JP2017024165A - Wc基超硬合金製切削工具およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】チタン合金等の難削材の高能率加工に好適なWC基超硬合金及びその製造方法並びにミーリング加工用インサートを提供する。【解決手段】WC平均粒子径は0.3〜2.0μmであり、結合相形成成分として9.0〜14.0質量%のCoと、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaと、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有し、WC粒子をCoにより結合したWC基超硬合金であって、前記WC基超硬合金内に、TaとWとCo及びCrを含む複炭化物相(TaxWyCrzCoα)Cを有し、前記複炭化物相の金属成分の組成は、原子%で、x+y+z+α=100、80≦x≦85、10≦y≦15、z≦5、1≦α≦5、であり、平均粒子径が500nm以下の前記複炭化物相からなる凝集体の最長径が1μm以下であり、前記凝集体が前記結合相と隣接して存在することを特徴とするWC基超硬合金製切削工具である。【選択図】図4
Description
本発明は、例えばチタン合金などの難削材の湿式切削等に使用される、耐チッピング性と高温硬さに優れたWC基超硬合金製切削工具およびその製造方法に関する。ここでいうWC基超硬合金製切削工具としては、例えば、WC基超硬合金を用いたミーリング加工用インサートを挙げることができる。
近年、航空機などの需要増加に伴い、チタン合金などの難削材を高能率加工することが求められており、切削工具への負荷が増大している。特に、チタン合金などの切削加工では、インサートがチッピングして欠損に至り、炭素鋼などに比べ短寿命となる傾向にある。また、チタン合金は熱伝導率が小さいという特性を有するため、切削加工中の工具刃先温度は約1000℃まで達し、ミーリング加工用インサートの寿命は一層短いものとなっている。
このため、WC基超硬合金中のCoやNi等の結合相量を増加させることにより、抗折力を向上し耐チッピング性を改善することや、TaCやNbC等を添加して高温硬さを改善する提案がなされている。
特許文献1は、WCを主成分として12質量%以上14質量%以下のCoを含有し、長さ20mm×幅4mm×厚み2mmの形状とした場合に、10mmのスパンで曲げ試験を行ったときの局部的な抗折力が3.5GPa以上である超硬合金を開示している。
特許文献2は、質量%で、Co:5〜15%、Nb:0.5〜3%、炭化タングステン:残り、からなり、結合相に微細なNbとWの複合炭化物が析出した組織を有する炭化タングステン基超硬合金で構成したことを特徴とする高温硬さのすぐれた超硬合金製インサートを開示している。
特許文献3は、炭化物粒子の平均粒径が0.2〜0.8μm、Co量が2〜15質量%、WCの粒成長抑制剤としてのTaがCoに対しての質量比で1〜5%含有されていることを特徴とする高抗折力の微小工具用微粒超硬合金を開示している。
特許文献4の請求項1には、微細にして硬質の(Cr、Co、W)Cの組成を有する複合炭化物が、結合相中に析出分布している様な組織を有する超硬合金製エンドミルに関する技術を開示している。この硬質な複合炭化物を有する表面層が、1〜100μmの厚さとして切れ刃部に形成され、これにより、切れ刃の耐摩耗性を改善しようとするものである。
特許文献5の請求項1には、結合相がCo基合金、WCと硬質相とからなるWC基超硬合金が開示されている。この硬質相は、WとM成分(MはCr、V、Ta、Nb)との複合炭化物であると記載されている。また、段落番号0004には、この硬質相が結合相中に析出し、平均粒径で1μm以下に微細化した組織を有することによって耐摩耗性と耐欠損性が得られること、段落番号0013の表3には、本発明切削工具の組成が開示され、試料番号6の硬質相における組成は(W、Cr、Ta)Cであることが記載されている。
しかし、特許文献1は抗折力については検討されているが、複炭化物相に関する検討がされてなく、高温硬さが低く工具寿命が劣る。
特許文献2は高温硬さについては検討されているが、具体的な複合炭化物の組成比や粒子径については検討されておらず工具寿命が不十分である。また、抗折力に関する検討がされておらず耐チッピング性に劣る。
特許文献3は本発明の複炭化物相にあたる斑状晶について記載されているが、斑状晶の組成比や粒子径について検討されておらず、抗折力が不十分であり耐チッピング性に劣る。
特許文献4には、複合炭化物が結合相中に析出分布した組織を有する超硬合金を記載している。この複合炭化物は、微細にして硬質であり、(Cr、Co、W)Cの組成を有することが記載されている。
しかし、特許文献4の複合炭化物は、本発明の複炭化物相(Ta、W、Cr、Co)Cと比較して、以下の点で異なっている。すなわち、特許文献4の複合炭化物相には、Ta成分が含有されていない点である。また、切れ刃の耐欠損性を改善する点についての言及もなされていない点である。
しかし、特許文献4の複合炭化物は、本発明の複炭化物相(Ta、W、Cr、Co)Cと比較して、以下の点で異なっている。すなわち、特許文献4の複合炭化物相には、Ta成分が含有されていない点である。また、切れ刃の耐欠損性を改善する点についての言及もなされていない点である。
特許文献5には、硬質相を有するWC基超硬合金が開示されている。この硬質相は、WとM成分(MはCr、V、Ta、Nb)との複合炭化物であると記載され、その実施形態の例として、硬質相の組成は(W、Cr、Ta)Cであることが記載されている。また平均粒径で1μm以下に微細化した組織を有することによって耐摩耗性と耐欠損性が得られることも記載されている。
しかし、特許文献5の複合炭化物は、本発明の複炭化物相(Ta、W、Cr、Co)Cと比較して、以下の点で異なっている。すなわち、特許文献5の複合炭化物相には、Co成分が含有されていない点である。また、複合炭化物相は、平均粒子径が500nm以下の複合炭化物相からなる凝集体であることについても、何ら示唆も開示もなされていない点である。
しかし、特許文献5の複合炭化物は、本発明の複炭化物相(Ta、W、Cr、Co)Cと比較して、以下の点で異なっている。すなわち、特許文献5の複合炭化物相には、Co成分が含有されていない点である。また、複合炭化物相は、平均粒子径が500nm以下の複合炭化物相からなる凝集体であることについても、何ら示唆も開示もなされていない点である。
従って、本発明はチタン合金などの難削材の高能率加工において、抗折力が高く、耐チッピング性に優れるとともに高温硬さの高い工具寿命に優れたWC基超硬合金製切削工具およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のWC基超硬合金製切削工具は、WC平均粒子径は0.3〜2.0μmであり、結合相形成成分として9.0〜14.0質量%のCoと、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaと、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有し、WC粒子をCoにより結合したWC基超硬合金であって、前記WC基超硬合金内に、TaとWとCo及びCrを含む複炭化物相(TaxWyCrzCoα)Cを有し、前記複炭化物相の金属成分の組成は、原子%で、x+y+z+α=100、80≦x≦85、10≦y≦15、z≦5、1≦α≦5、であり、平均粒子径が500nm以下の前記複炭化物相からなる凝集体の最長径が1μm以下であり、前記凝集体が前記結合相と隣接して存在することを特徴としている。
また、本発明に係るWC基超硬合金製切削工具の製造方法は、
(a)原料粉末の配合組成を定める配合工程と、
(b)定められた原料粉末の配合組成に基づいて混合および粉砕を行う混合・粉砕工程と、
(c)混合および粉砕後の原料粉末を造粒し、乾燥する造粒・乾燥工程と、
(d)得られた造粒粉末を成形し成形体を得る成形工程と、
(e)得られた成形体を焼成する焼成工程と
を順に有する前記WC基超硬合金製切削工具の製造方法であり、
前記(a)配合工程は、原料粉末として、9.0〜14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有する粒径が0.4〜0.8μmのTaC粉末と、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、残部として平均粒径が0.3〜2.0μmのWC粉末をそれぞれ準備する工程であり、
前記(b)混合・粉砕工程は、前記原料粉末である、Co粉末、TaC粉末、Cr3C2粉末およびWC粉末を混合装置にて混合・粉砕する工程であり、
前記(e)焼成工程は、前記成形体を焼成温度まで昇温した後、焼成温度にて一定時間保持後、HIP処理温度まで冷却し、不活性ガス雰囲気にてHIP処理を行った後、1200℃以下まで80〜120℃/分の冷却速度にて急冷する工程であることを特徴とするものである。
なお、ここで、凝集体とは、図2にみられるように、隣接部を有して繋がっている複炭化物相が凝集したものをいい、単独の複炭化物相からなる場合も包含する。そして、凝集体の最長径とは、凝集体を包含する最小の真円の直径をいう。
また、本発明に係るWC基超硬合金製切削工具の製造方法は、
(a)原料粉末の配合組成を定める配合工程と、
(b)定められた原料粉末の配合組成に基づいて混合および粉砕を行う混合・粉砕工程と、
(c)混合および粉砕後の原料粉末を造粒し、乾燥する造粒・乾燥工程と、
(d)得られた造粒粉末を成形し成形体を得る成形工程と、
(e)得られた成形体を焼成する焼成工程と
を順に有する前記WC基超硬合金製切削工具の製造方法であり、
前記(a)配合工程は、原料粉末として、9.0〜14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有する粒径が0.4〜0.8μmのTaC粉末と、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、残部として平均粒径が0.3〜2.0μmのWC粉末をそれぞれ準備する工程であり、
前記(b)混合・粉砕工程は、前記原料粉末である、Co粉末、TaC粉末、Cr3C2粉末およびWC粉末を混合装置にて混合・粉砕する工程であり、
前記(e)焼成工程は、前記成形体を焼成温度まで昇温した後、焼成温度にて一定時間保持後、HIP処理温度まで冷却し、不活性ガス雰囲気にてHIP処理を行った後、1200℃以下まで80〜120℃/分の冷却速度にて急冷する工程であることを特徴とするものである。
なお、ここで、凝集体とは、図2にみられるように、隣接部を有して繋がっている複炭化物相が凝集したものをいい、単独の複炭化物相からなる場合も包含する。そして、凝集体の最長径とは、凝集体を包含する最小の真円の直径をいう。
本発明はチタン合金などの難削材の高能率加工において、抗折力が高く、耐チッピング性に優れるとともに高温硬さの高い工具寿命に優れたWC基超硬合金製切削工具を提供することができる。特に、本発明で規定する複炭化物相が、結合相と隣接して存在することにより、耐チッピング性と高温硬さに優れた高性能なWC基超硬合金と、これを採用したWC基超硬合金製切削工具およびその製造方法を提供することができる。
(1)WC基超硬合金の平均結晶粒径
WCは硬質相成分であり、CoはWC粒子を結合させる結合相である。本発明のWC基超硬合金においては、WC平均粒子径を0.3〜2.0μm、とすることが必要である。その理由は、WC平均粒子径を本発明規定の範囲内に設定することによって、抗折力が高く耐チッピング性に優れるからである。
一方、WC平均粒子径が0.3μm未満では、抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。また、WC平均粒子径が2.0μmを超えて大きい場合は、粗大なWC粒子により抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
WCは硬質相成分であり、CoはWC粒子を結合させる結合相である。本発明のWC基超硬合金においては、WC平均粒子径を0.3〜2.0μm、とすることが必要である。その理由は、WC平均粒子径を本発明規定の範囲内に設定することによって、抗折力が高く耐チッピング性に優れるからである。
一方、WC平均粒子径が0.3μm未満では、抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。また、WC平均粒子径が2.0μmを超えて大きい場合は、粗大なWC粒子により抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
(2)WC基超硬合金の組成
本発明のWC基超硬合金においては、結合相であるCoの含有量を、9.0〜14.0質量%に規定することが必要である。本発明規定の範囲内に設定することによって、抗折力が高くチッピング性に優れたWC基超硬合金を得ることができるからである。
一方、Co含有量が9.0質量%未満では、WC粒子同士の接触が大きくなってしまうため、WCの凝集体が生じやすくなってしまう。その結果、抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。また、Co含有量が14.0質量%を超えて多い場合には、WC基超硬合金の高温硬さが低下し、所望の工具寿命を得ることができないといった不都合が生じてしまう。
本発明のWC基超硬合金においては、結合相であるCoの含有量を、9.0〜14.0質量%に規定することが必要である。本発明規定の範囲内に設定することによって、抗折力が高くチッピング性に優れたWC基超硬合金を得ることができるからである。
一方、Co含有量が9.0質量%未満では、WC粒子同士の接触が大きくなってしまうため、WCの凝集体が生じやすくなってしまう。その結果、抗折力が低下し、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。また、Co含有量が14.0質量%を超えて多い場合には、WC基超硬合金の高温硬さが低下し、所望の工具寿命を得ることができないといった不都合が生じてしまう。
本発明のWC基超硬合金におけるTa含有量は、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有することが必要である。前記の組成範囲内に設定することにより、TaがCo相中に溶解し、Coが固溶強化され高温硬さの高いWC基超硬合金を得ることができる。Taは耐チッピング性を低下させずにCoの固溶強化を促進することができる。
しかし、Ta含有量がCoに対する質量比で1.0%未満では、Coの固溶強化に効果がなく、高温硬さが低下してしまう。また、Ta含有量がCoに対する質量比で8.0%を超えて多い場合には、抗折力の低下に結び付く粗大な炭化物相であるTaCが析出するため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
WC基超硬合金の耐チッピング性を低下させずにCoの固溶強化を促進させるためには、CoのTa含有量を、Coに対する質量比で1.5〜5.0%のTaを含有させることが、より好ましい。
しかし、Ta含有量がCoに対する質量比で1.0%未満では、Coの固溶強化に効果がなく、高温硬さが低下してしまう。また、Ta含有量がCoに対する質量比で8.0%を超えて多い場合には、抗折力の低下に結び付く粗大な炭化物相であるTaCが析出するため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
WC基超硬合金の耐チッピング性を低下させずにCoの固溶強化を促進させるためには、CoのTa含有量を、Coに対する質量比で1.5〜5.0%のTaを含有させることが、より好ましい。
本発明のWC基超硬合金におけるCr含有量は、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有することが必要である。前記の組成範囲内に設定することにより、CrがCo相中に溶解しWCの粒成長が抑制されるため、抗折力が高く耐チッピング性に優れる。
しかし、Cr含有量がCoに対する質量比で3.0%未満では、WCの粒成長抑制の効果が発揮されず、抗折力が低下してしまう。また、Cr含有量がCoに対する質量比で10.0%を超えて多い場合には、抗折力が低下に結び付く粗大な炭化物相が形成されるため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
WC基超硬合金の抗折力を高くして、優れた耐チッピング性を得るために、Cr含有量は、Coに対する質量比で4.0〜9.0%のCrを含有させることが、より好ましい。
しかし、Cr含有量がCoに対する質量比で3.0%未満では、WCの粒成長抑制の効果が発揮されず、抗折力が低下してしまう。また、Cr含有量がCoに対する質量比で10.0%を超えて多い場合には、抗折力が低下に結び付く粗大な炭化物相が形成されるため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。
WC基超硬合金の抗折力を高くして、優れた耐チッピング性を得るために、Cr含有量は、Coに対する質量比で4.0〜9.0%のCrを含有させることが、より好ましい。
本発明のWC基超硬合金では、公知の不可避的不純物の含有が許容される。
(3)WC基超硬合金に含まれる複炭化物相の組成及び組織
本発明のWC基超硬合金の組織は、原料成分としてWC、Co、TaC、Cr3C2を配合し、下記記載の製造条件によって製造される。特に、本発明のWC基超硬合金の特徴の1つである複炭化物相を、好ましい形態となるように晶出させるためには、焼結条件のパラメータ制御が重要である。高精度に制御された冷却過程を採用することにより、従来のWC、Co、TaC、Cr3C2を配合して形成される複炭化物相とは異なる形態を有する、新規な複炭化物相組織を得ることができる。
本発明のWC基超硬合金の組織は、原料成分としてWC、Co、TaC、Cr3C2を配合し、下記記載の製造条件によって製造される。特に、本発明のWC基超硬合金の特徴の1つである複炭化物相を、好ましい形態となるように晶出させるためには、焼結条件のパラメータ制御が重要である。高精度に制御された冷却過程を採用することにより、従来のWC、Co、TaC、Cr3C2を配合して形成される複炭化物相とは異なる形態を有する、新規な複炭化物相組織を得ることができる。
本発明のWC基超硬合金が有する複炭化物相は、TaとWとCo及びCrを含み、(TaxWyCrzCoα)Cを有し、但し、該複炭化物相の金属成分の原子組成%はx+y+z+α=100、80≦x≦85、10≦y≦15、z≦5、1≦α≦5としたとき、平均粒子径が500nm以下の複炭化物相が得られる。この複炭化物相は凝集体となって、この凝集体の最長径が1μm以下であることを特徴としている。
本発明のWC基超硬合金が有する複炭化物相は、従来の複炭化物相とは異なり、複炭化物相中にCoを含有することで、複炭化物相と隣接するCo相との結合力が高まり、複炭化物相と隣接するCo相の界面に発生する亀裂を抑制し、抗折力の向上及び当該WC基超硬合金の耐チッピング性を向上させると考えられる。このとき、Co相と複炭化物相の界面の最長径が0.3μm以上であると抗折力が向上し、0.3μm未満であると抗折力が低下する。
本発明のWC基超硬合金が有する複炭化物相は、従来の複炭化物相とは異なり、複炭化物相中にCoを含有することで、複炭化物相と隣接するCo相との結合力が高まり、複炭化物相と隣接するCo相の界面に発生する亀裂を抑制し、抗折力の向上及び当該WC基超硬合金の耐チッピング性を向上させると考えられる。このとき、Co相と複炭化物相の界面の最長径が0.3μm以上であると抗折力が向上し、0.3μm未満であると抗折力が低下する。
本発明のWC基超硬合金における複炭化物相のCoの含有量であるα値が、1≦α≦5、と規定する範囲内であることが必要である。本発明規定の範囲内に設定することによって、複炭化物相とCo相とが隣接する界面においてはCo成分の相互拡散層が出現して原子配列の連続した領域が生まれ、このことによって強固な結合が得られると考えられる。
しかし、α値が1%未満であると、複炭化物相とCo結合相との界面における相互拡散層の領域が少なく、そのために結合力が弱くなって、耐チッピング性が低下してしまうと考えられえる。また、Coの含有量α値が5%を超えて多い場合には、高温硬さが低下してしまう。
しかし、α値が1%未満であると、複炭化物相とCo結合相との界面における相互拡散層の領域が少なく、そのために結合力が弱くなって、耐チッピング性が低下してしまうと考えられえる。また、Coの含有量α値が5%を超えて多い場合には、高温硬さが低下してしまう。
本発明の複炭化物相の金属成分のうち、Taの含有量x値が原子組成%で80%未満であると高温硬さが低下し、85%を超えて多い場合は、耐チッピング性が低下する。Wの含有量y値が10%未満であると高温硬さが低下し、15%を超えて存在する場合はない。また、焼結体の高温硬さに与える影響はWよりTaの方が大きい。Crの含有量z値が5%を超えて多い場合は、耐チッピング性が低下する。本発明の複炭化物相が500nmを超えて大きく、前記複炭化物相の凝集体の最長径が1μmを超えて大きい場合は、破壊の起点となるため、耐チッピング性が低下する。
(4)WC基超硬合金の製造方法
本発明のWC基超硬合金は、原料粉末の配合工程、混合・粉砕工程、造粒・乾燥工程、成形工程及び焼成工程を経て製造される。
(A)原料粉末の配合工程
本発明で供されるWC基超硬合金の原料粉末は、9.0〜14.0質量%のCoとCoに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有するTaC粉末、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末及び残部WC粉末を使用することで、耐チッピング性と高温硬さの優れた超硬合金が得られる。WC原料粉末は平均粒径0.3〜2.0μmに調整されたものを使用する。TaC粉末は一般的な寸法である1.0〜1.3μmより小さいサイズの0.4〜0.8μmであることが好ましい。このようにTaC粉末の寸法を小さくする理由は、TaC粉末がより大きな比表面積を有することによって結合相への溶解を促進することと、複炭化物相の寸法を抑制するためである。
一方で、TaC粉末が0.4μm未満であると凝集しやすくなり、高温硬さが低下してしまう。また、TaC粉末が0.8μmを超えて大きい場合は、複炭化物相が顕著に粗大化して、耐チッピング性が低下してしまう。
また、Co粉末、Cr3C2粉末については、通常用いられる、平均粒径が0.5〜2.0μmのものを用いる。
それぞれの原料粉末は、高精度な秤量計によって正確に秤量・配合され、混合容器であるボールミルに充填されて次工程へ進む。
本発明のWC基超硬合金は、原料粉末の配合工程、混合・粉砕工程、造粒・乾燥工程、成形工程及び焼成工程を経て製造される。
(A)原料粉末の配合工程
本発明で供されるWC基超硬合金の原料粉末は、9.0〜14.0質量%のCoとCoに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有するTaC粉末、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末及び残部WC粉末を使用することで、耐チッピング性と高温硬さの優れた超硬合金が得られる。WC原料粉末は平均粒径0.3〜2.0μmに調整されたものを使用する。TaC粉末は一般的な寸法である1.0〜1.3μmより小さいサイズの0.4〜0.8μmであることが好ましい。このようにTaC粉末の寸法を小さくする理由は、TaC粉末がより大きな比表面積を有することによって結合相への溶解を促進することと、複炭化物相の寸法を抑制するためである。
一方で、TaC粉末が0.4μm未満であると凝集しやすくなり、高温硬さが低下してしまう。また、TaC粉末が0.8μmを超えて大きい場合は、複炭化物相が顕著に粗大化して、耐チッピング性が低下してしまう。
また、Co粉末、Cr3C2粉末については、通常用いられる、平均粒径が0.5〜2.0μmのものを用いる。
それぞれの原料粉末は、高精度な秤量計によって正確に秤量・配合され、混合容器であるボールミルに充填されて次工程へ進む。
(B)混合・粉砕工程
本発明で供されるWC基超硬合金の混合工程では、まず第1の工程として、Co粉末、TaC粉末及びCr3C2粉末をボールミルで混合する。その後、第2の工程として、WC原料粉末を追加投入し、目的の特性値となるWC粒径が得られるまでボールミルで混合する。このように、2段階の工程に分割して原料粉末を混合する理由は、Co内にTaCとCr3C2を均一分散させることで、Co中へ溶解するTa量及びCr量を一定にし、結合相内のTa濃度及びCr濃度を均一化することができるからである。
本発明のWC基超硬合金においては、Co中のTa及びCr濃度を一定とすることによって、WC基超硬合金内での複炭化物相が晶出する温度のばらつきを最小限に抑えることができる。そのことによって、複炭化物相の粒成長速度を一定に制御することが可能となり、500nm以下の複炭化物相を得ることができる。
一方、従来の混合方法においては、Co粉末、TaC粉末、Cr3C2及びWC原料粉末のすべての混合を2段階の工程に分割することなく、同時に混合しているため、TaC粉末がCo粉末と均一に分散しない。そのため、複炭化物相の寸法が500nmを超えて大きくなり、耐チッピング性及び高温硬さが低下してしまうという問題があった。
本発明の混合工程では、ボールミルのほかアトライター等の混合設備を使用しても同様の効果を得ることができる。
本発明で供されるWC基超硬合金の混合工程では、まず第1の工程として、Co粉末、TaC粉末及びCr3C2粉末をボールミルで混合する。その後、第2の工程として、WC原料粉末を追加投入し、目的の特性値となるWC粒径が得られるまでボールミルで混合する。このように、2段階の工程に分割して原料粉末を混合する理由は、Co内にTaCとCr3C2を均一分散させることで、Co中へ溶解するTa量及びCr量を一定にし、結合相内のTa濃度及びCr濃度を均一化することができるからである。
本発明のWC基超硬合金においては、Co中のTa及びCr濃度を一定とすることによって、WC基超硬合金内での複炭化物相が晶出する温度のばらつきを最小限に抑えることができる。そのことによって、複炭化物相の粒成長速度を一定に制御することが可能となり、500nm以下の複炭化物相を得ることができる。
一方、従来の混合方法においては、Co粉末、TaC粉末、Cr3C2及びWC原料粉末のすべての混合を2段階の工程に分割することなく、同時に混合しているため、TaC粉末がCo粉末と均一に分散しない。そのため、複炭化物相の寸法が500nmを超えて大きくなり、耐チッピング性及び高温硬さが低下してしまうという問題があった。
本発明の混合工程では、ボールミルのほかアトライター等の混合設備を使用しても同様の効果を得ることができる。
(C)焼結工程
前記混合・粉砕工程において、混合・粉砕された原料粉末は、造粒・乾燥工程において、造粒および乾燥され、造粒粉末となり、続く成形工程において成形され、本発明で供されるWC基超硬合金の成形体として焼結炉内に導入され、焼成温度である1400〜1420℃となるまでは、80〜100℃/時間の昇温速度に制御されて昇温される。20〜30分保持した後、40〜60℃/分の冷却速度に制御されて、1340〜1360℃まで冷却され、保持される。その後は、不活性ガス雰囲気中で30分〜1時間、HIP処理を行うことで耐チッピング性に優れ、高温硬さの高い超硬合金が得られる。
本発明の焼結工程においてHIP処理を採用する理由は、保持時間を短くすることでWC粒子の粒成長を抑制し、高温で焼成することによりCoへのTaの溶解を促進させて高温硬さを向上させるためである。また、焼成温度から温度を下げてHIP処理をおこなうことにより、粗大WC粒子への成長を抑制し、WC基超硬合金の焼結体中の気孔をなくすことによって抗折力が改善され耐チッピング性を向上させることができる。
前記混合・粉砕工程において、混合・粉砕された原料粉末は、造粒・乾燥工程において、造粒および乾燥され、造粒粉末となり、続く成形工程において成形され、本発明で供されるWC基超硬合金の成形体として焼結炉内に導入され、焼成温度である1400〜1420℃となるまでは、80〜100℃/時間の昇温速度に制御されて昇温される。20〜30分保持した後、40〜60℃/分の冷却速度に制御されて、1340〜1360℃まで冷却され、保持される。その後は、不活性ガス雰囲気中で30分〜1時間、HIP処理を行うことで耐チッピング性に優れ、高温硬さの高い超硬合金が得られる。
本発明の焼結工程においてHIP処理を採用する理由は、保持時間を短くすることでWC粒子の粒成長を抑制し、高温で焼成することによりCoへのTaの溶解を促進させて高温硬さを向上させるためである。また、焼成温度から温度を下げてHIP処理をおこなうことにより、粗大WC粒子への成長を抑制し、WC基超硬合金の焼結体中の気孔をなくすことによって抗折力が改善され耐チッピング性を向上させることができる。
本発明で供されるWC基超硬合金の焼結体はHIP処理の後、保持温度である1340〜1360℃から1200℃以下まで80〜120℃/分の冷却速度に制御された状態で急冷されることにより、抗折力が改善され耐チッピング性と高温硬さの優れた超硬合金を得ることができる。複炭化物相は冷却過程において晶出して形成されるものであるため、冷却速度の制御された急冷を行うことでWCの析出を促進しつつ、複炭化物相の粒成長を抑制する効果がある。ここで、冷却速度は、複炭化物相の形態を決定する重要な制御項目である。すなわち、保持温度である1340〜1360℃からの急冷速度が80℃/分未満の場合では、Co相の液相状態が長いため、複炭化物相が凝集しやすくなってしまう。その結果、複炭化物相の凝集体の形成が進んでしまうこととなる。この凝集体の形成が進み、寸法が1μmを超えて大きくなってしまうと、WC基超硬合金の抗折力が低下して耐チッピング性が低下する。一方で、保持温度からの急冷速度が120℃/分を超えるような急冷条件では、WC粒子と結合相との接着強度が弱く、焼結体中に気孔が残り、焼結体の密度が低下してしまうといった不都合が生じる。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
本発明例1
Co粉末(平均粒径1.2μm)、Cr3C2粉末(平均粒径が1.0μm)、TaC粉末(平均粒径1.5μm)およびWC粉末(平均粒径0.6μm)を表2に示す組成にて準備したのち、まず、WC粉末を除く、Co粉末、Cr3C2粉末、および、TaC粉末を配合し、各配合した粉末と、湿式混合・粉砕の助剤であるエチルアルコール(水分含有量10%未満)と、全原料粉末の総質量に対して2重量%のパラフィンワックスとをボールミルにて24時間混合し、その後、WC粉末(平均粒径0.6μm)を追加投入してさらに72時間混合を実施した。
湿式混合後、静置乾燥器にて造粒・乾燥を行い、造粒粉末を得て、成形体を成形した。得られた成形体を100℃/時間の加熱速度にて1410℃まで昇温し、30分間保持後、50℃/分の速度にて1350℃まで冷却し、30分間保持した。
その後、不活性ガス中にて1時間HIP処理を行い、100℃/分の速度にて1200℃
以下まで冷却した。得られた焼結体を研削し、円形インサートを得た。
本発明例1
Co粉末(平均粒径1.2μm)、Cr3C2粉末(平均粒径が1.0μm)、TaC粉末(平均粒径1.5μm)およびWC粉末(平均粒径0.6μm)を表2に示す組成にて準備したのち、まず、WC粉末を除く、Co粉末、Cr3C2粉末、および、TaC粉末を配合し、各配合した粉末と、湿式混合・粉砕の助剤であるエチルアルコール(水分含有量10%未満)と、全原料粉末の総質量に対して2重量%のパラフィンワックスとをボールミルにて24時間混合し、その後、WC粉末(平均粒径0.6μm)を追加投入してさらに72時間混合を実施した。
湿式混合後、静置乾燥器にて造粒・乾燥を行い、造粒粉末を得て、成形体を成形した。得られた成形体を100℃/時間の加熱速度にて1410℃まで昇温し、30分間保持後、50℃/分の速度にて1350℃まで冷却し、30分間保持した。
その後、不活性ガス中にて1時間HIP処理を行い、100℃/分の速度にて1200℃
以下まで冷却した。得られた焼結体を研削し、円形インサートを得た。
本発明例1の各WC基超硬合金の焼結体を外部荷重により切断し、鏡面研磨した際の断面を25000倍でFE−SEMにより観察した結果を図1に示す。
本発明例1の各WC基超硬合金の焼結体をFIBにより加工し、断面を75000倍でTEMにより観察した結果を図3に示す。
焼結体の断面を0.25μmのダイヤモンド砥粒で鏡面になるまで研磨し、フィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザ(EPMA、日本電子製JXA−8530F型)により1000倍で面分析をおこないTaが検出された箇所を25000倍で観察し、図1のFE−SEM写真を得た。図1の視野についてEPMAにて面分析をしたところ、図2に示すとおり、Ta成分の検出された粒子1が存在することがわかった。そこで、このTaが検出された粒子1の最長径を粒子1の粒子径として測定し、次にその隣接部を有して繋がっている4個の粒子が凝集した凝集体の最長径を求めた。
図2のようにTaが検出された箇所を集束イオンビーム装置(FIB、日立製作所製FB−2000型)を用いて加工し、断面試料を作製した。その試料を電界放射型透過電子顕微鏡(TEM、日本電子製JEM−2010F型)により観察し、図3の断面TEM写真を得た。図3の写真の範囲をUTW型Si(Li)半導体検出器(EDS、ノーラン製)により面分析した結果、図4の写真に示す通り、Taを含有する複炭化物相2と、結合相を形成しているCo相3が隣接している状態が観察された。また、Taを含有している複炭化物相2をEDSにより定性分析をおこない、複炭化物相2の金属成分の組成を解析した。その結果を表1に示す。
表1の解析結果より、本発明のWC基超硬合金が有する複炭化物相2には、Coが2.2原子%含有されていることが確認された。また、Taが84.5原子%、Wが11.8原子%、Crが1.5原子%、含有されていることが確認された。ここで、本発明の複炭化物相2にCoが含有されることによって、隣接するCo相との結合力が高まり、複炭化物相と隣接するCo相の界面に発生する亀裂を抑制し、抗折力を向上させると考えられる。
また、本発明の複炭化物相2にはCoが含有されるという特徴を有していることから、図2で観察された、Taの検出された粒子1は複炭化物相と考えられる。そこで、図2において計測した個々の粒子1の最長径を個々の複炭化物相の粒子径とした。次に隣接部を有して繋がっている4個の粒子1が凝集してなる凝集体の最長径を求めた。
複炭化物相からなる凝集体と結合相であるCo相との隣接距離は、図4より、両相が連続接触する接触部の両端部を直線で結んだときの長さとして求めた。
また、本発明の複炭化物相2にはCoが含有されるという特徴を有していることから、図2で観察された、Taの検出された粒子1は複炭化物相と考えられる。そこで、図2において計測した個々の粒子1の最長径を個々の複炭化物相の粒子径とした。次に隣接部を有して繋がっている4個の粒子1が凝集してなる凝集体の最長径を求めた。
複炭化物相からなる凝集体と結合相であるCo相との隣接距離は、図4より、両相が連続接触する接触部の両端部を直線で結んだときの長さとして求めた。
得られた本発明の各WC基超硬合金の焼結体をダイヤモンド砥石で研削し、4mm×8mm×24mmのJIS抗折力試験片(JIS−B−4053)を作製した。耐欠損性の指標である抗折力は3点曲げ試験により求め、試験回数5回の平均値を求めた。その結果を表2〜表8に示す。
得られた本発明例1のWC基超硬合金の上下、外周を研削加工し、刃先の先端部にコーナー半径R0.01mmを付与するホーニング処理を施し、本発明のミーリング用インサートを得た。
得られた本発明例1のミーリング用インサートにより、以下の条件により切削試験を行った。
(切削試験の条件)
加工方法:湿式のミーリング加工
切削油:水溶性切削油を使用
被削材:Ti−6Al−4V
切削速度:40m/min
回転数:255min−1
1刃の送り:0.3mm/刃
テーブル送り:76mm/min
軸方向切込み:2.0mm
径方向切込み:42mm
(切削試験の条件)
加工方法:湿式のミーリング加工
切削油:水溶性切削油を使用
被削材:Ti−6Al−4V
切削速度:40m/min
回転数:255min−1
1刃の送り:0.3mm/刃
テーブル送り:76mm/min
軸方向切込み:2.0mm
径方向切込み:42mm
この切削試験により、ミーリング用インサートの工具寿命は、逃げ面の最大摩耗幅が0.30mmを超えたとき、または、インサートが欠損し、その幅が0.30mmを超えたときまでの加工時間(分)をいい、切削寿命が、10分以上のものを本発明例とした。本発明の逃げ面摩耗幅は、倍率100倍の光学顕微鏡で観察し、測定した。
(1)WC平均粒子径
本発明において、切削寿命及び抗折力に及ぼすWC平均粒子径の影響を確認するために、本発明例1に対し、WC平均粒子径を変えたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を表2に示す。
なお、表4以降、比較例、従来例において、請求項1の発明特定事項を満足していない項目については、データ欄に「*」を付した。
本発明において、切削寿命及び抗折力に及ぼすWC平均粒子径の影響を確認するために、本発明例1に対し、WC平均粒子径を変えたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を表2に示す。
なお、表4以降、比較例、従来例において、請求項1の発明特定事項を満足していない項目については、データ欄に「*」を付した。
表2に示すとおり本発明例1〜3のインサートは抗折力と高温硬さの両立を達成することができており、初期チッピングが確認されず工具寿命は10分を超え、13.8分以上となる良好な結果であった。
粗大WC粒子が存在するとこれが破壊の起点となり、抗折力が低下するため、同一組成の組織であれば、WC粒径が請求項1の規定値の範囲で小さいと抗折力が高く、本発明例3では請求項の規定値の最大WC粒径2.0μmにて、13.8分であった工具寿命が、
WC粒径が0.3μmである本発明例2では、抗折力が表2に示すデータの中で最も高く、高温硬さも向上しているため、18.2分となり、本発明例1よりも良好な工具寿命となった。
粗大WC粒子が存在するとこれが破壊の起点となり、抗折力が低下するため、同一組成の組織であれば、WC粒径が請求項1の規定値の範囲で小さいと抗折力が高く、本発明例3では請求項の規定値の最大WC粒径2.0μmにて、13.8分であった工具寿命が、
WC粒径が0.3μmである本発明例2では、抗折力が表2に示すデータの中で最も高く、高温硬さも向上しているため、18.2分となり、本発明例1よりも良好な工具寿命となった。
(2)Co量
本発明例1に対し、Co量を変えたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表3に示す。
本発明例1に対し、Co量を変えたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表3に示す。
表3に示すとおり本発明例1、4、5のインサートは抗折力と高温硬さの両立を達成することができているため、本発明の目標値である10分以上の工具寿命を得ることができた。Co量が増加するにつれ、抗折力は高くなっており、そのため、本発明例5では、工具寿命が16.3分まで向上した。
(3)Ta/Co比
本発明例1に対し、Ta/Co比を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表4に示す。
本発明例1に対し、Ta/Co比を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表4に示す。
表4に示すとおり本発明例1、6、7のインサートは抗折力と高温硬さが共に高く、目標値である10分以上の工具寿命を達成することができた。比較例1はTa/Co比が14.43%であるため、複炭化物相の凝集体の最長径が2.3μm以上となり、抗折力が2333MPaと大きく低下した。そのため、工具寿命は目標値である10分以上に対し3.3分と著しく劣る結果となった。比較例2はTa/Co比が0.90%と1.0%以上を満たさず、複炭化物相のサイズが小さく、Co相との隣接距離が0.3μm以下となったため、工具寿命は9.6分に留まった。従来例1は抗折力が高いが、TaによるCoの固溶強化の効果が無いため、高温硬さが低く、摩耗の進行がはやいため工具寿命が8.5分という結果となった。
(4)Cr/Co比
本発明例1に対し、Cr/Co比を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表5に示す。
本発明例1に対し、Cr/Co比を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を下記表5に示す。
表5に示すとおり本発明例1、8、9のインサートは抗折力と高温硬さの両立が達成されており、工具寿命が良好であった。従来例2はCr/Co比が20.77%であり、粗大な複炭化物相が存在するため、抗折力が低下し、工具寿命が短かった。
(5)複炭化物相の金属成分組成
本発明例1に対し、複炭化物相の金属成分組成を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を表6に示す。
本発明例1に対し、複炭化物相の金属成分組成を変化させたインサートを製作し、切削試験を実施した。試験結果を表6に示す。
表6に示すとおり本発明例1および本発明例7〜9は複炭化物相の金属成分組成が規定値の範囲内であるため、抗折力と高温硬さがともに高く、目標の工具寿命を得ることができた。複炭化物相の金属成分を構成するTaは、比較例1では、85.3原子%であるため、複炭化物相のサイズが粗大化し、耐チッピング性を得ることができず、工具寿命が3.3分と低下した。比較例2では、Taが79.1原子%であるため、高温硬さが低下し摩耗の進行がはやく、工具寿命が8.5分という結果となった。複炭化物相の金属成分を構成するWは、合金炭素量をすべてそろえているため、数値の変化は小さく、15%を超えることはない。複炭化物相の金属成分を構成するCrは、従来例2で示すように、91.1原子%であるため粗大な(W、Cr、Co)Cが生成し、抗折力が劣るため、工具寿命が低下した。複炭化物相の金属成分を構成するCoは、比較例2で示すように、6.0原子%であるため、高温硬さが低下し、工具寿命が目標値を達成することができなかった。
(6)複炭化物相の平均粒子径
前記表内に示す比較例1、従来例2より複炭化物相の平均粒子径が500nmを超えて大きい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
前記表内に示す比較例1、従来例2より複炭化物相の平均粒子径が500nmを超えて大きい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
(7)複炭化物相の凝集体の最長径
前記表内に示す比較例1、従来例2より複炭化物相の凝集体の最長径が1μmを超えて大きい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
前記表内に示す比較例1、従来例2より複炭化物相の凝集体の最長径が1μmを超えて大きい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
(8)複炭化物相の凝集体と結合相であるCo相との隣接距離
前記表内に示す比較例1、2および従来例2より複炭化物相の凝集体と結合相であるCo相との隣接距離が0.3μmより小さい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
前記表内に示す比較例1、2および従来例2より複炭化物相の凝集体と結合相であるCo相との隣接距離が0.3μmより小さい場合、抗折力が低下し、目標値である10分以上の工具寿命を達成できなかった。
(9)焼結工程時の冷却速度
本発明において、切削寿命及び抗折力に及ぼす焼結工程時の冷却速度の影響を確認するために、本発明例1のHIP処理後の保持温度1350℃から1200℃までの冷却速度を80℃/分から70℃/分に変えた比較例3を製作し、切削試験を実施した。試験結果を表7に示す。
本発明において、切削寿命及び抗折力に及ぼす焼結工程時の冷却速度の影響を確認するために、本発明例1のHIP処理後の保持温度1350℃から1200℃までの冷却速度を80℃/分から70℃/分に変えた比較例3を製作し、切削試験を実施した。試験結果を表7に示す。
表7に示すとおり比較例3のインサートはHIP処理後の保持温度1350℃から1200℃までの冷却速度が80℃/分未満のため、Co相の液相状態が長く、複炭化物相が凝集しやすくなる。そのため、複炭化物相の凝集体の最長径が1μmを超えて大きくなり、抗折力が低下して工具寿命が目標値である10分以上を達成できなかった。
既出の本発明例1〜9、比較例1〜3、従来例1〜2を表8にまとめて示す。
前述したとおり、比較例、従来例において、請求項1の発明特定事項を満足していない項目については、データ欄に「*」を付した。
前述したとおり、比較例、従来例において、請求項1の発明特定事項を満足していない項目については、データ欄に「*」を付した。
表8に示すとおり、本発明例1〜9は、いずれも、抗折力が3000MPa以上、高温硬さが850以上であり、優れた特性を有するため、本発明の目標値である10分以上を達成した。
本発明に係るWC基超硬合金及びこれを用いた切削工具並びにミーリング加工用インサートは、チタン合金などの難削材の高能率加工において極めて有用である。
1:Taが検出された粒子
2:Taを含有する複炭化物相
3:結合相を形成するCo相
2:Taを含有する複炭化物相
3:結合相を形成するCo相
Claims (2)
- WC平均粒子径は0.3〜2.0μmであり、結合相形成成分として9.0〜14.0質量%のCoと、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaと、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有し、WC粒子をCoにより結合したWC基超硬合金であって、前記WC基超硬合金内に、TaとWとCo及びCrを含む複炭化物相(TaxWyCrzCoα)Cを有し、前記複炭化物相の金属成分の組成は、原子%で、x+y+z+α=100、80≦x≦85、10≦y≦15、z≦5、1≦α≦5、であり、平均粒子径が500nm以下の前記複炭化物相からなる凝集体の最長径が1μm以下であり、前記凝集体が前記結合相と隣接して存在することを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
- 請求項1に記載されたWC基超硬合金製切削工具の製造方法であって、
(a)原料粉末の配合組成を定める配合工程と、
(b)定められた原料粉末の配合組成に基づいて混合および粉砕を行う混合・粉砕工程と、
(c)混合および粉砕後の原料粉末を造粒し、乾燥する造粒・乾燥工程と、
(d)得られた造粒粉末を成形し成形体を得る成形工程と、
(e)得られた成形体を焼成する焼成工程と
を順に有するWC基超硬合金製切削工具の製造方法であり、
前記(a)配合工程は、原料粉末として、9.0〜14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で1.0〜8.0%のTaを含有する粒径が0.4〜0.8μmのTaC粉末と、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、残部として平均粒径が0.3〜2.0μmのWC粉末をそれぞれ準備する工程であり、
前記(b)混合・粉砕工程は、前記原料粉末である、Co粉末、TaC粉末、Cr3C2粉末およびWC粉末を混合装置にて混合・粉砕する工程であり、
前記(e)焼成工程は、前記成形体を焼成温度まで昇温した後、焼成温度にて一定時間保持後、HIP処理温度まで冷却し、不活性ガス雰囲気にてHIP処理を行った後、1200℃以下まで80〜120℃/分の冷却速度にて急冷する工程であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具の製造方法。
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JP2020132972A (ja) * | 2019-02-22 | 2020-08-31 | 三菱マテリアル株式会社 | 超硬合金および切削工具 |
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-
2016
- 2016-07-08 JP JP2016136450A patent/JP2017024165A/ja active Pending
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