JP2009167503A - 微粒超硬合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度で抗折力のばらつきが小さく、も安定した高い硬さを有する微粒超硬合金を提供する。
【解決手段】WCの平均粒径は0.4μm以下であり、Co含有量は重量%で、5〜15%、Cr、V、Ta、Nbの1種以上を0.4〜1.5%含有し、残部がWC及び不可避不純物からなる微粒超硬合金であって、EPMA装置を用いた線分析により求めたCo最小濃度分散値をCRavとしたとき、CRav≧0.52であることを特徴とする微粒超硬合金である。
【選択図】図5
【解決手段】WCの平均粒径は0.4μm以下であり、Co含有量は重量%で、5〜15%、Cr、V、Ta、Nbの1種以上を0.4〜1.5%含有し、残部がWC及び不可避不純物からなる微粒超硬合金であって、EPMA装置を用いた線分析により求めたCo最小濃度分散値をCRavとしたとき、CRav≧0.52であることを特徴とする微粒超硬合金である。
【選択図】図5
Description
本願発明は、高強度で抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金に関する。
高強度で抗折力の改善を図ったWC基超硬合金を用いた切削工具が、特許文献1が開示されている。
本願発明の課題は、高強度で抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金を提供することである。
本願発明の微粒超硬合金は、WCの平均粒径は0.4μm以下であり、Co含有量は重量%で、5〜15%、Cr、V、Ta、Nbの1種以上を0.4〜1.5%含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり、かつ保磁力が40.0〜56.0kA/mのWC基超硬合金であって、EPMA装置を用いた線分析により求めたCo最小濃度分散値をCRavとしたとき、CRav≧0.52であることを特徴とする微粒超硬合金である。上記の構成を採用することにより、高強度で抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金を提供することができる。
抗折力のばらつきを改善した本願発明の微粒超硬合金を、例えば小径ドリル又はエンドミルなどの回転工具や高い硬さの要求されるパンチ材に採用することで、加工効率や加工精度を著しく向上させることが可能となり、産業上の利用において有益である。
本願発明の微粒超硬合金は、比較的均一な組織を有し、抗折力も高い微粒超硬合金を更にCoが細部まで均一に分散している状態を規定することによって、抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する超硬合金を実現できた。本願発明は、Coの分散分布状態を管理することにより、ばらつきの小さい抗折力と、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金の基準を設けたものである。従ってこれまでにない新しい発想によるものである。ここで、硬さの分布を測定した範囲は、縦100μm、横100μmである。
本願発明は、電子線マイクロアナライザ(以下、EPMAと記す。)により、微粒超硬合金組織の均一性の定量評価と抗折力のばらつきの程度について検討した結果、EPMA分析におけるCo量の少ない組織を定量化した値と、抗折力のばらつきには大きな相関関係があることを見出し、本願発明に至った。微粒超硬合金の強度はWC粗大粒子の数と存在位置に関係しており、従来、超硬合金における破壊の起点は、ほとんどの場合がWC粗大粒子であった。しかし、本願発明が対象とする微粒超硬合金は、抗折力試験を行なったとき、破壊の起点となるのはこのWC粗大粒子ではない。
本願発明の微粒超硬合金は、Co含有量が5〜15%である。Co含有量が5%未満では焼結時にCo量が十分でなく緻密な焼結体を得ることが困難であり、その結果、抗折力が著しく低下する。また15%を超えると十分な硬さを得ることができず、耐磨耗性が低下するため切削工具等として使用した場合に摩耗が著しく、早期に寿命となるなどの欠点が現れる。また、Coが15%を超えて多いいとヤング率が低いため、工具に適さない。Cr、V、Ta、Nbの1種以上を含有させことにより、これらの元素は焼結中におけるWCの粒成長を抑制することで組織を微細化し、超硬合金の強度を向上させることができる。また、これらの元素は粒成長抑制効果の他に別の効果を有する。即ち、Crの添加効果は耐食性の向上を、TaやNbの添加効果は、耐熱強度を高くする効果を有している。これらのCr、V、Ta、Nbの1種以上を、合計量で0.4〜1.5%含有するとしたのは、0.4%未満では上記の添加効果が現れないためである。また1.5%を超えて多く添加すると、強度低下の原因となる有害相が生成する不都合が生じるためである。WCの平均粒径を0.4μm以下としたのは、超硬合金の抗折力や硬さが高く、耐折損性や耐摩耗性に優れるためである。WCの平均粒径が0.4μmを超えて大きいと硬さが低くなり、工具にしたときに特に耐摩耗性に劣るためである。
本願発明の微粒超硬合金は、Coの分布状態に注目して詳細な検討を進めた所、EPMA装置により研磨面を実効ビーム径0.5μmの条件において30μmの長さを10本、Co−Kα線について線分析し、Co最小濃度分散値であるCRav値を求めた。CRav値は10本の線分析したときのCmin/Cavの平均を表す。ここで、Cmin値は30μm長さの線分析を行ったときのCo濃度の最小値である。Cav値は、まず30μm長さの線分析を行ったときの平均濃度を求め、次にこの値を10本分の各平均濃度の総和から算出した平均値である。本願発明では、CRav値と抗折力のばらつきとの間に密接な関係があることに加え、高い硬さが特徴である微粒超硬合金においてはCRavと耐チッピング性にも密接な関係があることがわかった。即ち、CRav≧0.52を満たすときに抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有し、安定した耐チッピング性を有した微粒超硬合金が得られることを見出した。これは、CRav値が0.52以上の場合、微粒超硬合金のミクロ組織において、CoがWC粒子間の細部にまで均一に分散していることを示す。抗折試験を行なったときにCRav値が0.52以上である超硬合金の抗折力のばらつきが小さい理由は、均一組織を有した超硬合金は破壊起点への応力集中が起こり難いためである。
本願発明の微粒超硬合金における抗折試験後の破壊起点は、主にWC粒子の凝集体である。従って、大多数が1つのWC粗大粒子が破壊起点であった従来材よりも、応力が集中することなく分散されている。CRav値が大きな値を示すことは、凝集体を構成している1つ1つのWC粒子が小さくなることである。また同時に、凝集体の大きさが小さくなり、凝集体の存在頻度が少なくなることを示すと考えられる。CRavが0.52以上を有し、好ましくは0.6以上を有する。CRav値が0.52以上の超硬合金において、チッピング損傷に至るまでの寿命が長い理由は、靭性の高いCoがミクロ組織内に均一に分散しており靭性の低いWC同士の接触部が少ないためである。CRav値が0.52未満の場合、ミクロ組織において、WC粒子間にCoが局所的にほとんど存在しないような組織、Co濃度の低い組織が存在することを示す。即ち、WC粒子間のCo濃度が不均一であると考えられる。局所的にCo濃度が低濃度となる部分が存在することは組織中にCoの少ない低靭性部が存在することに相当し、耐チッピング性のばらつきも大きくなると考えられる。なお、粗大粒子が存在する超硬合金のCRav値を求めると、粗大粒子のある場所に電子線が照射されたときにはCmin値が極端に小さくなる点が存在することになり、CRav値は小さくなるとともに、抗折力は低くなり、ばらつきも大きくなることが予想される。
本願発明は、電子線マイクロアナライザ(以下、EPMAと記す。)により、微粒超硬合金組織の均一性の定量評価と抗折力のばらつきの程度について検討した結果、EPMA分析におけるCo量の少ない組織を定量化した値と、抗折力のばらつきには大きな相関関係があることを見出し、本願発明に至った。微粒超硬合金の強度はWC粗大粒子の数と存在位置に関係しており、従来、超硬合金における破壊の起点は、ほとんどの場合がWC粗大粒子であった。しかし、本願発明が対象とする微粒超硬合金は、抗折力試験を行なったとき、破壊の起点となるのはこのWC粗大粒子ではない。
本願発明の微粒超硬合金は、Co含有量が5〜15%である。Co含有量が5%未満では焼結時にCo量が十分でなく緻密な焼結体を得ることが困難であり、その結果、抗折力が著しく低下する。また15%を超えると十分な硬さを得ることができず、耐磨耗性が低下するため切削工具等として使用した場合に摩耗が著しく、早期に寿命となるなどの欠点が現れる。また、Coが15%を超えて多いいとヤング率が低いため、工具に適さない。Cr、V、Ta、Nbの1種以上を含有させことにより、これらの元素は焼結中におけるWCの粒成長を抑制することで組織を微細化し、超硬合金の強度を向上させることができる。また、これらの元素は粒成長抑制効果の他に別の効果を有する。即ち、Crの添加効果は耐食性の向上を、TaやNbの添加効果は、耐熱強度を高くする効果を有している。これらのCr、V、Ta、Nbの1種以上を、合計量で0.4〜1.5%含有するとしたのは、0.4%未満では上記の添加効果が現れないためである。また1.5%を超えて多く添加すると、強度低下の原因となる有害相が生成する不都合が生じるためである。WCの平均粒径を0.4μm以下としたのは、超硬合金の抗折力や硬さが高く、耐折損性や耐摩耗性に優れるためである。WCの平均粒径が0.4μmを超えて大きいと硬さが低くなり、工具にしたときに特に耐摩耗性に劣るためである。
本願発明の微粒超硬合金は、Coの分布状態に注目して詳細な検討を進めた所、EPMA装置により研磨面を実効ビーム径0.5μmの条件において30μmの長さを10本、Co−Kα線について線分析し、Co最小濃度分散値であるCRav値を求めた。CRav値は10本の線分析したときのCmin/Cavの平均を表す。ここで、Cmin値は30μm長さの線分析を行ったときのCo濃度の最小値である。Cav値は、まず30μm長さの線分析を行ったときの平均濃度を求め、次にこの値を10本分の各平均濃度の総和から算出した平均値である。本願発明では、CRav値と抗折力のばらつきとの間に密接な関係があることに加え、高い硬さが特徴である微粒超硬合金においてはCRavと耐チッピング性にも密接な関係があることがわかった。即ち、CRav≧0.52を満たすときに抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有し、安定した耐チッピング性を有した微粒超硬合金が得られることを見出した。これは、CRav値が0.52以上の場合、微粒超硬合金のミクロ組織において、CoがWC粒子間の細部にまで均一に分散していることを示す。抗折試験を行なったときにCRav値が0.52以上である超硬合金の抗折力のばらつきが小さい理由は、均一組織を有した超硬合金は破壊起点への応力集中が起こり難いためである。
本願発明の微粒超硬合金における抗折試験後の破壊起点は、主にWC粒子の凝集体である。従って、大多数が1つのWC粗大粒子が破壊起点であった従来材よりも、応力が集中することなく分散されている。CRav値が大きな値を示すことは、凝集体を構成している1つ1つのWC粒子が小さくなることである。また同時に、凝集体の大きさが小さくなり、凝集体の存在頻度が少なくなることを示すと考えられる。CRavが0.52以上を有し、好ましくは0.6以上を有する。CRav値が0.52以上の超硬合金において、チッピング損傷に至るまでの寿命が長い理由は、靭性の高いCoがミクロ組織内に均一に分散しており靭性の低いWC同士の接触部が少ないためである。CRav値が0.52未満の場合、ミクロ組織において、WC粒子間にCoが局所的にほとんど存在しないような組織、Co濃度の低い組織が存在することを示す。即ち、WC粒子間のCo濃度が不均一であると考えられる。局所的にCo濃度が低濃度となる部分が存在することは組織中にCoの少ない低靭性部が存在することに相当し、耐チッピング性のばらつきも大きくなると考えられる。なお、粗大粒子が存在する超硬合金のCRav値を求めると、粗大粒子のある場所に電子線が照射されたときにはCmin値が極端に小さくなる点が存在することになり、CRav値は小さくなるとともに、抗折力は低くなり、ばらつきも大きくなることが予想される。
本願発明の微粒超硬合金の保磁力を40.0〜56.0kA/mの範囲とする理由は、保磁力が40.0未満であると靭性は高いが硬さに劣るためである。例えば、小径工具やパンチ材として好適であるとは言えない。特に切刃先端部の径が1mm以下のドリルでは刃先の精度や強度が不十分となってしまう。一方、保持力が56.0kA/mを超えて大きいと硬さは向上するが、靭性に劣る。
本願発明の対象とする微粒超硬合金は、WCの平均粒子径が0.4μm以下である。更に、WC粒子の最大粒子径が実質的に3μm以下であることが好ましい。超硬合金の研磨面を村上試薬で腐食し、光学顕微鏡で縦70μm、横95μmの長方形の視野を10回観察したときに、粒子径が3μmより大きい粗大WC粒子が観察されないか、もしくは観察されたとしても1個以下であるような比較的均一な微細組織を有している微粒超硬合金である。
本願発明の対象とする微粒超硬合金は、WCの平均粒子径が0.4μm以下である。更に、WC粒子の最大粒子径が実質的に3μm以下であることが好ましい。超硬合金の研磨面を村上試薬で腐食し、光学顕微鏡で縦70μm、横95μmの長方形の視野を10回観察したときに、粒子径が3μmより大きい粗大WC粒子が観察されないか、もしくは観察されたとしても1個以下であるような比較的均一な微細組織を有している微粒超硬合金である。
本願発明の微粒超硬合金を高い抗折力、耐摩耗性を要求される小径工具、パンチ材として用いた場合、抗折力のばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有するために耐摩耗性に優れるとともに、靭性のばらつきが少ないため、特に耐チッピング性に優れ長寿命がえられた。ここで耐チッピング性が優れると長寿命がえられる理由としては、小径工具やパンチ材においては、使用中に刃先または先端部分にチッピングが発生し、チッピングが摩耗を促進し、最後に抗折力以上の力が工具、パンチにかかり折損に至る場合が大部分であるからである。よって抗折力のばらつきが少なく、耐チッピング性が優れると長寿命となる。更に、これらの機械的特性に加え、本願発明はCoが均一分散しているために、工具加工時にCo成分の選択的消失による表面荒れが起こらず、高精度の加工が可能となった。以下、本願発明を実施例により更に詳細に開示する。
(実施例1)
平均粒径0.1〜0.4μmのWC粉末、1.2μmのCo粉末、1.2μmのCr3C2粉末、1.5μmのVC粉末、1.2μmのTaC粉末、1.2μmのNbC粉末を用いて表1に示す各組成に配合した。アトライターにて15時間湿式混合し、乾燥ののち、ワックスと溶剤を添加して混練した。押出成形機にて焼結後の直径が3.4mmとなるように長尺成形体を作製した。これらの長尺成形体を脱脂の後、焼結条件を工夫し、10Paの真空雰囲気中、1250〜1400℃の範囲内の所定温度に60分間保持後、HIP処理を加えた後に冷却した。上記の工程によって本発明例1から11を作製した。本発明例の作製に当たっては、特にアトライター投入前に十分な乾式の混合を行った。乾式の攪拌混合した粉末をプレパラート上で押し広げても単色であることを乾式混合完了の目安とし、攪拌混合機で1h行なった。更に、湿式の予備混合として、分散剤を含んだ溶媒と原料粉末の分散状態が改善されるまで湿式の予備混合処理を入念に行ない、本混合は、予備混合と回転数などの条件を変えて行なった。比較例12から20は本混合前の予備混合処理、分散剤の添加は無く、この点が異なる。
始めに、作製した各超硬合金をサンプルとして抜き取り、鏡面に研磨して光学顕微鏡を用いて縦70μm、横95μmの長方形の視野を10回観察した。本発明例1から11には、この観察範囲についてWCの最大粒子径が3μmより大きい粗大粒子は存在しないことを確認した。一方、比較例14には図1に示すような粗大粒子の存在が確認された。次に、鏡面研磨した超硬合金について、EPMA装置により線分析を実施してCRav値の定量化を行なった。本願発明で規定したEPMA装置によるCRav値の求め方について述べる。図2は本発明例6を鏡面に研磨した分析試料の分析位置のSEM像であり、図3は1回の線分析を実施した結果である。図3のなかに、Co濃度の最小値であるCmin値と、30μm長さの線分析を行ったときの平均濃度を示す。図2に示す鏡面試料上につき30μm長さを100μm間隔で10本線分析し、各分析位置での結果についてCmin値を求めた。更に、分析毎に平均濃度を求め、この平均濃度の10本分の平均をCavとした。実際の分析において、WCの粗大粒子のみにビームが照射されることは無く、Co−Kαのカウント数は少なくともバックグラウンドの3倍以上はカウントした。EPMA分析の詳細な分析条件は加速電圧15kV、照射電流0.08μA、実行ビーム径0.5μmとした。実行ビーム径の測定は、WC/Co界面をCo−Kα線について線分析したとき、WC/Co界面の中心での得られるカウント数に分析の精度として±1σ(16〜84%)を認めた値がカウントされる位置までを実行ビーム径、即ちビームの広がった範囲とした。上記した分析方法により定量的にCRav値を求めることで、Co分散状態の判断基準を設け、本願発明で規定する要件を満足することにより、従来の同じ組成、保磁力を有する超硬合金と比較してばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金の提供が可能となった。
次に、丸棒素材についてφ2mmにセンタレス研削後、保磁力、抗折力の測定を、n数を100として実施した。抗折力測定はスパン20mmの冶具を用い、三点曲げにて実施した。図4に本発明例6の破壊の起点を観察した結果を示す。本発明例6の破壊起点は、WC粒子の凝集体であった。抗折力試験の結果については、抗折力の大小を判断するために平均抗折力TRSavを求めた。また、抗折力のばらつきの範囲を示すために抗折力の最大値と最小値との差TRS(max−min)を求めた。更に、抗折力のばらつきを規格化するため、TRS(max−min)/TRSavを算出した。これらの測定結果を表1に示す。
平均粒径0.1〜0.4μmのWC粉末、1.2μmのCo粉末、1.2μmのCr3C2粉末、1.5μmのVC粉末、1.2μmのTaC粉末、1.2μmのNbC粉末を用いて表1に示す各組成に配合した。アトライターにて15時間湿式混合し、乾燥ののち、ワックスと溶剤を添加して混練した。押出成形機にて焼結後の直径が3.4mmとなるように長尺成形体を作製した。これらの長尺成形体を脱脂の後、焼結条件を工夫し、10Paの真空雰囲気中、1250〜1400℃の範囲内の所定温度に60分間保持後、HIP処理を加えた後に冷却した。上記の工程によって本発明例1から11を作製した。本発明例の作製に当たっては、特にアトライター投入前に十分な乾式の混合を行った。乾式の攪拌混合した粉末をプレパラート上で押し広げても単色であることを乾式混合完了の目安とし、攪拌混合機で1h行なった。更に、湿式の予備混合として、分散剤を含んだ溶媒と原料粉末の分散状態が改善されるまで湿式の予備混合処理を入念に行ない、本混合は、予備混合と回転数などの条件を変えて行なった。比較例12から20は本混合前の予備混合処理、分散剤の添加は無く、この点が異なる。
始めに、作製した各超硬合金をサンプルとして抜き取り、鏡面に研磨して光学顕微鏡を用いて縦70μm、横95μmの長方形の視野を10回観察した。本発明例1から11には、この観察範囲についてWCの最大粒子径が3μmより大きい粗大粒子は存在しないことを確認した。一方、比較例14には図1に示すような粗大粒子の存在が確認された。次に、鏡面研磨した超硬合金について、EPMA装置により線分析を実施してCRav値の定量化を行なった。本願発明で規定したEPMA装置によるCRav値の求め方について述べる。図2は本発明例6を鏡面に研磨した分析試料の分析位置のSEM像であり、図3は1回の線分析を実施した結果である。図3のなかに、Co濃度の最小値であるCmin値と、30μm長さの線分析を行ったときの平均濃度を示す。図2に示す鏡面試料上につき30μm長さを100μm間隔で10本線分析し、各分析位置での結果についてCmin値を求めた。更に、分析毎に平均濃度を求め、この平均濃度の10本分の平均をCavとした。実際の分析において、WCの粗大粒子のみにビームが照射されることは無く、Co−Kαのカウント数は少なくともバックグラウンドの3倍以上はカウントした。EPMA分析の詳細な分析条件は加速電圧15kV、照射電流0.08μA、実行ビーム径0.5μmとした。実行ビーム径の測定は、WC/Co界面をCo−Kα線について線分析したとき、WC/Co界面の中心での得られるカウント数に分析の精度として±1σ(16〜84%)を認めた値がカウントされる位置までを実行ビーム径、即ちビームの広がった範囲とした。上記した分析方法により定量的にCRav値を求めることで、Co分散状態の判断基準を設け、本願発明で規定する要件を満足することにより、従来の同じ組成、保磁力を有する超硬合金と比較してばらつきが小さく、均一な硬さの分布を有する微粒超硬合金の提供が可能となった。
次に、丸棒素材についてφ2mmにセンタレス研削後、保磁力、抗折力の測定を、n数を100として実施した。抗折力測定はスパン20mmの冶具を用い、三点曲げにて実施した。図4に本発明例6の破壊の起点を観察した結果を示す。本発明例6の破壊起点は、WC粒子の凝集体であった。抗折力試験の結果については、抗折力の大小を判断するために平均抗折力TRSavを求めた。また、抗折力のばらつきの範囲を示すために抗折力の最大値と最小値との差TRS(max−min)を求めた。更に、抗折力のばらつきを規格化するため、TRS(max−min)/TRSavを算出した。これらの測定結果を表1に示す。
本発明例と比較例を詳細に比較するため、TRS(max−min)/TRSavとCRavとの関係を図5に示した。図5に示すとおり、CRav値が0.52以上の範囲にある本発明例1から11は、縦軸の抗折力のばらつきを規格化したTRS(max−min)/TRSav値が0.21以下となり、満足のできる結果を得ることができた。これに対して、CRav値が0.52未満の範囲にある比較例12から20は、抗折力のばらつきの大きいことがわかる。
(実施例2)
実施例1で作製した径3.4mmの丸棒素材を切断し、断面を上下面研削した後に片面を鏡面に研磨し、研磨面の中心部における縦100μm、横100μmの範囲の硬さ測定を行なった。硬さ測定にはナノインデンターを使用した。ナノインデンターの試験条件を試験荷重が9.8mN、負荷ステップを98μN、負荷および除荷速度を0.98mN/msecとし、10μm間隔で縦10点、横10点、計100点圧痕を打込み、本願発明と比較例の硬さと、硬さの標準偏差を求めた。ここで、次式により変動係数(%)を求めた。変動係数は標準偏差を平均値で割った値である。測定結果は表2にまとめて示した。また図6にCRavと硬さの変動係数との関係図を示した。図6に示すとおり、CRavが0.52以上であれば変動係数が小さくなり、即ち硬さのばらつきが小さくなることがわかる。
実施例1で作製した径3.4mmの丸棒素材を切断し、断面を上下面研削した後に片面を鏡面に研磨し、研磨面の中心部における縦100μm、横100μmの範囲の硬さ測定を行なった。硬さ測定にはナノインデンターを使用した。ナノインデンターの試験条件を試験荷重が9.8mN、負荷ステップを98μN、負荷および除荷速度を0.98mN/msecとし、10μm間隔で縦10点、横10点、計100点圧痕を打込み、本願発明と比較例の硬さと、硬さの標準偏差を求めた。ここで、次式により変動係数(%)を求めた。変動係数は標準偏差を平均値で割った値である。測定結果は表2にまとめて示した。また図6にCRavと硬さの変動係数との関係図を示した。図6に示すとおり、CRavが0.52以上であれば変動係数が小さくなり、即ち硬さのばらつきが小さくなることがわかる。
(実施例3)
実施例1で作製した丸棒素材を研削し、シャンク部の径が3.175mm、切刃先端部の径が0.1mmの2枚刃の小径ドリルを各10本作製した。これを用いて、厚さが0.2mmのガラスエポキシ材プリント基板を2枚重ねにしたものを、回転数を160k回転/分、送り量を0.015mm/回転の条件で穴開け加工を行った。試験結果は、折損したときの加工穴数を記録し、各10本の平均穴開け加工数と、穴開け加工数の標準偏差、変動係数を求めた。試験結果は表2にまとめて示した。
実施例1で作製した丸棒素材を研削し、シャンク部の径が3.175mm、切刃先端部の径が0.1mmの2枚刃の小径ドリルを各10本作製した。これを用いて、厚さが0.2mmのガラスエポキシ材プリント基板を2枚重ねにしたものを、回転数を160k回転/分、送り量を0.015mm/回転の条件で穴開け加工を行った。試験結果は、折損したときの加工穴数を記録し、各10本の平均穴開け加工数と、穴開け加工数の標準偏差、変動係数を求めた。試験結果は表2にまとめて示した。
抗折力試験の結果と同様にCRav値と加工穴数のばらつきを表す変動係数に相関がみられた。本発明例1から11は、変動係数が8.0以下と小さく、穴開け加工数のばらつきの小さいことがわかった。一方、比較例12から20は、変動係数が10.7から16.3となり穴開け加工数のばらつきの大きいことがわかった。
Claims (1)
- WCの平均粒径は0.4μm以下であり、Co含有量は重量%で、5〜15%、Cr、V、Ta、Nbの1種以上を0.4〜1.5%含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり保磁力が40.0〜56.0kA/mの微粒超硬合金であって、EPMA装置を用いた線分析により求めたCo最小濃度分散値をCRavとしたとき、CRav≧0.52であることを特徴とする微粒超硬合金。
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JP2015145533A (ja) * | 2015-02-04 | 2015-08-13 | 住友電気工業株式会社 | 超硬合金、および加工工具 |
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