクリルエステル 新中村化学社製
DEG:ジエチレングリコール
PDN:2−ピロリドン
E1010:オルフィンE1010、日信化学社製
Figure 2009173879
Figure 2009173879
《インクの評価》
作製したインクについて、下記の方法で評価した。
〔画像評価〕
作製したインクをアート紙上にワイヤーバーでウェット膜厚15μmで塗布後、速やかに100Wの高圧水銀灯で照射した。照射量は、100W高圧水銀灯の照射時間を変えて、所定の照射量になるように調整した。得られたベタ画像を、ドライヤーにより1分間温風乾燥した後、24時間自然乾燥した。
(出射安定性)
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiは2.54cm当たりのドット数を表す)であるピエゾ型ヘッドを用意し、作製したインクを40℃、30%RH、及び20℃、70%RHの環境下でそれぞれアート紙に線画、及びベタ画像を間隔を空けて、連続9枚プリントを行い、10分間印字を停止した後、10枚目のプリントを行った。10枚目のプリント時のノズルの出射状態を目視観察し、下記の基準によりインクの出射安定性の評価を行った。
◎:全ノズル共に出射状態に変化が見られない
○:1、2個数%のノズルで斜め出射が見られるが、インク欠がない
△:インク欠が3〜10個数%未満のノズルで発生
×:インク欠が10個数%以上のノズルで発生
ここで斜め出射とは、ノズル詰まりでインクが出射不能であることを意味する。
(ビーディング)
上記作製した各黒のベタ画像中の濃度が均一か否かを目視で評価し、下記の基準に従って評価を行った。
○:ベタ画像中の濃度が均一である
△:ベタ画像中の濃度が目立たない程度に不均一である
×:ベタ画像中の濃度が不均一である。
Figure 2009173879
表から明らかなように、本発明のインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。また、ラテックスの有無は、ビーディングには関係しないことが分かる。
また、ζ電位が表面にアニオン基をペンダントした自己分散顔料の場合は−140〜−60mV、アニオン性高分子分散剤の場合は−10〜−40mVであるとビーディングが向上し、それを外れる場合は、ビーディングが悪化する。また、カチオン有機アンモニウムイオン濃度が0.1〜5質量%の範囲に入っているとビーディングに悪影響を及ぼさないが、その範囲を外れるとビーディングに悪影響を及ぼすことが分かる。
実施例2
本実施例は自己分散顔料を用いたインクの例である。
実施例2で作製するインクは下記3タイプである。
〔インク2−1タイプ〕
Cabojet−300(キャボット社製、濃度15%) 20部(固形分3部)
重合性または架橋性物質 3部
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表3のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表3の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク2−1タイプとする。
〔ブラックインク2−2タイプ〕
アクアブラック162(東海カーボン社製、濃度19%) 16部(固形分3部)
重合性または架橋性物質 3部
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 表3のNa濃度になる量
ジメチルエタノールアミン 表3の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク2−2タイプとする。
〔インク2−3タイプ〕
Cabojet−300(キャボット社製、濃度15%) 20部(固形分3部)
顔料分散剤 0部
モノマー 3部
光開始剤 1部
ウレタンラテックス分散液(粒径30nm、固形分濃度30%) 3部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 0〜0.1部
ジメチルエタノールアミン 表3の有機アンモニウム塩濃度になる量
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
純水を加えて100部とし、超音波分散で1分間分散を行い、これをインク2−3タイプとする。
《インク201の作製》
実施例1のインク101の作製において、ブラック顔料分散液1の代わりに、自己分散顔料 Cabojet−300(キャボット社製、濃度15%)を用い、以下の組成でインク201を作製した。
Cabojet−300(キャボット社製、濃度15%) 20部(固形分3部)
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤1 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 10部
NaOH 0.05部
ジメチルエタノールアミン 0.9部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部として、超音波分散を1分かけて、インク201を作製した。
なお、インク201は、イオンクロマトグラフィーを用いてナトリウムの定量で、ナトリウムを0.12%含有していることを確認した。ナトリウムがNaOHの添加量より多いのは、Cabojet−300のカウンター塩がナトリウムであることによる。
《インク202〜214の作製》
インク201と同様にして、表3に記載の素材を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク202〜214を作製した。ζ電位の調整は、インク202〜213は添加する水酸化ナトリウム量の増減で行った。また、インク214はアクアブラックをゲル濾過で精製した後、所定の水酸化ナトリウムの量とジメイルエタノールアミンを加えて調整した。
なお、インク202及び205では、Cabojet−300の代わりアクアブラック162を用いた。各インクのナトリウム量、有機アンモニウム量は実施例1と同じく、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーで定量した。
また、インク203及び206では、さらにウレタンラテックス分散液(粒径30nm、固形分濃度30%)を3部加えた。
Figure 2009173879
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表4に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、自己分散顔料を用いたインクの場合にも、本発明のインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。また、ラテックスの有無、カーボンブラックの種類は、ビーディングにはほとんど関係しないことも分かる。
実施例3
本実施例は光開始剤の種類を変えたブラックインクの例である。
実施例3で作製するインクは下記2タイプである。
〔インク3−1タイプ〕
ブラック顔料分散液1 30部(固形分3部)
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 15部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
トリエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク3−1タイプとする。
〔3−2タイプ〕
ブラック顔料分散液1 30部(固形分3部)
A−AP 30部(固形分3部)
光開始剤 1.2部
DEG(ジエチレングリコール) 15部
PDN(2−ピロリドン) 5部
GLY(グリセリン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
トリエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク3−2タイプとする。
《インク301の作製》
実施例1のインク101の作製において、光開始剤を表5に記載の光開始剤に変更して、以下の組成でインク301を作製した。
ブラック顔料分散液1 30部(固形分3部)
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤 1.2部
DEG(ジエチレングリコール) 15部
PDN(2−ピロリドン) 5部
GLY(グリセリン) 5部
水酸化ナトリウム 0.25部
ジメチルエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、インク301を作製した。
《インク302〜307の作製》
インク301と同様にして、表5に記載の光開始剤を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク302〜307を作製した。
Figure 2009173879
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様にしてビーディングを評価した。評価の結果を表5に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、光開始剤の種類を代えたブラックインクの場合にも、本発明に係る光開始剤を用いたインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。
実施例4
本実施例は光開始剤の種類を変えたシアンインクの例である。
実施例4で作製するインクは下記2タイプである。
〔インク4−1タイプ〕
ピグメントブルー15:3 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤 1部
EG(エチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
トリエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク4−1タイプとする。
〔インク4−2タイプ〕
ピグメントブルー15:3 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−AP 30部(固形分3部)
光開始剤 1.2部
EG(エチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
トリエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク4−1タイプとする。
《インク401〜414の作製》
インク301と同様にして、表6に記載の素材を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク401〜414を作製した。いずれのインクもζ電位は−20〜−40mVの範囲であった。またナトリウムイオンと有機アンモニウムイオンの総和のインクに対する濃度は0.1〜5質量%であり、有機アンモニウムイオンの方がナトリウムイオンよりも多かった。
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様にしてビーディングを評価した。評価の結果を表6に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、光開始剤の種類を代えたシアンインクの場合にも、本発明に係る光開始剤を用いたインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。
実施例5
本実施例は光開始剤の種類を変えたマゼンタインクの例である。
実施例5で作製するインクは下記2タイプである。
〔インク5−1タイプ〕
ピグメントレッド122 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
ジメチルエタノールアミン 1.1部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク5−1タイプとする。
〔インク5−2タイプ〕
ピグメントレッド122 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−AP 50部(固形分5部)
光開始剤 1.2部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
ジメチルエタノールアミン 2.0部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク5−2タイプとする。
《インク501〜514の作製》
インク301と同様にして、表7に記載の素材を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク401〜414を作製した。いずれのインクもζ電位は−20〜−40mVの範囲であった。またナトリウムイオンと有機アンモニウムイオンの総和のインクに対する濃度は0.1〜5質量%であり、有機アンモニウムイオンの方がナトリウムイオンよりも多かった。
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様にしてビーディングを評価した。評価の結果を表7に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、光開始剤の種類を代えたマゼンタインクの場合にも、本発明に係る光開始剤を用いたインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。
実施例6
本実施例は光開始剤の種類を変えたイエローインクの例である。
実施例6で作製するインクは下記2タイプである。
〔インク6−1タイプ〕
ピグメントイエロー74 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
ジエタノールアミン 0.8部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク6−1タイプとする。
〔インク6−2タイプ〕
ピグメントイエロー74 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−AP 50部(固形分5部)
光開始剤 1.2部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
ジメチルエタノールアミン 1.5部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク6−1タイプとする。
《インク601〜614の作製》
インク301と同様にして、表8に記載の素材を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク601〜614を作製した。いずれのインクもζ電位は−20〜−40mVの範囲であった。またナトリウムイオンと有機アンモニウムイオンの総和のインクに対する濃度は0.1〜5質量%であり、有機アンモニウムイオンの方がナトリウムイオンよりも多かった。
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様にしてビーディングを評価した。評価の結果を表8に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、光開始剤の種類を代えたイエローインクの場合にも、本発明に係る光開始剤を用いたインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。
実施例7
本実施例はイオン種を変えたブラックインクの例である。
実施例7で作製するインクは下記2タイプである。
〔インク7−1タイプ〕
カーボンブラック(三菱化成MA100、粒子径20μm、DBP吸油量100cm/100g)
30部(固形分3部)
高分子分散剤1 1.5部
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤1 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
1価の金属カチオン(表記載の金属の水酸化物) 表9記載
アミン 表9記載
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク7−1タイプとする。
〔インク7−2タイプ〕
ピグメントレッド122 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−AP 50部(固形分5部)
光開始剤2 1.2部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
1価の金属カチオン(表記載の金属の水酸化物) 表9記載
アミン 表9記載
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク7−1タイプとする。
《インク701〜720の作製》
インク301と同様にして、表9に記載の素材を用いて、固形分が同じになるように調製し、インク701〜720を作製した。
なお、表9の素材を用いてインクを作製する際、NaOH、KOH、アンモニア、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの添加量を調整し、表9に記載のナトリウムイオン、カリウムイオン、及びアンモニア、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの量になる量を添加した。
《インクの評価》
作製したインクについて、実施例1と同様にしてビーディングを評価した。評価の結果を表9に示す。
Figure 2009173879
表から明らかなように、1価の金属カチオンと1価のアンモニウムイオンの総和が0.1〜5質量%であり、かつ前記アンモニウムイオンが前記金属カチオンより多い場合、本発明に係る光開始剤を用いたインクは、光感度が高いために、少ない光量でビーディングが防止できることが分かる。
実施例8
実施例8で作製するインクは下記の1タイプである。
〔インク8−1タイプ〕
顔料(下記参照) 3部
高分子分散剤1 1.5部
A−PVA 30部(固形分3部)
光開始剤(表10参照) 1部
DEG(ジエチレングリコール) 20部
PDN(2−ピロリドン) 5部
E1010(オルフィンE1010、日信化学製) 0.3部
水酸化ナトリウム 光開始剤の酸基の1当量+0.05部
アミン イエローインクはアンモニウムイオン0.35%
マゼンタイオンはトリエタノールアミン0.92%
シアンインクはジメチルエタノールアミン0.87%
ブラックインクはジメチルエタノールアミン0.12%
水を加えて100部とし、超音波分散で1分間の分散を行い、これをインク8−1タイプとする。
《インクセットの調製》
〔イエロー顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、シアン顔料分散液、ブラック顔料分散液の調製〕
実施例1の顔料分散液の調製において、ピグメントブルー15:3に代えてC.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントレッド122、カーボンブラックを用いた以外は同様にして、各濃度10%のイエロー顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、ブラック顔料分散液を調製した。この各色の顔料分散液と表10に示す光開始剤を組み合わせて、上記組成のインクを調製した。各インクからインクセット1〜5を作製した。
Figure 2009173879
《インクセットの評価》
〔画像形成及び画像評価〕
上記作製した各インクセットについて、実施例1と同様にして、各色カラー画像を形成し、下記の方法でブリード耐性及びビーディングの評価を行った。高精細カラーデジタル標準データ「N3・果物かご」(財団法人 日本企画協会 1995年12月発行)をコート上に印刷し、目視で比較した。
(ブリード耐性)
上記作成した各マゼンタ細線画像を目視観察し、下記の基準に従ってブリード耐性の評価を行った。
○:細線と非画像部の境界線がはっきりしている
△:境界部にややにじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である。
(ビーディング)
上記作成した画像中のベタ画像中の濃度が均一か否かを目視で評価し、下記の基準に従って画像均一性の評価を行った。
○:ベタ画像中の濃度が均一である
△:ベタ画像中の濃度が目立たない程度に不均一である
×:ベタ画像中の濃度が不均一である。
評価の結果を表11に示す。
Figure 2009173879
以上により、本発明のインクを用いたインクセットを用いると、光感度が高いために、少ない光量でもブリード耐性が高く、ビーディングが防止できることが分かる。また、ブラックインク、シアンインクに、最も高い効果が得られることが分かる。

Claims (9)

  1. 少なくとも水、顔料分散体、エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性または架橋性物質、及び水溶性の光開始剤からなるインクジェットインクにおいて、該顔料分散体がアニオン性であり、かつ該光開始剤がベンジルケタール型光開始剤、ベンゾイン型光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤及びオキシムエステル型光開始剤から選ばれるアニオン性で開裂型の光開始剤であることを特徴とするインクジェットインク。
  2. 前記光開始剤が、ベンジルケタール型光開始剤またはα−ヒドロキシアセトフェノン型光開始剤であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. 前記光開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
    一般式(1) A−(O−X−Y)
    (式中、Aはベンジルケタール母核、ベンゾイン母核、α−ヒドロキシアセトフェノン母核またはオキシムエステル型母核を表し、XはC1からC4までのアルキレン基を表し、Yはカルボン酸、スルホン酸、硫酸またはそれらの塩を表す。nは1または2を表す。)
  4. 前記顔料分散体が、表面にアニオン基をペンダントした自己分散顔料分散体またはアニオン性高分子分散剤を用いた顔料分散体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  5. 前記自己分散顔料分散体のζ電位が−40〜−60mV、または前記アニオン性高分子分散剤を用いた顔料分散体のζ電位が−10〜−40mVであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットインク。
  6. 1価の金属カチオンと1価の無機または有機のアンモニウムイオンの総和のインクに対する濃度が0.1〜5質量%であり、かつ前記無機または有機のアンモニウムイオンが、前記金属カチオンより多いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  7. 前記インクジェットインクがブラックインクであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェットヘッドから記録媒体上に出射した後、紫外線を照射し、画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 前記紫外線の照射強度が75mJ/cm以下であることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録方法。
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