JP2009170350A - 陽イオン交換膜およびその製造方法 - Google Patents

陽イオン交換膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 陽イオン交換容量の向上した陽イオン交換膜を得るために、疎水性多孔質フィルムへのビニルスルホン酸の含浸量を増加させることを目的とする。
【解決手段】 疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸と溶解度パラメータが9〜17の溶剤とを含む予備含浸液を含浸させ、その後、
得られた疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液をさらに含浸させ、次いで、
疎水性多孔質フィルムに含浸させたビニルスルホン酸を重合する工程を含む陽イオン交換膜の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、陽イオン交換膜およびその製造方法に関し、さらに詳しくは陽イオン交換容量の向上した陽イオン交換膜に関し、またかかる陽イオン交換膜の製造方法に関する。特に、燃料電池用隔膜として用いた場合に、プロトン伝導性が優れ、電池出力の増大が可能な陽イオン交換膜に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応したときの化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いアルカリ型、リン酸型、固体高分子電解質型と、高温で動作する溶融炭酸塩型、固体酸化物電解質型とに大別される。
これらの中で、固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質として作用する隔膜の両面に触媒が担持されたガス拡散電極を接合し、一方のガス拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素を、他方のガス拡散電極が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
こうした固体高分子電解質型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔膜、(2)は燃料ガス流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側ガス拡散電極、(5)は酸化剤室側ガス拡散電極、(6)は固体高分子電解質を示す。この固体高分子電解質型燃料電池において、燃料室(7)では、供給された水素ガスからプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンは固体高分子電解質(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側ガス拡散電極(4)で生成した電子は、外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
このような構造の固体高分子電解質型燃料電池において、燃料である水素が常温常圧で気体であり、その取り扱いが容易でないという理由から、燃料として水素に代えてメタノール、エタノール等を用いる直接液体型燃料電池の開発が進められている。
直接液体型燃料電池の隔膜には、通常、陽イオン交換膜が使用される。そして、この陽イオン交換膜には、燃料であるメタノール等の透過性が低いこと、電気抵抗が小さいこと、保水性が高いこと、長期の使用に対して安定であること、物理的な強度が強いことなどが要求される。
従来、固体高分子電解質型燃料電池用隔膜として使用される陽イオン交換膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が主に使用されている。しかし、この膜は、メタノール等の透過性が高く、酸化剤室側ガス拡散電極に達したメタノール等がその表面で酸素または空気と反応するために過電圧が増大し、出力電圧が低下するという問題があった。また、化学的な安定性には優れているが、保水力が不十分であるため、陽イオン交換膜が乾燥し易く、このためプロトンの伝導性が低下し易い。さらに物理的な強度も不十分であるために薄膜化による電気抵抗の低減が困難であった。加えて、パーフルオロカーボンスルホン酸膜は高価であった。(例えば、特許文献1参照。)
そこで、パーフルオロカーボンスルホン酸膜のような含フッ素重合体ではなく、炭化水素系重合体を母材とする陽イオン交換膜であって直接液体型燃料電池に適する隔膜の開発が望まれている。
炭化水素系陽イオン交換膜の一例として、ポリスチレンをスルホン化してなるポリスチレンスルホン酸が知られている(特許文献2参照)。特許文献2に記載のように、炭化水素系陽イオン交換膜は、一般に、多孔質フィルムにスチレンモノマーを含浸後、これを重合し、その後スルホン化して得られる。この際にジビニルベンゼンなどの架橋剤が併用されることもある。
スルホン化されたスチレン単位は、下記式にて示され、その分子量は184である。
Figure 2009170350
固体高分子電解質型燃料電池の出力増大を図る上では、前述したように、隔膜のメタノール透過抵抗、プロトン伝導性および膜強度の向上が要望される。
これらのうち、特にプロトン伝導性を向上するためには、隔膜のイオン交換容量を増大することが有効と考えられる。したがって、隔膜中における単位重量当たりのイオン交換基(SOH)の含有率を増加させることが検討されるべきである。しかし、上記のようなスルホン化スチレン単位は、比較的嵩高いベンゼン環を含むため、イオン交換基(SOH)一つあたりのスルホン化スチレン単位の分子量が184であり、単位重量あたりのイオン交換基(SOH)の含有率を増加させるには、限界がある。
このため、イオン交換基(SOH)一つあたりの分子量がより小さい構造単位からなる重合体により燃料電池用隔膜を構成することが提案されている(特許文献3参照)。このような構造単位を形成する単量体としては、特許文献3に記載のように、ビニルスルホン酸(CH=CH(SOH)、分子量108)が知られている。
しかし、ビニルスルホン酸単体では、燃料電池用隔膜の基材として用いられる多孔質フィルムへの濡れ性が悪く、充分な量のビニルスルホン酸を多孔質フィルムに含浸できない。燃料電池用隔膜の基材として用いられる多孔質フィルムは、多くの場合、水やメタノール等に溶解や膨潤しない疎水性のポリオレフィン系のフィルムである。一方、ビニルスルホン酸は親水性化合物であるため、疎水性多孔質フィルム表面に対するビニルスルホン酸の濡れ性が悪く、多孔質フィルムへの含浸は困難である。
このため、特許文献3では、ビニルスルホン酸をトリアリルイソシアヌレートと混合した溶液を用いて、疎水性多孔質フィルムへの含浸を行っている。トリアリルイソシアヌレートと混合することでビニルスルホン酸の親水性が緩和されるため、疎水性多孔質フィルムに対するビニルスルホン酸の含浸性が向上する。このトリアリルイソシアヌレートは、架橋剤としても作用し、ビニルスルホン酸の重合時または重合後に架橋反応を起こし、陽イオン交換樹脂であるポリビニルスルホン酸架橋物を生成する。
ビニルスルホン酸とトリアリルイソシアヌレートとの混合溶液を用いる場合であっても、ビニルスルホン酸の濃度が高すぎる場合には、ビニルスルホン酸の親水性が充分に緩和されずに、疎水性多孔質フィルムに対するビニルスルホン酸の含浸性は改善されない。このため、特許文献3では、ビニルスルホン酸とトリアリルイソシアヌレートとの混合重量比を、40/60〜70/30とする旨が記載されている。したがって、かかる混合溶液を重合してなるポリビニルスルホン酸架橋物には、30重量%以上のトリアリルイソシアヌレート由来の架橋構造が含まれることになる。トリアリルイソシアヌレート由来の架橋構造にはイオン交換基(SOH)が含まれていないため、単位重量あたりのイオン交換基(SOH)の含有率を増加させるには、やはり限界がある。
一方、トリアリルイソシアヌレートの配合量を低下し、ビニルスルホン酸の濃度を高くした場合には、前述のように、ビニルスルホン酸の親水性が充分に緩和されずに、疎水性多孔質フィルムに対する含浸性は改善されない。この状態でビニルスルホン酸の重合を行うと、疎水性多孔質フィルム表面にのみポリビニルスルホン酸が生成する。すなわち、疎水性多孔質フィルム表面に固体高分子電解質膜が形成された多層フィルムが形成されることになる。このような多層フィルムでは、燃料電池用隔膜としては使用できない。
特開平5−306345公報 特開2005−5171公報 特開2007−194019公報
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、陽イオン交換容量の向上した陽イオン交換膜を得るために、疎水性多孔質フィルムへのビニルスルホン酸の含浸量を増加させることを目的としている。
疎水性多孔質フィルムに充分な量のビニルスルホン酸を含浸し、これを重合することにより、単位重量当たりのイオン交換基(SOH)の含有率が高く、陽イオン交換容量の優れた陽イオン交換膜が得られる。
かかる課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
即ち、第一の発明は、疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸と溶解度パラメータが9〜17の溶剤とを含む予備含浸液を含浸させ、その後、
得られた疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液をさらに含浸させ、次いで、
疎水性多孔質フィルムに含浸させたビニルスルホン酸を重合する工程を含む陽イオン交換膜の製造方法である。
また、第一の発明において、前記予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を順次高濃度化し、最終的に、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液を疎水性多孔質フィルムに含浸させることが好ましい。
さらに、第一の発明において、前記予備含浸液および含浸液が、架橋剤を含有することが好ましく、中でも、前記架橋剤が、分子内に少なくとも二つのC=C二重結合と、N−C=O結合を有する液状架橋剤であることが好ましく、特に、トリアリルイソシアヌレートであることが好ましい。
第二の発明は、疎水性多孔質フィルムの空隙部に、ポリビニルスルホン酸よりなる陽イオン交換樹脂が充填されてなる陽イオン交換膜であって、該陽イオン交換膜のイオン交換容量の値を該疎水性多孔質フィルムの空隙率で除した値が6.4〜9.3ミリモル/g−乾燥樹脂である、陽イオン交換膜である。
また、第二の発明において、前記陽イオン交換樹脂が、架橋剤により架橋されてなる陽イオン交換膜であることが好ましく、さらに、前記架橋剤が、分子内に少なくとも二つのC=C二重結合と、N−C=O結合を有する液状架橋剤であることが好ましく、特に、トリアリルイソシアヌレートである陽イオン交換膜であることが好ましい。
さらに、第三の発明は、第二の発明の陽イオン交換膜を使用した燃料電池である。
本発明によれば、イオン交換容量の優れた陽イオン交換膜が提供される。かかる陽イオン交換膜を燃料電池用隔膜として用いることにより、プロトン伝導性が向上され、電池出力の増大が達成される。
また、本発明の陽イオン交換膜は、湿度が低下してもプロトン伝導性の低下が少ないことが一要因として考えられるが、該陽イオン交換膜を隔膜として使用した燃料電池は、低湿度下において高い電池出力を維持できるという予期されなかった効果も奏される。
以下、本発明について、その最良の形態を含めてさらに詳細に説明する。
本発明においては、疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸と所定の溶剤とを含む低濃度の予備含浸液を含浸させ、その後、
予備含浸された疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない高濃度の含浸液(以下「最終含浸液」ともいう)をさらに含浸させ、次いで、
疎水性多孔質フィルムに含浸させたビニルスルホン酸を重合し、陽イオン交換膜を得る。
疎水性多孔質フィルムは、例えば、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の、水や液体燃料に実質的に膨潤、溶解することのない、疎水性のポリマーからなり、三次元網目構造を有する通流体性の多孔質フィルムである。
疎水性多孔質フィルムの材質としては、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、又はそれらの混合物でも構わないが、その製造が容易であるばかりでなく後述する陽イオン交換樹脂との密着強度が高いという観点から、熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂等が例示される。これらのなかでも特に、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、イオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂が特に好ましく、ポリエチレン樹脂が最も好ましい。
さらに後述の平均孔径を有すものの入手が容易で、かつ強度に優れる点でポリオレフィン樹脂製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン樹脂製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。このような多孔質フィルムは、例えば特開平9−216964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
多孔質フィルムの厚みは、好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは7〜150μmである。また多孔質フィルムが有する孔の平均径は、陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、一般には0.005〜5.0μmであることが好適であり、0.01〜1.0μmであることがより好ましく、0.015〜0.4μmであることが最も好ましい。多孔質フィルムの平均孔径は、ASTM−F316−86に準拠し、ハーフドライ法にて測定することができる。また、多孔質フィルムの空隙率は、陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、20〜95%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましく、30〜65%であることが最も好ましい。なお、この空隙率は、以下のようにして求めることができる。
疎水性多孔質フィルムを適当な大きさに切り取り、厚みと面積から見かけの体積(Vcm)を求め、その重量(Ug)を測定する。多孔質フィルムの基材の密度G(g/cm)は公知の場合はその値を使えばよいが、不明な場合は、気体置換法による密度計(例えば、島津製作所製の乾式自動密度計;商品名アキュピック1330等)を用いて測定することもできる。そして、これら値から空隙率は下記の式より計算される。
空隙率=[(V−U/G)/V]×100[%]
さらに好ましい多孔質フィルムは、厚み25μm換算透気度が50〜1000秒/100cc、好ましくは200〜900秒/100ccの、通気性多孔質フィルムである。また、該多孔質フィルムの吸水率は極めて小さく、好ましくは吸水率0.1%以下の疎水性である。吸水率が小さいため、固体高分子型燃料電池や直接液体燃料電池内で、電解質膜が含水−乾燥を繰り返すことによる微小な空隙を形成しにくく、したがって水素や液体燃料が透過しやすくなるのを抑制する効果があると考えられるからである。含浸後、重合して得られるポリビニルスルホン酸の含水膨張を抑えるために、多孔質フィルムを構成するポリマーの重量平均分子量は25万以上であり、二軸方向に3×3〜10×10倍、好ましくは5×5〜10×10倍延伸処理がなされた強度や弾性率の高い多孔質フィルムであることが好ましい。
本発明では、まず、上記疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸と特定の溶剤を含む予備含浸液を含浸させる。
予備含浸液は、ビニルスルホン酸(CH=CH(SOH)、分子量108)と溶剤とからなり、所望により架橋剤、ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
溶剤としては、溶解度パラメータが9〜17、好ましくは11〜16、さらに好ましくは11.5〜15の溶剤が用いられる。なお、溶解度パラメータについては、文献(日本接着協会編「接着ハンドブック(第2版)」)に詳しく記載されている。
かかる溶剤の具体例としては、溶解度パラメータが、16.7の酢酸アミド、15.7のエチレングリコール、15.5のエタノールアミン、14.5のメタノール、14.5のフェノール、12.8のγ―ブチロラクトン、12.7のエタノール、11.9のアセトニトリル、11.5のイソプパノール、10.0のアセトン、9.9のテトラヒドロフラン、9.3のメチルエチルケトン等が挙げられる。中でも、価格や取り扱いの容易さなどから、上記溶解度パラメータを満足するアルコールを使用することが好ましい。具体的には、イソプロパノール、メタノール、またはエタノールが好ましく、エタノール、またはメタノールがより好ましく、メタノールが最も好ましい。これらの溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を組み合わせて使用する場合には、混合溶剤の溶解度パラメータが上記範囲であればよく、その際には、単独での溶解度パラメータが上記範囲にない溶剤が含まれていても良い。
溶解度パラメータが17を超える溶剤では、ビニルスルホン酸との親和性が高すぎたり、蒸気圧が高すぎたりして、重合後のポリビニルスルホン酸中に溶剤が残留することが懸念される。また、溶解度パラメータが9未満の溶剤では、ビニルスルホン酸との相溶性が低すぎるため、疎水性多孔質フィルムへのビニルスルホン酸の含浸が不均一になる等の不都合を招くおそれがある。
予備含浸液は架橋剤を含んでいてもよいが、かかる架橋剤は、分子内に少なくとも二つのC=C二重結合を有し、実質的に水に溶解しない液状架橋剤であり、好ましくはさらにN−C=O結合を有する液状架橋剤である。このような架橋剤としては、具体的にはトリアリルイソシアヌレートが使用可能である。
架橋剤を使用する場合、ビニルスルホン酸と架橋剤との重量比(ビニルスルホン酸/架橋剤)は好ましくは70/30を超える値である。架橋剤の量が多すぎると、ビニルスルホン酸と架橋剤とを重合して得られるポリビニルスルホン酸架橋物に、架橋剤由来の架橋構造が多量に含まれる。かかる架橋構造にはイオン交換基(SOH)が含まれていないため、単位重量あたりのイオン交換基(SOH)の含有率を充分に増加できない。また、架橋剤の量が多いと、膜強度およびメタノール透過抵抗は向上するものの、プロトン伝導性は低下する傾向がある。そのため、ビニルスルホン酸と架橋剤との重量比は、より好ましくは75/25〜100/0である。また、上記効果と得られる陽イオン交換膜の耐溶剤性等を考慮すると、ビニルスルホン酸と架橋剤との重量比は、さらに好ましくは75/25〜99/1、特に好ましくは85/15〜99/1である。なお、当然のことながら、本発明の方法は、含浸液におけるビニルスルホン酸と架橋剤との重量比が70/30以下であっても適用できる。
ビニルスルホン酸および架橋剤は、加熱あるいは高エネルギー線照射により重合する。使用可能な高エネルギー線として、例えば、プラズマ、紫外線、電子線、γ線等、公知の高エネルギー線が使用可能である。これらの高エネルギー線は、該疎水性多孔質フィルムを励起させ、反応開始点を生成させ、これとビニルスルホン酸および架橋剤が反応するため、ラジカル重合開始剤を使用しなくても、ビニルスルホン酸および架橋剤の重合体が形成される。しかしながら、加熱温度やエネルギー線量を低下し、均一な重合を短時間で行うために、予備含浸液は、ラジカル開始剤を含むことが好ましい。使用可能なラジカル重合開始剤として、公知のラジカル重合法の技術を使用することができる。具体例としては、熱開始重合、紫外線等の光開始重合等が挙げられる。熱開始重合のラジカル重合開始剤の具体例とし、一般的に熱開始重合に利用されている過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸エステル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。また、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩のようなアゾ系重合開始剤等が挙げられる。ラジカル系光重合開始剤の具体例としては、一般に紫外線重合に利用されている、ベンゾインエーテル系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、ベンジル、キノン、チオアクリドンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、ビニルスルホン酸および架橋剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部の必要最小限量で、かつ均一な含浸液の形成を阻害しない量であることが好ましい。
予備含浸液は、前記溶解度パラメータを満足する溶剤を含む限り特に制限されるものではないが、予備含浸液のビニルスルホン酸濃度は、好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは35〜80重量%である。なお、このビニルスルホン酸濃度は、予備含浸液中の濃度であり、予備含浸液が、溶剤とビニルスルホン酸からなる場合には、溶剤とビニルスルホン酸の合計を基準(100重量%)とする。架橋剤、ラジカル開始剤等を使用した場合には、溶剤、ビニルスルホン酸、架橋剤、およびラジカル開始剤の合計を基準(100重量%)とする。前記ビニルスルホン酸の濃度範囲は、下記のビニルスルホン酸が高濃度化された予備含浸液も含めた場合の値である。
また、本発明では、前記予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を順次高濃度化し、最終的に、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない高濃度の含浸液を疎水性多孔質フィルムに含浸させることが特に好ましい。この場合、予備含浸液に順次ビニルスルホン酸を投入してビニルスルホン酸濃度を高濃度化してもよく、またビニルスルホン酸濃度の異なる複数の予備含浸液を準備し、はじめに低濃度の予備含浸液を疎水性多孔質フィルムに含浸させた後に、該フィルムを取りだし、さらに高濃度の予備含浸液をフィルムに含浸させてもよい。
この場合、初期段階において使用する第1の予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を、好ましくは30〜55重量%、より好ましくは35〜50重量%とする。次の段階で使用する第2の予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を、第1の予備含浸液のビニルスルホン酸濃度よりも高い範囲で、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜80重量%とする。また、前記第1の予備含浸液の溶剤の濃度を、好ましくは35〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%とする。さらに、第2の予備含浸液の溶剤の濃度を、第1の予備含浸液の溶剤濃度よりも低い範囲で、好ましくは10重量%〜40重量%、より好ましくは15重量%〜25重量%とする。なお、第1予備含浸液、および第2予備含浸液において、ビニルスルホン酸と溶剤との合計が100重量%とならない場合には、架橋剤、またはラジカル重合開始剤が含まれるものである。なお、予備含浸は、3段階以上の高濃度化工程を含むものであってもよい。
また、本発明において、予備含浸液の液組成は、溶剤を除いては、最終段階で使用される含浸液(最終含浸液)の組成と同一であることが特に好ましい。すなわち、最終含浸液が前記架橋剤、ラジカル重合開始剤等を含むものである場合には、予備含浸液は、該含浸液を、前記溶解度パラメータを満足する溶剤で希釈したものであることが好ましい。こうすることにより、予備含浸液と最終含浸液におけるビニルスルホン酸と、架橋剤およびラジカル重合開始剤との重量比を同じにすることができる。その結果、疎水性多孔質フィルムの各空隙に充填されるビニルスルホン酸、架橋剤およびラジカル重合開始剤の重量比にバラツキが少なくなり、ほぼ同じ構造の陽イオン交換樹脂が充填された陽イオン交換膜が得られるものと考えられる。
なお、本発明においては、前記の予備含浸の工程に先立って、疎水性多孔質フィルムに溶解度パラメータが9〜17の溶剤のみを含浸させることもできる。予め、疎水性多孔質フィルムを前記溶剤で十分に濡らせておくことによって、次の予備含浸の工程が歩留まりよく行える場合もある。その場合、予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を比較的高く設定できる場合があり、工程を簡略化することもできる。
上記の予備含浸の後、疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液(最終含浸液)を含浸させる。以下、この工程を「最終含浸」と記載することがある。なお、ここで「実質的に溶剤を含まない」とは、最終含浸液に含まれる溶剤量が1000ppm未満であることを意味する。
最終含浸液には、前記予備含浸液と同様に架橋剤、重合開始剤が含まれていてもよい。ここで、架橋剤および重合開始剤の具体例、使用量は前記予備含浸液にて説明したものと同様である。また最終含浸液におけるビニルスルホン酸濃度は、好ましくは70重量%を超える濃度であり、より好ましくは70重量%を超え99.9重量%以下、さらに好ましくは73〜99重量%、特に好ましくは85〜99重量%である。なお、このビニルスルホン酸濃度は、最終含浸液中の濃度であり、該最終含浸液が架橋剤、およびラジカル重合開始剤を含む場合には、ビニルスルホン酸、架橋剤、およびラジカル重合開始剤との合計を基準(100重量%)とする。
予備含浸および最終含浸における条件は、含浸液が疎水性多孔質フィルムに含浸されるのに充分な温度、時間であれば特に限定はされない。含浸する際の温度は0〜35℃、好ましくは10〜30℃程度であり、また含浸時間についても一般的には数分〜数時間程度で充分な場合が多い。なお、最終含浸においては、多孔質フィルム中の溶剤がほぼ完全に抜け出し、樹脂成分のみで完全に置換されることが好ましいため、場合によっては12時間以上、好ましくは1日以上浸漬し続けてもよい。また、その時に、最終含浸液への置換がすばやく、完全に行われるように、含浸液を攪拌したり、新液に何度も浸漬したり、含浸液を脱気処理したり、フィルムを含浸中に減圧処理したりする方法も採り入れることができる。
以上、疎水性多孔質フィルムを含浸液に浸漬する態様について説明したが、本発明では、疎水性多孔質フィルムを固定しておいて、含浸液の組成を順次変更して、含浸を行う態様も好適に採用できる。すなわち、疎水性多孔質フィルムを隔膜として一方の部屋に含浸液を満たし、疎水性多孔質フィルムを通してもう一方の部屋に含浸液を浸透させる態様である。この態様では、含浸液を加圧したり、吸引したりすることもできるので、少量の含浸液を使って短時間に処理できるというメリットがある。この本態様では、最初の含浸液の組成は、少なくとも疎水性多孔質フィルムを均一に濡らすことのできる組成であればよく、溶媒単独であってもよいし、前述した予備含浸液の組成であってもよい。多孔質フィルムが均一に濡れた後は、順次含浸液中のビニルスルホン酸の濃度を最終含浸液の組成に近づけていけばよい。
上記のような予備含浸および最終含浸を経ることで、疎水性多孔質フィルム中に充分な量のビニルスルホン酸が含浸される。
本発明において、得られる陽イオン交換膜におけるビニルスルホン酸の含浸量は、使用する疎水性多孔質フィルムの空隙率にもよるので一概には言えないが、フィルムの空隙部分のほぼ100%がビニルスルホン酸の重合体を主体とする緻密な樹脂成分で占められる量となることが望ましい。陽イオン交換膜に空隙部が残留すると、気孔やピンホールを含んでいることになり、溶媒やイオン、ガスなどを分離又は隔離するイオン交換膜の機能が損なわれる恐れがある。一方、スルホン酸系のイオン交換膜は、通常、水分を吸収し膨張するので、若干の空隙や低密度の箇所は塞がれると考えられる。そのため、疎水性多孔質フィルムに、より緻密にポリビニルスルホン酸を充填するためには、重合させる前のビニルスルホン酸中の水分量をできるだけ低減させておくことが好ましい。
下記の実施例で詳細に説明するが、本発明の方法によれば、得られる陽イオン交換膜の陽イオン交換容量の値を、ビニルスルホン酸を含浸させる前の疎水性多孔質フィルムの空隙率で除した値が、該陽イオン交換膜の製造時におけるビニルスルホン酸の重合条件と同じ条件において、最終含浸液を重合して得られる陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量の値とほぼ同じ値となる。このことは、本発明の方法によれば、疎水性多孔質フィルムの空隙部分のほぼ100%がビニルスルホン酸の重合体を主体とする緻密な樹脂成分で占められていることを示す。
なお、「空隙率で除した」とは、疎水性多孔質フィルムの空隙率が30%である場合には、陽イオン交換膜の陽イオン交換容量の値を0.3で除したことを指す。また、陽イオン交換膜の製造時におけるビニルスルホン酸の重合条件と同じ条件において、最終含浸液を重合するとは、具体的には、最終含浸液を、下記に詳述する疎水性多孔質フィルムに充填させたビニルスルホン酸を重合させる際の雰囲気、温度、および時間等を同じにして重合することを指す。
最終含浸後の疎水性多孔質フィルム中における含浸液の組成(すなわちビニルスルホン酸および架橋剤等の濃度)は、最終含浸液の組成にほぼ等しい。一方、予備含浸を経ることなく、直接最終含浸液に疎水性多孔質フィルムを浸漬しても、ビニルスルホン酸は含浸されない。フィルム中へのビニルスルホン酸の含浸の程度は、重合後のフィルムの透明性から確認できる。含浸が不充分なフィルムでは、重合後のフィルムが白化し透明性は低い。一方、ビニルスルホン酸が均一かつ充分に含浸されると、ビニルスルホン酸の重合後のフィルムは、高い透明性を示す。
疎水性多孔質フィルムに含浸されたビニルスルホン酸の重合は、上記したように、加熱あるいは高エネルギー線照射により行われる。含浸液に架橋剤が含まれる場合には、ビニルスルホン酸の重合と同時に、またはその後に、架橋反応が起こり、架橋されたポリビニルスルホン酸が得られる。加熱により重合を行う場合、使用する重合開始剤の種類にもよるので一概には述べられないが、一般的な加熱温度は40〜100℃程度であり、加熱時間は1〜10時間程度である。また、高エネルギー線照射により重合を行う場合、エネルギー線照射量は10〜200(単位:mJ/cm)程度とする。重合時には、含浸後の多孔質フィルムをポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温あるいはエネルギー線照射する方法が好ましい。こうした重合条件は、関与する重合開始剤の種類等によって左右されるものであり、特に限定されるものではなく適宜選択すれば良い。
重合工程後、必要に応じ洗浄して本発明の陽イオン交換膜が得られる。上記のような予備含浸工程を経ることで、疎水性多孔質フィルムに充分な量のビニルスルホン酸が含浸され、これを重合することにより、単位重量当たりのイオン交換基(SOH)の含有率が高く、陽イオン交換容量の優れた陽イオン交換膜が得られる。得られる陽イオン交換膜の膜厚は、基材として使用した疎水性多孔質フィルムの膜厚にほぼ等しい。
本発明の陽イオン交換膜は、疎水性多孔質フィルムの空隙部に、ポリビニルスルホン酸よりなる陽イオン交換樹脂が充填されてなる。そして、陽イオン交換膜の陽イオン交換容量の値を疎水性多孔質フィルムの空隙率で除した値が、6.4〜9.3ミリモル/g−乾燥樹脂、好ましくは6.7〜9.0ミリモル/g−乾燥樹脂、より好ましくは6.9〜9.0ミリモル/g−乾燥樹脂、さらに好ましくは7.2〜9.0ミリモル/g−乾燥樹脂となる。この値によって、疎水性多孔質フィルムのすべての空隙部に、ポリビニルスルホン酸が充填されていると仮定した場合の、ポリビニルスルホン酸の陽イオン交換容量を見積もることができる。疎水性多孔質フィルム自体はイオン交換能を有しないため、陽イオン交換膜のイオン交換能はポリビニルスルホン酸に由来する。したがって、該陽イオン交換膜のイオン交換容量の値を、該疎水性多孔質フィルムの空隙率で除した値によって、イオン交換能を有するポリビニルスルホン酸の陽イオン交換容量を見積もることができる。以下、この値を「樹脂の見掛けイオン交換容量」とする場合もある。
本発明の陽イオン交換膜は、前記樹脂の見掛けイオン交換容量が、最終含浸液のみを前記の重合工程と同じ条件で重合して得られる陽イオン交換樹脂のイオン交換容量とほぼ同じ値となる。そのため、本発明の陽イオン交換膜は、疎水性多孔質フィルムの空隙のほぼ100%がビニルスルホン酸を主体とする緻密な樹脂成分で占められていると考えられる。さらに、この結果より、「樹脂の見掛けイオン交換容量」は、疎水性多孔質フィルムの空隙に充填された陽イオン交換樹脂のイオン交換容量と等しいものと考えられる。
多孔質フィルム中に充填された陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量、特に、架橋した陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量を直接測定することは困難である。しかしながら、上記のように「樹脂の見掛けイオン交換容量」を算出することで、多孔質フィルムに充填された、陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量を見積もることができる。
ビニルスルホン酸含有率の高い重合性単量体組成物を重合することにより、ビニルスルホン酸の割合が70重量%を超え、陽イオン交換容量が6.4ミリモル/g−乾燥樹脂以上の陽イオン交換樹脂自体は従来から合成も可能であった。しかしながら、疎水性多孔質フィルムに該樹脂が充填された陽イオン交換膜は製造することはできなかった。その理由の一つは、前述したように、親水性の高いビニルスルホン酸を疎水性の高い多孔質フィルム中に含浸させることが困難であったためである。本発明では、特定の溶剤を用いた新規の含浸重合方法を考案したことによって、初めて、「樹脂の見掛けイオン交換容量」が6.4ミリモル/g−乾燥樹脂以上となる陽イオン交換膜を得ることができた。つまり、本発明によって、初めて、6.4ミリモル/g−乾燥樹脂以上の高イオン交換容量の陽イオン交換樹脂を導入した陽イオン交換膜を得ることができた。
さらに、本発明によれば、以下の問題点も解消することができた。即ち、ビニルスルホン酸が70重量%を超えるような陽イオン交換樹脂は、架橋剤と共に重合させても重合体が極めて脆いという問題があった。特に、水に浸漬するなどして樹脂中の含水率が変化した場合、含水率増加による樹脂の膨張によって樹脂が割れるという問題があった。本発明では、疎水性多孔質フィルムにビニルスルホン酸よりなる陽イオン交換樹脂(重合体)を充填することによって、上記のような問題点を回避することも可能となった。
本発明において、陽イオン交換膜に充填される陽イオン交換樹脂は、トリアリルイソシアヌレート等の架橋剤により架橋されていてもよい。樹脂の架橋度は、架橋剤の使用量に依存する。一般に架橋度が高いほど陽イオン交換樹脂のメタノール透過抵抗が高くなり、また架橋度が低いほどプロトン伝導性は向上する。したがって、メタノール透過抵抗とプロトン伝導性とのバランスを考慮の上、適宜架橋剤の使用量を設定する。
本発明によれば、単位重量あたりの陽イオン交換基(SOH)の含有率の大きな陽イオン交換樹脂が、疎水性多孔質フィルムに稠密に充填されてなる陽イオン交換膜が得られる。この陽イオン交換膜は、高いイオン交換容量を有する。したがって、かかる陽イオン交換膜を燃料電池用隔膜として用いることにより、プロトン伝導性が向上され、電池出力の増大が達成される。また、本発明の陽イオン交換膜は、前記陽イオン交換樹脂が稠密に充填されていることにより、湿度が低下してもプロトン伝導性の低下が少ないことが一要因として考えられるが、該陽イオン交換膜を隔膜として使用した燃料電池は、低湿度下において高い電池出力を維持できるという予期されなかった効果も奏される。
固体高分子電解質膜からなる燃料電池用隔膜では、膜中に含まれる水分によりプロトンの伝導パスが形成されると考えられている。したがって、電解質膜には保水性が要求されるが、乾燥環境下では電解質膜中の水分が失われるため、プロトン伝導性は大きく低下する。これに対し、本発明のイオン交換膜では、乾燥条件下でもプロトン伝導性の低下が少なくことが一要因であると考えられるが、湿度が低下しても電池出力の変化が少なく、適用範囲の拡大が期待される。
このように、イオン交換容量が高く、優れたプロトン伝導性を有する本発明の陽イオン交換膜は、特に燃料電池用隔膜として隔膜として好ましく用いられる。
本発明の陽イオン交換膜を用いた燃料電池用隔膜は、通常、その両面にガス拡散電極を接合させて用いられる。ガス拡散電極は、固体電解質型燃料電池に使用される公知のものを特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒の金属粒子及び導電剤が分散する電極触媒層からなり、このものは多孔性材料からなる電極基材により支持されている。
ここで、触媒としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に制限されるものではないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中で、触媒活性が優れている白金やルテニウムあるいは白金とルテニウムの合金が多くの場合用いられる。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、電極触媒層をシートとした状態で、通常、0.01〜10mg/cm、より好ましくは0.1〜5.0mg/cmである。触媒の含有量が0.01mg/cm未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cmを超えて担持させても性能は飽和する。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用しても良い。
導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
また、触媒電極層には、上記触媒、導電剤の他に、結着剤等が含まれていても良い。
上記結着剤としては、プロトン伝導性を担うカチオン交換基が導入された重合体が好ましく採用される。例えば、炭化水素系重合体としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック、スチレン系エラストマーなどの樹脂に公知の方法でスルホン酸基などのカチオン交換基を導入したものが挙げられる。また、フルオロカーボン系重合体も好適に採用され、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(デュポン社製、商品名;ナフィオン分散溶液)なども好適に採用される。上記のカチオン交換基が導入された重合体は、一般的には架橋構造を含まず、水やアルコールなどの溶媒に溶解もしくは分散するものが好ましい。
さらに上記結着剤としては、各種熱可塑性重合体も好適に採用される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。上記結着剤の含有量は、上記触媒電極層の5〜25重量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
これら成分からなる電極触媒層が支持される電極基材は、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは50〜300μmであることが、その空隙率は50〜90%であることが好ましい。
上記電極基材に対して前記電極触媒層は、その空隙内及び陽イオン交換膜との接合側表面に5〜50μmの厚みになるよう充填及び付着され、ガス拡散電極が形成される。その製造方法は、前記各成分と有機溶媒とが混合された電極触媒層ペーストを電極基材に塗布して乾燥させる方法によるのが一般的である。また、上記電極触媒層ペーストには、触媒坦持量の調整や電極触媒層の膜厚を調整するため、暫時前記有機溶媒と同様の有機溶媒を添加して粘度調整を行なうのが一般的である。
陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体を製造する際の熱圧着は、加圧、加温できる装置を用いて実施される。一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用するガス拡散電極の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして熱圧着された陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質用燃料電池に装着されて使用される。
(実施例)
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示す陽イオン交換容量、プロトン伝導性は、以下の方法により測定した値を示す。
1)樹脂の陽イオン交換容量の測定
最終含浸液を重合して得られる陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量を下記の方法で測定した。なお、ここで測定されている樹脂とは、多孔質フィルムに充填されているものではなく、実質的に架橋陽イオン交換樹脂のみからなる膜状物である。
実施例において使用した最終含浸液を分取し、100μmのスペーサーを挿入した2枚のポリエステルフィルムで挟んで、陽イオン交換膜と同じ重合条件で重合した。得られた膜状物(イオン交換樹脂)を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(水素イオン量を“A”molとする)。なお、上記の工程で膜状物はいくつかの破片に壊れた場合もあったが、そのまま測定を行った。次に、前記の膜状物をろ過して取り出し、1mol/L−HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後、膜状物を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに前記膜状物を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、陽イオン交換容量および含水率を次式により求めた。
樹脂の陽イオン交換容量=A×1000/D[mmol/g(乾燥重量)]
含水率=100×(W−D)/D[%]
2)陽イオン交換膜の陽イオン交換容量の測定
実施例および比較例で得られた陽イオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後、膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、陽イオン交換膜のイオン交換容量および含水率を次式により求めた。
陽イオン交換膜のイオン交換容量=A×1000/D[mmol/g(乾燥重量)]
含水率=100×(W−D)/D[%]
また、陽イオン交換膜の製造に使用した疎水性多孔質フィルムの空隙率(P)と、イオン交換容量とから、次式により、「樹脂の見掛けイオン交換容量」を求めた。
樹脂の見掛けイオン交換容量=陽イオン交換膜のイオン交換容量/P
3)膜抵抗(プロトン伝導性)
線幅0.3mm、長さ2cm以上の白金線5本を互いに離して平行に配置した絶縁基板を用い、前記白金線に40℃の純水に湿潤した2.0cm幅の短冊状のイオン交換膜を押し当て測定用試料を調製した。この試料を40℃、90%RHの恒温恒湿槽中に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスを測定した。白金線間距離を0.5〜2.0cmに変化させたときのそれぞれの交流インピーダンスを測定した。
白金線とイオン交換膜との間には接触による抵抗が生じるが、白金線間距離と抵抗の勾配からイオン交換膜の比抵抗を算出することでこの影響を除外した。白金線間距離と抵抗測定値との間には良い直線関係が得られた。抵抗勾配と膜厚から下式により、40℃湿潤状態での膜抵抗を算出した。
R=2.0×L×S
R :膜抵抗[Ω・cm
L :膜厚[cm]
S :抵抗極間勾配[Ω/cm]
また、膜抵抗の逆数をプロトン伝導性として表記した。
σ=1/R
σ :プロトン伝導性[S・cm−2
(実施例1)
まず、ビニルスルホン酸90重量部、架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート10重量部、重合開始剤として水溶性アゾ重合開始剤(和光純薬工業株式会社製VA−086;2,2’−Azobis[2−methyl−N−(2−hydroxyethyl)propionamide])1.4重量部をよく混合し、最終含浸液を調製した。なお、この最終含浸液に含まれる溶剤量は1000ppm未満であった。次に、上記最終含浸液の一部を計り取り、溶剤としてメタノール(溶解度パラメータ:14.5)を用いて50重量%希釈液を調製し、第1の予備含浸液とした。また、最終含浸液を80重量%含む、第2の予備含浸液も準備した。
ポリエチレン製の疎水性多孔質フィルム(膜厚:25μm、平均孔径:0.03μm、空隙率:36%)を準備し、10cm角に切り出した。
前記疎水性多孔質フィルムを第1の予備含浸液に、室温(25℃)で1時間、浸漬した。白色だったフィルムは、浸漬後、全面が均一な透明フィルムになり、予備含浸液が多孔質フィルムに均一に含浸されたことがわかった。前記のフィルムを乾燥させることなく、第2の予備含浸液に浸漬し、1時間ゆっくりと液を撹拌し続けた。続いて、第2の予備含浸液から取り出したフィルムを最終含浸液に浸漬し、1時間ゆっくりと液を撹拌し続けた。
含浸後のフィルムを取り出し、余分な含浸液を拭き取った後、ポリエステルフィルムを用いて前記フィルム両側から挟みこんで、43℃で3.5時間、加熱重合させ、多孔質フィルムの空隙部分に陽イオン交換樹脂を充填させた陽イオン交換膜を得た。上記で得られた陽イオン交換膜は、全面が均一な透明フィルムであり、膜中に気泡等は全く見られなかった。
一方、最終含浸液の一部を分取し、100μmのスペーサーを挿入した2枚のポリエステルフィルムに挟んで、上記と同じ重合条件(43℃、3.5時間 加熱重合)で重合させ、陽イオン交換樹脂成分のみからなる膜状物を得た。
得られた陽イオン交換膜およびイオン交換樹脂の膜状物の物性を測定し、その結果を表1にまとめた。
(比較例1)
予備含浸を行わず、疎水性多孔質フィルムを最終含浸液に直接浸漬した。しかし、含浸液の含浸性が悪く、まだら模様のフィルムしか得られなかった。したがって、全面に均一に陽イオン交換樹脂が導入された、陽イオン交換膜は作製できなかった。
(実施例2〜3)
最終含浸液の組成を、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。なお、これら最終含浸液に含まれる溶剤量は1000ppm未満であった。
Figure 2009170350
以上の結果から、これら実施例においては、陽イオン交換膜における「樹脂の見掛けイオン交換容量」が、陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量(実測値)の値とほぼ等しいことが分かった。このことから、実施例により得られた陽イオン交換膜は、疎水性多孔質フィルムの空隙部分に、ポリビニルスルホン酸よりなる陽イオン交換樹脂がほぼ100%充填されているものと考えられる。また、その結果、これら陽イオン交換膜中に充填されている陽イオン交換樹脂の陽イオン交換容量は、「樹脂の見掛けイオン交換容量」とほぼ等しいと考えられる。
(実施例4〜7)
溶剤に、溶解度パラメータの異なる溶剤を用いた以外は実施例1と同様にイオン交換膜を作製し,評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2009170350
(比較例2)
溶剤として、メタノールの代わりに、水(溶解度パラメータ:23.2)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。しかしながら、第1の予備含浸液に多孔質フィルムを浸漬した段階でフィルムに含浸液が全く浸透しなかったため、イオン交換膜は作製できなかった。
(比較例3、4)
溶剤として、n−ヘキサン(溶解度パラメータ:7.3)またはトルエン(溶解度パラメータ:8.9)を用いた以外は実施例1と同様に予備含浸液を調製したが、両溶媒とも第1の予備含浸液が不均質なものとなった(撹拌後しばらく静置すると、溶剤とビニルスルホン酸が相分離した)。したがって、第1の予備含浸液に多孔質フィルムを浸漬しても、全面が透明で均一なフィルムは得られなかった。
(比較例5)
スチレン90重量部、ジビニルベンゼン10重量部(架橋剤)、t−ブチルパーオキシエチルネキサノエート5重量部(重合開始剤)からなる重合性単量体組成物を調製した。上記重合性単量体組成物に、実施例1と同じ疎水性多孔質フィルムを室温(25℃)で1時間、浸漬した。白色だったフィルムは、浸漬後、全面が均一な透明フィルムになり、単量体組成物が多孔質フィルムに均一に含浸されたことがわかった。本比較例においては、スチレン、ジビニルベンゼン共に疎水性のため、疎水性多孔質フィルムとは馴染みが良く、溶剤を用いることなく多孔質フィルムに重合性単量体を含浸できた。
続いて、上記の含浸多孔質フィルムを単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として含浸多孔質フィルムの両側から挟み込んで、3kg/cmの窒素加圧下、80℃ で5時間加熱重合した。
得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1の混合物中に40℃で45分間浸漬し、次いで0.5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液に10時間浸漬した。その後、0.5mol/L−塩酸水溶液に10時間以上浸漬してスルホン酸基対イオンを水素イオンにイオン交換してスルホン酸型陽イオン交換膜を得た。
一方、上記の重合性単量体組成物のみを100μmのスペーサーを挿入した2枚のポリエステルフィルムに挟んで、上記と同じ重合条件で重合させ、樹脂成分のみからなる膜状物を得た。次に、前述のように、スルホン化処理を行ってスルホン酸型陽イオン交換樹脂を得た。
なお、上記で原料に用いたスチレンは、スルホン化によって最終的にはスチレンスルホン酸に変化する。したがって、スチレンスルホン酸/ジビニルベンゼンの重量比は、理論的には94.1/5.9に変化している。
上記で得られたスルホン酸型陽イオン交換膜とスルホン酸型陽イオン交換樹脂の物性を測定したところ、イオン交換容量は、樹脂が5.1mmol/g、膜が2.2mmol/g、含水率は、樹脂が65%、膜が26%、プロトン伝導性は、膜が21S・cm−2であった。なお、「樹脂の見掛けイオン交換容量」は、6.1mmol/gであった。本例のように、イオン交換基を有さない重合体を充填した後にイオン交換基を導入する場合には、多孔質膜の空隙を大きくするようにしてイオン交換基が導入されるためイオン交換膜中のイオン交換樹脂の体積占有率が大きくなり、「樹脂の見かけイオン交換容量」はイオン交換基を有す単量体から合成したイオン交換膜に比べて大きくなるのが通常である。
従来良く知られているスチレンスルホン酸系のイオン交換膜においては、特に溶剤を用いることなくイオン交換膜を作製でき、プロトン導電性に関してもある範囲においてはそれほど遜色ないものであった。ただし、スチレン系イオン交換樹脂のイオン交換容量は、本発明のイオン交換樹脂の6.4ミリモル/g−乾燥樹脂には、及ばなかった。
なお、上記のスチレンスルホン酸系イオン交換膜を用いて、以下の比較例6において燃料電池の特性を評価した。
(実施例9、比較例6)
実施例1と比較例5で得られた陽イオン交換膜を用いて、燃料電池を組んで、その特性を評価した。なお、実施例1と比較例5で得られたイオン交換膜のプロトン伝導性は、それぞれ28S・cm−2、21S・cm−2であり、ほぼ等しかった。実施例1で得られた陽イオン交換膜を使用したものを実施例9とし、比較例5で得られた陽イオン交換膜を使用したものを比較例6とした。
ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、白金とルテニウム合金触媒( ルテニウム50mol% )50 重量% 担持のカーボンブラックと、パーフルオロカーボンスルホン酸のアルコールと水の5%溶液(デュポン社製、商品名;ナフィオン分散溶液)を混合したものを触媒が2mg/cmとなるように塗布し、80℃で4 時間減圧乾燥しガス拡散電極とした。次に、測定する陽イオン交換膜の両面に上記のガス拡散電極をセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。これを図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んで燃料電池のセル温度を25℃に設定し、燃料室側に10重量%メタノール水溶液を3ml/min、酸化剤室側に大気圧の空気を200ml/minで供給して発電試験を行なった。具体的には、燃料電池の電流―電圧特性を測定し、最大出力の値を求めた。なお、上記の発電試験を行う際、酸化剤室側に流す空気の加湿条件を変えて実施した(相対湿度50%と90%)。結果を表3に示す。
Figure 2009170350
以上の結果から、高湿度下においては大きな差は見られなかったが、相対湿度50%の場合には燃料電池出力に3割程度の差があることがわかった。
上記のような本発明のイオン交換膜の性能を考察すると、本発明の陽イオン交換膜は、単位体積あたりのイオン交換基(ここではスルホン酸)の濃度が高い。つまり、イオン交換容量が高い故に、低湿度下においてもイオン伝導性が低下し難いのではないかと推測される。「樹脂の見掛けイオン交換容量」が6.4〜9.3ミリモル/g−乾燥樹脂である本発明の陽イオン交換膜、すなわち、疎水性多孔質フィルムに、陽イオン交換容量が高いポリビニルスルホン酸からなる陽イオン交換樹脂が充填されてなる本発明の陽イオン交換膜は、燃料電池用隔膜として極めて優れた性能を示すことがわかった。
固体高分子型燃料電池の基本構造を示す概念図である。
符号の説明
1;電池隔膜
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側触媒電極層
5;酸化剤室側触媒電極層
6;固体高分子電解質(陽イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (10)

  1. 疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸と溶解度パラメータが9〜17の溶剤とを含む予備含浸液を含浸させ、その後、
    得られた疎水性多孔質フィルムに、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液をさらに含浸させ、次いで、
    疎水性多孔質フィルムに含浸させたビニルスルホン酸を重合する工程を含む陽イオン交換膜の製造方法。
  2. 前記予備含浸液のビニルスルホン酸濃度を順次高濃度化し、最終的に、ビニルスルホン酸を含みかつ実質的に溶剤を含まない含浸液を疎水性多孔質フィルムに含浸させる請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記予備含浸液および含浸液が、架橋剤を含有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記架橋剤が、分子内に少なくとも二つのC=C二重結合と、N−C=O結合を有する液状架橋剤である請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記架橋剤が、トリアリルイソシアヌレートである請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 疎水性多孔質フィルムの空隙部に、ポリビニルスルホン酸よりなる陽イオン交換樹脂が充填されてなる陽イオン交換膜であって、該陽イオン交換膜のイオン交換容量の値を該疎水性多孔質フィルムの空隙率で除した値が6.4〜9.3ミリモル/g−乾燥樹脂である陽イオン交換膜。
  7. 前記陽イオン交換樹脂が、架橋剤により架橋されてなる請求項6に記載の陽イオン交換膜。
  8. 前記架橋剤が、分子内に少なくとも二つのC=C二重結合と、N−C=O結合を有する液状架橋剤である請求項7に記載の陽イオン交換膜。
  9. 前記架橋剤が、トリアリルイソシアヌレートである請求項7または8に記載の陽イオン交換膜。
  10. 請求項6〜9の何れかに記載の陽イオン交換膜を使用した燃料電池。
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