JP7102420B2 - インク組成物及び画像形成方法 - Google Patents

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Description

本開示は、インク組成物及び画像形成方法に関する。
従来、インク組成物の分野において、揮発性塩基と不揮発性塩基とを利用した技術が知られている。
例えば、特開2010-138297号公報には、優れた吐出速度及び吐出安定性を有するサーマル式インクジェット用水分散体の製造方法として、工程(1):顔料、アニオン性基を有するポリマー、揮発性塩基、不揮発性塩基、有機溶媒、及び水を含有する混合物であって、揮発性塩基によるアニオン性基の中和度と不揮発性塩基によるアニオン性基の中和度との合計が210%~500%であり、かつ(揮発性塩基/不揮発性塩基)のモル比が1を超える混合物を、分散処理して分散体を得る工程、並びに、工程(2):工程(1)で得られた分散体から、揮発性塩基及び有機溶媒を除去して、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得る工程、を有するサーマル式インクジェット用水分散体の製造方法が開示されている。
ところで、粒子を含む水系インクでは、粒子の分散安定性が求められる。
また、一般に、液体成分として水を含むインクを用いて形成されたインク膜では、液体成分として有機溶剤を含むインクを用いて形成されたインク膜と比較して、インク膜中の液体成分が除去され難い。そのため、液体成分として水を含むインクを用いて形成された画像は、精細さに劣る傾向がある。
したがって、粒子を含む水系インクには、精細な画像を形成できることが求められる場合がある。
上述の点に関し、特開2010-138297号公報に記載の技術では、粒子の分散安定性を向上させることはできるものの、特開2010-138297号公報に記載の水分散体の組成は、加熱により速やかに増粘させることが難しい組成である。したがって、特開2010-138297号公報に記載の水分散体では、精細な画像を形成することは困難である。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、分散安定性に優れ、かつ、精細な画像を形成できるインク組成物を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、精細な画像を形成できる画像形成方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水と、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含む粒子と、を含有するインク組成物。
<2> 粒子が、ポリマーを含み、ポリマーが、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を有する<1>に記載のインク組成物。
<3> 揮発性中和剤が、アミン化合物及び第四級アンモニウムヒドロキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である<1>又は<2>に記載のインク組成物。
<4> アミン化合物の価数が、1である<3>に記載のインク組成物。
<5> アミン化合物が、下記の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である<3>又は<4>に記載のインク組成物。
式(1):NR
式(2):NR
式(3):NR
式(1)中、R、R、及びRは、各々独立に、アルキル基を表す。R、R、及びRのうちいずれか2つが互いに結合して窒素原子を含む環を形成してもよい。
式(2)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基を表し、RとRとは、互いに結合して窒素原子を含む環を形成してもよい。
式(3)中、Rは、アルキル基を表す。
<6> 揮発性中和剤の沸点が、25℃以上100℃以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<7> 非揮発性中和剤が、アルカリ金属の水酸化物である<1>~<6>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<8> 粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比が、60/40~90/10の範囲である<1>~<7>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<9> ポリマーが、鎖状ポリマーである<1>~<8>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<10> ポリマーが、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーである<1>~<9>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<11> インクジェットインクとして用いられる<1>~<10>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<12> 基材上に、<1>~<11>のいずれか1つに記載のインク組成物を付与することによりインク膜を形成する工程と、インク膜を加熱する工程と、を含む画像形成方法。
本発明の一実施形態によれば、分散安定性に優れ、かつ、精細な画像を形成できるインク組成物が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、精細な画像を形成できる画像形成方法が提供される。
実施例における画像の精細さの評価に用いた文字画像を示す図である。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、化学式中の「*」は、結合位置を表す。
本開示において、「画像」の概念には、パターン画像(例えば、文字、記号、又は図形)だけでなく、ベタ画像も包含される。
本開示において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
本開示では、紫外線を、「UV(Ultra Violet)光」ということがある。
本開示では、LED(Light Emitting Diode)光源から生じた光を、「LED光」ということがある。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本開示において、「(メタ)アクリルポリマー」は、アクリルポリマー及びメタクリルポリマーの両方を包含する概念である。
本開示において、ポリオキシアルキレン基、ウレア基、及びウレタン基は、それぞれ、ポリオキシアルキレン結合、ウレア結合、及びウレタン結合を意味する。
本開示において、「分散安定性」は、インク組成物に含まれる粒子の分散安定性を意味し、インクの保存安定性、及び、インクジェットインクとして適用した場合のインクの吐出性を指標として評価される。
[インク組成物]
本開示のインク組成物(以下、単に「インク」ともいう)は、水と、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤(以下、単に「揮発性中和剤」ともいう)及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤(以下、単に「非揮発性中和剤」ともいう)により中和された酸基を含む粒子(以下、「特定粒子」ともいう)と、を含有する。
本開示のインクによれば、分散安定性に優れ、かつ、精細な画像を形成できる。
本開示のインクがこのような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
本開示のインクは、揮発性中和剤及び非揮発性中和剤という2種類の中和剤により中和された酸基を含むことにより、優れた分散安定性と精細な画像の形成を実現し得る。
詳細には、本開示のインクでは、中和剤(即ち、揮発性中和剤及び非揮発性中和剤)により中和された酸基を含む粒子を含有するため、粒子間の電荷反発作用により、粒子の凝集が抑制され、その結果、優れた分散安定性を実現できると考えられる。
なお、粒子が揮発性中和剤により中和された酸基のみを含んでいると、揮発性中和剤は、インクの保存中に酸基との解離平衡により次第に揮発するため、粒子の分散安定性は低下し得る。
一般に、液体成分として水を含むインクを用いて形成されたインク膜では、液体成分として有機溶剤を含むインクを用いて形成されたインク膜と比較して、液体成分が除去され難い。そのため、液体成分として水を含むインクを用いて形成された画像は、精細さに劣る傾向がある。この理由としては、インク膜中の液体成分が除去され難いため、基材上で意図しないインク滴の合一が起こり得るためと考えられる。したがって、精細な画像を形成するためには、基材上に付与されたインクが速やかに増粘することが望ましい。
本開示のインクを基材上に付与して形成されたインク膜には、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含む粒子が含有される。形成されたインク膜を加熱すると、粒子に含まれる酸基を中和している揮発性中和剤は揮発する。酸基を中和している揮発性中和剤が揮発した粒子は、電荷反発性を失うことにより凝集するため、インクが速やかに増粘すると考えられる。このため、本開示のインクは、液体成分として水を含みながらも、精細な画像を形成できる。
本開示のインクに対して、特開2010-138297号公報に記載の水分散体は、優れた吐出速度及び吐出安定性を目的としたサーマル式インクジェット用水分散体である。よって、精細な画像の形成という課題については、想定していないものと考えられる。また、特開2010-138297号公報では、水分散体の製造に際し、揮発性塩基及び不揮発性塩基を使用しているが、工程(2)において揮発性塩基を除去している。このため、特開2010-138297号公報に記載の水分散体に含まれるポリマー粒子は、揮発性塩基を有していない。
したがって、特開2010-138297号公報に記載の水分散体では、精細な画像を形成することは困難である。
また、本開示のインクは、引っ掻き耐性に優れる画像を形成できる。
既述のとおり、本開示のインクを用いて形成されたインク膜では、インク膜中の粒子が加熱により凝集することで、インクが増粘する。このインクの増粘により、形成される画像の膜強度が高まるためと考えられる。
上記の推測は、発明の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
以下、本開示のインクにおける各成分について詳細に説明する。
〔特定粒子〕
特定粒子は、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含む。
特定粒子は、揮発性中和剤及び非揮発性中和剤により中和された酸基を含んでいれば、特に制限されない。
特定粒子の態様としては、特定粒子が、ポリマーを含み、このポリマーが、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を有する態様が好ましい。
以下、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を有するポリマーを、「特定ポリマー」ともいう。
<特定ポリマー>
特定ポリマーは、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を有する。
特定ポリマーは、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基とをそれぞれ1種のみ有していてもよく、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基とをそれぞれ2種以上有していてもよく、揮発性中和剤により中和された酸基を1種と非揮発性中和剤により中和された酸基を2種以上とを有していてもよく、揮発性中和剤により中和された酸基を2種以上と非揮発性中和剤により中和された酸基を1種とを有していてもよい。
(揮発性中和剤)
揮発性中和剤は、沸点が25℃以上250℃以下の中和剤である。
本開示において、「沸点」とは、常圧(101.325kPa)における沸点を指す。
揮発性中和剤の沸点が25℃以上であると、特定粒子の分散安定性が向上し得る。
揮発性中和剤の沸点が250℃以下であると、画像の精細さが向上し得る。また、画像の引っ掻き耐性も向上し得る。
揮発性中和剤の沸点は、画像の精細さ及び画像の引っ掻き耐性がより向上し得るとの観点から、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
すなわち、インクの分散安定性、画像の精細さ、及び画像の引っ掻き耐性の観点からは、揮発性中和剤の沸点は、25℃以上150℃以下であることが好ましく、25℃以上100℃以下であることがより好ましい。
揮発性中和剤としては、特に制限はない。
揮発性中和剤としては、アミン化合物及び第四級アンモニウムヒドロキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、揮発性中和剤としては、加熱時の揮発性の観点から、アミン化合物が好ましい。
アミン化合物としては、特に制限はない。
アミン化合物の分子量は、特に制限されない。
アミン化合物の分子量は、取り扱い性の観点から、20~1000であることが好ましく、30~750であることがより好ましく、50~500であることが更に好ましい。
アミン化合物の価数は、特に制限はないが、特定粒子の分散安定性の観点から、1であることが好ましい。
本開示において、「アミン化合物の価数」とは、アミン化合物中に含まれる窒素原子の数を意味する。
アミン化合物の価数が1であると、インクの保存中に生じ得る、中和された酸基同士の架橋による特定粒子の凝集が生じないため、特定粒子の分散安定性が損なわれ難い。
アミン化合物は、特定粒子の分散安定性の観点から、下記の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
式(1):NR
式(2):NR
式(3):NR
式(1)中、R、R、及びRは、各々独立に、アルキル基を表す。R、R、及びRのうちいずれか2つが互いに結合して窒素原子を含む環を形成してもよい。
式(2)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基を表し、RとRとは、互いに結合して窒素原子を含む環を形成してもよい。
式(3)中、Rは、アルキル基を表す。
式(1)~(3)において、R、R、R、R、R、及びRで表されるアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖アルキル基であってもよい。
、R、R、R、R、及びRで表されるアルキル基の炭素数は、各々独立に、1~12であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましい。
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であるアミン化合物は、塩基性が高いため、中和された酸基が安定化する。これにより、特定粒子の分散安定性をより向上し得る。
これらの中でも、アミン化合物としては、上記と同様の観点から、式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。
揮発性中和剤であるアミン化合物の例を表1及び2に示す。但し、揮発性中和剤であるアミン化合物は、これらの例には限定されない。
Figure 0007102420000001
Figure 0007102420000002
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、特に制限はない。
揮発性中和剤である第四級アンモニウムヒドロキシドの例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
(非揮発性中和剤)
非揮発性中和剤は、沸点が250℃を超える中和剤である。
非揮発性中和剤の沸点が250℃を超えることは、揮発性中和剤と区別するための規定である。
非揮発性中和剤の沸点は、既述の揮発性中和剤との併用によって、特定粒子の分散安定性、画像の精細さ、及び画像の引っ掻き耐性がより効果的に向上し得るとの観点から、1000℃以上であることが好ましく、1250℃以上であることがより好ましい。
また、非揮発性中和剤の沸点の上限は、特に制限されず、例えば、1500℃以下とすることができる。
非揮発性中和剤としては、特に制限はない。
非揮発性中和剤としては、例えば、金属の水酸化物が挙げられる。
これらの中でも、非揮発性中和剤としては、入手容易性の観点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。
また、アルカリ金属の水酸化物は、塩基性が高いため、中和された酸基が安定化し易く、特定粒子の分散安定性がより向上し得る点においても好ましい。
さらに、アルカリ金属の水酸化物は、価数が1であるため、非揮発性中和剤としてアルカリ金属の水酸化物を用いたインクでは、保存中に生じ得る、中和された酸基同士の架橋による特定粒子の凝集が生じず、特定粒子の分散安定性が損なわれ難い。
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化ナトリウム(沸点:1388℃)、水酸化カリウム(沸点:1327℃)等が挙げられる。
-中和された酸基-
本開示において、「中和された酸基」とは、塩の形態となっている酸基を指す。「中和された酸基」は、インク中ではイオンの形態で存在し得る。
中和された酸基としては、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、リン酸基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩等が挙げられる。
これらの中でも、中和された酸基としては、特定粒子の分散安定性の観点から、カルボキシ基の塩が好ましい。
カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、リン酸基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩等における「塩」は、中和剤(即ち、揮発性中和剤及び非揮発性中和剤)の種類によって異なる。
例えば、揮発性中和剤としてのアミン化合物により中和された酸基の場合、前述の「塩」は、アミン塩である。
例えば、非揮発性中和剤としてのアルカリ金属の水酸化物により中和された酸基の場合、前述の「塩」は、アルカリ金属塩である。
-酸基の中和度-
特定粒子に含まれる酸基の中和度は、50%~100%であることが好ましい。
本開示において、「酸基の中和度」とは、特定粒子が含む酸基全体における、中和された酸基のモル数と中和されていない酸基のモル数との合計に対する中和された酸基のモル数の割合〔中和された酸基のモル数/(中和された酸基のモル数+中和されていない酸基のモル数)〕を意味する。
酸基の中和度が50%以上であると、特定粒子の分散安定性がより向上する。
酸基の中和度は、50%~95%であることが好ましく、80%~95%であることがより好ましく、90%~95%であることが更に好ましい。
中和された酸基(即ち、塩の形態である酸基)は、塩基性を示す。酸基の中和度が95%以下であると、特定粒子に含まれる特定ポリマーが有し得るウレタン基及び/又はウレア基の加水分解をより抑制できる。
特定粒子に含まれる酸基の中和度の測定方法は、特に制限されず、中和滴定、構造解析等の公知の方法によって測定することができる。以下に、測定方法の一例を示す。
<<中和度の測定方法>>
本開示において、特定粒子に含まれる酸基の中和度(%)は、例えば、以下に示す電位差滴定法により測定することができる。測定装置としては、特に制限されず、例えば、京都電子工業(株)の電位差自動滴定装置(型番:AT-510)を好適に用いることができる。
以下では、酸基がカルボキシ基(-COOH)である場合を例に挙げて説明する。なお、酸基がカルボキシ基以外の基(スルホ基、リン酸基等)である場合には、以下の記載において、カルボキシ基をカルボキシ基以外の基に読み替えることにより、中和度を測定することができる。
まず、酸基の中和度の測定対象であるインクから、中和されたカルボキシ基を有する特定粒子及び水以外の成分を取り除き、中和されたカルボキシ基を有する特定粒子の水分散物を準備する。
準備した水分散物50gに対し、80000rpm(revolutions per minute;以下、同じ)で40分の条件の遠心分離を施す。遠心分離によって生じた上澄み液を除去し、沈殿物(即ち、特定粒子)を回収する。
容器1に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値W1(g)を記録する。次いで、テトラヒドロフラン(THF)54mL及び蒸留水6mLの混合液を添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより中和度測定用試料1を得る。
得られた中和度測定用試料1に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF1(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、最大滴定量での当量点の値を用いる。ここで、「最大滴定量F1(mL)」は、特定粒子に含まれる酸基のうち、中和されていない酸基(即ち、-COOH)の量に相当する。
また、容器2に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値W2(g)を記録する。次いで、酢酸60mLを添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより中和度測定用試料2を得る。
得られた中和度測定用試料2に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF2(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、最大滴定量での当量点の値を用いる。ここで、「最大滴定量F2(mL)」は、特定粒子に含まれる酸基のうち、中和されている酸基(即ち、-COONa)の量に相当する。
「F1(mL)」及び「F2(mL)」の測定値に基づき、下記の式に従って、酸基であるカルボキシ基の中和度(%)を求める。
F1(mL)×水酸化ナトリウム水溶液の規定度(0.1mol/L)/W1(g)+F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 特定粒子1g当たりに含まれる、中和されていないカルボキシ基と中和されたカルボキシ基との総量(mmol/g)・・・(1)
F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 特定粒子1g当たりに含まれるカルボキシ基のうち、中和されたカルボキシ基の量(mmol/g)・・・(2)
中和度(%) = (2)/(1)×100
特定粒子1g中の酸基のミリモル数(例えば、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩の合計ミリモル数)を、特定粒子の酸価とした場合、特定粒子の酸価は、特定粒子の分散安定性の観点から、0.10mmol/g~2.00mmol/gであることが好ましく、0.30mmol/g~1.50mmol/gであることがより好ましい。
-特定粒子に含まれる、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基とのモル比-
特定粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比(揮発性中和剤により中和された酸基のモル数/非揮発性中和剤により中和された酸基のモル数)は、特に制限されない。
特定粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比は、例えば、40/60~95/5の範囲であることが好ましく、画像の精細さ及び画像の引っ掻き耐性をより向上させる観点からは、60/40~95/5の範囲であることがより好ましく、画像の精細さ及び画像の引っ掻き耐性に加えて、特定粒子の分散安定性をより向上させる観点からは、60/40~90/10の範囲であることが更に好ましい。
特定粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比(以下、単に「酸基のモル比」ともいう)の測定方法は、特に制限されず、中和滴定、構造解析等の公知の方法によって測定することができる。以下に、測定方法の一例を示す。
<<中和された酸基のモル比の測定方法>>
本開示において、特定粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比は、例えば、以下に示す電位差滴定法により測定することができる。測定装置としては、特に制限はなく、例えば、京都電子工業(株)の電位差自動滴定装置(型番:AT-510)を好適に用いることができる。
まず、測定対象であるインクから、特定粒子及び水以外の成分を取り除き、特定粒子の水分散物を準備する。
準備した水分散物50gに対し、80000rpmで40分の条件の遠心分離を施す。遠心分離によって生じた上澄み液を除去し、沈殿物(特定粒子)を回収する。
容器1に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値W1(g)を記録する。次いで、酢酸60mLを添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより中和度測定用試料1を得る。
得られた中和度測定用試料1に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF1(mL)として記録する。さらに、滴定を続け、第二の当量点までに要した滴定液量をF2(mL)として記録する。
ここで、「F1(mL)」は、強塩基である非揮発性中和剤により中和された酸基のモル数、「(F2-F1)(mL)」は、弱塩基である揮発性中和剤により中和された酸基のモル数に相当する。
インクが揮発性中和剤及び非揮発性中和剤により中和された酸基を含む粒子を含有することは、上述の中和滴定、ガスクロマトグラフ分析、元素分析等を組み合わせることにより確認することができる。
(特定ポリマーの種類)
特定ポリマーの種類としては、特に制限はない。
特定ポリマーは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであることが好ましい。
本開示において、ウレタンポリマーとは、ウレタン基を含むポリマー(但し、後述の(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本開示において、ウレアポリマーとは、ウレア基を含むポリマー(但し、上述のウレタンポリマーに該当するポリマー、及び、後述の(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本開示において、(メタ)アクリルポリマーとは、1種の(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、又は、1種以上の(メタ)アクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体を意味する。
ウレタンポリマーの概念には、ウレタン基とウレア基との両方を含むポリマー(所謂、ウレタンウレアポリマー)も包含される。
(メタ)アクリルポリマーの概念には、ウレタン基及びウレア基の少なくとも一方を含む(メタ)アクリルポリマーも包含される。
特定ポリマーとしては、架橋構造を有しない鎖状のポリマー(以下、「特定鎖状ポリマー」ともいう)であってもよいし、架橋構造(例えば、三次元架橋構造)を有するポリマー(以下、「特定架橋ポリマー」ともいう)であってもよく、好ましくは、特定鎖状ポリマーである。
特定鎖状ポリマーは、主鎖中に、脂肪族環、芳香族環、複素環等の環状構造を含んでいてもよい。
特定架橋ポリマーが有し得る三次元架橋構造については、国際公開第2016/052053号に記載の三次元架橋構造を参照してもよい。
-特定鎖状ポリマー-
特定鎖状ポリマーは、(1)2官能のイソシアネート化合物と、酸基及び2つの活性水素基を有する化合物と、の反応生成物の中和物であるか、(2)2官能のイソシアネート化合物と、酸基及び2つの活性水素基を有する化合物と、その他の化合物と、の反応生成物の中和物であるか、(3)2官能のイソシアネート化合物と、酸基及び2つの活性水素基を有する化合物と、2つの活性水素基を有し、かつ、酸基を有しない化合物と、の反応生成物の中和物であるか、又は、(4)2官能のイソシアネート化合物と、酸基及び2つの活性水素基を有する化合物と、2つの活性水素基を有し、かつ、酸基を有しない化合物と、その他の化合物と、の反応生成物の中和物であることが好ましい。
本開示における「中和物」には、部分中和物も包含される。
2つの活性水素基を有する化合物としては、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
例えば、2官能のイソシアネート化合物とジオール化合物との反応により、ウレタン基が形成される。
また、2官能のイソシアネート化合物とジアミン化合物との反応により、ウレア基が形成される。
また、上記その他の化合物としては、後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、後述する酸基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物等が挙げられる。
特定鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、以下の化合物(1-1)~(1-20)が挙げられる。
Figure 0007102420000003

特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、以下の化合物(2-1)~(2-24)が挙げられる。
Figure 0007102420000004

また、特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物、後述する酸基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物等も挙げられる。
特定鎖状ポリマーを形成するための、酸基及び活性水素基を有する化合物としては、特に制限はない。
酸基としては、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、リン酸基、リン酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、硫酸基、硫酸基の塩等が挙げられる。「塩」としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
これらの中でも、酸基としては、インクの分散安定性の観点から、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、リン酸基、及びリン酸基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
活性水素基としては、ヒドロキシ基、アミノ基(1級アミノ基及び2級アミノ基)、メルカプト基等が挙げられる。
酸基及び活性水素基を有する化合物は、酸基及び活性水素基をそれぞれ1種のみ有してもよく、酸基及び活性水素基のどちらか一方を1種有し、他方を2種以上有していてもよく、酸基及び活性水素基の両方を2種以上有していてもよい。
酸基及び活性水素基を有する化合物としては、α-アミノ酸(リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)等のアミノ酸、リンゴ酸、タウリン、エタノールアミンリン酸(EAP)などが挙げられる。
酸基及び活性水素基を有する化合物としては、上記の化合物以外にも、以下の具体例が挙げられる。
Figure 0007102420000005

-特定架橋ポリマー-
特定架橋ポリマーは、(1)3官能以上のイソシアネート化合物と、酸基及び活性水素基を有する化合物と2官能のイソシアネート化合物との反応生成物A1と、水と、の反応生成物A2の中和物であるか、又は、(2)3官能以上のイソシアネート化合物と、酸基及び活性水素基を有する化合物と2官能のイソシアネート化合物との反応生成物B1と、その他の化合物と、水と、の反応生成物B2の中和物であることが好ましい。
上記その他の化合物としては、後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、後述する酸基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物等が挙げられる。
特定粒子が特定架橋ポリマーを含む場合、特定粒子は、特定架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むマイクロカプセル(以下、「MC」ともいう)を含むことが好ましい。
特定架橋ポリマーを形成するための、2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、既述の特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物と同様に、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
また、特定架橋ポリマーを形成するための、2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物も挙げられる。
特定架橋ポリマーを形成するための、酸基及び活性水素基を有する化合物としては、既述の特定鎖状ポリマーを形成するための、酸基及び活性水素基を有する化合物と同様に、α-アミノ酸(リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)等のアミノ酸、リンゴ酸、タウリン、エタノールアミンリン酸(EAP)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)などが挙げられる。
特定架橋ポリマーを形成するための3官能以上のイソシアネート化合物は、2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物)からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物であることが好ましい。
3つ以上の活性水素基を有する化合物と反応させる2官能のイソシアネート化合物のモル数(所謂、分子数)は、3つ以上の活性水素基を有する化合物における活性水素基のモル数(所謂、活性水素基の当量数)に対し、0.6倍以上が好ましく、0.6倍~5倍がより好ましく、0.6倍~3倍が更に好ましく、0.8倍~2倍が特に好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、既述の特定鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための、3つ以上の活性水素基を有する化合物としては、下記(H-1)~(H-13)で表される構造の化合物が挙げられる。なお、下記の構造において、nは、1~100から選択される整数を表す。
Figure 0007102420000006

特定架橋ポリマーの形成に用いられる3官能以上のイソシアネート化合物としては、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物、イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物、ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物、等が挙げられる。
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N、D-140N、D-160N(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ウレタンポリマー(株))、P301-75E(旭化成(株))等が挙げられる。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D-127N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N(以上、三井化学(株))、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(以上、住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HX、HK(以上、日本ウレタンポリマー(株))、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(以上、旭化成(株))等が挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン(株))、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成(株))等が挙げられる。
また、特定粒子が、特定架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むMC(即ち、マイクロカプセル)を含む場合、特定粒子は、MCに対する分散剤として、前述した特定鎖状ポリマーのうち親水性基を有する態様の特定鎖状ポリマーを含有していてもよい。この態様におけるインクでは、MCのシェルの周囲の少なくとも一部を、分散剤としての特定鎖状ポリマーが被覆している状態となり得る。この態様では、MCのシェルが有するウレタン基及び/又はウレア基と、分散剤(特定鎖状ポリマー)が有するウレタン基及び/又はウレア基と、の相互作用、並びに、分散剤の親水性基による分散作用が相まって、特定粒子の分散安定性がより向上する。
この態様において、MCの全固形分量に対する分散剤の量の比(以下、質量比〔分散剤/MC固形分〕ともいう)としては、0.005~1.000であることが好ましく、0.05~0.7であることがより好ましい。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が0.005以上であると、特定粒子の分散安定性がより向上する。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が1.000以下であると、画像の硬度がより向上する。
-特定ポリマーの好ましい重量平均分子量(Mw)-
特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)の観点から、5000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましく、8000以上であることが更に好ましい。
特定ポリマーのMwの上限には特に制限はない。特定ポリマーのMwの上限としては、例えば、150000、100000、70000、50000が挙げられる。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。但し、分子量が小さいためにGPCでは正確なMwを測定できない化合物については、化合物の化学構造から求められる分子量を、その化合物のMwとして採用する。
本開示において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
特定ポリマーの含有量が、特定粒子の全固形分量に対して10質量%以上であると、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)がより向上する。
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、100質量%となることもあり得るが、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
-酸基導入用化合物-
特定粒子中の特定ポリマーが酸基を有する場合、特定ポリマーへの酸基の導入は、酸基導入用化合物を用いて行うことができる。
酸基導入用化合物としては、酸基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
酸基導入用化合物としては、1つ以上の酸基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
酸基導入用化合物としては、例えば、α-アミノ酸(具体的には、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等)が挙げられる。
酸基導入用化合物としては、上記のα-アミノ酸以外に、既述の酸基及び活性水素基を有する化合物も挙げられる。
酸基導入用化合物は、揮発性中和剤及び非揮発性中和剤を用い、酸基の少なくとも一部を中和して用いてもよい。
-酸基を導入したイソシアネート化合物-
特定ポリマーが酸基を有する場合、特定ポリマーへの酸基の導入は、酸基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
酸基を導入したイソシアネート化合物としては、既述の酸基導入用化合物と、2官能のイソシアネート化合物と、の反応生成物;既述の酸基導入用化合物と、3官能以上のイソシアネート化合物と、の反応生成物;既述の酸基導入用化合物と、2官能のイソシアネート化合物と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群より選ばれる化合物と、の反応生成物;等が挙げられる。
これらの中でも、酸基を導入したイソシアネート化合物としては、既述の酸基導入用化合物と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)との反応生成物が好ましい。
-ノニオン性基-
特定ポリマーは、既述の酸基(中和された酸基及び中和されていない酸基)以外の親水性基として、ノニオン性基を更に有していてもよい。
特定ポリマーがノニオン性基を更に有する場合には、既述の中和された酸基による分散作用と、ノニオン性基による分散作用と、が相まって、インクの分散安定性がより向上し得る。
ノニオン性基としては、ポリエーテル構造を有する基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基を含む1価の基が好ましい。
-ノニオン性基導入用化合物-
特定ポリマーが、ノニオン性基を有する場合、特定ポリマーへのノニオン性基の導入は、ノニオン性基導入用化合物を用いて行うことができる。
ノニオン性基導入用化合物としては、ポリエーテル構造を有する化合物が好ましく、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物がより好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、ポリエチレンオキシドがより好ましい。
ポリエーテル構造を有する化合物としては、ポリエチレンオキシドのモノエーテル体(モノメチルエーテル、モノエチルエーテル等)及びポリエチレンオキシドのモノエステル体(モノ酢酸エステル、モノ(メタ)アクリル酸エステル等)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
ノニオン性基を導入したイソシアネート化合物の具体例としては、トリメチロールプロパン(TMP)とm-キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO)との付加物(例えば、三井化学(株)のタケネート(登録商標)D-116N)が挙げられる。
-重合性基-
特定ポリマーは、重合性基を少なくとも1種有することが好ましい。
特定ポリマーが重合性基を有する場合には、特定粒子に含まれる酸基を中和している揮発性中和剤の揮発によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性基の作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の引っ掻き耐性が更に向上する。
重合性基としては、光重合性基又は熱重合性基が好ましい。
光重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性二重結合を含む基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、又はビニル基が更に好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応性及び形成される膜の硬度の観点から、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
熱重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、ケトン基、アルデヒド基、又はブロックイソシアネート基が好ましい。
特定ポリマーは、重合性基を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
特定ポリマーが重合性基を有することは、例えば、フーリエ変換赤外線分光測定(FT-IR)分析によって確認することができる。
-重合性基導入用化合物-
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基導入用化合物を用いて行うことができる。
重合性基導入用化合物としては、重合性基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
重合性基導入用化合物としては、1つ以上の重合性基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
特定ポリマーへの重合性基の導入方法には特に制限はないが、特定ポリマーを合成する際に、2官能のイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水、ジオール化合物、ジアミン化合物及びジチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、(必要に応じて、酸基導入用化合物の少なくとも1種と、)を反応させる方法が特に好ましい。
重合性基導入用モノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
重合性基導入用化合物としては、例えば、国際公開第2016/052053号の段落[0075]~[0089]に記載の化合物を用いることもできる。
重合性基導入用化合物としては、下記式(ma)で表される化合物が好ましい。
Lc (ma)
式(ma)において、Lは、m+n価の連結基を表し、m及びnは、各々独立に、1~100から選ばれる整数であり、Lcは1価のエチレン性不飽和基を表し、Zは活性水素基を表す。
は、2価以上の脂肪族基、2価以上の芳香族基、2価以上の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-N<、-CO-、-SO-、-SO-又はそれらの組合せであることが好ましい。
m及びnは、各々独立に、1~50であることが好ましく、2~20であることがより好ましく、3~10であることが更に好ましく、3~5であることが特に好ましい。
Lcで表される1価のエチレン性不飽和基としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
Zで表される活性水素基は、ヒドロキシ基又は1級アミノ基であることがより好ましく、ヒドロキシ基であることが更に好ましい。
以下、重合性基導入用化合物の例を示すが、重合性基導入用化合物は、以下の例には限定されない。なお、化合物(a-3)及び(a-14)におけるnは、例えば、1~90から選ばれる整数を表す。
Figure 0007102420000007

-重合性基を導入したイソシアネート化合物-
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
重合性基を導入したイソシアネート化合物としては、既述の重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
既述の重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;既述の重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;等が挙げられる。
(重合性モノマー)
特定粒子は、重合性モノマーを含むことが好ましい。
特定粒子が重合性モノマーを含む場合、特定粒子に含まれる酸基を中和している揮発性中和剤の揮発によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性基の作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の引っ掻き耐性が更に向上する。
特定粒子に含まれる重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーとしては、国際公開第2016/052053号の段落[0097]~[0105]に記載された化合物を用いてもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーとしては、光重合性モノマー又は熱重合性モノマーが好ましい。
光重合性モノマーは、光(即ち、活性エネルギー線)の照射によって重合する性質を有する。
熱重合性モノマーは、加熱又は赤外線の照射によって重合する性質を有する。
光重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。
本明細書では、特定粒子が光重合性モノマーを含む態様のインクを、「光硬化性のインク」と称することがあり、特定粒子が熱重合性モノマーを含む態様のインクを、「熱硬化性のインク」と称することがある。
本開示のインクによって形成されたインク膜の硬化は、本開示のインクが光硬化性のインクである場合には、インク膜に対して光照射を施すことによって行うことができ(後述の硬化工程A参照)、本開示のインクが熱硬化性のインクである場合には、インク膜に対して加熱又は赤外線照射を施すことによって行うことができる(後述の加熱工程又は硬化工程B参照)。
光硬化性のインクの好ましい態様は、特定粒子が光重合性モノマーを含み、かつ、特定ポリマーが光重合性基を有する態様である。
この態様によれば、活性エネルギー線の照射による画像の硬化性がより向上するので、画像の引っ掻き耐性がより向上する。
特定粒子が、重合性モノマーとして光重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述の光重合開始剤を含むことが好ましい。
また、特定粒子が、重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述の光熱変換剤、熱硬化促進剤、又は光熱変換剤及び熱硬化促進剤を含んでもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーの含有量(2種以上含む場合には合計量)は、膜の硬化感度及び膜の硬度を向上させる観点から、特定粒子の全固形分量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
本開示において、特定粒子の全固形分量とは、特定粒子が溶媒を含まない場合には、特定粒子の全量を意味し、特定粒子が溶媒を含む場合には、特定粒子から溶媒を除いた全量を意味する。
重合性モノマーの分子量としては、好ましくは100~4000であり、更に好ましくは100~2000であり、更に好ましくは100~1000であり、更に好ましくは100~900であり、更に好ましくは100~800であり、特に好ましくは150~750である。
-光重合性モノマー-
光重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー(即ち、ラジカル重合性モノマー)及びカチオン重合可能なカチオン重合性基を有する重合性モノマー(即ち、カチオン重合性モノマー)から選択できる。
ラジカル重合性モノマーの例としては、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物、N-ビニル複素環化合物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタンが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、ラジカル重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アクリレート化合物としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBOA)、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシフタル酸、2-アクリロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性アクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、置換アクリルアミド(例えば、N-メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド)等の単官能のアクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3-メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート等の2官能のアクリレート化合物;
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能以上のアクリレート化合物などが挙げられる。
メタクリレート化合物としては、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の単官能のメタクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、テトラエチレングリコールジメタクリレート等の2官能のメタクリレート化合物などが挙げられる。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
N-ビニル複素環化合物としては、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルエチルアセトアミド、N-ビニルピロール、N-ビニフェノチアジン、N-ビニルアセトアニリド、N-ビニルエチルアセトアミド、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール等が挙げられる。
その他のラジカル重合性のモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、N-ビニルホルムアミド等のN-ビニルアミドが挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、2官能以下のラジカル重合性モノマーとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3-メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
特定粒子は、2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せを含んでもよい。この場合、2官能以下のラジカル重合性モノマーが、画像と基材との密着性に寄与し、3官能以上のラジカル重合性モノマーが、画像の硬度向上に寄与する。
2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せとしては、2官能のアクリレート化合物と3官能のアクリレート化合物との組合せ、2官能のアクリレート化合物と5官能のアクリレート化合物との組み合わせ、単官能のアクリレート化合物と4官能のアクリレート化合物との組み合わせなどが挙げられる。
画像と基材との密着性をより向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、環状構造を有するラジカル重合性モノマー(以下、「環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
環状ラジカル重合性モノマーとしては、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
また、以下で説明する、2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーも挙げられる。
画像と基材との密着性を更に向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、1つ以上の環状構造と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基と、を含む重合性モノマー(以下、「2官能以上の環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーとしては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、この重合性モノマー全体に占める2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーの割合は、10質量%~100質量%が好ましく、30質量%~100質量%がより好ましく、40質量%~100質量%が特に好ましい。
上記に挙げたラジカル重合性モノマーの他にも、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品、並びに業界で公知のラジカル重合性及び架橋性のモノマーを用いることができる。
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物が挙げられる。
カチオン重合性モノマーとしては、少なくとも1つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N複素環、O複素環、S複素環、P複素環、アルデヒド、ラクタム、又は環状エステル基を有する化合物が好ましい。
カチオン重合性モノマーとしては、J. V. Crivelloらの「Advances in Polymer Science」, 62, pages 1 to 47 (1984)、Leeらの「Handbook of Epoxy Resins」, McGraw Hill Book Company, New York (1967) 、及びP. F. Bruinsらの「Epoxy Resin Technology」,(1968)に記載の化合物を用いてもよい。
また、光重合性モノマーとしては、特開平7-159983号公報、特公平7-31399号公報、特開平8-224982号公報、特開平10-863号公報、特開平9-134011号公報、特表2004-514014号公報等の各公報に記載の光重合性組成物に用いられる光硬化性の重合性モノマーが知られており、これらも特定粒子に含まれ得る重合性モノマーとして適用することができる。
光重合性モノマーとしては、上市されている市販品を用いてもよい。
光重合性モノマーの市販品の例としては、AH-600(2官能)、AT-600(2官能)、UA-306H(6官能)、UA-306T(6官能)、UA-306I(6官能)、UA-510H(10官能)、UF-8001G(2官能)、DAUA-167(2官能)、ライトアクリレートNPA(2官能)、ライトアクリレート3EG-A(2官能)(以上、共栄社化学(株))、SR339A(PEA、単官能)、SR506(IBOA、単官能)、CD262(2官能)、SR238(HDDA、2官能)、SR341(3MPDDA、2官能)、SR508(2官能)、SR306H(2官能)、CD560(2官能)、SR833S(2官能)、SR444(3官能)、SR454(3官能)、SR492(3官能)、SR499(3官能)、CD501(3官能)、SR502(3官能)、SR9020(3官能)、CD9021(3官能)、SR9035(3官能)、SR494(4官能)、SR399E(5官能)(以上、サートマー社)、A-NOD-N(NDDA、2官能)、A-DOD-N(DDDA、2官能)、A-200(2官能)、APG-400(2官能)、A-BPE-10(2官能)、A-BPE-20(2官能)、A-9300(3官能)、A-9300-1CL(3官能)、A-TMPT(3官能)、A-TMM-3L(3官能)、A-TMMT(4官能)、AD-TMP(4官能)(以上、新中村化学工業(株))、UV-7510B(3官能)(日本合成化学(株))、KAYARAD DPCA-30(6官能)、KAYARAD DPEA-12(6官能)(以上、日本化薬(株))等が挙げられる。
その他、重合性モノマーとしては、NPGPODA(ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート)、SR531、SR285、SR256(以上、サートマー社)、A-DHP(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業(株))、アロニックス(登録商標)M-156(東亞合成(株))、V-CAP(BASF社)、ビスコート#192(大阪有機化学工業(株))等の市販品を好適に用いることができる。
これらの市販品の中でも、特に環状構造を有する光重合性モノマーである、SR506、SR833S、A-9300、又はA-9300-CLが好ましく、SR833Sが特に好ましい。
-熱重合性モノマー-
熱重合性モノマーは、加熱もしくは赤外線の照射によって重合可能な重合性モノマーの群から選択できる。熱重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、アゼチジン化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、3-(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)-1,2-プロパンジオール、リモネンオキシド、2-ビフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’、4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン-ビスフェノールS由来のエポキシド、エポキシ化スチレン、エピクロロヒドリン-ビスフェノールF由来のエポキシド、エピクロロヒドリン-ビスフェノールA由来のエポキシド、エポキシ化ノボラック、脂環式ジエポキシド等の2官能以下のエポキシ化合物;
多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、ウレタンポリエポキシ化合物、ポリエポキシポリブタジエン等の3官能以上のエポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物の市販品としては、EPICLON(登録商標)840(DIC社)が挙げられる。
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチル-1-オキセタン、1,4ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-フェノキシメチル-オキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、3,3-ジメチル-2-(p-メトキシフェニル)-オキセタン等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物をブロック化剤(所謂、活性水素含有化合物)で不活性化した化合物が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、トリメチルへキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、タケネート(登録商標;三井化学(株))、デュラネート(登録商標;旭化成(株))、Bayhydur(登録商標;バイエルAG社)などの市販のイソシアネート、又はこれらを組み合わせた二官能以上のイソシアネートが好ましい。
ブロック化剤としては、ラクタム[例えばε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等]、オキシム[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)、シクロヘキサノンオキシム等]、アミン[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン、ジフェニルアミン等)など]、脂肪族アルコール[例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール等]、フェノール及びアルキルフェノール[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール等]、イミダゾール[例えばイミダゾール、2-メチルイミダゾール等]、ピラゾール[例えばピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等]、イミン[例えばエチレンイミン、ポリエチレンイミン等]、活性メチレン[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等]、特開2002-309217号公報及び特開2008-239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ブロック化剤としては、オキシム、ラクタム、ピラゾール、活性メチレン、又はアミンが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、Trixene(登録商標)BI7982、BI7641,BI7642、BI7950、BI7960、BI7991等(Baxenden Chemicals LTD)、Bayhydur(登録商標;Bayer AG社)が好適に用いられる。また、国際公開第2015/158654号の段落[0064]に記載の化合物群も好適に用いられる。
既述の特定ポリマー及び既述の重合性モノマーを含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー及び重合性モノマーを含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
(光重合開始剤)
特定粒子は、光重合開始剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
特定粒子が光重合性モノマー(例えば、ラジカル重合性モノマー)を含む場合には、特定粒子は、光重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特定粒子が光重合開始剤を含む場合には、光(即ち、活性エネルギー線)に対する感度が高くなり、硬度により優れ、かつ、基材との密着性にもより優れた画像が得られる。
詳細には、特定粒子が光重合開始剤を含む場合、1つの特定粒子が、光重合性モノマーと光重合開始剤との両方を有する。このため、光重合性モノマーと光重合開始剤との距離が近くなるので、従来の光硬化性組成物を用いた場合と比較して、膜の硬化感度(以下、単に「感度」ともいう)が向上する。その結果、硬度により優れ、かつ、基材との密着性にもより優れた膜が形成される。
また、特定粒子が光重合開始剤を含む場合、従来、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかった光重合開始剤(例えば、水への溶解度が25℃において1.0質量%以下である光重合開始剤)を用いることができる。これにより、使用する光重合開始剤の選択の幅が広がり、ひいては、用いられる光源の選択の幅も広がる。このため、従来よりも硬化感度が向上し得る。
既述の、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかった光重合開始剤として、具体的には、後述のカルボニル化合物及びアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられ、アシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
このように、本開示のインクは、水に対する溶解性が低い物質を特定粒子に含ませることにより、水系の組成物である本開示のインク中に含有させることができる。このことも本開示のインクの利点の一つである。
また、特定粒子が光重合開始剤を含む態様のインクは、従来の光硬化性組成物と比較して、保存安定性にも優れる。この理由は、光重合開始剤が特定粒子に含まれていることにより、光重合開始剤の凝集又は沈降が抑制されるためと考えられる。
特定粒子に含まれ得る光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を適宜選択して使用することができる。
光重合開始剤は、光(即ち、活性エネルギー線)を吸収して重合開始種であるラジカルを生成する化合物である。
光重合開始剤としては公知の化合物を使用できるが、好ましい光重合開始剤として、(a)芳香族ケトン類等のカルボニル化合物、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、上記(a)~(m)の化合物を1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(a)カルボニル化合物、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、”RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”,J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、pp.77~117に記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。
より好ましい例としては、特公昭47-6416号公報記載のα-チオベンゾフェノン化合物、特公昭47-3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47-22326号公報記載のα-置換ベンゾイン化合物、特公昭47-23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57-30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60-26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60-26403号公報、特開昭62-81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1-34242号公報、米国特許第4,318,791号パンフレット、ヨーロッパ特許0284561A1号公報に記載のα-アミノベンゾフェノン類、特開平2-211452号公報記載のp-ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61-194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2-9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2-9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63-61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59-42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
また、特開2008-105379号公報又は特開2009-114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。
光重合開始剤の市販品の例としては、IRGACURE(登録商標)184、369、500、651、819、907、1000、1300、1700、1870、DAROCUR(登録商標)1173、2959、4265、ITX、LUCIRIN(登録商標)TPO〔以上、全てBASF社〕、ESACURE(登録商標)KTO37、KTO46、KIP150、EDB〔以上、全てLamberti社〕、H-Nu(登録商標)470、470X〔以上、全てSpectra Group Limited社〕、Omnipol TX、9210〔以上、全てIGM Resins B.V.社〕、SPEEDCURE7005、7010、7040〔以上、LAMBSON社〕等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(a)カルボニル化合物又は(b)アシルホスフィンオキシド化合物がより好ましく、具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社のIRGACURE(登録商標)819)、2-(ジメチルアミン)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(例えば、BASF社のIRGACURE(登録商標)369)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えば、BASF社のIRGACURE(登録商標)907)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(例えば、BASF社のIRGACURE(登録商標)184)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド(例えば、DAROCUR(登録商標)TPO、LUCIRIN(登録商標)TPO(いずれもBASF社))などが挙げられる。
これらの中でも、感度向上の観点及びLED光への適合性の観点等から、内包光重合開始剤としては、(b)アシルホスフィンオキシド化合物が好ましく、モノアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド)、又は、ビスアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド)がより好ましい。
LED光の波長としては、355nm、365nm、385nm、395nm、又は405nmが好ましい。
また、マイグレーション抑制の観点からみると、光重合開始剤としては、高分子型光重合開始剤も好ましい。
高分子型光重合開始剤としては、前述の、Omnipol TX、9210;SPEEDCURE7005、7010、7040等が挙げられる。
光重合開始剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
光重合開始剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%~25質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%~20質量%、さらに好ましくは1質量%~15質量%である。
(増感剤)
特定粒子は、増感剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
特定粒子が光重合開始剤の少なくとも1種を含む場合には、特定粒子は、増感剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特定粒子が増感剤を含有すると、光(即ち、活性エネルギー線)の照射による光重合開始剤の分解がより促進され得る。
増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる物質である。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用を生じる。これにより、光重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸又は塩基の生成等が促進される。
増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、3-アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3-(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン等が挙げられる。
また、増感剤としては、特開2010-24276号公報に記載の一般式(i)で表される化合物や、特開平6-107718号公報に記載の一般式(I)で表される化合物も、好適に使用できる。
上記の中でも、増感剤としては、LED光への適合性及び光重合開始剤との反応性の観点から、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及びベンゾフェノンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、チオキサントン及びイソプロピルチオキサントンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イソプロピルチオキサントンが更に好ましい。
特定粒子が増感剤を含む場合、増感剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
特定粒子が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.2質量%~15質量%であることがより好ましく、0.3質量%~10質量%であることが更に好ましい。
光重合開始剤及び増感剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び増感剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
(光熱変換剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、光熱変換剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
光熱変換剤は、赤外線等を吸収して発熱し、熱重合性モノマーを重合硬化させる化合物である。光熱変換剤としては、公知の化合物を用いることができる。
光熱変換剤としては、赤外線吸収剤が好ましい。赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチルインドリウム、インドシアニングリーン、ポリメチン色素、クロコニウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素、カルコゲノピリロアリリデン色素、金属チオレート錯体色素、ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ビスアミノアリルポリメチン色素、インドリジン色素、ピリリウム色素、キノイド色素、キノン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、カーボンブラック等が挙げられる。
光熱変換剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、熱重合性モノマー、及び光熱変換剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
光熱変換剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
光熱変換剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%~25質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが更に好ましい。
(熱硬化促進剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、熱硬化促進剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
熱硬化促進剤は、熱重合性モノマーの熱硬化反応を触媒的に促進する化合物である。
熱硬化促進剤としては、公知の化合物を使用することができる。熱硬化促進剤としては、酸若しくは塩基、又は加熱により酸若しくは塩基を発生させる化合物が好ましく、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、脂肪族アルコール、フェノール、脂肪族アミン、芳香族アミン、イミダゾール(フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール等)、ピラゾールなどが挙げられる。
熱硬化促進剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、熱重合性モノマー、及び熱硬化促進剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
熱硬化促進剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
熱硬化促進剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%~25質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが更に好ましい。
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全固形分量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
これにより、分散安定性がより向上し、かつ、画像と基材との密着性がより向上する。
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが更に好ましい。
特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して1質量%以上であると、画像と基材との密着性がより向上する。
また、特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して50質量%以下であると、インクの分散安定性がより向上する。
特定粒子の体積平均分散粒子径は特に制限はないが、分散安定性の観点から、0.01μm~10.0μmであることが好ましく、0.01μm~5μmであることがより好ましく、0.05μm~1μmであることが更に好ましく、0.05μm~0.5μmが更に好ましく、0.05μm~0.3μmが更に好ましい。
本開示において、「体積平均分散粒子径」は、光散乱法によって測定された値を指す。光散乱法による特定粒子の体積平均分散粒子径の測定は、例えば、LA-960((株)堀場製作所)を用いて行う。
〔水〕
本開示のインクは、水を含有する。
水は、特定粒子(分散質)に対する分散媒である。
本開示のインク中の水の含有量には特に制限はないが、水の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは10質量%~99質量%であり、より好ましくは20質量%~95質量%であり、さらに好ましくは30質量%~90質量%であり、特に好ましくは50質量%~90質量%である。
〔色材〕
本開示のインクは、色材を少なくとも1種含有するインク(所謂、「着色インク」)であってもよいし、色材を含有しないインク(所謂、「クリアインク」)であってもよい。
インクが色材を含有する場合、色材は、特定粒子の外部に含有されること(即ち、特定粒子が色材を含まないこと)が好ましい。
色材としては、特に制限はなく、顔料、水溶性染料、分散染料等の公知の色材から任意に選択して使用することができる。この中でも、耐候性に優れ、色再現性に富む点から、顔料を含むことがより好ましい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの)も挙げられる。
有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
色材として顔料を用いる場合には、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。
また、色材として顔料を用いる場合には、顔料として、顔料粒子表面に親水性基を有する自己分散顔料を用いてもよい。
色材及び顔料分散剤については、特開2014-040529号公報の段落[0180]~[0200]、国際公開第2016/052053号の段落[0122]~[0129]を適宜参照することができる。
本開示のインクが色材を含有する場合、色材の含有量は、インク全量に対し、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましく、0.5質量%~5質量%が特に好ましい。
〔その他の成分〕
本開示のインクは、必要に応じて、上記で説明した以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分は、特定粒子に含まれていてもよいし、特定粒子に含まれていなくてもよい。
(有機溶剤)
本開示のインクは、有機溶剤を含有していてもよい。
本開示のインクが有機溶剤を含有すると、画像と基材との密着性がより向上し得る。
本開示のインクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、インクの全量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
有機溶剤の具体例は、以下のとおりである。
・アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)
・多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2-メチルプロパンジオール等)
・多価アルコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)
・アミン類(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)
・アミド類(ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)
・複素環類(2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン等)
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)
・スルホン類(例えば、スルホラン)
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
(界面活性剤)
本開示のインクは、界面活性剤を少なくとも1種含有していてもよい。
本開示のインクが界面活性剤を含有すると、インクの基材への濡れ性が向上する。
界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が好ましく、アルキル硫酸塩が特に好ましい。
界面活性剤としては、特定粒子の分散性の観点から、アルキル鎖長が8~18のアルキル硫酸塩であることが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、アルキル鎖長:12)及びセチル硫酸ナトリウム(SCS、アルキル鎖長:16)から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、既述の界面活性剤以外のその他の界面活性剤として、特開昭62-173463号及び同62-183457号の各公報に記載されたものも挙げられる。例えば、その他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、シロキサン類等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
また、界面活性剤として、有機フルオロ化合物も挙げられる。
有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物としては、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)、及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57-9053号(第8欄~第17欄)、及び特開昭62-135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
なお、本開示のインクは、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤)を実質的に含有しないこともできる。
ここで、「実質的に含有しない」とは、インクの全量に対し、含有量が1質量%未満(好ましくは0.1質量%未満)であることを指す。
インクがアニオン性界面活性剤を実質的に含有しない態様は、インクの起泡を抑制できるという利点、画像の耐水性を向上できるという利点、画像形成後にブリードアウトによる白化を抑制できるという利点、等を有する。また、特に、インクの調製に、アニオン性分散性基を有する顔料分散物を用いる場合には、アニオン性界面活性剤により系中のイオン濃度が上昇し、アニオン性顔料分散剤の電離度が低下して、顔料の分散性が低下することを抑制できるという利点も有する。
(重合禁止剤)
本開示のインクは、重合禁止剤を含有していてもよい。
本開示のインクが重合禁止剤を含有すると、インクの保存安定性がより向上し得る。
重合禁止剤としては、p-メトキシフェノール、キノン類(ハイドロキノン、ベンゾキノン、メトキシベンゾキノン等)、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT))、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、クペロンAl、トリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩などが挙げられる。
これらの中でも、p-メトキシフェノール、カテコール類、キノン類、アルキルフェノール類、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、及びトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、BHT、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、及びトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
(紫外線吸収剤)
本開示のインクは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。
本開示のインクが紫外線吸収剤を含有すると、画像の耐候性等がより向上し得る。
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンズオキサゾール系化合物等が挙げられる。
また、本開示のインクは、画像の硬度、画像と基材との密着性、及びインクの吐出安定性制の御の観点から、必要に応じ、特定粒子の外部に、重合性モノマー、光重合開始剤、樹脂等を含有していてもよい。
これらの成分は、水溶性又は水分散性を有することが好ましい。
ここで、「水溶性」とは、105℃で2時間乾燥させた場合に、25℃の蒸留水100g対する溶解量が1gを超える性質を指す。
また、「水分散性」とは、水不溶性であって、かつ、水中に分散される性質を指す。ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させた場合に、25℃の蒸留水100gに対する溶解量が1g以下である性質を指す。
また、「インクが特定粒子の外部に重合性モノマーを含有している」とは、インクが、特定粒子に含まれない重合性モノマーを含有していることを意味する。光重合開始剤、水溶性樹脂、水分散性樹脂等を特定粒子の外部に含有している場合も同様である。
特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、国際公開第2016/052053号の段落[0148]~[0156]に記載された重合性モノマーが挙げられる。
特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。
これらの中でも、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。
水溶性又は水分散性の観点から、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、アミド構造、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、カルボキシ基、及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する化合物が好ましい。
水溶性又は水分散性の観点から、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、モルホリンアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N-[トリス(3-アクリロイルアミノプロピルオキシメチレン)メチル]アクリルアミド、ジエチレングリコールビス(3-アクリロイルアミノプロイル)エーテル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記一般式(a)~一般式(d)で表される化合物、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、サートマー社のSR9035)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N-[トリス(3-アクリロイルアミノプロピルオキシメチレン)メチル]アクリルアミド、ジエチレングリコールビス(3-アクリロイルアミノプロイル)エーテル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記一般式(a)~一般式(d)で表される化合物、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、サートマー社のSR9035)からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
Figure 0007102420000008

一般式(a)中、複数のRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、複数のRは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLは、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(b)中、複数のRは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLは、各々独立に、炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、複数のk、及びpは、各々独立に、0又は1を表し、複数のmは、各々独立に、0~8の整数を表し、但し、k及びpの少なくとも1つは1である。
一般式(c)中、複数のRは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のnは、各々独立に、1~8の整数を表し、lは0又は1の整数を表す。
一般式(d)中、Zはポリオールのヒドロキシル基から水素原子をq個除いた残基を表し、qは3~6の整数を表し、複数のRは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLは、各々独立に炭素原子数1~8のアルキレン基を表す。
一般式(a)~一般式(d)で表される化合物の具体例としては、下記AM-1~AM-4で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007102420000009

上記のAM-1~AM-4は、特許第5591858号公報に記載の方法により合成することができる。
特定粒子の外部に含有され得る、光重合開始剤及び樹脂については、国際公開第2016/052053号の段落[0139]~[0147]及び[0157]を適宜参照することができる。
〔インクの好ましい物性〕
本開示のインクは、インクを25℃~50℃とした場合に、粘度が、3mPa・s~15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s~13mPa・sであることがより好ましい。特に、本開示のインクは、インクを25℃とした場合における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度が上記の範囲であると、より高い吐出安定性を実現できる。
なお、インクの粘度は、粘度計(VISCOMETER TV-22、東機産業(株))を用いて測定される値である。
〔インクの用途〕
本開示のインクは、塗布法、浸漬法、グラビア法、フレキソ法、インクジェット法等による画像形成に用いることができる。
本開示のインクは、特に、インクジェット法による画像形成に用いられる(即ち、インクジェットインクとして用いられる)ことが好ましい。
〔インクの形態〕
本開示のインクが光硬化性のインク又は熱硬化性のインクである場合の特に好ましい形態として、以下の形態1~4が挙げられる。
<形態1>
形態1は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定鎖状ポリマーである形態である。
形態1において、特定鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。特定鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態1において、光重合性モノマーの分子量は、100~4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態2>
形態2は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定架橋ポリマーである形態である。
形態2としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーからなるシェルと、光重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態2において、光重合性モノマーの分子量は、100~4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態3>
形態3は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定鎖状ポリマーである形態である。
形態3において、特定鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。特定鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態3において、熱重合性モノマーの分子量は、100~4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態4>
形態4は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定架橋ポリマーである形態である。
形態4としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態4において、熱重合性モノマーの分子量は、100~4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
〔インクの製造方法の一例(製法A)〕
本開示のインクを製造する方法には特に制限はないが、以下の一例(製法A)が挙げられる。
製法Aは、有機溶剤、及び特定ポリマーを含む油相成分と、水、揮発性中和剤、及び非揮発性中和剤を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、特定粒子を形成する工程を有する。
製法Aにおいて、特定ポリマーとして特定鎖状ポリマーを用いた場合には、特定鎖状ポリマーを含む特定粒子を含有する態様のインクが製造される。
製法Aにおいて、特定ポリマーとして特定架橋ポリマーを用いた場合には、特定架橋ポリマーを含む特定粒子を含有する態様のインクが製造される。
特定粒子を形成する工程では、既述の油相成分と水相成分とを混合し、得られた混合物を乳化させることにより、特定粒子が形成される。形成された特定粒子は、製造されるインクにおいて分散質として機能する。
水相成分中の水は、製造されるインクにおける分散媒として機能する。
油相成分に含まれる有機溶剤としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
有機溶剤は、特定粒子の形成過程において、また、特定粒子の形成後において、その少なくとも一部が除去されることが好ましい。
油相成分は、上記各成分以外にも、例えば、光重合性モノマー、光重合開始剤、増感剤、重合性基導入用化合物(好ましくは、重合性基及び活性水素基を有する化合物)、重合性基を導入したイソシアネート化合物、酸基を導入したイソシアネート化合物等を含むことができる。
水相成分は、水、揮発性中和剤、及び非揮発性中和剤を含むこと以外には、特に制限はない。
水相成分は、水、揮発性中和剤、及び非揮発性中和剤以外の成分を含んでもよい。
例えば、水相成分は、既述の酸基導入用化合物(好ましくは、既述の酸基及び活性水素基を有する化合物)を含んでいてもよい。
製法Aにおける、油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量が、製造されるインクにおける、特定粒子の全固形分量に対応する。
製法Aに用いられ得る各成分の使用量の好ましい範囲については、既述の「インク」の項を参照できる。この参照の際、既述の「インク」の項における、「含有量」及び「特定粒子の全固形分量」は、それぞれ、「使用量」及び「油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量」と読み替える。
特定粒子を形成する工程において、油相成分と水相成分との混合の方法には特に限定はないが、例えば、撹拌による混合が挙げられる。
特定粒子を形成する工程において、乳化の方法には特に限定はないが、例えば、ホモジナイザー等の乳化装置(例えば、分散機)による乳化が挙げられる。
乳化における分散機の回転数は、例えば、5000rpm~20000rpmであり、好ましくは10000rpm~18000rpmである。
乳化における回転時間は、例えば、1分間~120分間であり、好ましくは3分間~60分間であり、より好ましくは3分間~30分間であり、更に好ましくは5分間~15分間である。
特定粒子を形成する工程における乳化は、加熱下で行ってもよい。
乳化を加熱下で行うことにより、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、乳化を加熱下で行うことにより、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
乳化を加熱下で行う場合の加熱温度は、揮発性中和剤の揮発を抑制する観点から、揮発性中和剤の沸点に応じて、適宜設定することが好ましい。
特定粒子を形成する工程における乳化は、揮発性中和剤の沸点よりも10℃以上低い温度で行うことが好ましく、20℃以上低い温度で行うことがより好ましい。
また、特定粒子を形成する工程は、混合物を乳化させる乳化段階と、乳化段階によって得られた乳化物を加熱する加熱段階と、を含んでいてもよい。
乳化段階と加熱段階とを含む態様では、特に加熱段階において、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、乳化段階と加熱段階とを含む態様では、特に加熱段階において、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
加熱段階における加熱温度としては、揮発性中和剤が揮発し難く、かつ、油相成分中の有機溶剤が揮発し易い温度に設定することが好ましく、例えば、揮発性中和剤及び有機溶剤の種類及び量に応じて、適宜設定することが好ましい。
加熱段階における加熱時間は、揮発性中和剤及び有機溶剤の種類及び量、並びに加熱温度に応じて、適宜設定するとよい。
また、製法Aは、必要に応じて、特定粒子を形成する工程以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、特定粒子を形成する工程後において、その他の成分(例えば、顔料)を添加する工程が挙げられる。
添加されるその他の成分(例えば、顔料)については、インクに含有され得るその他の成分として既に説明したとおりである。
〔インクの製造方法の別の一例(製法B)〕
特定架橋ポリマーを含む特定粒子を含有する態様のインクを製造する方法としては、以下に示す、製法Bも好適である。
製法Bは、有機溶剤、3官能以上のイソシアネート化合物、及び酸基を導入したイソシアネート化合物を含む油相成分と、水、揮発性中和剤、及び非揮発性中和剤を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、特定粒子を形成する工程を有する。
製法Bの好ましい態様は、油相成分に特定ポリマーではなく3官能以上のイソシアネート化合物を用いる点を除けば、製法Aの好ましい態様と同様である。
〔画像形成方法〕
本開示の画像形成方法は、基材上に、既述の本開示のインクを付与することによりインク膜を形成する工程(以下、「付与工程」ともいう)と、上記インク膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)と、を有する。
本開示の画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
本開示の画像形成方法によれば、基材上に、精細な画像が形成される。また、本開示の画像形成方法によれば、基材上に、引っ掻き耐性に優れた画像が形成される。
(付与工程)
付与工程は、基材上に、本開示のインクを付与することによりインク膜を形成する工程である。
基材上にインクを付与する態様としては、塗布法、浸漬法、インクジェット法等の公知の方法を利用した態様のいずれを採用してもよい。中でも、種々の基材(記録媒体を含む)に対して膜(例えば、画像)の形成が行える点で、インクジェット法が好適である。
基材としては、特に制限はなく、例えば、支持体及び記録媒体として提供されている公知の基材を適宜選択して使用することができる。
基材としては、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、プラスチックフィルム(ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリスチレン(PS:Polystyrene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のフィルム)、既述の金属がラミネートされ又は蒸着された紙、既述の金属がラミネートされ又は蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
また、基材としては、テキスタイル基材も挙げられる。
テキスタイル基材の素材としては、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維;ビスコースレーヨン、レオセル等の化学繊維;ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維;天然繊維、化学繊維、及び合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも2種である混合物などが挙げられる。テキスタイル基材としては、国際公開第2015/158592号の段落[0039]~[0042]に記載されたテキスタイル基材を用いてもよい。
基材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、ポリスチレン(PS)基材、ポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリプロピレン(PP)基材、アクリル樹脂基材等のプラスチック基材が好ましい。
インクジェット法によるインクの付与は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
インクジェット記録装置としては特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。
インクジェット記録装置としては、インク供給系、温度センサー、加熱手段等を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本開示のインクを含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、及びピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1pl~100pl、より好ましくは8pl~30plのマルチサイズドットを、好ましくは320dpi(dot per inch;以下、同じ)×320dpi~4000dpi×4000dpi、より好ましくは400dpi×400dpi~1600dpi×1600dpi、さらに好ましくは720dpi×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、dpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
また、付与工程では、予め加熱された基材に対してインクを付与してもよい。
付与工程において、予め加熱された基材に対してインクを付与した場合には、加熱された基材によって、以下の加熱工程を実施することができる(即ち、加熱された基材によってインク膜を加熱することができる)。
インクを付与する前の基材の加熱は、例えば、後述する加熱工程において例示する加熱手段によって行うことができる。
(加熱工程)
加熱工程は、基材上に形成されたインク膜を加熱する工程である。
加熱工程においてインク膜を加熱することにより、インク膜の増粘が起こり、その結果、引っ掻き耐性に優れた画像が得られる。
本開示の画像形成方法において、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱工程における加熱により、インク膜の硬化(即ち、熱重合性モノマーによる熱重合)を行ってもよい。言い換えれば、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱工程が、後述の硬化工程Bを兼ねていてもよい。
加熱工程における加熱の態様としては、基材上に付与されたインクを加熱手段によって加熱する態様が挙げられる。
また、既述のとおり、付与工程において、予め加熱された基材に対してインクを付与した場合、加熱工程における加熱の態様としては、加熱された基材によってインクを加熱する態様も挙げられる。
加熱手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、赤外線LED、赤外線ヒーター、熱オーブン、ヒート板、赤外線レーザー、赤外線ドライヤー等が挙げられる。中でも、インクを効率的に加熱硬化可能な点で、波長0.8μm~1.5μm又は2.0μm~3.5μmに極大吸収波長を有する、近赤外線~遠赤外線に発光波長を有する発光ダイオード(LED)、近赤外線~遠赤外線を放射するヒーター、近赤外線~遠赤外線に発振波長を有するレーザー、又は近赤外線~遠赤外線を放射するドライヤーが好ましい。
加熱時における加熱温度は、インク膜をより効果的に増粘させる観点から、40℃以上が好ましく、40℃~200℃がより好ましく、45℃~100℃が更に好ましく、50℃~80℃が更に好ましく、55℃~70℃が更に好ましい。
加熱温度は、基材上のインクの温度を指し、赤外線サーモグラフィ装置H2640(日本アビオニクス(株))を用いたサーモグラフで測定することができる。
加熱時間は、加熱温度、インクの組成、印刷速度等を加味し、適宜設定することができる。加熱時間は、5秒以上が好ましく、5秒~5分がより好ましく、10秒~1分がより好ましく、20秒~1分が更に好ましい。
(硬化工程)
本開示の画像形成方法は、加熱工程によって加熱されたインク膜を硬化させる硬化工程を有することができる。
この硬化工程により、インク膜中において、重合性モノマーによる重合反応(即ち、架橋反応)が進行する。従って、本開示の画像形成方法が硬化工程を有する場合には、画像の硬度をより向上させることができ、ひいては画像の引っ掻き耐性をより向上させることができる。
本開示の画像形成方法において、光硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して光(即ち、活性エネルギー線)を照射することにより、インク膜を光硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程A」)を設けることができる。
本開示の画像形成方法において、熱硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことによりインク膜を熱硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程B」)を設けることができる。
但し、熱硬化性のインクを用いる場合、この硬化工程B(即ち、前述の加熱工程とは別の硬化工程B)を設けず、前述の加熱工程により、インク膜の増粘及び熱硬化を行ってもよい。
即ち、本開示の画像形成方法において、熱硬化性のインクを用いる場合は、インク膜の増粘を行う加熱工程と、インク膜の熱硬化を行う硬化工程Bと、を別個に設けてもよいし、インク膜の増粘及び熱硬化を両方行う1回の加熱工程を設けてもよい。
-硬化工程A-
硬化工程Aは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して活性エネルギー線を照射することによりインク膜を硬化させる工程である。
硬化工程Aでは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して活性エネルギー線を照射することにより、インク膜中の特定粒子の光架橋反応(即ち、光重合反応)が進行し、これによりインク膜の強度が高められる。
硬化工程Aで用いることができる活性エネルギー線としては、紫外線(UV光)、可視光線、電子線等を挙げられ、これらの中でも、UV光が好ましい。
活性エネルギー線(光)のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、220nm~390nmであることがより好ましく、220nm~385nmであることが更に好ましい。
また、200nm~310nmであることも好ましく、200nm~280nmであることも好ましい。
活性エネルギー線(光)が照射される際の露光面照度は、例えば10mW/cm~2000mW/cm、好ましくは20mW/cm~1000mW/cmである。
活性エネルギー線(光)が照射される際の露光エネルギーは、例えば10mJ/cm~2000mJ/cm、好ましくは20mJ/cm~1000mJ/cmである。
活性エネルギー線(光)を発生させるための源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV蛍光灯、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。
また、上記で例示された光源の、半導体紫外発光デバイスへの置き換えは、産業的にも環境的にも非常に有用である。
半導体紫外発光デバイスの中でも、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)は、小型、高寿命、高効率、及び低コストであり、光源として期待されている。
光源としては、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED、又は青紫レーザーが好ましい。
これらの中でも、増感剤と光重合開始剤とを併用する場合は、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な超高圧水銀ランプ、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な高圧水銀ランプ、又は、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDがより好ましく、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDが最も好ましい。
硬化工程Aおいて、基材上に付与されたインクに対する活性エネルギー線の照射時間は、例えば0.01秒間~120秒間であり、好ましくは0.1秒間~90秒間である。
照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60-132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を同様に適用することができる。
活性エネルギー線の照射方式として、具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニット及び光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって活性エネルギー線の照射を行う方式が好ましい。
活性エネルギー線の照射は、インクを着弾して加熱乾燥を行った後、一定時間(例えば0.01秒間~120秒間、好ましくは0.01秒間~60秒間)をおいて行うことが好ましい。
-硬化工程B-
硬化工程Bは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことによりインク膜を熱硬化させる工程である。
硬化工程Bでは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことにより、インク中の特定粒子の熱架橋反応(即ち、熱重合反応)が進行し、これによりインク膜の強度が高められる。
硬化工程Bの好ましい態様は、加熱工程の好ましい態様と同様である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、「部」は、特に断りがない限り、質量部を表す。
また、化学式中の「*」は、結合位置を表す。
<特定鎖状ポリマーの合成>
(ポリマー1の合成)
下記の反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、下記のポリマー1を合成した。
Figure 0007102420000010

三口フラスコに、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(16.9g)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(82.5g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2-5))(2.9g)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(化合物(a-21))(77.0g)、及び酢酸エチル(102.3g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、ネオスタンU-600(日東化成(株)、無機ビスマス触媒;以下、「U-600」ともいう)を0.2g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤としてのイソプロパノール(IPA)(80g)と、酢酸エチル(110g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温(25℃;以下同じ)まで放冷し、次いで、酢酸エチルを用いて濃度調整を行うことにより、ポリマー1の30質量%溶液(溶媒:IPA及び酢酸エチルの混合溶液)を得た。
ポリマー1の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
ポリマー1は、光重合性基としてアクリロイル基を有している。
(ポリマー2の合成)
特定鎖状ポリマーとして、鎖状の(メタ)アクリルポリマーであるポリマー2を合成した。詳細を以下に示す。
三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(37.5g)を仕込み、20mL/minの窒素気流下、75℃で30分間加熱した。
次に、そこに、メタクリル酸2-エチルへキシル(30.0g)、メタクリル酸メチル(10.0g)、メタクリル酸(3.0g)、アリルメタクリレート(7.0g)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(2.2g)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(37.5g)の混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で2時間撹拌し、その後、室温まで放冷した。得られた反応液を水5Lに撹拌しながら滴下し、(メタ)アクリルポリマーの粉体を得た。得られた粉体を60℃のオーブンを用いて6時間乾燥し、次いで、酢酸エチルに溶解させて濃度調整を行うことにより、ポリマー2の30質量%溶液(溶媒:酢酸エチル)を得た。
ポリマー2の重量平均分子量(Mw)は20000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
(ポリマー101の合成)
下記の反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、下記のポリマー101を合成した。
Figure 0007102420000011

三口フラスコに、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(6.4g)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(41.2g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2-5))(20.2g)、及び酢酸エチル(67.7g)を仕込み、70℃に加熱した。得られた加熱物に、U-600を0.14g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤としてのイソプロパノール(IPA)(10g)と、酢酸エチル(32.9g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで、酢酸エチルを用いて濃度調整を行うことにより、ポリマー101の30質量%溶液(溶媒:IPA及び酢酸エチルの混合溶液)を得た。
ポリマー101の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
〔実施例1〕(光硬化性のインク)
<水分散物の調製>
-油相成分の調製-
ポリマー1の30質量%溶液(ポリマー1の量として53部)と、サートマー社の光重合性モノマーSR833S(44部)と、BASF社の光重合開始剤IRGACURE(登録商標)819(2.5部;以下、「IRG819」ともいう)と、増感剤として東京化成工業(株)の2-イソプロピルチオキサントン(0.5部;以下、「ITX」ともいう)と、酢酸エチルと、を混合し、15分間撹拌することにより、固形分36質量%の油相成分44gを得た。
SR833Sは、環状構造を有する2官能の光重合性モノマーであり、具体的にはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304)である。
IRG819は、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤であり、具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドである。
-水相成分の調製-
蒸留水(45g)と、揮発性中和剤としてのトリエチルアミン(沸点:89℃)と、非揮発性中和剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)(沸点:1388℃)と、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
揮発性中和剤の使用量及び非揮発性中和剤の使用量は、製造される特定粒子における酸基(即ち、カルボキシ基)の中和度が90%となるように調整した。
揮発性中和剤及び非揮発性中和剤の具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対する特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の含有量(質量%)/100)×特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の酸価(mmol/g)×0.9×〔揮発性中和剤のモル数(mol)/(揮発性中和剤のモル数(mol)+非揮発性中和剤のモル数(mol))〕×揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
非揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対する特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の含有量(質量%)/100)×特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の酸価(mmol/g)×0.9×〔非揮発性中和剤のモル数(mol)/(揮発性中和剤のモル数(mol)+非揮発性中和剤のモル数(mol))〕×非揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を、室温でホモジナイザーを用いて18000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(25g)に添加し、得られた液体を室温で30分撹拌した。次に、この液体を50℃に加熱し、50℃で6時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。酢酸エチルが留去された液体を、更に、50℃で24時間撹拌することにより、液体中に特定粒子を形成させた。
次に、この特定粒子を含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、特定粒子の水分散物を得た。
<光硬化性のインクの調製>
下記組成の各成分を混合し、光硬化性のインクを作製した。
-光硬化性のインクの組成-
・上記水分散物 82部
・顔料分散液 13部
〔Pro-jet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社)、顔料濃度:14質量%〕
・フッ素系界面活性剤 0.3部
〔Capstone FS-31(DuPont社)、固形分:25質量%〕
・2-メチルプロパンジオール 4.7部
<評価>
上記で得られた光硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表3に示す。
1.インクの吐出性
インクの分散安定性の指標の1つとして、吐出性の評価を行った。
調製後室温で1日以内保管した上記光硬化性のインクをインクジェットプリンタ(ローランド ディー.ジー.社、SP-300V)のヘッドから30分間吐出し、次いで吐出を停止した。
吐出の停止から所定の時間(詳細には、5分間、8分間、及び10分間のそれぞれの時間)経過した後、基材上に、再び上記ヘッドから上記インクを吐出させ、5cm×5cmのベタ画像を形成した。
基材としては、DUROplastic社のポリプロピレン(PP)基板であるCORREX(登録商標)を用いた。
これらの画像を目視で観察し、不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの有無を確認し、下記評価基準に従って、インクの吐出性を評価した。
下記評価基準において、インクの吐出性が最も優れるものは、Aである。
-インクの吐出性の評価基準-
A:吐出の停止から10分経過後の吐出評価時にも不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:吐出の停止から8分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られたが、10分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルが発生し、ドット欠けの発生が認められた。
C:吐出の停止から8分経過後の吐出評価時に不吐出ノズルが発生し、ドット欠けの発生が認められた。
2.インクの保存安定性
インクの分散安定性の指標の1つとして、保存安定性の評価を行った。
上記光硬化性のインクを容器に密封し、60℃で2週間経時させた。
2週間経過後のインクについて、上記インクの吐出性の評価試験と同様の評価試験を実施し、同様の評価基準に従って、インクの保存安定性を評価した。
上記評価基準において、インクの保存安定性が最も優れるものは、Aである。
3.画像の精細さ
基材をプリントヒーターによって60℃に加熱し、加熱された基材に対し、上記光硬化性のインクを上記インクジェットプリンタのヘッドから吐出し、図1に示す文字画像を、5ポイント、7ポイント、及び10ポイントの各サイズにて形成した。
基材としては、DUROplastic社のポリプロピレン(PP)基板であるCORREX(登録商標)を用いた。
形成された各サイズの図1に示す文字画像を、倍率10倍のクラフトルーペ(エツミ社)によって観察した。観察した結果に基づき、下記評価基準にて、画像の精細さを評価した。下記評価基準において、画像の精細さが最も優れるものは、Aである。
-画像の精細さの評価基準-
A:5ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された。
B:7ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、Aに該当する場合を除く)。
C:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、A又はBに該当する場合を除く)。
D:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れて、又は、にじんで形成された。
4.硬化膜の引っ掻き耐性
調製後室温で1日以内保管した上記光硬化性のインクを基材上に塗布することにより、上記基材上に厚さ12μmの塗膜を形成した。
基材としては、DUROplastic社のポリプロピレン(PP)基板であるCORREX(登録商標)を用いた。
また、上記塗布は、RK PRINT COAT INSTRUMENTS社のKハンドコーターのNo.2バーを用いて行った。
次に、上記塗膜を60℃で3分間加熱し、乾燥させた。
乾燥後の塗膜に対し、紫外線(UV)を照射することにより、塗膜を硬化させ、硬化膜を得た。
紫外線(UV)の照射には、露光光源としてオゾンレスメタルハライドランプMAN250Lを搭載し、コンベアスピード35m/分、及び露光強度1.0W/cmに設定した実験用UVミニコンベア装置CSOT((株)ジーエス・ユアサパワーサプライ)を用いた。このUV照射は、露光エネルギー1000mJ/cmにて行った。
上記で形成された硬化膜に対し、以下の条件の引っ掻き試験を実施した。
-引っ掻き試験の条件-
装置:ハイドン社の往復摩耗試験機「TYPE30S」
引っ掻き針:先端の曲率半径が1.0mmであるSUS(ステンレス)製の引っ掻き針
加重:100g及び200gの2条件
引っ掻き速度:3000mm/min.
引っ掻き回数:5往復
引っ掻き試験の実施後、硬化膜の表面を目視で観察し、下記評価基準に従って、硬化膜の引っ掻き耐性を評価した。
下記評価基準において、硬化膜の引っ掻き耐性が最も優れるものは、Aである。
-硬化膜の引っ掻き耐性の評価基準-
A:荷重100g及び荷重200gのいずれの条件においても、硬化膜に引っ掻き跡は見られなかった。
B:荷重100gの条件では、硬化膜に引っ掻き跡は見られなかったが、荷重200gの条件では、硬化膜にわずかに引っ掻き跡が見られた。
C:荷重100gの条件で、硬化膜にわずかに引っ掻き跡が見られた。
D:荷重100gの条件で、硬化膜にはっきりと引っ掻き跡が見られた。
〔実施例2〕(光硬化性のインク)
光重合性モノマーの種類及び量を、表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
ここで、SR399Eは、環状構造を有しない5官能の光重合性モノマーであり、具体的にはジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量525)である。
〔実施例3〕(光硬化性のインク)
非揮発性中和剤の種類を、表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
〔実施例4~7及び13~18〕(光硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
〔実施例8~12〕(光硬化性のインク)
揮発性中和剤の使用量及び非揮発性中和剤の使用量を、表3に示す、非揮発性中和剤に対する揮発性中和剤のモル比〔揮発性/非揮発性(モル比)〕になるように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
〔実施例19〕(光硬化性のインク)
ポリマー1の30質量%溶液(ポリマー1の量として53部)の代わりに、ポリマー2の30質量%溶液(ポリマー2の量として53部)を使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
〔比較例1〕(光硬化性のインク)
<水分散物の調製>
-油相成分の調製-
ポリマー1の30質量%溶液(ポリマー1の量として53部)と、サートマー社の光重合性モノマーSR833S(44部)と、BASF社の光重合開始剤IRGACURE(登録商標)819(2.5部;IRG819)と、増感剤として東京化成工業(株)の2-イソプロピルチオキサントン(0.5部;ITX)と、酢酸エチルと、を混合し、15分間撹拌することにより、固形分36質量%の油相成分44gを得た。
-水相成分の調製-
蒸留水(45g)と、揮発性中和剤としてのアンモニア(沸点:-33℃)と、非揮発性中和剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)(沸点:1388℃)と、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
非揮発性中和剤の使用量は、製造される特定粒子における酸基(即ち、カルボキシ基)の中和度が90%となるように調整した。
揮発性中和剤の使用量は、非揮発性中和剤の使用量の1/10の量とした。
揮発性中和剤及び非揮発性中和剤の具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対する特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の含有量(質量%)/100)×特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の酸価(mmol/g)×0.9×(1/10)×揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
非揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対する特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の含有量(質量%)/100)×特定鎖状ポリマー(即ち、ポリマ-1)の酸価(mmol/g)×0.9×非揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を25℃でホモジナイザーを用いて18000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(25g)に添加し、得られた液体を室温で30分撹拌した。次に、この液体を60℃に加熱し、減圧(2.7kPa)下、60℃で6時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルと揮発性中和剤(即ち、アンモニア)とを留去した。酢酸エチルと揮発性中和剤とが留去された液体を、更に、常圧下、50℃で24時間撹拌することにより、液体中に粒子を形成させた。
次に、この粒子を含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、粒子の水分散物を得た。得られた粒子の水分散物からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例1と同様にして、光硬化性のインクを調製した。
結果を表3に示す。
〔比較例2〕(光硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表3に示すように変更したこと以外は比較例1と同様の操作を行い、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(25g)に添加し、得られた液体を室温で30分撹拌した。次に、この液体を60℃に加熱し、減圧(2.7kPa)下、60℃で6時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルと揮発性中和剤(即ち、トリエチルアミン)とを留去した。酢酸エチルと揮発性中和剤とが留去された液体を、更に、常圧下、50℃で24時間撹拌することにより、液体中に粒子を形成させた。
次に、この粒子を含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、粒子の水分散物を得た。得られた粒子の水分散物からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例1と同様にして、光硬化性のインクを調製した。
結果を表3に示す。
〔比較例3〕(光硬化性のインク)
揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
〔比較例4〕(光硬化性のインク)
非揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
Figure 0007102420000012

表3中の「-」は、該当するものがないことを示す。
表3中における「揮発性/非揮発性(モル比)」は、揮発性中和剤と非揮発性中和剤との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤の割合(モル%)に対する揮発性中和剤の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤の割合(モル%)/非揮発性中和剤の割合(モル%)〕を意味する。
表3中における「揮発性により中和された酸基/非揮発性により中和された酸基(モル比)」は、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)に対する揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)/非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)〕を意味する。
表3に示すように、水と、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含む粒子(即ち、特定粒子)と、を含有する光硬化性のインクを用いた実施例1~19は、インクの分散安定性の評価の指標となるインクの吐出性及びインクの保存安定性の試験において、優れた結果を示した。また、実施例1~19は、画像の精細さの試験において、優れた結果を示した。さらに、実施例1~19は、硬化膜の引っ掻き耐性の試験においても、優れた結果を示した。
これに対し、水と、沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含むが、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤により中和された酸基を含まない粒子と、を含有する光硬化性のインクを用いた比較例1~3は、インクの分散安定性の評価の指標となるインクの吐出性及びインクの保存安定性の試験では、優れた結果を示したが、画像の精細さの試験では、評価結果が「D」であり、実施例1~19と比較して、劣る結果を示した。また、比較例1~3は、硬化膜の引っ掻き耐性の試験でも、評価結果が「D」であり、実施例1~19と比較して、劣る結果を示した。
また、水と、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤により中和された酸基を含むが、沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含まない粒子と、を含有する光硬化性のインクを用いた比較例4は、インクの分散安定性の評価の指標となるインクの吐出性及びインクの保存安定性の試験の評価結果が「C」であり、実施例1~19と比較して、劣る結果を示した。
実施例1、4~7及び13~19の結果から、揮発性中和剤の沸点が25℃以上100℃以下である(実施例1及び4~7)と、画像の精細さ及び硬化膜の引っ掻き耐性がより優れることがわかる。
例えば、実施例17及び18の結果から、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤としてアミン化合物を含む場合、アミン化合物の価数が1である(実施例17)と、インクの吐出性及びインクの保存安定性がより優れることがわかる。
例えば、実施例13及び16の結果から、沸点が25℃以上250℃以下である揮発性中和剤としてアミン化合物を含む場合、アミン化合物の置換基が全てアルキル基である(実施例13)と、インクの吐出性及びインクの保存安定性がより優れることがわかる。
実施例1及び8~12の結果から、特定粒子に含まれる、非揮発性中和剤により中和された酸基に対する揮発性中和剤により中和された酸基のモル比(揮発性中和剤により中和された酸基のモル数/非揮発性中和剤により中和された酸基のモル数)が、60/40~90/10の範囲である(実施例1、9及び10)と、インクの吐出性、インクの保存安定性、画像の精細さ、及び硬化膜の引っ掻き耐性の全てがより優れることがわかる。
既述の実施例1~19の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
特定粒子の体積平均分散粒子径は、LA-960((株)堀場製作所)を用い、光散乱法により測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.15μm~0.25μmの範囲であった。
〔実施例101〕(熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
インクの調製において、SR833S、IRG819、及びITXを、60℃及び2.67kPa(20torr)の条件でプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去したTrixeneTMBI7982(熱重合性モノマー;ブロックイソシアネート;Baxenden Chemicals社)(以下、「BI7982」ともいう;量は表4に示すとおり;分子量793)に変更し、かつ、ポリマー1を同じ量のポリマー101に変更したこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表4に示す。
1.インクの吐出性
インクの吐出性について、実施例1におけるインクの吐出性の評価と同様にして実施した。
2.インクの保存安定性
インクの保存安定性について、実施例1におけるインクの保存安定性の評価と同様にして実施した。
3.画像の精細さ
画像の精細さについて、実施例1における画像の精細さの評価と同様にして実施した。
4.硬化膜の引っ掻き耐性
硬化膜の引っ掻き耐性の評価について、塗膜を60℃で3分間加熱して乾燥させ、乾燥後の塗膜に対し紫外線(UV)を照射する操作を、塗膜を120℃のオーブンで5分加熱する操作に変更したこと以外は実施例1における硬化膜の引っ掻き耐性の評価と同様にして実施した。
〔実施例102〕(熱硬化性のインク)
BI7982を、エポキシ基を有する熱重合性モノマーであるEPICLONTM840(DIC社;以下、「EP840」ともいう;量は表4に示すとおり;分子量340)及び熱硬化促進剤である2-メチルイミダゾール(以下、「2MI」ともいう;量は表4に示すとおり)に変更し、かつ、揮発性中和剤の種類を、表4に示すように変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
〔実施例103~106〕(熱硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表4に示すように変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
〔比較例101〕(熱硬化性のインク)
SR833S、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表4に示すとおり)に変更し、かつ、ポリマー1を同じ量のポリマー101に変更したこと以外は比較例1と同様にして、粒子の分散液を得た。得られた粒子の分散液からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例1と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
結果を表4に示す。
〔比較例102〕(熱硬化性のインク)
SR833S、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表4に示すとおり)に変更し、かつ、ポリマー1を同じ量のポリマー101に変更したこと以外は比較例2と同様にして、粒子の分散液を得た。得られた粒子の分散液からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例2と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
結果を表4に示す。
〔比較例103〕(熱硬化性のインク)
揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
〔比較例104〕(熱硬化性のインク)
非揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
Figure 0007102420000013

表4中の「-」は、該当するものがないことを示す。
表4中における「揮発性/非揮発性(モル比)」は、揮発性中和剤と非揮発性中和剤との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤の割合(モル%)に対する揮発性中和剤の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤の割合(モル%)/非揮発性中和剤の割合(モル%)〕を意味する。
表4中における「揮発性により中和された酸基/非揮発性により中和された酸基(モル比)」は、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)に対する揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)/非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)〕を意味する。
表4に示すように、熱硬化性のインクに関する実施例101~106においても、光硬化性のインクに関する実施例1~19と同様の結果が得られた。
既述の実施例101~106の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
特定粒子の体積平均分散粒子径は、LA-960((株)堀場製作所)を用い、光散乱法により測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.15μm~0.25μmの範囲であった。
〔実施例201〕(MCを含む光硬化性のインク)
<マイクロカプセル(MC)の水分散物の調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
-油相成分の調製-
三井化学(株)のタケネート(登録商標)D-110N(固形分である3官能イソシアネート化合物の量として43部;以下、この固形分を「D110N」ともいう)と、下記NCO1の溶液(固形分であるNCO1の量として10部;以下、この固形分を「NCO1」ともいう)と、光重合性モノマーである前述のSR833S(44部)と、光重合開始剤である前述のIRG819(2.5部)と、増感剤である前述のITX(0.5部)と、酢酸エチルと、を混合し、15分間撹拌することにより、固形分30質量%の油相成分45.7gを得た。
タケネートD-110Nは、トリメチロールプロパン(TMP)とm-キシリレンジイソシアネート(XDI)との付加物(3官能イソシアネート化合物である「D110N」)の75質量%酢酸エチル溶液である。
NCO1は、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であり、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)とIPDIとの付加物(DMBA/IPDI=1/3(モル比))である。
上記NCO1の溶液は、NCO1の35質量%酢酸エチル溶液である。
NCO1の溶液は、三口フラスコに、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)18g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)82g、及び酢酸エチル(AcOEt)186gを加え、50℃に加熱した。得られた加熱物にネオスタンU-600を0.3g添加し、3時間反応させることによって調製した。
NCO1の酸価は、1.20mmol/gであった。
-水相成分の調製-
蒸留水(43.1g)と、揮発性中和剤としてのトリエチルアミン(沸点:89℃)と、非揮発性中和剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)(沸点:1388℃)と、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
揮発性中和剤の使用量及び非揮発性中和剤の使用量は、製造される特定粒子(即ち、MC)における酸基(即ち、カルボキシ基)の中和度が90%となるように調整した。
揮発性中和剤及び非揮発性中和剤の具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するNCO1の含有量(質量%)/100〕×NCO1の酸価(mmol/g)×0.9×〔揮発性中和剤のモル数(mol)/(揮発性中和剤のモル数(mol)+非揮発性中和剤のモル数(mol))〕×揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
非揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するNCO1の含有量(質量%)/100)×NCO1の酸価(mmol/g)×0.9×〔非揮発性中和剤のモル数(mol)/(揮発性中和剤のモル数(mol)+非揮発性中和剤のモル数(mol))〕×非揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を、室温でホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を50℃に加熱し、50℃で5時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。次いで、酢酸エチルが留去された液体を、更に、50℃で3時間撹拌することにより、液体中にマイクロカプセル(MC)を形成させた。
次に、このMCを含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、MCの水分散物を得た。
このマイクロカプセルのシェルであるポリマーは、3官能イソシアネート化合物であるD110Nと、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であるNCO1と、の反応によって形成された三次元架橋構造を有するウレタンポリマーである。
このマイクロカプセルのシェルであるポリマーは、NCO1にもともと含まれていたウレタン基、D110Nにもともと含まれていたウレタン基、及び、D110N中又はNCO1中のイソシアネート基と、水と、の反応によって形成されたウレア基を有している。
-光硬化性のインクの組成-
・上記水分散物 82部
・顔料分散液 13部
〔Pro-jet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社)、顔料濃度:14質量%〕
・フッ素系界面活性剤 0.3部
〔Capstone FS-31(DuPont社)、固形分:25質量%〕
・2-メチルプロパンジオール 4.7部
<評価>
上記で得られた光硬化性のインクを用い、実施例1で実施した評価と同様の評価を行った。
結果を表5に示す。
〔実施例202〕(MCを含む光硬化性のインク)
光重合性モノマーの種類及び量を、表5に示すように変更したこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
〔実施例203〕(MCを含む光硬化性のインク)
非揮発性中和剤の種類を、表5に示すように変更したこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
〔実施例204~207及び209〕(MCを含む光硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表5に示すように変更したこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
〔実施例208〕(MCを含む光硬化性のインク)
実施例208は、実施例1で用いたポリマー1を、マイクロカプセルの分散剤として用いた例である。
この例では、マイクロカプセルと分散剤との複合体が、特定粒子に該当する。
油相成分の調製において、NCO1の溶液(NCO1の量として10部)を、実施例1で調製したポリマー1の30質量%溶液(ポリマー1の量として10部)に変更したこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
〔比較例201〕(MCを含む光硬化性のインク)
-油相成分の調製-
前述のD110N(43部)と、前述のNCO1(10部)と、光重合性モノマーである前述のSR833S(44部)と、光重合開始剤である前述のIRG819(2.5部)と、増感剤である前述のITX(0.5部)と、酢酸エチルと、を混合し、15分間撹拌することにより、固形分30質量%の油相成分45.7gを得た。
-水相成分の調製-
蒸留水(43.1g)と、揮発性中和剤としてのアンモニア(沸点:-33℃)と、非揮発性中和剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)(沸点:1388℃)と、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
非揮発性中和剤の使用量は、製造される特定粒子(即ち、MC)における酸基(即ち、カルボキシ基)の中和度が90%となるように調整した。
揮発性中和剤の使用量は、非揮発性中和剤の使用量の1/10の量とした。
揮発性中和剤及び非揮発性中和剤の具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するNCO1の含有量(質量%)/100)×NCO1の酸価(mmol/g)×0.9×(1/10)×揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
非揮発性中和剤の量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するNCO1の含有量(質量%)/100)×NCO1の酸価(mmol/g)×0.9×非揮発性中和剤の分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を、室温でホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を60℃に加熱し、減圧(2.7kPa)下、60℃で5時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルと揮発性中和剤(即ち、アンモニア)とを留去した。酢酸エチルと揮発性中和剤とが留去された液体を、更に、常圧下、50℃で3時間撹拌することにより、液体中にマイクロカプセル(MC)を形成させた。
次に、このMCを含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、MCの水分散物を得た。揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、実施例201と同様にして、光硬化性のインクを調製した。
結果を表5に示す。
〔比較例202〕(MCを含む光硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表5に示すように変更したこと以外は比較例201と同様の操作を行い、乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を60℃に加熱し、減圧(2.7kPa)下、60℃で5時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルと揮発性中和剤(即ち、トリエチルアミン)とを留去した。酢酸エチルと揮発性中和剤とが留去された液体を、更に、常圧下、50℃で3時間撹拌することにより、液体中にマイクロカプセル(MC)を形成させた。
次に、このMCを含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水を用いて希釈することにより、MCの水分散物を得た。揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
結果を表5に示す。
〔比較例203〕(MCを含む光硬化性のインク)
揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
〔比較例204〕(MCを含む光硬化性のインク)
非揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
Figure 0007102420000014

表5中の「-」は、該当するものがないことを示す。
表5中における「揮発性/非揮発性(モル比)」は、揮発性中和剤と非揮発性中和剤との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤の割合(モル%)に対する揮発性中和剤の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤の割合(モル%)/非揮発性中和剤の割合(モル%)〕を意味する。
表5中における「揮発性により中和された酸基/非揮発性により中和された酸基(モル比)」は、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)に対する揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)/非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)〕を意味する。
表5に示すように、粒子が、ポリマーとして、MCのシェルである三次元架橋ポリマー(所謂、特定架橋ポリマー)を含む光硬化性のインクに関する実施例201~209においても、粒子が、ポリマーとして、特定鎖状ポリマー(ポリマー1)を含む光硬化性のインクに関する実施例1~19と同様の結果が得られた。
既述の実施例201~209の各々におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定した。
MCの体積平均分散粒子径は、LA-960((株)堀場製作所)を用い、光散乱法により測定した。
その結果、いずれの例においても、MCの体積平均分散粒子径は、0.15μm~0.25μmの範囲であった。
〔実施例301〕(MCを含む熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
詳細には、SR833S、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表6に示すとおり)に変更したこと以外は実施例201における光硬化性のインクの調製と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、実施例101で実施した評価と同様の評価を行った。
結果を表6に示す。
〔実施例302〕(MCを含む熱硬化性のインク)
BI7982を、EP840及び2MI(量は表6に示すとおり)に変更したこと以外は実施例301と同様の操作を行った。
結果を表6に示す。
〔実施例303~306〕(MCを含む熱硬化性のインク)
揮発性中和剤の種類を、表6に示すように変更したこと以外は実施例301と同様の操作を行った。
結果を表6に示す。
〔比較例301〕(MCを含む熱硬化性のインク)
SR833S、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表6に示すとおり)に変更したこと以外は比較例201と同様にして、粒子の分散液を得た。得られた粒子の分散液からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例201と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
結果を表6に示す。
〔比較例302〕(MCを含む熱硬化性のインク)
SR833S、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表6に示すとおり)に変更したこと以外は比較例202と同様にして、粒子の分散液を得た。得られた粒子の分散液からは、揮発性中和剤による臭気は感じられず、揮発性中和剤に中和された酸基の量を、既述の電位差滴定法により測定したところ、0mmolであった。
得られた粒子の分散液を用い、比較例202と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
結果を表6に示す。
〔比較例303〕(MCを含む熱硬化性のインク)
揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例301と同様の操作を行った。
結果を表6に示す。
〔比較例304〕(MCを含む熱硬化性のインク)
非揮発性中和剤を使用しなかったこと以外は実施例301と同様の操作を行った。
結果を表6に示す。
Figure 0007102420000015

表6中の「-」は、該当するものがないことを示す。
表6中における「揮発性/非揮発性(モル比)」は、揮発性中和剤と非揮発性中和剤との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤の割合(モル%)に対する揮発性中和剤の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤の割合(モル%)/非揮発性中和剤の割合(モル%)〕を意味する。
表6中における「揮発性により中和された酸基/非揮発性により中和された酸基(モル比)」は、揮発性中和剤により中和された酸基と非揮発性中和剤により中和された酸基との合計を100モル%とした場合における、非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)に対する揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)の比〔揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)/非揮発性中和剤により中和された酸基の割合(モル%)〕を意味する。
表6に示すように、MCを含有する熱硬化性のインクに関する実施例301~306においても、MCを含有する光硬化性のインクに関する実施例201~209と同様の結果が得られた。
既述の実施例301~306の各々におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定した。
MCの体積平均分散粒子径は、LA-960((株)堀場製作所)を用い、光散乱法により測定した。
その結果、いずれの例においても、MCの体積平均分散粒子径は、0.15μm~0.25μmの範囲であった。
2017年9月14日に出願された日本国特許出願2017-176704号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (5)

  1. 水と、
    沸点が78℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を含む粒子と、
    を含有し、
    前記粒子が、ポリマーを含み、色材を含まず、
    前記ポリマーが、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであり、かつ、沸点が78℃以上250℃以下である揮発性中和剤及び沸点が250℃を超える非揮発性中和剤により中和された酸基を有し、
    前記揮発性中和剤が、アミン化合物を含み、
    前記アミン化合物が、下記の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記非揮発性中和剤が、アルカリ金属の水酸化物であり、
    前記揮発性中和剤及び前記非揮発性中和剤により中和された酸基における酸基が、カルボキシ基であり、
    インクジェットインクとして用いられる、
    インク組成物。
    式(1):NR
    式(2):NR
    式(3):NR
    式(1)中、R、R、及びRは、各々独立に、アルキル基を表すか、又は、
    、R、及びRは、各々独立に、アルキル基を表し、R及びRが互いに結合してRNからなる環を有する環状アミンを形成する。
    式(2)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基を表すか、又は、
    及びRは、各々独立に、アルキル基を表し、R及びRが互いに結合してRNからなる環を有する環状アミンを形成する。
    式(3)中、Rは、アルキル基を表す。
  2. 前記揮発性中和剤の沸点が、78℃以上100℃以下である請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記粒子に含まれる、前記非揮発性中和剤により中和された酸基に対する前記揮発性中和剤により中和された酸基のモル比が、60/40~90/10の範囲である請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
  4. 前記ポリマーが、鎖状ポリマーである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
  5. 基材上に、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物を付与することによりインク膜を形成する工程と、
    前記インク膜を加熱する工程と、
    を含む画像形成方法。
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