JP6938652B2 - インク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法 - Google Patents

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Description

本開示は、インク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法に関する。
インク組成物の分野において、液体成分として水を含む、ゲル粒子の水分散物が用いられる場合がある。
例えば、特許文献1には、硬度と柔軟性とが両立された膜を形成でき、再分散性に優れたゲル粒子の水分散物として、チオエーテル結合及びエチレン性二重結合を含む三次元架橋構造を有し、親水性基を有し、光重合開始剤を内包しているゲル粒子が、水に分散されているゲル粒子の水分散物が開示されている。特許文献1には、ゲル粒子の水分散物が、インクジェット記録に用いられることも開示されている。
また、特許文献2には、ベタ埋まり性、保存安定性、及び耐擦性のいずれにも優れたインクジェット記録用インク組成物として、塗膜形成材と、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、水と、を含有し、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、SP値の下限値8.5以下且つ上限値18.0以上の溶媒に溶解可能である、インクジェット記録用インク組成物が開示されている。
特許文献1:国際公開第2016/136113号
特許文献2:特開2014−5421号公報
ところで、一般に、液体成分として水を含有するインクを用いて形成されたインク膜では、液体成分として重合性モノマー及び/又は有機溶剤を含有するインクを用いて形成されたインク膜と比較して、インク膜から液体成分を除去しにくい傾向がある。このため、液体成分として水を含有するインクを用いて形成された画像は、引っ掻き耐性に劣る場合がある。
従って、液体成分として水を含有するインクを用いて形成された画像に対し、引っ掻き耐性を向上させることが求められる場合がある。
本開示の課題は、引っ掻き耐性に優れた画像を形成できるインク組成物及びその製造方法、並びに、このインク組成物を用いた画像形成方法を提供することである。
上記課題を解決するための具体的手段は以下の態様を含む。
<1> 水と、
ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであり、活性水素基を有するゲル化剤とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を有するポリマーを含む粒子と、
を含有するインク組成物。
<2> ゲル化基が、下記式(G)で表される基である<1>に記載のインク組成物。
Figure 0006938652
式(G)中、nは、1又は2を表し、Rは、ウレタン基、ウレア基、チオウレタン基、又はチオウレア基を表し、Lは、単結合又は2価の連結基を表し、*は、結合位置を表す。
式(G)中、Rは、nが1である場合には、多糖類、タンパク質、アクリル樹脂、ビニル樹脂、若しくは式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物であるヒドロゲル化剤から水素原子を1個除いた残基を表すか、又は、1価の疎水性基を表す。
式(G)中、Rは、nが2である場合には、上記ヒドロゲル化剤から水素原子を2個除いた残基を表すか、又は、2価の疎水性基を表す。
式(1)中、n及びmは、それぞれ独立に、2以上の整数を表し、pは、0以上の整数を表し、Lは、炭素数3以上のアルキレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
<3> ヒドロゲル化剤が、多糖類又は式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物であり、
1価の疎水性基が、炭素数10以上の直鎖アルキル基であり、
2価の疎水性基が、炭素数10以上の直鎖アルキレン基である
<2>に記載のインク組成物。
<4> ヒドロゲル化剤が、多糖類であり、
1価の疎水性基が、炭素数16以上の直鎖アルキル基であり、
2価の疎水性基が、炭素数16以上の直鎖アルキレン基である
<2>又は<3>に記載のインク組成物。
<5> 式(G)中のRが、ウレア基である<2>〜<4>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<6> ゲル化基が、1価の基である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<7> ポリマーが、鎖状ポリマーであり、
ゲル化基が、鎖状ポリマーの主鎖の末端に配置されている<6>に記載のインク組成物。
<8> 粒子が、重合性モノマーを含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<9> ポリマーが、重合性基を有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<10> インクジェットインクとして用いられる<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載のインク組成物を製造する方法であって、
有機溶剤及びポリマーを含む油相成分と、水を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、粒子を形成する工程を有するインク組成物の製造方法。
<12> 基材上に、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインク組成物を付与することによりインク膜を形成する工程と、
インク膜を加熱する工程と、
を含む画像形成方法。
本開示によれば、引っ掻き耐性に優れた画像を形成できるインク組成物及びその製造方法、並びに、このインク組成物を用いた画像形成方法が提供される。
実施例における画像の精細さの評価に用いた文字画像を示す図である。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、化学式中の「*」は、結合位置を表す。
本明細書において、「画像」の概念には、パターン画像(例えば、文字、記号、又は図形)だけでなく、ベタ画像も包含される。
本明細書において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
本明細書では、紫外線を、「UV(Ultra Violet)光」ということがある。
本明細書では、LED(Light Emitting Diode)光源から生じた光を、「LED光」ということがある。
本明細書において、「(メタ)アクリルポリマー」は、アクリルポリマー及びメタクリルポリマーの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本明細書において、ポリオキシアルキレン基、アミド基、ウレア基、及びウレタン基は、それぞれ、ポリオキシアルキレン結合、アミド結合、ウレア結合、及びウレタン結合を意味する。
〔インク組成物〕
本開示のインク組成物(以下、単に「インク」ともいう)は、水と、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであり、活性水素基を有するゲル化剤とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を有するポリマーを含む粒子(以下、「特定粒子」ともいう)と、を含有する。
前述したとおり、一般に、液体成分として水を含有するインクを用いて形成されたインク膜では、液体成分として重合性モノマー及び/又は有機溶剤を含有するインクを用いて形成されたインク膜と比較して、インク膜から液体成分を除去しにくい傾向がある。このため、液体成分として水を含有するインクを用いて形成された画像は、引っ掻き耐性に劣る場合がある。
上述した点に関し、本開示のインクによれば、引っ掻き耐性に優れた画像を形成できる。
かかる効果が奏される理由については、以下のように推測されるが、本開示のインクは以下の理由によって限定されることはない。
本開示のインクを基材上に付与してインク膜を形成した場合、形成されたインク膜には、インク中の成分である特定粒子が含有される。この特定粒子は、活性水素基を有するゲル化剤とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を有するポリマーを含む。
上記インク膜を加熱することにより、ゲル化基が持つゲル化機能が発揮され、インク膜が増粘(即ち、ゲル化)すると考えられる。
従って、基材上に本開示のインクを付与してインク膜を形成し、このインク膜を加熱した場合(加熱された基材に本開示のインクを付与してインク膜を形成する場合を含む。以下同じ。)には、上述したインク膜の増粘により、インク膜の強度が効果的に高められると考えられる。その結果、インク膜(即ち、画像)の引っ掻き耐性が向上すると考えられる。
また、一般に、液体成分として水を含有するインクを用いて形成された画像では、液体成分として重合性モノマー及び/又は有機溶剤を含有するインクを用いて形成された画像と比較して、画像の精細さに劣る傾向がある。この理由は、液体成分として水を含有するインクを用いて形成されたインク滴では、インク滴から液体成分を除去しにくいために、基材上において、意図しないインク滴の合一が起こる場合があるためと考えられる。
この点に関し、本開示のインクによれば、精細さに優れた画像を形成できる。
かかる効果が奏される理由は、上述したインク膜の増粘(ここではインク滴の増粘)により、基材上における、意図しないインク滴の合一が抑制されるためと考えられる。
なお、ここでいうインク滴は、インク膜の一態様である。
本明細書において、活性水素基とは、ヒドロキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、又はチオール基を意味する。
上述したインク膜の増粘のメカニズムは、ゲル化基を形成するための、活性水素基を有するゲル化剤(以下、「特定ゲル化剤」ともいう)の種類によって異なると考えられる。
特定ゲル化剤(即ち、活性水素基を有するゲル化剤)として、例えば、活性水素基を有するヒドロゲル化剤及び活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤が挙げられる。
本明細書において、ヒドロゲル化剤とは、加熱により、ヒドロゲルを形成する機能を持つ化合物を意味する。
本明細書において、活性水素基を有するヒドロゲル化剤とは、ヒドロゲル化剤であって、活性水素基を有する化合物を意味する。
ヒドロゲル化剤は、ヒドロゲルを形成する機能を発揮させるために、化合物中に、親水性の度合いが異なる2種以上の部位を持っている。
従って、化合物中の親水性の度合いがほぼ一律である、ポリエチレングリコール(即ち、エチレングリコールの単独重合体)、ポリプロピレングリコール(即ち、プロピレングリコールの単独重合体)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME;後述の比較例1)等はヒドロゲル化剤には該当しない。これらは、単なる親水性ポリマーであり、ヒドロゲルを形成する機能を持たない。
一方で、親水性の度合いが異なる2種以上の部位を持つ、後述の式(1)又は式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物(例えば、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体)は、ヒドロゲル化剤に該当し、かつ、活性水素基を有するヒドロゲル化剤にも該当する。
活性水素基を有するヒドロゲル化剤としては、後述の式(1)又は式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物以外にも、多糖類、タンパク質、活性水素基を有するアクリル樹脂、活性水素基を有するビニル樹脂、等も挙げられる。
本明細書において、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤とは、活性水素基と、疎水性基と、を有する化合物を意味する。
本明細書において、疎水性基とは、凝集して疎水的なセグメントを形成可能な基を意味する。この疎水的なセグメントが、ゲルとなる。
本明細書における疎水性基としては、
1価の疎水性基として、炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルケニル基、炭素数6以上のアリール基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むアルコキシアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むアルコキシポリアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むヒドロキシアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むヒドロキシポリアルキレンオキシ基等が挙げられ、
2価の疎水性基として、炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルケニレン基、炭素数6以上のアリーレン基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むポリアルキレンオキシ基等が挙げられる。
活性水素基を有するゲル化剤が、活性水素基を有するヒドロゲル化剤である場合には、上記インク膜を加熱することにより、インク膜中において、水を取り込んだゲル(即ち、ヒドロゲル)が形成され、インク膜が効果的に増粘する。
また、活性水素基を有するゲル化剤が、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤である場合には、上記インク膜を加熱してインク膜中から水分の少なくとも一部を蒸発させることにより、複数の両親媒性ゲル化剤の疎水性基同士が接近して凝集する。これにより疎水的なセグメント(即ち、ゲル)が形成可能され、インク膜が効果的に増粘する。
以上のように、活性水素基を有するゲル化剤が、活性水素基を有するヒドロゲル化剤及び活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤のいずれである場合においても、インク膜を加熱することにより、インク膜を効果的に増粘させることができる。
従って、活性水素基を有するゲル化剤が、活性水素基を有するヒドロゲル化剤及び/又は活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤である場合には、本開示のインクによる効果(画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さ)がより効果的に奏される。
以下、本開示のインクに含まれ得る各成分について説明する。
<特定粒子>
特定粒子は、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであり、活性水素基を有するゲル化剤とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を有するポリマー(以下、「特定ポリマー」ともいう)を少なくとも1種含む。
(特定ポリマー)
特定ポリマーは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーである。これらのポリマーは、いずれも強固な構造を有する。これらの強固な構造も、画像の引っ掻き耐性向上及び画像の精細さ向上の効果に寄与する。
本明細書において、ウレタンポリマーとは、ウレタン基を含むポリマー(但し、後述の(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本明細書において、ウレアポリマーとは、ウレア基を含むポリマー(但し、前述のウレタンポリマー又は後述の(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリルポリマーとは、1種の(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、又は、1種以上の(メタ)アクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体を意味する。
ウレタンポリマーの概念には、ウレタン基とウレア基との両方を含むポリマー(いわゆるウレタンウレアポリマー)も包含される。
(メタ)アクリルポリマーの概念には、ウレタン基及びウレア基の少なくとも一方を含む(メタ)アクリルポリマーも包含される。
特定ポリマーは、本開示のインクによる効果(画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さ)がより効果的に奏される観点から、ウレタンポリマー又はウレアポリマーであることが好ましい。
特定ポリマーがウレタンポリマー又はウレアポリマーであると、特定ポリマー中のウレタン基又はウレア基と、ゲル化基と、の間で、水素結合による擬似架橋構造が形成されやすい。この擬似架橋構造の形成により、インク膜をより効果的に増粘でき、その結果、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させることができる。
−ゲル化基−
特定ポリマーは、特定ゲル化剤(即ち、活性水素基を有するゲル化剤)とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を少なくとも1種有する。
特定ゲル化剤(即ち、活性水素基を有するゲル化剤)における活性水素基としては、イソシアネート基との反応性の観点から、ヒドロキシ基、1級アミノ基、又は2級アミノ基が好ましく、ヒドロキシ基又は1級アミノ基がより好ましく、1級アミノ基が特に好ましい。
ゲル化基の価数(即ち、ゲル化基における結合位置の数)には特に制限はない。
即ち、ゲル化基は、1価の基であっても2価以上の基であってもよい。
ゲル化基の形成しやすさの観点から、1価の基又は2価の基であることが好ましい。
更に、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点からみた場合、ゲル化基は、1価の基であることがより好ましい。
この理由は、以下のように考えられる。
ゲル化基が1価の基である場合、ゲル化基は、熱反応性が高く且つ運動性が高い部位である、特定ポリマー(例えば、後述する特定鎖状ポリマー又は後述する特定架橋ポリマー)の骨格中ではなく、特定ポリマーの末端部分に配置されやすい。このため、ゲル化基が1価の基である場合には、インク膜をより効果的に増粘させることができ、その結果、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上すると考えられる。
画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さを更に向上させる観点からみた場合、特定ポリマーの更に好ましい態様は、ゲル化基が1価の基であり、特定ポリマーが後述する特定鎖状ポリマーであり、1価の基であるゲル化基が、特定鎖状ポリマーの主鎖の末端に配置されている態様である。
この理由は、特定鎖状ポリマーの主鎖の末端は、後述する特定架橋ポリマーの末端と比較して、熱反応性がより高く且つ運動性がより高い部位であるためと考えられる。
なお、ゲル化基が2価の基であり、特定ポリマーが後述する特定鎖状ポリマーである場合、ゲル化基は、特定鎖状ポリマーの主鎖中に配置される。
ゲル化基として、好ましくは、下記式(G)で表される基である。
式(G)で表される基は、特定ゲル化剤(即ち、活性水素基を有するゲル化剤)としての、活性水素基を有するヒドロゲル化剤又は活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤と、イソシアネート基と、の反応によって形成される。
Figure 0006938652
式(G)中、nは、1又は2を表し、Rは、ウレタン基、ウレア基、チオウレタン基、又はチオウレア基を表し、Lは、単結合又は2価の連結基を表し、*は、結合位置を表す。
式(G)中、Rは、nが1である場合には、多糖類、タンパク質、アクリル樹脂、ビニル樹脂、若しくは式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物であるヒドロゲル化剤から水素原子を1個除いた残基を表すか、又は、1価の疎水性基を表す。
式(G)中、Rは、nが2である場合には、上記ヒドロゲル化剤から水素原子を2個除いた残基を表すか、又は、2価の疎水性基を表す。
式(1)中、n及びmは、それぞれ独立に、2以上の整数を表し、pは、0以上の整数を表し、Lは、炭素数3以上のアルキレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
式(G)中、nは、1又は2を表す。
画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点から、nは、1であることが特に好ましい。
が1であることは、式(G)で表される基が1価の基であることを意味する。従って、式(G)中のnが1であると、前述した推定理由により、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上する。
式(G)中、Rは、ウレタン基、ウレア基、チオウレタン基、又はチオウレア基を表す。このRは、活性水素基を有するヒドロゲル化剤中の活性水素基又は活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤中の活性水素基と、イソシアネート基と、の反応によって形成される。
画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点から、Rとしては、ウレタン基又はウレア基が好ましく、ウレア基がより好ましい。
この理由として、以下の理由が考えられる。
前述のとおり、活性水素基としては、イソシアネート基との反応性の観点から、ヒドロキシ基又は1級アミノ基がより好ましく、1級アミノ基が特に好ましい。
ウレタン基は、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応によって形成される基であり、ウレア基は、ヒドロキシ基と1級アミノ基との反応によって形成される基である。
従って、Rが、ウレタン基又はウレア基(特に好ましくはウレア基)であると、式(G)で表される基の安定性が高まるので、式(G)で表される基による効果(即ち、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さの向上)がより効果的に奏される。
式(G)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のカルボニルイミノアルキレン基、炭素数2〜10のイミノカルボニルアルキレン基、数平均分子量が1000以下(好ましくは500以下)であるポリアルキレングリコールの両末端からヒドロキシ基を除いた2価の残基、等が挙げられる。
ここで、カルボニルイミノアルキレン基とは、カルボニル基とイミノ基とアルキレン基とがこの順序で連結した2価の基を意味し、イミノカルボニルアルキレン基とは、イミノ基とカルボニル基とアルキレン基とがこの順序で連結した2価の基を意味する。
式(G)中、Rは、nが1である場合には、多糖類、タンパク質、アクリル樹脂、ビニル樹脂、若しくは式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物であるヒドロゲル化剤から水素原子を1個除いた残基を表すか、又は、1価の疎水性基を表す。
式(G)中、Rは、nが2である場合には、上記ヒドロゲル化剤から水素原子を2個除いた残基を表すか、又は、2価の疎水性基を表す。
ここで、ヒドロゲル化剤から水素原子を1個除いた残基及びヒドロゲル化剤から水素原子を2個除いた残基は、いずれも、活性水素基を有するヒドロゲル化剤中の部分構造である。
1価の疎水性基及び2価の疎水性基は、いずれも、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤(即ち、活性水素基と、疎水性基と、を有する化合物)中の部分構造である。
を形成するための上記ヒドロゲル化剤としての多糖類(即ち、水素原子を除いて残基とする前の多糖類)としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アミロペクチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、寒天、キサンタンガム、グアーガム、クインスシード、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メチルデンプン、ローカストビーンガム、デキストリン、シクロデキストリン等が挙げられる。
一方、式(G)で表される基の形成しやすさの観点からみると、ヒドロゲル化剤としての多糖類としては、二糖類〜十糖類が好ましく、三糖類〜六糖類がより好ましく、三糖類〜五糖類が特に好ましい。
多糖類の重量平均分子量(Mw)には特に制限はない。
多糖類の重量平均分子量(Mw)は、例えば300〜1,000,000、好ましくは400〜100,000、更に好ましくは400〜10,000であり、特に好ましくは400〜2000である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、いずれも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。但し、分子量が小さいためにGPCでは正確なMwを測定できない化合物については、化合物の化学構造から求められる分子量を、その化合物のMwとして採用する。Mnについても同様とする。
本明細書において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)−8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ−H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、及び「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
が、ヒドロゲル化剤としての多糖類から水素原子を1個又は2個除いた残基である場合、式(G)で表される基は、好ましくは、1級アミノ基を有する多糖類によって形成される。
1級アミノ基を有する多糖類としては、アミノエチルグリコシドである多糖類(例えば、後述の実施例におけるG0402、N0949及びS0946)又はアミノプロピルグリコシドである多糖類が好ましい。
アミノエチルグリコシドである多糖類(例えば、後述の実施例におけるG0402、N0949及びS0946)を用いて形成される式(G)で表される基の例としては、式(G)中、nが1であり、Rが、アミノ基とイソシアネート基との反応によって形成されたウレア基であり、Lがエチレン基(−CHCH−基)であり、Rが、多糖類から水素原子を1個除いた残基である例が挙げられる。
アミノプロピルグリコシドである多糖類を用いて形成された式(G)で表される基の例としては、式(G)中、nが1であり、Rが、アミノ基とイソシアネート基との反応によって形成されたウレア基であり、Lがプロピレン基(−CHCHCH−基)であり、Rが、多糖類から水素原子を1個除いた残基である例が挙げられる。
式(G)で表される基を形成するための、1級アミノ基を有する多糖類のMwの好ましい範囲は、上述した多糖類(即ち、Rを形成するための多糖類)のMwの好ましい範囲と同様である。
を形成するためのヒドロゲル化剤としてのタンパク質(即ち、水素原子を除いて残基とする前のタンパク質)には特に制限はない。
タンパク質としては、ゼラチンが挙げられる。
タンパク質の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1,000〜100,000,000、好ましくは5,000〜10,000,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。
を形成するためのヒドロゲル化剤としてのアクリル樹脂(即ち、水素原子を除いて残基とする前のアクリル樹脂)には特に制限はない。
アクリル樹脂としては、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1,000〜500,000、好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは10,000〜50,000である。
を形成するためのヒドロゲル化剤としてのビニル樹脂(即ち、水素原子を除いて残基とする前のビニル樹脂)には特に制限はない。
ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコールが挙げられる。
ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1,000〜500,000、好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは10,000〜50,000である。
を形成するためのヒドロゲル化剤としての式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(即ち、水素原子を除いて残基とする前の式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物)は、以下のとおりである。
Figure 0006938652
式(1)中、n及びmは、それぞれ独立に、2以上の整数を表し、pは、0以上の整数を表し、Lは、炭素数3以上のアルキレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
式(1)中、Lで表されるアルキレン基は、直鎖アルキレン基であってもよいし、分岐アルキレン基であってもよい。
Lで表されるアルキレン基の炭素数は3以上であるが、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましく、3が特に好ましい。
式(1)中、Rで表されるアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよい。
Rで表されるアルキル基の炭素数は、1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
式(1)中、Rで表されるアリール基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
式(1)中、Rで表されるアルキル基、及び、Rで表されるアリール基は、それぞれ、置換基によって置換されていてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物として、具体的には、
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロック共重合体、
ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールトリブロック共重合体、
等が挙げられる。
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物の数平均分子量(Mn)は、例えば、500〜500,000、好ましくは1,000〜100,000、更に好ましくは2,000〜30,000であり、更に好ましくは2,000〜20,000である。
が、ヒドロゲル化剤としての式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物から水素原子を1個除いた残基である場合、式(G)で表される基は、好ましくは、下記式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物によって形成される。
Figure 0006938652
式(1A)中、n、m、p、L、及びRは、それぞれ、式(1)中、n、m、p、L、及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物は、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物に対し、オキシエチレン単位が1つ多い化合物である(式(1A)中の「n+1」参照)。
式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物によって式(G)で表される基が形成される場合、例えば、式(1A)中の末端部分のヒドロキシエチル基中のヒドロキシ基と、イソシアネート基と、の反応によって式(G)中のR(ウレタン基)が形成され、上記ヒドロキシエチル基中のエチル基の部分が式(G)中のL(エチレン基)となり、式(1A)から上記ヒドロキシエチル基を除いた部分が式(G)中のRとなる。このRは、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物から水素原子を1個除いた残基に対応する。この例の場合、式(G)中のnは1となる。
式(G)で表される基を形成するための式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物のMnの好ましい範囲は、上述した、Rを形成するための式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物のMnの好ましい範囲と同様である。
式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物としては、市販品を用いてもよい。
市販品としては、BASF社製のプルロニック(登録商標)F108(Mn14600、融点62℃)、同P85(Mn4600、融点40℃)、同F87(Mn7700、融点49℃)、等が挙げられる。
式(G)中のRを形成するためのヒドロゲル化剤は、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点から、多糖類又は式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物であることが好ましく、多糖類であることがより好ましい。
式(G)中、Rで表される、1価の疎水性基及び2価の疎水性基は、いずれも、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤(即ち、活性水素基と疎水性基とを有する化合物)中の部分構造である。
で表される1価の疎水性基としては、前述のとおり、炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルケニル基、炭素数6以上のアリール基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むアルコキシアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むアルコキシポリアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むヒドロキシアルキレンオキシ基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むヒドロキシポリアルキレンオキシ基等が挙げられる。
で表される2価の疎水性基としては、前述のとおり、炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルケニレン基、炭素数6以上のアリーレン基、構造中に炭素数3以上のアルキレン基を含むポリアルキレンオキシ基等が挙げられる。
で表される1価の疎水性基として、好ましくは炭素数4以上の直鎖アルキル基である。
炭素数4以上の直鎖アルキル基の炭素数は、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点から、7以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、16以上であることが特に好ましい。
炭素数4以上の直鎖アルキル基の炭素数の上限には特に制限はないが、上限は、例えば30であり、好ましくは25である。
で表される2価の疎水性基として、好ましくは炭素数4以上の直鎖アルキレン基である。
炭素数4以上の直鎖アルキレン基の炭素数は、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さをより向上させる観点から、7以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、16以上であることが特に好ましい。
炭素数4以上の直鎖アルキレン基の炭素数の上限には特に制限はないが、上限は、例えば30であり、好ましくは25である。
が1価の疎水性基又は2価の疎水性基である態様の式(G)で表される基は、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤と、イソシアネート基と、の反応によって形成される。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤は、インク膜中においてゲル化機能がより効果的に発揮される観点から、室温(25℃)で固体であることが好ましい。
かかる観点から、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤の融点は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは100℃以上である。
また、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤の融点の上限は、両親媒性ゲル化剤の製造適性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤の分子量には特に制限はない。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤の分子量は、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1500以下であり、特に好ましくは1100以下である。
両親媒性ゲル化剤の分子量は、好ましくは300以上であり、より好ましくは400以上であり、特に好ましくは500以上である。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤として、好ましくは、
炭素数10〜30(より好ましくは炭素数12〜30、更に好ましくは炭素数15〜30、特に好ましくは炭素数15〜15)の直鎖アルキルアミン、
炭素数10〜30(より好ましくは炭素数12〜30、更に好ましくは炭素数15〜30、特に好ましくは炭素数15〜15)の直鎖アルキレンジアミン、
炭素数10〜30(より好ましくは炭素数12〜30、更に好ましくは炭素数15〜30、特に好ましくは炭素数15〜15)の直鎖アルキル基を有するモノアルキルポリエチレングリコール、又は、
炭素数10〜30(より好ましくは炭素数12〜30、更に好ましくは炭素数15〜30、特に好ましくは炭素数15〜15)であり、ヒドロキシアルキル基とアミド基とアルキレン基とアミド基とヒドロキシアルキル基とがこの順に結合した化合物であり、
特に好ましくは、炭素数10〜30(より好ましくは炭素数12〜30、更に好ましくは炭素数15〜30、特に好ましくは炭素数15〜15)の直鎖アルキルアミンである。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤の具体例については、後述の実施例における、エイコシルアミン(C2041NH)、オクタデシルアミン(C1837NH)、ヘキサデシルアミン(C1633NH)、オクチルアミン(C17NH)、1,12−ドデシルジアミン(HN(CH12NH)、gel−01〜gel−06、モノアルキルポリエチレングリコール、等が挙げられる。
活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤としては、特開2013−7039号公報に記載のゲル化剤の中から、活性水素基と疎水性基とを有する化合物を選択して用いてもよい。
以上で説明したゲル化基(例えば、式(G)で表される基)の分子量は、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1500以下であり、特に好ましくは1100以下である。
ゲル化基の分子量は、好ましくは300以上であり、より好ましくは400以上であり、特に好ましくは500以上である。
−特定ポリマーの好ましい態様−
特定ポリマーの好ましい態様は、活性水素基を有するゲル化剤と、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物である態様(以下、「態様A」ともいう)である。
態様Aにおいて、イソシアネート基を有する化合物は、ポリマーを形成するための原料モノマーであってもよいし、イソシアネート基を有するポリマーであってもよい。
即ち、態様Aにおいて、ゲル化剤は、特定ポリマーを形成する過程で、特定ポリマーの構造中に組み込まれてもよいし、ポリマーに対して高分子付加反応によって付加されることにより、特定ポリマーの構造中に組み込まれてもよい。
態様Aにおけるイソシアネート基を有する化合物としては、イソシアネート基を有する原料モノマーとして、2官能以上のイソシアネート化合物、イソシアネート基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
態様Aにおけるイソシアネート基を有する化合物としては、イソシアネート基を有するポリマーとして、イソシアネート基を少なくとも1つ有するウレタンポリマー、イソシアネート基を少なくとも1つ有するウレアポリマー、イソシアネート基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリルポリマー、等が挙げられる。
特定ポリマーは、架橋構造を有しない鎖状のポリマー(以下、「特定鎖状ポリマー」ともいう)であってもよいし、架橋構造(例えば、三次元架橋構造)を有するポリマー(以下、「特定架橋ポリマー」ともいう)であってもよい。
特定鎖状ポリマーは、主鎖中に、脂肪族環、芳香族環、複素環等の環状構造を含んでいてもよい。
特定架橋ポリマーが有し得る三次元架橋構造については、国際公開第2016/052053号に記載の三次元架橋構造を参照してもよい。
−特定鎖状ポリマー−
特定鎖状ポリマーは、
2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つの活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物A1と、活性水素基を有するゲル化剤と、の反応生成物A2であるか、又は、
2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つの活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種とその他の化合物との反応生成物B1と、活性水素基を有するゲル化剤と、の反応生成物B2であることが好ましい。
2つの活性水素基を有する化合物としては、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
例えば、2官能のイソシアネート化合物とジオール化合物との反応により、ウレタン基が形成される。
また、2官能のイソシアネート化合物とジアミン化合物との反応により、ウレア基が形成される。
また、2官能のイソシアネート化合物と水との反応により、ウレア基が形成される。
また、上記その他の化合物としては、
後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、
後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、
後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、
後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、
等が挙げられる。
特定鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、以下の化合物(1−1)〜(1−20)が挙げられる。
Figure 0006938652
特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、以下の化合物(2−1)〜(2−24)が挙げられる。
Figure 0006938652
また、特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物、後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物、等も挙げられる。
−特定架橋ポリマー−
特定架橋ポリマーは、
3官能以上のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つ以上の活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物C1と、活性水素基を有するゲル化剤と、の反応生成物C2であるか、又は、
3官能以上のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つ以上の活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種とその他の化合物との反応生成物D1と、活性水素基を有するゲル化剤と、の反応生成物D2であることが好ましい。
上記その他の化合物としては、
後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、
後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、
後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物、
後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物、
等が挙げられる。
特定粒子が特定架橋ポリマーを含む場合、特定粒子は、特定架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むマイクロカプセル(以下、「MC」)を含むことが好ましい。
特定架橋ポリマーを形成するための、2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、上述した特定鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物と同様に、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
また、特定架橋ポリマーを形成するための、2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物も挙げられる。
特定架橋ポリマーを形成するための3官能以上のイソシアネート化合物は、2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物)からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物であることが好ましい。
3つ以上の活性水素基を有する化合物と反応させる2官能のイソシアネート化合物のモル数(分子数)は、3つ以上の活性水素基を有する化合物における活性水素基のモル数(活性水素基の当量数)に対し、0.6倍以上が好ましく、0.6倍〜5倍がより好ましく、0.6倍〜3倍が更に好ましく、0.8倍〜2倍が更に好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、上述した特定鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための、3つ以上の活性水素基を有する化合物としては、下記(H−1)〜(H−13)で表される構造の化合物が挙げられる。なお、下記の構造において、nは、1〜100から選択される整数を表す。
Figure 0006938652
特定架橋ポリマーの形成に用いられる3官能以上のイソシアネート化合物としては、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物、イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物、ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物、等が挙げられる。
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、P49−75S、D−110N、D−120N、D−140N、D−160N(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ウレタンポリマー(株))、P301−75E(旭化成(株))等が挙げられる。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N(以上、三井化学(株))、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(以上、住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HX、HK(以上、日本ウレタンポリマー(株))、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100、TSA−100、TSS−100、TLA−100、TSE−100(以上、旭化成(株))等が挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−165N、NP1100(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン(株))、デュラネート(登録商標)24A−100(旭化成(株))等が挙げられる。
また、特定粒子が、特定架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むMC(即ち、マイクロカプセル)を含む場合、特定粒子は、MCに対する分散剤として、前述した特定鎖状ポリマーのうち親水性基を有する態様の特定鎖状ポリマーを含有していてもよい。この態様におけるインクでは、MCのシェルの周囲の少なくとも一部を、分散剤としての特定鎖状ポリマーが被覆している状態となり得る。この態様では、MCのシェルが有するウレタン基及び/又はウレア基と、分散剤(特定鎖状ポリマー)が有するウレタン基及び/又はウレア基と、の相互作用、並びに、分散剤の親水性基による分散作用が相まって、特定粒子の分散安定性がより向上する。
この態様において、MCの全固形分量に対する分散剤の量の比(以下、質量比〔分散剤/MC固形分〕ともいう)としては、0.005〜1.000であることが好ましく、0.05〜0.7であることがより好ましい。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が0.005以上であると、特定粒子の分散安定性がより向上する。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が1.000以下であると、画像の硬度がより向上する。
−特定ポリマーの好ましい重量平均分子量(Mw)−
特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)の観点から、5000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましく、8000以上であることが更に好ましい。
特定ポリマーのMwの上限には特に制限はない。特定ポリマーのMwの上限としては、例えば、150000、100000、70000、50000が挙げられる。
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
特定ポリマーの含有量が、特定粒子の全固形分量に対して10質量%以上であると、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)がより向上する。
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、100質量%となることもあり得るが、80質量%以下が好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
−重合性基−
特定ポリマーは、重合性基を少なくとも1種有することが好ましい。
特定ポリマーが重合性基を有する場合には、ゲル化基の作用によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性基の作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の引っ掻き耐性が更に向上する。
重合性基としては、光重合性基又は熱重合性基が好ましい。
光重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性二重結合を含む基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、又はビニル基が更に好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応性及び形成される膜の硬度の観点から、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
熱重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、ケトン基、アルデヒド基、又はブロックイソシアネート基が好ましい。
特定ポリマーは、重合性基を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
特定ポリマーが重合性基を有することは、例えば、フーリエ変換赤外線分光測定(FT−IR)分析によって確認することができる。
−重合性基導入用化合物−
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基導入用化合物を用いて行うことができる。
重合性基導入用化合物としては、重合性基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
重合性基導入用化合物としては、1つ以上の重合性基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
特定ポリマーへの重合性基の導入方法には特に制限はないが、特定ポリマーを合成する際に、2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、水、ジオール化合物、ジアミン化合物及びジチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、(必要に応じ親水性基導入用化合物の少なくとも1種と、)を反応させる方法が特に好ましい。
重合性基導入用モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性基導入用化合物としては、例えば、国際公開第2016/052053号の段落0075〜0089に記載の化合物を用いることもできる。
重合性基導入用化合物としては、下記式(ma)で表される化合物が好ましい。
Lc (ma)
式(ma)において、Lは、m+n価の連結基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100から選ばれる整数であり、Lcは1価のエチレン性不飽和基を表し、Zは活性水素基を表す。
は、2価以上の脂肪族基、2価以上の芳香族基、2価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO−又はそれらの組合せであることが好ましい。
m及びnは、それぞれ独立に、1〜50であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましく、3〜5であることがとくに好ましい。
Lcで表される1価のエチレン性不飽和基としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
Zで表される活性水素基は、ヒドロキシ基又は1級アミノ基であることがより好ましく、ヒドロキシ基であることがさらに好ましい。
以下、重合性基導入用化合物の例を示すが、重合性基導入用化合物は以下の例には限定されない。なお、化合物(a−3)及び(a−14)におけるnは、例えば、1〜90から選ばれる整数を表す。
Figure 0006938652
−重合性基を導入したイソシアネート化合物−
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
重合性基を導入したイソシアネート化合物としては、
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;
等が挙げられる。
−親水性基−
特定ポリマーは、親水性基を少なくとも1種有していてもよい。
特定ポリマーが親水性基を有する場合は、インクの分散安定性(例えば、保存安定性、吐出安定性、等)が向上する。
親水性基としては、アニオン性基又はノニオン性基が好ましく、分散安定性向上の効果に優れる点から、アニオン性基が好ましい。
例えば、同じ分子量のアニオン性基とノニオン性基とを比較した場合、アニオン性基の方が、分散安定性向上の効果に優れる。即ち、アニオン性基(特に好ましくは、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種)は、その分子量が小さい場合においても、分散安定性向上の効果を十分に発揮し得る。
ノニオン性基としては、ポリエーテル構造を有する基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基を含む1価の基が好ましい。
アニオン性基としては、中和されていないアニオン性基であってもよいし、中和されたアニオン性基であってもよい。
中和されていないアニオン性基としては、カルボキシ基、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、等が挙げられる。
中和されたアニオン性基としては、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩、等が挙げられる。
本明細書中において、「カルボキシ基が中和されている」とは、アニオン性基としてのカルボキシ基が、「塩」の形態(例えば、「−COONa」)となっていることを指す。アニオン性基としての、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基についても同様である。
中和は、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、有機アミン(例えば、トリエチルアミン等)を用いて行うことができる。
特定ポリマーが有し得るアニオン性基としては、分散安定性の観点から、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、硫酸基、硫酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、リン酸基、及びリン酸基の塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上述した、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩、及びリン酸基の塩における「塩」としては、アルカリ金属塩又は有機アミン塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。
アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、K又はNaが好ましい。
特定ポリマーが中和されたアニオン性基を有する場合における、特定ポリマーが有するアニオン性基(例えばカルボキシ基)の中和度は、50%〜100%であることが好ましい。
本明細書において、「アニオン性基の中和度」とは、特定ポリマーが有するアニオン性基全体における、中和されたアニオン性基のモル数と中和されていないアニオン性基のモル数との合計に対する中和されたアニオン性基のモル数の割合〔中和された酸基のモル数/(中和された酸基のモル数+中和されていない酸基のモル数)〕を意味する。
アニオン性基の中和度が50%以上であると、特定粒子の分散安定性がより向上する。
アニオン性基の中和度は、50%〜95%であることが好ましく、80%〜95%であることがより好ましく、90%〜95%であることが更に好ましい。
中和されたアニオン性基(即ち、塩の形態であるアニオン性基)は、塩基性を示す。アニオン性基の中和度が95%以下であると、特定ポリマーが有し得るウレタン基及び/又はウレア基の加水分解をより抑制できる。
中和度は、中和滴定によって求めることができる。
また、特定ポリマーが親水性基としてアニオン性基(例えば、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種)を含む場合において、特定ポリマー1g中のアニオン性基のミリモル数(例えば、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩の合計ミリモル数)を、特定ポリマーの酸価とした場合、特定ポリマーの酸価は、特定粒子の分散安定性の観点から、0.10mmol/g〜2.00mmol/gであることが好ましく、0.30mmol/g〜1.50mmol/gであることがより好ましい。
−親水性基導入用化合物−
特定粒子中の特定ポリマーが親水性基を有する場合、特定ポリマーへの親水性基の導入は、親水性基導入用化合物を用いて行うことができる。
親水性基導入用化合物としては、親水性基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
親水性基導入用化合物としては、1つ以上の親水性基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
親水性基導入用化合物のうち、アニオン性基導入用化合物としては、α−アミノ酸(具体的には、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)等のアミノ酸が挙げられる。
アニオン性基導入用化合物としては、上記のα−アミノ酸以外にも、以下の具体例も挙げられる。
Figure 0006938652
アニオン性基導入用化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;トリエチルアミンなどの有機塩基;等を用い、アニオン性基の少なくとも一部を中和して用いてもよい。
親水性基導入用化合物のうち、ノニオン性基導入用化合物としては、ポリエーテル構造を有する化合物が好ましく、ポリオキシアルキレン基を有する化合物がより好ましい。
−親水性基を導入したイソシアネート化合物−
特定粒子中の特定ポリマーが親水性基を有する場合、特定ポリマーへの親水性基の導入は、親水性基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
親水性基を導入したイソシアネート化合物としては、
上述した親水性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した親水性基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した親水性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;
等が挙げられる。
親水性基を導入したイソシアネート化合物の具体例としては、トリメチロールプロパン(TMP)とm−キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO)との付加物(例えば、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D−116N)が挙げられる。
(重合性モノマー)
特定粒子は、重合性モノマーを含むことが好ましい。
特定粒子が重合性モノマーを含む場合には、ゲル化基の作用によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性モノマーの作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の引っ掻き耐性が更に向上する。
特定粒子が重合性モノマーを含む場合、特定粒子に含まれる重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーとしては、国際公開第2016/052053号の段落0097〜0105に記載された化合物を用いてもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーとしては、光重合性モノマー又は熱重合性モノマーが好ましい。
光重合性モノマーは、光(即ち、活性エネルギー線)の照射によって重合する性質を有する。
熱重合性モノマーは、加熱又は赤外線の照射によって重合する性質を有する。
光重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。
本明細書では、特定粒子が光重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーが光重合性基を有することの少なくとも一方を満足する態様のインクを、「光硬化性のインク」と称することがあり、特定粒子が熱重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーが熱重合性基を有することの少なくとも一方を満足する態様のインクを、「熱硬化性のインク」と称することがある。
本開示のインクによって形成されたインク膜の硬化は、本開示のインクが光硬化性のインクである場合には、インク膜に対して光照射を施すことによって行うことができ(後述の硬化工程A参照)、本開示のインクが熱硬化性のインクである場合には、インク膜に対して加熱又は赤外線照射を施すことによって行うことができる(後述の加熱工程又は硬化工程B参照)。
光硬化性のインクの好ましい態様は、特定粒子が光重合性モノマーを含み、かつ、特定ポリマーが光重合性基を有する態様である。
これにより、活性エネルギー線の照射による画像の硬化性がより向上するので、画像の引っ掻き耐性がより向上する。
特定粒子が、重合性モノマーとして光重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述の光重合開始剤を含むことが好ましい。
また、特定粒子が、重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述の光熱変換剤、熱硬化促進剤、又は光熱変換剤及び熱硬化促進剤を含んでもよい。
特定粒子に含まれる重合性モノマーの含有量(2種以上含む場合には合計量)は、膜の硬化感度及び膜の硬度を向上させる観点から、特定粒子の全固形分量に対して、10質量%〜90質量%が好ましく、20質量%〜80質量%がより好ましく、30質量%〜70質量%が更に好ましい。
本明細書において、特定粒子の全固形分量とは、特定粒子が溶媒を含まない場合には、特定粒子の全量を意味し、特定粒子が溶媒を含む場合には、特定粒子から溶媒を除いた全量を意味する。
重合性モノマーの分子量としては、好ましくは100〜4000であり、更に好ましくは100〜2000であり、更に好ましくは100〜1000であり、更に好ましくは100〜900であり、更に好ましくは100〜800であり、特に好ましくは150〜750である。
−光重合性モノマー−
光重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー(即ち、ラジカル重合性モノマー)及びカチオン重合可能なカチオン重合性基を有する重合性モノマー(即ち、カチオン重合性モノマー)から選択できる。
ラジカル重合性モノマーの例としては、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物、N−ビニル複素環化合物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタンが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、ラジカル重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBOA)、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシフタル酸、2−アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性アクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、置換アクリルアミド(例えば、N−メチロールアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド)等の単官能のアクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10−デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3−メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート等の2官能のアクリレート化合物;
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能以上のアクリレート化合物などが挙げられる。
メタクリレート化合物としては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の単官能のメタクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、テトラエチレングリコールジメタクリレート等の2官能のメタクリレート化合物などが挙げられる。
スチレン化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等が挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1−ビニルナフタレン、メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等が挙げられる。
N−ビニル複素環化合物としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルピロール、N−ビニフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルコハク酸イミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
その他のラジカル重合性のモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミドが挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、2官能以下のラジカル重合性モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10−デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3−メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
特定粒子は、2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せを含んでもよい。この場合、2官能以下のラジカル重合性モノマーが、画像と基材との密着性に寄与し、3官能以上のラジカル重合性モノマーが、画像の硬度向上に寄与する。
2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せとしては、2官能のアクリレート化合物と3官能のアクリレート化合物との組合せ、2官能のアクリレート化合物と5官能のアクリレート化合物との組み合わせ、単官能のアクリレート化合物と4官能のアクリレート化合物との組み合わせなどが挙げられる。
画像と基材との密着性をより向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、環状構造を有するラジカル重合性モノマー(以下、「環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
環状ラジカル重合性モノマーとしては、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
また、以下で説明する、2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーも挙げられる。
画像と基材との密着性を更に向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、一分子中に、1つ以上の環状構造と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基と、を含む重合性モノマー(以下、「2官能以上の環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーとしては、
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、
ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、
ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、
アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、
アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、
シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、この重合性モノマー全体に占める2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーの割合は、10質量%〜100質量%が好ましく、30質量%〜100質量%がより好ましく、40質量%〜100質量%が特に好ましい。
上記に挙げたラジカル重合性モノマーの他にも、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品、並びに業界で公知のラジカル重合性及び架橋性のモノマーを用いることができる。
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物が挙げられる。
カチオン重合性モノマーとしては、少なくとも1つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N複素環、O複素環、S複素環、P複素環、アルデヒド、ラクタム、又は環状エステル基を有する化合物が好ましい。
カチオン重合性モノマーとしては、J. V. Crivelloらの「Advances in Polymer Science」, 62, pages 1 to 47 (1984)、Leeらの「Handbook of Epoxy Resins」, McGraw Hill Book Company, New York (1967) 、及びP. F. Bruinsらの「Epoxy Resin Technology」,(1968)に記載の化合物を用いてもよい。
また、光重合性モノマーとしては、特開平7−159983号公報、特公平7−31399号公報、特開平8−224982号公報、特開平10−863号公報、特開平9−134011号公報、特表2004−514014号公報等の各公報に記載の光重合性組成物に用いられる光硬化性の重合性モノマーが知られており、これらも特定粒子に含まれ得る重合性モノマーとして適用することができる。
光重合性モノマーとしては、上市されている市販品を用いてもよい。
光重合性モノマーの市販品の例としては、AH−600(2官能)、AT−600(2官能)、UA−306H(6官能)、UA−306T(6官能)、UA−306I(6官能)、UA−510H(10官能)、UF−8001G(2官能)、DAUA−167(2官能)、ライトアクリレートNPA(2官能)、ライトアクリレート3EG−A(2官能)(以上、共栄社化学(株))、SR339A(PEA、単官能)、SR506(IBOA、単官能)、CD262(2官能)、SR238(HDDA、2官能)、SR341(3MPDDA、2官能)、SR508(2官能)、SR306H(2官能)、CD560(2官能)、SR833S(2官能)、SR444(3官能)、SR454(3官能)、SR492(3官能)、SR499(3官能)、CD501(3官能)、SR502(3官能)、SR9020(3官能)、CD9021(3官能)、SR9035(3官能)、SR494(4官能)、SR399E(5官能)(以上、サートマー社)、A−NOD−N(NDDA、2官能)、A−DOD−N(DDDA、2官能)、A−200(2官能)、APG−400(2官能)、A−BPE−10(2官能)、A−BPE−20(2官能)、A−9300(3官能)、A−9300−1CL(3官能)、A−TMPT(3官能)、A−TMM−3L(3官能)、A−TMMT(4官能)、AD−TMP(4官能)(以上、新中村化学工業(株))、UV−7510B(3官能)(日本合成化学(株))、KAYARAD DPCA−30(6官能)、KAYARAD DPEA−12(6官能)(以上、日本化薬(株))等が挙げられる。
その他、重合性モノマーとしては、NPGPODA(ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート)、SR531、SR285、SR256(以上、サートマー社)、A−DHP(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業(株))、アロニックス(登録商標)M−156(東亞合成(株))、V−CAP(BASF社)、ビスコート#192(大阪有機化学工業(株))等の市販品を好適に用いることができる。
これらの市販品の中でも、特に環状構造を有する光重合性モノマーである、SR506、SR833S、A−9300、又はA−9300−CLが好ましく、SR833Sが特に好ましい。
−熱重合性モノマー−
熱重合性モノマーは、加熱もしくは赤外線の照射によって重合可能な重合性モノマーの群から選択できる。熱重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、アゼチジン化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、ブロックイソシアネート化合物、等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3−(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)−1,2−プロパンジオール、リモネンオキシド、2−ビフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン−ビスフェノールS由来のエポキシド、エポキシ化スチレン、エピクロロヒドリン−ビスフェノールF由来のエポキシド、エピクロロヒドリン−ビスフェノールA由来のエポキシド、エポキシ化ノボラック、脂環式ジエポキシド等の2官能以下のエポキシ化合物;
多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、ウレタンポリエポキシ化合物、ポリエポキシポリブタジエン等の3官能以上のエポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物の市販品としては、EPICLON(登録商標)840(DIC社)が挙げられる。
オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−1−オキセタン、1,4ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−フェノキシメチル−オキセタン、ビス([1−エチル(3−オキセタニル)]メチル)エーテル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、3,3−ジメチル−2−(p−メトキシフェニル)−オキセタン等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物をブロック化剤(活性水素含有化合物)で不活性化した化合物が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、トリメチルへキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、タケネート(登録商標;三井化学社)、デュラネート(登録商標;旭化成社)、Bayhydur(登録商標;バイエルAG社)などの市販のイソシアネート、又はこれらを組み合わせた二官能以上のイソシアネートが好ましい。
ブロック化剤としては、ラクタム[例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等]、オキシム[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)、シクロヘキサノンオキシム等]、アミン[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソブチルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン、ジフェニルアミン等)]、脂肪族アルコール[例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等]、フェノール及びアルキルフェノール[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール等]、イミダゾール[例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール等]、ピラゾール[例えばピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等]、イミン[例えばエチレンイミン、ポリエチレンイミン等]、活性メチレン[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等]、特開2002−309217号公報及び特開2008−239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ブロック化剤としては、オキシム、ラクタム、ピラゾール、活性メチレン、又はアミンが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、Trixene(登録商標)BI7982、BI7641,BI7642、BI7950、BI7960、BI7991等(Baxenden Chemicals LTD)、Bayhydur(登録商標;Bayer AG社)が好適に用いられる。また、国際公開第2015/158654号の段落0064に記載の化合物群も好適に用いられる。
上述した特定ポリマー及び上述した重合性モノマーを含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー及び重合性モノマーを含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
(光重合開始剤)
特定粒子は、光重合開始剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
特定粒子が光重合性モノマー(例えばラジカル重合性モノマー)を含む場合には、特定粒子は、光重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特定粒子が光重合開始剤を含む場合には、光(即ち、活性エネルギー線)に対する感度が高くなり、硬度により優れ、かつ、基材との密着性にもより優れた画像が得られる。
詳細には、特定粒子が光重合開始剤を含む場合、1つの特定粒子が、光重合性モノマーと光重合開始剤との両方を有する。このため、光重合性モノマーと光重合開始剤との距離が近くなるので、従来の光硬化性組成物を用いた場合と比較して、膜の硬化感度(以下、単に「感度」ともいう。)が向上する。その結果、硬度により優れ、かつ、基材との密着性にもより優れた膜が形成される。
また、特定粒子が光重合開始剤を含む場合、従来、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかった光重合開始剤(例えば、水への溶解度が25℃において1.0質量%以下である光重合開始剤)を用いることができる。これにより、使用する光重合開始剤の選択の幅が広がり、ひいては、用いられる光源の選択の幅も広がる。このため、従来よりも硬化感度が向上し得る。
上述の、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかった光重合開始剤として、具体的には、後述のカルボニル化合物及びアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられ、アシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
このように、本開示のインクは、水に対する溶解性が低い物質を特定粒子に含ませることにより、水系の組成物である本開示のインク中に含有させることができる。このことも本開示のインクの利点の一つである。
また、特定粒子が光重合開始剤を含む態様のインクは、従来の光硬化性組成物と比較して、保存安定性にも優れる。この理由は、光重合開始剤が特定粒子に含まれていることにより、光重合開始剤の凝集又は沈降が抑制されるためと考えられる。
特定粒子に含まれ得る光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を適宜選択して使用することができる。
光重合開始剤は、光(即ち、活性エネルギー線)を吸収して重合開始種であるラジカルを生成する化合物である。
光重合開始剤としては公知の化合物を使用できるが、好ましい光重合開始剤として、(a)芳香族ケトン類等のカルボニル化合物、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(a)カルボニル化合物、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、”RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”,J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、pp.77〜117に記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。
より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号パンフレット、ヨーロッパ特許0284561A1号公報に記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
また、特開2008−105379号公報又は特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。
光重合開始剤の市販品の例としては、IRGACURE(登録商標)184、369、500、651、819、907、1000、1300、1700、1870、DAROCUR(登録商標)1173、2959、4265、ITX、LUCIRIN(登録商標)TPO〔以上、全てBASF社製〕、ESACURE(登録商標)KTO37、KTO46、KIP150、EDB〔以上、全てLamberti社製〕、H−Nu(登録商標)470、470X〔以上、全てSpectra Group Limited社製〕、Omnipol TX、9210〔以上、全てIGM Resins B.V.社〕、SPEEDCURE7005、7010、7040〔以上、LAMBSON社製〕等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(a)カルボニル化合物又は(b)アシルホスフィンオキシド化合物がより好ましく、具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)819)、2−(ジメチルアミン)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)369)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)907)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)184)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド(例えば、DAROCUR(登録商標)TPO、LUCIRIN(登録商標)TPO(いずれもBASF社製))などが挙げられる。
これらの中でも、感度向上の観点及びLED光への適合性の観点等から、内包光重合開始剤としては、(b)アシルホスフィンオキシド化合物が好ましく、モノアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド)、又は、ビスアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド)がより好ましい。
LED光の波長としては、355nm、365nm、385nm、395nm、又は405nmが好ましい。
また、マイグレーション抑制の観点からみると、光重合開始剤としては、高分子型光重合開始剤も好ましい。
高分子型光重合開始剤としては、前述の、Omnipol TX、9210;SPEEDCURE7005、7010、7040;が挙げられる。
光重合開始剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
光重合開始剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%〜25質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜20質量%、さらに好ましくは1質量%〜15質量%である。
(増感剤)
特定粒子は、増感剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
特定粒子が光重合開始剤の少なくとも1種を含む場合には、特定粒子は、増感剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特定粒子が増感剤を含有すると、光(即ち、活性エネルギー線)の照射による光重合開始剤の分解がより促進され得る。
増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる物質である。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用を生じる。これにより、光重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸又は塩基の生成等が促進される。
増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン等が挙げられる。
また、増感剤としては、特開2010−24276号公報に記載の一般式(i)で表される化合物や、特開平6−107718号公報に記載の一般式(I)で表される化合物も、好適に使用できる。
上記の中でも、増感剤としては、LED光への適合性及び光重合開始剤との反応性の観点から、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及びベンゾフェノンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、チオキサントン及びイソプロピルチオキサントンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イソプロピルチオキサントンが更に好ましい。
特定粒子が増感剤を含む場合、増感剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
特定粒子が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.2質量%〜15質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
光重合開始剤及び増感剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び増感剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
(光熱変換剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、光熱変換剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
光熱変換剤は、赤外線等を吸収して発熱し、熱重合性モノマーを重合硬化させる化合物である。光熱変換剤としては、公知の化合物を用いることができる。
光熱変換剤としては、赤外線吸収剤が好ましい。赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチルインドリウム、インドシアニングリーン、ポリメチン色素、クロコニウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素、カルコゲノピリロアリリデン色素、金属チオレート錯体色素、ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ビスアミノアリルポリメチン色素、インドリジン色素、ピリリウム色素、キノイド色素、キノン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、カーボンブラック等が挙げられる。
光熱変換剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、熱重合性モノマー、及び光熱変換剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
光熱変換剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
光熱変換剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%〜25質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜15質量%であることが更に好ましい。
(熱硬化促進剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、熱硬化促進剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
熱硬化促進剤は、熱重合性モノマーの熱硬化反応を触媒的に促進する化合物である。
熱硬化促進剤としては、公知の化合物を使用することができる。熱硬化促進剤としては、酸もしくは塩基、又は加熱により酸もしくは塩基を発生させる化合物が好ましく、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、脂肪族アルコール、フェノール、脂肪族アミン、芳香族アミン、イミダゾール(例えば、フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール)、ピラゾール等が挙げられる。
熱硬化促進剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、熱重合性モノマー、及び熱硬化促進剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
熱硬化促進剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
熱硬化促進剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、0.1質量%〜25質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜15質量%であることが更に好ましい。
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全固形分量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
これにより、分散安定性がより向上し、かつ、画像と基材との密着性がより向上する。
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全量に対して、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましく、5質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して1質量%以上であると、画像と基材との密着性がより向上する。
また、特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して50質量%以下であると、インクの分散安定性がより向上する。
特定粒子の体積平均分散粒子径は特に制限はないが、分散安定性の観点から、0.01μm〜10.0μmであることが好ましく、0.01μm〜5μmであることがより好ましく、0.05μm〜1μmであることが更に好ましく、0.05μm〜0.5μmが更に好ましく、0.05μm〜0.3μmが更に好ましい。
本明細書中において、「体積平均分散粒子径」は、光散乱法によって測定された値を指す。光散乱法による特定粒子の体積平均分散粒子径の測定は、例えば、LA−960((株)堀場製作所)を用いて行う。
<水>
本開示のインクは、水を含有する。
水は、特定粒子(分散質)に対する分散媒である。
本開示のインク中の水の含有量には特に制限はないが、水の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは10質量%〜99質量%であり、より好ましくは20質量%〜95質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜90質量%であり、特に好ましくは50質量%〜90質量%である。
<色材>
本開示のインクは、色材を少なくとも1種含有するインク(いわゆる「着色インク」)であってもよいし、色材を含有しないインク(いわゆる「クリアインク」)であってもよい。
インクが色材を含有する場合、色材は、特定粒子の外部に含有されること(即ち、特定粒子が色材を含まないこと)が好ましい。
色材としては、特に制限はなく、顔料、水溶性染料、分散染料等の公知の色材から任意に選択して使用することができる。この中でも、耐候性に優れ、色再現性に富む点から、顔料を含むことがより好ましい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの等)も挙げられる。
有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
色材として顔料を用いる場合には、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。
また、色材として顔料を用いる場合には、顔料として、顔料粒子表面に親水性基を有する自己分散顔料を用いてもよい。
色材及び顔料分散剤については、特開2014−040529号公報の段落0180〜0200、国際公開第2016/052053号の段落0122〜0129を適宜参照することができる。
本開示のインクが色材を含有する場合、色材の含有量は、インク全量に対し、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が特に好ましい。
<その他の成分>
本開示のインクは、必要に応じて、上記で説明した以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分は、特定粒子に含まれていてもよいし、特定粒子に含まれていなくてもよい。
(有機溶剤)
本開示のインクは、有機溶剤を含有していてもよい。
本開示のインクが有機溶剤を含有すると、画像と基材との密着性がより向上し得る。
本開示のインクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、インクの全量に対して、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
有機溶剤の具体例は、以下のとおりである。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール等)
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)
・アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)
・複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン等)
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)
・スルホン類(例えば、スルホラン等)
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
(界面活性剤)
本開示のインクは、界面活性剤を少なくとも1種含有していてもよい。
本開示のインクが界面活性剤を含有すると、インクの基材への濡れ性が向上する。
界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が好ましく、アルキル硫酸塩が特に好ましい。
界面活性剤としては、特定粒子の分散性の観点から、アルキル鎖長が8〜18のアルキル硫酸塩であることが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、アルキル鎖長:12)及びセチル硫酸ナトリウム(SCS、アルキル鎖長:16)から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、上述の界面活性剤以外のその他の界面活性剤として、特開昭62−173463号及び同62−183457号の各公報に記載されたものも挙げられる。例えば、その他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、シロキサン類等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
また、界面活性剤として、有機フルオロ化合物も挙げられる。
有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物としては、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)、及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8欄〜第17欄)、及び特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
なお、本開示のインクは、界面活性剤(例えばアニオン性界面活性剤)を実質的に含有しないこともできる。
ここで、「実質的に含有しない」とは、インクの全量に対し、含有量が1質量%未満(好ましくは0.1質量%未満)であることを指す。
インクがアニオン性界面活性剤を実質的に含有しない態様は、インクの起泡を抑制できるという利点、画像の耐水性を向上できるという利点、画像形成後にブリードアウトによる白化を抑制できるという利点、等を有する。また、特に、インクの調製に、アニオン性分散性基を有する顔料分散物を用いる場合には、アニオン性界面活性剤により系中のイオン濃度が上昇し、アニオン性顔料分散剤の電離度が低下して、顔料の分散性が低下することを抑制できるという利点も有する。
(重合禁止剤)
本開示のインクは、重合禁止剤を含有していてもよい。
本開示のインクが重合禁止剤を含有すると、インクの保存安定性がより向上し得る。
重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール、キノン類(例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、メトキシベンゾキノン等)、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等)、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(TEMPOL)、クペロンAl、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩などが挙げられる。
これらの中でも、p−メトキシフェノール、カテコール類、キノン類、アルキルフェノール類、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、及びトリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、BHT、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、及びトリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
(紫外線吸収剤)
本開示のインクは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。
本開示のインクが紫外線吸収剤を含有すると、画像の耐候性等がより向上し得る。
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンズオキサゾール系化合物等が挙げられる。
また、本開示のインクは、画像の硬度、画像と基材との密着性、及びインクの吐出安定性制の御の観点から、必要に応じ、特定粒子の外部に、重合性モノマー、光重合開始剤、樹脂等を含有していてもよい。
これらの成分は、水溶性又は水分散性を有することが好ましい。
ここで、「水溶性」とは、105℃で2時間乾燥させた場合に、25℃の蒸留水100g対する溶解量が1gを超える性質を指す。
また、「水分散性」とは、水不溶性であって、かつ、水中に分散される性質を指す。ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させた場合に、25℃の蒸留水100gに対する溶解量が1g以下である性質を指す。
また、「インクが特定粒子の外部に重合性モノマーを含有している」とは、インクが、特定粒子に含まれない重合性モノマーを含有していることを意味する。光重合開始剤、水溶性樹脂、水分散性樹脂等を特定粒子の外部に含有している場合も同様である。
特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、国際公開第2016/052053号の段落0148〜0156に記載された重合性モノマーが挙げられる。
特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。
これらの中でも、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。
水溶性又は水分散性の観点から、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、アミド構造、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、カルボキシル基、及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種を有する化合物が好ましい。
水溶性又は水分散性の観点から、特定粒子の外部に含有され得る重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、モルホリンアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N−[トリス(3−アクリロイルアミノプロピルオキシメチレン)メチル]アクリルアミド、ジエチレングリコールビス(3−アクリロイルアミノプロイル)エーテル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記一般式(a)〜一般式(d)で表される化合物、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、サートマー社製のSR9035)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N−[トリス(3−アクリロイルアミノプロピルオキシメチレン)メチル]アクリルアミド、ジエチレングリコールビス(3−アクリロイルアミノプロイル)エーテル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記一般式(a)〜一般式(d)で表される化合物、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、サートマー社製のSR9035)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
Figure 0006938652
一般式(a)中、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(b)中、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、複数のk及びpはそれぞれ独立に、0又は1を表し、複数のmはそれぞれ独立に、0〜8の整数を表し、但し、k及びpの少なくとも1つは1である。
一般式(c)中、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のnはそれぞれ独立に、1〜8の整数を表し、lは0又は1の整数を表す。
一般式(d)中、Zはポリオールのヒドロキシル基から水素原子をq個除いた残基を表し、qは3〜6の整数を表し、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、複数のLはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキレン基を表す。
一般式(a)〜一般式(d)で表される化合物の具体例としては、下記AM−1〜AM−4で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006938652
上記のAM−1〜AM−4は、特許第5591858号に記載の方法により合成することができる。
特定粒子の外部に含有され得る、光重合開始剤及び樹脂については、国際公開第2016/052053号の段落0139〜0147及び0157を適宜参照することができる。
<インクの好ましい物性>
本開示のインクは、インクを25℃〜50℃とした場合に、粘度が、3mPa・s〜15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s〜13mPa・sであることがより好ましい。特に、本開示のインクは、インクを25℃とした場合における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度が上記の範囲であると、より高い吐出安定性を実現できる。
なお、インクの粘度は、粘度計(VISCOMETER TV−22、東機産業(株))を用いて測定される値である。
本開示のインクは、塗布法、浸漬法、グラビア法、フレキソ法、インクジェット法等による画像形成に用いることができる。
本開示のインクは、特に、インクジェット法による画像形成に用いられる(即ち、インクジェットインクとして用いられる)ことが好ましい。
本開示のインクが光硬化性のインク又は熱硬化性のインクである場合の特に好ましい形態として、以下の形態1〜4が挙げられる。
<形態1>
形態1は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定鎖状ポリマーである形態である。
形態1において、特定鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。特定鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態1において、光重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態2>
形態2は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定架橋ポリマーである形態である。
形態2としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーからなるシェルと、光重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態2において、光重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態3>
形態3は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定鎖状ポリマーである形態である。
形態3において、特定鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。特定鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態3において、熱重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
<形態4>
形態4は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが特定架橋ポリマーである形態である。
形態4としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態4において、熱重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
〔インクの製造方法の一例(製法A)〕
本開示のインクを製造する方法には特に制限はないが、以下の一例(製法A)が挙げられる。
製法Aは、有機溶剤及び特定ポリマーを含む油相成分と、水を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、特定粒子を形成する工程を有する。
特定粒子を形成する工程では、上述した油相成分と水相成分とを混合し、得られた混合物を乳化させることにより、特定粒子が形成される。形成された特定粒子は、製造されるインクにおいて分散質として機能する。
水相成分中の水は、製造されるインクにおける分散媒として機能する。
油相成分に含まれる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
有機溶剤は、特定粒子の形成過程において、また、特定粒子の形成後において、その少なくとも一部が除去されることが好ましい。
油相成分は、上記各成分以外にも、例えば、重合性モノマー、光重合開始剤、増感剤、重合性基導入用化合物(好ましくは、重合性基及び活性水素基を有する化合物)、重合性基を導入したイソシアネート化合物、親水性基を導入したイソシアネート化合物、等を含むことができる。
水相成分は、水を含むこと以外には特に制限はなく、水のみであってもよい。
水相成分は、水以外の成分を含んでもよい。
例えば、水相成分は、親水性基導入用化合物(好ましくは、親水性基及び活性水素基を有する化合物)を含んでもよい。
また、水相成分は、中和されていないアニオン性基(カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、等)に対する中和剤として、塩基性化合物を含有してもよい。これにより、特定粒子の形成過程において、中和されたアニオン性基(即ち、塩の形態であるアニオン性基;例えば、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、リン酸基の塩、ホスホン酸基の塩、硫酸基の塩、等)を形成できる。
上記塩基性化合物(中和剤)を用いる場合、上記塩基性化合物(中和剤)は、少なくとも水相成分に含有させることが好ましい。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基などが挙げられる。これらの中でも、塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が好ましい。
また、塩の形態であるアニオン性基における塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;トリエチルアミン塩等の有機アミン塩;等が挙げられる。これらの中でも、塩の形態であるアニオン性基における塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
製法Aにおける、油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量が、製造されるインクにおける、特定粒子の全固形分量に対応する。
製法Aに用いられ得る各成分の使用量の好ましい範囲については、既述の「インク」の項を参照できる。この参照の際、既述の「インク」の項における、「含有量」及び「特定粒子の全固形分量」は、それぞれ、「使用量」及び「油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量」と読み替える。
特定粒子を形成する工程において、油相成分と水相成分との混合の方法には特に限定はないが、例えば、撹拌による混合が挙げられる。
特定粒子を形成する工程において、乳化の方法には特に限定はないが、例えば、ホモジナイザー等の乳化装置(例えば、分散機等)による乳化が挙げられる。
乳化における分散機の回転数は、例えば、5000rpm(round per minute)〜20000rpmであり、好ましくは10000rpm〜15000rpmである。
乳化における回転時間は、例えば、1分間〜120分間であり、好ましくは3分間〜60分間であり、より好ましくは3分間〜30分間であり、更に好ましくは5分間〜15分間である。
特定粒子を形成する工程における乳化は、加熱下で行ってもよい。
乳化を加熱下で行うことにより、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、乳化を加熱下で行うことにより、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
乳化を加熱下で行う場合の加熱温度としては、35℃〜70℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましい。
また、特定粒子を形成する工程は、混合物を(例えば35℃未満の温度で)乳化させる乳化段階と、乳化段階によって得られた乳化物を(例えば35℃以上の温度で)加熱する加熱段階と、を含んでいてもよい。
乳化段階と加熱段階とを含む態様では、特に加熱段階において、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、乳化段階と加熱段階とを含む態様では、特に加熱段階において、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
加熱段階における加熱温度としては、35℃〜70℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましい。
加熱段階における加熱時間は、6時間〜50時間が好ましく、12時間〜40時間がより好ましく、15時間〜35時間が更に好ましい。
また、製法Aは、必要に応じて、特定粒子を形成する工程以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、特定粒子を形成する工程後において、その他の成分(顔料等)を添加する工程が挙げられる。
添加されるその他の成分(顔料等)については、インクに含有され得るその他の成分として既に説明したとおりである。
〔インクの製造方法の別の一例(製法B)〕
特定架橋ポリマーを含む特定粒子を含有する態様のインクを製造する方法としては、以下に示す、製法Bも好適である。
製法Bは、有機溶剤及び3官能以上のイソシアネート化合物を含む油相成分と、水を含む水相成分と、を混合し、特定ゲル化剤(即ち、活性水素基を有するゲル化剤)の存在下で乳化させることにより、特定粒子を形成する工程を有する。
製法Bの好ましい態様は、油相成分に特定ポリマーではなく3官能以上のイソシアネート化合物を用いる点、及び、油相成分と水相成分との混合物を、特定ゲル化剤の存在下で乳化させる点を除けば、製法Aの好ましい態様と同様である。
製法Bのより好ましい態様は、水相成分として、水及び特定ゲル化剤を含む水相成分を用い、油相成分と水相成分との混合物を、水相成分に含まれていた特定ゲル化剤の存在下で乳化させる態様である。
〔画像形成方法〕
本開示の画像形成方法は、基材上に、上述した本開示のインクを付与することによりインク膜を形成する工程(以下、「付与工程」ともいう)と、上記インク膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)と、を有する。
本開示の画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
本開示の画像形成方法によれば、基材上に、引っ掻き耐性に優れた画像が形成される。
(付与工程)
付与工程は、基材上に、本開示のインクを付与することによりインク膜を形成する工程である。
基材上にインクを付与する態様としては、塗布法、浸漬法、インクジェット法などの公知の方法を利用した態様のいずれを採用してもよい。中でも、種々の基材(記録媒体を含む)に対して膜(例えば画像)の形成が行える点で、インクジェット法が好適である。
基材としては、特に制限はなく、例えば、支持体及び記録媒体として提供されている公知の基材を適宜選択して使用することができる。
基材としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリスチレン(PS:Polystyrene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のフィルム)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙、上述した金属がラミネートされ又は蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
また、基材としては、テキスタイル基材も挙げられる。
テキスタイル基材の素材としては、例えば、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維;ビスコースレーヨン、レオセル等の化学繊維;ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維;天然繊維、化学繊維、及び合成繊維からなる群から選択される少なくとも2種である混合物;等が挙げられる。テキスタイル基材としては、国際公開第2015/158592号の段落0039〜0042に記載されたテキスタイル基材を用いてもよい。
基材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、ポリスチレン(PS)基材、ポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリプロピレン(PP)基材、アクリル樹脂基材等のプラスチック基材が好ましい。
インクジェット法によるインクの付与は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
インクジェット記録装置としては特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。
インクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本開示のインクを含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1pl〜100pl、より好ましくは8pl〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320dpi(dot per inch)×320dpi〜4000dpi×4000dpi、より好ましくは400dpi×400dpi〜1600dpi×1600dpi、さらに好ましくは720dpi×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、dpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
また、付与工程では、予め加熱された基材に対してインクを付与してもよい。
付与工程において、予め加熱された基材に対してインクを付与した場合には、加熱された基材によって、以下の加熱工程を実施することができる(即ち、加熱された基材によってインク膜を加熱することができる)。
インクを付与する前の基材の加熱は、例えば、後述する加熱工程において例示する加熱手段によって行うことができる。
(加熱工程)
加熱工程は、基材上に形成されたインク膜を加熱する工程である。
加熱工程においてインク膜を加熱することにより、前述したとおり、インク膜の増粘が起こり、その結果、引っ掻き耐性に優れた画像が得られる。
本開示の画像形成方法において、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱工程における加熱により、インク膜の硬化(即ち、熱重合性モノマーによる熱重合)を行ってもよい。言い換えれば、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱工程が、後述の硬化工程Bを兼ねていてもよい。
加熱工程における加熱の態様としては、基材上に付与されたインクを加熱手段によって加熱する態様が挙げられる。
また、上述のとおり、付与工程において、予め加熱された基材に対してインクを付与した場合、加熱工程における加熱の態様としては、加熱された基材によってインクを加熱する態様も挙げられる。
加熱手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、赤外線LED、赤外線ヒーター、熱オーブン、ヒート板、赤外線レーザー、赤外線ドライヤー等が挙げられる。中でも、インクを効率的に加熱硬化可能な点で、波長0.8μm〜1.5μm又は2.0μm〜3.5μmに極大吸収波長を有する、近赤外線〜遠赤外線に発光波長を有する発光ダイオード(LED)、近赤外線〜遠赤外線を放射するヒーター、近赤外線〜遠赤外線に発振波長を有するレーザー、又は近赤外線〜遠赤外線を放射するドライヤーが好ましい。
加熱時における加熱温度は、インク膜をより効果的に増粘させる観点から、40℃以上が好ましく、40℃〜200℃がより好ましく、45℃〜100℃が更に好ましく、50℃〜80℃が更に好ましく、55℃〜70℃が更に好ましい。
加熱温度は、基材上のインクの温度を指し、赤外線サーモグラフィ装置H2640(日本アビオニクス株式会社製)を用いたサーモグラフで測定することができる。
加熱時間は、加熱温度、インクの組成、印刷速度等を加味し、適宜設定することができる。加熱時間は、5秒以上が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜1分がより好ましく、20秒〜1分が更に好ましい。
(硬化工程)
本開示の画像形成方法は、加熱工程によって加熱されたインク膜を硬化させる硬化工程を有することができる。
この硬化工程により、インク膜中において、重合性モノマーによる重合反応(即ち、架橋反応)が進行する。従って、本開示の画像形成方法が硬化工程を有する場合には、画像の硬度をより向上させることができ、ひいては画像の引っ掻き耐性をより向上させることができる。
本開示の画像形成方法において、光硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して光(即ち、活性エネルギー線)を照射することにより、インク膜を光硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程A」)を設けることができる。
本開示の画像形成方法において、熱硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことによりインク膜を熱硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程B」)を設けることができる。
但し、熱硬化性のインクを用いる場合、この硬化工程B(即ち、前述の加熱工程とは別の硬化工程B)を設けず、前述の加熱工程により、インク膜の増粘及び熱硬化を行ってもよい。
即ち、本開示の画像形成方法において、熱硬化性のインクを用いる場合は、インク膜の増粘を行う加熱工程と、インク膜の熱硬化を行う硬化工程Bと、を別個に設けてもよいし、インク膜の増粘及び熱硬化を両方行う1回の加熱工程を設けてもよい。
−硬化工程A−
硬化工程Aは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して活性エネルギー線を照射することによりインク膜を硬化させる工程である。
硬化工程Aでは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対して活性エネルギー線を照射することにより、インク膜中の特定粒子の光架橋反応(即ち、光重合反応)が進行し、これによりインク膜の強度が高められる。
硬化工程Aで用いることができる活性エネルギー線としては、紫外線(UV光)、可視光線、電子線等を挙げられ、これらの中でも、UV光が好ましい。
活性エネルギー線(光)のピーク波長は、200nm〜405nmであることが好ましく、220nm〜390nmであることがより好ましく、220nm〜385nmであることが更に好ましい。
また、200nm〜310nmであることも好ましく、200nm〜280nmであることも好ましい。
活性エネルギー線(光)が照射される際の露光面照度は、例えば10mW/cm〜2000mW/cm、好ましくは20mW/cm〜1000mW/cmである。
活性エネルギー線(光)が照射される際の露光エネルギーは、例えば10mJ/cm〜2000mJ/cm、好ましくは20mJ/cm〜1000mJ/cmである。
活性エネルギー線(光)を発生させるための源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV蛍光灯、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。
また、上記で例示された光源の、半導体紫外発光デバイスへの置き換えは、産業的にも環境的にも非常に有用である。
半導体紫外発光デバイスの中でも、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)は、小型、高寿命、高効率、及び低コストであり、光源として期待されている。
光源としては、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED、又は青紫レーザーが好ましい。
これらの中でも、増感剤と光重合開始剤とを併用する場合は、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な超高圧水銀ランプ、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な高圧水銀ランプ、又は、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDがより好ましく、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDが最も好ましい。
硬化工程Aおいて、基材上に付与されたインクに対する活性エネルギー線の照射時間は、例えば0.01秒間〜120秒間であり、好ましくは0.1秒間〜90秒間である。
照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を同様に適用することができる。
活性エネルギー線の照射方式として、具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニット及び光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって活性エネルギー線の照射を行う方式が好ましい。
活性エネルギー線の照射は、インクを着弾して加熱乾燥を行った後、一定時間(例えば0.01秒間〜120秒間、好ましくは0.01秒間〜60秒間)をおいて行うことが好ましい。
−硬化工程B−
硬化工程Bは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことによりインク膜を熱硬化させる工程である。
硬化工程Bでは、加熱工程によって加熱されたインク膜に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことにより、インク中の特定粒子の熱架橋反応(即ち、熱重合反応)が進行し、これによりインク膜の強度が高められる。
硬化工程Bの好ましい態様は、加熱工程の好ましい態様と同様である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下において、「部」は、特に断りが無い限り、質量部を表す。
また、化学式中の「*」は、結合位置を表す。
<特定鎖状ポリマーの合成>
(ポリマー1(末端、光重合性基有り)の合成)
下記反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、下記ポリマー1(末端、光重合性基有り)を合成した。
ここで、「末端」とは、ポリマーが、主鎖の末端に1価のゲル化基を有することを意味し、「光重合性基有り」とは、ポリマーが光重合性基を有することを意味する(以下、同様とする)。
Figure 0006938652
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(82.5g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(16.9g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(2.9g)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(化合物(a−21))(77.0g)、及び酢酸エチル(102.3g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、ネオスタンU−600(日東化成(株)製、無機ビスマス触媒;以下、「U−600」ともいう)を0.2g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤である特定ゲル化剤(詳細には、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤)としてのエイコシルアミン(C2041NH)(0.3g)と、酢酸エチル(190g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマー1の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマー1の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
ポリマー1は、光重合性基としてアクリロイル基を有している。
ポリマー1は、主鎖の末端に、ゲル化基を有する鎖状のウレタンポリマーである。
詳細には、ポリマー1は、主鎖の末端に、式(G)で表される基(nが1の場合)の例である、下記基(G−1)を含んでいる。
下記基(G−1)は、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤であるエイコシルアミン(C2041NH)と、HMDI中のイソシアネート基と、の反応物である。
Figure 0006938652
(ポリマー2〜9(末端、光重合性基有り)の合成)
末端封止剤である特定ゲル化剤の種類を表1に示すように変更したこと以外はポリマー1の合成と同様にして、いずれも鎖状ポリマーであるポリマー2〜9(末端、光重合性基有り)を合成した。
ポリマー2〜9は、いずれも、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
表1及び表2中の原料の分類において、HGは、ヒドロゲル化剤を意味し、AMGは、両親媒性ゲル化剤を意味する。
表1及び表2中の特定ゲル化剤は以下のとおりである。
C20H41NH2、C18H37NH2、C16H33NH2、及びC8H17NH2は、それぞれ、エイコシルアミン(C2041NH)、オクタデシルアミン(C1837NH)、ヘキサデシルアミン(C1633NH)、及びオクチルアミン(C17NH)を意味する。これらの化合物は、いずれも活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤である。
G0402、N0949、及びS0946は、いずれも東京化成工業社製の、アミノエチルグリコシドである多糖類であり、これらの構造は以下のとおりである。これらの化合物は、いずれも活性水素基を有するヒドロゲル化剤である。
アミノエチルグリコシドである多糖類を用いたこれらの例では、いずれも、アミノエチルグリコシドである多糖類中の1級アミノ基と、HMDIのイソシアネート基と、が反応し、式(G)中のRとして、ウレア基が形成される。これらの例では、いずれも、式(G)中のnは1となり、式(G)中のLはエチレン基となり、式(G)中のRは、多糖類から水素原子を1個除いた残基となる。
Figure 0006938652
E707は、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤であり、詳細には、花王社製のエマルゲン(登録商標)E707であり、より詳細には、直鎖アルキル基の炭素数が11〜15であるモノアルキルポリエチレングリコール(数平均分子量508)である。
このE707を用いた例では、E707中のヒドロキシ基と、HMDIのイソシアネート基と、が反応し、式(G)中のRとして、ウレタン基が形成される。この例では、式(G)中のnは1となり、式(G)中のLはエチレン基となり、式(G)中のRは、1価の疎水性基としての、炭素数11〜15の直鎖アルキル基となる。
F108は、活性水素基を有するヒドロゲル化剤であり、詳細には、BASF社製のプルロニック(登録商標)F108であり、より詳細には、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールトリブロック共重合体(数平均分子量14600)である。F108は、前述の式(1A)で表されるポリオキシアルキレン化合物の一例である。F108において、式(1A)中のRは、水素原子である。
このF108を用いた例では、F108中の末端部分のヒドロキシエチル基中のヒドロキシ基とイソシアネート基との反応によってR(ウレタン基)が形成され、上記ヒドロキシエチル基中のエチル基の部分がL(エチレン基)となり、F108中の末端部分のヒドロキシエチル基を除いた部分がRとなる。Rは、ヒドロゲル化剤としての式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物から水素原子を1個除いた残基に対応する。
(比較ポリマーA及びBの合成)
末端封止剤である特定ゲル化剤を、表1に示す比較化合物に変更したこと以外はポリマー1の合成と同様にして、いずれも鎖状ポリマーである比較ポリマーA及びBをそれぞれ合成した。
比較ポリマーA及びBは、いずれも、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
表1及び表2において、PEGMEは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量(Mn)=4000)であり、IPAは、イソプロピルアルコールである
(ポリマー10(主鎖中、光重合性基有り)の合成)
下記反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、ポリマー10(主鎖中、光重合性基有り)を合成した。
ここで、「主鎖中」とは、ポリマーが、主鎖中に2価のゲル化基を有することを意味し、「光重合性基有り」とは、ポリマーが光重合性基を有することを意味する。
Figure 0006938652
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(82.5g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(16.9g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(2.9g)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(化合物(a−21))(77.0g)、特定ゲル化剤(詳細には、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤)としての1,12−ドデシルジアミン(HN(CH12NH)(0.3g)、及び酢酸エチル(102.3g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、U−600を0.2g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤としてのイソプロピルアルコール(IPA)(80g)と、酢酸エチル(110g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマー9の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマー9の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
表1及び表2において、H2N−(CH2)12−NH2は、1,12−ドデシルジアミン(HN(CH12NH)である。
ポリマー10は、式(G)で表される基の例である、下記基(G−10)を含んでいる。
下記基(G−10)は、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤である1,12−ドデシルジアミン(HN(CH12NH)と、HMDI中のイソシアネート基と、の反応物である。
Figure 0006938652
(ポリマー11〜16(主鎖中、光重合性基有り)の合成)
特定ゲル化剤の種類を表1に示すように変更したこと以外はポリマー10の合成と同様にして、いずれも鎖状ポリマーであるポリマー11〜16を合成した。
ポリマー11〜16は、いずれも、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
表1中、gel−01〜gel−06の構造は以下のとおりであり、融点及び分子量は表1に示すとおりである。
Figure 0006938652
gel−01〜gel−06は、それぞれ、以下のようにして合成した。
・gel−01の合成: アセトニトリル300mL中に3−アミノ−1−プロパノール20gを溶解し、0℃で撹拌した。そこに、ドデカン二酸ジクロリド26.8gを滴下し、0℃で1時間撹拌した。得られた反応液を水300mLに注ぎ、ここに塩酸を添加してpHを3以下に調整した後、析出した固体をろ取した。水300mLで固体を洗浄し、60℃で6時間乾燥した。以上により、目的物であるgel−01を得た。
・gel−02の合成: gel−01の合成例において3−アミノ−1−プロパノールをDL−1−アミノ−2−プロパノールに変更した以外は同様にして、gel−02を得た。
・gel−03の合成: THF200mL中にヘキサメチレンジアミン23gと、ε−カプロラクトン11.4gを溶解し、加熱還流条件下、2時間反応させた。得られた反応液を水300mLに注ぎ、ここに塩酸を添加してpHを3以下に調整した後、析出した固体をろ取した。水100mLで固体を洗浄し、60℃で6時間乾燥した。以上により、目的物であるgel−03を得た。
・gel−04の合成: gel−03の合成例において、ヘキサメチレンジアミンを1,12−ドデカンジアミン40gに変更した以外は同様にして、gel−04を得た。
・gel−05の合成: gel−03の合成例においてヘキサメチレンジアミンを1,12−ドデカンジアミン40gに、ε−カプロラクトンをγ−ブチロラクトン8.4gに置換した以外は同様にして、gel−05を得た。
・gel−06の合成: gel−03の合成例において、ヘキサメチレンジアミンを1,12−ドデカンジアミン40gに、ε−カプロラクトンをβ−ブチロラクトン8.4gに、それぞれ変更した以外は同様にして、gel−06を得た。
(ポリマー17)
ポリマー17として、側鎖に1価のゲル化基を有するメタクリルポリマーを合成した。以下、詳細を示す。
三口フラスコに、1―メトキシ−2−プロパノール(11.3g)を仕込み、10mL/minの窒素気流下、75℃で30分撹拌した。ここに、カレンズ(登録商標)MOI(昭和電工製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)(1.13g)、メタクリル酸メチル(10.67g)、メタクリル酸(0.90g)、V−601(和光純薬工業製、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸))(0.14g)及び1―メトキシ−2−プロパノール(11.3g)の混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤であるエイコシルアミン(2.29g)を添加し、75℃でさらに2時間撹拌した。得られた反応液を室温まで放冷した後、水200mL/アセトン20mLの混合液に注いだ。析出した粉体をろ取し、オーブンにて60℃で6時間乾燥した。得られた粉体に酢酸エチルを加えて濃度調整を行うことにより、ポリマー17の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマー17の重量平均分子量(Mw)は20000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
(ポリマー101(末端、光重合性基無し)の合成)
下記反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、下記ポリマー101(末端、光重合性基無し)を合成した。
ここで、「末端」とは、ポリマーが、主鎖の末端に1価のゲル化基を有することを意味し、「光重合性基無し」とは、ポリマーが光重合性基を有しないことを意味する。
Figure 0006938652
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(41.2g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(6.4g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(20.2g)、及び酢酸エチル(67.7g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、U−600を0.14g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤である特定ゲル化剤としてのエイコシルアミン(C2041NH)(0.2g)と、酢酸エチル(42.9g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマー101の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマー101の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
ポリマー101は、ポリマー1と同様に、基(G−1)を含んでいる。
(ポリマー102〜ポリマー104(末端、光重合性基無し)の合成)
末端封止剤である特定ゲル化剤の種類を表2に示すように変更したこと以外はポリマー101の合成と同様にして、いずれも鎖状ポリマーであるポリマー102〜104を合成した。
ポリマー102〜104は、いずれも、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
(比較ポリマーC及びDの合成)
末端封止剤である特定ゲル化剤を、表2に示す比較化合物に変更したこと以外はポリマー101の合成と同様にして、いずれも鎖状ポリマーである比較ポリマーC及びDをそれぞれ合成した。
比較ポリマーC及びDは、いずれも、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
(ポリマー105(主鎖中、光重合性基無し)の合成)
下記反応スキームに従い、特定鎖状ポリマーとして、ポリマー105(主鎖中、光重合性基無し)を合成した。
Figure 0006938652
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(41.2g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(6.4g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(20.2g)、特定ゲル化剤としてのエイコシルアミン(C2041NH)(0.2g)、及び酢酸エチル(67.7g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、U−600を0.14g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤としてのイソプロピルアルコール(IPA)(10g)と、酢酸エチル(32.9g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマー105の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマー105の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.70mmol/gであった。
ポリマー105は、ポリマー10と同様に、基(G−10)を含んでいる。
(ポリマー106(主鎖中、光重合性基無し)の合成)
特定ゲル化剤の種類を表2に示すように変更したこと以外はポリマー105の合成と同様にして、ポリマー106を合成した。
ポリマー106は、重量平均分子量(Mw)が8000であり、かつ、酸価が0.70mmol/gであった。
〔実施例1〕(光硬化性のインク)
<水分散物の調製>
−油相成分の調製−
酢酸エチル及びエタノールの混合溶液(酢酸エチル:エタノール(質量比)=10:1)と、
ポリマー1の30質量%溶液(ポリマー1の量として53部)と、
サートマー社製の光重合性化合物SR833S(22部;以下、「S833」ともいう)と、
サートマー社製の光重合性化合物SR399E(22部;以下、「S399」ともいう)と、
BASF社製の光重合開始剤IRGACURE(登録商標)819(2.5部;以下、「IRG819」ともいう)と、
増感剤として東京化成工業社製の2−イソプロピルチオキサントン(0.5部;以下、「ITX」ともいう)と、
を混合し、15分間撹拌することにより、固形分36質量%の油相成分44gを得た。
S833は、環状構造を有する2官能の光重合性モノマーであり、具体的にはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304)である。
S399は、環状構造を有しない5官能の光重合性モノマーであり、具体的にはジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量525)である。
IRG819は、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤であり、具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドである。
−水相成分の調製−
蒸留水(45g)と、中和剤としての水酸化ナトリウムと、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
中和剤としての水酸化ナトリウムの使用量は、製造される粒子において、カルボキシ基の中和度が90%となるように調整した。
水酸化ナトリウムの具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
水酸化ナトリウムの量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するポリマー1の含有量(質量%)/100)×ポリマー1の酸価(mmol/g)×0.9×水酸化ナトリウムの分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を25℃でホモジナイザーを用いて18000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。得られた乳化物を蒸留水(25g)に添加し、得られた液体を室温で30分撹拌した。次に、この液体を50℃に加熱し、50℃で6時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチル及びエタノールを留去した。
酢酸エチル及びエタノールが留去された液体を、更に、50℃で24時間撹拌することにより、液体中に特定粒子を形成させた。
次に、この特定粒子を含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、特定粒子の水分散物を得た。
<光硬化性のインクの調製>
下記組成の各成分を混合し、光硬化性のインクを作製した。
−光硬化性のインクの組成−
・上記水分散物 … 82部
・顔料分散液(Pro−jet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製)、顔料濃度14質量%) … 13部
・フッ素系界面活性剤(DuPont社製、Capstone FS−31、固形分25質量%) … 0.3部
・2−メチルプロパンジオール … 4.7部
<評価>
上記で得られた光硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表1に示す。
(硬化膜の引っ掻き耐性)
調製後室温で1日以内保管した上記光硬化性のインクを基材上に塗布することにより、上記基材上に厚さ12μmの塗膜を形成した。
基材としては、DUROplastic社製のポリプロピレン(PP)基板であるCORREXを用いた。
また、上記塗布は、RK PRINT COAT INSTRUMENTS社製のKハンドコーターのNo.2バーを用いて行った。
次に、上記塗膜を60℃で3分間加熱し、乾燥させた。
乾燥後の塗膜に対し、紫外線(UV)を照射することにより、塗膜を硬化させ、硬化膜を得た。
紫外線(UV)の照射は、露光光源としてオゾンレスメタルハライドランプMAN250Lを搭載し、コンベアスピード35m/分、露光強度1.0W/cmに設定した実験用UVミニコンベア装置CSOT((株)ジーエス・ユアサパワーサプライ製)を用いた。このUVの照射は、露光エネルギー1000mJ/cmにて行った。
上記で形成された硬化膜に対し、以下の条件の引っ掻き試験を実施した。
−引っ掻き試験の条件−
・装置 … ハイドン社製の往復摩耗試験機「TYPE30S」
・引っ掻き針 … 先端の曲率半径が1.0mmであるSUS(ステンレス)製の引っ掻き針
・加重 … 100g及び200gの2条件
・引っ掻き速度 … 3000mm/min.
・引っ掻き回数 … 5往復
引っ掻き試験の実施後、硬化膜の表面を目視で観察し、下記評価基準に従って、硬化膜の引っ掻き耐性を評価した。
下記評価基準において、硬化膜の引っ掻き耐性が最も優れるものは、Aである。
−硬化膜の引っ掻き耐性の評価基準−
A:5往復後において、荷重100g及び荷重200gのいずれの条件においても、硬化膜に引っ掻き跡は見られなかった。
B:5往復後において、荷重100gの条件では硬化膜に引っ掻き跡は見られなかったが、荷重200gの条件では、硬化膜にわずかに引っ掻き跡が見られた。
C:5往復後において、荷重100gの条件で、硬化膜にわずかに引っ掻き跡が見られた。
D:5往復後において、荷重100gの条件で、硬化膜にはっきりと引っ掻き跡が見られた。
(画像の精細さ)
上記基材をプリントヒーターによって60℃に加熱し、加熱された基材に対し、上記光硬化性のインクを上記インクジェットプリンタのヘッドから吐出し、図1に示す文字画像を、3ポイント、5ポイント、7ポイント、及び10ポイントの各サイズにて形成した。
形成された各サイズの図1に示す文字画像を、倍率10倍のクラフトルーペ(エツミ社製)によって観察した。観察した結果に基づき、下記評価基準にて、画像の精細さを評価した。下記評価基準において、画像の精細さが最も優れるものは、Aである。
−画像の精細さの評価基準−
A:5ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された。
B:7ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、Aに該当する場合を除く)。
C:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、A又はBに該当する場合を除く)。
D:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れて、又は、にじんで形成された。
〔実施例2〜17〕(光硬化性のインク)
ポリマー1を、表1に示す各ポリマーに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
〔比較例1及び2〕(光硬化性のインク)
ポリマー1を、表1に示す各比較ポリマーに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
Figure 0006938652
表1に示すように、水と、ゲル化基を有するポリマーを含む粒子(即ち、特定粒子)と、を含有する光硬化性のインクを用いた実施例1〜17は、粒子中のポリマーがゲル化基ではなく比較基を有する比較例1及び2と比較して、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さに優れていた。
実施例1〜3及び5〜9と、実施例10〜16と、の対比より、ゲル化基が1価の基である場合(即ち、式(G)中のnが1である場合)(実施例1〜3及び5〜9)には、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上することがわかる。
実施例1〜3及び5〜9と、実施例17と、の対比より、ゲル化基がポリマーの主鎖の末端に配置されている場合(実施例1〜3及び5〜9)には、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上することがわかる。
実施例5〜8の結果から、ゲル化基の形成に、活性水素基を有するヒドロゲル化剤(HG)を用いた場合において、式(G)中のRに対応する基が多糖類の残基である場合(実施例5〜7)には、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上することがわかる。
実施例1〜4及び9の結果から、ゲル化基の形成に、活性水素基を有する両親媒性ゲル化剤(AMG)を用いた場合において、式(G)中のRに対応する疎水性基の炭素数が10以上である場合(実施例1〜3及び9)には、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さがより向上することがわかる。
中でも、式(G)中のRに対応する疎水性基の炭素数が16以上である場合(実施例1〜3)には、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さが特に向上することがわかる。
上述した実施例1〜17の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.15μm〜0.25μmの範囲であった。
〔実施例101〕(熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
インクの調製において、S833、S399、IRG819、及びITXを、60℃、2.67kPa(20torr)の条件でプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去したTrixeneTMBI7982(熱重合性モノマー;ブロックイソシアネート;Baxenden Chemicals社)(以下、「BI7982」ともいう;量は表2に示すとおり;分子量793)に変更し、かつ、ポリマー1を同じ量のポリマー101に変更したこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表2に示す。
(硬化膜の引っ掻き耐性)
硬化膜の引っ掻き耐性の評価について、塗膜を60℃で3分間加熱して乾燥させ、乾燥後の塗膜に対し紫外線(UV)を照射する操作を、塗膜を120℃のオーブンで5分加熱する操作に変更したこと以外は実施例1における硬化膜の引っ掻き耐性の評価と同様にして実施した。
(画像の精細さ)
画像の精細さについて、実施例1における画像の精細さの評価と同様にして実施した。
〔実施例102、104、105及び106〕(熱硬化性のインク)
ポリマー101を、表2に示すポリマーに変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
〔実施例103〕(熱硬化性のインク)
BI7982を、エポキシ基を有する熱重合性モノマーであるEPICLONTM840(DIC社;以下、「EP840」ともいう;量は表2に示すとおり;分子量340)及び熱硬化促進剤である2−メチルイミダゾール(以下、「2MI」ともいう;量は表2に示すとおり)に変更したこと以外は実施例102と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
〔比較例101及び102〕(熱硬化性のインク)
ポリマー101を、表2に示す比較ポリマーに変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0006938652
表2に示すように、熱硬化性のインクに関する実施例101〜106においても、光硬化性のインクに関する実施例1〜17と同様の結果が得られた。
上述した実施例101〜106の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.15μm〜0.25μmの範囲であった。
〔実施例201〕(MCを含む光硬化性のインク)
<マイクロカプセル(MC)の水分散物の調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
−油相成分の調製−
酢酸エチルと、
三井化学社製のタケネート(登録商標)D−110N(固形分である3官能イソシアネート化合物の量として43部;以下、この固形分を「D110」ともいう)と、
下記NCO1の溶液(固形分であるNCO1の量として10部)と、
光重合性モノマーである前述のS833(20.5部)と、
光重合性モノマーである前述のS399(22部)と、
光重合開始剤である前述のIRG819(2.5部)と、
増感剤である前述のITX(0.5部)と、
を混合し、15分間撹拌することにより、固形分30質量%の油相成分45.7gを得た。
タケネートD−110Nは、トリメチロールプロパン(TMP)とm−キシリレンジイソシアネート(XDI)との付加物(3官能イソシアネート化合物である「D110」)の75質量%酢酸エチル溶液である。
NCO1は、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であり、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)とIPDIとの付加物(DMBA/IPDI=1/3(モル比))である。NCO1の酸価は、1.2mmol/gである。
上述のNCO1の溶液は、NCO1の35質量%酢酸エチル溶液である。
NCO1の溶液は、三口フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)18g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)82g、及び酢酸エチル(AcOEt)186gを加え、50℃に加熱し、そこにネオスタンU−600を0.3g添加し、3時間反応させることによって調製した。
−水相成分の調製−
蒸留水(43.1g)と、中和剤としての水酸化ナトリウムと、特定ゲル化剤としてのエイコシルアミン(C2041NH)と、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
ここで、エイコシルアミン(C2041NH)の量は、前述の43部のD110に対して1.5部とした。
また、中和剤としての水酸化ナトリウムの使用量は、製造されるMCにおいて、カルボキシ基の中和度が90%となるように調整した。
水酸化ナトリウムの具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
水酸化ナトリウムの量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の全固形分量に対するNCO1の含有量(質量%)/100)×NCO1の酸価(mmol/g)×0.9×水酸化ナトリウムの分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を室温でホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を50℃に加熱し、50℃で5時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。残った液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、マイクロカプセルの水分散物を得た。
このマイクロカプセルのシェルであるポリマーは、3官能イソシアネート化合物であるD110と、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であるNCO1と、の反応によって形成された、三次元架橋構造を有するウレタンポリマーである。このウレタンポリマーの末端は、末端封止剤としての特定ゲル化剤であるエイコシルアミンと、イソシアネート基と、の反応によって封止されている。
このマイクロカプセルのシェルであるポリマーは、
NCO1にもともと含まれていたウレタン基、
D110にもともと含まれていたウレタン基、及び、
D110中又はNCO1中のイソシアネート基と、D110中又はNCO1中のイソシアネート基と、水と、の反応によって形成されたウレア基
を有している。
<光硬化性のインクの調製>
下記組成の各成分を混合し、光硬化性のインクを作製した。
−光硬化性のインクの組成−
・上記水分散物 … 82部
・顔料分散液(Pro−jet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製)、顔料濃度14質量%) … 13部
・フッ素系界面活性剤(DuPont社製、Capstone FS−31、固形分25質量%) … 0.3部
・2−メチルプロパンジオール … 4.7部
<評価>
得られた光硬化性のインクを用い、実施例1で実施した評価と同様の評価を行った。
結果を表3に示す。
Figure 0006938652
表3に示すように、特定粒子としてMCを含有する光硬化性のインクに関する実施例201においても、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さに優れる効果を有することが確認された。
この実施例201(表3)と前述の実施例1(表1)との対比より、特定ポリマーとして鎖状ポリマー(ポリマー1)を含む実施例1では、特定ポリマーとして、MCのシェルである三次元架橋ポリマーを含む実施例201と比較して、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さにより優れることがわかる。
上述した実施例201におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定したところ、MCの体積平均分散粒子径は0.15μm〜0.25μmの範囲であった。
〔実施例301〕(MCを含有する熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する特定架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
詳細には、S833、S399、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表4に示すとおり)に変更したこと以外は実施例201における光硬化性のインクの調製と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
熱硬化性のインク中、MCのシェルを形成するポリマーの構造は、実施例201におけるMCのシェルを形成するポリマーの構造と同様である。
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、熱硬化性のインクに関する実施例101と同様の評価を行った。
結果を表4に示す。
Figure 0006938652

表4に示すように、MCを含有する熱硬化性のインクに関する実施例301においても、MCを含有する光硬化性のインクに関する実施例201と同様の結果が得られた。
この実施例301(表4)と前述の実施例101(表2)との対比より、特定ポリマーとして鎖状ポリマー(ポリマー101)を含む実施例101では、特定ポリマーとして、MCのシェルである三次元架橋ポリマーを含む実施例301と比較して、画像の引っ掻き耐性及び画像の精細さにより優れることがわかる。
上述した実施例301におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定したところ、MCの体積平均分散粒子径は、0.15μm〜0.25μmの範囲であった。
2017年9月25日に出願された日本国特許出願2017−183868号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。

Claims (9)

  1. 水と、
    ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーであり、活性水素基を有するゲル化剤とイソシアネート基との反応物であるゲル化基を有するポリマーを含む粒子と、
    を含有し、前記ゲル化基が下記式(G)で表される基である、インクジェットインクとして用いられる
    インク組成物。
    Figure 0006938652

    〔式(G)中、nは、1又は2を表しは、単結合又は2価の連結基を表し、*は、結合位置を表す。
    式(G)中が1である場合には、
    が、多糖類から水素原子を1個除いた残基、若しくは炭素数16以上の直鎖アルキル基を表し、かつ、R が、ウレア基を表すか、又は、
    が、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物から水素原子を1個除いた残基を表し、かつ、R が、ウレタン基を表す。
    式(G)中が2である場合には、
    が、多糖類から水素原子を2個除いた残基、若しくは炭素数16以上の直鎖アルキレン基を表し、かつ、R が、ウレア基を表すか、又は、
    が、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物から水素原子を2個除いた残基を表し、かつ、R が、ウレタン基を表す。
    式(1)中、n及びmは、それぞれ独立に、2以上の整数を表し、pは、0以上の整数を表し、Lは、炭素数3以上のアルキレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。〕
  2. 前記式(G)中、n が1である場合には、R が、多糖類から水素原子を1個除いた残基、又は炭素数16以上の直鎖アルキル基を表し、かつ、R が、ウレア基を表し、
    前記式(G)中、n が2である場合には、R が、多糖類から水素原子を2個除いた残基、又は炭素数16以上の直鎖アルキレン基を表し、かつ、R が、ウレア基を表す、請求項1記載のインク組成物。
  3. 前記式(G)中、n が1である場合には、R が、多糖類から水素原子を1個除いた残基を表し、かつ、R が、ウレア基を表し、
    前記式(G)中、n が2である場合には、R が、多糖類から水素原子を2個除いた残基を表し、かつ、R が、ウレア基を表す、請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
  4. 前記ゲル化基が、1価の基である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
  5. 前記ポリマーが、鎖状ポリマーであり、
    前記ゲル化基が、前記鎖状ポリマーの主鎖の末端に配置されている請求項に記載のインク組成物。
  6. 前記粒子が、重合性モノマーを含む請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
  7. 前記ポリマーが、重合性基を有する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
  8. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインク組成物を製造する方法であって、
    有機溶剤及び前記ポリマーを含む油相成分と、水を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、前記粒子を形成する工程を有するインク組成物の製造方法。
  9. 基材上に、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインク組成物を付与することによりインク膜を形成する工程と、
    前記インク膜を加熱する工程と、
    を含む画像形成方法。
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