JP2009173566A - 睡眠改善組成物 - Google Patents

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【課題】ヒスタミンH1受容体拮抗物質であるジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬の睡眠作用を維持しながら、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減した、睡眠改善組成物の提供。
【解決手段】ジフェンヒドラミン又はその酸付加塩と、グリシン又はその前駆体とを配合する睡眠改善組成物。該グリシンの前駆体は、生体内においてグリシンに代謝される物質であり、その具体例としては、セリン、コリン、グリオキシル酸、グルタミン酸、トレオニン等を挙げることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、睡眠改善組成物に関し、更に詳細には、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用が軽減された、ジフェンヒドラミンを睡眠誘発物質として含有する睡眠改善組成物に関する。
現代人は、ストレスにより不眠に陥ることも多く、深い睡眠を得るために、催眠誘発剤を使用することも多い。このような睡眠誘発剤としては、催眠作用を有する生薬、有機ブロム化合物、ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬や、抗アレルギー用薬等に用いられているヒスタミンH1受容体拮抗物質の睡眠誘発作用を利用した睡眠改善薬等があり、単品あるいは配合薬として開発、使用されている。
これらの睡眠誘発物質(成分)あるいはそれらの配合薬の中で、ヒスタミンH1受容体拮抗物質を配合した睡眠改善組成物が安全性等の面から注目され、中でも特にジフェンヒドラミンが広く使用されている。しかしながら、ジフェンヒドラミンを利用した睡眠改善組成物は、眠気を誘発する有効な投与量では、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を招く場合のあることが知られている。従って、ヒスタミンH1受容体拮抗物質の睡眠誘発作用を減弱することなく、目覚め後の不都合な副作用を回避する工夫が求められている。
特開平7−507549号公報 特開平9−20653号公報 特開2000−327590号公報 特開2001−253826号公報 特開2003−300872号公報 特開2004−107258号公報 特開2006−524675号公報 特開平2−72853号公報 特開平10−17482号公報 特開2005−104923号公報 特開2005−104925号公報 特開2005−104926号公報 特開2005−104927号公報 特開2005−320254号公報 特開2006−321743公報 "Journal of Clinical Psychopharmacology", 19(6), 506-512 (1999), Sandea E. et, al.
本発明は、睡眠成分による目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減する安全な睡眠改善組成物を提供することを目的とする。特に、本発明は、ヒスタミンH1受容体拮抗物質であるジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬の睡眠作用を維持しながら、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減する技術の提供をすることにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討していたところ、ヒスタミンH1受容体拮抗物質のジフェンヒドラミンに、アミノ酸の一つであるグリシンを食品で使用する用量より少ない量で配合することにより、ジフェンヒドラミンの睡眠作用を維持しながら、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減できることを見出して本発明を完成した。
すなわち本発明は、ジフェンヒドラミン又はその酸付加塩と、グリシン又はグリシン前駆体とを配合することを特徴とする睡眠改善組成物である。
本発明の睡眠改善組成物は、組合せて配合されるグリシン又はグリシン前駆体の作用により、ジフェンヒドラミンに起因する目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減することができるものである。また、この睡眠改善組成物は、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等に加工しやすいものである。
従って、本発明の睡眠改善組成物は、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の剤型に係らずジフェンヒドラミンに組合せて配合されるグリシン又はグリシン前駆体の作用により、目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減することができるので、睡眠改善薬、鎮量薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に広く適用できるものである。
本発明の睡眠改善組成物(以下、「本発明組成物」という)に含有されるジフェンヒドラミンは、既に抗アレルギー用薬や、睡眠導入剤として周知のものである。このもの自体は常温で液状であり、固形剤として使用するには、例えば、軽質無水ケイ酸等の粉体に塩基を保持させ粉粒体化して用いる必要があるため、酸付加塩を用いることが好ましい。
このようなジフェンヒドラミンの酸付加塩としては、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、硫酸ジフェンヒドラミン等が例示される。これらジフェンヒドラミンの酸付加塩の中でも、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン又はクエン酸ジフェンヒドラミンが好ましい。
本発明の睡眠改善組成物におけるジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩(以下、「ジフェンヒドラミン等」という)の含有量は特に制限されるものではなく、製剤化する剤型により異なるが、全組成に対しジフェンヒドラミン類を、概ね1〜95質量%(以下、単に「%」という)含有させることが望ましく、さらに5〜90%含有させることが好ましい。
一方、本発明の睡眠改善組成物に含有させるグリシンは、最も簡単な構造を有する非必須アミノ酸として知られている化合物である。このグリシンについては、苦味を軽減する食品添加剤(特許文献1ないし7)、食品の変質防止剤(特許文献8)及び食品添加物(非特許文献1)として使用することは既に知られている。しかしながら、これらは全て食品に用いられるものであり、医薬配合成分として使用されるものではない。また、目覚め後の不都合な副作用を回復するため、生薬やビタミンなどの成分を配合する試みが行われているが(特許文献9ないし15)、効果が不十分であり、グリシンがこのために用いられたことはない。
また、本発明で用いるグリシンの前駆体は、生体内においてグリシンに代謝される物質であり、その具体例としては、セリン、コリン、グリオキシル酸、グルタミン酸、トレオニン等を挙げることができる。
本発明の睡眠改善組成物におけるグリシンまたはその前駆体(以下、「グリシン等」という)は、全組成に対し、1〜95%を含有させることが望ましく、更に5〜95%含有させることが好ましい。
また、本発明の睡眠改善組成物でのジフェンヒドラミン等とグリシン等の配合比率は、特に限定されるものではないが、それらのモル比で1:5〜80程度が好ましく、特に、1:10〜50であることが好ましい。
本発明の睡眠改善組成物は、常法に従い、上記必須成分であるジフェンヒドラミン等とグリシン等とを製剤化することにより調製されるが、上記必須成分のほかに他の薬理活性成分や通常の医薬品に使用される成分を適宜その目的に応じて配合してもよい。
本発明組成物に必要により配合される通常に医薬品に使用される成分としては、各種担体、安定(化)剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢(化)剤、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁(化)剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠(化)剤、発泡剤、pH調整剤、稀釈剤および賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等の製剤添加物を挙げることができる。
本発明の組成物は、通常行われている製剤化方法(津田恭介・上野寿著、「医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(上)(下)」、地人書館、1971年発行;仲井由宣著、「製剤工学ハンドブック」、地人書館、1983年発行;仲井由宣著、「医薬品の開発11 製剤の単位操作と機械」、廣川書店、1989年発行;橋田充著、「経口投与製剤の設計と評価」、薬業時報社、1995年発行;橋田充著、「経口投与製剤の処方設計」、薬業時報社、1995年発行)により、種々の形態の製剤とすることができる。この製剤の剤形としては、内服固形製剤であれば特に制限されないが、例えば、素錠、多層錠、有核錠、口腔内速崩壊型錠、チュアブル錠等の錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤等のカプセル剤、カプレット、顆粒剤、細粒剤、散剤、粉末剤、丸剤等が挙げられる。また、これらの製剤はフィルム、糖衣等でコーティングしてもよい。更に、これらの製剤は分包されてもよい。
上記した製剤のうち、錠剤は、本発明組成物の成分であるジフェンヒドラミン等、グリシン等および必要により添加される他の医薬成分の混合物(以下。「原末」という)、またはこの原末から調製された粉末剤、細粒剤、顆粒剤等と製剤添加物を混合し、圧縮成型することにより製造される。カプセル剤は、本発明組成物の原末、またはこの原末から調製された粉末剤、造粒末、小型の錠剤等を、カプセル充填機を用いてカプセルに充填することにより製造される。カプレットは、上記錠剤と同様にして圧縮成型することにより製造される。顆粒剤および細粒剤は、原末と製剤添加剤を混合後、湿式または乾式で造粒することにより製造される。また、顆粒剤は造粒後に丸め処理をしてもよい。散剤および粉末剤は、原末と製剤添加剤を混合後、そのままで、あるいは必要に応じて粉砕、または造粒することにより製造される。丸剤は原末と製剤添加剤を混合し、練合、分割、成型の後、でんぷん等で丸衣することにより製造される。なお、これら製剤を製造するに際して造粒末を調製する必要がある場合には、一般に利用される造粒法、例えば、水や有機溶媒を含む溶液または分散液を用いる噴霧造粒法、撹拌造粒法、流動造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法等の湿式造粒法、粉粒状の結合剤を用いる圧密造粒法等の乾式造粒法等を用いることができる。
また、これらの製剤のフィルム、糖衣等によるコーティングには、パンコーティング法、流動層コーティング法、転動コーティング法、ドライコーティング法およびこれらの組み合せ等を用いることができる。
かくして得られる本発明の睡眠改善組成物は、通常、1回投与あたりのジフェンヒドラミン等の投与量の範囲を、5〜150mg程度とすることが好ましく、10〜100mgとすることがさらに好ましく、25〜75mgが最も好ましい。また、1回投与あたりのグリシン等の投与量の範囲は、50〜600mg程度であり、好ましくは、100〜300mg程度であるが、この量は、例えば特許文献7などで使用する量より、ずっと少ない量である。
以上説明した本発明の睡眠改善組成物は、ジフェンヒドラミン等を含有するものの、これと組合せて配合されるグリシン等の作用により、ジフェンヒドラミン等による目覚め後の気分不快感や倦怠感などの副作用を軽減することができるものである。しかも本発明の睡眠改善組成物は、服用感に優れ、しかも、製造コストが低く、加工し易いため様々な製剤の剤型に適用させることができる。
次に実施例、試験例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
試 験 例 1
グリシンの配合試験:
グリシンの適切な配合量を見極めるため、塩酸ジフェンヒドラミンを主成分とする市販の睡眠導入剤ドリエル(エスエス製薬(株))50mg(1回量)とグリシン含有カプセル(50、100、300、600及び900mg含有)を用意した。パネルにこれらを就寝前に同時に服用してもらい、起床後に入眠のスムースさ(入眠効果)、起床時の眠気の有無及び午前中の眠気の有無について評価してもらった。この結果を表1に示す。
Figure 2009173566
この結果から明らかなように、グリシンの服用量が300mg以下ならば塩酸ジフェンヒドラミン入眠効果に影響を与えないが、600mg以上の服用では用量の増大に応じて入眠効果を減弱することが明らかになった。一方、起床時および午前中の眠気はグリシンの100mg以上の服用で用量の増大に応じて改善する。よって、塩酸ジフェンヒドラミンの入眠効果に影響を与えることなく、起床時および午前中の眠気を改善するためには、グリシンの服用量を100から300mgとすれば良いことがわかった。
実 施 例 1
塩酸ジフェンヒドラミン100g、グリシン600g、乳糖46g、結晶セルロース320g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24g、クロスカルメロースナトリウム20g、軽質無水ケイ酸10g、ステアリン酸マグネシウム10g及びタルク10gをV型混合機で混合した。次いでこの混合物を、直径9mmの臼杵を用いて打錠し、厚さ4.2mmの錠剤(塩酸ジフェンヒドラミンを25mg、グリシンを150mg配合)約3800錠を得た。
比 較 例 1
実施例1の処方においてグリシンを除き、乳糖の量を646gに変える以外は実施例1と同様にして、厚さ4.2mmのアミノ酸を含まない錠剤約3800錠を得た。
試 験 例 2
官能試験(1):
被験者37名を用いて官能試験を行った。各被験者に実施例1の製剤(塩酸ジフェンヒドラミン25mgとグリシン150mg配合)2錠を床につく30分前に服用してもらい、睡眠導入時間を下の評価区分(評価基準)に基づいてそれぞれ評価してもらった。また比較としては、比較例1の錠剤(塩酸ジフェンヒドラミン25mg、グリシン配合なし)を2錠をもちい、上と同様にして官能評価を行った。この結果を表2に示した。
<睡眠導入時間>
15分以内:
15から30分の間:
30から60分の間:
60から90分の間:
90分以上
Figure 2009173566
表2から明らかなように、グリシンを配合した実施例1の製剤は、グリシンを配合していない比較例1の製剤に比べ睡眠導入時間を減弱することはなかった。
試 験 例 3
官能試験(2):
試験例2と同様に被験者37名に実施例1の製剤及び比較例1の製剤(2錠)を服用してもらい、中途覚醒回数を下の評価区分(評価基準)に基づいてそれぞれ評価してもらった。その結果を表3に示した。
<中途覚醒回数>
全く目が覚めなかった:
1回覚めた:
2回覚めた:
3回以上覚めた:
Figure 2009173566
表3から明らかなように、グリシンを配合した実施例1の製剤と、グリシンを配合していない比較例1の製剤とは中途覚醒回数において殆ど差はなかった。
試 験 例 4
官能試験(3):
試験例2と同様に被験者37名に実施例1の製剤及び比較例1の製剤(各2錠)を服用してもらい、目覚めた後の感じを下の評価区分(評価基準)に基づいてそれぞれ評価してもらった。その結果を表4に示した。
<目覚めた直後の感じ>
とてもすっきりしている:
すっきりしている:
普段と同じ:
ややボーっとしている:
ボーっとしてなかなかおきられない:
Figure 2009173566
表4から明らかなように、グリシンを配合した実施例1の製剤は、グリシンを配合していない比較例1の製剤に比べ目覚めた直後の感じはすっきりしており、ジフェンヒドラミンの持ちこみ効果の低減を示していた。
試 験 例 5
官能試験(4):
試験例2と同様に被験者37名に実施例1の製剤及び比較例1の製剤(各2錠)を服用してもらい、起床後から午前中の気分を下の評価区分(評価基準)に基づいてそれぞれ評価してもらった。その結果を表5に示した。
<起床後から午前中の気分>
とてもすっきりしている:
すっきりしている:
普段と同じ:
やや眠い:
眠くて仕事に差し支える:
Figure 2009173566
表5から明らかなように、グリシンを配合した実施例1の製剤は、グリシンを配合していない比較例1の製剤に比べ起床後から午前中の気分は改善しており、ジフェンヒドラミンの持ちこみ効果の低減を示していた。
以上の試験例2〜5の結果から、グリシンを含む実施例1の製剤(錠剤)は、グリシンを含まない比較例1の錠剤に比べ、寝付けを改善する傾向を示すと共に、中途覚醒回数を減少する傾向を示した。
一方、実施例1の製剤は、ジフェンヒドラミンによる持ち越し効果である目覚めた直後の感じ及び起床後から午前中における気分は低減し、目覚め後の気分及び作業への影響が少ないことが示され、優れた睡眠改善組成物であることがわかった。
本発明の睡眠改善組成物は、ジフェンヒドラミン等の目覚め後の気分不快感または倦怠感などの持ち越し効果(副作用)が軽減される睡眠改善薬としての他、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に広く適用できるものである。

Claims (3)

  1. ジフェンヒドラミン又はその酸付加塩と、グリシン又はその前駆体とを配合することを特徴とする睡眠改善組成物。
  2. ジフェンヒドラミン又はその酸付加塩50〜500mgを配合したものである請求項1記載の睡眠改善組成物。
  3. ジフェンヒドラミン又はその酸付加塩に対するグリシン又その前駆体の配合量が、モル比で、1:5ないし80である請求項1または2記載の睡眠改善組成物。
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