JP6066365B2 - 超硬合金及び切削工具 - Google Patents

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本発明は、超硬合金及び切削工具に関する。特に、すくい面摩耗を効果的に抑制でき、耐熱亀裂性に優れる超硬合金及び切削工具に関する。
従来、切削工具として、WC粒子を主たる硬質相とし、これをCo,Niなどの鉄族金属を主成分とする結合相により結合した超硬合金を基材に備える超硬合金工具が利用されている。超硬合金工具に求められる代表的な性能としては、耐摩耗性や耐欠損性が挙げられる。
切削工具で被削材を切削すると、切削した切りくずの変形、被削材や切りくずとの摩擦によって熱が発生し、切削工具の刃先表面は切削時に高温になる。超硬合金は、高温になると、硬度が低下して強度が低下する傾向があり、摩耗や欠損が生じ易くなる他、化学的な摩耗も進行し易くなる。
そこで、切削工具の基材となる超硬合金において、耐摩耗性や耐熱性を改善するため、硬質相としてWCの他に、TiC,TaC,NbCなどを添加したり、超硬合金の基材表面に、TiC,TiN,TiCN,Alなどを被覆したりすることが行われている。(特許文献1〜6を参照。)
特許文献1には、超硬合金全体の熱拡散率を高めることで、局所的に高温になり易い表面部と内部との熱膨張差に起因する熱亀裂の発生を抑制し、耐熱亀裂性の向上を図ることが提案されている。特許文献2には、WC粒子のアスペクト比を小さく、かつWC粒子の粒径バラツキを小さくすることで、組織内の欠陥を少なくし、耐摩耗性、耐初期欠損性及び耐疲労欠損性の両立を図ることが提案されている。特許文献3には、温度に対する超硬合金の線膨張係数の変動幅を減少させると共に、WC粒子に含まれる微粒子を少なくすることで、熱亀裂の発生を防止し、耐初期欠損性を維持したまま、耐熱亀裂性と耐摩耗性の両立を図ることが提案されている。特許文献4には、WC粒子を球形に近づけると共に、WC粒子形状のバラツキを小さくすることで、放熱量が増加し、耐摩耗性をはじめとする刃先強度の改善を図ることが提案されている。特許文献5には、超硬合金の表面部に熱伝導率の高いWCリッチ(残部Co,Niを主成分とする金属結合相)な層を形成することで、熱発散(フィン)効果により、耐熱衝撃性の向上を図ることが提案されている。特許文献6には、基材表面に耐摩耗性に優れる表面層を形成した表面被覆工具において、表面層と基材との間に熱伝導率の低い中間層を形成することにより、基材への熱の伝達を遮断して基材の温度上昇を抑止すると共に、熱伝導率の高い表面層を通じて熱を放出することが提案されている。
特開2011−42830号公報 特開2013−244588号公報 特開2013−244589号公報 特開2013−244590号公報 特開平8−225877号公報 特開2005−212025号公報
近年、切削加工の高能率化が求められ、高速、高送り、高切込といった高負荷切削条件での加工が増加しており、切削時の工具刃先の温度上昇が著しい。そのため、超硬合金工具の耐摩耗性や耐熱亀裂性の向上に対する要求が一層強まっている。
超硬合金の基材において、切削時に刃先表面が局所的に高温になると、表面部に熱膨張が起きる。特に、表面部の刃先部位では温度上昇が大きく、熱膨張が大きい。例えば、被削材の旋削を断続的に行った場合、刃先が断続的に被削材に接触する、即ち接触(切削)と非接触(空転)を繰り返すことになり、空転時に冷却されることにより熱収縮が起きる。そのため、切削と空転を繰り返し行うと、発熱と冷却の熱サイクルによる熱衝撃(熱膨張と熱収縮の繰り返し)によって、表面部に熱亀裂が発生して、熱亀裂によるチッピングや欠損が生じ易い。また、刃先を構成するすくい面は、切削時に変形により発熱した切りくずと擦過することから、最も高温になるため、硬度・強度の低下が著しく、すくい面摩耗(クレータ摩耗)が生じ易く、すくい面摩耗に起因する欠損が生じ易い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、すくい面摩耗を効果的に抑制でき、耐熱亀裂性に優れる超硬合金を提供することにある。また、別の目的は、上記超硬合金からなる基材を備える切削工具を提供することにある。
本発明の一態様に係る超硬合金は、WC粒子からなる第1硬質相と、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物からなる第2硬質相と、Co,Ni及びFeから選ばれる少なくとも1種の鉄族金属を含有する結合相と、を有し、前記WC粒子の平均粒径が0.4μm以上4.0μm以下であり、表面部に前記第1硬質相と前記結合相とからなる脱β層が形成されており、前記脱β層の熱浸透率をTEa、内部の熱浸透率をTEbとするとき、TEa/TEb≧1.10を満たす。
本発明の一態様に係る切削工具は、上記本発明の一態様に係る超硬合金からなる基材を備える。
上記超硬合金は、すくい面摩耗を効果的に抑制でき、耐熱亀裂性に優れる。上記切削工具は、優れた耐摩耗性と耐熱亀裂性を発揮できる。
本発明の実施形態に係る切削工具の一例である刃先交換型切削チップの概略斜視図である。 図1に示す刃先交換型切削チップの(II)−(II)断面における刃先近傍の部分拡大概略断面図である。
本発明者らは、表面部に脱β層(TiCやTaCなどの化合物を含む固溶体(β相)が存在せず、実質的にWCと結合相(鉄族金属)とからなる層)を有し、TiC,TaC,NbCなどを添加した超硬合金における熱特性と切削性能との関係について、鋭意研究した結果、以下のような知見を得た。
本発明者らは、超硬合金における表面部と内部との熱浸透率に着目し、表面部と内部との熱浸透率比を大きくすることが、超硬合金工具の耐摩耗性や耐熱亀裂性の向上に有効であることを見出した。熱浸透率とは、互いに接する2つの物質間の熱の伝わり易さを表す指標(単位:J/(m1/2K))であり、2つの物質の熱浸透率が等しければ、例え熱伝導率や比熱が異なっていても、2つの物質間の界面で熱の反射が生じずに熱の拡散が行われる。
具体的には、超硬合金の表面部の脱β層の熱浸透率を高めることで、表面部と内部との熱浸透率比を従来に比べて大きくする(TEa/TEbを1.10以上とする)。このような超硬合金は、表面部と内部との熱浸透率比が大きいことで、切削時に熱が発生した刃先表面から周囲(表面に沿った方向)に向かって広範囲に温度勾配が生じる。これにより、熱伝導率の高い表面部(脱β層)に沿って広範囲に熱を効果的に拡散でき、表面部全体で放熱できるため、表面部の温度上昇を低減でき、表面部が高温になり難い。その結果、高温による摩耗や熱衝撃を抑制でき、工具の耐摩耗性や耐熱亀裂性が向上する。特に、表面部と内部との熱浸透率比が大きいことで、すくい面摩耗や熱亀裂に効果がある。
これに対し、従来の超硬合金では、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比が小さい(TEa/TEbが1.10未満である)ため、切削時に刃先表面で発生した熱が刃先表面から周囲に向かって広範囲に拡散され難く、熱が籠り易い。それ故、表面部(特に、刃先部位)が局所的に高温になり易い。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る超硬合金は、WC粒子からなる第1硬質相と、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物からなる第2硬質相と、Co,Ni及びFeから選ばれる少なくとも1種の鉄族金属を含有する結合相と、を有する。この超硬合金は、WC粒子の平均粒径が0.4μm以上4.0μm以下である。そして、この超硬合金は、表面部に第1硬質相と結合相とからなる脱β層が形成されており、脱β層の熱浸透率をTEa、内部の熱浸透率をTEbとするとき、TEa/TEb≧1.10を満たす。
上記超硬合金によれば、脱β層の熱浸透率が高く、表面部の脱β層の熱浸透率TEaと内部の熱浸透率TEbとの比がTEa/TEb≧1.10を満たす。したがって、上記超硬合金は、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比が大きいため、切削時に刃先表面で発生した熱が表面部の脱β層に沿って広範囲に拡散され易く、表面部全体から放熱できる。よって、上記超硬合金は、表面部が局所的に高温になることを抑制でき、表面部の硬度・強度の低下を抑制できることから、耐摩耗性や耐欠損(耐チッピング)性が向上する。更には、表面部の温度上昇が小さいため、切削時の熱サイクルによって熱膨張と熱収縮とを繰り返すことにより生じる熱亀裂を抑制でき、それに起因する欠損も抑制できる。つまり、熱サイクル(熱衝撃)が負荷される切削条件において、工具寿命が向上する。特に、発熱した切りくずとの擦過により最も高温になり易いすくい面において、温度上昇が抑制されるため、すくい面摩耗(クレータ摩耗)を効果的に抑制でき、すくい面摩耗に起因する欠損も抑制できる。
TEa/TEb<1.10のときは、表面部の脱β層と内部の熱浸透率比が小さいため、表面部において、高温の刃先部位から低温の刃先周辺に向かって広範囲に熱の拡散(放熱)が十分に進まない。
WC粒子の平均粒径が0.4μm以上であることで、靱性が高く、機械的・熱的な衝撃によるチッピングや欠損を抑制できる。また、耐亀裂伝播性が向上することから、亀裂の伝播が抑制され、チッピングや欠損を抑制できる。WC粒子の平均粒径が4.0μm以下であることで、硬度が高く、切削時の変形が抑制されるため、摩耗や欠損を抑制できる。
(2)上記超硬合金の一例として、TEa/TEb≧1.20を満たす態様が挙げられる。
TEa/TEb≧1.20を満たすことで、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比がより大きくなるため、表面部に沿って広範囲に熱を拡散でき、表面部全体から効果的に放熱できる。よって、表面部が局所的に高温になることをより抑制でき、表面部の硬度・強度の低下や熱衝撃による熱亀裂をより抑制できることから、耐摩耗性や耐欠損性、耐熱亀裂性がより向上する。
(3)上記超硬合金の一例として、上記脱β層中に存在する前記WC粒子のうち、他のWC粒子との接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が5%以下である態様が挙げられる。
他のWC粒子との接触点数が1点以下のWC粒子(即ち、他のWC粒子と1点のみ接触又は接触しないWC粒子)の存在比率が5%以下であることで、複数のWC粒子と接触しないWC粒子の数が少ない。換言すれば、複数のWC粒子と接触するWC粒子の数が多い。WC粒子同士が接触してネットワークを形成し、熱伝導パスが形成されることにより、熱浸透率を高めることができ、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比をより大きくできる。脱β層における接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が5%以下であることで、複数のWC粒子と接触してネットワークを形成するWC粒子が多く、WC粒子同士の接触点が増加して熱伝導パスが増加するため、脱β層の熱浸透率をより高められる。
(4)上記超硬合金の一例として、上記第2硬質相がNを含有する少なくとも1種の窒素含有化合物を含む態様が挙げられる。
第2硬質相が窒素含有化合物(窒化物や炭窒化物など、及びこれらの化合物を含む固溶体)を含むことで、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比を大きくできる。超硬合金の製造段階において、原料粉末を焼結する際に結合相への硬質相の溶解・再析出が生じ、脱β層は、硬質相の溶解・再析出時の移動や焼結時の脱窒によって形成される。窒素含有化合物を含むことで、脱窒が効果的に起こり、脱β層の熱浸透率をより高められる。
(5)本発明の一態様に係る切削工具は、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の超硬合金からなる基材を備える。
上記切削工具は、耐摩耗性や耐欠損(耐チッピング)性に優れる上記超硬合金を基材に備えることから、優れた耐摩耗性と耐欠損性を発揮でき、工具寿命が長い。特に、上記超硬合金は、すくい面摩耗や熱亀裂を抑制できることから、上記切削工具は、耐すくい面摩耗性や耐熱亀裂性に優れる。切削工具の具体例としては、刃先交換型切削チップ(スローアウェイチップ)、バイト、エンドミル、ドリル、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどが挙げられる。
(6)上記切削工具の一例として、上記基材の表面に被覆膜を備える態様が挙げられる。
基材表面に被覆膜を備えることで、工具の耐摩耗性などを改善でき、更なる長寿命化が図れる。被覆膜の構成材料としては、例えばTiC,TiN,TiCN,Alなどが挙げられる
(7)上記切削工具の一例として、上記被覆膜が化学蒸着法により形成されている態様が挙げられる。
被覆膜が化学蒸着法(CVD法)により形成されていることで、基材との密着性に優れる硬質膜を得ることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る超硬合金及び切削工具の具体例を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
《超硬合金》
実施形態に係る超硬合金は、WC粒子からなる第1硬質相と、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物からなる第2硬質相と、Co,Ni及びFeから選ばれる少なくとも1種の鉄族金属を含有する結合相と、不可避的不純物を有する組成からなる。超硬合金の組成としては、特に限定されるものではなく、公知の組成を採用することも可能である。
[第1硬質相]
超硬合金は、硬質相として第1硬質相と第2硬質相とを有し、第1硬質相のWC粒子を主成分として含む。超硬合金中、WC粒子は少なくとも50質量%以上含有し、例えば70質量%以上97質量%以下の範囲で含有することが挙げられる。好ましいWC粒子の含有量は、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上であり、95質量%以下である。
(WC粒子)
第1硬質相を構成するWC粒子の平均粒径は0.4μm以上4.0μm以下であることが好ましい。WC粒子の平均粒径が0.4μm以上であることで、靱性が高く、機械的・熱的な衝撃によるチッピングや欠損を抑制できる。また、耐亀裂伝播性が向上することから、亀裂の伝播が抑制され、チッピングや欠損を抑制できる。WC粒子の平均粒径が4.0μm以下であることで、硬度が高く、切削時の変形が抑制されるため、摩耗や欠損を抑制できる。WC粒子の平均粒径は、1.0μm以上、2.0μm以上がより好ましく、更に2.5μm以上3.5μm以下が更に好ましい。
(第2硬質相)
第2硬質相は、WC粒子を除く、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)からなる粒子である。金属としては、Ti,Ta,Nb,Zr,V及びCrなどが挙げられる。化合物とは、主として、上記金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、硼化物などであり、化合物には、これらの固溶体も含まれる。具体的な化合物としては、TiC,TaC,TiCN,NbC,ZrC,ZrN,TiN,TaN,TaCN,(Ta,Nb)C,VC,Crなどが挙げられる。超硬合金中、第2硬質相は、例えば1質量%以上15質量%以下の範囲で含有することが挙げられる。
第2硬質相には、Nを含有する少なくとも1種の窒素含有化合物を含むことが好ましい。第2硬質相が窒素含有化合物(窒化物や炭窒化物など、及びこれらの化合物を含む固溶体)を含むことで、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比を大きくできる。脱β層は、焼結時に表面部を脱窒することによって形成されることから、第2硬質相が窒素含有化合物を含むことで、脱窒が効果的に起こり、脱β層の熱浸透率をより高められる。
[結合相]
結合相は、Co,Ni及びFeから選ばれる少なくとも1種の鉄族金属を主成分として含有し、実質的に上記鉄族金属からなることが好ましい。結合相には、不可避的不純物の他、硬質相を構成するWCや第2硬質相の化合物(TiC,TaC,NbCなど)の構成元素(WやTi,Ta,Nbなど)が固溶することを許容する。
結合相の含有量は、4質量%以上11質量%以下であることが好ましい。結合相の含有量が4質量%以上であることで、製造時の焼結性の悪化を防止し、結合相によって硬質相が強固に結合されるため、強度が高く、欠損が生じ難い。また、結合相の含有量が4質量%以上であることで、超硬合金の靱性が向上する。結合相の含有量が11質量%以下であることで、硬質相が相対的に減少することによる超硬合金の硬度の低下を抑制し、耐摩耗性や耐塑性変形性の低下を抑制できる。
[脱β層]
超硬合金は、表面部に第1硬質相(WC粒子)と結合相(鉄族金属)とから実質的になる脱β層が形成されている。この脱β層には、β相(第2硬質相の化合物を含む固溶体)が実質的に存在しない。脱β層より深い内部では、超硬合金の組成、即ち、WC粒子、第2硬質相及び結合相の含有量が実質的に一定である。脱β層は、超硬合金の表面全体に形成されていることが好ましい。また、脱β層中に存在するWC粒子のうち、他のWC粒子との接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率(個数比率)が5%以下であることが好ましい。接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が5%以下であることで、複数のWC粒子と接触してネットワークを形成するWC粒子が多く、WC粒子同士の接触点が増え、熱伝導パスが増加することから、熱浸透率が向上し、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比をより大きくできる。特に、脱β層は、実質的にWC粒子と結合相のみからなる組成であるため、WC粒子同士の接触点が増えることによって、内部よりも熱浸透率が高くなり易い。接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率は低いことが好ましく、例えば4.5%以下、4%以下、3%以下がより好ましい。接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率の下限は特に限定されないが、例えば0.1%以上、0.5%以上、1%以上である。
[脱β層と内部との熱浸透率比(TEa/TEb)]
超硬合金は、表面部に上記脱β層が形成されていることで、表面部の脱β層と内部との熱浸透率比が大きく、脱β層の熱浸透率をTEa、内部の熱浸透率をTEbとするとき、TEa/TEb≧1.10を満たす。表面部の脱β層と内部との熱浸透率比が大きいため、切削時に刃先表面で発生した熱が表面部の脱β層に沿って広範囲に拡散され易く、表面部全体から放熱できる。TEa/TEb<1.10のときは、表面部の脱β層と内部の熱浸透率比が小さいため、表面部において、高温の刃先部位から低温の刃先周辺に向かって広範囲に熱の拡散が十分に進まない。熱浸透率比の好ましい範囲は、TEa/TEb≧1.20である。熱浸透率比(TEa/TEb)は、より好ましくは1.22以上であり、更に1.23以上、1.24以上であることが好ましい。実施形態に係る超硬合金の脱β層と内部との熱浸透率比が従来に比べて大きい理由は、脱β層の熱浸透率が従来の脱β層に比較して高いためである。脱β層の熱浸透率が従来の脱β層に比較して高い理由は、従来に比べてWC粒子の結晶性が高いことや、脱β層中の第2硬質相成分(β相)などの不純物が極めて少なく、脱β層の純度がより高いためと推定される。
《超硬合金の評価》
〈WC粒子の評価〉
超硬合金中のWC粒子の評価は、超硬合金の任意の表面又は断面を鏡面加工して、該加工面を顕微鏡で観察して行う。
鏡面加工の方法としては、例えば、ダイヤモンドペーストで研磨する方法、集束イオンビーム(FIB)装置を用いる方法、クロスセクションポリッシャー(CP)装置を用いる方法、及びこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
該加工面を金属顕微鏡によって観察する場合には、加工面を村上氏試薬でエッチングするのが好ましい。顕微鏡観察で得られた画像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウェアを用いて解析することで、平均粒径などの各種情報を取得できる。このようなソフトウェアとしては、画像解析式粒度分布ソフトウェア(例えば、株式会社マウンテック製「Mac−View」)などが挙げられる。
なお、観察面としては刃先部位とすることが好ましい。顕微鏡観察の方法としては、例えば、金属顕微鏡で750〜1500倍、走査型電子顕微鏡(SEM)で3000〜10000倍の倍率で観察することが挙げられる。
顕微鏡観察で得られた画像から、個々のWC粒子の粒径(Heywood径(等面積円相当径))を算出し、その平均値をWC粒子の平均粒径とする。測定するWC粒子の数は、少なくとも100個以上とし、200個以上とすることが好ましい。
〈脱β層の評価〉
脱β層は、超硬合金を表面に対して垂直に切断した断面を鏡面加工し、上述したWC粒子の評価と同じように、該加工面を顕微鏡で観察することで確認することができる。また、脱β層の厚さは、超硬合金断面の表面付近を観察し、表面から内部に向かって厚さ(深さ)方向にβ相が実質的に存在しない範囲を測定して、その厚さを脱β層の厚さとする。そして、測定箇所を変更して20回以上測定を行い、その平均値を脱β層の厚さとする。なお、測定箇所としては刃先部位とすることが好ましい。
脱β層における接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率は、脱β層中の複数のWC粒子について他のWC粒子との接触点数を計測し、計測した全粒子のうち、接触点数が1点以下のWC粒子の割合を算出することで求めることができる。脱β層中に存在するWC粒子の接触点数は、鏡面加工した超硬合金断面の脱β層を顕微鏡で観察し、断面観察像から、個々のWC粒子における他のWC粒子との接触点数をカウントすることで計測できる。具体的には、観察箇所を変更して複数(例えば、5以上)の領域を観察し、各領域内のWC粒子の接触点数を計測する。そして、接触点数を計測した全粒子の総数に対する接触点数が1点以下のWC粒子の数の割合を算出し、その値を脱β層における接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率とする。なお、観察箇所としては刃先部位とすることが好ましく、計測するWC粒子の数は、少なくとも100個以上とし、200個以上とすることが好ましい。
〈熱浸透率の評価〉
超硬合金の表面部(脱β層)及び内部の熱浸透率の評価は、以下のようにして熱物性顕微鏡による位相差遅れを測定して行う。熱物性顕微鏡には、例えば株式会社ベテル製「サーマルマイクロスコープTM3」を利用できる。
(準備)
超硬合金を表面に対して斜め方向に切断する。このとき、切断面の長さ(斜辺の長さ)が垂直方向に切断したときの切断面の長さ(即ち、超硬合金の厚さに同じ)の3倍の長さになるように切断する。つまり、脱β層の厚さがAのとき、切断面上の脱β層の厚さ(切断方向に沿った長さ)が3Aとなるように切断する。その後、切断面を鏡面加工する。
(校正)
該加工面と基準試料とを同時にMoスパッタリングし、熱物性顕微鏡により熱浸透率と位相差との校正曲線を得る。
(測定条件)
該加工面における脱β層及び内部の40μm×40μmの領域に対して、検出光スポット径3μm、測定間隔2μmでマッピング測定を行い、21×21点、計441点の測定を行う。測定点1点につき100回測定した平均値を算出し、全測定点のデータのうち、最大値から10%の測定値及び最小値から10%の測定値を除いた残りの80%の測定値の平均値を、測定領域の熱浸透率とする。測定領域を変更して、異なる5か所の40μm四方の領域について熱浸透率を測定し、その5か所の平均値を、超硬合金における脱β層及び内部の熱浸透率とする。
《超硬合金の製造方法》
実施形態に係る超硬合金は、原料粉末の準備→原料粉末の混合→乾燥→成形→焼結→冷却という工程により製造できる。ここで、超硬合金の表面部に、内部に対して熱浸透率が十分に高い脱β層を形成するためには、WCの結晶性や脱β層の純度を高めることが必要であり、その手法としては、原料組成、混合方法、焼結時の真空度(圧力)、冷却時の冷却速度などを制御することが挙げられる。
[準備工程]
準備工程は、原料粉末として、第1硬質相となるWC粉末、第2硬質相となる化合物粉末、結合相となる鉄族金属粉末を準備する工程である。各粉末の粒度は、特に限定されないが、例えば0.5μm以上10μm以下の範囲とすることが挙げられる。なお、各粉末の粒度は、フィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)法による平均粒径(FSSS径)のことである。一般に、原料に用いるWC粉末の粒径が小さいほど、最終的に得られる超硬合金中のWC粒子の粒径が小さくなり、WC粉末の粒径が大きいほど、超硬合金中のWC粒子の粒径が大きくなる。特に、WC粉末を、後述するような粉砕が発生し難い方法で混合する場合は、混合後もWC粉末の粒度がほぼ変わらないため、WC粉末の粒度は、例えば0.5μm以上4.0μm以下とすることが挙げられる。
所定の脱β層を形成するための形成条件Iとして、原料に用いる第2硬質相の化合物粉末の一つに、窒素含有化合物(例、ZrN,TiN,TaNやTiCN、及びこれらの化合物を含む固溶体など)を用いることが好ましい。原料に窒素含有化合物を用いることで、焼結時に表面部の脱窒が効果的に起こり、内部よりも熱浸透率の高い脱β層を形成できる。原料粉末における窒素含有化合物の含有量は、例えば0.1質量%以上5質量%以下とすることが挙げられる。原料として窒素含有化合物を0.1質量%以上含有することで、熱浸透率の高い脱β層が形成され易い。窒素含有化合物の含有量を5質量%以下とすることで、抗折力の低下などを抑制でき、かつ経済的である。
[混合工程]
混合工程は、原料粉末を混合して、混合物を得る工程である。混合工程において、メディア(粉砕ボール)を入れたアトライターやボールミルなどの混合装置を用いて原料のWC粉末を粉砕混合した場合、WC粒子が粉砕され、WCの結晶性が低い、アスペクト比の大きな粒子が発生する。そこで、所定の脱β層を形成するための形成条件IIとして、混合工程では、原料となるWC粉末を、粉砕が発生し難い方法で混合することが好ましい。このような処理を行うことで、WC粒子同士の衝突によって、WC粒子の角が取れてアスペクト比が小さくなる。また、WC粒子が粉砕されないため、結晶性の高いWC粒子を得ることができる。このようなWC粒子を用いることで、超硬合金全体の熱浸透率を高められると共に、脱β層と内部との熱浸透率比を大きくできる。
粉砕が発生し難い混合方法としては、例えば、WC粉末を含む原料粉末を、メディアの入っていないアトライターやボールミルなどで撹拌したり、V型混合機で低速で撹拌する方法が挙げられる。その他、インペラを用いる方法、水流を用いる方法、これらを兼ね備えた方法など、粉砕が生じ難い方法であれば、いかなる方法を用いることが可能である。
混合(撹拌)する時間は、長時間とすることが好ましく、例えば10時間以上、更に12時間以上とすることが挙げられる。混合時間が短過ぎると、WC粒子のアスペクト比を十分に小さくできず、長過ぎても、それ以上の効果は得られず、混合時間が長くなることから、経済的ではない。よって、混合方法にもよるが、混合時間は、例えば24時間以下、更に22時間以下とすることが挙げられる。混合(撹拌)は、水、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールなどの溶媒中で行ってもよい。
原料粉末を配合する前に、WC粉末のみを上記の粉砕が発生し難い方法で混合して、調整してもよい。更に、得られたWC粉末を分級装置によって適宜分級してもよい。この分級処理により、粒度分布が狭く、粒子のアスペクト比の小さいWC粉末が得られる。分級方式には、例えば気流方式、湿式ふるい方式、乾式ふるい方式などを採用することができ、分級処理を複数回繰り返し行ってもよい。
[乾燥工程]
乾燥工程は、混合工程で得られた混合物を乾燥する工程である。乾燥方法としては、公知の方法を採用することができ、例えばスプレードライなどを用いることができる。
[成形工程]
成形工程は、混合物を所定の形状に成形して、成形体を得る工程である。成形条件は、一般的な条件を採用すればよく、特に問わない。所定の形状としては、例えば切削工具形状とすることが挙げられる。
[焼結工程]
焼結工程は、成形体を焼結して、焼結体を得る工程である。一般に、焼結は、10kPa以下の真空雰囲気中で1350℃〜1600℃の温度で行われる。所定の脱β層を形成するための形成条件IIIとして、焼結時の最高温度での真空度(圧力)を5.0kPa未満とすることが好ましい。焼結時の真空度を高く(圧力を低く)することで、第2硬質相成分(β相)などの不純物が少なく、より純度の高い脱β層を形成することができ、脱β層と内部との熱浸透率比を大きできる。焼結時の真空度(圧力)は、好ましくは4kPa以下である。焼結時の雰囲気は、Nガス雰囲気やArなどの不活性ガス雰囲気とすることが挙げられる。
更に別の形成条件IVとして、焼結前に成形体を上記焼結温度より低い温度で一定時間保持して予備加熱を行い、続いて所定の焼結温度まで昇温して焼結することが好ましい。具体的には、焼結工程では、焼結温度より低い温度で一定時間保持して予備加熱する予備加熱段階と、その後、昇温して、所定の焼結温度で焼結する焼結段階とに分けて行うことが好ましい。焼結前に成形体を予備加熱することで、WC粒子同士の接触界面でネッキングが生じ、WC粒子同士を強固に結合することができる。つまり、予備加熱により、WC粒子同士が単に接触しているだけでなく、WC粒子同士が結合した状態となる。そのため、焼結時に、溶融した液相の結合相(鉄族金属粉末)がWC粒子同士の接触界面に浸入してWC粒子同士が離間した状態となり難い。したがって、焼結後の焼結体において、WC粒子同士の接触点が多い、即ち、複数のWC粒子と接触するWC粒子の数が多くなるため、熱伝導パスが増加して、超硬合金全体の熱浸透率が高くなる。特に、脱β層では、実質的にWC粒子と結合相のみの組成であるため、脱β層の方が内部よりも熱浸透率が高くなり易く、内部との熱浸透率の差が大きくなり易い。よって、焼結前に予備加熱を行うことで、WC粒子同士のネッキングを増やして、WC粒子同士の接触点が多くなるため、超硬合金全体の熱浸透率を高められると共に、脱β層と内部との熱浸透率比をより大きくできる。
予備加熱の条件は、結合相が固相の状態で、WC粒子同士のネッキングが生じてWC粒子同士が結合する温度と時間を設定することが挙げられる。予備加熱の温度は、結合相の融点より低い温度で、かつWC粒子同士のネッキングを促進する温度とすることが挙げられ、例えば900℃以上1350℃未満とすることが好ましい。予備加熱の温度は、より好ましくは1000℃以上1300℃以下であり、1100℃以上1200℃以下が更に好ましい。予備加熱の時間は、焼結時に液相になった結合相がWC粒子間に侵入することを阻止できる程度にWC粒子同士のネッキング(結合)が生じる時間とすることが挙げられ、例えば60分以上とすることが好ましい。予備加熱の時間を長くするほど、WC粒子同士の結合が生じて、WC粒子の接触点が増える傾向がある。予備加熱の時間は、より好ましくは120分以上であり、180分以上が更に好ましい。予備加熱時間の上限は特に限定されないが、例えば900分以下である。他方、焼結条件は、例えば1350℃以上1600℃以下の温度、好ましくは1400℃以上1500℃以下の温度で、例えば30分以上180分以下、好ましくは60分以上120分以下保持することが挙げられる。
[冷却工程]
冷却工程は、焼結完了後の焼結体を冷却する工程である。所定の脱β層を形成するための形成条件Vとして、冷却工程では、30℃/min未満の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却速度を遅く(徐冷)することで、表面部にβ相が残存し難くなり、より純度の高い脱β層を形成することができるため、脱β層と内部との熱浸透率比を大きくできる。冷却速度は、好ましくは25℃/min以下である。冷却時の雰囲気は、Nガス雰囲気やArなどの不活性ガス雰囲気とすることが挙げられる。
上記脱β層の形成条件I〜Vの全ての条件を満たすことが好ましい。特に、これら条件のうち、少なくとも形成条件IIを満たすことが好ましく、更に形成条件Iも満たすことが好ましい。
《用途》
上記実施形態に係る超硬合金は、表面部が局所的に高温になることを抑制でき、表面部の硬度・強度の低下を抑制できることから、耐摩耗性や耐欠損(耐チッピング)性が向上する。更には、表面部の温度上昇が小さいため、切削時の熱サイクルによって熱膨張と熱収縮とを繰り返すことにより生じる熱亀裂を抑制でき、それに起因する欠損も抑制できる。つまり、熱サイクル(熱衝撃)が負荷される切削条件において、工具寿命が向上する。特に、発熱した切りくずとの擦過により最も高温になり易いすくい面において、温度上昇が抑制されるため、すくい面摩耗(クレータ摩耗)を効果的に抑制でき、すくい面摩耗に起因する欠損も抑制できる。よって、上記超硬合金を切削工具の基材に使用した切削工具は、優れた耐摩耗性と耐欠損性を発揮し、工具寿命を延長できる。
《切削工具》
[基材]
実施形態に係る切削工具は、上記実施形態に係る超硬合金を基材に備える所謂超硬合金工具である。切削工具の具体例としては、刃先交換型切削チップ(スローアウェイチップ)、バイト、エンドミル、ドリル、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどが挙げられる。特に、上記超硬合金の基材を少なくとも刃先部に備えることが好ましい。
[被覆膜]
切削工具は、上記超硬合金の基材の表面に被覆膜を備えてもよい。基材表面に被覆膜を備えることで、工具の耐摩耗性などを改善でき、更なる長寿命化が図れる。被覆膜は、超硬合金基材の表面全体に形成されていてもよいし、刃先部のみ形成されていてもよい。
被覆膜は、周期表4,5,6族元素、Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)からなる1層以上の層を有することが好ましい。被覆膜を構成する具体的な化合物としては、例えば、TiC,TiN,TiCN,TiAlN,TiAlCN,TiSiN,Alなどが挙げられる。被覆膜は、1層のみからなる単層構造でもよいし、異なる構成材料で形成した層を2層以上積層した多層構造でもよい。被覆膜全体の厚さは、例えば1μm以上30μm以下であることが好ましい。被覆膜の厚さが1μm以上であることで、耐摩耗性などの向上効果が十分に得られ易い。一方、被覆膜の厚さが30μmを超えても、それ以上の効果が得られず、経済的ではない。
被覆膜は、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法により形成することができる。被覆膜がCVD法により形成されていると、基材との密着性に優れる被覆膜が得られ易い。CVD法としては、例えばプラズマCVD法などが挙げられる。
実施形態に係る切削工具の一例として、刃先交換型切削チップを図1に示す。図1に示す刃先交換型切削チップ1は、略菱形平板状であり、略菱形をなす上面及び下面に設けられたすくい面2と、すくい面2に交差する各側面に設けられた逃げ面3と、すくい面2と逃げ面3との交差稜線部に設けられた切れ刃(刃先)4と、中心部に取付孔5と、を有する。この切削チップ1は、上下の各稜線部に刃先4が設けられており、合計8つの刃先4を有する。切削チップ1は、図2に示すように、超硬合金の基材10と、基材10の表面に被覆膜20を備える。この基材10は、上記実施形態に係る超硬合金であり、超硬合金の表面部に脱β層11が形成されており、脱β層11と内部12の熱浸透率比(TEa/TEb)が1.10以上を満たす。切削チップ1は、例えばホルダ(シャンク)に取り付けられ使用される。
[実施例]
超硬合金からなる基材を備える切削工具(刃先交換型切削チップ)を作製し、その評価を行った。
<実施例1>
原料粉末として、FSSS径が3.1μmと8.5μmの2種類のWC粉末と、FSSS径が2.5μmのTiCN粉末,TiC粉末,ZrN粉末,ZrC粉末,TaC粉末及びNbC粉末と、FSSS径が1.5μmのCo粉末とを準備した。各粒度のWC粉末を、WC粉末1(3.1μm),WC粉末2(8.5μm)とした(括弧内の数値は粒度を示す)。そして、各粉末を以下に示す組成となるように配合した原料を得た。
原料1A:2.0質量%のTiCNと、2.0質量%のTaCと、1.5質量%のNbCと、6.5質量%のCoと、残部がWCの組成。但し、WC粉末1(3.1μm)を用いる。
原料1A’:WC粉末2(8.5μm)を用いる以外は、原料1Aと同じ組成。
原料1B:2.0質量%のTiCと、2.0質量%のTaCと、1.5質量%のNbCと、6.5質量%のCoと、残部がWCの組成。但し、WC粉末1(3.1μm)を用いる。
原料1C:1.6質量%のZrNと、1.4質量%のTaCと、2.5質量%のTiCと、6.5質量%のCoと、残部がWCの組成。但し、WC粉末1(3.1μm)を用いる。
原料1C’:WC粉末2(8.5μm)を用いる以外は、原料1Cと同じ組成。
原料1D:1.6質量%のZrCと、1.4質量%のTaCと、2.5質量%のTiCと、6.5質量%のCoと、残部がWCの組成。但し、WC粉末1(3.1μm)を用いる。
[超硬合金の調整]
上記原料を用い、以下のように製造条件を変更して、表1に示す試料No.1−1〜No.1−12の刃先交換型切削チップの超硬合金製基材を作製した。
配合した原料と、液体パラフィン(2.0質量%)と、エタノール溶媒とを、以下に示すいずれかの混合方法で24時間混合した。
粉砕混合:メディアを入れたアトライターで混合。
撹拌:メディアを入れずにアトライターで混合。
混合後、混合物をスプレードライ乾燥して造粒した。次いで、混合物を147MPa(1500kgf/cm)の圧力でプレス成形して、型番CNMG120408N−GU(住友電工ハードメタル株式会社製)形状の成形体を作製した。
次に、真空度及び温度を制御可能な炉に成形体を入れ、炉内を表1に示す真空度(圧力)に制御して、1430℃の温度で1時間焼結した。焼結完了後、表1に示す冷却速度で冷却した。
[基材の調整]
以上のようにして得られた超硬合金に適宜ホーニング処理などの刃先処理加工を施して、表1に示す試料No.1−1〜No.1−12の刃先交換型切削チップの超硬合金製基材(形状:CNMG120408N−GU)を完成した。
[超硬合金の特性評価]
(WC粒子の評価)
作製した超硬合金製基材(試料)の刃先部を切断した断面をダイヤモンドペーストを用いて鏡面加工する、又は、CP装置を用いて切断面の一部をアルゴンイオンビームによってイオンミリング加工し、顕微鏡用観察試料とした。
この観察試料の加工面を、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて5000倍の倍率で観察し、反射電子画像を5視野撮影した。1視野につき、視野中心部のWC粒子500個について、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Mac−View」)を用いて、個々のWC粒子の粒径(Heywood径)を求め、計5視野におけるWC粒子の平均粒径を算出した。その結果を表1に示す。
(脱β層の評価)
上記観察試料断面の表面付近を、FE−SEMを用いて5000倍の倍率で観察し、脱β層の有無を確認した。ここでは、観察画像上で、超硬合金製基材の内部に対してβ相の存在比率(面積比)が20%未満の領域を脱β層とした。試料断面の表面付近を全体に亘って観察したところ、いずれの試料も表面部に脱β層を有しており、超硬合金製基材の表面全体に脱β層が形成されていることが確認できた。
(熱浸透率の評価)
作製した超硬合金製基材の刃先部を斜め方向に切断して、ダイヤモンドペーストを用いて鏡面加工し、熱浸透率評価用試料とした。切断方向は、切断面の長さが垂直方向に切断したときの切断面の長さの3倍の長さになるように、表面に対して斜めに切断した。この評価用試料の加工面と基準試料とを同時にMoスパッタリングし、熱物性顕微鏡(株式会社ベテル製「サーマルマイクロスコープTM3」)により熱浸透率と位相差との校正曲線を得た。そして、加工面における脱β層及び内部の40μm×40μmの領域に対して、検出光スポット径3μm、測定間隔2μmでマッピング測定を行い、21×21点、計441点の測定を行う。測定点1点につき100回測定した平均値を算出し、全測定点のデータのうち、最大値から10%の測定値及び最小値から10%の測定値を除いた残りの80%の測定値の平均値を、測定領域の熱浸透率とする。測定領域を変更して、異なる5か所の40μm四方の領域について熱浸透率を測定し、その5か所の平均値を算出して、試料の脱β層の熱浸透率(TEa)及び内部の熱浸透率(TEb)を求め、熱浸透率比(TEa/TEb)を求めた。その結果を表1に示す。
[被覆膜の形成]
作製した超硬合金製基材の表面に、CVD法を用いて、TiN(0.2μm)、TiCN(4.5μm)、TiBN(0.2μm)、α−Al(5.5μm)、TiN(0.2μm)をこの順番で積層した被覆膜を形成した(括弧内の数値は厚さを示す)。
以上のようにして、表1に示す試料No.1−1〜No.1−12の刃先交換型切削チップを完成した。
[切削工具の評価]
各試料の刃先交換型切削チップについて、耐摩耗性を評価した。刃先交換型切削チップを型番DCLNR2525(住友電工ハードメタル株式会社製)のホルダに取り付け、以下に示す切削条件で鋼高速旋削による耐摩耗性試験を実施した。
(切削条件)
被削材:S35C
切削速度(V):270m/min
送り量(f):0.35mm/rev
切込量(ap):1.7mm
クーラント:湿式(WET)
評価は、欠損するまでの時間(寿命)を測定すると共に、その要因を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0006066365
TEa/TEb≧1.10を満たす試料No.1−2〜No.1−7及び試料No.1−9〜No.1−12は、TEa/TEb<1.10である試料No.1−1及びNo.1−8に比較して、クレータ欠損に至るまでの時間(寿命)が長いことから、すくい面摩耗(クレーター摩耗)が効果的に抑制されており、耐摩耗性に優れることが分かる。これは、TEa/TEb≧1.10を満たすことで、脱β層と内部との熱浸透率比が大きいため、切削時に刃先表面で発生した熱が表面部の脱β層に沿って広範囲に拡散でき表面部全体で放熱できたことから、表面部が局所的に高温になることが抑制され、耐摩耗性が向上したものと推定される。これら試料の熱浸透率比が大きくなった理由は、メディアを入れずに原料粉末を撹拌したことによってWC粒子が粉砕され難く、WCの結晶性が高いことから、超硬合金全体の熱浸透率が高められると共に、脱β層と内部との熱浸透率比が大きくなったものと考えられる。これに対し、試料No.1−1及びNo.1−8では、原料粉末を粉砕混合したため、WCの結晶性が低下したことから、脱β層と内部との熱浸透率比が小さくなったものと考えられる。
特に、TEa/TEb≧1.20を満たす試料No.1−2及びNo.1−9は、寿命が35分以上であり、すくい面摩耗がより効果的に抑制され、耐摩耗性により優れる。したがって、熱浸透率比が大きいほど、すくい面摩耗が効果的に抑制され、耐摩耗性が向上していることから、放熱性が高いと考えられる。
また、試料No.1−2とNo.1−3との比較、並びに、試料No.1−9とNo.1−10との比較から、第2硬質相として窒素含有化合物(例、TiCNやZrN)を含有することで、熱浸透率比が大きくなることが分かる。これは、原料に窒素含有化合物を含むことで、焼結時に脱窒が効果的に起こり、β相が消失することで、より純度の高い脱β層を形成されたものと推定される。一方で、原料に窒素含有化合物が含まれていない場合、β相が十分に消失せず、脱β層の純度が低下したものと考えられる。
更に、試料No.1−2とNo.1−4,No.1−5との比較、並びに、試料No.1−9とNo.1−11との比較から、焼結時の真空度を高く(炉内圧力を低く)することで、熱浸透率比が大きくなることが分かる。これは、真空度が高い(5.0kPa未満)ほど、表面部に第2硬質相成分(β相)などの不純物が残存し難くなり、より純度の高い脱β層を形成されたものと推定される。試料No.1−2とNo.1−6,No.1−7との比較、並びに、試料No.1−9とNo.1−12との比較から、冷却時の冷却速度を遅く(徐冷)することで、熱浸透率比が大きくなることが分かる。これは、冷却速度が遅い(30℃/min未満)ほど、表面部にβ相が残存し難くなり、より純度の高い脱β層を形成されたものと推定される。なお、試料No.1−2の超硬合金製基材における脱β層及び内部の熱浸透率(実測値)は、脱β層:18829(J/(m1/2K)、内部:15602(J/(m1/2K)であった。
<実施例2>
原料粉末として、表1に示す粒度(FSSS径)のWC粉末を準備した。また、FSSS径が2.5μmのTiCN粉末,TaC粉末,NbC粉末と、FSSS径が1.5μmのCo粉末とを準備した。そして、各粉末を以下に示す組成となるように配合して原料とした。
組成:1.8質量%のTiCNと、2.6質量%のTaCと、2.6質量%のNbCと、8.0質量%のCoと、残部がWCの組成。
[超硬合金の調整]
上記原料を用い、以下のようにして、表2に示す試料No.2−1〜No.2−6の刃先交換型切削チップの超硬合金製基材を作製した。
配合した原料と、液体パラフィン(2.0質量%)と、エタノール溶媒とを、メディアの入っていないアトライターで撹拌して混合した。混合時間は、試料No.2−4のみ12時間とし、その他の試料は全て24時間とした。
混合後、混合物をスプレードライ乾燥して造粒した。次いで、混合物を147MPa(1500kgf/cm)の圧力でプレス成形して、型番CNMG120408N−GE(住友電工ハードメタル株式会社製)形状の成形体を作製した。
次に、真空度及び温度を制御可能な炉に成形体を入れ、炉内圧力を4kPaに制御して、1450℃の温度で1時間焼結した。焼結完了後、25℃/minの冷却速度で冷却した。
[基材の調整]
以上のようにして得られた超硬合金に適宜ホーニング処理などの刃先処理加工を施して、表2に示す試料No.2−1〜No.2−6の刃先交換型切削チップの超硬合金製基材(形状:CNMG120408N−GE)を完成した。
[超硬合金の評価]
作製した超硬合金製基材(試料)について、実施例1と同じようにして、超硬合金の特性を評価した。いずれの試料も表面部に脱β層を有しており、超硬合金製基材の表面全体に脱β層が形成されていた。WC粒子の平均粒径、並びに、脱β層の熱浸透率(TEa)と内部の熱浸透率(TEb)との熱浸透率比(TEa/TEb)を表2に示す。
[被覆膜の形成]
作製した超硬合金製基材の表面に、CVD法を用いて、TiN(0.2μm)、TiCN(6.0μm)、TiBN(0.8μm)、α−Al(3.0μm)、TiN(0.2μm)をこの順番で積層した被覆膜を形成した(括弧内の数値は厚さを示す)。
以上のようにして、表2に示す試料No.2−1〜No.2−6の刃先交換型切削チップを完成した。
[切削工具の評価]
各試料の刃先交換型切削チップについて、耐熱亀裂性を評価した。刃先交換型切削チップを型番DCLNR2525(住友電工ハードメタル株式会社製)のホルダに取り付け、以下に示す切削条件で鋼繰り返し旋削による耐熱亀裂性試験を実施した。
(切削条件)
被削材:SCr420H
切削速度(V):230m/min
送り量(f):0.28mm/rev
切込量(ap):2.2mm
クーラント:湿式(WET)
繰り返しサイクル:0.5秒の切削と0.5秒の空転を1サイクル
評価は、上記条件で繰り返し旋削を行い、200サイクル時点で生じた熱亀裂の本数と、欠損するまでのサイクル数(切削回数)を調べた。なお、評価は、1試料につき6個について行い、熱亀裂の本数及び欠損までの切削回数は、その平均値とした。その結果を表2に示す。
Figure 0006066365
WC粒子の平均粒径が0.4μm〜4μmの範囲内である試料No.2−2〜No.2−5は熱亀裂の本数が少なく、切削回数が多いのに対し、範囲外である試料No.2−1,No.2−6は熱亀裂の本数が多く、切削回数が少ない。つまり、試料No.2−2〜No.2−5は、繰り返し旋削といった熱サイクル(熱衝撃)が負荷される切削条件であっても、熱亀裂が発生し難く、耐熱亀裂性に優れるため、それに起因する欠損も大幅に低減できる。試料No.2−1では、超硬合金中のWC粒子の粒径が小さいことから、耐亀裂伝播性に劣り、熱亀裂に起因する欠損が生じ易く、一方、試料No.2−6では、超硬合金中のWC粒子の粒径が大きいことから、硬度が低下し、サイクルごとの熱衝撃によって変形が起き、熱亀裂に起因する欠損が生じ易くなったものと推定される。
<実施例3>
焼結工程で焼結前の成形体に予備加熱処理を施した超硬合金を製造し、その評価を行った。
[超硬合金製基材の作製]
実施例1の試料No.1−2と同じ原料(原料1A)を用い、以下のように製造条件を変更して、表3に示す試料No.3−1〜No.3−7の刃先交換型切削チップの超硬合金製基材を作製した。
(試料No.3−1)
試料No.3−1は、実施例1の試料No.1−2と同じ製造条件で超硬合金を作製した。つまり、試料No.3−1では、焼結工程で予備加熱を行わず、炉内圧力(真空度)を4kPaに制御して、1430℃の温度で1時間焼結した。そして、実施例1と同じように、得られた超硬合金に適宜刃先処理を施して、刃先交換型切削チップの超硬合金製基材(形状:CNMG120408N−GU)を作製した。
(試料No.3−2〜No.3−7)
試料No.3−2〜No.3−7は、焼結工程で焼結前に予備加熱を行った以外は、試料No.3−1(試料No.1−2)と同様にして超硬合金を作製した。具体的には、試料No.3−2〜No.3−7では、炉内圧力を4kPaに制御して、表3に示す条件(温度、時間)で予備加熱した後、炉内圧力を維持したまま、昇温して、1430℃の温度で1時間焼結した。そして、実施例1と同じように、得られた超硬合金に適宜刃先処理を施して、刃先交換型切削チップの超硬合金製基材を作製した。
[超硬合金の評価]
作製した超硬合金製基材(試料)について、実施例1と同じようにして、超硬合金の特性を評価した。いずれの試料も表面部に脱β層を有しており、超硬合金製基材の表面全体に脱β層が形成されていた。WC粒子の平均粒径、並びに、脱β層の熱浸透率(TEa)と内部の熱浸透率(TEb)との熱浸透率比(TEa/TEb)を表3に示す。
(脱β層中のWC粒子の接触点数の評価)
更に、この例では、脱β層中に存在するWC粒子のうち、他のWC粒子との接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率を測定した。具体的には、上述した観察試料断面の脱β層を顕微鏡で観察し、観察視野内のWC粒子の数が500個程度になるように倍率を調整して撮影した。撮影した断面観察像において、視野内に存在する全てのWC粒子について接触点数を計測した。そして、これを任意の5視野について行い、接触点数を計測した全粒子に対する接触点数が1点以下のWC粒子の数の割合を算出して、脱β層における接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率(%)を求めた。その結果を表3に示す。
[切削工具の作製]
実施例1と同じように、作製した各試料の超硬合金製基材の表面に被覆膜を形成して、刃先交換型切削チップを作製した。
[切削工具の評価]
作製した各試料の刃先交換型切削チップについて、実施例1と同じ切削条件で耐摩耗性試験を実施して、同様に耐摩耗性を評価した。その結果を表3に示す。
Figure 0006066365
焼結工程で予備加熱を行った試料No.3−2〜No.3−7は、予備加熱しなかった試料No.3−1(実施例1の試料No.1−2に同じ)に比較して、接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が低く、TEa/TEb>1.22であり、熱浸透率比が大きい。これは、予備加熱を行ったことで、WC粒子同士のネッキング(結合)が生じ、WC粒子同士の接触点が増えることによって、超硬合金全体の熱浸透率が高められると共に、脱β層と内部との熱浸透率比が大きくなったものと考えられる。そして、試料No.3−2〜No.3−7は、試料No.3−1に対して耐摩耗性試験での寿命が長く、すくい面摩耗がより効果的に抑制されており、耐摩耗性が向上していることが分かる。特に、予備加熱の温度を1100〜1200℃、時間を180分以上とした試料No.3−3,No.3−4及びNo.3−7は、接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が5%以下で、TEa/TEb≧1.23であり、耐摩耗性が大幅に向上している。試料No.3−1〜No.3−7の結果の対比から、予備加熱を行うことで、接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率を低くして、熱浸透率比を大きくでき(例えば、TEa/TEb≧1.22)、結果として、耐摩耗性を向上できることが分かる。特に、接触点数が1点以下のWC粒子の存在比率が5%以下の場合、熱浸透率比をより大きくでき(例えば、TEa/TEb≧1.23)、耐摩耗性をより向上できる。
本発明の実施態様に係る超硬合金は、例えば、切削工具の基材に好適に利用可能である。本発明の実施態様に係る切削工具は、例えば、鋼材の切削加工に好適に利用可能である。
1 刃先交換型切削チップ(切削工具)
2 すくい面 3 逃げ面 4 刃先(切れ刃)
5 取付孔
10 基材(超硬合金)
11 脱β層(表面部) 12 内部
20 被覆膜

Claims (6)

  1. WC粒子からなる第1硬質相と、
    周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物からなる第2硬質相と、
    Co,Ni及びFeから選ばれる少なくとも1種の鉄族金属を含有する結合相と、を有し、
    前記WC粒子の平均粒径が0.4μm以上4.0μm以下であり、
    表面部に前記第1硬質相と前記結合相とからなる脱β層が形成されており、
    前記脱β層の熱浸透率をTEa、内部の熱浸透率をTEbとするとき、TEa/TEb≧1.10を満たす超硬合金。
  2. TEa/TEb≧1.20を満たす請求項1に記載の超硬合金。
  3. 前記第2硬質相がNを含有する少なくとも1種の窒素含有化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の超硬合金。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超硬合金からなる基材を備える切削工具。
  5. 前記基材の表面に被覆膜を備える請求項4に記載の切削工具。
  6. 前記被覆膜が化学蒸着法により形成されている請求項5に記載の切削工具。
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